説明

作業用帽子

【課題】頭部を動かしても顎の下側など顔面の周囲に隙間が生じ難い構造を持った作業用帽子を提供する。
【解決手段】帽子本体部1と、その下端縁から部分的に下方に延びて着用者の顔面以外の頭部を少なくとも首まで覆う裾部2とを有する頭巾状の作業用帽子である。着用者の顔面と裾部2との境界線は、こめかみの位置(P1、P2)から、下顎の位置(Q1、Q2)まで直線状に降下する縦の境界線(a1、a2)と、前記位置(Q1、Q2)から顎の下の中央部に向かって直線状に延びる斜め境界線(b1、b2)とからなる。これら2本の斜め境界線は、顎の下の中央部で互いに角度をなして交差し、その交差状態を維持するように裾部の端部同士を留める留め具6が設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作業用帽子に関し、とりわけ、作業者の毛髪を製品に混入させないことが求められる作業現場で用いられる作業用帽子に関するものである。
【背景技術】
【0002】
食品工場など、作業者の体毛(特に、頭髪)が製品に混入しないように厳しく管理されている工場では、作業者は作業用帽子を着用しなければならない。このような作業用帽子は、頭髪の主要部分を覆うだけでなく、両頬、両耳、襟首をも十分に覆うべく、野球帽型の帽子本体部分の側頭部〜後頭部の下端縁から裾(すそ)部が下方に延びて、頭巾のような形態となっている(例えば、特許文献1など)。
図7は、従来の作業用帽子を作業者が着用した状態を示した図である。同図のとおり、裾部200は、着用者の顔面だけを露出させるように帽子本体部100から下に延び、顔面の両側にある裾部は、それぞれ顎の下まで延びて互いに重ね合わされ、面ファスナー付きのベルト300で留められている。このような構成によって、頭髪は完全に覆い隠され、しかも、着脱が容易になっている。
【0003】
しかしながら、本発明者が、上記のような従来の頭巾状の作業用帽子の構造を詳細に検討したところ、次のような改善すべき問題点が含まれていることがわかった。
先ず、従来品では顔面との境界部分に伸縮性の生地(図7のA10、A20の部分)を用い、そのすぐ近傍に非伸縮性の生地からなるベルト(図7の300)を取り付けているため、それらの生地同士の間の伸縮率の差異によって、伸縮性の生地が強く引張られて伸び、短期間でたるみが生じて、隙間が出来やすい。
また、留め具を付ける場所については、伸縮性の生地に直接留め具を付けると、留め具が該生地を局所的に強く引っ張って、生地の劣化を早めることになるので、図7のように伸縮性の生地にベルトを取り付け、該ベルトに留め具を付けることで、生地の耐久性を上げようとしている。しかし、そのような態様であっても、ベルトが伸縮性の生地を局所的に引張ることになっているため、生地の劣化防止は未だ十分ではない。
また、従来の頭巾状の作業用帽子では、図7、図8に示すように、露出する顔面と裾部との境界線A10、A20は、着用者のこめかみ部分から下へ降りながら、顔の輪郭の丸みに沿って湾曲し、顎の下側に回り込んでいる。顔の両側から顎の下側に回り込んだ2つの境界線A10、A20は、顎の下の中央部で出合って一線上に重なり合い、その部分の裾部が上記のようにベルト300で互いに留められるようになっている。
このような顔面の輪郭に沿って湾曲した境界線A10、A20は、図7、図8に示すように、作業者の頭部が通常姿勢(顔面が前方を向いている姿勢)である場合には、顔面の輪郭にフィットして、頭髪を作業用帽子内に封じ込めることができる。
しかし、図9に円Xで囲んで示すように、作業者が上を向くなど頭部の向きが変わると、各境界線(図9では片側の境界線A10だけが見えている)が顎の下へ入り込んだ部分に、ハッチングで示したような隙間が生じる場合があり、作業用帽子内に封じ込められていた抜け毛がその隙間から室内に出て行く可能性が生じる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−212824号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の課題は、上記した問題を解決し、頭部を動かしても顎の下側など顔面の周囲に隙間が生じ難い構造を持った作業用帽子を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、課題を解決すべく鋭意研究を行った結果、作業用帽子の側頭部の裾部と顔面との境界線が独自の屈折した線となるように裾部を構成することによって、頭部を動かしても隙間が生じ難くなることを見出し、本発明を完成させた。
