説明

作業車両

【課題】本発明の課題は、切断された茎葉などの被切断物が刈刃上に残留し、切断性能を低下させる問題を解消することにある。
【解決手段】車体1の前部に自走しながら作物の先端部を切断処理する摘心作業用刈刃10を装備し、車体適所には前記摘心作業用刈刃10の刈刃上に強制風を吹き付けて被切断物を排除する送風手段27を設けてあることを特徴とする作業車両の構成とする。また、前記送風手段は、摘心作業用刈刃10の刈刃の全面にわたり刈刃後方より前方に向けて且つ刈刃の全面にわたって送風しながら摘心作業が行えるように構成してあること特徴とする作業車両の構成とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、自走しながら作物の摘心作業が行える作業車両に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、成育した大豆の茎の最上端部を剪定する摘心手段を備えた歩行型剪定機は、例えば、特許文献1によって知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−267018号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来構成のものでは、切断された被切断物が刈刃上に残留し、切断性能を低下させる問題があった。本発明はかかる問題点を解消することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この発明は、上記課題を解決すべく次のような技術的手段を講じた。
すなわち、請求項1記載の本発明は、車体(1)の前部に自走しながら作物の先端部を切断処理する摘心作業用刈刃(10)を装備し、車体適所には前記摘心作業用刈刃(10)の刈刃上に強制風を吹き付けて被切断物を排除する送風手段(27)を設けてあることを特徴とする作業車両とする。
【0006】
自走しながら圃場の作物に対して左右に往復動するバリカン式刈刃(10)が作用し、作物の先端部が切断処理される。
刈刃(10)上には送風機(27)からの強制風が常時吹き付けられ、刈刃上に残る葉や茎などの被切断物が吹き飛ばされて排除される。
【0007】
請求項2記載の本発明は、前記送風手段は、摘心作業用刈刃(10)の刈刃の全面にわたり刈刃後方より前方に向けて且つ刈刃の全面にわたって送風しながら摘心作業が行えるように構成してあること特徴とする請求項1記載の作業車両とする。
【0008】
作物先端部の摘心作業を行いながら、強制風が刈刃(10)の後方より前方に向けて吹き付けられ、しかも、刈刃の刈幅全面にわたって吹き付けられるので、被切断物が刈刃上に残ることなく刈刃前方に排除されることになる。
【発明の効果】
【0009】
以上要するに、請求項1の本発明によれば、作物に対する摘心作業を行いながら、刈刃上に強制風を吹き付けて被切断物を排除するので、被切断物の刈刃上での残留を防ぐことができ、切断性能を高く維持することができる。
【0010】
請求項2の本発明によれば、請求項1の発明効果を奏するものでありながら、強制風を刈刃の後方より前方に向けて、しかも、刈刃の全面にわたって吹き付けるので、除去作用が容易で、残留を確実に無くすことができ、切断性能をより高め、摘心作業能率が大幅に向上するものとなった。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】作物摘心装置を備えた作業車両の側面図
【図2】同上平面図
【図3】作業車両の要部の正面図
【図4】別実施例の要部の側面図
【図5】図1の要部の拡大側面図
【図6】薬液タンク及び操作ボックスの平面図
【図7】作業車両の別実施例の平面図
【発明を実施するための形態】
【0012】
この発明の実施例を図面に基づいて説明する。
図1及び図2は、大豆等の作物摘心装置を備えた乗用作業車両を示すものであり、この車体1の前部にエンジンEを搭載し、このエンジンEの回転動力を走行ミッションケ−ス2内の変速装置に伝え、この変速装置で減速された回転動力を前輪3と後輪4とに伝えるようにしている。機体後部側中央に運転席5が、その前方にはステアリングハンドル6が装備されている。
【0013】
車体1の前方側には、昇降シリンダ8の伸縮作動により対地面対して略平行姿勢を保って昇降する昇降リンク機構9が装備されている。昇降リンク機構9には、作物の先端部を切断処理するバリカン式の摘心作業用刈刃10が油圧モータ11によって駆動可能に装備されている。
【0014】
また、前記昇降リンク機構9部には、圃場の作物に薬液を散布する散布ノズル13、散布ホース14、散布ブームランス15等を有した薬液散布装置16が備えられている。機体後部に搭載された薬液タンク18内の薬液は、ポンプにより散布ホ−ス14を通じて散布ノズル13から噴出されるようになっている。
【0015】
前記昇降リンク機構9は、回動軸芯Q1,Q2を支点として上下動する上リンク9uと下リンク9dと前リンク(フレーム)9f等からなる。
