説明

使い捨ておむつ

【課題】便が排泄された時期を容易に認識することができる使い捨ておむつを提供する。
【解決手段】液透過性のトップシートと、液不透過性のバックシートと、これら両シートの間に配置された吸収体とを有し、前身頃と、後身頃と、これら前後身頃の間に位置する股下領域とから成る使い捨ておむつにおいて、
少なくとも前記股下領域の着用者の肛門が位置する領域において、前記トップシートには便の通過が可能な領域が形成され、前記吸収体は該トップシートにおける便の通過可能な領域に対応する領域には存在せず、かつ、前記バックシートには、少なくとも該吸収体が存在しない領域に透明領域が形成されていることを特徴とする使い捨ておむつ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、使い捨ておむつに関するものである。さらに詳しくは、本発明は、便が排泄された時期を容易に認識することができる使い捨ておむつに関するものである。
【背景技術】
【0002】
使い捨ておむつは、液透過性のトップシートと、液不透過性のバックシートと、これら両シートの間に配置された吸収体とから基本的に形成されており、着用時に排泄された尿等の排泄物を液透過性のトップシートを介して吸収体に保持し、液不透過性のバックシートにより、排泄物が吸収性物品の外に漏れ出すのを防ぐ構造になっている。そしてその用途に応じて好適に使用できるように展開型、パンツ型等、様々な形態のものが提案されており、乳幼児を始めとして成人失禁者まで広く使用されている。
【0003】
しかしながら、このような使い捨ておむつは、一度に多量の尿が排泄された場合には、吸収体が全ての尿を短時間で吸収できないため、吸収されない尿がおむつから漏れ出し、衣類を汚してしまうという問題点を有していた。
そのため、従来から、尿が排泄された時期を認識する方法が検討されており、吸収体あるいはバックシートの内側に、水分と接触した場合に、発色する物質を配置したおむつ(特許文献1、特許文献2)、変色する物質を配置したおむつ(特許文献3、特許文献4)、透明化あるいは消色する物質を配置したおむつ(特許文献5、特許文献6)、芳香を発生する物質を配置したおむつ(特許文献7)、等が開示されている。
【特許文献1】特開2003−190209号公報
【特許文献2】特表2003−516185号公報
【特許文献3】特開2003−190210号公報
【特許文献4】特開2003−210522号公報
【特許文献5】特開2002−369840号公報
【特許文献6】特開2003−70837号公報
【特許文献7】特開2002−369838号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、水分と接触することにより発色、変色あるいは消色する等の物質を吸収体あるいはバックシートの内側に配置した使い捨ておむつの場合、尿が排泄された時期を知るのには有効であるが、便はトップシートを通過することができないため、これらの方法では便が排泄された時期を知ることができないという問題点を有している。そのため、便、特に軟便が多量に排泄された場合には、軟便はトップシートを通過することなくトップシート上を拡散し、着用者の股間部に付着してしまい、便の排泄に気付くのが遅れた場合には、着用者の肌がかぶれたり、さらにおむつから漏れ出して衣類を汚してしまう場合もあるため、おむつの取り替えは、母親や介護者にとって大きな負担となっていた。
【0005】
本発明は、上記従来の使い捨ておむつの有する問題点を克服し、便が排泄された時期を容易に認識することができる使い捨ておむつを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記従来の使い捨ておむつの有する問題点を解決するための本発明は、以下の各発明を包含する。
【0007】
(1)液透過性のトップシートと、液不透過性のバックシートと、これら両シートの間に配置された吸収体とを有し、前身頃と、後身頃と、これら前後身頃の間に位置する股下領域とから成る使い捨ておむつにおいて、
少なくとも前記股下領域の着用者の肛門が位置する領域において、前記トップシートには便の通過が可能な領域が形成され、前記吸収体は該トップシートにおける便の通過可能な領域に対応する領域には存在せず、かつ、前記バックシートには、少なくとも該吸収体が存在しない領域に透明領域が形成されていることを特徴とする使い捨ておむつ。
【0008】
(2)前記トップシートにおける便の通過が可能な領域は、トップシートに形成されている開口部であることを特徴とする(1)記載の使い捨ておむつ。