【0007】
即ち、本発明は、次の特徴を有するものである。
(1)着用者の頭部のうちの額より上の半球状部分を覆う帽子本体部と、該帽子本体部の下端縁から部分的に下方に延びて着用者の顔面以外の頭部を少なくとも首まで覆う裾部とを、有する頭巾状の作業用帽子であって、
当該作業用帽子を着用したときに露出する着用者の顔面と前記裾部との境界線は、
帽子本体部の下端縁のうちのこめかみに対応する2つの位置(P1、P2)から、それぞれの下方にある下顎に対応する2つの位置(Q1、Q2)まで直線状に降下する2本の縦の境界線(a1、a2)と、前記下顎に対応する2つの位置(Q1、Q2)においてそれぞれ鈍角をなして折れ曲がり顎の下の中央部に向かって直線状に延びる2本の斜め境界線(b1、b2)とを有しており、該2本の斜め境界線(b1、b2)は、顎の下の中央部で互いに角度をなして交差するまで延びており、
前記2本の斜め境界線(b1、b2)が顎の下の中央部で互いに角度をなして交差した状態を維持するように、それら2本の斜め境界線を含んだ裾部の端部同士を互いに留める留め具が設けられていることを特徴とする、作業用帽子。
(2)上記裾部が、さらに、着用者の胸元上部、両方の肩部、襟首下部までを覆い、着用者の前側で互いに重なり合うことができるように延びている、上記(1)記載の作業用帽子。
(3)上記帽子本体部の額に対応する部分に、ひさしが設けられている、上記(1)または(2)記載の作業用帽子。
(4)当該作業用帽子を着用したときに露出する着用者の顔面と裾部との境界線に沿った帯状の縁部、および、前記の露出する顔面と帽子本体部との境界線に沿った帯状の縁部が、パイル織の生地によって形成されている、上記(1)〜(3)のいずれかに記載の作業用帽子。
(5)上記裾部には、上記2本の斜め境界線を含んだ裾部の端部の位置に着用者の首を取り巻くように布製ベルトが縫いつけられており、該布製ベルトの両端部に、前記裾部の端部同士を互いに留める留め具が設けられている、上記(1)〜(4)のいずれかに記載の作業用帽子。
(6)上記留め具が、スナップボタンである、上記(1)〜(5)のいずれかに記載の作業用帽子。
【発明の効果】
【0008】
本発明の作業用帽子では、図1に示すように、露出する顔面と裾部2との境界線(こめかみ部から下方に降りる境界線が、従来のようにこめかみから顎の下へと湾曲する線ではなく、こめかみから下顎付近まで直線的に降り、そこで鈍角をなして折れ曲がり、顎の下へ直線的に向かうという、「く」の字形に屈折した線となっている。即ち、〔縦の境界線a1と斜め境界線b1とからなる屈折線〕と、〔縦の境界線a2と斜め境界線b2とからなる屈折線〕である。
そして、折れ曲がった後の2本の斜め境界線b1、b2が、顎の下の中央部で角度をなして交差するようになっている。
上記のような境界線を描くように前開き前合わせの裾部を構成することによって、作業者の顔面が前方を向いている姿勢では、図5に示すように、屈折した境界線が顔面の輪郭に好ましくフィットする。
また、作業者が上を向いても、図3に示すように、互いに角度をなして交差する斜め境界線b1、b2が顎の下側の面に追従し、隙間が生じることがない。
【0009】
また、当該作業用帽子には、図1に示すように、上記2本の斜め境界線b1、b2を含んだ裾部の端部の位置に、着用者の首を取り巻くようにベルトが縫い付けられており、このベルト5の両端部に、前記裾部の端部同士を互いに留める留め具6(より詳しくは図2のオス・メス一対の留め具61、62)が設けられている。
この構成によって、ベルトが上記境界線を含む生地を局所的に引張ることがなく、伸縮性の生地が用いられていても、ベルトを引張ることによって伸びてたるむというような劣化が解消されている。
【0010】
また、本発明の好ましい態様では、各部の留め具には面ファスナーが一切用いられず、スナップボタン(ホックの類)が用いられる。
