説明

作業車両

【課題】作業車両の盗難防止装置において、既存のスイッチ群及び表示灯群を有効に活用して暗唱操作状態を設定し、コストの低減を図り盗難防止効果を高める。
【解決手段】作業車両の制御機能のON/OFF状態やスイッチのON/OFF状態を表示する表示灯(L1〜L13)を操作パネル(21)の表示画面に備え、制御用コントローラ(31)を備えた作業車両において、初期設定モードにおいて使用可能なスイッチの暗唱操作状態として、スイッチ群から複数のスイッチのON/OFF状態の組み合わせ配列を選択して設定可能に構成する。エンジンをOFFする際にすべてのスイッチ群をOFF操作してスイッチ群の表示灯(L1〜L13)をOFF状態とし、次いで作業車両の所定の運転操作を所定時間継続すると、作業車両の盗難防止機能モードに移行する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作業車両に関し、特に作業車両の盗難防止装置に関する。
【背景技術】
【0002】
作業車両の盗難防止装置において、エンジン始動キーにキー側記憶装置と通信機を備え、トラクタ側には、エンジンの停止毎に新たにパスワードを作成し、このパスワードをトラクタ側記憶装置と通信機を介してキー側記憶装置へ記憶させるコントローラを備え、オペレータがパスワードを覚える必要がなく、機械的に合いかぎを作成するだけではエンジンを始動できない盗難防止装置は、公知である(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−35977号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、作業車両の盗難防止装置において、作業車両が備えているスイッチ群の中から複数のスイッチのON/OFF状態の任意の組み合わせ配列を盗難防止用の暗唱操作状態として設定し、コストの低減を図りながら車両の盗難防止効果を高めようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1の発明は、操作パネル(21)の表示画面には作業車両の制御機能の自動ON/OFF状態とするスイッチ群及び該スイッチ群のON/OFF状態を表示する表示灯(L1〜L13)を備えている作業車両において、
初期設定モードにおいてエンジンの始動可能な暗唱操作状態として、スイッチ群の中から複数のスイッチのON/OFF状態の任意の組み合わせ配列を選択して設定可能にし、
エンジンをOFFにする際にすべてのスイッチ群をOFF操作状態にしてスイッチ群の表示灯をOFF状態とし、次いで作業車両の所定の運転操作を所定時間継続すると、作業車両の盗難防止機能モードに移行するようにし、
前記盗難防止機能が働いている状態では、エンジン始動時においてエンジン始動キーをキー穴の通電部に挿入し車両を通電状態とし、前記暗唱操作状態になるように複数の当該スイッチのON/OFF操作を実行し、次いで作業車両の所定の運転操作を所定時間継続すると通常運転モードに移行し、エンジンを始動可能にするコントローラ(31)を備えていることを特徴とする。
【0006】
請求項2の発明は、請求項1の発明において、作業車両が前記盗難防止モードの移行時には、エンジン始動キーをキー穴の通電部に挿入し車両を通電状態にすると、前記暗唱操作状態に該当する複数のスイッチに該当する複数の表示灯を点滅させるコントローラ(31)を備えていることを特徴とする。
【0007】
請求項3の発明は、請求項1の発明において、作業車両が前記盗難防止モードの移行時には、エンジン始動キーをキー穴の通電部に挿入し車両を通電状態にすると、前記操作パネル(21)の表示画面のすべての表示灯を点滅させるコントローラ(31)を備えていることを特徴とする。
【0008】
請求項4の発明は、請求項1乃至請求項3の発明において、初期設定モードにおいてスイッチ暗唱操作状態としてスイッチ群の中から複数のスイッチのON/OFF状態の組み合わせ配列を選択し設定するにあたり、2個以上のスイッチのON状態と2個以上のOFF状態を選択して設定するコントローラ(31)を備えていることを特徴とする。
