説明

使用済み紙おむつの再利用処理システム

【課題】 使用済み紙おむつを焼却処分せず、これに用いられた素材をかなりの部分分離回収して再利用・製品化できるようにするとともに、これら再利用・製品化のリサイクルが効率的にできるシステムを提供し、更にこれらのリサイクルを促すための客観的評価システムを提供する。
【解決手段】 複数の1次処理施設は使用済みおむつを上質パルプ素材と、低質パルプポリマー素材と、ビニール不織布素材と、汚泥素材に分離分別回収し、分離回収された各素材は2次処理施設に運ばれ、そのうち上質パルプ素材はパルプ再生設備で再生パルプとして製品化され、再生パルプ材として販売され、ビニール不織布素材と汚泥素材と低質パルプポリマー素材は、汚泥製品化処理設備で、コンポスト・土壌改良材に製造される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、赤子・老人及び患者等の為に多量に使用されている紙おむつの使用済みのものを略全量再利用できるように再生するリサイクル技術であって、使用済み紙おむつのパルプ成分は再生して紙おむつのパルプ材としてリサイクル使用できるようにし、他成分はコンポスト・固形燃料・吸水性植木鉢等に再利用できるようにする効率的な処理システムである。又、本発明は使用済み紙おむつの廃棄物の処理とリサイクルさせる資源の再利用技術に関する。及び再利用することで使用済み紙おむつの焼却処分しないことに対する関係者の炭酸ガス削減貢献の評価方法に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、紙おむつは赤子・老人・患者・介護老人・消化器系障害の患者において広く且つ多量に使用されている。この紙おむつには、多量のパルプ、高分子吸水剤、不織布、ビニール等の素材が使用されていて、その使用済みのものは廃棄物として焼却処分されている。紙おむつの素材中、約80重量%がパルプであり、ポリマーは約10重量%、不織布が2重量%、ビニールが8重量%である。
そのため、紙おむつのパルプの使用量がきわめて多く、世界の自然の木材資源が大量に消費され、環境破壊の一因となっている。
本出願人は、この紙おむつの再利用する技術として、その処理を困難にしてきた高分子吸水剤(ポリマー)の処理をうまく行って、パルプを再生する基本技術を開発した。この出願は特開2000−84533号公報として公知となっている。
しかしながら、この出願技術では、ビニール・不織布、処理途中発生する低質パルプ成分、糞尿の再利用がまだ不充分であった。又、一つの系統の処理工場で使用済み紙おむつの破断・分離・糞尿の汚泥処理、他の素材の回収と後処理、パルプ再生処理等全処理を行うため、及び素材毎に処理量・処理が大きく違っているため、工場規模のみ大きくなり且つその処理の効率も不充分となっていた。
【特許文献1】特開2000−84533号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明が解決しようとする課題は、従来のこれらの問題点を解決し、廃棄物である使用済み紙おむつを焼却処分によって廃棄処理をせずに、紙おむつに含まれている主要全資材を有効に且つ効率的に再利用することができる、使用済み紙おむつの再利用システムを提供することにある。又本発明の他の課題はこの再利用システムを用いたことによる炭酸ガス削減の関係者の貢献の数値化された評価方法を提供し、非焼却処理の本発明の再利用システムによる処理を促すことにある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
かかる課題を解決した本発明の構成は、
1) 回収された使用済み紙おむつを破断して浸水し、紙おむつの主要構成素材ごとに分離回収する1次処理施設を複数設け、複数の同1次処理施設より分離回収した各素材を集めて再資源化又は製品化する製品化設備を集約した共用の2次処理施設を設け、使用済み紙おむつの資材を再利用する施設を複数の第1次処理施設と集約した共用の2次処理施設とに分けることで使用済み紙おむつの資材再利用の再資源化処理又は製品化処理を効率的に行うようにしたことを特徴とする、使用済み紙おむつの再利用システム