面ファスナーは、微細な多数のフックとループとからなる着脱自在の留め具であって、例えば、マジックテープ(登録商標)やベルクロ(登録商標)などの商品名で販売されており、ワンタッチで着脱可能な留め具、絞め具として従来より多用されている。これに対して本発明では、面ファスナーの微細なフックとループに体毛が絡みつき、工場内に持ち込まれる可能性がある点に着目しており、当該作業用帽子に付与される全ての留め具、絞め具を後述のスナップボタンとし、体毛が付着する確率を低下させている。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】図1は、本発明の作業用帽子の前面を示した図であって、頭部の両側を覆って下に降りた裾部2のそれぞれの端部が、顎の下の中央部で重なり合った状態(着用時の状態)を示している。
【図2】図2は、図1において重なり合った裾部を開いたときの状態を示す部分図である。
【図3】図3は、本発明の作業用帽子の作用効果を示すための図であって、当該作業用帽子を着用した者が上を向いたときの状態を前から見た図である。
【図4】図4は、本発明の作業用帽子と顔面との境界線を説明するための図である。
【図5】図5は、本発明の作業用帽子の実施例品を、作業者が実際に着用した状態を示す写真図である。
【図6】図6は、本発明の作業用帽子に付与される、好ましい付帯構造の例を示した図である。
【図7】図7は、従来の作業用帽子を作業者が着用した状態を前から見た図である。
【図8】図8は、従来の作業用帽子を作業者が着用した状態を横から見た図である。
【図9】図9は、従来の作業用帽子の問題点を示すための図であって、従来の作業用帽子を着用した者が上を向いたときの状態を斜めから見た図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に、本発明の作業用帽子を、実施例に沿って詳細に説明する。当該作業用帽子の各部の位置関係等を説明するに際しては、当該作業用帽子を人が着用した状態にて、顔面の各部の位置を引用しながら、それに対応する当該作業用帽子の各部の説明を行う。よって、以下の説明では、記載を簡単にするために、「当該作業用帽子を着用したときの、着用者の顔面の」などといった逐一の前置きは省略する場合がある。
また、顔面の各部の位置を分り易く説明するために、頭頂が上にあり、顎が下にあるとして、上下の方向とそれに直交する横(水平)方向を説明に用いている。
【0013】
図1に示すように、当該作業用帽子は、着用者の頭部のうちの額より上の半球状部分を覆う帽子本体部1と、該帽子本体部の下端縁から部分的に下方に延びて着用者の顔面以外の頭部を少なくとも首まで覆う裾部2とを有する。同図では、当該作業用帽子を立体的に形成するための縫製上の接合ラインは図示を省略している。また、帽子本体部1と裾部2とは、一体的かつ連続的に形成されており明確な境界はなく、必ずしも縫製上の接合ラインが両者の境界でもない。
当該作業用帽子において、顔面と顔面両側の裾部との境界線は、図1に示すように、顔の両側で「く」の字を描くように折れ曲がっており、かつ、それらが顎の下の中央部で角度をなして交差するという、従来には無かったラインを描いて顔面の下半分を取り巻く構成となっている。
即ち、前記境界線は、〔帽子本体部の下端縁のうちのこめかみに対応する2つの位置P1、P2から、それぞれの下方にある下顎に対応する2つの位置Q1、Q2まで直線状に降下する2本の縦の境界線a1、a2〕と、〔前記2つの位置Q1、Q2から、それぞれ顎の下の中央部に向かって直線状に延びる2本の斜め境界線b1、b2〕とを有してなる。
ここで、図4に示すように、縦の境界線a1と斜め境界線b1とは互いに鈍角θ1をなして折れ曲がってつながった関係にあり、同様に、縦の境界線a2と斜め境界線b2も同様に、互いに鈍角θ1をなして折れ曲がってつながった関係にある。
また、顔の両側から顎の下の中央部に向かって直線状に延びる2本の斜め境界線b1、b2は、図4に示すように、顎の下の中央部で角度θ2をなして交差するまで延びている。
