説明

使い捨てパンツおよび使い捨てパンツにおける付着片の着脱方法

【課題】パンツとしてもおむつとしても利用可能であり、おむつとして使用する際にも切り離し作業を容易に行うことができる使い捨てパンツを提供する。
【解決手段】使い捨てパンツ1は前腹部2と後背部3および、前腹部2と後背部3間に連なって設けられる股部4とを備える。前腹部2における股部4が連なる部分の左右両側に前腹部2を破断するための左右の破断部17a,17bが形成される。左右の破断部17a,17b間の中間相当領域に相当する前股部4a上に付着部23が設けられると共に、前腹部2における左右の破断部17a,17bよりも左右方向外方側の部分に左右の付着片22a,22bが設けられる。左右の破断部17a,17b位置に対応して、前腹部2の内外を連通状とする開口部17cが形成され、左右の付着片22a,22bに、開口部17cを通じて付着部23に着脱される付着部27,28がそれぞれ設けられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パンツとしてもおむつとしても利用可能な使い捨てパンツおよび使い捨てパンツにおける付着片の着脱方法に関する。
【背景技術】
【0002】
今日、腰回り、胴回りおよび脚回りに伸縮性を持たせて着用者の身体にフィットさせる使い捨てパンツの需要が高まってきており、子供用としても大人用としても利用されることが多くなってきている。
【0003】
このような使い捨てパンツは、前記腰回り等の伸縮性によって、着用時等の上げ下げがしやすいため、特に高齢者の排泄介護の際には、はかせたり脱がせたりの作業がしやすく好まれている。
【0004】
しかしながら、このような使い捨てパンツは、排泄物で汚れてしまった場合に新しい使い捨てパンツと交換するに際して、上に着用している衣服を脱がす必要があるという不便さがあった。
【0005】
そこで、必要に応じてパンツとしてもおむつとしても利用可能な使い捨てパンツが提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【0006】
この使い捨てパンツは、前身頃の左右両側に切断線を設け、その切断線の部分で前身頃を切り離し可能とすると共に、前身頃および後身頃の左右の接合部に接合された付着片を設けている。そして、切断線により前身頃を切り離した際に、左右の付着片により前身頃と後身頃との締結を行うようになっている。
【0007】
【特許文献1】特開平5−317356号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、前記特許文献1に記載の使い捨てパンツにおいては、切断線で切り離すに際して、前身頃における高さ方向全長にわたる長さを有しているため、切り離し長さが長くなり、切り離し難く、切り離し作業が面倒になるという問題があった。
【0009】
そこで、本発明の解決すべき課題は、パンツとしてもおむつとしても利用可能であり、おむつとして使用する際にも切り離し作業を容易に行うことができる使い捨てパンツおよびその使い捨てパンツにおける付着片の着脱方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の課題を解決するため、請求項1の発明では、略環状に連なる前腹部および後背部と、その前腹部および後背部間に連なって設けられる股部とを備え、前記股部に吸収体が設けられ、前記前腹部における前記股部が連なる部分の左右両側に前記前腹部を破断するための左右の破断部が形成された使い捨てパンツであって、前記左右の破断部の間に相当する前記前腹部の中間相当領域に、第1付着部が設けられると共に、前記前腹部における前記左右の破断部よりも左右方向外方側の部分に接合された左右の付着片が設けられ、前記左右の付着片に、前記第1付着部に対して着脱される第2付着部がそれぞれ設けられ、前記前腹部に形成された前記左右の破断部位置に対応して、前腹部の内外を連通状とする開口部が形成された構造としている。
【0011】
また、請求項2の発明では、請求項1の発明に係る使い捨てパンツにおいて、前記第1付着部と前記左右の付着片の前記第2付着部とが前記開口部を通じて着脱自在とされた構造としている。
【0012】
さらに、請求項3の発明では、請求項2の発明に係る使い捨てパンツにおいて、前記前腹部の前記中間相当領域における外面側に、前記左右の付着片の前記第2付着部が着脱可能な第3付着部が設けられている構造としている。
【0013】