摘心作業用刈刃10は、固定受刃10aと左右に往復動する可動刈刃10bとからなり、そして、可動刈刃10bは、偏心軸を有した油圧モータ11にて駆動する構成としている。また、かかる実施例では、油圧モータ11への油圧ホース17は、ブーム水平シリンダ19への油圧ホース20を付け替えて使用できるように共通化した構成としている。これによると、摘心装置専用の油圧ギヤポンプや油圧ホース等油圧配管する必要がなく、合理的で低コストの構成とすることができる。
【0016】
また、刈刃10の左右刈取幅は機体幅(前後輪の左右幅)より両外側方へ広くすることによって作物の摘心作業残しがなくなり、作業能率が向上する。なお、刈刃10の刈刃面は、機体進行方向と略直交する横方向に設けることで、作物の刈刃への入り込みが良くなり、切断精度が向上する。
【0017】
刈刃10の固定受刃10aは、散布ブームランス15の前側で支持ステー22を介して装着支持するように構成することで、刈刃の支持構成が簡単で容易にでき部品点数も少なくなるメリットがある。刈刃10の支持高さは、運転席に着座するオペレータより刈刃の刃先が見える位置に配置しておくと、作物先端部の摘心位置が決め易くなる。
【0018】
散布ノズル13を有した散布ブームランス15と一体的に設けた作物の摘心作業用刈刃10において、散布ブームランス15の後方近くに左右方向に横たわる横軸23を架設し、摘心作業用刈刃10と散布ブームランス15が一体的に横軸23を支点として回動できる構成としている。これにより、刈刃10の作物に対する作用角度を任意に決定でき、最も切断性能が良好な切断角度を決定することができる。
【0019】
また、薬液の散布作業時においても噴霧角を任意に決定でき、作物の内部まで薬液が進入でき、よりよい防除効果を得ることができる。
刈刃の角度調節は、刈刃位置より上方に配した調節ハンドル24の回動操作で、伸縮可能なアジャスタ25を介して行えるように構成してある。また、調節ハンドル24及びアジャスタ25は、刈刃位置より上方に配置することによって調節時に作物との干渉がなくなり、ハンドル操作が容易に行える。
【0020】
なお、縦フレーム(リンク)9fに装着されたブーム支持フレーム21と、該フレーム21から前方に突設する左右の連結部材26,26を介して連結支持される散布ブームランス15との間に、刈刃10と散布ブームランス15の回動支点である横軸23を設けた構成としている。散布ブームランス15とブーム支持フレーム21との間を前記アジャスタ25に代えて油圧シリンダで連結し、運転席近くに設ける遠隔操作スイッチの操作で油圧シリンダを伸縮作動させ、刈刃の角度調節を遠隔操作できるように構成することもできる。
【0021】
また、図3に示すように、昇降リンク機構9の前面に設けた前フレーム9fに、ブーム支持フレーム21をローリング軸40を介して左右ローリング自在に装着し、ブーム支持フレーム21と前フレーム9fを自動水平用シリンダ41にて連結し、そして、このローリング可能なブーム支持フレーム21に散布ブームランス15と摘心作業用刈刃10を装備した構成としている。ブーム支持フレーム21は、機体が傾いても水平状態を保持するので、作物の摘心位置が正確に決まり、所定位置で確実に摘心することができる。
【0022】
また、変形例として、スロープ(傾斜)センサ42は、刈刃部を除くブーム支持フレーム21又は散布ブームランス15上面に設けておくと、機体の傾きに対して、その都度オペレータが刈刃のローリング角度を修正しなくても良いので、操作性が向上する。
【0023】
薬液タンク18の後方部には送風手段として送風機(送風ファン)27が設置され、PTO軸31の駆動により送風発生するタービンを回転させるように構成している。
そして、送風機27により発生する強制風は、機体前方に向けて送風すべく配管された縦送風管28と、この縦送風管28より刈刃10の後側で左右横方向に配管された横送風管29と、この横送風管29より刈刃10上を前方に向けて送風すべく開口された数個の送風ノズル30…を介して刈刃の全面にわたって吹き付けられるようになっており、刈刃後方から刈刃前方に向けて送風しながら摘心作業が行えるように構成している。
【0024】
前記横送風管29は、刈刃10と略平行に配置することによって刈刃上面に送風される送風圧が略均等に作用することになり、残骸排除作用が効率よく的確に行える。また、横送風管29を昇降リンク機構9の上リンク9uと下リンク9dとの間に配管することで、昇降リンク機構と横送風管が同期して昇降することになり、刈刃の地面からの高さを任意に変更しても、刈刃と送風ノズルの位置関係が不変であり、送風による残骸排除性能が安定する。
【0025】
刈刃10及び横送風管29は、共にローリング可能なブーム支持フレーム21に設けることにより、両者共に適正な関係位置を保った状態で作用することになる。
また、変形例として、図4に示すように、横送風管29をブーム支持フレーム21の真下に設けることで、該横送風管の支持構成が容易で、ブーム支持フレームの下方空間を有効利用でき、コンパクトに配置構成することができる。