そして、図1に示すように、2本の斜め境界線を含んだ裾部の端部同士を、一方の端部に設けた留め具6によって互いに留めて、これら斜め境界線b1、b2が顎の下の中央部で互いに角度をなして交差した状態を維持するようになっている。
尚、図1の例では、好ましい態様例として、着用者の首を取り巻くようにベルト5が裾部に縫いつけられており、該ベルトの一方の端部が延びて、その先端に留め具が設けられ、該ベルトの他方の端部(裾部の他方の端部にある)の留め具6に留める構成となっている。また、図2には、この留め具6を外して裾部の前を開いた状態を示している。
以上の構成によって、上記発明の効果の説明のとおり、顔面の両側において角度をなして屈折した境界線が顔面の輪郭に好ましくフィットしながら顎の下に回りこんで、顔面との間に隙間が生じない。斜め境界線b1、b2が互いに角度をなして交差し顎の下を締め付けたこの状態は、図3に示すように、たとえ作業者が上を向いても、図9のような隙間が生じることがない。
【0014】
帽子本体部と着用者の額との境界線(図1に符号cで示す横方向の境界線)の位置は、頭髪の生え際を覆うことができる位置であればよく、頭髪の生え際から眉毛までの間の適当な高さの位置を選択すればよいが、該境界線から頭髪(特に前髪)がはみ出し難いようにする点からは、できるだけ眉毛に近い低い位置が好ましい。
また、当該作業用帽子によって抜けた眉毛の脱落防止をも意図するならば、横方向の境界線cは、図4に示すように、眉毛を覆う位置まで下げるのが好ましい。
【0015】
上記横方向の境界線cは、従来の作業用帽子の場合と同様、額の湾曲(こめかみ部よりも中央部が前方に張り出した湾曲)に沿うように湾曲した線であることが好ましい。
また、当該作業用帽子を着用した状態を前方から見たとき、横方向の境界線cは、図1に示すように、額の湾曲に沿いながら一定の高さのままで横方向に延びる線であってもよいし、図7に示すように、額の湾曲に沿いながらも眉間から目じりへと弧を描きながら下がっていく線であってもよい。
【0016】
図4に例示する横方向の境界線cの長さ(額の湾曲に沿った長さ)は、こめかみの横の頭髪やもみ上げの毛がでないように、対象とする頭部や顔面の大きさに応じて適宜決定すればよいが、通常、135mm〜200mm程度が好ましく、140mm〜160mm程度が汎用的でありより好ましい。実際の製品では、異なるサイズのものを提供してもよい。
【0017】
図1、図4に示すこめかみに対応する2つの位置P1、P2は、横方向に関しては、上記横方向の境界線cの長さによって決定され、また、高さ方向に関しては、該境界線cの高さ方向の変動に応じて、通常のこめかみの領域から上下に5mm〜15mm程度の範囲内で変動してもよい。
汎用的には、こめかみに対応する2つの位置P1、P2は、眉毛の外側の端の高さ〜目じりの高さの範囲内にあることが好ましい。
【0018】
図1、図4に示す下顎に対応する2つの位置Q1、Q2は、こめかみの下方であってかつ下顎の付近(奥歯の付近)の位置であればよいが、(こめかみから顔面の輪郭に沿って下方に降ろした直線上にあって、くちびるの高さの位置)と、(こめかみから顔面の輪郭に沿って下方に降ろした直線と、下顎角から顎の先端に至るまでの顎の輪郭線とが交わる位置)との間の位置にあることが好ましい。
前記の「こめかみから下方に降ろした直線」は、着用者の顔の立体的な形状によっても異なるが、こめかみから真下に直線状に降りる直線であってもよく、また、図5に示すように、こめかみから顔面の外側の方向(後頭部へ向かう方向)へ後退しながら下方に降りる直線であってもよい。縦の境界線a1、a2の下降の方向も同様である。
【0019】
図4における2本の縦の境界線a1、a2の長さLは、着用者の頭部や顔面のサイズに応じて適宜決定すればよいが、通常、95mm〜170mm程度であり、100mm〜140mm程度が汎用的であり好ましい。
【0020】
図4に示す、縦の境界線a1と斜め境界線b1とがなす角度(即ち、縦の境界線a1が位置Q1において折れ曲がり斜め境界線b1となるときの内側の角度)θ1は、鈍角であればよく、それによって、斜め境界線は顎の下側へ向かうことができる。
該角度θ1は、110度〜160度が好ましく、120度〜140度がより好ましい角度である。