また、請求項4の発明では、略環状に連なる前腹部および後背部と、その前腹部および後背部間に連なって設けられる股部とを備え、前記股部に吸収体を設け、前記前腹部における前記股部が連なる部分の左右両側に前記前腹部を破断するための左右の破断部を形成し、該左右の破断部の間に相当する前記前腹部の中間相当領域に第1付着部を設けると共に、前記前腹部における前記左右の破断部よりも左右方向外方側の部分に接合された左右の付着片を設け、該左右の付着片に、前記第1付着部に対して着脱される第2付着部をそれぞれ設けた使い捨てパンツにおける付着片の着脱方法であって、前記前腹部に形成した前記左右の破断部位置に対応して、前腹部の内外を連通状とする開口部を形成し、前記中間相当領域における前記開口部の内側に位置した部分に前記第1付着部を設け、前記開口部の外側より前記左右の付着片に設けた前記第2付着部を前記開口部を通じて前記第1付着部に着脱自在に係合させる方法としている。
【発明の効果】
【0014】
請求項1に記載の発明に係る使い捨てパンツによれば、パンツ、おむつの両機能を併有しているため、着用時等の上げ下げが容易である。
【0015】
また、前腹部に形成された左右の破断部位置に対応して、前腹部の内外を連通状とする開口部が形成された構造としているため、破断部における切り離し長さが開口部によって短くなり、切り離しやすく、おむつとして使用する際の切り離し作業を容易に行うことができる。
【0016】
さらに、開口部を目安として切り離し用の破断部位置が容易に視認でき、破断部位置が分かり易いという利点もある。
【0017】
また、請求項2に記載の発明によれば、第1付着部と左右の付着片の第2付着部とが開口部を通じて着脱自在とされた構造としているため、破断部の切り離し前後において、第1付着部と第2付着部との開口部を通じた係合により、開口部周縁部における前腹部の浮き上がりが有効に防止できると共に、各付着片の第2付着部の止め位置も容易に視認できる利点がある。
【0018】
さらに、請求項3に記載の発明によれば、前腹部の中間相当領域における外面側に、左右の付着片の第2付着部が着脱可能な第3付着部が設けられている構造としているため、左右の各付着片の第2付着部と、第1付着部もしくは第3付着部に対する選択的な係合によりウエスト回りの調整も容易に行うことができ、着用者の体形に応じたフィット性の向上が図れる利点がある。
【0019】
請求項4に記載の発明に係る使い捨てパンツにおける付着片の着脱方法によれば、前腹部に形成した左右の破断部位置に対応して、前腹部の内外を連通状とする開口部を形成し、中間相当領域における開口部の内側に位置した部分に第1付着部を設け、開口部の外側より左右の付着片に設けた第2付着部を開口部を通じて第1付着部に着脱自在に係合させる方法としているため、パンツ、おむつの両機能を併有しているため、着用時等の上げ下げが容易になると共に、破断部における切り離し長さが開口部によって短くなり、切り離しやすく、おむつとして使用する際の切り離し作業を容易に行うことができる。
【0020】
また、開口部を目安として切り離し用の破断部位置が容易に視認でき、破断部位置が分かり易いという利点もある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
<第1の実施形態>
<概略説明>
図1ないし図7を参照して、本発明の実施形態に係る使い捨てパンツ1について説明する。この使い捨てパンツ1は、図1ないし図7に示すように、略環状に連なる前腹部2および後背部3と、その前腹部2および後背部3間に連なって設けられる股部4とを備えた構成とされ、パンツとしてもおむつとしても利用可能となっている。なお、この使い捨てパンツ1の説明において、左および右とは着用者から見て左手側および右手側を指すものとする。
【0022】
前腹部2および後背部3とは、この使い捨てパンツ1における主に着用者の前腹部および後背部に面する部分を指す。前腹部2の左右の縁部と後背部3の左右の縁部とは互いに接合され、これによって前腹部2と後背部3とは略環状に連なっている。このため、使い捨てパンツ1の左右の縁部には、前腹部2の左右の縁部と後背部3の左右の縁部とを接合する左サイド接合部11aおよび右サイド接合部11bが形成されている。このサイド接合部11a,11bでの接合は、接着剤、例えばホットメルト接着剤による接着と超音波溶着(あるいは、加熱溶着)とのいずれか一方、またはその両方の併用により行われる。
【0023】
