説明

作業車両

【課題】作業車両が傾斜地で連続作業をしている場合にも、燃料タンクの残存燃料におけるエンジンの駆動残時間を正確に算出し表示する。
【解決手段】燃料タンクの残存燃料を検出する燃料ゲージSE1、走行車体の傾斜角度を検出する傾斜センサSE2、時間検出用のタイマSE3、エンジンの回転数を検出するエンジン回転数センサSE4、表示装置22を備えた作業車両において、前記傾斜センサSE2が走行車体の一定角度以上の傾斜を検出し、この傾斜検出状態が所定時間連続したことを前記タイマSE3が検出すると、走行車体の傾斜度合いから燃料タンクの残存燃料を算出し、エンジン回転数センサSE4のエンジン回転数の検出情報に基づき、残存燃料におけるエンジンの駆動残時間を算出して表示装置22に表示するコントローラ21を設けたことを特徴とする作業車両の構成とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作業車両に関する。特に、作業車両におけるエンジンの駆動残時間表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
作業車両に備えた燃料タンク内の燃料の残量状態が、平面視において異なる箇所に位置するように分散配置された状態で燃料タンクに取り付けた複数の残量検出部にて検出され、その平面視での位置が異なる複数箇所での残量状態の検出情報に基づいて燃料タンク内の燃料残量を求め、燃料タンクが傾いた場合にもタンク内の燃料を適正に検出しようとしたのは、公知である(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11−200971号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、作業車両が傾斜地で連続作業をしている場合にも、残存燃料からエンジンの駆動残時間を正確に算出し表示しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、このような課題を解決するために次のような技術的手段を講じた。
請求項1の発明は、燃料タンクの残存燃料を検出する燃料ゲージ(SE1)、走行車体の傾斜角度を検出する傾斜センサ(SE2)、時間検出用のタイマ(SE3)、エンジンの回転数を検出するエンジン回転数センサ(SE4)、表示装置(22)を備えた作業車両において、
前記傾斜センサ(SE2)が走行車体の一定角度以上の傾斜を検出し、この傾斜検出状態が所定時間連続したことを前記タイマ(SE3)が検出すると、走行車体の傾斜度合いから燃料タンクの残存燃料を算出し、エンジン回転数センサ(SE4)のエンジン回転数の検出情報に基づき、残存燃料におけるエンジンの駆動残時間を算出して表示装置(22)に表示するコントローラ(21)を設けたことを特徴とする作業車両としたものである。
【0006】
請求項2の発明は、PTO軸の回転数を検出するPTO回転数センサ(SE5)を設け、前記傾斜センサ(SE2)が走行車体の一定角度以上の傾斜を検出し、この傾斜検出状態が所定時間連続したことを前記タイマ(SE3)が検出すると、走行車体の傾斜度合いから燃料タンクの残存燃料を算出し、エンジン回転数センサ(SE4)のエンジン回転数の検出情報、PTO回転数センサ(SE5)のPTO軸回転数の検出情報に基づき残存燃料におけるエンジンの駆動残時間を算出して表示装置(22)に表示するコントローラ(21)を設けたことを特徴とする請求項1に記載の作業車両としたものである。
【0007】
請求項3の発明は、走行車体にはソーラパネル(16)、蓄電用のバッテリ(17)を設け、該バッテリ(17)から前記複数のセンサ(SE1〜SE5)、コントローラ(21)及び表示装置(22)に電力を供給することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の作業車両としたものである。
【発明の効果】
【0008】
請求項1の発明によると、作業車両が傾斜地で連続作業をしている場合にも、傾斜状態の残存燃料を算出して、現在のエンジンの回転数からエンジンの駆動可能な残時間を算出表示するので、オペレータはエンジンの駆動残時間を知ることができ、事前に燃料切れによるエンジンの停止を防止しながら、円滑に作業を進めることができる。
【0009】
請求項2の発明によると、請求項1の発明の前記効果に加えて、PTO回転数センサ(SE5)の検出情報を加味して作業状態に応じたエンジンの燃料消費量を算出するので、作業状態でのエンジンの駆動残時間を正確に算出表示することができる。
【0010】