2) 1次処理施設で分離回収する素材が、上質パルプ素材と,低質パルプ素材と,高分子ポリマー吸水剤の分解されたモノマー素材と,ビニールと不織布とが混在したビニール不織布素材と,糞尿成分を主成分とする汚泥素材とである、前記1)記載の使用済み紙おむつの再生利用システム
3) 2次処理施設が、上質パルプ素材を紙おむつ・抄紙・紙製品・建築資材等のパルプ製品に使用される再生パルプの精製又は製品にするパルプ再生加工設備と、低質パルプ素材を生分解性の植木鉢等のガーデニング商品・低質パルプ素材と汚泥素材を混合して発酵させるコンポスト等の低質吸水製品にする低質パルプ利用製品設備と、ビニール不織布素材から固形燃料の製品を製造する固形燃料化設備と、汚泥素材からコンポスト又は土壌改良材の製品を製造する汚泥製品化設備とからなる、前記2)記載の使用済み紙おむつの再利用システム
4) 2次処理施設でビニール不織布素材から製品化された固形燃料を1次処理施設又は2次処理施設のボイラー用の燃料として使用する完結型消費にした、前記3)記載の使用済み紙おむつの再利用システム
5) 前記1)〜4)いずれかの使用済み紙おむつの再利用システムで処理された使用済み紙おむつが焼却処分されたと仮定した場合のその焼却処理で排出される炭酸ガス量を算出し、その算出された炭酸ガス量値又はそれに比例する数値を排出者炭酸ガス削減貢献度としてその排出者に与え、又処理した使用済み紙おむつの紙おむつを販売した販売者に対しては、処理した使用済み紙おむつの枚数に対する販売者が販売した紙おむつの枚数の割合に前記の排出者に与えられた排出者炭酸ガス削減貢献度を乗じた値を販売者炭酸ガス削減貢献度として与え、更に処理した使用済み紙おむつの紙おむつを製造した製造者に対しては、処理した使用済み紙おむつの中の製造者が製造した紙おむつの枚数の割合に前記の排出者に与えられた排出者炭酸ガス削減貢献度を乗じた値を炭酸ガス削減度として与え、使用済み紙おむつが再利用システムで処理される毎に各排出者・販売者・製造者の炭酸ガス削減貢献度を計算して各者累計し、累計の炭酸ガス削減貢献度が大きい程炭酸ガス削減貢献度が高いものとする、使用済み紙おむつ処理の炭酸ガス削減貢献の評価方法
6) 前記1)〜4)いずれかの使用済み紙おむつの再利用システムで処理された使用済み紙おむつが焼却処分されたと仮定した場合のその焼却処理で排出される炭酸ガス量を算出し、その算出された炭酸ガス量値又はそれに比例する数値を排出者炭酸ガス削減貢献度としてその排出者に与え、又処理した使用済み紙おむつの紙おむつを販売した販売者に対しては、処理した使用済み紙おむつの枚数に対する販売者が販売した紙おむつの枚数の割合に前記の排出者に与えられた排出者炭酸ガス削減貢献度を乗じた値を販売者炭酸ガス削減貢献度として与え、更に処理した使用済み紙おむつの紙おむつを製造した製造者に対しては、処理した使用済み紙おむつの中の製造者が製造した紙おむつの枚数の割合に前記の排出者に与えられた排出者炭酸ガス削減貢献度を乗じた値を製造者炭酸ガス削減度として与え、使用済み紙おむつが再利用システムで処理される毎に各排出者・販売者・製造者の炭酸ガス削減貢献度を計算して各者累計し、排出者の累計した排出者炭酸ガス削減貢献度を排出者が排出した使用済み紙おむつの全量を再利用システムで処理したと仮定した場合の炭酸ガス削減貢献度で除した排出者削減貢献率を求め、又販売者の累計の販売者炭酸ガス削減貢献度を販売者が販売した紙おむつの全量が使用済み紙おむつとして再利用システムで処理されたと仮定した場合の炭酸ガス削減貢献度で除した販売者削減貢献率を求め、更に製造者の累計の炭酸ガス削減貢献度を製造者が製造して出荷した紙おむつの全量が使用済み紙おむつとして再利用システムで処理されたと仮定した場合の炭酸ガス削減貢献度で除した製造者削減貢献率を求め、各者の削減貢献率でその炭酸ガス削減努力を評価する炭酸ガス削減貢献の評価方法
7) 排出者は、再利用システムで処理される使用済み紙おむつの販売者・製造者を記録し、販売者・製造者毎にその使用済み紙おむつが累計できるようにした、前記5)又は6)記載の使用済み紙おむつ処理の炭酸ガス削減貢献の評価方法