【0009】
請求項5の発明は、請求項1乃至請求項4の発明において、前記通常運転モードにおいてエンジン始動キーをキー穴の通電部に挿入し前記暗唱操作状態のスイッチ操作の可能になった後に、外部電源によるエンジンの始動状態を検出すると、コントローラ(31)を作動不能にする機能をコントローラ(31)が備えていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
請求項1の発明によると、初期設定モードにおいてエンジンの始動可能な暗唱操作状態として、スイッチ群の中から複数のスイッチのON/OFF状態の任意の組み合わせ配列を選択して設定可能にし、エンジンをOFFにする際にすべてのスイッチ群をOFF操作状態にしてスイッチ群の表示灯をOFF状態とし、次いで作業車両の所定の運転操作を所定時間継続すると、作業車両の盗難防止機能モードに移行するようにし、盗難防止機能が働いている状態ではエンジン始動時においてエンジン始動キーをキー穴の通電部に挿入し車両を通電状態とし、暗唱操作状態になるように複数の当該スイッチのON/OFF操作を実行し、次いで作業車両の所定の運転操作を所定時間継続すると、通常運転モードに移行しエンジンを始動可能にするので、作業車両に備えているスイッチ群及び表示灯群を活用し、操縦者の好みの使用可能暗唱操作状態を設定することができ、コストの低減を図りながら作業車両の盗難防止を図ることができる。
【0011】
請求項2の発明によると、請求項1の発明の前記効果に加えて、作業車両が前記盗難防止モードの移行時には、エンジン始動キーをキー穴の通電部に挿入し車両を通電状態にすると、前記暗唱操作状態に該当する複数のスイッチに該当する複数の表示灯を点滅させるコントローラ(31)を備えているので、エンジン始動時にオペレータは盗難防止モードであることを容易に知ることができ、オペレータが複数のスイッチ操作を適正に実行することにより、エンジンの始動をすることができる。
【0012】
請求項3の発明によると、請求項1の発明の前記効果に加えて、作業車両が前記盗難防止モードへの移行時には、エンジン始動キーをキー穴の通電部に挿入し車両を通電状態にすると、操作パネル(21)の表示画面のすべての表示灯を点滅させるので、エンジンの始動時にオペレータは盗難防止モードであることを容易に知ることができ、オペレータが複数のスイッチ操作を適正に実行することにより、エンジンの始動をすることができる。
【0013】
請求項4の発明によると、請求項1乃至請求項3の発明の前記効果に加えて、初期設定モードにおいてスイッチ暗唱操作状態としてスイッチ群の中から複数のスイッチのON/OFF状態の組み合わせ配列を選択し設定するにあたり、2個以上のスイッチのON状態と2個以上のOFF状態を選択して設定するようにしたので、第3者には暗唱操作状態が分かりにくく車両の盗難防止効果を高めることができる。
【0014】
請求項5の発明によると、通常運転モードにおいてエンジン始動キーをキー穴の通電部に挿入し、暗唱操作状態のスイッチ操作の可能になった後に、外部電源によるエンジンの始動状態を検出すると、コントローラ(31)を作動不能にする機能をコントローラ(31)が備えているので、エンジンの不正な始動操作を防止し、車両の盗難防止効果を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】トラクタ全体の側面図である。
【図2】トラクタの操作パネルの表示画面の正面図である。
【図3】制御ブロック図である。
【図4】制御ブロック図である。
【図5】フローチャートである。
【図6】トラクタの操作パネルの斜視図である。
【図7】トラクタの操作パネルの正面図である。
【図8】通常制御曲線と省エネ制御曲線におけるエンジン回転数と出力、トルクとの関係を示す図である。
