説明

作業用車両の制御装置

【課題】盗難防止に関するオペレータの操作が誤操作であるのかどうかを判断し、これに基づいて的確で且つ信頼性の高い盗難防止機能を発揮し得るようにする。
【解決手段】油圧アクチュエータを駆動制御する制御手段と、制御手段に制御信号を出力する操作手段と、盗難防止モードの設定手段と、操作手段が操作されても油圧アクチュエータの作動を規制する規制手段と、設定手段で盗難防止モードが設定されているとき盗難防止モードを解除するまで油圧アクチュエータの作動を規制保持させるコントローラを備え、盗難防止モードの設定操作がなされたとき、作動検出手段により油圧アクチュエータが盗難防止機能を発揮し得る作動状態にあることを検出していない場合には盗難防止モードの設定を不能とする。係る構成によれば、油圧アクチュエータが上記作動状態にないときの盗難防止モードの設定操作が誤操作として排除され、これによって的確で且つ信頼性の高い盗難防止が実現される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、油圧アクチュエータを備えた作業用車両において、その盗難を防止するに有効な制御装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、作業機を備えた作業用車両において、その盗難を防止するに有効な技術が提案されている(特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1に示されるものは、油圧アクチュエータを制御する油圧制御弁の作動を規制する盗難防止モードを備え、作業用車両の保管に際して上記盗難防止モードが設定されると、例えその保管中に窃取を目的とした操作が行われたとしても、上記油圧制御弁を作動させて作業用車両を走行可能状態としてこれを窃取することができないようにし、これによって盗難防止が図られるようにしたものである。
【0004】
【特許文献1】特願2007−335927
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上掲特許文献1にも示されるように、通常、盗難防止モードの設定はオペレータによる手動操作によって行なうようになっており、従って、オペレータの操作に誤りが無ければ何等問題は生じない。
【0006】
しかし、現実問題として、オペレータの操作に誤り無きことは保証し得ず、例えば、オペレータは通常モードでの操作を意図していたにも拘らず、誤って盗難防止スイッチをON操作し、これによって盗難防止モードが設定されるとか、盗難防止が可能な状態、例えば、車両をジャッキアップさせていない状態であるにも拘らず誤って盗難防止スイッチをON操作し、これによって盗難防止モードが設定されるというようなことも起こり得る。
【0007】
係る場合、前者においては、盗難防止モードが設定されているので、例えば、ジャッキ操作が規制され、通常モードでの作業が不能となる。また、後者においては、盗難防止機能が働いていない状態であるにも拘らず、オペレータは盗難防止機能が有効に働いていると勘違いをして車両から離れ、その結果、車両が盗難にあうことにもなりかねない。これら何れの場合においても、盗難防止の確実性あるいは信頼性という点において好ましいものではない。
【0008】
そこで本願発明は、盗難防止に関してオペレータの行なった操作が誤操作であるのかどうかを判断して、これに基づいて的確で且つ信頼性の高い盗難防止機能を発揮し得るようにした作業用車両の制御装置を提供することを目的としてなされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本願発明ではかかる課題を解決するための具体的手段として次のような構成を採用している。
【0010】
本願の第1の発明では、自走車両に油圧アクチュエータによって駆動される作業機を搭載してなる作業用車両の制御装置であって、油圧源からの油圧を供給して上記油圧アクチュエータを駆動制御する制御手段と、操作されることで上記制御手段に制御信号を出力する操作手段と、盗難防止モードの設定を行なう設定手段と、操作手段が操作されても上記油圧アクチュエータの作動を規制する規制手段と、コントローラを備え、上記コントローラは上記設定手段で盗難防止モードが設定されているとき盗難防止モードを解除するまで上記規制手段により上記油圧アクチュエータの作動を規制保持するようにした作業用車両の制御装置において、上記油圧アクチュエータが盗難防止機能を発揮し得る作動状態にあることを検出する作動検出手段を備え、上記コントローラは、上記設定手段により盗難防止モードの設定操作がなされたとき上記作動検出手段により上記油圧アクチュエータが上記作動状態にあることを検出していない場合には上記盗難防止モードの設定を不能とするように構成されていることを特徴としている。
【0011】
本願の第2の発明では、自走車両に油圧アクチュエータによって駆動される作業機を搭載してなる作業用車両の制御装置であって、油圧源からの油圧を供給して上記油圧アクチュエータを駆動制御する制御手段と、操作されることで上記制御手段に制御信号を出力する操作手段と、盗難防止モードの設定を行なう設定手段と、操作手段が操作されても上記油圧アクチュエータの作動を規制する規制手段と、コントローラを備え、上記コントローラは上記設定手段で盗難防止モードが設定されているとき盗難防止モードを解除するまで上記規制手段により上記油圧アクチュエータの作動を規制保持するようにした作業用車両の制御装置において、上記油圧アクチュエータが盗難防止機能を発揮し得る作動状態にあることを検出する作動検出手段と、報知手段を備え、上記コントローラは、上記設定手段により盗難防止モードの設定操作がなされたとき上記作動検出手段により上記油圧アクチュエータが上記作動状態にあることを検出していない場合には上記報知手段を作動させて上記盗難防止モードの設定操作が無効であることを報知させるように構成されていることを特徴としている。
【0012】