にある。
【発明の効果】
【0005】
本発明によれば、廃棄物である使用済み紙おむつを焼却処分せずに、大略その全素材を製品に再生させて再利用できるようにして資源の有用利用を図ることができる。それとともに使用済み紙おむつに含まれる主要素材を各素材毎に分離回収する複数の1次処理施設と、1次処理施設で分離回収した各素材を製品化する共用の2次処理施設とに分けたことにより、1次処理と2次処理の全体一貫処理する施設の場合に比べ、施設の各処理工場規模を効率的で適切な規模にできる。しかも複数の1次処理施設からの分離回収素材を共用の2次処理施設が取り扱うことができるので1次処理施設の処理量変動にかかわらず円滑に2次処理できるようになり、効率的な処理が可能となる。更に1次処理施設の処理日の交番的設定、使用済み紙おむつの使用される都市に近い場所に適切規模の1次処理施設を配置することが容易となる。又、2次処理施設の処理量の平均化を可能として製品化を効率的にできる。再生化・製品化が2次処理施設に集約されることで、再生素材・製品が均一化できる。
更に、本発明の炭酸ガス削減の貢献の評価方法によって、関係者の炭酸ガス削減の貢献を数値化することで、使用済み紙おむつの非焼却の再利用処理を促し、環境汚染を少なくし、且つ資源の有効利用を高める。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
1次処理施設は、使用量の多い都市周辺で収集回収が行なわれ易い場所に適切な規模で設置されるのがよい。また、使用済み紙おむつは糞尿が多く含まれているため、貯留・保存がききにくいので毎日回収されることが多くなり、各県に1次処理施設は複数個所設けられ、受け入れると迅速な1次処理がなされるようにするのがよい。
又、1次処理施設の点検・保守・消毒等の為に処理の一時停止日を確保するため、余裕をもって同じ都市に複数個所に設けて一時停止日の1次処理施設を補完するように、他の1次処理施設を運営することが好ましい。
又、1次処理のポリマー成分(モノマー素材)は、低質パルプ素材と混在させた形態の低質パルプ・ポリマー素材で出荷してもよいし、更に分離した別々の素材として回収して出荷してもよい。
又ビニール不織布素材を2次処理施設で固形燃料の製品にして、同製品の一部又は全部を2次処理施設又は1次処理施設で燃料源として使用するようにすれば、重油・石炭・ガス等の高価な燃料の使用量を減らし、施設の燃料費を低減させるとともに、ビニール不織布の製品の消費を所定量確保できる。
使用済み紙おむつの焼却処分したときの排出する炭酸ガス量を実際に測定し、その排出する炭酸ガス量を焼却処分した使用済み紙おむつの枚数で除すことで、使用済み紙おむつの1枚当たりの平均的排出炭酸ガス量を計算する。本発明の再利用システムで処理した使用済み紙おむつの枚数の重量に1枚当たりの平均的排出炭酸ガス量(例えば0.84)を乗じて削減炭酸ガス量とするのが代表的な炭酸ガス削減量の算出方法である。
本発明での炭酸ガス削減量と炭酸ガス削減貢献度とは比例関係にするが、貢献度は理解し易い数値に変換するのがよく、その累計は月単位・4半期単位又は年単位にするのが好ましい。
【実施例】
【0007】
以下、本発明の実施例について図面に基づいて説明する。
本実施例では、複数の1次処理施設は使用済み紙おむつを処分費用の支払いを受けて受入れ、同使用済みおむつを上質パルプ素材と、低質パルプポリマー素材と、ビニール不織布素材と、汚泥素材に分離分別回収する。分離回収された各素材は2次処理施設に運ばれる。そのうち上質パルプ素材はパルプ再生設備の運営会社へ有償で販売されて2次処理されて再生パルプとして製品化され、紙おむつメーカー等にパルプ材として販売される。ビニール不織布素材と汚泥素材と低質パルプポリマー素材は、固形燃料に2次処理する固形燃料製造設備の運営会社に、コンポスト・土壌改良材を製造する汚泥製品化処理設備の運営会社及び低質パルプ利用製品化設備の運営会社に無償で提供され、各素材を各施設で製品化し、製品は有償で販売していく例である。
【0008】
図1は、実施例の処理説明図である。
図2は、実施例の1次処理施設を示す説明図である。