股部4とは、この使い捨てパンツ1における主に着用者の股部に面する部分を指し、その前股部4aおよび後股部4bがそれぞれ前腹部2および後背部3にそれぞれ連なっている。本実施形態では、股部4の前股部4aおよび後股部4bが前腹部2および後背部3にそれぞれ接着剤、例えばホットメルト接着剤により接合されている。なお、変形例として、股部4を後背部3と連続した部材により一体に形成してもよい。
【0024】
このように略環状に連なった前腹部2および後背部3の上縁部12,13によりウエスト開口部Qが形成されている。前腹部2の左前腹部2aの下縁部14a、後背部3の左斜め下の傾斜状の縁部15a、および股部4の左縁部16aにより左脚開口部Raが形成されている。前腹部2の右前腹部2bの下縁部14b、後背部3の右斜め下の傾斜状の縁部15b、および股部4の右縁部16bにより右脚開口部Rbが形成されている。
【0025】
<前腹部>
前腹部2は、図1に示すように、全体形状としては正面視略横長矩形状であり、左前腹部2a、右前腹部2b、およびそれらの中間に位置する中前腹部2cを備えている。中前腹部2cは本発明の中間相当領域に相当している。左前腹部2aと中前腹部2cとの間には、前腹部2を上下に縦断する左破断部17aが形成され、右前腹部2bと中前腹部2cとの間には、前腹部2を上下に縦断する右破断部17bが形成されている。中前腹部2cには、図6に示すように、股部4の前股部4aとの接合部分18が形成される。接合部分18での接合は、接着剤、例えばホットメルト接着剤を用いて行われる。破断部17a,17bは、本実施形態ではミシン目により形成され、この破断部17a,17bを破断することにより、図2ないし図5に示すように、前腹部2を破断部17a,17bの部分で切り離せるようになっている。
【0026】
特に、本実施形態においては、これら左右の破断部17a,17b位置に対応して、前腹部2の内外を連通状とするくり抜き状の開口部17cがそれぞれ形成されている。例えば、各破断部17a,17bの長さ方向に沿って細長矩形状の開口部17cがそれぞれ2個所に形成された構造とされている。
【0027】
左前腹部2aおよび右前腹部2bの上縁部12a,12bには、ウエスト用弾性部材19a,19bが左右方向に伸張された状態で取り付けられている。左前腹部2aおよび右前腹部2bの下縁部14a,14bには脚用弾性部材20a,20bが左右方向に伸張された状態で取り付けられている。左前腹部2aおよび右前腹部2bの上縁部12a,12bと下縁部14a,14bとの間の部分には、ボディ用弾性部材21a,21bが左右方向に伸張された状態で取り付けられている。これらの弾性部材19a,19b,20a,20b,21a,21bの収縮・伸張により前腹部2(特に、左前腹部2aおよび右前腹部2b)が着用者の腹部に沿うように柔らかくフィットすることができる。
【0028】
このような前腹部2は、図6に示すように、肌面側の内装シート57と、外側の外装シート58との間に弾性部材19a,19b,20a,20b,21a,21bを挟み込んで構成されている。
【0029】
左前腹部2aおよび右前腹部2bの外面側における中前腹部2c側のそれぞれの端部には、略シート状の左付着片22aおよび右付着片22bが接着剤、例えばホットメルト接着剤により接合されている。この付着片22a,22bは、破断部17a,17bを破断した際に、このパンツ1の止着のために用いられるものである。
【0030】
中前腹部2cが配置される前記中間相当領域に対応した位置、即ち股部4の前股部4aにおける外面側、いわゆるバックシート42(図6参照)外面側における前記各開口部17cに対応した位置に、適宜幅を有する細長矩形状の第1付着部に相当する付着部23がそれぞれ設けられている。この際、各付着部23は各開口部17cの領域をカバーすべく、各開口部17cよりも広い面積を有した構造とされている。
【0031】
また、本実施形態においては、左右の破断部17a,17b間に位置した中前腹部2cにおける外面側にも、適宜幅を有する細長矩形状の第3付着部に相当する付着部23aが設けられた構造とされている。
【0032】
前記付着片22a,22bは、略縦長帯状の本体部24と、その本体部24から自由端側に向けて延設された上下2片の張出し部25,26とをそれぞれ有している。本体部24の左右方向外方側端部は、図6に示すように、接着剤66、例えばホットメルト接着剤により、左前腹部2aおよび右前腹部2bにおける破断部17a,17b側の端部に接合されている。
【0033】