【0009】
(3)前記トップシートにおける便の通過が可能な領域は、トップシートに形成されている網目状部分であることを特徴とする(1)記載の使い捨ておむつ。
【0010】
(4)前記トップシートにおける便の通過が可能な領域は、該トップシートの股下領域の中心部から後身頃側にかけて複数の切り込み線が形成されている領域であることを特徴とする(1)記載の使い捨ておむつ。
【0011】
(5)前記トップシートにおける便の通過可能な領域に対応する吸収体の領域に、厚さ方向に貫通する開口部が形成されていることを特徴とする(1)〜(4)のいずれか1項に記載の使い捨ておむつ。
【0012】
(6)前記股下領域の着用者の肛門が位置する領域より後身頃側の前記トップシートとバックシートの間に吸収体が配置されていないことを特徴とする(1)〜(4)のいずれか1項に記載の使い捨ておむつ。
【発明の効果】
【0013】
本発明の使い捨ておむつは、少なくとも股下領域の着用者の肛門が位置する領域において、トップシートには便の通過が可能な領域が形成され、該便の通過が可能な領域に吸収体が存在せず、かつ、バックシートには少なくとも一部に透明な領域が形成されている。このような構成の本発明の使い捨ておむつは、排泄された便がトップシート上に留まることなく吸収体を通過してバックシートに達するため、バックシートに形成された透明な領域によって便が排泄された時期を容易に知ることが可能であり、便の排泄に気付くのが遅れた場合に生じる前記の問題点を改善することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、図面を参照して、本発明の使い捨ておむつを詳細に説明するが、勿論、本発明はこれらによって何等制限されるものではない。
図1は、本発明の使い捨ておむつをトップシート側から見た場合の一部切り欠き平面図であり、図2は、図1に示す使い捨ておむつをX−X線に沿って切断した状態を示す断面図である。
図1及び図2において、使い捨ておむつ1は、液透過性のトップシート2と、液不透過性のバックシート3と、これら両シートの間に配置された吸収体4とから基本的に形成されており、前身頃5と、後身頃6と、これら前後身頃の間に位置する股下領域7とを有している。また、おむつ1の股下領域7の着用者の肛門が位置する領域には、トップシート2と吸収体4を貫通してバックシート3に達する開口部8が形成され、便が排泄された場合には、開口部8を通過してバックシート3に達するようになっており、さらに、バックシート3には透明な領域9が形成されている。
【0015】
また、使い捨ておむつ1には、股下領域7において長手方向両側縁に沿って脚周り弾性部材10が配置され、後身頃6の端部領域にはウエスト周り弾性部材11が配置され、前身頃5から後身頃6にかけての長手方向両側縁には一対の立体ギャザー12が配置され、さらに、後身頃6の両側縁にはおむつを着用者に装着して保持するためのファスニングテープ13が取付けられている。
【0016】
なお、図1では、股下領域の着用者の肛門が位置する領域において、トップシートに形成する便の通過が可能な領域をトップシートに開口部を設けることにより形成したが、網目状の部分を形成したトップシートを配置しても良く、また、例えば、着用者の肛門が位置する領域を含む股下領域の中心部から後身頃にかけて複数の切り込み線を有しており、排泄された便が該切込み線に沿ってトップシートを下方に押し広げて通過できるような多数のスリットを形成したトップシートを配置しても良い。このような多数のスリットに区画されているトップシート部材部分の場合、一旦通過した便が逆流することを阻止する逆止弁的な作用が期待できる。
また、図1では、股下領域の着用者の肛門が位置する領域において、吸収体が存在しない領域を吸収体に開口部を設けることにより形成したが、股下領域の着用者の肛門が位置する領域より後身頃側に吸収体を配置しないようにしても良い。
【0017】
図3は、本発明の使い捨ておむつをバックシート側から見た場合の展開平面図である。図3において、使い捨ておむつ1の股下領域7の開口部8が形成されている領域には、バックシート3面に透明な領域9が形成されている。このように、透明な領域9を形成することにより、透明な領域9を通して便が排泄された時期を容易に確認することができる。
また、おむつ1の前身頃5のバックシート3面には、ファスニングテープ13を止着するためのフロントシート14が配置されている。
【0018】
なお、図3では、透明な領域を図形で形成したが、絵柄、文字、記号等で形成することも可能であり、特に制限されるものではない。