図3は、実施例の1次処理の流れを示す説明図である。
図4は、実施例の2次処理施設を示す説明図である。
図5は、実施例の全体処理の流れを示す説明図である。
【0009】
図中、1は1次処理施設、2は2次処理施設、2aはパルプ再生設備、2bは低質パルプ利用製品化設備、2eは固形燃料製造設備、2dは汚泥製品化処理設備、3は使用済み紙おむつの運搬車両、aは使用済み紙おむつ、bは上質パルプ素材、cは低質パルプポリマー素材、dはビニール不織布素材、eは汚泥素材、fは固形燃料(製品)、gは再生パルプ(製品)、hはコンポスト(製品)、iは土壌改良材(製品)である。
又、11〜21は、1次処理施設1の装置器具設備に関する。11は貯槽ピット、12は分離槽、12aは同分離槽に設けられた使用済み紙おむつaを分断破砕して撹拌する破砕撹拌装置、12bは分離槽12に設けられ、破砕分断されたビニール・不織布を掻き上げるビニール不織布回収装置、12cはモノマー化剤(ポリマー分解剤)を投入するモノマー化剤投入装置、12dは使用済み紙おむつを貯槽ピット11から分離槽12へ把持して移送する天井クレーン、13はビニール脱水機、14はパルプ濃度調整槽、15はパルプ分離スクリーン、16はパルプドラムスクリーン、17はパルプ脱水機、18はパルプ洗浄槽、19はドラムスクリーン、20は脱水機、21は低質パルプ洗浄槽、22は低質パルプ洗浄槽、23は低質パルプドラムスクリーン、24は低質パルプ脱水機、25は浄化装置、26は汚泥貯槽、27は汚泥脱水機である。
【0010】
この実施例では、主に病院・福祉施設等から排出された使用済み紙おむつaは回収業者によって回収され、回収された使用済み紙おむつaは運搬車両3によって近い1次処理施設1に運送される。病院・福祉施設は回収業者に処理費用を支払い、回収業者は1次処理場1へ処分費用を支払って処分を依頼する。
【0011】
1次処理施設1では、運送されてきた使用済み紙おむつaを貯槽ピット11で一時貯える。次に同貯槽ピット11の使用済み紙おむつaはクレーン等を用いて水を貯えた分離槽12に投入される。この分離槽12には使用済み紙おむつaを分断破砕して撹拌する破砕撹拌装置12aと、破砕分断されたビニール・不織布を掻き上げるビニール不織布回収装置12bと、ポリマーが吸水して膨らんだ状態を解消するため、塩化カルシウム等のモノマー化剤(ポリマー分解剤)を投入するモノマー化剤投入装置12cとが設けられている。
分離槽11に投入された使用済み紙おむつaは、破砕撹拌装置12aで表面のビニール・不織布が分断・破砕され、ビニール・不織布とパルプと高分子ポリマーと糞尿とが分離して水中に排出され、水中で撹拌されて混合状態となる。
【0012】
水中の高分子ポリマーは、吸水して膨張するが、モノマー化剤投入装置12cから投入された塩化カルシウム等のモノマー化剤(ポリマー分解剤)と接触して、モノマー化し、大きく膨張した状態がなくなり、粒状態となり、各素材の分離回収の支障にならないようになる。
【0013】
分離槽12中の破砕されたビニール片・不織布片はビニール不織布回収装置12bにより、掻き上げられて回収し、次にビニール脱水機13によって脱水され、圧縮されてビニール不織布素材としてコンテナに収容され、運送できるようになる。尚、その行程で消毒液・殺菌剤が投入されて滅菌処理がなされる。
【0014】
分離槽12中の水中に残っているパルプ成分・モノマー成分(ポリマー素材)・糞尿成分は、パルプ濃度調整槽14に移送され、濃度調整された後パルプ分離スクリーン15に通されて上質のパルプ成分と、残りの低質パルプ成分とモノマー成分と糞尿成分とに分離される。
【0015】
パルプ分離スクリーン15を分離された上質パルプ成分は、パルプドラムスクリーン16で再度スクリーンに掛けられて良質の上質パルプ成分のみにされ、パルプ脱水機17で一度脱水される。その後パルプ洗浄槽18に投入されて、パルプは洗滌と消毒・殺菌剤により滅菌処理され、再度ドラムスクリーン19で最終スクリーンに掛けられて残ったパルプ成分を脱水機20で脱水した後、乾燥機21で乾燥され、上質パルプ素材bとして出荷される。
この出荷される上質パルプ素材bは、有償で2次処理施設2のパルプ再生設備2aを運営する会社に販売される。