請求項3の発明によると、請求項1又は請求項2の発明の前記効果に加えて、ソーラパネル(16)で発電した電力を、複数のセンサ(SE1〜SE5)、コントローラ(21)及び表示装置(22)に供給するので、エンジンの省エネ運転をすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】トラクタの全体側面図
【図2】制御ブロック図
【図3】フローチャート
【図4】フローチャート
【図5】シート、フェンダ部の斜視図
【図6】トラクタの側面図、平面図
【図7】トラクタの平面図、正面図
【図8】トラクタの側面図
【図9】トラクタの平面図、正面図
【図10】キャビン部の斜視図
【図11】伝動機構図
【図12】伝動機構図
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面に基づいてこの発明を農業用トラクタに施した実施例について説明する。
トラクタTは、図1に示すように、車体前側部のボンネット1内にエンジン(図示省略)を配設し、エンジンの回転動力をミッションケース2内の主変速装置及び副変速装置を経由して左右前輪3,3及び左右後輪4,4へ伝達している。左右後輪4,4を左右フェンダ5,5で被覆し、左右フェンダ5,5の間にシート6を設けている。ボンネット1の後方にステアリングコラムを介してステアリングハンドル8を設けている。
【0013】
また、前記ミッションケース2の後側上部には、作業機昇降用の油圧シリンダ(図示省略)を内装しているシリンダケース11を配設し、シリンダケース11にリフトアーム12,12を上下回動自在に軸架し、昇降油圧シリンダ(図示省略)のピストンの伸縮作動により、リフトアーム12,12を上下回動するように構成している。ミッションケース2の後側部には、上部リンク13aと左右ロワーリンク13b,13bからなる三点リンク機構13を設けて、作業機である例えばロータリ耕耘装置(図示省略)を取り付け、リフトアーム12,12、リフトロッド14,14により昇降するように構成している。
【0014】
次に、農用トラクタTに備えているエンジンの駆動残時間表示装置について説明する。
この農用トラクタTには、電気的に燃料タンクの残存燃料を検出する燃料ゲージSE1と、車体の傾きを検出する傾斜センサSE2と、電気式のアワーメーター等の時間検出のできるタイマSE3と、エンジンの回転数を検出するエンジン回転数センサSE4と、PTO軸の回転数を検出するPTO回転数センサSE5を装備している。
【0015】
これらセンサを図2に示すように、コントローラ21の入力側に接続し、コントローラ21の出力側には、表示装置22を接続している。また、キャビン15のルーフ15aにソーラパネル16を取り付け、ソーラパネル16で発電した電力をバッテリ17に蓄電し、バッテリ17から前記センサ(SE1〜SE5)、コントローラ(21)及び表示装置(22)に供電するように構成している。
【0016】
前記構成により、コントローラ21は次のような制御をする。傾斜センサSE2が走行車体の一定角度(例えば5度)以上の傾斜を検出し、この傾斜状態が所定時間連続したことをタイマSE3が検出すると、走行車体の傾斜度合いから燃料タンクの残存燃料を算出し、エンジンの回転数、PTO軸の回転数からエンジンの燃料消費量を算出し、エンジンの駆動残時間を算出し、表示装置22に表示する。
【0017】
作業車両が傾斜地で連続作業をした後に平地に移動すると、急に燃料切れになる恐れがある。また、傾斜地での連続作業状態では燃料が多く表示されることがあり、燃料切れを起こすと、エンジンの再起動時にエア抜きを必要とする等の不具合が発生する。
【0018】
しかし、前記構成によると、オペレータは傾斜状態での作業が所定時間継続すると、残存燃料におけるエンジンの駆動残時間が算出表示されるので、事前に燃料切れによるエンジンの停止を防止しながら、円滑に作業を進めることができる。また、オペレータは燃料タンクの燃料による作業時間を知ることができ、圃場でのエンストを回避するし、圃場での燃料補給を回避できる。また、エンジン回転数及びPTO軸の回転数から燃料消費量を推測し、エンジンの駆動残時間を正確に表示するので、作業進行の予測が容易となる。
【0019】
次に、図3に基づき制御フローについて説明する。