また、透明な領域を形成する方法としては、バックシートが透明又は半透明な素材で形成されている場合にはそのまま用いることも可能であり、不透明な素材、例えばフィラーを配合したシート、あるいは、このようなシートに不織布を張合わせた複合シート等の場合には、熱溶融処理を施して透明な領域を形成することができる。
なお、上記実施例では、使い捨ておむつとして後身頃の両側縁部にファスニングテープ
を取付けた、いわゆるテープ型の使い捨ておむつについて説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、前後身頃の相対する両側縁部を接合してパンツ型に形成した、パンツ型の使い捨ておむつであっても同様の効果を得ることができる。
【0019】
以下、本発明において使用される材料について説明するが、本発明は、これらによって何等制限されるものではない。
【0020】
本発明において、液透過性のトップシートとしては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、その他の熱可塑性樹脂を原料とした合成繊維等からなる不織布に親水化処理を施したものが用いられる。
【0021】
本発明において、液不透過性、かつ、通気性のバックシートとしては、微孔を設けたポリエチレンシート、あるいは熱可塑性樹脂にフィラーを加えて延伸したシートのような透湿性のある液体不透過性のシートが用いられる。このようなシートを用いると、ムレが改善されるため快適な着用感が得られる。さらに、このようなシートの外側に不織布からなるカバーシートを貼り合わせた積層構造のシートを用いることもできる。
【0022】
本発明において、吸収体としては、通常の使いすておむつのような吸収性物品に使用されるものであればいずれも使用することができる。すなわち、綿状パルプと高吸収性ポリマー(SAP)を併用したもの、さらに熱融着繊維を加えたもの等を使用することができ、全体をティッシュのような親水性シートで包まれているものが好ましい。その他、親水性シートの片面にSAPの層を設けたもの、2枚の親水性シートの間にSAPを挟持したもの等のシート状の吸収体も使用することができる。また、吸収体の形状は、砂時計型でも矩形でも良い。
【0023】
本発明において、使い捨ておむつには、その長手方向に沿って一対の立体ギャザーを配置することが好ましい。立体ギャザーは、各種の素材により形成することができる。例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、その他の熱可塑性樹脂を原料とした合成繊維からなる通気性を有する撥水性の不織布を用いて形成することができる。あるいは、サイドフラップを形成する不織布として広幅のものを用い、サイドフラップを形成するとともにおむつの内側へ延出する部分で立体ギャザーを形成しても良い。さらに、トップシートとして広幅のものを用い、トップシートの吸収体の両側縁から延出する部分で立体ギャザーを形成しても良い。
【0024】
また、立体ギャザーの自由部の側縁部には伸縮弾性部材が配置されている。伸縮弾性部材としては、天然系、合成系のウレタン糸、糸ゴム、平ゴム等の通常の使いすておむつに使用される伸縮弾性部材をそのまま使用することができ、これらの伸縮弾性部材を伸長状態で自由部の側縁部に配置し、ホットメルト接着剤などにより接着固定される。
【0025】
本発明において、使い捨ておむつには、脚周り開口部及びウエスト周り開口部に沿って伸縮弾性部材を配置することができる。伸縮弾性部材としては、天然系、合成系のウレタン糸、糸ゴム、平ゴム等の通常の使いすておむつに使用される伸縮弾性部材をそのまま使用することができ、これらの伸縮弾性部材を伸長状態で配置し、ホットメルト接着剤などにより接着固定される。
【0026】
本発明において、ファスニングテープは、各種のフィルムまたは不織布シートを用いることができ、これらの材料を単独で、あるいは数種類の材料を積層して形成され、その一方の端部領域がおむつの後身頃の両側縁部に接着固定され、もう一方の端部領域には機械的ファスナーのフック材が取付けられる。また、フック材を取付けた部分の外側には、摘持部を有していることが好ましい。
【0027】