【0016】
パルプ分離スクリーン15のスクリーン目より小さい糞固形成分・液分・低質パルプ成分、モノマー成分は、低質パルプ洗浄槽22に送られて、ドラムスクリーン23で低質パルプ成分とモノマー成分が分離され、次に脱水機24で脱水されて、コンテナ26に収容され、低質パルプモノマー素材cとして2次処理施設2の低質パルプ利用製品化設備2bを運営する会社へ無償で出荷される。
【0017】
ドラムスクリーン(16,19,23)、脱水機(17,20,24)で排出される糞成分・尿等の液分は、浄化装置25に送られ、糞尿は浄化槽処理され、汚泥貯槽26に貯えられ、固形分は汚泥として排出され、汚泥脱水機27で脱水された後、コンテナ28に詰められて、汚泥素材eとして、2次処理施設2の汚泥製品化処理設備2dに送られる。汚泥製品化処理設備2dを運営する会社は汚泥素材eを無償で引き取る。
【0018】
1次処理施設1で各素材に分離回収して出荷する行程で、各素材は充分に消毒・殺菌処理がなされる。
【0019】
このように1次処理施設1で分離回収された各素材は、運搬車両3によって2次処理施設2に送られて、各素材は有価な製品に再生処理される。
【0020】
1次処理施設1から出荷された紙おむつの約80重量%程を占めるパルプ成分の中の上質パルプ素材bは、2次処理施設2のパルプ再生設備2aに送られて、再生パルプgの製品に製造される。製造された再生パルプgは紙おむつメーカーにパルプ材として有償で販売される。
これによってパルプ材はかなりの部分再利用され、新規のパルプ材の必要量を大巾に低減して、省資源として木材の伐採を少なくして環境破壊を抑えることができる。
【0021】
又、複数の1次処理施設1から出荷される上質パルプ素材aを、共用の2次処理施設2に集約して製品化していくので、1次処理施設1の上質パルプ素材aの出荷量の変動があっても、複数の1次処理施設1の共用の2次処理施設2としたため、2次処理施設2に納入される上質パルプ素材量は平均化でき、パルプ再生設備2aの平均的な稼動を可能として再生パルプ製造が効率的に行え、又再生パルプgの生産量の変動も少なくなり、再生パルプgの安定供給が可能となる。
【0022】
複数の1次処理施設1から出荷された低質パルプポリマー素材cは、2次処理施設2に集荷され、その施設の低質パルプ利用製品化設備2bによって、その素材の有するパルプ・モノマー(ポリマー)の吸水特性を活かした低質吸水製品h(土壌改良材i・植木鉢・コンポスト等)に製品化される。これら製品は、有償で市場に出荷されて販売される。
この低質パルプポリマー素材cは、上質パルプ素材bに比べて少量割合であるので、2次処理施設2である程度ストックした後に設備をバッチ的に稼動することができる。低質パルプ利用製品化設備2bは生産量が小さいので小規模で済む。
【0023】
複数の1次処理施設1から出荷されたビニール不織布素材dは、2次処理施設2に集荷され、その施設の固形燃料製造設備2cで固形燃料f(RPF燃料)にされて、有償で1次処理施設1、2次処理施設2の各設備及び一般市場に出荷される。
製造された固形燃料fの一部又は全部を1次処理施設1、2次処理施設2で熱源・エネルギー源として使用して消費しているので各施設の燃料費を低減できるとともに、製品の安定供給先となり、固形燃料の残庫量を確実に減らすことができる。
【0024】
複数の1次処理施設1から出荷された汚泥素材eは、2次処理施設2に集荷され、その汚泥製品化処理設備2dによってコンポストh又は土壌改良材iの製品に製造されて、市場へ出荷される。
【0025】
以上の様に、本実施例によれば、使用済み紙おむつの各成分・素材は1次処理施設1と2次処理施設2とにより、大略全素材を再利用できるようになり、廃棄物である使用済み紙おむつを焼却処分せずに済み、且つパルプの使用量を大巾に低減して森林の伐採を少なくして環境破壊を少なくできる。
又、都市に近い紙おむつの使用量の多い地域に1次処理施設1を複数配置し、毎日発生する使用済み紙おむつを迅速に処理して保存・補完が長くできる各素材にすることで、糞尿に汚れて長い保存・貯槽がきかない使用済み紙おむつの衛生的な処理をできるようになり、且つ2次処理の時間的余裕を与えることができるようになる。
