説明

作物の栽培方法並びにその栽培方法に用いられる隔離資材

【課題】 本発明は、作物を時限的に隔離して育成調節を行い、毛管現象による水分を遮断することによって、乾燥した所で水分による生育を調節することを可能とし、また、設備施工の費用を抑え、連鎖障害による培土・資材交換を不要とする隔離資材及びこれを用いた作物の栽培方法及びその栽培方法に使用する隔離資材の提供を図る。
【解決手段】 作物を時限的に隔離して生育調整を行う栽培方法であって、播種時あるいは苗の植付時において、隔離資材を土壌中にあらかじめ敷設し、その後に播種あるいは苗の植え付けを行うことで、生育調節を行う。また、かかる栽培方法に使用する隔離資材の材質として、時間の経過とともに分解して土壌に還元される材質を採用する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、土壌で分解・還元される資材及びこれを用いた隔離生成調節に関する栽培方法である。
【背景技術】
【0002】
従来の生育調節法としては、土壌で分解されない資材による隔離ベット法がよく知られている。これらは自然や土壌条件に左右されずに育成調節が可能であり、肥料が土壌に流出しないため、少ない肥料で効率的に栽培が可能である。また、土壌汚染の影響を受けにくく、極めて有効な方法といえる。しかし、設備施工の費用が高く、連作障害による培土・資材交換の必要性が起こる。また、機械作業がやりにくいという問題点も生じている。
【0003】
ここで、上述の問題点を解決すべく、先行技術として、例えば、断熱材で成型されたベットの内部に培土を充填し、培土の上に液体肥料の供給管を設けると共に、熱媒体が循環する金属製内管の外側に、その長手方向に沿って、密閉した複数の金属製外管を取付け、この金属製外管の内部に減圧状態でそれぞれ作動液を封入したヒートパイプを、前記培土の内部に埋設したことを特徴とする隔離栽培 ベットがある(特開2003−000071)。しかし、この方法では、断熱材で成型されたベットは土壌で分解・還元される資材でなく、費用もかかり、さらに埋設したベットを掘り出す作業が必要となるため、作業工程が煩雑となる。さらに、組織培養により得た幼植物体を育成して親株とし、生長した短縮茎を苗条単位で分割することにより、複数の種苗源を得ることを特徴とするリモニウム属植物の種苗増殖方法(特開平08−196136)がある。しかし、これについては、親株から刈込み、挿し芽される増殖法に用いられるものであり、特定の品種に限定される。したがって、いずれによっても上記問題点を解決するには至っていない。
【特許文献1】特開2003−000071
【特許文献2】特開平08−196136
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
そこで、上記問題点に鑑み、本発明は、土壌で分解・還元される資材により、作物を時限的に隔離して育成調節を行い、毛管現象による水分を遮断することによって、乾燥した所で水分による生育を調節することを可能とし、また、設備施工の費用を抑え、連作障害による培土・資材交換を不要とする隔離資材及びこれを用いた栽培方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記目的を達成するため、本発明は、作物を時限的に隔離して生育調整を行う栽培方法であって、播種時あるいは苗の植付時において、時間の経過とともに分解して土壌に還元される材質からなる隔離資材を土壌中にあらかじめ敷設し、その後に播種あるいは苗の植え付けを行う栽培方法である。
【0006】
また、本発明は、前記栽培方法において、隔離資材の分解速度を変更することにより、作物の隔離期間を調整する構成を採用することもできる。
【0007】
さらに、本発明は、前記栽培方法に使用する資材であって、時間の経過とともに分解して土壌中に還元される材質からなる隔離資材である。
【0008】
またさらに、本発明は、前記隔離資材の材質が、紙または生分解性フィルムのいずれかからなる構成とすることができる。
【0009】
さらにまた、本発明は、前記隔離資材に、水抜き孔を設けた構成とすることも可能である。
【0010】
そして、本発明は、前記隔離資材に、切り取り用ミシン目を設けた構成を採用することもできる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、自然や土壌条件に左右されずに生育調整が可能であり、肥料が土壌に流出しないため少ない肥料で効率的に栽培が可能で、土壌汚染の影響を受けにくいという隔離栽培の利点を生かしつつ、従来のような大掛かりな設備施工を不要とし、生育調節の後は従来の栽培管理により作業が可能となるため、隔離栽培にかかる費用削減の実現できるという有利な効果を奏する。
【0012】
また、従来の隔離資材では、連作障害による培土及び資材交換の必要性が生じ、機械作業がやりにくいという問題点も有していた。しかし、本発明によれば、培土及び資材交換が不要であり、また、機械作業性が劣ることはない。したがって、従来に比して労力負担を大きく軽減することが可能となる優れた効果を奏する。
【0013】
さらに、土壌条件や生育に応じて隔離が不要になった場合、ミシン目等を設けておくことで、容易にフィルムを破ることができ、これによって畝全体に根を張らせることが可能となる。また、時間とともに土壌で分解・還元される資材を用いるため、従来のように土壌中に敷設したシート等を取り除く手間が不要となるという有利な効果を発揮することができる。
【0014】
さらに、本発明によれば、完全隔離をして灌水量で生育調節をすることが可能となり、仮に、灌水過剰になっても、畝の中に余分な水分が溜まることがないことから、根がフィルムを破った後、育成過剰になりにくくなるため、相対的に生育調節が可能となる効果が得られる。
【0015】
またさらに、本発明によれば、隔離資材に一以上の水抜き孔を設けることで、水分保有時間及び量についての、より肌理細やかな調整を図ることが可能となり、育成過剰を未然に防止することもできるという効果を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明は、作物を時限的に隔離して生育調整を行う栽培方法であって、播種時あるいは苗の植付時において、時間の経過とともに分解して土壌に還元される材質からなる隔離資材を土壌中にあらかじめ敷設し、その後に播種あるいは苗の植え付けを行うことで、肌理細やかな生育調節が可能であることを最大の特徴とする。以下、本発明にかかる作物の栽培方法並びにその栽培方法に用いられる隔離資材について、図面に基づいて説明する。
【0017】
図1は、本発明にかかる作物の栽培方法の第一の実施形態を示す斜視図である。該栽培方法は、作物を時限的に隔離して生育調整を行う方法であって、播種時あるいは苗の植え付け時において、時間の経過とともに分解して土壌に還元される材質からなる隔離資材を土壌中にあらかじめ敷設し、その後に播種あるいは苗の植え付けを行うものである。
【0018】
その作業工程としては、まず、平坦な土壌1における畝2が立てられる箇所を掘り下げ、その掘り下げた箇所にU字状の隔離資材3を敷設して、その上に畝1を立て、該畝2に播種又は苗の植え付けが行われる。かかる実施形態は、長期の隔離を必要とする場合の方法であって、その実施形態を採用することにより、培土が多く50日以上の隔離が可能となる。
【0019】
図2は、本発明にかかる作物の栽培方法の第二の実施形態を示す斜視図である。該栽培方法は、上記第一の実施形態にかかる栽培方法と基本的に相違はないが、隔離資材3の敷設形状を異ならせることによって作業工程上において若干の相違がある。すなわち、該実施形態における作業工程としては、まず、平坦な土壌1表面に平板状に隔離資材3を敷設し、その上に畝2を立て、該畝2に播種又は苗の植え付けが行われる。かかる実施形態は、作業工程が少なく最も簡易な方法である。
【0020】
図3は、本発明にかかる作物の栽培方法の第三の実施形態を示す斜視図である。該栽培方法は、前記第二の実施形態と同様、上記第一の実施形態にかかる栽培方法と基本的に相違はないが、隔離資材3の敷設形状を異ならせることによって作業工程上において若干の相違がある。すなわち、まず、平坦な土壌1に畝2を立て、該畝2の中心部分に溝を掘り、その溝にV字状の隔離資材3を敷設して、該隔離資材3の上から溝を埋戻し、その埋め戻した箇所へ播種又は苗の植え付けが行われる。かかる実施形態は、1ケ月程度の隔離または短期の隔離を必要とする場合の方法に最適である。
【0021】
次に、上記各実施形態にかかる栽培方法において使用する隔離資材3について説明する。該隔離資材3は、時間の経過とともに分解して土壌中に還元される材質からなる。その材質については、土壌中に還元するという性質上、紙等の木質系素材や、生分解性素材などを用いることが考え得る。すなわち、通常のプラスチック製品等と同じように使えて、しかも使用後は、自然界の微生物や分解酵素によって水と二酸化炭素に分解される自然に還るプラスチックであって、しかもダイオキシン等の有害物質が放出されることがないものを用いることが望ましい。
【0022】
また、隔離資材3は、その材質を変えることによって隔離期間の調整が可能である。すなわち、材質によって土壌中に還元される期間が異なり、使用の際には、目的隔離期間に応じた材質の隔離資材3を選択することになる。
【0023】
さらに、隔離資材3の形状については、図4に示すように、連続フィルム状とすることなどが考えられるが、前記目的を達成できる形状であれば、特に限定するものではない。
【0024】
図4は、本発明にかかる隔離資材3に1以上の水抜き孔4を有する場合の実施例を示している。孔の数・大きさ・間隔等については、生育する品種ごとに適するものを選択して使用する。
【0025】
また、図面に示すように、隔離資材3に切り取り用ミシン目5を設けた構成を採用することもできる。かかる構成を採用することにより、隔離資材3に力が加わることで、容易に該隔離資材3が破られることとなり、したがって、作物の生育過程において隔離不要となった場合に、人力によってあるいは成育した作物の根によって隔離資材3が破かれ、作物の根を畝2全体に張らせることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の第一の実施形態にかかる栽培方法を示す斜視図である。
【図2】本発明の第二の実施形態にかかる栽培方法を示す斜視図である。
【図3】本発明の第三の実施形態にかかる栽培方法を示す斜視図である。
【図4】本発明にかかる隔離資材の実施例を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0027】
1 土壌
2 畝
3 隔離資材
4 水抜き孔
5 切り取り用ミシン目


