説明

使い捨てオムツ

【課題】肌のカブレや横漏れ等が防止されながらにして良好な使用感が得られる使い捨てオムツを提供する。
【解決手段】使い捨てオムツの着用時の股間部位置における吸収体の幅を狭くすると共に、この使い捨てオムツの着用時のオムツ背側位置及び腹側位置に配置された吸収体へと伸びる流体流通路を設けることにより、オムツの吸収能力の維持をしながらにして、オムツの着用者への快適性を向上させることにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は使い捨てオムツ、特に、肌のカブレや横漏れ等が防止されながらにして良好な使用感が得られる使い捨てオムツに関する。
【背景技術】
【0002】
使い捨てオムツにおいて肌のカブレや横漏れ等を防止すること、あるいは着用時の快適性を向上させるということは、従来からの課題とされており、それを実現するために様々な試みがなされている。これに関し、排泄物の横漏れを防止すべく、全体的に大量の吸収体を収容してオムツ自体の吸収能力をアップさせるような構造のものとしたような場合には、オムツ自体の柔軟性が犠牲になり、着用感が悪化してしまう。
【0003】
この一方で、着用感を向上させるために吸収体の量を減らしたような場合には、オムツの強度や吸収性が低下してしまい、モレが生じてしまうようになる。そしてまた、肌のカブレ等を防止するための構造として、オムツの通気性を良好にするための特別な構造を備えているようなものも、その構造に起因して、そこから排泄物が漏れ出してしまうというようなことがある。このような構造は特に、着用者が立っている場合には効果があるものの、被装着者が寝転んだり、床などに座ったりすると、問題が生じる場合が多い。
【特許文献1】実公平3−43834号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、肌のカブレや横漏れ等が防止されながらにして良好な使用感が得られる使い捨てオムツとして、特許文献1には、被装着者の肌と接触する側に導入口を設けた導入室を形成している使い捨てオムツが開示されている。この特許文献1に示した使い捨てオムツでは、液吸収体上に導入口が設けられており、液吸収体が長手方向に連続して複数個に分割され、かつ幅方向中央部相当位置にも導入口が形成されている。
【0005】
このような特許文献1に係る使い捨てオムツでは体液が、導入口・導入室を伝って、液吸収体長手方向端部からオムツ外部に漏れる可能性がある。また、幅方向中央部相当位置に導入口・導入室が形成されているためにそこを起点にして吸収体が変形する。(別の言い方をすれば、オムツ自体が「谷折れ」してしまう。)。このため、着用者に違和感が生じてしまうことになる。
【0006】
このようなことから、特許文献1に係る使い捨てオムツは、肌のカブレや横漏れ等が防止されながらにして良好な使用感が得られる使い捨てオムツとして十分なものであるとは言えず、従って、このようなオムツを世に提供するために更なる研究・開発が必要になる。
【0007】
本発明は以上のような課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、肌のカブレや横漏れ等が防止されながらにして良好な使用感が得られる使い捨てオムツを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
以上のような目的を達成するため7に、本発明においては、使い捨てオムツの着用時の股間部位置における吸収体の幅を狭くすると共に、この使い捨てオムツの着用時のオムツ背側位置及び腹側位置に配置された吸収体へと伸びる流体流通路を設けることにより、オムツの吸収能力の維持をしながらにして、オムツの着用者への快適性を向上させることにしている。
【0009】
本発明の好適な一実施形態において、この「流体流通路」は、透水性の表面シートの切り込み溝(スリット)として形成され、股間部位置に排泄された排泄物は、この流体流通路(切り込み溝(スリット))を伝って、オムツ背側位置及び腹側位置に配置された吸収体へと導かれ、ここで吸収される。
【0010】
このため、吸収体の幅が狭くなることにより減少した股間部位置での吸収力は、この「流体流通路(切り込み溝(スリット))を経由→股間部以外の別の部位の吸収体での吸収」により補償がなされることになるので、オムツ全体の吸収力は維持される。
【0011】
この一方で、股間部位置における吸収体の幅が狭くされているので、股間部分の嵩が小さく、このために着用したときに股間部分がゴワゴワせず、フィット性が良い。
【0012】