更に、複数の1次処理施設1に対して共用の2次処理施設2を配することによって、2次処理の平均的な処理稼動と効率的な稼動が可能となる。これは各1次処理施設の素材出荷量の変動、一部の1次処理施設の点検・消毒・故障による休止期間の設定があっても、円滑な全体処理を可能とすることができる。
【0026】
本実施例の使用済み紙おむつの再利用システムで処理する場合の、病院a,b,c,d・介護施設を排出者とし、製造者はA社,B社,C社の三社存在し、販売者は一社のみであり、使用済み紙おむつの処理業者は本発明の再利用システムで処理する再利用処理業者と、焼却処分する焼却処理業者とがある。
各排出者は処理業者に処理を依頼するときには、その使用済み紙おむつの枚数・販売者・製造者を記録し、月単位でその使用済み紙おむつの処理合計枚数・販売者と製造者別処理枚数を集計している。更に、処理業者は月単位に、使用済み紙おむつの処理枚数を累計している。
【0027】
かかる処理システムにおいて、月単位で排出者の病院aは、製造者A社製造の紙おむつ7,000枚,B社製造の紙おむつ12,000枚,C社製造の紙おむつ4,000枚の合計23,000枚の紙おむつを販売業者Xから仕入れてこれを一カ月で使用し、その使用済み紙おむつを再利用処理業者に処理委託した。排出者の病院bは、製造者A社の紙おむつ10,000枚,B社の紙おむつ10,000枚,C社の紙おむつ3,000枚の合計23,000枚を販売業者Xから仕入れてこれを一カ月で使用して、その使用済み紙おむつを再利用処理業者に処理委託した。排出者の病院cは、A社の紙おむつを10,000枚,B社の紙おむつを8,000枚,C社の紙おむつを3,000枚の合計21,000枚を販売業者Xから仕入れてこれを一カ月で使用して、その使用済み紙おむつを焼却処理業者に処理委託した。又、排出者の病院dは、A社の紙おむつ9,000枚,B社の紙おむつ8,000枚,C社の紙おむつ3,000枚の合計20,000枚を販売業者Xから仕入れてこれを一カ月で使用し、その使用済み紙おむつを焼却処理業者に処理委託した。排出者の介護施設では、A社の紙おむつ4,000枚,B社の紙おむつ2,000枚,C社の紙おむつ7,000枚の合計13,000枚を販売業者Xから仕入れてこれを一カ月で使用し、その使用済み紙おむつを再利用処理業者に処理委託した。
【0028】
製造者A社は、紙おむつを一カ月で40,000枚販売業者Xに出荷し、製造者B社は紙おむつを40,000枚販売業者Xに出荷し、製造社C社は紙おむつを20,000枚を販売業者Xに出荷し、販売業者Xは、合計100,000枚を排出者に納入した。
焼却処理業者は、使用済み紙おむつを一カ月で41,000枚重量にして約10,250kgを焼却処理し、炭酸ガスを略8,610kg排出している。
【0029】
尚、使用済み紙おむつは1枚当たり平均250gであり、又炭酸ガス排出量は、その使用済み紙おむつの重量に0.84を乗じた重量(kg)としている。
又、再処理業者は、使用済み紙おむつを一カ月で59,000枚,重量にして14,750kgを再利用システムで処理し、約12,380kgの炭酸ガスを発生させないで済んでいる。
【0030】
この処理システムの上記の例を図6に示している。そして排出者の病院a,b,c,dと介護施設、販売者X社、製造者のA,B,C社の一カ月の炭酸ガス削減貢献度と削減貢献率の結果を図7に示している。その結果は下記の表1の如くなる。
【表1】

このように、関係者の炭酸ガス排出削減の度合い、努力を炭酸ガス削減貢献度と削減貢献率でもって数値的に評価できるようにした。これによって使用済み紙おむつの非焼却処理化へ促すことができるようになる。
【0031】
図8,9は、紙おむつの製造者,、紙おむつの販売者,紙おむつの使用者となる使用済み紙おむつの排出者,使用済み紙おむつの収集運搬業者,本発明の再利用システムの設備の1次処理施設,2次処理施設,再生製品・再資源化商品の販売業者間における紙おむつ・使用済み紙おむつ・再生再利用された製品・商品の物流の流れを示すものである。