付着片22a,22bの各張出し部25,26端部における中前腹部2cに面する側の面(内面側)には、付着部27,28がそれぞれ設けられている。これらの付着部27,28は、第2付着部に相当するものであり、前股部4aに設けられた付着部23に対して各開口部17cを通じて着脱自在に付着されるように構成されている。また、各付着部27,28は付着部23aに対しても着脱自在に付着可能な構成とされている。
【0034】
前記各付着部23,23aの具体例としては、表面に微細なループ構造が密に形成された不織布、織布、編み物等を有するループ材が考えられ、付着部27,28の具体例としては、そのループ材に着脱自在に係合する微細なフック構造が表面に密に形成されたフック材が考えられる。さらに具体的には、付着部23,23aとしては、例えば、面ファスナーのループ材として好適に用いられる不織布、織布等を表面に有するプラスチックフィルム複合材が用いられる。また、付着部27,28としては、面ファスナーのフック材として好適に用いられる表面に密に形成されたピンを有するプラスチックフィルムが用いられる。あるいは、ループ材を別部材として前股部4aや中前腹部2cに接着剤、例えばホットメルト接着剤等により貼着するのではなく、前股部4aや中前腹部2cの外面側を表面処理してループ材(付着部23,23a)として機能させるようにしてもよい。
【0035】
また、付着部23,23aの他の具体例としては、粘着剤との繰り返し剥離性を有するように表面処理、例えばピーロイル加工されたプラスチックフィルム等が考えられ、付着部27,28の他の具体例としては、繰り返し利用可能な接着剤等が考えられる。
【0036】
なお、前記の中間相当領域における付着部23,23aおよび付着片22a,22bの付着部27,28の前記2つの具体例において、付着部23,23a側の構成と付着部27,28側の構成を入れ替えてもよい。
【0037】
また、付着片22a,22bの各張出し部25,26の先端部は、付着片22a,22bをつまみやすくするために、つまみ部31(図3や図4参照)となっている。このつまみ部31には、付着部27,28は設けられていない。
【0038】
このような構成により、右付着片22bの張出し部25,26をつまんで右付着片22bの付着部27,28を付着部23から引き剥がすと共に、右破断部17bを破断、即ち切り離し、この状態で張出し部25,26を右方向外方に引っ張ると、図2に示すように、右前腹部2bが右付着片22bと一体となって右側に展開する。同様に、左付着片22aの張出し部25,26をつまんで左付着片22aの付着部27,28を付着部23から引き剥がすと共に、左破断部17aを切り離し、この状態で張出し部25,26を左方向外方に引っ張ると、図3に示すように、左前腹部2aが左付着片22aと一体となって左側に展開する。このとき、中前腹部2cは股部4と接合された状態に保たれており、前股部4aの外側に残ることになる。
【0039】
このため、この使い捨てパンツ1は、図1に示すように、破断部17a,17bを破断する前の製品出荷時の状態では、前腹部2と股部4とが接合部分18によって固定されているため、パンツとして機能し、付着片22a,22b等の開閉手段のない通常の使い捨てパンツと同様に容易に上げ下げできるようになっている。また、この状態では、仮に付着片22a,22bと付着部23との係合が外れても、前腹部2と股部4とが別々になってしまうことがない。
【0040】
また、この使い捨てパンツ1をパンツ状態で着用させている場合において、後述する吸収体43が排泄物を吸収、保持した場合には、付着片22a,22bの係合を解除して、破断部17a,17bを切り離すことにより展開して、パンツ1を着用者から容易に取り除くことができる。この場合、着用者の衣服を脱がさなくとも、パンツ1の取外しができる。
【0041】
また、付着片22a,22bの係合を解除して破断部17a,17bを切り離し、前腹部2を展開して、パンツ1の内部の汚染状況を確認した後、付着片22a,22bを付着部23に係合させて、パンツ1を元のパンツ状態に戻すことができる。また、このパンツ1と尿取りパット等の補助パットとを併用しているときにも、付着片22a,22bを着脱して補助パットの交換等を容易に行うことができる。
【0042】
また、着用させる前に、パンツ1を図4に示す状態に展開しておいて着用者の臀部にあてがって、図3、図2、図1の順に閉じてゆくことにより、このパンツ1を通常の使い捨ておむつのように利用することもできる。この場合、着用者の衣服を脱がさなくとも、パンツ1の着用および取り外しができる。
【0043】
