説明

作業車両用梱包体

【課題】コンテナに対する梱包体の積み込み作業を大幅に簡略化し、その所要時間を大幅に短縮する。
【解決手段】トラクタ2を梱包状に支持し、該トラクタ2がコンテナ3の幅方向を向く姿勢でコンテナ3内に並列状に積載される梱包体1であって、該梱包体1の側面部に、隣接する梱包体1の側面部に設けられた位置決め係合部4との係合により、コンテナ3内における梱包体1のコンテナ幅方向の位置を規定し、かつ、コンテナ3内における梱包体1のコンテナ幅方向の移動を規制する位置決め係合部4を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作業車両を梱包状に支持した状態でコンテナ内に積載される作業車両用梱包体に関し、特に、作業車両がコンテナの幅方向を向く姿勢でコンテナ内に並列状に積載される作業車両用梱包体に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、トラクタなどの作業車両をコンテナ輸送する場合は、作業車両を梱包状に支持する梱包体(梱包枠)が使用される(例えば、特許文献1、2参照)。この種の梱包体としては、作業車両を一台単位で梱包するものだけでなく、二台の作業車両を左右並列状態で梱包するものや、二台の作業車両を上下二段に梱包するものも知られている。また、コンテナに対する梱包体の積載方向は、作業車両の長さがコンテナの幅寸法よりも大きい場合は、特許文献1に記載されるように、作業車両がコンテナの長さ方向を向く姿勢に限られるが、作業車両の長さがコンテナの幅寸法よりも小さい場合は、作業車両がコンテナの幅方向を向くように積載してもよい。
【0003】
図13及び図14は、二台の作業車両101を上下二段に梱包した梱包体102を、作業車両101がコンテナ103の幅方向を向く姿勢でコンテナ103内に並列状に積載した例を示している。このような姿勢で梱包体102をコンテナ103内に積載する場合は、フォークリフト104を用いて、梱包体102をコンテナ103の奥側から順番に整列配置する。このとき、梱包体102は、後面(又は前面)がコンテナ103の内壁に当接するように位置決めされると共に、ズレ止め用の木材105を用いてコンテナ103の幅方向の移動が規制される。通常、ズレ止め用の木材105は、梱包体102を位置決めした後、梱包体102の前面下部(又は後面下部)と当接する位置に設置され、コンテナ103の床板に釘などを介して固定される。
【特許文献1】特開2002−19875号公報
【特許文献2】特開2004−35070号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記のような積載方法では、梱包体102をコンテナ内に積み込む毎に、梱包体102の位置決め作業、木材105の設置作業及び固定作業が要求されるため、全ての梱包体102を積み込むまでの手間が甚大であり、積み込み完了までに長い時間を要するという問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上記の如き実情に鑑みこれらの課題を解決することを目的として創作されたものであって、作業車両を梱包状に支持し、該作業車両がコンテナの幅方向を向く姿勢でコンテナ内に並列状に積載される作業車両用梱包体であって、該梱包体の側面部に、隣接する梱包体の側面部に設けられた位置決め係合部との係合により、コンテナ内における梱包体のコンテナ幅方向の位置を規定し、かつ、コンテナ内における梱包体のコンテナ幅方向の移動を規制する位置決め係合部を設けたことを特徴とする。このようにすると、コンテナ内における梱包体のコンテナ幅方向の位置決めが容易になるだけでなく、ズレ止め用の木材を設置・固定しなくても、コンテナ内における梱包体のコンテナ幅方向の移動を規制することが可能になる。その結果、コンテナに対する梱包体の積み込み作業を大幅に簡略化し、その所要時間を大幅に短縮することができる。
また、前記位置決め係合部は、梱包体の側面部から平面視山形状に突出していることを特徴とする。このようにすると、位置決め係合部の傾斜ガイド作用により、梱包体を正確かつ容易に位置決めすることができるだけでなく、位置決め係合部に作用する輸送時の横ずれ荷重を適度に分散し、梱包体の必要強度を低下させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