すなわち、本発明は以下のものからなる。
【0013】
(1) 着用時に身体側に向けられる透水性の表面シートと、着用時にオムツの外郭を形成する非透水性の防漏性シートと、この防漏性シートと前記表面シートとの間に配置されている吸収体と、からなる使い捨てオムツであって、前記吸収体は、オムツのメインの吸収体として配置されている本体吸収体とこの本体吸収体の両側に配置されている両側部吸収体とから構成されており、前記本体吸収体は、オムツの長手方向の中心線に沿って配置されている所定の幅を持った長帯状のものとして設けられていると共に、前記両側部吸収体は、前記本体吸収体の両側の部分であって、オムツの着用時に着用者の背に接することになる部分と腹に接することになる部分とに配置されている短冊状のものであり、オムツは更に、オムツの股間部相当位置において、吸収体を備えないものとされており、少なくとも当該股間部相当位置において、前記本体吸収体の両側に位置する箇所に、前記表面シートの切り込み溝(スリット)を備え、前記切り込み溝(スリット)は、前記両側部吸収体に至るようにされており、この切り込み溝(スリット)は、オムツの股間部相当位置に排出された排泄物が前記両側部吸収体へと導かれるための導入路として機能するものである使い捨てオムツ。
【0014】
(1)に係る使い捨てオムツによれば、股間部位置に排泄された排泄物は、切り込み溝(スリット(流体流通路))を伝って、オムツ背側位置及び腹側位置に配置された吸収体へと導かれ、ここで吸収される。このため、吸収体の幅が狭くなることにより減少した股間部位置での吸収力は、この「切り込み溝(スリット(流体流通路))を経由→股間部以外の別の部位の吸収体での吸収」により補償がなされることになるので、オムツ全体の吸収力は維持される。
【0015】
この一方で、股間部位置における吸収体の幅が狭くされているので、股間部分の嵩が小さく、このために着用したときに股間部分がゴワゴワせず、フィット性が良い。
【0016】
(2) 前記切り込み溝(スリット)は、前記両側部吸収体に至るようにされていると共に、当該両側部吸収体は、前記表面シートには接合されている一方で、前記防漏性シートには接合されていないものとされている(1)記載の使い捨てオムツ。
【0017】
本発明に係る使い捨てオムツによれば、前記切り込み溝(スリット)というのは、股間部に排泄された排泄物の両側部吸収体への導入路となるものである。ここで、(2)に係る使い捨てオムツによれば、両側部吸収体が「表面シートと接合されているが、前記防漏性シートとは接合されていない」というものであるため、導入路としての切り込み溝(スリット)を通ってきた排泄物が、「防漏性シートとは接合されていない」面の全面で吸収され得るようになるので、スリット経由の排泄物の吸収量が増加し、ひいてはオムツ全体の吸収量が増加することになる。
【0018】
このように、(2)に係る使い捨てオムツによれば、「表面シートと接合されているが、前記防漏性シートとは接合されていない」という構成を備えることにより、オムツ全体の吸収量を増加させることができる。
【0019】
(3) 前記本体吸収体は、股間部相当位置において幅が30mmから150mmの大きさである(1)または(2)記載の使い捨てオムツ。
【0020】
(3)の発明に係る使い捨てオムツによれば、本体吸収体の股間部相当位置における幅が30mmから150mmの範囲にあるため、着用者股間部が着用着にほどよくフィットすることになる。なお、この幅は、40mmから120mmの大きさであるのがより好ましく、60mmから90mmの大きさであるのがより一層好ましい。
【0021】
すなわち、(3)の発明に係る使い捨てオムツを着用者に着用した場合には、着用者の股間に対する適正な範囲となるため、ほどよくフィットするものである。
【0022】
(4) 前記スリットの長さが、オムツ長手方向の全長の10%から50%の長さである(1)から(3)いずれか記載の使い捨てオムツ
【0023】
(4)の発明に係る使い捨てオムツによれば、スリットの長さがオムツ長手方向の全長の10%から50%の長さに設定されている。ここで、10%未満となると、両側部吸収体に排泄物を導くのに問題が生じ、50%を越えると、スリットを通じてオムツの両端部から排泄部が漏れ出す危険性が増す。10%から50%の長さであると、このような不都合は無く、排泄物の導入路として適切な大きさであると共に、スリットがヨレたり、またはスリットから排泄物が漏れ出したりしない。
【0024】
なお、スリットの長さは、オムツ長手方向の全長の15%から20%の長さであることがより好ましい。
【0025】