本願の第3の発明では、自走車両に油圧アクチュエータによって駆動される作業機を搭載してなる作業用車両の制御装置であって、油圧源からの油圧を供給して上記油圧アクチュエータを駆動制御する制御手段と、操作されることで上記制御手段に制御信号を出力する操作手段と、盗難防止モードの設定を行なう設定手段と、操作手段が操作されても上記油圧アクチュエータの作動を規制する規制手段と、コントローラを備え、上記コントローラは上記設定手段で盗難防止モードが設定されているとき盗難防止モードを解除するまで上記規制手段により上記油圧アクチュエータの作動を規制保持するようにした作業用車両の制御装置において、上記油圧アクチュエータが盗難防止機能を発揮し得る作動状態にあることを検出する作動検出手段と、報知手段を備え、上記コントローラは、上記設定手段により盗難防止モードの設定操作がなされたとき上記作動検出手段により上記油圧アクチュエータが上記作動状態にあることを検出していない場合には上記報知手段を作動させて上記油圧アクチュエータが上記作動状態にないことを報知させた上で上記盗難防止モードを設定するように構成されていることを特徴としている。
【0013】
本願の第4の発明では、自走車両に油圧アクチュエータによって駆動される作業機を搭載してなる作業用車両の制御装置であって、油圧源からの油圧を供給して上記油圧アクチュエータを駆動制御する制御手段と、操作されることで上記制御手段に制御信号を出力する操作手段と、盗難防止モードの設定を行なう設定手段と、操作手段が操作されても上記油圧アクチュエータの作動を規制する規制手段と、コントローラを備え、上記コントローラは上記設定手段で盗難防止モードが設定されているとき盗難防止モードを解除するまで上記規制手段により上記油圧アクチュエータの作動を規制保持するようにした作業用車両の制御装置において、上記油圧アクチュエータが盗難防止機能を発揮し得る作動状態にあることを検出する作動検出手段を備え、上記コントローラは、上記設定手段により盗難防止モードの設定操作がなされたとき上記作動検出手段により上記油圧アクチュエータが上記作動状態にあることを検出していない場合には自動で上記油圧アクチュエータを作動させ、該作動検出手段により上記油圧アクチュエータが上記作動状態にあることを検出した場合には盗難防止モードが解除されるまで上記規制手段により上記油圧アクチュエータの作動を規制保持するように構成されていることを特徴としている。
【0014】
本願の第5の発明では、上記第1、第2、第3又は第4の発明に係る作業用車両の制御装置において、上記規制手段を、油圧源をアンロードさせるアンロード弁あるいは上記制御弁の作動を規制する制御弁規制機構で構成したことを特徴としている。
【0015】
本願の第6の発明では、上記第1、第2、第3又は第4の発明に係る作業用車両の制御装置において、上記油圧アクチュエータは作業機を搭載した作業用車両を地面に支持させる油圧ジャッキであり、上記作動検出手段は上記油圧ジャッキにてジャッキアップしていることを検出するジャッキアップ検出器であることを特徴としている。
【0016】
本願の第7の発明では、上記第2又は第3の発明に係る作業用車両の制御装置において、上記報知手段は、警報器あるいは音声出力器であることを特徴としている。
【0017】
本願の第8の発明では、上記第1又は第2の発明に係る作業用車両の制御装置において、暗証番号を入力する暗証番号入力手段と、入力された暗証番号が記憶される暗証番号記憶手段を備え、上記コントローラは、上記盗難防止モードの設定操作がなされたときには暗証番号入力手段で入力された暗証番号を暗証番号記憶手段に記憶した上で該盗難防止モードに設定させ、上記盗難防止モードの設定解除操作がなされたときには暗証番号入力手段で入力された暗証番号が暗証番号記憶手段に記憶された暗証番号と一致する場合には上記盗難防止モードの解除を許容し、一致しない場合には上記盗難防止モードの解除を許容しないようにするとともに、上記設定手段により盗難防止モードの設定操作がなされたとき上記作動検出手段により上記油圧アクチュエータが上記作動状態にあることを検出していない場合には上記暗証番号記憶手段における上記暗証番号の記憶を不能にすることを特徴としている。
【発明の効果】
【0018】
本願発明では次のような効果が得られる。
【0019】
(a)本願の第1の発明に係る作業用車両の制御装置によれば、上記設定手段により盗難防止モードの設定操作がなされたとき、上記作動検出手段により上記油圧アクチュエータが盗難防止機能を発揮し得る作動状態にあることを検出していない場合、例えば、上記油圧アクチュエータが油圧ジャッキであって該油圧ジャッキによって作業用車両がジャッキアップされていないような場合には、作動検出手段によってジャッキアップ状態が検出されていないので、上記盗難防止モードの設定操作は誤操作であるとして、上記盗難防止モードの設定が不能とされる。従って、その後に上記油圧アクチュエータを作動させて作業用車両をジャッキアップすると、上記作動検出手段がジャッキアップを検出するので、さらに上記設定手段により盗難防止モードの設定操作を行って盗難防止モードに設定することが可能であり、誤操作に基づく盗難防止モードの設定が回避され、的確で且つ信頼性の高い盗難防止が実現される。
【0020】
(b)本願の第2の発明に係る作業用車両の制御装置によれば、上記設定手段により盗難防止モードの設定操作がなされたとき、上記作動検出手段により上記油圧アクチュエータが盗難防止機能を発揮し得る作動状態にあることを検出していない場合、例えば、上記油圧アクチュエータが油圧ジャッキであって該油圧ジャッキによって作業用車両がジャッキアップされていないような場合には、作動検出手段によってジャッキアップ状態が検出されていないので、上記盗難防止モードの設定操作は誤操作であるとして、上記報知手段により上記盗難防止モードの設定操作が無効であることが報知されるので、オペレータは上記油圧アクチュエータを作動させて作業用車両をジャッキアップすると、上記作動検出手段がジャッキアップを検出するので、さらに上記設定手段により盗難防止モードの設定操作を行って盗難防止モードに設定することが可能であり、誤操作に基づく盗難防止モードの設定が回避され、的確で且つ信頼性の高い盗難防止が実現される。
【0021】
(c)本願の第3の発明に係る作業用車両の制御装置によれば、上記設定手段により盗難防止モードの設定操作がなされたとき、上記作動検出手段により上記油圧アクチュエータが盗難防止機能を発揮し得る作動状態にあることを検出していない場合、例えば、上記油圧アクチュエータが油圧ジャッキであって該油圧ジャッキによって作業用車両がジャッキアップされていないような場合には、作動検出手段によってジャッキアップ状態が検出されていないので、上記盗難防止モードの設定操作は誤操作であるとして、作業用車両がジャッキアップされておらず盗難防止機能が発揮されない状態であることが報知された上で、上記盗難防止モードが設定され、オペレータが操作手段を操作しても上記油圧アクチュエータは作動しないことから、オペレータは先の操作が誤操作であったことを確実に認識でき、例えば、盗難防止モードを解除した後に、改めて上記油圧アクチュエータを作動させてこれを上記作動状態とした上で、盗難防止モードの設定操作を行なって盗難防止を図ることができるなど、盗難防止の信頼性が向上する。