本制御が開始されると、各種センサからの検出情報がコントローラ21に入力され(ステップS1)、走行車体が所定角度以上傾斜しているか否かを判定し(ステップS2)、Yesであると、この傾斜状態が所定時間以上継続しているか否かを判定する(ステップS3)。Yesであると、エンジン回転数が定格回転数付近か否かを判定する(ステップS4)。Yesであると、PTO軸の回転数は「一速」か否かを判定し(ステップS5)、Yesであると、走行車体の傾斜状態から残存燃料を算出し、残時間演算モード1により作業速度一速でのエンジンの駆動残時間を演算し表示装置22に表示する(ステップS6)。
【0020】
また、PTO軸の回転数は「一速」か否かを判定し、Noであると、PTO軸の回転数は「二速」か否かを判定し(ステップS7)、Yesであると、残時間演算モード2に基づき作業速度二速でのエンジンの駆動残時間を演算し、表示装置22に表示する(ステップS8)。また、Noであると、PTO軸の回転数は「三速」か否かを判定し(ステップS9)、Yesであると、残時間演算モード3に基づき作業速度三速でのエンジンの駆動残時間を演算し、表示装置22に表示する(ステップS10)。また、Noであると、残時間演算モード4に基づき作業速度四速でのエンジンの駆動残時間を演算し、表示装置22に表示する(ステップS11)。
【0021】
次に、図4に基づき他の制御フローについて説明する。
制御が開始されると、各種センサから検出情報がコントローラ21に入力されると(ステップS21)、走行車体が所定角度以上傾斜しているか否かを判定し(ステップS22)、Yesであると、この傾斜状態が所定時間以上継続しているか否かを判定する(ステップS23)。Yesであると、PTO回転センサSE5の検出情報から作業車体は作業状態か否かを判定し(ステップS24)、Yesであると、作業時残時間演算モード5に基づきエンジンの駆動残時間を演算し、表示装置22に表示する(ステップS25)。また、Noであると、非作業時残時間演算モード6に基づき非作業時におけるエンジンの駆動残時間を演算し、表示装置22に表示する(ステップS26)。
【0022】
次に、図5に基づき左右フェンダ5,5の他の実施例について説明する。
シート6の左右両側には左右フェンダ5,5を設けている。この右フェンダ5には前後方向の操作溝を形成し、例えば作業機昇降レバー31と、ミッションケース2内の副変速装置操作用の副変速レバー32とを移動操作自在に設け、左フェンダ5にはミッションケース2内の主変速装置操作用の主変速レバー33を移動操作自在に設けている。左右フェンダ5,5の左右両側部にハンドキャッチャ34,34を設け、左右ハンドキャッチャ34,34の内側面にLED発光体からなる手元灯35,…を前後方向に沿わせて所定間隔毎に多数設け、レバー表示の視認性を良好にし、夜間や夕暮れ時のレバー操作を快適、確実なものにしている。
【0023】
次に、図6に基づき安全フレーム41の他の実施例について説明する。
作業車両の後部にはシート6の後方から安全フレーム41を上方へ向けて立設し、安全フレーム41の上端部からサンバイザー42を前方へ延出し、シート6及びステアリングハンドル8の上方を覆うようにしている。そして、サンバイザー42のフレーム部に平面視で広いソーラパネル43を取り付け、シート6、ステアリングハンドル8、ボンネット1の後側部及び左右フェンダ5,5の上方部を覆うようにしている。
【0024】
しかして、ソーラパネル43で発電した電力を携帯電話等の電子機器の充電に利用したり、扇風機を駆動しオペレータに風を送って快適運転空間としたり、バッテリ(図示省略)の充電用とし、利便性を向上させることができる。
【0025】
次に、図7について説明する。サンバイザー42の中央部上面に中央ソーラパネル43Cを設け、中央ソーラパネル43Cの左右両側部にヒンジ44,44を介して左右ソーラパネル43L,43Rを回動自在に支持している。しかして、中央ソーラパネル43Cで機体中央部を覆い、左右ソーラパネル43L,43Rを左右に突出した受光状態としたり、機体側面に沿うように収納できるようにしている。
【0026】
次に、図8について説明する。作業車両の後部にはシート6の後方に位置するように支持フレーム41aを立設し、この支持フレーム41aに安全フレーム41の下端部を左右方向の軸41b回りに回動調節自在に支持している。安全フレーム41の上端部にはソーラパネル43の後側端部を左右方向の軸43a回りに回動自在に支持し、支持フレーム41aとソーラパネル43の後側部との間を屈折リンク61,61で連結している。前記構成によると、安全フレーム41を直立状態から後側下方へ回動し低くすると、屈折リンク61,61を介してソーラパネル43を水平状態に維持することができ、ソーラパネル43の発電効率を高めることができる。
【0027】
また、図9に示すように、ボンネット1の左右両側に左右ソーラパネル43L,43Rを取り付け、左右前輪3,3を覆うように構成してもよい。