さらに、本実施形態においては、股部4における前股部4aの横幅方向領域内に位置して、中前腹部2cが備えられた構造とされているため、左右の付着片22a,22bを左右に展開した状態から閉じる作業を行う場合、前股部4aを着用者の前腹部位に当てがっておいて、その上側で左右の付着片22a,22bを前股部4aの付着部23もしくは中前腹部2cの付着部23aに止着する作業を行うことができ、開閉作業をスムーズに行うことができる。
【0044】
<股部>
股部4は、図4に示すように、全体形状としては展開すると前後方向に延びる略帯状の形態を有し、前股部4a、後股部4b、およびそれらの中間に位置する中股部4cを備え、主に中股部4cを中心として着用者の股間部にあてがわれる。前股部4aは、図3、図5および図6に示すように、中前腹部2cの内面側に重ね合わされた状態で接合部分18によって中前腹部2cと接合されている。後股部4bは、図4に示すように、後背部3の内面側に重ね合わされた状態で後背部3と接着固定されている。このような股部4の左縁部16aおよび右縁部16bには、脚用弾性部材40a,40bが縁部16a,16bの延設方向に伸張された状態で取り付けられている。
【0045】
股部4は、図7にも示すように、透液性のトップシート41と不透液性のバックシート42との間に、吸収体43を挟み込んで構成されている。吸収体43は、所定の横幅を有し、中股部4cを中心にして前後方向に帯状に広がっている。股部4の内面側における吸収体43の左右両側には、股部4の延設方向に沿って延びる起立部44a,44bが設けられている。
【0046】
例えば、トップシート41は透液性の不織布等により構成され、バックシート42は撥水性不織布等により構成される。また、吸収体43は、例えば、粉砕したパルプ繊維やセルロース繊維等の親水性繊維集合層に粒状の高分子吸収体を混合した塊をティッシュペーパーなどの紙シートまたは透液性不織布シート等の被覆シートで包み、所定形状に成形されたものである。
【0047】
トップシート41およびバックシート42の吸収体43と重ならない部分は、互いに対向する面同士が接着剤、例えばホットメルト接着剤によって互いに接合されている。より好ましくは、図7に示すように、トップシート41の横幅は、吸収体43の肌面側を覆い、かつバックシート42の横幅よりも若干狭く設定され、トップシート41の吸収体43を超えて前後左右に張り出した部分が、接着剤、例えばホットメルト接着剤によりバックシート42と接合されている。バックシート42におけるトップシート41の左右両側に張り出した部分の肌面側には、起立部44a,44bを構成する左右のサイドシート45a,45bが接着剤、例えばホットメルト接着剤によって接合されている。
【0048】
また、サイドシート45a,45bの前後方向の両端縁は、股部4の前後方向の両端縁に接着剤60、例えばホットメルト接着剤により接合されている。サイドシート45a,45bの左右方向内方側縁部は、前後方向に伸びる弾性部材46を包み込むようにして、封止部47にて熱溶着(または超音波溶着)等により固定されている。起立部44a,44bは、弾性部材46の収縮力によりその左右方向内方側縁部が縮められ、これによって図7に示すように着用者の肌に押し付けられる方向に起立する。
【0049】
また、本実施形態では、図4に示すように、股部4における前腹部2および後背部3の腰回り部3aと重なる重複部分において、左右の縁部を傾斜辺48a,48b,49a,49bとし、その横幅を前後方向の端縁側に向けて徐々に減少させている。
【0050】
この傾斜辺48a,48bにより、使い捨てパンツ1を上げ下げする際に、前股部2aが引っ掛かってめくれたり、折れ曲がったり、着用者の肌に影響を及ぼすのを防止し、スムーズに上げ下げすることができる。
【0051】
また、通常、後背部3と股部4とが重なる領域については、後背部3の収縮力が弱まる傾向にあるが、前記傾斜辺49a,49bによるトリム領域を形成することにより、後背部3の伸縮部分の面積が後背部3の上側に向けて徐々に増えてゆき、これによって後背部3が着用者の後背部にフィットしやすくなる。
【0052】
なお、股部4の構成の変形例として、吸収体43をシート41,42の間に挟み込むのではなく、吸収体43をシート42の肌面側に貼着し、シート41を省略する構成としてもよい。
【0053】
<後背部>