このとき、斜め境界線b1、b2の交差角度θ2は、平面的には〔(180度−θ1)×2〕となるが、実際に当該作業用帽子を人が着用すると、生地の伸縮によって角度θ1が変化し、また、2つの斜め境界線も、下顎の位置Q1から顎の下の中央部に向かって立体的に交差するので、前記の計算式による値とは多少異なる場合がある。
本発明の一実施例では、設計上の角度θ1、θ2は、共に120度である。
【0021】
図4に示す、斜め境界線b1、b2の長さ〔それぞれ(Q1−T1)と(Q2−T2)〕は、両方の裾部の端部同士が重なり合う量を決定する長さであって、85mm〜120mm程度が好ましく、90mm〜110mm程度がより好ましい長さである。
【0022】
帽子本体部は、半球状、円筒状、多角柱状など、通常の帽子の形状でよい。
当該作業用帽子を立体的に形成するための縫製構造は限定されず、従来公知の帽子、作業用帽子、頭巾などの縫製構造を参照してもよい。
【0023】
当該作業用帽子を構成するための布帛は、特に限定はされないが、織物、編物、不織布、フィルム素材など、衣料品に使用可能な全てのシート状素材であってよい。また、前記の織物、編物、不織布等に用いられる繊維も、衣料品に使用可能な全てのものを用いてよく、天然繊維、再生繊維、合成繊維、これらの混合物などが挙げられる。
通常の食品工場であれば、布としては、綿布や、綿と合成繊維との混合布、合成繊維だけからなる布などが好ましい。
【0024】
裾部は、頭髪を覆う点からは、少なくとも首まで覆うものであればよいが、裾の下端部を作業服の襟から内部に十分深くまで入れて、頭髪の放出を防止する点からは、図1に符号3で示すように、首からさらに、着用者の胸元上部、両方の肩部、襟首下部までを覆い、着用者の前側で互いに重なり合うことができるように延びていることが好ましい。
【0025】
図1に示すように、帽子本体部の額に対応する部分には、ひさしを設けてもよい。
また、顔面と裾部との境界線(a1、b1、a2、b2)に沿った帯状の縁部7、および、顔面と帽子本体部との境界線cに沿った帯状の縁部7を、パイル織の生地(タオル地)等の吸水性に優れた生地で形成することによって、肌触りがよくなり、額から顔面にたれようとする汗を吸収し、また、顔面から出で下にたれる汗を効果的に受け止めて吸収するので好ましい。
また、この帯状の縁部7の生地は、顔面や顎下部に好ましくフィットするよう伸縮性の布地とすることが好ましく、図1に示すように、この伸縮性の布地からなる帯状の縁部を境界線(b1、b2)先端の裾部の前合わせの端部まで延長することによって、伸縮性の布地が角度をなしてクロスして着用者の頭部の姿勢の変化に追従し、さらに隙間ができ難くなる。
【0026】
図5に符号8で示すように、裾部の両耳の上の位置に、メガネのつるを挿入するためのスリットを設けることによって、顔面との境界線を広げてメガネのつるを挿入するといったことがなくなり、抜けた頭髪の放出が抑制される。
このようなスリットは、側頭部が露出してしまうような単純な切れ目ではなく、図5のように、スリットとすべき部分の布地を2枚重ね合わせ、それら布地の間を外界から通過した後に内部に入るといった、2枚重ね合わせた布地によって形成したスリットであることが好ましい。
【0027】
当該作業用帽子には、種々の付帯構造を加えてよい。
例えば、図2に示すように、裾部の前開きの端部同士を固定する留め具6は、オスのスナップボタン61とメスのスナップボタン62とによって、締め付け具合を多段階(図では4段階)に調節して留めることが可能になっている。
また、図5、図6(a)に符号9で示す付帯構造は、マスクの紐を引っ掛けるためのタブであって、当該作業用帽子を着用して両耳が隠れても、その上からマスクを装着することができるようになっている。該タブ9は、開閉可能に折り曲げた布片に留め具を設け、マスクの紐を引っ掛けた状態で閉じて留めるようになっている。
また、図6(b)に符号10で示す付帯構造は、当該作業用帽子の頭部への締め付け具合を段階的(図の例では3段階)に調節するための調節用ベルトである。
図2に示す留め具6のn段階の調節と、図6(b)に示す調節用ベルト10のm段階の調節とを組み合わせることによって、合計n×m段階(図の例では4×3=12段階)の締め付け具合を得ることができる。