(5) 前記スリットに並行して、オムツの背側の両側部吸収体から腹側の両側部吸収体にかけ、前記両側部吸収体の防漏性シート側に弾性部材が搭載された(1)から(4)いずれか記載の使い捨てオムツ。
【0026】
(5)に係る使い捨てオムツによれば、前記オムツについて両側部吸収体を包含するシートと吸収体の間に弾性部材を長手方向に搭載することにより、両側部吸収体を長手方向中央部に引っ張る応力を発生させることになり、これがスリットを開口させる力に変換され、着用時にスリットの部分が大きく開口し、ここに排泄物が流入し易くなる。弾性部材の搭載位置としては、スリットの外方であって、スリットと両側吸収体にかかる範囲であることが望ましい。
【0027】
このように、オムツに(5)のような弾性部材を搭載することにより、同じ大きさのスリットに対して、排泄物の導入口の開口径を大きくすることができ、排泄物の吸収体への吸収性をより高くすることができる。
【0028】
(6) 前記吸収体は、本体吸収体と両側部吸収体とが連続して、二つの錨(いかり)の尾部が互いに連結された形状の略連結錨形状になっているものである(1)から(5)いずれか記載の使い捨てオムツ。
【0029】
本発明によれば、前記本体吸収体と両側部吸収体とにより、全体として略連結錨形状の吸収体とされていることにより、錨形状の腕の部分で、スリットを流れてきた流体(排泄物)がブロックされ、外部に流れ出ないようにすることができる。
【0030】
本発明によれば、吸収体は、股間部を長さ方向に位置する本体吸収体と、オムツ背側と腹側とにおいて、本体吸収体の両側に位置する両側吸収体を設け、さらに本体吸収体の股間部における幅を狭くすることにより、前記オムツの着用者への着用を容易にすることができる。
【0031】
また、着用者の股間部というのは、通常は狭くなっているものであるところ、股間部において幅の広い吸収体を搭載したオムツを着用する場合には、オムツの吸収体が股間部でヨレたり折れたりするため、オムツの着用に手間がかかる場合が多い。しかしながら、(6)に係る使い捨てオムツでは、吸収体の「二つの錨(いかり)の尾部が互いに連結された形状の略連結錨形状」に基づいて、股間部に位置する本体吸収体の幅が狭くなっており、オムツを着用した際、股間部において吸収体がヨレたり折れたりすることはない。このように、(6)に係る使い捨てオムツは、着用者への着用を容易にすることができる。
【0032】
(7) 着用時に身体側に向けられる透水性の表面シートと、着用時にオムツの外郭を形成する非透水性の防漏性シートと、この防漏性シートと前記表面シートとの間に配置されている吸収体と、からなる使い捨てオムツにおいて、この使い捨てオムツの着用時の股間部位置における吸収体の幅を狭くすると共に、この股間部位置以外の位置に配置された吸収体へと伸び、当該吸収体に流体を導く流体流通路を設けることにより、オムツの吸収能力の維持をしながら、オムツの着用者への快適性を向上させる使い捨てオムツの設計方法。
【0033】
ここで、「快適性」というのは、着用の容易性、ムレの防止度が高められていること、長時間の軽快な動作を維持、というような、着用者における着用の際の感触や着用時の動作に関連して考慮される主な要因となるようなものをいう。
【0034】
使い捨てオムツを着用する着用者に快適な環境を提供するためには、排泄物の吸収性や防漏れ性に加え、着用者の動作性や装着感等を総合的に考慮する必要がある。そうして、単に吸収体等の材質や大きさだけでなく排泄物導入口の位置や吸収体の形状等オムツの構造をも考慮し、全体的な研究を行う必要が生じる。(7)に係る説明では、使い捨てオムツに対し、オムツ着用時の股間部位置における吸収体の幅を狭くすると共に、この股間部位置以外の位置に配置された吸収体に流体を導く流体流通路を設けることにより、オムツの吸収能力の維持をしながら、オムツの着用者への快適性を向上させることとしている。
【0035】
このような本発明によれば、オムツ股間部を長さ方向に位置する本体吸収体の幅を狭くすることにより、着用者の股間部における通気性が良くなり、着用者の股間部におけるムレが防止されるように設計することができる。
【0036】
通常のオムツでは、股間部における吸収体の幅が広くなっている。このため股間部から着用者の太もものつけねにかけ、吸収体が存在することにより、該部位の通気性が悪くなる。このことより、前記オムツの着用者の股間部がムレやすくなる。これに対し、本発明に係るオムツの設計方法では、股間部において本体吸収体の幅が狭くするようにされ、股間部において吸収体の存在しない部分ができるように設計がなされる。このため、股間部における通気性が良くなり、該部位におけるムレを防止することができるようになる。また、股間部において吸収体の幅を狭くすることにより、股間部における吸収体のヨレ、折れをなくすことができる。