【0022】
(d)本願の第4の発明に係る作業用車両の制御装置によれば、上記設定手段により盗難防止モードの設定操作がなされたとき、上記作動検出手段により上記油圧アクチュエータが盗難防止機能を発揮し得る作動状態にあることを検出していない場合、例えば、上記油圧アクチュエータが油圧ジャッキであって該油圧ジャッキによって作業用車両がジャッキアップされていないような場合には、作動検出手段によってジャッキアップ状態が検出されていないので、上記盗難防止モードの設定操作は誤操作であるとして、自動的に上記油圧アクチュエータを、盗難防止機能を発揮し得る作動状態となるまで作動させ、この作動状態が検出されたとき、即ち、油圧ジャッキによって作業用車両がジャッキアップされたことが確認されたとき、盗難防止モードに設定して上記油圧アクチュエータの作動を規制するとともに、盗難防止モードが解除されるまでこの規制状態が保持される。
【0023】
従って、例え誤操作による盗難防止モードの設定操作がなされても、再度設定操作をやり直すことなく、自動的に上記油圧アクチュエータが上記作動状態とされ、本来の盗難防止状態が実現されるので、盗難防止モードの不確実な設定が未然に回避され、盗難防止の確実性及び信頼性が確保される。
【0024】
(e)本願の第5の発明に係る作業用車両の制御装置によれば、上記(a)、(b)、(c)又は(d)に記載の効果に加えて以下のような特有の効果が得られる。即ち、この発明では、上記規制手段を、油圧源をアンロードさせるアンロード弁あるいは上記制御弁の作動を規制する制御弁規制機構で構成しているので、盗難防止モード状態での上記油圧アクチュエータの作動規制が的確に行なわれ、それだけ盗難防止の確実性及び信頼性がさらに向上する。
【0025】
(f)本願の第6の発明に係る作業用車両の制御装置によれば、上記(a)、(b)、(c)又は(d)に記載の効果に加えて以下のような特有の効果が得られる。即ち、この発明では、上記油圧アクチュエータは作業機を搭載した作業用車両を地面に支持させる油圧ジャッキであり、上記作動検出手段は上記油圧ジャッキにてジャッキアップしていることを検出するジャッキアップ検出器であるので、盗難防止モードにおいて、作業用車両をジャッキアップさせてその移動を規制することによる作業用車両の盗難防止の確実性が向上する。
【0026】
(g)本願の第7の発明に係る作業用車両の制御装置によれば、上記(b)に記載の効果に加えて以下のような特有の効果が得られる。即ち、この発明では、上記報知手段が、警報器あるいは音声出力器であるので、オペレータに対して確実に報知することができ、作業用車両の盗難防止の確実性が担保される。
【0027】
(h)本願の第8の発明に係る作業用車両の制御装置によれば、上記(a)又は(b)に記載の効果に加えて以下のような特有の効果が得られる。即ち、この発明では、上記盗難防止モードの設定操作がなされたとき、上記作動検出手段が上記油圧アクチュエータが盗難防止機能を発揮し得る作動状態にあることを検出している場合には暗証番号を記憶した上で盗難防止モードが設定され、上記作動検出手段が上記油圧アクチュエータが盗難防止機能を発揮し得る作動状態にあることを検出していない場合には上記暗証番号の記憶が不能とされる。これによって、オペレータが盗難防止を意図しており、しかも上記油圧アクチュエータが盗難防止機能を発揮し得る作動状態にある場合にのみ盗難防止モードが設定されることで、誤操作に基づく盗難防止モードの設定が排除される。
【0028】
また、盗難防止モードが設定された後における盗難防止モードの設定解除に際しては、入力された暗証番号が記憶されている暗証番号と一致する場合には上記盗難防止モードの解除が許容され、一致しない場合(即ち、記憶された暗証番号の設定者以外の者、例えば、窃取者が暗証番号を入力したような場合)には上記盗難防止モードの解除が許容されないことから、作業用車両の窃取を目的とする盗難防止モードの解除が確実に防止される。
【0029】
これら両者の相乗効果として、作業用車両の盗難防止の確実性及び信頼性が向上することになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
以下、本願発明を好適な実施形態に基づいて具体的に説明する。
【0031】
図1には、本願発明に係る盗難防止用の制御装置が備えられた作業用車両の一例として、クレーン車Zを示している。
A: 全体構成
A−1:クレーン車Z
上記クレーン車Zは、車両1のキャビン2と荷台3の間のシャーシフレーム(図示省略)上に、アウトリガ装置4と、旋回台7Aに伸縮ブーム7Bを取付けてなるクレーン装置7を搭載して構成される。
【0032】
上記アウトリガ装置4は、車体左側へ向けて伸縮可能とされた左側伸縮桁5Lと該左側伸縮桁5Lの先端に垂設された左側ジャッキ6L、及び車体右側へ向けて伸縮可能とされた右側伸縮桁5Rと該右側伸縮桁5Rの先端に垂設された右側ジャッキ6R、を備えて構成される。
【0033】
また、上記アウトリガ装置4の左右両側部分には、左側操作レバー群8Lと右側操作レバー群8Rがそれぞれ設けられるとともに、ジャッキ操作スイッチ11と盗難防止スイッチ12が付設されている。
【0034】
そして、このクレーン車Zでは、上記操作レバー群8L、8Rの各操作レバーを選択操作することで、上記クレーン装置7の伸縮ブーム7Bの起伏動と伸縮動と旋回動、及びウィンチの巻上・巻下動を行なうことができるようになっている。さらに、上記各ジャッキ6L、6Rは、上記ジャッキ操作スイッチ11を操作することで張出・格納を行なうことができるようになっている。
【0035】
上記盗難防止スイッチ12は、盗難防止モードの設定及び解除を行なうものであって、オペレータにより操作される。なお、この実施形態における上記盗難防止スイッチ12は専用スイッチではなく、他の操作にも使用できるスイッチであって、コード設定によって盗難防止スイッチとして使用できるものである。従って、上記盗難防止スイッチ12を専用スイッチとして設けることも可能である。
【0036】