後背部3は、図2ないし図5に示すように、展開すると略矩形の左右下側の角を略斜めに切り落としたような形態を有し、着用者の背面側の腰回り部から臀部にかけた部分にあてがわれる。このため、この後背部3は、着用者の背面側の腰回り部に主に位置する平面視略横長帯状の腰回り部3aと、その腰回り部3aの下側に連なり着用者の臀部に主に位置する平面視略台形状の臀部3bとを備えている。腰回り部3aの上縁部13には、ウエスト用弾性部材51が左右方向に伸張された状態で取り付けられており、腰回り部3aのそれ以外の領域には、ボディ用弾性部材52が左右方向に伸張された状態で取り付けられている。後背部3の左斜め下の傾斜状の縁部15aには、脚用弾性部材53aが縁部15aに沿って伸張された状態で取り付けられており、後背部3の右斜め下の傾斜状の縁部15bには、脚用弾性部材53bが縁部15bに沿って伸張された状態で取り付けられている。これらの弾性部材51,52,53a,53bの収縮、伸張により後背部3が着用者の後背部および臀部にフィットしやすくなっている。
【0054】
特に、後背部3の臀部3bは、下側に向けて横幅が徐々に狭くなる構成とされていると共に、その左右の傾斜状の縁部15a,15bに脚用弾性部材53a,53bが設けられているため、脚用弾性部材53a,53bの収縮力により縁部15a,15bが縮められると、臀部3bが着用者の臀部にフィットしやすくなっている。
【0055】
なお、脚用弾性部材53a,53bは、臀部3bの左右の傾斜状の縁部15a,15bおよび下縁部15cに沿って連続的に臀部3bに取り付けられた後、少なくとも股部4の吸収体43と重なる部分54(図5参照)について、弱化処理が施されている。弱化処理とは、その部分54の弾性部材を切断したり、収縮力を弱める処理を行う等により、ノーテンション状態とすることである。これによって、脚用弾性部材53a,53bの収縮力によって吸収体43に不所望な歪み等が生じ、その吸収機能が低下するのが防止される。
【0056】
<その他の構成および各部の材料等>
なお、前腹部2に設ける左右の弾性部材19a,19b、弾性部材20a,20bおよび弾性部材21a,21bについては、前記脚用弾性部材53a,53bの場合と同様に、弾性部材19a,19b,20a,20b,21a,21bを中前腹部2cを介して左右方向に連続的に前腹部2に設けた後、弾性部材19a,19b,20a,20b,21a,21bの付着片22a,22b対応位置や中前腹部2cに位置する部分について、弱化処理を施すのが好ましい。
【0057】
また、付着片22a,22bの材料構成としては、不織布、織布、編布、プラスチップ材から適宜選択できる。中でも、スパンボンド法、エアースルー法、ポイントボンド法、メルトブロー法およびエアレイド法のうちの1つまたは複数の製法の組み合わせによって製造される不織布が好ましい。さらに、目付30〜100g/m2で、スパンボンド法若しくは、スパンボンド法とメルトブロー法とを組み合わせたSMS法により製造された不織布が強度の点から好ましい。最も好ましいのは、目付50〜85g/m2でスパンボンド法により製造された不織布である。材質としては、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエステル、ポリアミド等の合成繊維、パルプ、絹等の天然繊維から適宜選択できるが、好ましくはポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエステルといった合成繊維が利用でき、中でもポリプロピレン、ポリエステル繊維を主成分とするものは強度があり、好適である。最も好ましいのは、ポリエステル繊維である。
【0058】
また、弾性部材19a,19b,20a,20b,21a,21b,40a,40b,46,53a,53bとしては、通常使い捨てパンツに用いられる弾性伸縮材料(ポリウレタン糸、ポリウレタンフィルム、天然ゴム等)が用いられ、伸張状態でホットメルト接着剤、熱溶着、超音波溶着などの貼着手段によりパンツ1の所定部位に貼着される。
【0059】
以上のように、本実施形態に係る使い捨てパンツ1は、パンツ、おむつの両機能を併有しているため、着用時等の上げ下げが容易である。
【0060】
また、前腹部2に形成された左右の破断部17a,17b位置に対応して、前腹部2の内外を連通状とする開口部17cがそれぞれ形成された構造とされているため、破断部17a,17bにおける切り離しに際して、各破断部17a,17bの切り離し長さが開口部17cによって短くなり、切り離しやすく、おむつとして使用する際の切り離し作業を容易に行うことができ、使い捨てパンツ1の開放作業が容易となる。
【0061】
さらに、開口部17cを目安として切り離し用の破断部17a,17b位置が容易に視認でき、破断部17a,17bの切り離しに際して破断部17a,17b位置が分かり易く、この点からも作業性に優れる利点がある。