【0037】
この一方で、本発明によれば、股間部位置以外の位置に配置された吸収体に流体を導く流体流通路を設けることにより、股間部に排泄された排泄物に対して、股間部位置以外の位置に配置された吸収体の吸収能力も利用することとしている。従って、本発明に係る使い捨てオムツの設計方法によれば、使い捨てオムツの吸収能力の維持がなされながら、オムツの着用者への快適性が向上することとなる。
【0038】
(8) 着用時に身体側に向けられる透水性の表面シートと、着用時にオムツの外郭を形成する非透水性の防漏性シートと、この防漏性シートと前記表面シートとの間に配置されている吸収体と、からなる使い捨てオムツにおいて、この使い捨てオムツの着用時の股間部位置における吸収体の幅を狭くすると共に、この使い捨てオムツの着用時のオムツ背側位置に配置された吸収体及び/またはオムツ腹側位置に配置された吸収体へと伸び、当該吸収体に流体を導く流体流通路を設けることにより、オムツの吸収能力の維持をしながら、オムツの着用者への快適性を向上させる使い捨てオムツの設計方法。
【0039】
(8)の発明によれば、股間部において吸収体の幅を狭くすると共に、この吸収体を、股間部長さ方向に位置する本体吸収体と、オムツ背側と腹側とにおいて本体吸収体の両側に配置された両側部吸収体と、に分けた形態となるように設計することにより、十分な吸収力を備えると共に機動性も高いオムツを製造することができる。このため、本発明によれば、着用者の動作によるオムツのヨレや折れが殆ど生じないような使い捨てオムツを製造することができる。
【0040】
このことにより、着用者が足を動かしても、例えば赤ちゃんがハイハイ等をしても、両側部吸収体のみが足の動作に従って動き、股間部における本体吸収体への影響をなくすることができる。
【発明の効果】
【0041】
以上説明したように、本発明によれば、肌のカブレや横漏れ等が防止されながらにして良好な使用感が得られる使い捨てオムツが得られる。即ち本発明に係る使い捨てオムツによれば、使い捨てオムツの着用時の股間部位置における吸収体の幅を狭くしたと共に股間部位置以外の位置に配置された吸収体へと伸びる流体流通路を設けたことにより、オムツの吸収能力の維持をしながらにして、オムツの着用者への快適性が向上することになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0042】
図1〜図8は、本発明の好適な実施形態に係る使い捨てオムツを図示したものである。本実施形態に係る使い捨てオムツは、図1に示されるように、まず、透水性の表面シート1と非透水性の防漏性シート3との間に、略連結錨形状の吸収体2がサンドイッチされることによって構成されている。
【0043】
これら表面シート1、吸収体2、及び防漏性シート3は、実施形態において、ホットメルト接着がなされる。これらのホットメルト接着による接着面は、図2に示すようなものであり、図2(A)に示されるように、表面シート1と吸収体2とは、吸収体2の略連結錨形状の縁取りの全周にわたってホットメルト接着がなされるのに対し、吸収体2と防漏性シート3とは、図2(B)に示されるように、その一部においてホットメルト接着がなされていない。このホットメルト接着がなされていない部分というのは、両側部吸収体に相当する部分であるが、詳細については後述する。
【0044】
図3は、本発明の一実施形態に係る使い捨てオムツの構成を示す図である。この図3に示されているように、略連結錨形状の吸収体2は、オムツの長手方向の中心線に沿って配置されている所定の幅を持った長帯状の本体吸収体4と、この本体吸収体4の両側に配置されている両側部吸収体5及び6とから構成されている。更に詳細に説明すると、本体吸収体4は、オムツ長さ方向中央部に位置し、オムツのメインの吸収体として配置されている。また、両側部吸収体5及び6は、オムツの背側及び腹側において、本体吸収体4の両側に位置する短冊状のものである。
【0045】
このような吸収体2は、この実施形態において、本体吸収体4に対して両側部吸収体5及び6が連続した一体型となっており、二つの錨(いかり)の尾部が互いに連結された形状である略連結錨形状のものを形成することとなっている。このため、吸収体2は、股間部においては、本体吸収体4の幅がそのまま吸収体2の幅となる一方で、オムツの背側及び腹側においては、本体吸収体4の幅と両側部吸収体5及び6の幅が緩和されたものとなる。従って、この吸収体2は、股間部(A−A’切断線付近)において吸収体の幅が狭くなっているということになる。