【図9】操作パネルの斜視図、操作パネルの表示画面の正面図である。
【図10】アームレスト及び昇降レバーの斜視図、側面図である。
【図11】操作パネルの表示画面の正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面に基づいて本発明を農用トラクタに施した実施例について説明する。まず、本発明を備えたトラクタの全体構成について説明する。
トラクタTは、図1に示すように、車体前側部のボンネット1内にエンジンEを配設し、エンジンEの回転動力をミッションケース2内の主変速装置(無段変速装置)及びギヤ式副変速装置を経由して左右前輪3,3及び左右後輪4,4へ伝達している。
【0017】
また、前記ミッションケース2の後側上部には、作業機昇降用の油圧昇降シリンダ5を内装している油圧ケース6を配設し、油圧ケース6の後側部にリフトアーム7,7を上下回動自在に軸架し、昇降油圧シリンダ5のピストン部の伸縮により、リフトアーム7,7を上下回動するようにしている。また、ミッションケース2の後側部には、上部リンク8aと左右ロワーリンク8b,8bからなる三点リンク機構8を設け、例えばロータリ耕耘装置10を連結し、リフトアーム7,7により昇降するようにしている。
【0018】
また、エンジンEの後方にハンドルポスト11を立設し、ハンドルポスト11内にハンドル軸(図示省略)を軸架し、ハンドル軸の上端部にステアリングハンドル13を取り付けている。ミッションケース2の上側にはフロア18を設け、フロア18上には前進ぺダル(図示省略)、後進ぺダル(図示省略)、左右ブレーキぺダル(図示省略)、クラッチぺダル(図示省略)、アクセルぺダル(図示省略)等を設けている。ステアリングハンドル13の後方にシート19を設けている。
【0019】
ハンドルポスト11の上部に操作パネル21を設けている。操作パネル21の表示画面21aには、図2に示すように、その上部には、サイドビュー表示灯L1、左右ブレーキぺダルの非連結表示灯L2、エンジンの予熱表示灯L3、燃料残量警告灯L4、エンジンオイルの減圧警告灯L5、ウインカパイロットランプ(左)L6、バッテリの充電警告灯L7、後部作業機の後進走行時の後部作業機自動上昇制御の入り状態を表示するバックアップ表示灯L8、ウインカパイロットランプ(右)L9、旋回走行時の後部作業機自動昇降制御の入り状態を表示するオートリフト表示灯L10、旋回走行時の前輪増速制御の入り状態を表示する前輪増速回転表示灯L11、車体自動水平制御の入り状態を表示する自動水平表示灯L12、車体傾斜制御の入り状態を表示する傾斜制御表示灯L13を設け、これらをコントローラ31の出力側に接続している。
【0020】
操作パネル21の表示画面21aの下側左側部には燃料表示計23を、下側中央部にはエンジンの回転数表示器24及びエンジン累計駆動時間表示器25を、下側右側部にラジエータの水温表示器26を設け、これらをコントローラ31の出力側に接続している。
【0021】
また、操作パネル21の表示画面21aの下方の操作部21bの左側部には、サイドビュー点灯スイッチSW1、ウインカパイロットランプ(左)L6をON/OFFする左操舵スイッチSW2を設け、操作部21bの右側部には、後進走行時に後部作業機を自動上昇する自動上昇スイッチSW3、ウインカパイロットランプ(左)L6をON/OFFする左操舵スイッチSW4、旋回走行時に後部作業機の自動昇降制御するオートリフトスイッチSW5、旋回走行時に前輪増速制御を入切する前輪増速旋回スイッチSW6、車体自動水平制御の入切をする自動水平入切スイッチSW7、車体傾斜制御入切スイッチSW8を設け、コントローラ31の入力側に接続している。
【0022】
また、車体には左右ブレーキぺダルの非連結状態を検出する左右ブレーキぺダル連結センサSE1、エンジンの予熱状態を検出する予熱検出センサSE2、燃料タンクの燃料の残量を検出する燃料残量検出センサSE3、エンジンオイルの減圧検出センサSE4、バッテリの蓄電量検出センサSE5、エンジンの回転数検出センサSE6、エンジン累計駆動時間検出センサSE7、ラジエータの水温検出センサSE8を設け、コントローラ31の入力側に接続している。