又、この実施形態では、盗難防止のための機械的な手段の一つとして、上記各ジャッキ6R、6Lによってクレーン車Zの前輪側をジャッキアップさせるようにしている。このジャッキアップ状態を検出するために、上記各ジャッキ6R、6Lにはそれぞれジャッキアップ検出スイッチ13を備えている。ここで、このジャッキアップ検出スイッチ13は、各ジャッキ6R、6Lの最伸長状態を検出するものではなく、前輪が地面から所定量浮上して、このままではクレーン車Zを走行させて移動することができないような伸長量に達したことを検出するものである。
【0037】
なお、ジャッキアップ状態の検出手法としては、上記ジャッキアップ検出スイッチ13による他に、例えば、上記各ジャッキ6R、6Lがストロークエンドに達したことを検出してジャッキアップ状態と判断する手法とか、各ジャッキ6R、6Lが伸動作を開始した時点、又は各ジャッキ6R、6Lが接地した時点から所定時間の経過をもってジャッキアップ状態と判断する手法とか、各ジャッキ6R、6Lが外箱と内箱から成り且つそのストロークエンドにおいてガタを有する場合とか、各ジャッキ6R、6Lの車体側への支持部がそのストロークエンドにおいてガタを有するような場合においてそのガタの消滅を検出してジャッキアップ状態と判断する手法等が考えられる。
A−2:油圧系の構成
図2には、上記クレーン車Zの油圧系の一部を示しており、同図において符号21は伸縮用油圧シリンダ9用の制御弁、22は右側ジャッキ6R用の制御弁、23は左側ジャッキ6L用の制御弁である。なお、ウィンチ用制御弁と起伏用制御弁及び旋回用制御弁についてはその図示を省略している。
【0038】
上記各制御弁21〜23は、それぞれパイロットシリンダ25〜27によって駆動されるもので、該各パイロットシリンダ25〜27には、その右油室への油圧の給排を行なう切換弁31,33,35と左油室への油圧の給排を行なう切換弁32,34,36が、それぞれ付設されており、これら右油室用の切換弁31,33,35と左油室用の切換弁32,34,36を、後述する制御系からの制御信号に基づいて作動させることで、上記各制御弁21〜23が駆動される。なお、上記各切換弁31〜36には、それぞれソレノイド41〜46が備えられている。
【0039】
さらに、この油圧系には、アンロード弁19が備えられている。このアンロード弁19は、ソレノイド16を備えた電磁弁17とリリーフ弁18によって構成され、上記電磁弁17のソレノイド16が非励磁のときには上記リリーフ弁18のベント油路をタンク側に接続してメイン油路をアンロード状態とする一方、該ソレノイド16が制御系からオンロード信号を受けて励磁されたときには上記リリーフ弁18のベント油路をタンク側に非接続として該リリーフ弁18を設定圧に設定することでメイン油路をオンロード状態とするように作動する。
A−3:制御系の構成
この実施形態においては、上記油圧系を制御するための制御系として、以下のような4形態を想定している。
【0040】
第1の制御形態
第1の制御形態は、図3に示すように、上記アンロード弁19に設けられたソレノイド16を励磁・非励磁とすることで通常モード状態と盗難防止モード状態を選択できるようにしたものである。即ち、上記ソレノイド16が励磁されると、油圧系がオンロード状態とされ、上記各油圧シリンダを適宜作動させて通常の作業が行なうことができる。これに対して、上記ソレノイド16が非励磁とされると、油圧系がアンロード状態とされ、上記各油圧シリンダを作動させることができない状態となり、例えば、ジャッキアップ状態にある上記各ジャッキ6R、6Lを縮小操作して前輪を接地させることができない(盗難防止機能の具現)。
【0041】
このアンロード弁19の励磁・非励磁制御を行なうために、エンジンキースイッチ14の下流側に、盗難防止スイッチ12とジャッキアップ検出スイッチ13とリレー15aを順次直列に接続した電流ラインと、ジャッキ操作スイッチ11とリレースイッチ15bと上記アンロード用のソレノイド16を順次直列に接続した電流ラインを、並列に接続している。
【0042】
この制御形態では、ジャッキアップ検出スイッチ13がジャッキアップを検出した状態で、盗難防止スイッチ12がON設定されるとリレースイッチ15bがOFF設定となり、ソレノイド16が非励磁とされ、油圧系がアンロード状態となって盗難防止機能が実現される。
【0043】
また、盗難防止スイッチ12とジャッキアップ検出スイッチ13がジャッキアップを検出していない状態で、上記ジャッキ操作スイッチ11が操作されると、ソレノイド16が励磁されるため、油圧系がオンロード状態となり、通常モードでの作業が可能となる。
【0044】
これら両者以外の場合は、全て誤操作に基づくものとされる。例えば、ジャッキアップ検出スイッチ13がジャッキアップを検出していないにもかかわらず上記盗難防止スイッチ12がON設定された場合は、上記各ジャッキ6R、6Lがジャッキアップ状態に無い(即ち、盗難防止機能を発揮し得る状態でない)にも拘らず、上記盗難防止スイッチ12が操作された場合であって、該盗難防止スイッチ12の操作が誤操作と考えられるものである。
【0045】
なお、この第1の制御形態では、アンロード弁19によって油圧系をアンロード状態とすることで盗難防止機能を実現するようにしているが、これに代えて、例えば、上記各ジャッキ6R、6Lの各ジャッキ用制御弁22、23に付設された各パイロットシリンダ26、27を不作動とすることで盗難防止機能を実現することもできる。例えば、上記各パイロットシリンダ26、27にそれぞれ備えられた各切換弁33〜36の各ソレノイド43〜46への制御信号の出力を規制するとか、該各切換弁33〜36の各ソレノイド43〜46に対して同時に制御信号を出力して上記各パイロットシリンダ26、27を固定保持することで、上記右側ジャッキ用制御弁22と左側ジャッキ用制御弁23を共に不作動として盗難防止機能を実現するものである。
【0046】
第2の制御形態
第2の制御形態は、図4に示すように、エンジンキースイッチ14の他にジャッキ操作スイッチ11と盗難防止スイッチ12及びジャッキアップ検出スイッチ13が備えられ、これらジャッキ操作スイッチ11と盗難防止スイッチ12及びジャッキアップ検出スイッチ13からそれぞれ検出信号がコントローラ10に入力されるとともに、該コントローラ10からの制御信号によって上記アンロード弁19のソレノイド16が制御され、油圧系をアンロード状態とすることで盗難防止機能を実現するものである。
【0047】
このコントローラ10による上記ソレノイド16の制御は、上記ジャッキ操作スイッチ11と盗難防止スイッチ12及びジャッキアップ検出スイッチ13の信号を受けて行なわれるが、その具体的な制御は図5の論理に基づいて行なわれる。これを説明すると以下の通りである。
【0048】