次に、本発明の実施形態について、図面に基づいて説明する。図1〜図6において、1はトラクタ(作業車両)2をコンテナ輸送する場合に使用される梱包体であって、該梱包体1は、二台のトラクタ2を上下二段に梱包支持し得る梱包用の枠体からなり、トラクタ2がコンテナ3の幅方向を向く姿勢でコンテナ3内に並列状に積載される。このとき、コンテナ3内に順次運び込まれる梱包体1は、前方を向く側面(右側面又は左側面)が、コンテナ3の前側内壁又は先に積載された隣接梱包体1の側面(左側面又は右側面)に当接され、かつ、左右いずれかを向く後面が、コンテナ3の右側内壁又は左側内壁に当接されることにより、コンテナ3に対する積載位置が決まる。また、梱包体1の左右の向きは、互い違いとし、その後面をコンテナ3の左右の内壁に交互に当接させる。これにより、コンテナ3内の積載荷重が左右いずれか一方に偏ることが回避される。そして、コンテナ3内に積載された梱包体1は、所定の移動規制手段によりコンテナ幅方向の移動が規制された状態で輸送される。
【0007】
本発明に係る梱包体1の側面部には、隣接する梱包体1の側面部に設けられた位置決め係合部4との係合により、コンテナ3内における梱包体1のコンテナ幅方向の位置を規定し、かつ、コンテナ3内における梱包体1のコンテナ幅方向の移動を規制する位置決め係合部4が設けられている。このようにすると、コンテナ3内における梱包体1のコンテナ幅方向の位置決めが容易になると共に、ズレ止め用の木材を設置・固定しなくても、コンテナ3内における梱包体1のコンテナ幅方向の移動を規制することが可能になる。これにより、コンテナ3に対する梱包体1の積み込み作業を大幅に簡略化し、その所要時間を大幅に短縮することができる。
【0008】
具体的に説明すると、位置決め係合部4は、梱包体1の左右側面部にそれぞれ二個(上段を含めると四個)ずつ設けられている。位置決め係合部4を設ける位置は、コンテナ3内の正規の位置に梱包体1が並列状に積載されたとき、隣接する梱包体1の位置決め係合部4同士が互いに係合する位置であり、その係合によって、コンテナ3内における梱包体1のコンテナ幅方向の位置が規定されると共に、コンテナ3内における梱包体1のコンテナ幅方向の移動が規制される。また、位置決め係合部4の形状は、平面視山形状(例えば、二等辺直角三角形状)が好ましい。このようにすると、位置決め係合部4の傾斜ガイド作用により、梱包体1を正確かつ容易に位置決めすることができるだけでなく、位置決め係合部4に作用する輸送時の横ずれ荷重を適度に分散し、梱包体1の必要強度を低下させることができる。
【0009】
次に、本実施形態に係る梱包体1の構造について、図3〜図12を参照して詳細に説明する。これらの図に示すように、本実施形態の梱包体1は、下段のトラクタ2を支持する下段のコースタ5と、上段のトラクタ2を支持する上段のコースタ5と、下段のコースタ5の前端部に立設されるフロント受台6と、下段のコースタ5の後端部に立設されるリヤ受台7と、フロント受台6の上端部と下段のコースタ5との間に架け渡される左右一対のスジカイ8とを備えて構成されている。尚、本実施形態のコースタ5は、上下段共通となっている。また、梱包されるトラクタ2は、車輪及び安全フレーム2aが取り外されたものであり、安全フレーム2aは、トラクタ2をコースタ5に載置した後、コースタ5の所定箇所に固定される。
【0010】
本実施形態では、前述した位置決め係合部4をコースタ5の左右側部にそれぞれ二個ずつ設けている。具体的には、L字プレートをコースタ5の外側面に溶着することにより、平面視山形状に突出する位置決め係合部4が形成される。そして、このようなコースタ5を用いて梱包体1を構成することにより、前述したように、コンテナ3内における梱包体1のコンテナ幅方向の位置を規定し、かつ、コンテナ3内における梱包体1のコンテナ幅方向の移動を規制することが可能になるが、本実施形態の梱包体1では、コースタ5が上下二段に構成され、上段のコースタ5に設けられる位置決め係合部4も隣接する梱包体1の位置決め係合部に係合するので、梱包体1の位置決めや移動規制がより確実になるだけでなく、各位置決め係合部4に作用する負荷を分散することができる。