【0023】
次に、図2及び図3に基づきトラクタの盗難防止構成について説明する。
操作パネル21の表示画面21aには、車両に備えている制御機能のON/OFF状態とするスイッチ群及び該スイッチ群のON/OFF状態を表示する表示灯、警報灯L1〜L13を備え、メモリ機能付きのコントローラ31を備えたトラクタにおいて、エンジンをOFFにする際にすべてのスイッチ群SW1〜SW8をOFF操作状態として表示灯L1〜L13をOFFにし、例えばクラッチぺダルを所定時間(例えば2秒)以上踏み続けると、トラクタの盗難防止モードに移行するようにし、エンジン始動キーをキー穴から外しエンジンをOFFにすると、それ以降は所定の暗唱操作状態にスイッチ群を操作するまでは盗難防止モードを維持するようにしている。
【0024】
そして、前記盗難防止機能が働いている状態では、以後のエンジン始動時には、エンジン始動キーをキー穴の通電部に挿入し走行車両を通電状態としコントローラ31を通電状態とし、スイッチ群の中から複数のスイッチを選択操作し暗唱操作状態になるように所定のON/OFF状態にする暗唱操作を実行し、次いで、例えばクラッチぺダルを所定時間(例えば2秒)以上踏み込むと通常運転モードに移行し、次いで、エンジン始動キーを通電位置から始動位置に操作すると、エンジンを始動できる機能を前記コントローラ31に備えるようにしている。
【0025】
前記構成によると、トラクタの装備しているスイッチ群及び表示灯群を有効に活用し、操縦者の好みの暗唱操作状態を設定することができ、コストの低減を図りながらトラクタの盗難防止を図ることができる。
【0026】
また、暗唱操作状態としては、スイッチ群の中から例えば2乃至3個の複数のスイッチがON状態とOFF状態となる組み合わせ配列を選択し、例えば、次のように設定する。すなわち、サイドビユースイッチSW1のOFF状態、左右ブレーキぺダルの連結具を連結操作している左右ブレーキぺダル連結センサSE1の左右連結ON検出状態、前輪増速旋回スイッチSW6のON状態、自動水平入切スイッチSW7のON状態、後進時後部作業機の自動上昇スイッチSW3のOFF状態の組み合わせを操作可能になる暗唱操作状態として設定する。
【0027】
なお、前記暗唱操作状態は初期設定モードで設定するようにしている。
しかして、暗唱操作状態の設定後のエンジンの始動時においては、エンジン始動キーをキー穴の通電部に挿入し、走行車両及びコントローラ31を通電状態とし、前記暗唱操作状態になるように所定の複数のスイッチをON/OFF操作し、操作パネル21の表示画面21aの表示灯の点灯状態により適正な暗唱操作状態であることを確認する。次いで、エンジン始動キーを通電位置から始動位置に操作すると、エンジンが始動できるようにしている。
【0028】
また、前記盗難防止モードに移行中に、エンジン始動キーをキー穴の通電部に挿入し作業車両及びコントローラ31を通電状態にすると、前記暗唱操作状態に該当するスイッチ群の表示灯をすべて同時に点滅するようにし、オペレータに盗難防止モードの維持状態であることを知らせるようにしている。そして、オペレータが複数のスイッチ操作を適正に操作すると、前記すべてのスイッチに該当する表示灯の点滅を終了したり、警報器でエンジンが始動可能状態になったことをオペレータに知らせるようにしている。
【0029】
また、前記暗唱操作状態の設定にあたり、複数のスイッチを任意に選定し、その選定スイッチの2個以上をON状態とし、残余の複数のスイッチをOFF状態に設定するようにし、暗唱操作状態の解除操作を第3者には分かりにくくし、盗難防止機能を維持するようにしている。
【0030】