状態1:エンジンキースイッチ14がOFF設定の状態であって、この場合にはアンロード弁19のソレノイド16は非励磁とされ、油圧系がアンロード状態とされる。
【0049】
状態2:エンジンキースイッチ14がON設定であるが、盗難防止スイッチ12、ジャッキアップ検出スイッチ13はジャッキアップを検出しておらず、またジャッキ操作スイッチ11がOFF設定の状態であって、この場合にはアンロード弁19のソレノイド16は非励磁とされ、油圧系がアンロード状態とされる。
【0050】
状態3:エンジンキースイッチ14がON設定の状態で、ジャッキ操作スイッチ11がON設定されたものの、盗難防止スイッチ12がOFF設定され、且つジャッキアップ検出スイッチ13がジャッキアップを検出していない状態である。この状態は、通常のジャッキ操作が行われる状態であるため、上記ソレノイド16が励磁され、油圧系がオンロード状態とされる。
【0051】
状態4:エンジンキースイッチ14がON設定の状態で、ジャッキアップ検出スイッチ13がジャッキアップを検出しているものの、ジャッキ操作スイッチ11と盗難防止スイッチ12が共にOFF設定とされた状態である。この状態は、上記各ジャッキ6R、6Lをジャッキアップした状態で作業を停止している状態であるため、上記ソレノイド16が非励磁とされ、油圧系はアンロード状態とされる。
【0052】
状態5:エンジンキースイッチ14がON設定の状態で、ジャッキ操作スイッチ11がON設定され、且つジャッキアップ検出スイッチ13がジャッキアップを検出しておらず、しかも盗難防止スイッチ12がOFF設定とされた状態である。この状態は、通常作業において上記各ジャッキ6R、6Lを伸長操作してジャッキアップさせている状態であるため、上記ソレノイド16が励磁され、油圧系はオンロード状態とされる。
【0053】
状態6:エンジンキースイッチ14がON設定の状態において、ジャッキ操作スイッチ11がOFF設定されるとともにジャッキアップ検出スイッチ13がジャッキアップを検出していない状態で、且つ盗難防止スイッチ12がON設定された状態である。この状態は、上記各ジャッキ6R、6Lがジャッキアップ状態に無く且つこれを伸長させる操作もされていないにも拘らず、上記盗難防止スイッチ12がON設定された状態であって、明らかに誤操作によって上記盗難防止スイッチ12が操作されたものと考えられる場合である。従って、この状態では、上記ソレノイド16は非励磁とされ、油圧系はアンロード状態とされる。
【0054】
状態7:エンジンキースイッチ14がON設定の状態において、盗難防止スイッチ12はON設定されたものの、上記ジャッキ操作スイッチ11がON設定され、各ジャッキ6R、6Lが伸長動作を行なっているが、未だジャッキアップ状態に達していない状態である。これも、本来、上記ジャッキアップ検出スイッチ13がジャッキアップを検出した状態で、上記盗難防止スイッチ12がON設定されるべきところ、その操作順序が逆となったもので、これも誤操作によって上記盗難防止スイッチ12が操作されたものと考えられる。従って、この状態では、誤操作ではあるが、盗難防止機能を実現することを優先させて、上記ソレノイド16を励磁し、油圧系をオンロード状態として上記各ジャッキ6R、6Lの伸長動作を継続させるものである。
【0055】
状態8:エンジンキースイッチ14がON設定の状態において、ジャッキアップ検出スイッチ13がON設定され車両がジャッキアップされ、且つジャッキ操作スイッチ11が操作されていない状態で、上記盗難防止スイッチ12がON設定されたものであって、盗難防止モードが適正に設定されたと考えられる。従って、この場合には、上記ソレノイド16を非励磁とし、油圧系をアンロード状態とするものである。
【0056】
状態9:エンジンキースイッチ14がON設定の状態において、上記ジャッキアップ検出スイッチ13がジャッキアップを検出し且つ上記盗難防止スイッチ12がON設定され、盗難防止が適正に設定された状態であるにもかかわらず、上記ジャッキ操作スイッチ11がON設定された状態である。この状態は、正に車両の窃取動作が行なわれている状態であり、従って、この場合には、上記ソレノイド16を非励磁とし、油圧系をアンロード状態として、上記各ジャッキ6R、6Lの縮小動を規制して盗難を防止するものである。
【0057】
なお、この第2の制御形態では、アンロード弁19によって油圧系をアンロード状態とすることで盗難防止機能を実現するようにしているが、これに代えて、例えば、上記各ジャッキ6R、6Lの各ジャッキ用制御弁22、23に付設された各パイロットシリンダ26、27を不作動とすることで盗難防止機能を実現することもできる。例えば、上記各パイロットシリンダ26、27にそれぞれ備えられた各切換弁33〜36の各ソレノイド43〜46への制御信号の出力を規制するとか、該各切換弁33〜36の各ソレノイド43〜46に対して同時に制御信号を出力して上記各パイロットシリンダ26、27を固定保持することで、上記右側ジャッキ用制御弁22と左側ジャッキ用制御弁23を不作動として盗難防止機能を実現するものである。
B:実施例の説明
以上の事項を踏まえた上で、実際の盗難防止制御を、幾つかの実施例に基づいて説明する。
B−1:第1の実施例
第1の実施例は、図6に示すフローチャートに基づいて実行される。
【0058】
電源投入後、先ず、ステップS1において盗難防止スイッチ12がON設定されたかどうかが判断される。ここで、盗難防止スイッチ12がON設定されていない場合は、通常のクレーン作業が行なわれる状態と考えられるため、通常モードに設定する(ステップS5)。
【0059】
これに対して、盗難防止スイッチ12がON設定されている場合は、次に車両がジャッキアップ状態にあるかどうか、即ち、上記ジャッキアップ検出スイッチ13がジャッキアップを検出しているかどうかが判断される。ここで、ジャッキアップされていると判断される場合は、盗難防止を一方とした状態と考えられるので、ステップS3において、盗難防止モードに設定する(即ち、油圧系をアンロード状態とする)。従って、盗難防止モードが設定された後は、その解除操作を行わない限り、たとえジャッキ操作を行っても上記各ジャッキ6R、6Lを縮小作動させることはできず、これによって盗難防止の実効が図られる。
【0060】