【特許請求の範囲】
【請求項1】
作物を時限的に隔離して生育調整を行う栽培方法であって、播種時あるいは苗の植付時において、時間の経過とともに分解して土壌に還元される材質からなる隔離資材を土壌中にあらかじめ敷設し、その後に播種あるいは苗の植え付けを行うことで、生育調節が可能になることを特徴とする作物の栽培方法。
【請求項2】
前記隔離資材の分解速度を変更することにより、作物の隔離期間を調整することを特徴とする請求項1に記載の作物の栽培方法。
【請求項3】
前記栽培方法に使用する資材であって、時間の経過とともに分解して土壌中に還元される材質からなることを特徴とする隔離資材。
【請求項4】
前記隔離資材の材質が、紙または生分解性フィルムのいずれかからなることを特徴とする請求項3に記載の隔離資材。
【請求項5】
前記隔離資材に、水抜き孔を設けたことを特徴とする請求項3または請求項4に記載の隔離資材。
【請求項6】
前記隔離資材に、切り取り用ミシン目を設けたことを特徴とする請求項3から請求項5のいずれかに記載の隔離資材。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−238874(P2006−238874A)
【公開日】平成18年9月14日(2006.9.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−253176(P2005−253176)
【出願日】平成17年9月1日(2005.9.1)
【出願人】(505101307)
【Fターム(参考)】