また、エンジン始動時における前記暗唱操作状態のスイッチ操作の途中に、例えば、エンジンの始動装置のコイルに外部電源が接続されたり、燃料カットソレノイドに外部電源が接続され、これらの検出情報がコントローラ31に入力されると、コントローラ31を初期セットアップ要求状態とし、トラクタ製造メーカのメンテナンスサービスによるコントローラ31の初期化作業の要求状態とし、コントローラ31を使用不能にするようにしている。しかして、その後はコントローラ31の初期化作業が実行されなければエンジンの始動不能状態が継続し、第3者の不正な操作を防止しトラクタの盗難防止効果を高めることができる。
【0031】
次に、図4及び図5に基づきトラクタの省エネ運転構成について説明する。
コントローラ31の入力側には、エンジンのスロットル弁センサSE11、エンジン回転数センサSE12、省エネモード入切スイッチSW11、走行・作業モード切替スイッチSW12、PTO入切センサSE13、主変速レバーの操作位置を検出する主変速レバー位置検出センサSE14を接続し、出力側には操作パネル21の表示画面21aを接続している。
【0032】
エンジンのスロットル弁の開度を検出するスロットル弁センサSE11の検出情報とエンジン回転数センサSE12の検出回転数からエンジンの負荷状態を判定し、エンジン負荷に余裕がある場合には、操作パネル21の表示画面21aに「エンジン負荷に余裕がある」旨表示するようにしている。
【0033】
そして、エンジンの負荷に余裕がある場合には、操作パネル21の表示画面21aにまず「走行変速を高速に変速できる余裕がある」旨の省エネ運転可能表示する。そして、所定時間内に前記表示の高速変速走行が実行され、次いで、高速変速状態で所定時間経過してもまだエンジンの負荷に余裕がある場合(また前記高速変速走行が所定時間内に実行されない場合)には、「エンジンの回転数を下げても作業ができる」旨の省エネ運転可能表示をするようにしている。
【0034】
それ以降においても同様にエンジンの負荷に余裕がある状態が所定時間継続する場合には、まず「高速変速可能である」旨の省エネ運転可能表示をし、次いで、「エンジンの回転数下げが可能である」旨の省エネ運転可能表示を交互に行ない、エンジンの最小回転数での作業を実現するものである。
【0035】
なお、図5はその制御フローチャートである。
前記構成によると、エンジンの負荷に余裕がある場合には、まず「高速変速走行が可能である」旨の省エネ運転可能表示をすることにより、所定の作業能率を維持しながら省エネ運転を実現し、次いで、更にエンジンの負荷に余裕がある場合には、「エンジンの回転数下げが可能である」旨の省エネ運転可能表示をすることにより、エンジンの回転数を下げた状態で所定の作業能率を維持しながら作業をすることができる。
【0036】
次に、図6乃至図8に基づきトラクタの省エネ運転制御構成について説明する。
操作パネル21には、通常運転モードと省エネモードとに切り替える省エネモード入切スイッチSW11と、省エネ運転の切替表示をする運転切替表示灯43と、通常運転モード、省エネ運転モード、通常運転モードと省エネ運転モードを自動的に切り替える自動選択モードと、路上走行省エネ運転モードとに切り替えるダイアルスイッチ41と、コントローラ31を備えている。また、単一の変速レバーの操作により、超低速から最高速までのすべての変速段数を選択でき、路上走行時にはアクセルレバー42の操作により自動変速が可能で、作業走行状態においては旋回走行時にはメモリ変速により旋回走行から直進走行に復帰すると所定車速に自動復帰し、オート四WD機能により二駆と四駆との自動切り替えが適切なギヤ変速で実行できるように構成し、表示画面21aの液晶表示画面21bには実行中の運転状態を表示するように構成している。
【0037】
このようなトラクタにおいて、省エネモード入切スイッチSW11を自動省エネ運転に切り替えた後に、所定時間以上連続してエンジンの負荷変動が生じた場合には、通常運転に復帰するようにしている。そして、通常運転に復帰した場合には、所定時間は自動省エネ運転に復帰しないようにしている。
【0038】