一方、盗難防止スイッチ12がON設定されている(ステップS1)が、上記ジャッキアップ検出スイッチ13がジャッキアップを検出しておらず(ステップS2)、車両はジャッキアップされていないと判断される場合は、通常モードでの作業を意図したにも拘らず、誤操作によって上記盗難防止スイッチ12がON設定されたものと考えられる。従って、この場合には、警報を発してオペレータに「盗難防止スイッチ12が誤操作されている」ことを報知し(ステップS4)、通常作業を可能とすべく、通常モードに設定する(ステップS5)。
【0061】
この実施例の制御においては、上記盗難防止スイッチ12が適正な操作によってON設定された場合にのみ盗難防止モードが設定され、上記盗難防止スイッチ12が誤操作によってON設定されたような場合には、該盗難防止スイッチ12の設定に拘らず、盗難防止モードは設定されずに通常モードに設定され、例えば、誤操作によって上記盗難防止スイッチ12のON設定を受けて盗難防止モードが設定されてジャッキ操作等が不能とされるようなことが未然に回避されるものであり、これによって盗難防止機能の確実性及び信頼性が確保されるものである。
B−2:第2の実施例
第2の実施例は、図7に示すフローチャートに基づいて実行される。
【0062】
電源投入後、先ず、ステップS1において盗難防止スイッチ12がON設定されたかどうかが判断される。ここで、盗難防止スイッチ12がON設定されていない場合は、通常のクレーン作業が行なわれる状態と考えられるため、通常モードにモード設定を行なう(ステップS5)。
【0063】
これに対して、盗難防止スイッチ12がON設定されている場合は、次に車両がジャッキアップ状態にあるかどうか、即ち、上記ジャッキアップ検出スイッチ13がジャッキアップを検出したかどうかが判断される。ここで、ジャッキアップされていると判断される場合は、盗難防止を意図した状態と考えられるので、ステップS3において、盗難防止モードに設定する(即ち、油圧系をアンロード状態とする)。従って、盗難防止モードが設定された後は、その解除操作を行わない限り、たとえジャッキ操作を行っても上記各ジャッキ6R、6Lを縮小作動させることはできず、これによって盗難防止の実効が図られる。
【0064】
一方、盗難防止スイッチ12はON設定されている(ステップS1)が、上記ジャッキアップ検出スイッチ13がジャッキアップを検出しておらず(ステップS2)、車両はジャッキアップされていないと判断される場合は、通常モードでの作業を意図したにも拘らず、誤操作によって上記盗難防止スイッチ12がON設定されたものと考えられる。従って、この場合には、警報を発してオペレータに「盗難防止スイッチ12が誤操作されている」ことを報知(ステップS4)した後、盗難防止モードにモード設定を行なう(ステップS3)。
【0065】
この実施例の制御においては、上記盗難防止スイッチ12が適正な操作によってON設定された場合には盗難防止モードが設定されるのは盗難防止機能の実現上から当然であるが、これに限らず、上記盗難防止スイッチ12が誤操作によってON設定されたような場合にも盗難防止モードが設定され、ジャッキ操作等が不能とされる。この結果、オペレータは、上記警報の他に、ジャッキ操作等を行ってもこれが作動しないことで誤操作があったことを確実に認識することができ、これによって盗難防止機能の確実性及び信頼性が確保されるものである。
【0066】
なお、誤操作に基づいて盗難防止モードが設定された場合には、オペレータが上記盗難防止スイッチ12の解除操作を行って盗難防止モードを解除すれば、通常モードに設定され、通常作業が可能となる。
B−3:第3の実施例
第3の実施例は、図8に示すフローチャートに基づいて実行される。
【0067】
電源投入後、先ず、ステップS1において盗難防止スイッチ12がON設定されたかどうかが判断される。ここで、盗難防止スイッチ12がON設定されていない場合は、通常のクレーン作業が行なわれる状態と考えられるため、通常モードにモード設定を行なう(ステップS8)。
【0068】
これに対して、盗難防止スイッチ12がON設定されている場合は、次に車両がジャッキアップ状態にあるかどうか、即ち、上記ジャッキアップ検出スイッチ13がジャッキアップを検出したかどうかが判断される。ここで、ジャッキアップされていると判断される場合は、盗難防止を意図した状態と考えられるので、ステップS3において、盗難防止モードに設定する(即ち、油圧系をアンロード状態とする)。従って、盗難防止モードが設定された後は、その解除操作を行わない限り、たとえジャッキ操作を行っても上記各ジャッキ6R、6Lを縮小作動させることはできず、これによって盗難防止の実効が図られる。
【0069】
一方、盗難防止スイッチ12がON設定されている(ステップS1)が、上記ジャッキアップ検出スイッチ13がジャッキアップを検出しておらず(ステップS2)、車両はジャッキアップされていないと判断される場合は、通常モードでの作業を意図したにも拘らず、誤操作によって上記盗難防止スイッチ12がON設定されたものと考えられる。従って、この場合には、先ず、警報を発してオペレータに「盗難防止スイッチ12が誤操作されている」ことを報知する(ステップS4)。
【0070】
次に、自動的に、油圧系をオンロード状態として上記各ジャッキ6R、6Lを、ジャッキアップ状態となるまで伸作動させ(ステップS5、ステップS6)、ジャッキアップ状態となった時点で上記各ジャッキ6R、6Lの伸作動を停止させ且つ油圧系をアンロード状態とする(ステップS7)。しかる後、盗難防止モードに設定して(ステップS3)、盗難防止を図る。
【0071】
この実施例の制御においては、上記盗難防止スイッチ12が適正な操作によってON設定された場合には盗難防止モードが設定されるのは盗難防止機能の実現上から当然であるが、これに限らず、上記盗難防止スイッチ12が誤操作によってON設定されたような場合であっても、自動的にジャッキアップ操作を行って上記各ジャッキ6R、6Lを盗難防止機能を発揮し得る作動状態とした上で、盗難防止モードが設定されるものである。これは、単にオペレータによる盗難防止スイッチ12の誤操作であるとは限らず、本来的に盗難防止を意図して上記盗難防止スイッチ12を操作したものの、盗難防止機能の前提となる車両のジャッキアップ操作が完了していなかった、即ち、上記盗難防止スイッチ12以外の部分の確認ミス(これも誤操作の一形態)ということも考えられるので、オペレータによる盗難防止スイッチ12のON設定は盗難防止を意図したものであるとみなして、盗難防止機能の前提条件を整えた上で、盗難防止モードに設定するようにしたものである。
【0072】
従って、誤操作が生じたとしても、オペレータが再度操作をやり直さなくとも、上記盗難防止スイッチ12のON設定に対応する盗難防止モードが設定されるものであり、盗難防止機能の確実性及び信頼性の確保とともに、操作の簡易性が図られるものである。