【0046】
また、両側部吸収体5及び6は、錨形状の腕の部分において(B−B’切断線付近)、本体吸収体4とは分離されている。更に、この図3では、本体吸収体4と両側部吸収体5及び6とは、部分的に分離した態様のものとなっているが、これらは完全に分離したものであってもよい。
【0047】
また更に、吸収体2が略連結錨形状のものであるがゆえに、オムツの股間部分に、吸収体が存在しない領域8が形成される、吸収体が存在しない部分は柔軟性に富むので、このような領域8が存在することにより、着用者の股の部分のゴワゴワ感が著しく低減されることになる。特に、吸収体は液体を吸収した後は硬くなるが、領域8においてはそのような影響がないため、本発明に係る使い捨てオムツは、排泄物の排泄後も、股の部分のゴワゴワ感が増幅されることなく、快適な状態で着用し続けることができる。
【0048】
因みに、股間部分において吸収体が存在しない領域8が形成されていることによって、股間部分では体液の吸収量の低下が生じるが、この吸収量の低下は、股間部以外の吸収体へと体液を導くスリット(切り込み溝)7の存在によって補償される。
【0049】
なお、吸収体2の材質としては、従来のものと同様に、パルプおよび吸収性ポリマーとレーヨンやコットンなどの天然繊維素材や、熱融着繊維のような合成繊維素材、ウレタンフォームなどのような発泡材等をあげることができる。
【0050】
吸収体2は、本体吸収体4並びに両側部吸収体5及び6ともにティッシュあるいは不織布などのシート状のもので包含されている。これらはホットメルト接着により吸収体2と接合されているが、両側部吸収体5及び6の本体吸収体4と分離されている部分は、接合されていない。これらはいずれも、親水性の不織布で覆われている。
【0051】
図3に示される実施形態においては、本体吸収体4の両側に4本のスリット(切り込み溝)7が入れられている。このスリット7により、両側部吸収体5及び6が、表面シート1及び吸収体包含シートと共に、本体吸収体4から部分的に分離されている。このスリット7は、股間部の狭くなっている部分にかかるように位置が設定されており、オムツの長手方向全長の10%〜50%の長さを有する。より好ましいのはオムツ全長の15%〜20%である。
【0052】
分離された両側端部吸収体5及び6の端面は、その周囲が、ホットメルト接着によって表面シート1と密接に接合されており、吸収体内包物が表面シート1から漏れ出ないようにされている。この実施形態において、本体吸収体4の外側面は、防漏性シート3とホットメルト接着により接合されている。同様に、両側部吸収体5及び6は、本体吸収体4と分離されていない部分については、その周囲において、表面シート1及び防漏性シート3とホットメルト接着で接合されている。この一方で、本体吸収体4から分離された両側部吸収体5及び6並びに本体吸収体4部の端部は防漏性シート3と未接合であり、後述するように、この未接合の部分において露出した両側部吸収体の表面が使えるので、十分な吸収量を確保することができるのである。
【0053】
前述したように、股間部の両側端部に位置する両側部吸収体5及び6は、吸収体が存在しない領域8を挟んで、長手方向において前後に分離されている。この分離された部分(即ち、吸収体が存在しない領域8)においては、防漏性シート3と表面シート1とが接合されていることは特に必要ないが、少なくともオムツ端部から所定の範囲においては、防漏性シート3と表面シート1とが接合されているのが望ましい。吸収体には、適度な剛性を出すために、適量の水をスプレー噴射させてプレス成型がなされている。不織布としては、サーマルボンド、スパンボンド、SMS(スパンボンド/メルトブローン/スパンボンド)などの様々なタイプのものを使用することができる。
【0054】
本実施形態に係る使い捨てオムツにおいては、図3に示されるように、スリット(切り込み溝)7の外側の製品の両側端部に、弾性部材(天然ゴム・オペロンなどの糸ゴム)9が取り付けられている。この弾性部材9は、図3に示されるようなオムツが開いた状態において伸長している状態で取り付けられており、好ましい実施形態では、この弾性部材9は、股ギャザーおよび立体ギャザーの構成要素の一部を構成している。
【0055】
図4は、図3の断面図を示したものである。特に、図4(A)は図3のA−A’断面図であり、図4(B)は図3のB−B’断面図であり、図4(C)は着用時におけるB−B’断面図を示したものである。図4(B)及び図4(C)を対比させてみれば明らかなように、オムツ着用時には、スリット7の部分が開口し、スリット7によってオムツの内部に形成されることとなった排泄物導入路12に流体が流れ込み易くなる。