また、所定時間内に所定回数以上の作業モードの切り替えが生じた場合には、「通常運転」が適正な作業状態と判定し、操作パネル21の液晶表示画面21bに「通常運転モードが適切な運転状態である」旨を表示し、オペレータに知らせるようにしている。
【0039】
また、通常運転状態において、所定時間にわたりPTO検出センサがOFF検出を継続し、リフトアームセンサが上げ位置にある状態を検出継続した場合には、非作業状態と判定し、自動的に省エネ運転モードに切り替えるようにしている。
【0040】
なお、図8の通常制御曲線Nは通常運転モードにおけるエンジン回転数と出力との関係を示し、省エネ制御曲線Sは省エネ運転モードにおけるエンジン回転数と出力との関係を示すものである。また、通常トルク制御曲線NTは通常運転モードにおけるエンジン回転数とトルクとの関係を示し、省エネ制御曲線STは省エネ運転モードにおけるエンジン回転数とトルクとの関係を示すものである。
【0041】
前記構成によると、作業負荷が通常運転モードと省エネ運転モードとの中間にあるときには、通常運転モードでの運転を実行することにより、通常運転モードと省エネ運転モードとの頻繁な切り替えを防止し、作業状態の安定を図ることができる。
【0042】
次に、図9に基づき操作パネル21の表示画面21aの他の表示構成について説明する。
操作パネル21の表示画面21aには複数の表示灯を設け、表示画面21aには携帯電話接続用の接続インターフェイスを設け、操作パネル21の表示画面21aには液晶表示画面21bを設けている。そして、携帯電話45のケーブルを接続インターフェイスを経由してトラクタ側に接続すると、携帯電話45の液晶表示画面45aの表示内容の一部または全部を液晶表示画面21bに表示したり、また、トラクタのバッテリから携帯電話45の電池に充電できるようにし、また、携帯電話45で通話中の相手方の携帯電話45のGPS情報を取り込むことができるようにしている。
【0043】
トラクタの作業中は騒音や振動のために携帯電話45に着信があっても聞き取りにくいことが多い。しかし、前記構成によると、携帯電話45の着信内容を操作パネル21の液晶表示画面21bに表示することにより、オペレータはトラクタの正しい操作姿勢を維持しながら携帯電話45の着信内容を容易に把握することができる。
【0044】
次に、図10に基づきトラクタの後部作業機の昇降レバー49の操作構成について説明する。
シートの左右両側部にアームレスト48を設け、アームレスト48の前側先端部をレバー支持部48aとし、作業機昇降用の昇降レバー49を左右方向の軸回りに回動自在に軸支し、アームレスト48に昇降レバー49を一体的に組み付けたユニット構成としている。
【0045】
レバー支持部48aを中心線を左右方向に沿わせた円筒体48bと、該円筒体48bの左右両側部に左右方向の軸回りに回動調節可能な左右側板48c,48dと、円筒体48bの左右方向中央上側部に前後方向に沿うように形成した操作溝48eとで構成している。
【0046】
そして、円筒体48bに対して左右側板48c,48dを軸心線一致状態で回動調節自在に支持し、左右側板48c,48dには昇降レバー49を軸心線一致状態で軸支し、円筒体48bの前後方向に沿った操作溝48eから昇降レバー49の先端操作部を突出し、円筒体48bに対して左右側板48c,48dを左右方向の軸回りに回動調節し、昇降レバー49の操作範囲を前後に調節するように構成している。
【0047】
前記構成によると、昇降レバー49の操作範囲をオペレータの好みにあわせて、図10(B)に示すように後方に調節したり、あるいは、図10(C)に示すように前方に調節することができ、長時間作業での疲れを少なくすることができる。
【0048】
次に、図11に基づき操作パネル21の表示画面21aの他の実施例について説明する。
操作パネル21の表示画面21aの左右方向中央部にはエンジンの回転数表示器24を配設し、その左右両側部には各種表示灯を配設している。そして、エンジンの回転数表示器24の中央部には回転数の数字表示部24aを設け、数字表示部24aの内側には円形状に点滅表示部24b,…を設けている。