【0026】
更に、散布ノズル13にも、強制風が作用するように送風ノズル30を配置することによって、摘心作業中、粉砕された葉や塵埃が散布ノズルに付着するのを防止でき、散布ノズルをクリーンに維持することができる。
【0027】
なお、図5に示すように、刈刃切断角度θの角度調整は、送風ノズル30からの送風経路の範囲内で調整することが望ましいが、刈刃角度の調整と同時に送風角度も変更調整するものであれば、適正な関係を保った状態で残骸排除作用を的確に行うことができる
薬液タンク18近く(運転席横)に設置された操作ボックス33(図6参照)上には、防除コントローラ36、散布コック37、送風ファンスイッチ34、送風量を調節する風量調節レバー35等が設けられている。
【0028】
油圧モータ11にて刈刃10を往復動させる構成と、刈刃上に強制風を吹き付ける送風機27とを組み合わせた構成において、油圧モータ駆動スイッチ38のON操作に連動して送風機27の電磁クラッチ32をONにして送風を開始するよう構成しておくと、送風開始の操作忘れが無くなり、切断ミスのない安定した摘心作業が行える。なお、油圧モータ駆動スイッチ38をOFFにした場合は、同時に送風機も電磁クラッチをOFFにすることによって停止するものとする。
【0029】
また、車速に連動して刈刃の駆動速度を変化させるように構成しておくと、切断精度の安定化を図ることができる。例えば、車速センサ39の車速検出結果に基づきマイコンにて油圧モータ回転数を増減制御する構成とするものである。つまり、車速が速くなると、油圧モータの回転数が増大して刈刃の駆動速度を速くし、逆に車速が遅くなると、油圧モータ回転数が減少し刈刃の駆動速度を遅くする。また、車速(作業速)に応じて刈刃の駆動速度と送風機による送風量を自動調節するように構成することもできる。
【0030】
更に、圃場での旋回時は、刈刃の駆動を一時的に停止するように構成することで、切断作業を行わない区域では刈刃の停止によって安全作業が行えることになる。かかる制御手段としては、ステアリングハンドルの切れ角、或いは前輪の操舵角を検出するようにし、所定の角度以上の検出によって旋回と認識した場合には、刈刃の駆動を一時的に停止させるように自動制御する。また、当然ながら、この旋回が終了して通常の作業姿勢に戻った時には、自動的に刈刃の駆動を開始するように構成するものである。
【0031】
旋回時の刈刃駆動停止、旋回後の刈刃駆動開始作動に連動して、送風機の駆動をON.OFFする電磁クラッチ32を制御する構成にすることもできる。
走行速で変速制御する場合は、油圧モータ駆動スイッチ38をON操作しても、刈刃を駆動する油圧モータ11を作動させないように構成しておくことで、安全に走行することができ、また周囲の安全環境を確保することもできる。また、上記構成の変形例として、HST(油圧式無断変速装置)を装備した作業車両においては、規定の速度以上では油圧モータを作動させない構成とすることによっても安全走行が可能となる。また、同様に送風機も駆動させない構成とすることで、エネルギー消費を抑制することができる。
【0032】
図7に示す実施例において、本例と異なる点は、切断した茎葉を強制風にて吹き飛ばし排除するものにおいて、送風ノズル30からの強制風吹き出し方向を刈刃の長手方向(左右横方向)に沿わせるように送風ノズルを配置した点にある。つまり、図7例では、車両の左側に配置された縦送風管28の先端(前端)に、刈刃10上に沿って左端側から右端側に向けて送風する送風ノズル30を設けた構成としている。従って、この構成によれば、送風ノズルが一個で良いので、軽量化及びコスト低減化を図ることができ、また、前側の未刈作物に葉の残骸がふりかからないので次行程での切断性能が向上する。
【符号の説明】
【0033】
1 車体
10 摘心作業用刈刃
27 送風手段(送風機)
28 縦送風管
29 横送風管
30 送風ノズル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体(1)の前部に自走しながら作物の先端部を切断処理する摘心作業用刈刃(10)を装備し、車体適所には前記摘心作業用刈刃(10)の刈刃上に強制風を吹き付けて被切断物を排除する送風手段(27)を設けてあることを特徴とする作業車両。
【請求項2】
前記送風手段は、摘心作業用刈刃(10)の刈刃の全面にわたり刈刃後方より前方に向けて且つ刈刃の全面にわたって送風しながら摘心作業が行えるように構成してあること特徴とする請求項1記載の作業車両。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2011−67153(P2011−67153A)
【公開日】平成23年4月7日(2011.4.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−222193(P2009−222193)
【出願日】平成21年9月28日(2009.9.28)
【出願人】(000000125)井関農機株式会社 (3,813)
【Fターム(参考)】