【0011】
尚、本実施形態の梱包体1は、例えば、下記の手順で梱包・組立を行うことができる。
(1)上段及び下段のコースタ5にトラクタ2の本体を載せて固定する。
(2)上段及び下段のコースタ5に安全フレーム2aを固定する。
(3)下段のコースタ5にフロント受台6、リヤ受台7及びスジカイ8を取り付ける。
(4)上段のコースタ5をフロント受台6及びリヤ受台7の上に載せて固定する。
【0012】
叙述の如く構成された本実施形態によれば、トラクタ2を梱包状に支持し、該トラクタ2がコンテナ3の幅方向を向く姿勢でコンテナ3内に並列状に積載される梱包体1であって、該梱包体1の側面部に、隣接する梱包体1の側面部に設けられた位置決め係合部4との係合により、コンテナ3内における梱包体1のコンテナ幅方向の位置を規定し、かつ、コンテナ3内における梱包体1のコンテナ幅方向の移動を規制する位置決め係合部4を設けたので、コンテナ3内における梱包体1のコンテナ幅方向の位置決めが容易になるだけでなく、ズレ止め用の木材を設置・固定しなくても、コンテナ3内における梱包体1のコンテナ幅方向の移動を規制することが可能になる。その結果、コンテナ3に対する梱包体1の積み込み作業を大幅に簡略化し、その所要時間を大幅に短縮することができる。
【0013】
また、位置決め係合部4は、梱包体1の側面部から平面視山形状に突出しているので、位置決め係合部4の傾斜ガイド作用により、梱包体1を正確かつ容易に位置決めすることができるだけでなく、位置決め係合部4に作用する輸送時の横ずれ荷重を適度に分散し、梱包体1の必要強度を低下させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の実施形態に係る梱包体の概略平面図である。
【図2】本発明の実施形態に係る梱包体の積載例を示すコンテナ内部の概略平面図である。
【図3】本発明の実施形態に係る梱包体の積載例を示すコンテナ内部の平面図である。
【図4】本発明の実施形態に係る梱包体の斜視図である。
【図5】本発明の実施形態に係る梱包体の側面図である。
【図6】本発明の実施形態に係る梱包体の正面図である。
【図7】本発明の実施形態に係る梱包体のコースタを示す斜視図である。
【図8】本発明の実施形態に係る梱包体のコースタを示す側面図である。
【図9】本発明の実施形態に係る梱包体のコースタを示す平面図である。
【図10】本発明の実施形態に係る梱包体のフロント受台を示す斜視図である。
【図11】本発明の実施形態に係る梱包体のリヤ受台を示す斜視図である。
【図12】本発明の実施形態に係る梱包体のスジカイを示す斜視図である。
【図13】梱包体の積載手順を示すコンテナ内部の概略側面図である。
【図14】従来例に係る梱包体の積載例を示すコンテナ内部の概略平面図である。
【符号の説明】
【0015】
1 梱包体
2 トラクタ
3 コンテナ
4 位置決め係合部
5 コースタ
6 フロント受台
7 リヤ受台
8 スジカイ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
作業車両を梱包状に支持し、該作業車両がコンテナの幅方向を向く姿勢でコンテナ内に並列状に積載される作業車両用梱包体であって、該梱包体の側面部に、隣接する梱包体の側面部に設けられた位置決め係合部との係合により、コンテナ内における梱包体のコンテナ幅方向の位置を規定し、かつ、コンテナ内における梱包体のコンテナ幅方向の移動を規制する位置決め係合部を設けたことを特徴とする作業車両用梱包体。
【請求項2】
前記位置決め係合部は、梱包体の側面部から平面視山形状に突出していることを特徴とする請求項1記載の作業車両用梱包体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2008−1407(P2008−1407A)
【公開日】平成20年1月10日(2008.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−173980(P2006−173980)
【出願日】平成18年6月23日(2006.6.23)
【出願人】(000001878)三菱農機株式会社 (1,502)
【Fターム(参考)】