【0049】
そして、回転数表示器24の中央部にPTO表示部50を設け、左側部の左矢印の正転表示部50aと、右側部の右矢印の逆転表示部50bとを設け、PTOの正転入り状態では、点滅表示部24a,…の左側半分が反時計方向の点滅表示をし、また、PTOの逆転入り状態では、点滅表示部24a,…の右側半分が時計方向の点滅表示をするようにしている。
【0050】
前記構成によると、操作パネル21の表示画面の中央部を見ることにより、PTOクラッチの入切及びその回転方向を認識することができる。しかも、PTOクラッチの入り状態では回転方向を点滅表示により判り易く確実に確認することができ、安全な状態でロータリ耕耘作業等を実行することができる。
【符号の説明】
【0051】
21 操作パネル
31 コントローラ
SW1〜SW8 スイッチ
L1〜L13 表示灯

【特許請求の範囲】
【請求項1】
操作パネル(21)の表示画面には作業車両の制御機能の自動ON/OFF状態とするスイッチ群及び該スイッチ群のON/OFF状態を表示する表示灯(L1〜L13)を備えている作業車両において、初期設定モードにおいてエンジンの始動可能な暗唱操作状態として、スイッチ群の中から複数のスイッチのON/OFF状態の任意の組み合わせ配列を選択して設定可能にし、エンジンをOFFにする際にすべてのスイッチ群をOFF操作状態にしてスイッチ群の表示灯をOFF状態とし、次いで作業車両の所定の運転操作を所定時間継続すると、作業車両の盗難防止機能モードに移行するようにし、前記盗難防止機能が働いている状態では、エンジン始動時においてエンジン始動キーをキー穴の通電部に挿入し車両を通電状態とし、前記暗唱操作状態になるように複数の当該スイッチのON/OFF操作を実行し、次いで作業車両の所定の運転操作を所定時間継続すると通常運転モードに移行し、エンジンを始動可能にするコントローラ(31)を備えていることを特徴とする作業車両。
【請求項2】
請求項1の発明において、作業車両が前記盗難防止モードの移行時には、エンジン始動キーをキー穴の通電部に挿入し車両を通電状態にすると、前記暗唱操作状態に該当する複数のスイッチに該当する複数の表示灯を点滅させるコントローラ(31)を備えていることを特徴とする作業車両。
【請求項3】
請求項1の発明において、作業車両が前記盗難防止モードの移行時には、エンジン始動キーをキー穴の通電部に挿入し車両を通電状態にすると、前記操作パネル(21)の表示画面のすべての表示灯を点滅させるコントローラ(31)を備えていることを特徴とする作業車両。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3の発明において、初期設定モードにおいてスイッチ暗唱操作状態としてスイッチ群の中から複数のスイッチのON/OFF状態の組み合わせ配列を選択し設定するにあたり、2個以上のスイッチのON状態と2個以上のOFF状態を選択して設定するコントローラ(31)を備えていることを特徴とする作業車両。
【請求項5】
請求項1乃至請求項4の発明において、前記通常運転モードにおいてエンジン始動キーをキー穴の通電部に挿入し前記暗唱操作状態のスイッチ操作の可能になった後に、外部電源によるエンジンの始動状態を検出すると、コントローラ(31)を作動不能にする機能をコントローラ(31)が備えていることを特徴とする作業車両。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2013−23175(P2013−23175A)
【公開日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−163080(P2011−163080)
【出願日】平成23年7月26日(2011.7.26)
【出願人】(000000125)井関農機株式会社 (3,813)