この物流において、排出者より収集した使用済み紙おむつを1次処理施設に搬入し、水溶化処理し、素材別に分離回収し回収した素材を2次処理施設に納入するまでの静脈物流と、納入された素材を2次処理施設でそれぞれに加工又は精製又は製造等を行い、再生利用商品の原料として製造業者又は、販売業者又は、再生利用商品の消費者に納入するまでの動脈物流とを連動させ、排出者より収集した使用済み紙おむつの総量、それぞれの1次処理施設で処理した総量、分離回収した素材別総量、2次処理施設に納入した素材別総量、2次処理施設で原料化された素材別の総量及び消費量、再生利用商品として商品化された総量及び消費量等を常時把握できるようにIT化して静脈物流と動脈物流をバランス良く調整できる物流管理システムにできる。
【産業上の利用可能性】
【0032】
本発明は、日本全体を紙おむつの使用量の分布に応じて複数地区に分け、各地区に毎日の処理を行える1次処理施設を回収運送に無理がない場所に複数設け、各地区に共用の2次処理施設を配置することで、日本全体での使用済み紙おむつの処理システムが構築できる。1次処理施設、2次処理施設は地区を超えて地区補完的な処理もできるようにすることが望ましい。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】実施例の処理説明図である。
【図2】実施例の1次処理施設を示す説明図である。
【図3】実施例の1次処理の流れを示す説明図である。
【図4】実施例の2次処理施設を示す説明図である。
【図5】実施例の全体処理の流れを示す説明図である。
【図6】実施例の排出者・製造者・販売者及び処理施設者との間の紙おむつ・使用済み紙おむつの量の一カ月の流れの1例を示す説明図である。
【図7】実施例の図6の例の3者の炭酸ガス削減貢献度と削減貢献率を示す説明図である。
【図8】本発明の処理施設の回収素材・再生製品の物流の流れを示す説明図である。
【図9】本発明の紙おむつの流れを示す説明図である。
【符号の説明】
【0034】
a 使用済み紙おむつ
b 上質パルプ素材
c 低質パルプポリマー素材
d ビニール不織布素材
e 汚泥素材
f 固形燃料(製品)
g 再生パルプ(製品)
h コンポスト(製品)
i 土壌改良材(製品)
1 1次処理施設
2 2次処理施設
2a パルプ再生設備
2b 低質パルプ利用製品化設備
2c 固形燃料製造設備
2d 汚泥製品化処理設備
3 運搬車両
11 貯槽ピット
12 分離槽
12a 破砕撹拌装置
12b ビニール不織布回収装置
12c モノマー化剤
12d 天井クレーン
13 ビニール脱水機
14 パルプ濃度調整槽
15 パルプ分離スクリーン
16 パルプドラムスクリーン
17 パルプ脱水機
18 パルプ洗浄槽
19 ドラムスクリーン
20 脱水機
21 乾燥機
22 低質パルプ洗浄槽
23 ドラムスクリーン
24 脱水機
25 浄化装置
26 汚泥貯槽
27 汚泥脱水機
28 コンテナ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回収された使用済み紙おむつを破断して浸水し、紙おむつの主要構成素材ごとに分離回収する1次処理施設を複数設け、複数の同1次処理施設より分離回収した各素材を集めて再資源化又は製品化する製品化設備を集約した共用の2次処理施設を設け、使用済み紙おむつの資材を再利用する施設を複数の第1次処理施設と集約した共用の2次処理施設とに分けることで使用済み紙おむつの資材再利用の再資源化処理又は製品化処理を効率的に行うようにしたことを特徴とする、使用済み紙おむつの再利用システム。
【請求項2】
1次処理施設で分離回収する素材が、上質パルプ素材と,低質パルプ素材と,高分子ポリマー吸水剤の分解されたモノマー素材と,ビニールと不織布とが混在したビニール不織布素材と,糞尿成分を主成分とする汚泥素材とである、請求項1記載の使用済み紙おむつの再生利用システム。
【請求項3】