本発明において、ファスニングテープを止着可能なフロントシートとしては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、その他の熱溶融性樹脂を原料とした合成繊維を含有する不織布により形成することができる。上記不織布は、上記原料合成繊維の単体からなる繊維、又は2種類の合成樹脂原料を使用した芯鞘繊維を1種類又は複数混合したものから構成される。また、不織布は、熱溶融性合成繊維と他の天然繊維又は合成繊維の混合原料から製造されるものであってもよい。さらに、フロントシートを構成する不織布積層体における各層の不織布の構成繊維並びに製法は、同一であってもよく、異なっていてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0028】
本発明の使い捨ておむつは、少なくとも股下領域の着用者の肛門が位置する領域において、トップシートに便の通過が可能な領域が形成され、吸収体が存在せず、かつ、バックシートには少なくとも一部に透明な領域が形成されている。このような構成の本発明の使い捨ておむつは、便が排泄された場合には、トップシート上に留まることなく吸収体を通過してバックシートに達するため、バックシートに形成された透明な領域によって便が排泄された時期を容易に確認することが可能であり、便の排泄に気付くのが遅れた場合に生じる、着用者の肌に付着した便により肌がかぶれたり、便がおむつから漏れ出して衣類を汚してしまうというといった問題を防止することができるものであり、乳幼児を始めとして成人失禁者用の使い捨ておむつとして有用である。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の使い捨ておむつをトップシート側から見た場合の一部切り欠き平面図である。
【図2】図1に示す使い捨ておむつをX−X線に沿って切断した状態を示す断面図である。
【図3】本発明の使い捨ておむつをバックシート側から見た場合の平面図である。
【符号の説明】
【0030】
1:使い捨ておむつ
2:液透過性のトップシート
3:液不透過性のバックシート
4:吸収体
5:前身頃
6:後身頃
7:股下領域
8:開口部
9:透明な領域
10:脚周り弾性部材
11:ウエスト周り弾性部材
12:立体ギャザー
13:ファスニングテープ
14:フロントシート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液透過性のトップシートと、液不透過性のバックシートと、これら両シートの間に配置された吸収体とを有し、前身頃と、後身頃と、これら前後身頃の間に位置する股下領域とから成る使い捨ておむつにおいて、
少なくとも前記股下領域の着用者の肛門が位置する領域において、前記トップシートには便の通過が可能な領域が形成され、前記吸収体は該トップシートにおける便の通過可能な領域に対応する領域には存在せず、かつ、前記バックシートには、少なくとも該吸収体が存在しない領域に透明領域が形成されていることを特徴とする使い捨ておむつ。
【請求項2】
前記トップシートにおける便の通過が可能な領域は、トップシートに形成されている開口部であることを特徴とする請求項1記載の使い捨ておむつ。
【請求項3】
前記トップシートにおける便の通過が可能な領域は、トップシートに形成されている網目状部分であることを特徴とする請求項1記載の使い捨ておむつ。
【請求項4】
前記トップシートにおける便の通過が可能な領域は、該トップシートの股下領域の中心部から後身頃側にかけて複数の切り込み線が形成されている領域であることを特徴とする請求項1記載の使い捨ておむつ。
【請求項5】
前記トップシートにおける便の通過可能な領域に対応する吸収体の領域に、厚さ方向に貫通する開口部が形成されていることを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の使い捨ておむつ。
【請求項6】
前記股下領域の着用者の肛門が位置する領域より後身頃側の前記トップシートとバックシートの間に吸収体が配置されていないことを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の使い捨ておむつ。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−130187(P2006−130187A)
【公開日】平成18年5月25日(2006.5.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−324723(P2004−324723)
【出願日】平成16年11月9日(2004.11.9)
【出願人】(390036799)王子ネピア株式会社 (387)
【出願人】(000122298)王子製紙株式会社 (2,055)
【Fターム(参考)】