【0062】
また、左右の付着片22a,22bの付着部27,28と各付着部23とが各開口部17cを通じて着脱自在とされた構造としているため、破断部17a,17bの切り離し前や切り離し後において、付着部27,28と各付着部23との開口部17cを通じた係合により、前腹部2の開口部17c周縁部が押さえられ、開口部17c周縁部における中前腹部2cの浮き上がりが有効に防止できると共に、各付着部27,28の付着部23に対するの止着位置も容易に視認できる利点がある。
【0063】
さらに、本実施形態においては、中前腹部2cの外面側にも付着部23aが設けられているため、左右の各付着片22a,22bの付着部27,28と、付着部23もしくは付着部23aに対する選択的な係合によりウエスト回りの調整も容易に行うことができ、着用者の体形に応じたフィット性の向上が図れる利点がある。
【0064】
<製造工程>
次に、図8を参照して、使い捨てパンツ1の製造工程について説明する。すなわち、本実施形態では、図8に示すように、パンツ1を腰回りの左右の縁部で切断して展開したような構成の中間体76を、パンツ1の左右方向に複数連続的に連なった状態で形成する。この中間体76は、一方向に連続的に連なる前腹基材77と、同じく一方向に連続的に連なる後背基材78と、その前腹基材77および後背基材78の各単位区間Sごとに設けられた股部4とを備えて構成されている。そして、各単位区間Sごとに中間体76およびパンツ1の構造が形成さてゆくように構成されている。
【0065】
この際、股部形成工程で、股部4のバックシート42における所定の位置に、それぞれ付着部23を予め貼着している。また、前腹基材形成工程で、前腹基材77における所定の位置に、各破断部17a,17bを形成すると共に開口部17cを形成している。そして、開口部17c位置に各付着片22a,22bの各付着部27,28が対応配置されるように、各付着片22a,22bを予め貼着している。さらには、付着部23aを予め貼着している。
【0066】
そして、搬送方向Pに沿って順次供給されてくる前腹基材77と後背基材78にまたがって股部4が供給されると共に貼着される。この際、各付着部27,28と各付着部23とが開口部17cを通じて着脱自在に係合する。この状態の中間体76を図示しない所定の二つ折り工程で、その搬送方向Pに沿った折り返し部76aにて二つ折りにする。
【0067】
続いて、その二つ折りにした中間体76の前腹部2(前面側部分)と後背部3(背面側部分)とを、腰回りの左右のサイド接合部分11a,11bにて互いに接合し、続いて、左右方向に連なった状態で作成された各パンツ1を図示しない切断装置により切断する。
【0068】
<第2の実施形態>
図9は第2の実施形態を示しており、前記第1の実施形態と同様構成部分は同一符号を付し、その説明を省略する。
【0069】
即ち、第1の実施形態においては、左右の破断部17a,17b位置に対応して、それぞれ上下に離隔した2個所に開口部17cが形成された構造とされているが、本実施形態においては、それら2個所の前記各開口部17cが互いに連続状とされたより長い細長状の開口部17cが各破断部17a,17b位置に対応して形成された構造とされている。
【0070】
従って、本実施形態においても前述と同様の効果を奏すると共に、開口部17cが連続状とされた1個所であるため、各破断部17a,17bの切り離し長さをより短く構成できると共に、構造の簡素化も図れる利点がある。
【0071】
<第3の実施形態>
図10は第3の実施形態を示しており、前記第2の実施形態と同様構成部分は同一符号を付し、その説明を省略する。
【0072】
即ち、第1の実施形態や第2の実施形態においては、左右の破断部17a,17b位置に対応して形成された開口部17cを通じて、各付着片22a,22bの各付着部27,28が付着部23に着脱自在に係合する構造とされているが、本実施形態においては、左右の破断部17a,17b間に位置する中前腹部2cの外面側に第1付着部としての付着部23bが設けられ、各付着片22a,22bの各付着部27,28がその外面側に設けられた付着部23bに着脱自在に係合させる構造とされている。
【0073】
従って、本実施形態においても前述と同様の効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0074】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る使い捨てパンツの正面図である。