次に、図10について説明する。
【0028】
作業車両のキャビン15のルーフ15aにソーラパネル43を取り付けて発電し、発電した電力をルーフ15a内のバッテリ17に蓄電し、エアコンユニット47に供給している。しかして、エアコンユニット47の送風口47a,47aからキャビン15内に冷気を供給し、クリーンエネルギーで冷房することができる。
【0029】
次に、図11に基づきミッションケース2内の伝動構成について説明する。
エンジン51の出力軸から主クラッチ装置52を介して走行伝動軸53に動力を伝達し、走行伝動軸53から更に主変速装置(図示省略)、副変速装置(図示省略)で変速し、左右後輪4,4へ動力を伝達している。また、走行伝動軸53からギヤG1,G2を介してPTO伝動軸54にPTO動力を分岐し、PTOクラッチ55を介してPTO伝動軸56に伝達し、PTO逆転装置57、ギヤG3、ギヤG4を経由してPTO軸58に動力を伝達している。また、PTO伝動軸56におけるPTO逆転装置57の上手側にギヤG5を取り付け、モータ60のギヤ60aをギヤG5に噛み合わせ、モータ60の動力でPTO伝動軸54をアシスト駆動できるようにしている。
【0030】
前記構成によると、PTO軸58の正転及び逆転伝動状態における過負荷時に、モータ60の動力でPTO伝動軸54をアシスト駆動し、過負荷状態を回避することができる。
次に、図12について説明する。PTO軸58にギヤG6を取り付け、モータ60のギヤをギヤG6に噛み合わせ、モータ60の動力でPTO伝動軸54をアシスト駆動できるようにしている。また、ソーラパネル43で発電した電力をバッテリ17に蓄電し、バッテリ17からモータ60に供電している。しかして、PTO回転数センサSE5の検出情報によりPTO軸58の過負荷駆動状態を検出すると、コントローラ21のモータ駆動指令によりモータ60によりPTO軸58をアシスト駆動し、過負荷駆動を回避することができる。
【符号の説明】
【0031】
16 ソーラパネル
17 蓄電用のバッテリ
21 コントローラ
22 表示装置
SE1 燃料ゲージ
SE2 傾斜センサ
SE3 タイマ
SE4 エンジン回転数センサ
SE5 PTO回転数センサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料タンクの残存燃料を検出する燃料ゲージ(SE1)、走行車体の傾斜角度を検出する傾斜センサ(SE2)、時間検出用のタイマ(SE3)、エンジンの回転数を検出するエンジン回転数センサ(SE4)、表示装置(22)を備えた作業車両において、
前記傾斜センサ(SE2)が走行車体の一定角度以上の傾斜を検出し、この傾斜検出状態が所定時間連続したことを前記タイマ(SE3)が検出すると、走行車体の傾斜度合いから燃料タンクの残存燃料を算出し、エンジン回転数センサ(SE4)のエンジン回転数の検出情報に基づき、残存燃料におけるエンジンの駆動残時間を算出して表示装置(22)に表示するコントローラ(21)を設けたことを特徴とする作業車両。
【請求項2】
PTO軸の回転数を検出するPTO回転数センサ(SE5)を設け、前記傾斜センサ(SE2)が走行車体の一定角度以上の傾斜を検出し、この傾斜検出状態が所定時間連続したことを前記タイマ(SE3)が検出すると、走行車体の傾斜度合いから燃料タンクの残存燃料を算出し、エンジン回転数センサ(SE4)のエンジン回転数の検出情報、PTO回転数センサ(SE5)のPTO軸回転数の検出情報に基づき残存燃料におけるエンジンの駆動残時間を算出して表示装置(22)に表示するコントローラ(21)を設けたことを特徴とする請求項1に記載の作業車両。
【請求項3】
走行車体にはソーラパネル(16)、蓄電用のバッテリ(17)を設け、該バッテリ(17)から前記複数のセンサ(SE1〜SE5)、コントローラ(21)及び表示装置(22)に電力を供給することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の作業車両。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2011−126417(P2011−126417A)
【公開日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−286563(P2009−286563)
【出願日】平成21年12月17日(2009.12.17)
【出願人】(000000125)井関農機株式会社 (3,813)
【Fターム(参考)】