【0073】
B−4:第4の実施例
第4の実施例は、図9に示すフローチャートに基づいて実行される。
【0074】
この実施例の制御は、上記各実施例の制御においては盗難防止スイッチ12のスイッチ操作によってこれをON−OFF設定していたのに対して、暗証番号に基づいて盗難防止のON−OFF設定を行なうようにしたものである。
【0075】
即ち、この制御系には暗証番号を入力する暗証番号入力手段と、入力された暗証番号が記憶される暗証番号記憶手段が備えられており、盗難防止のON設定を暗証番号の入力によって行なうようにしている。また、ここで入力されて暗証番号を記憶保持し、必要に応じて読み出すことができるようになっている。さらに、入力された暗証番号と記憶された暗証番号を対比してその一致・不一致を判断する判断手段も備えられている。
【0076】
以上の点を踏まえた上で、図9のフローチャートに基づいてその制御を説明する。
【0077】
電源投入後、先ず、ステップS1において、暗証番号の入力によって盗難防止のON設定がなされたかどうかが判断される。ここで、暗証番号は入力されておらず盗難防止がOFF設定であると判断される場合には、通常のクレーン作業が行なわれる状態と考えられるため、通常モードにモード設定を行なう(ステップS10)。
【0078】
これに対して、暗証番号が入力され盗難防止がON設定されたと判断される場合には、次に車両がジャッキアップ状態にあるかどうか、即ち、上記ジャッキアップ検出スイッチ13がジャッキアップを検出したかどうかが判断される。
【0079】
ここで、ジャッキアップされていないと判断される場合は、盗難防止機能が働かない状態であるにも拘らず、誤操作によって盗難防止がON設定されたものと考えられるので、この場合には、盗難防止のON設定は誤操作である旨の警報が発せられ、通常モードへ移行し(ステップS8、ステップS9)、通常作業が可能とされる。
【0080】
一方、ステップS2において、ジャッキアップされていると判断される場合は、盗難防止を実行すべき状態であるので、ステップS3において先に入力された暗証番号を記憶し(ステップS3)、盗難防止モードに設定する(ステップS4)。盗難防止モードに設定された後は、その解除操作がなされるまで(ステップS5)、盗難防止モードが継続され、盗難防止の実行が図られる。
【0081】
一方、盗難防止モードの設定下において、暗証番号を入力することによる盗難防止モードの解除操作がなされると(ステップS5)、この入力された暗証番号と盗難防止モード設定時に記憶した暗証番号が一致するかどうかが判断され(ステップS6)、一致した場合には盗難防止モードが解除され(ステップS7)、通常モードへ移行する(ステップS1、ステップS10)。
【0082】
これに対して、暗証番号が一致しないと判断された場合は、車両を窃取しようとする者が盗難防止モードを解除しようとして何らかの暗証番号を入力した状態(即ち、車両が窃取されかかった状態)と考えられる。従って、この場合には、盗難防止モードの解除が拒否され(ステップS6、ステップS1)、これによって盗難が未然に防止される。
【0083】
この実施例の制御においては、盗難防止のON設定が誤操作による暗証番号の入力ではなく、適正な暗証番号の入力によってなされた場合のみ、盗難防止モードが設定されることから、誤操作に基づく作動が排除され、盗難防止機能の確実性及び信頼性が確保される。
【0084】
また、盗難防止モードの解除操作は、オペレータが通常作業を意図して盗難防止モードから通常モードにモード切換えを行なう場合のみではなく、例えば、車両を窃取しようとしている者が盗難防止モードの解除を意図してモード切換えを行なうような場合も有り得るとの観点から、解除操作に際して入力された暗証番号と盗難防止モードの設定時に記憶された暗証番号の一致・不一致を判断し、一致する場合にのみ、盗難防止モードの解除が許容されるものであることから、盗難防止の実効性が格段に向上する。
【0085】
なお、上記各実施例では、アウトリガ装置4を備えたクレーン車を例にとって説明したが、本願発明は係る構成に限定されるものではなく、例えば、油圧駆動式のバケットを備えた掘削機とか、油圧駆動式の排土板を備えたブルドーザ等の他の作業用車両に広く適用されるものである。
【図面の簡単な説明】
【0086】
【図1】本願発明の実施の形態に係る制御装置を備えてクレーン車の斜視図である。
【図2】上記クレーン車の油圧回路図である。
【図3】本願発明の作業用車両の制御装置における第1の制御ブロック図である。
【図4】本願発明の作業用車両の制御装置における第2の制御ブロック図である。
【図5】本願発明の作業用車両の制御装置における制御論理図である。
【図6】本願発明の作業用車両の制御装置における第1の実施例を示すフローチャートである。
【図7】本願発明の作業用車両の制御装置における第2の実施例を示すフローチャートである。
【図8】本願発明の作業用車両の制御装置における第3の実施例を示すフローチャートである。
【図9】本願発明の作業用車両の制御装置における第4の実施例を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0087】
1 ・・車両
2 ・・キャビン
3 ・・荷台
4 ・・アウトリガ装置
5L ・・左側伸縮桁
5R ・・右側伸縮桁
6L ・・左側ジャッキ
6R ・・右側ジャッキ
7 ・・クレーン装置
8L ・・左側操作レバー群
8R ・・右側操作レバー群
9 ・・伸縮用油圧シリンダ
10 ・・コントローラ
11 ・・ジャッキ操作スイッチ
12 ・・盗難防止スイッチ
13 ・・ジャッキアップ検出スイッチ
14 ・・エンジンキースイッチ
15 ・・リレースイッチ
16 ・・アンロード用ソレノイド
17 ・・電磁弁
18 ・・リリーフ弁
19 ・・アンロード弁
20 ・・油圧ポンプ
21 ・・伸縮用制御弁
22 ・・右側ジャッキ用制御弁
23 ・・左側ジャッキ制御弁
25〜27 ・・パイロットシリンダ
31〜36 ・・切換弁
Z ・・クレーン車

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自走車両に油圧アクチュエータによって駆動される作業機を搭載してなる作業用車両の制御装置であって、