その他、伸縮自在のギャザーや、耳の部分へのメッシュ地の使用など、好ましい付帯構造を適宜設けてよい。また、当該作業用帽子は、独立した単独の製品としての態様だけでなく、襟首部分において着衣の襟と連結されてもよく、着衣と一体になった帽子部であってもよい。
【0028】
首の周りを取り巻くベルトや、上記調節用ベルトの材料は、特に限定はされないが、当該作業用帽子の主要部分を構成する布地と同じ非伸縮性の布が好ましい。
当該作業用帽子の各部の留め具としては、頭髪などが付着せず、着脱が容易であることからスナップボタンが好ましく、とりわけ、オーリングテーピーなどと呼ばれるプラスチック製の大小一対のリングからなるスナップボタンは、構造が単純であるため、体毛を巻き込むことが少ないので好ましい。
【産業上の利用可能性】
【0029】
本発明によって、頭部を動かしても顎の下側など顔面の周囲に隙間が生じ難い構造を持った作業用帽子を提供することが可能になった。
当該作業用帽子は、頭髪の混入を防止しなくてはならない工場にとって有用な作業用着衣となる。また、当該作業用帽子は、適当な布素材を用いることで半導体工場のようなクリーンルーム用に用いることもできる。
【符号の説明】
【0030】
1 帽子本体部
2 裾部
3 首からさらに下に延びた裾部
P1、P2 こめかみに対応する2つの位置
Q1、Q2 下顎に対応する2つの位置
a1、a2 縦の境界線
b1、b2 斜め境界線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
着用者の頭部のうちの額より上の半球状部分を覆う帽子本体部と、該帽子本体部の下端縁から部分的に下方に延びて着用者の顔面以外の頭部を少なくとも首まで覆う裾部とを、有する頭巾状の作業用帽子であって、
当該作業用帽子を着用したときに露出する着用者の顔面と前記裾部との境界線は、
帽子本体部の下端縁のうちのこめかみに対応する2つの位置(P1、P2)から、それぞれの下方にある下顎に対応する2つの位置(Q1、Q2)まで直線状に降下する2本の縦の境界線(a1、a2)と、前記下顎に対応する2つの位置(Q1、Q2)においてそれぞれ鈍角をなして折れ曲がり顎の下の中央部に向かって直線状に延びる2本の斜め境界線(b1、b2)とを有しており、該2本の斜め境界線(b1、b2)は、顎の下の中央部で互いに角度をなして交差するまで延びており、
前記2本の斜め境界線(b1、b2)が顎の下の中央部で互いに角度をなして交差した状態を維持するように、それら2本の斜め境界線を含んだ裾部の端部同士を互いに留める留め具が設けられていることを特徴とする、作業用帽子。
【請求項2】
上記裾部が、さらに、着用者の胸元上部、両方の肩部、襟首下部までを覆い、着用者の前側で互いに重なり合うことができるように延びている、請求項1記載の作業用帽子。
【請求項3】
上記帽子本体部の額に対応する部分に、ひさしが設けられている、請求項1または2記載の作業用帽子。
【請求項4】
当該作業用帽子を着用したときに露出する着用者の顔面と裾部との境界線に沿った帯状の縁部、および、前記の露出する顔面と帽子本体部との境界線に沿った帯状の縁部が、パイル織の生地によって形成されている、請求項1〜3のいずれか1項に記載の作業用帽子。
【請求項5】
上記裾部には、上記2本の斜め境界線を含んだ裾部の端部の位置に着用者の首を取り巻くようにベルトが縫いつけられており、該ベルトの両端部に、前記裾部の端部同士を互いに留める留め具が設けられている、請求項1〜4のいずれか1項に記載の作業用帽子。
【請求項6】
上記留め具が、スナップボタンである、請求項1〜5のいずれか1項に記載の作業用帽子。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2012−251273(P2012−251273A)
【公開日】平成24年12月20日(2012.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−126750(P2011−126750)
【出願日】平成23年6月6日(2011.6.6)
【出願人】(591145483)原田産業株式会社 (23)