2次処理施設が、上質パルプ素材を紙おむつ・抄紙・紙製品・建築資材等のパルプ製品に使用される再生パルプの精製又は製品にするパルプ再生加工設備と、低質パルプ素材を生分解性の植木鉢等のガーデニング商品・低質パルプ素材と汚泥素材を混合して発酵させるコンポスト等の低質吸水製品にする低質パルプ利用製品設備と、ビニール不織布素材から固形燃料の製品を製造する固形燃料化設備と、汚泥素材からコンポスト又は土壌改良材の製品を製造する汚泥製品化設備とからなる、請求項2記載の使用済み紙おむつの再利用システム。
【請求項4】
2次処理施設でビニール不織布素材から製品化された固形燃料を1次処理施設又は2次処理施設のボイラー用の燃料として使用する完結型消費にした、請求項3記載の使用済み紙おむつの再利用システム。
【請求項5】
請求項1〜4いずれかの使用済み紙おむつの再利用システムで処理された使用済み紙おむつが焼却処分されたと仮定した場合のその焼却処理で排出される炭酸ガス量を算出し、その算出された炭酸ガス量値又はそれに比例する数値を排出者炭酸ガス削減貢献度としてその排出者に与え、又処理した使用済み紙おむつの紙おむつを販売した販売者に対しては、処理した使用済み紙おむつの枚数に対する販売者が販売した紙おむつの枚数の割合に前記の排出者に与えられた排出者炭酸ガス削減貢献度を乗じた値を販売者炭酸ガス削減貢献度として与え、更に処理した使用済み紙おむつの紙おむつを製造した製造者に対しては、処理した使用済み紙おむつの中の製造者が製造した紙おむつの枚数の割合に前記の排出者に与えられた排出者炭酸ガス削減貢献度を乗じた値を炭酸ガス削減度として与え、使用済み紙おむつが再利用システムで処理される毎に各排出者・販売者・製造者の炭酸ガス削減貢献度を計算して各者累計し、累計の炭酸ガス削減貢献度が大きい程炭酸ガス削減貢献度が高いものとする、使用済み紙おむつ処理の炭酸ガス削減貢献の評価方法。
【請求項6】
請求項1〜4いずれかの使用済み紙おむつの再利用システムで処理された使用済み紙おむつが焼却処分されたと仮定した場合のその焼却処理で排出される炭酸ガス量を算出し、その算出された炭酸ガス量値又はそれに比例する数値を排出者炭酸ガス削減貢献度としてその排出者に与え、又処理した使用済み紙おむつの紙おむつを販売した販売者に対しては、処理した使用済み紙おむつの枚数に対する販売者が販売した紙おむつの枚数の割合に前記の排出者に与えられた排出者炭酸ガス削減貢献度を乗じた値を販売者炭酸ガス削減貢献度として与え、更に処理した使用済み紙おむつの紙おむつを製造した製造者に対しては、処理した使用済み紙おむつの中の製造者が製造した紙おむつの枚数の割合に前記の排出者に与えられた排出者炭酸ガス削減貢献度を乗じた値を製造者炭酸ガス削減度として与え、使用済み紙おむつが再利用システムで処理される毎に各排出者・販売者・製造者の炭酸ガス削減貢献度を計算して各者累計し、排出者の累計した排出者炭酸ガス削減貢献度を排出者が排出した使用済み紙おむつの全量を再利用システムで処理したと仮定した場合の炭酸ガス削減貢献度で除した排出者削減貢献率を求め、又販売者の累計の販売者炭酸ガス削減貢献度を販売者が販売した紙おむつの全量が使用済み紙おむつとして再利用システムで処理されたと仮定した場合の炭酸ガス削減貢献度で除した販売者削減貢献率を求め、更に製造者の累計の炭酸ガス削減貢献度を製造者が製造して出荷した紙おむつの全量が使用済み紙おむつとして再利用システムで処理されたと仮定した場合の炭酸ガス削減貢献度で除した製造者削減貢献率を求め、各者の削減貢献率でその炭酸ガス削減努力を評価する炭酸ガス削減貢献の評価方法。
【請求項7】
排出者は、再利用システムで処理される使用済み紙おむつの販売者・製造者を記録し、販売者・製造者毎にその使用済み紙おむつが累計できるようにした、請求項5又は6記載の使用済み紙おむつ処理の炭酸ガス削減貢献の評価方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2006−289154(P2006−289154A)
【公開日】平成18年10月26日(2006.10.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−109043(P2005−109043)
【出願日】平成17年4月5日(2005.4.5)
【出願人】(300073414)ケア・ルートサービス株式会社 (7)
【Fターム(参考)】