【0056】
ここで、図5は、本実施形態に係る使い捨てオムツにおける流体(排泄物)の流れを示す図である。この図5に示されるように、股間部付近の流体(排泄物)は、スリット7及び排泄物導入路12を介して、股間部以外の場所にある吸収体に導かれることになるが、本実施形態に係る使い捨てオムツにおいては、スリット7及び排泄物導入路12が、両側部吸収体5及び6へと伸び、当該両側部吸収体5及び6に流体(排泄物)が導かれるように設計されている。このため、本実施形態に係る使い捨てオムツにおいては、股間部付近に排泄された流体(排泄物)は、両側部吸収体5及び6へと導かれ、当該両側部吸収体5及び6の部分で吸収されることになる。
【0057】
この場合において、図4(C)及び図5(B)からも明らかなように、本体吸収体4から分離された両側部吸収体5及び6並びに本体吸収体4部の端部は、防漏性シート3と未接合であり、この未接合の部分において露出した両側部吸収体の表面5a及び6aが使えるので、十分な吸収量を確保することができる。
【0058】
より詳しく説明すれば、図5中の矢印(ア)(イ)(ウ)は、それぞれ流体(排泄物)の流れの一例を示したものである。この図5に示されるように、本発明に係る使い捨てオムツにおいては、矢印(ウ)のように、スリット7及び排泄物導入路12を通じて本体吸収体4に吸収されるものもある一方で、矢印(ア)や(イ)のように、両側部吸収体5及び6の裏側に回ってここで吸収されるものがある(矢印(イ)などは矢印(ア)よりも深く潜入している)。
【0059】
このようにしたことにより、両側部吸収体5及び6の部分においては、そのオモテ面(着用者の身体に向く側の面)のほうでは、表面シート1を介して流体(排泄物)が吸収されることになる一方で、そのウラ面(着用者の身体に向く側と反対側の面)のほうでは、スリット7及び排泄物導入路12を通じてきた股間部の流体(排泄物)が吸収されることになるので、吸収体の使用効率が良く、その有効利用が図られることになる。
【0060】
図6は、本発明に係る使い捨てオムツの別の実施形態を示したものであり、図3に示したオムツについて、4本あったスリット7を2本のものに変更したものである。即ち、図3の実施形態において吸収体が存在しない領域8を挟んで、スリット7が長手方向で前後に分離されていたのであるが、この実施形態に係る使い捨てオムツにおいては、吸収体が存在しない領域8を通して一本化されている。
【0061】
このような構成とすることにより、股間部においてスリット7に入り込む流体(排泄物)の量を多くすることができる。そして更に、スリット7の長さを調整し、防漏性シート3と吸収体2の非接合部分の面積を適宜調整することにより、股間部における吸収量ないしは吸収速度、吸収力を調整することができる。
【0062】
図7は、本発明の更に別の実施形態を示す図である。この実施形態では、両側部吸収体5から両側部吸収体6にわたって、これら両側部吸収体5及び両側部吸収体6を両方とも包含する防漏性シート3の内側に弾性部材10を取り付けている。この実施形態において、弾性部材10は、両側部吸収体5及び両側部吸収体6を両方とも包含する防漏性シート3と両側部吸収体5(もしくは両側部吸収体6)の間に、オムツの長手方向に搭載されている。このような構成とすることにより、弾性部材10の付勢力が、オムツに対してその長手方向中央部に引っ張る応力を発生させることとなる。そして、この応力により、両側部吸収体5及び両側部吸収体6が立ち上がることとなるので、特にオムツ着用時に両側部吸収体5及び6が共に立ち上がり、スリット部分の開口径を大きくすることができる。
【0063】
弾性部材10は、ライクラや平ゴムなどの糸ゴムや、ウレタンフィルム等の面で伸縮するエラストマーシートなどを用いることができる。使用されるライクラの太さは100dtex〜1250dtexの範囲のものが望ましく、460dtex〜890dtexがより望ましい。使用する場合の倍率条件は1.2倍から3.0倍が好ましく、より好ましくは1.8〜2.5倍である。このようにライクラの太さを調整することにより、弾性部材10の強度を調整し、排泄物の吸収体への導入部分の大きさを調整することができる。
【0064】
この実施形態において、弾性部材10の搭載位置は、図7に示すように、スリット7と弾性部材9の間である。そして、弾性部材10は、吸収体が存在しない領域8をまたいで、両側部吸収体5から両側部吸収体6へ、それぞれその末端部の所定領域とある程度重なるような状態で取り付けられている。