油圧源からの油圧を供給して上記油圧アクチュエータを駆動制御する制御手段と、操作されることで上記制御手段に制御信号を出力する操作手段と、盗難防止モードの設定を行なう設定手段と、操作手段が操作されても上記油圧アクチュエータの作動を規制する規制手段と、コントローラを備え、上記コントローラは上記設定手段で盗難防止モードが設定されているとき盗難防止モードを解除するまで上記規制手段により上記油圧アクチュエータの作動を規制保持するようにした作業用車両の制御装置において、
上記油圧アクチュエータが盗難防止機能を発揮し得る作動状態にあることを検出する作動検出手段を備え、
上記コントローラは、上記設定手段により盗難防止モードの設定操作がなされたとき上記作動検出手段により上記油圧アクチュエータが上記作動状態にあることを検出していない場合には上記盗難防止モードの設定を不能とするように構成されていることを特徴とする作業用車両の制御装置。
【請求項2】
自走車両に油圧アクチュエータによって駆動される作業機を搭載してなる作業用車両の制御装置であって、
油圧源からの油圧を供給して上記油圧アクチュエータを駆動制御する制御手段と、操作されることで上記制御手段に制御信号を出力する操作手段と、盗難防止モードの設定を行なう設定手段と、操作手段が操作されても上記油圧アクチュエータの作動を規制する規制手段と、コントローラを備え、上記コントローラは上記設定手段で盗難防止モードが設定されているとき盗難防止モードを解除するまで上記規制手段により上記油圧アクチュエータの作動を規制保持するようにした作業用車両の制御装置において、
上記油圧アクチュエータが盗難防止機能を発揮し得る作動状態にあることを検出する作動検出手段と、報知手段を備え、
上記コントローラは、上記設定手段により盗難防止モードの設定操作がなされたとき上記作動検出手段により上記油圧アクチュエータが上記作動状態にあることを検出していない場合には上記報知手段を作動させて上記盗難防止モードの設定操作が無効であることを報知させるように構成されていることを特徴とする作業用車両の制御装置。
【請求項3】
自走車両に油圧アクチュエータによって駆動される作業機を搭載してなる作業用車両の制御装置であって、
油圧源からの油圧を供給して上記油圧アクチュエータを駆動制御する制御手段と、操作されることで上記制御手段に制御信号を出力する操作手段と、盗難防止モードの設定を行なう設定手段と、操作手段が操作されても上記油圧アクチュエータの作動を規制する規制手段と、コントローラを備え、上記コントローラは上記設定手段で盗難防止モードが設定されているとき盗難防止モードを解除するまで上記規制手段により上記油圧アクチュエータの作動を規制保持するようにした作業用車両の制御装置において、
上記油圧アクチュエータが盗難防止機能を発揮し得る作動状態にあることを検出する作動検出手段と、報知手段を備え、
上記コントローラは、上記設定手段により盗難防止モードの設定操作がなされたとき上記作動検出手段により上記油圧アクチュエータが上記作動状態にあることを検出していない場合には上記報知手段を作動させて上記油圧アクチュエータが上記作動状態にないことを報知させた上で上記盗難防止モードを設定するように構成されていることを特徴とする作業用車両の制御装置。
【請求項4】
自走車両に油圧アクチュエータによって駆動される作業機を搭載してなる作業用車両の制御装置であって、
油圧源からの油圧を供給して上記油圧アクチュエータを駆動制御する制御手段と、操作されることで上記制御手段に制御信号を出力する操作手段と、盗難防止モードの設定を行なう設定手段と、操作手段が操作されても上記油圧アクチュエータの作動を規制する規制手段と、コントローラを備え、上記コントローラは上記設定手段で盗難防止モードが設定されているとき盗難防止モードを解除するまで上記規制手段により上記油圧アクチュエータの作動を規制保持するようにした作業用車両の制御装置において、
上記油圧アクチュエータが盗難防止機能を発揮し得る作動状態にあることを検出する作動検出手段を備え、
上記コントローラは、上記設定手段により盗難防止モードの設定操作がなされたとき上記作動検出手段により上記油圧アクチュエータが上記作動状態にあることを検出していない場合には自動で上記油圧アクチュエータを作動させ、該作動検出手段により上記油圧アクチュエータが上記作動状態にあることを検出した場合には盗難防止モードが解除されるまで上記規制手段により上記油圧アクチュエータの作動を規制保持するように構成されていることを特徴とする作業用車両の制御装置。
【請求項5】
請求項1、2、3又は4において、
上記規制手段は、油圧源をアンロードさせるアンロード弁あるいは上記制御弁の作動を規制する制御弁規制機構で構成されていることを特徴とする作業用車両の制御装置。
【請求項6】
請求項1、2、3又は4において、
上記油圧アクチュエータは作業機を搭載した作業用車両を地面に支持させる油圧ジャッキであり、上記作動検出手段は上記油圧ジャッキにてジャッキアップしていることを検出するジャッキアップ検出器であることを特徴とする作業用車両の制御装置。
【請求項7】
請求項2又は3において、
上記報知手段は、警報器あるいは音声出力器であることを特徴とする作業用車両の制御装置。
【請求項8】
請求項1又は請求項2において、
暗証番号を入力する暗証番号入力手段と、入力された暗証番号が記憶される暗証番号記憶手段を備え、
上記コントローラは、上記盗難防止モードの設定操作がなされたときには暗証番号入力手段で入力された暗証番号を暗証番号記憶手段に記憶した上で該盗難防止モードに設定させ、上記盗難防止モードの設定解除操作がなされたときには暗証番号入力手段で入力された暗証番号が暗証番号記憶手段に記憶された暗証番号と一致する場合には上記盗難防止モードの解除を許容し、一致しない場合には上記盗難防止モードの解除を許容しないようにするとともに、
上記設定手段により盗難防止モードの設定操作がなされたとき上記作動検出手段により上記油圧アクチュエータが上記作動状態にあることを検出していない場合には上記暗証番号記憶手段における上記暗証番号の記憶を不能にすることを特徴とする作業用車両の制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2009−227117(P2009−227117A)
【公開日】平成21年10月8日(2009.10.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−75152(P2008−75152)
【出願日】平成20年3月24日(2008.3.24)
【出願人】(000148759)株式会社タダノ (419)
【Fターム(参考)】