【図2】図1の使い捨てパンツの右破断部を破断して右前腹部を展開した状態を示す図である。
【図3】図2の使い捨てパンツの左破断部を破断して左前腹部を展開した状態を示す図である。
【図4】図3の使い捨てパンツの股部を展開した状態を示す図である。
【図5】図4の使い捨てパンツを反対側から見た図である。
【図6】図1におけるVI−VI線に沿った部分の断面図である。
【図7】図4におけるVII−VII線に沿った部分の断面図である。
【図8】使い捨てパンツの製造工程を説明するための図である。
【図9】第2の実施形態に係る使い捨てパンツの正面図である。
【図10】第3の実施形態に係る使い捨てパンツの正面図である。
【符号の説明】
【0075】
1 使い捨てパンツ、2 前腹部、2a 左前腹部、2b 右前腹部、2c 中前腹部、3 後背部、3a 腰回り部、3b 臀部、4 股部、4a 前股部、4b 後股部、4c 中股部、17a 左破断部、17b 右破断部、17c 開口部、18 接合部分、19a,19b ウエスト用弾性部材、20a,20b 脚用弾性部材、21a,21b ボディ用弾性部材、22a,22b 付着片、23,23a,23b 付着部、24 本体部、25,26 張出し部、27,28 付着部、31 つまみ部、40a,40b 脚用弾性部材、41 トップシート、42 バックシート、43 吸収体、44a,44b 起立部、45a,45b サイドシート、46 弾性部材、51 ウエスト用弾性部材、52 ボディ用弾性部材、53a,53b 脚用弾性部材、57 内装シート、58 外装シート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
略環状に連なる前腹部および後背部と、その前腹部および後背部間に連なって設けられる股部とを備え、前記股部に吸収体が設けられ、前記前腹部における前記股部が連なる部分の左右両側に前記前腹部を破断するための左右の破断部が形成された使い捨てパンツであって、
前記左右の破断部の間に相当する前記前腹部の中間相当領域に、第1付着部が設けられると共に、前記前腹部における前記左右の破断部よりも左右方向外方側の部分に接合された左右の付着片が設けられ、
前記左右の付着片に、前記第1付着部に対して着脱される第2付着部がそれぞれ設けられ、
前記前腹部に形成された前記左右の破断部位置に対応して、前腹部の内外を連通状とする開口部が形成されたことを特徴とする使い捨てパンツ。
【請求項2】
請求項1に記載の使い捨てパンツにおいて、
前記第1付着部と前記左右の付着片の前記第2付着部とが前記開口部を通じて着脱自在とされたことを特徴とする使い捨てパンツ。
【請求項3】
請求項2に記載の使い捨てパンツにおいて、
前記前腹部の前記中間相当領域における外面側に、前記左右の付着片の前記第2付着部が着脱可能な第3付着部が設けられていることを特徴とする使い捨てパンツ。
【請求項4】
略環状に連なる前腹部および後背部と、その前腹部および後背部間に連なって設けられる股部とを備え、前記股部に吸収体を設け、前記前腹部における前記股部が連なる部分の左右両側に前記前腹部を破断するための左右の破断部を形成し、該左右の破断部の間に相当する前記前腹部の中間相当領域に第1付着部を設けると共に、前記前腹部における前記左右の破断部よりも左右方向外方側の部分に接合された左右の付着片を設け、該左右の付着片に、前記第1付着部に対して着脱される第2付着部をそれぞれ設けた使い捨てパンツにおける付着片の着脱方法であって、
前記前腹部に形成した前記左右の破断部位置に対応して、前腹部の内外を連通状とする開口部を形成し、
前記中間相当領域における前記開口部の内側に位置した部分に前記第1付着部を設け、前記開口部の外側より前記左右の付着片に設けた前記第2付着部を前記開口部を通じて前記第1付着部に着脱自在に係合させることを特徴とする使い捨てパンツにおける付着片の着脱方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2006−141844(P2006−141844A)
【公開日】平成18年6月8日(2006.6.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−338644(P2004−338644)
【出願日】平成16年11月24日(2004.11.24)
【出願人】(000110044)株式会社リブドゥコーポレーション (390)
【Fターム(参考)】