【0065】
図8は、図7の断面図を示したものである。なお、図3、図4及び図7と同一の構成要素には同一符号を付し、その説明を省略する。この図8において、基本的な動作等は、前述の図4と同様であるが、この図8の形態においては、両側部吸収体の下部に搭載されている弾性部材10の作用によってスリット7の部分がより大きく開き、排泄物が導入される開口部となる所の大きさが大きくなる。このため、この実施態様に係る使い捨てオムツにおいては、スリット7の部分から股間部の排泄物が導入され易いという効果を有する。
【0066】
オムツを着用者に着用させる場合には、なるべく短時間に、スムーズに着用させることができるものであるのが好ましい。本発明に係るオムツでは、例えば図3や図7に示されるように、股間に接触する部分では吸収体の幅が狭い。これは、着用者の股間部の幅に適切に対応しており、これによって本発明に係る使い捨てオムツは、着用者の股間部にフィットすることになる。これに対し、従来のオムツ(例えば、特許文献1参照)のように、被装着者の股間部に対応する部分で吸収体の幅が広いと、オムツを着用するときに、股間部でオムツがヨレたり、折れたりする。ところが本発明に係るオムツでは、このような問題が生ぜず、着用者へのオムツの着用は容易であり、着用性に優れている。
【0067】
また、オムツを着用者が着用する場合、オムツによるムレが生じないことも重要なことである。特に、気温が高くて湿気の多い状態では、オムツの耐ムレ性が重要になる。本発明に係るオムツでは、図3や図7に示されるように、着用者の股間部に相当する部分の吸収体の幅が狭くなっているため、オムツの通気性(特に、股間部における通気性)に優れており、気温が高くて湿気の多い状態でもムレにくいものとなっている。
【0068】
図9は、本発明の一実施形態に係るオムツを組み立てた立体図を示したものである。この図9から明らかなように、本体吸収体4は股間中央部を背部から腹部にかけて位置する。また、本体吸収体4は従来の吸収体のもの(例えば、特許文献1参照)と比較して、股間部の部分の幅が狭い。また、吸収体2は、全体として略連結錨形状であり、その錨形状の腕の部分は比較的自由に動くことができる。言い換えれば、両側端部吸収体5及び6の末端の領域は、本体吸収体4から離されているものであるため、両側端部吸収体5及び6の末端の領域は、比較的自由に動くことができるものである。これは例えば、両側端部吸収体5及び6の末端の領域が本体吸収体4から離されておらず、くっついた形状(例えば、図10に示されるように、2個の凸形状のアタマ同士をくっつけたような形状)となっている場合と比較してみると、容易に理解することができる。
【0069】
この実施形態に係る使い捨てオムツによれば、図9にも示すように、吸収体2が全体として略連結錨形状であり、その錨形状の腕の部分(両側端部吸収体5及び6の末端の領域)が自由に動くことができるものであるがゆえに、オムツ自体の機動性が良く、着用した状態で歩行等をした場合において、その動作に本体吸収体4の部分が強く引っ張られてヨレたり、または折れてしまったり、というようなことがない。また、本体吸収体4からの応力が着用者の足に負荷をかけることも少ないことから、着用時の歩行性も良い。
【0070】
従って、本発明に係る使い捨てオムツを、例えば乳児が着用した場合でも、着用をした乳児がハイハイをしたり、寝返りをうったり、というような場合でも、オムツを着用していることが動作の支障となることはない。このように、本発明に係るオムツは、オムツ自体の機動性が良く、乳児等の複雑な動作にも好適に適応し得るものとなっている。
【図面の簡単な説明】
【0071】
【図1】本発明の好適な実施形態に係る使い捨てオムツの主要構成物を説明するための分解図である。
【図2】本発明の好適な実施形態に係る使い捨てオムツのホットメルト接着による接着面を説明するための図である。
【図3】本発明の一実施形態に係る使い捨てオムツの構成を示す一部透視図である。
【図4】図3の断面図である。特に、図4(A)は図3のA−A'断面図であり、図4(B)は図3のB−B'断面図であり、図4(C)は着用時における図3のB−B'断面図である。
【図5】本実施形態に係る使い捨てオムツにおける流体(排泄物)の流れを示す図である。
【図6】本発明に係る使い捨てオムツの別の実施形態を示す図である。
【図7】本発明の更に別の実施形態を示す図である。
【図8】図7の断面図である。特に、図8(A)は図7のC−C'断面図であり、図8(B)は図7のD−D'断面図であり、図8(C)は着用時における図7のD−D'断面図である。
【図9】本発明の一実施形態に係る使い捨てオムツを組み立てた状態を示す図である。
【図10】比較例としての吸収体の形状を示す正面図である。
【符号の説明】
【0072】
1 表面シート
2 吸収体
3 防漏性シート
4 本体吸収体
5 両側端部吸収体
6 両側端部吸収体
7 スリット(切り込み溝)
8 吸収体が存在しない領域
9 弾性材部
10 弾性材部
11 足
12 排泄物導入路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
着用時に身体側に向けられる透水性の表面シートと、着用時にオムツの外郭を形成する非透水性の防漏性シートと、この防漏性シートと前記表面シートとの間に配置されている吸収体と、からなる使い捨てオムツであって、
前記吸収体は、オムツのメインの吸収体として配置されている本体吸収体とこの本体吸収体の両側に配置されている両側部吸収体とから構成されており、前記本体吸収体は、オムツの長手方向の中心線に沿って配置されている所定の幅を持った長帯状のものとして設けられていると共に、前記両側部吸収体は、前記本体吸収体の両側の部分であって、オムツの着用時に着用者の背に接することになる部分と腹に接することになる部分とに配置されている短冊状のものであり、
オムツは更に、オムツの股間部相当位置において、吸収体を備えないものとされており、少なくとも当該股間部相当位置において、前記本体吸収体の両側に位置する箇所に、前記表面シートの切り込み溝(スリット)を備え、
前記切り込み溝(スリット)は、前記両側部吸収体に至るようにされており、この切り込み溝(スリット)は、オムツの股間部相当位置に排出された排泄物が前記両側部吸収体へと導かれるための導入路として機能するものである使い捨てオムツ。
【請求項2】
前記切り込み溝(スリット)は、前記両側部吸収体に至るようにされていると共に、当該両側部吸収体は、前記表面シートには接合されている一方で、前記防漏性シートには接合されていないものとされている請求項1記載の使い捨てオムツ。
【請求項3】
前記本体吸収体は、股間部相当位置において幅が30mmから150mmの大きさである請求項1または2記載の使い捨てオムツ。
【請求項4】
前記スリットの長さがオムツ長手方向の全長の10%から50%の長さである請求項1から3いずれか記載の使い捨てオムツ。
【請求項5】
前記スリットに並行して、オムツの背側の両側部吸収体から腹側の両側部吸収体にかけ、前記両側部吸収体の防漏性シート側に弾性部材が搭載された請求項1から4いずれか記載の使い捨てオムツ。
【請求項6】
前記吸収体は、本体吸収体と両側部吸収体とが連続して、二つの錨(いかり)の尾部が互いに連結された形状の略連結錨形状になっているものである請求項1から5いずれか記載の使い捨てオムツ。
【請求項7】
着用時に身体側に向けられる透水性の表面シートと、着用時にオムツの外郭を形成する非透水性の防漏性シートと、この防漏性シートと前記表面シートとの間に配置されている吸収体と、からなる使い捨てオムツにおいて、この使い捨てオムツの着用時の股間部位置における吸収体の幅を狭くすると共に、この股間部位置以外の位置に配置された吸収体へと伸び、当該吸収体に流体を導く流体流通路を設けることにより、オムツの吸収能力の維持をしながら、オムツの着用者への快適性を向上させる使い捨てオムツの設計方法。
【請求項8】
着用時に身体側に向けられる透水性の表面シートと、着用時にオムツの外郭を形成する非透水性の防漏性シートと、この防漏性シートと前記表面シートとの間に配置されている吸収体と、からなる使い捨てオムツにおいて、この使い捨てオムツの着用時の股間部位置における吸収体の幅を狭くすると共に、この使い捨てオムツの着用時のオムツ背側位置に配置された吸収体及び/またはオムツ腹側位置に配置された吸収体へと伸び、当該吸収体に流体を導く流体流通路を設けることにより、オムツの吸収能力の維持をしながら、オムツの着用者への快適性を向上させる使い捨てオムツの設計方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2006−149690(P2006−149690A)
【公開日】平成18年6月15日(2006.6.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−344996(P2004−344996)
【出願日】平成16年11月29日(2004.11.29)
【出願人】(000115108)ユニ・チャーム株式会社 (1,219)
【Fターム(参考)】