説明

便座カバーと端縁係着具

【課題】便座カバーは基本的に平板な形状であり、湾曲立体形状の便座に被着する場合、位置決めが困難であると共に、便座基部側の被着部形状が基部側に向かって拡幅する湾曲形状となっているため、覆着したカバーが幅の狭い先端側に向かってずれてカバーが便座に密着しなくなってしまう問題があった。
【解決手段】カバー本体1の頂部を便座外周縁角に対応する折重端縁縫着により、便座外周縁角に係る凸段部13を形成し、その中央部の表側端縁にボタン5aと係掛板6aを取付け係合することによりカバー着合の起点を固定し、被着便座基部の被覆について掛合孔部材3と鉤部材4による固定性のある係合とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、腰掛け式便器の便座カバー、特に、局部洗浄器、暖房装置を付設する環状便座用の便座カバーと、便座カバーに取り付けてカバーを便座に被着する際に用いる端縁係着具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の便座カバーの装着形態としては、例えば特許文献1乃至に記載されるように帯状カバーの両側腹縁同士を係着する形態が多く採られているが、係着形態としては特許文献1のようなファスナーによるもの、特許文献2のように本体編み地の側腹縁部に取り付けたフック部材と掛止環の係掛によるもの、特許文献3、4にように雄ホックと雌ホックの嵌合によるもの等がある。
【0003】
また、被覆便座の先端形状は湾曲する立体形状となっているため、基本的に平板なカバー本体を被着する場合、生地が便座表面を滑って位置決めが困難であることから、特許文献5に記載されるように帯状カバーの一側腹縁の中央部から外方に延設され被着便座前部の内周裏面から前方に延在して便座の外周前端で係止される頭巾袋状の前端係止部を備えることが提案されている。
【特許文献1】特開平09−117392号公報
【特許文献2】特開2005−177437号公報
【特許文献3】特開2003−339579号公報
【特許文献4】特開2003−24245号公報
【特許文献5】特開平11−178748号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、頭巾袋状の前端係止部を設けるには、カバー本体の裏面側に向けて袋頂部で折り返すように編み立てる特別な操作をしたり、カバー本体とは別に構成して後付けする面倒な作業が必要であり、便座への覆着時にも便座の先端に袋状の前端係止部を被せる特別な作業を必要とし、便座先端に前端係止部が被せられるとカバー全体が固定的となり被着バランスの調整が困難になるという問題があった。
【0005】
また、便座先端部への被着については、便座先端の中心位置とカバーの中心位置を合わせて被着しなければ、カバーにズレを生じて被着できなくなってしまううえ、便座の芯をヒンジ側の取付け部に使用するために狭いスペースでの作業となり、フック部材のフックを掛止環のリングに引っ掛ける嵌め合わせも難しく、カバーの取り外し時には生地やゴム紐の伸縮力が位置の固定を妨げるため、極めてやり難く面倒である。
【0006】
更に、便座基部側への被着については、他の部分より幅が広い湾曲部を被覆することになり、カバー両端の両角部に係着具を取り付け、角頂端部を斜めに引張して頂端部同士を係着するため、生地に無理が掛かり係着部の位置がずれて係着具の係合が不安定となる問題があった。
【0007】
以上のような、カバー着脱作業の困難性に加え、便座基部取付けヒンジ側の被着部形状が基部側に向かって拡幅する湾曲形状となっているため、係着具による固定だけでは時間が経つにつれ、覆着したカバーが幅の狭い先端側に向かってずれ、せり上がってカバー表面に皺ができたり、カバーが便座に密着しなくなってしまう問題があった。
【0008】
カバー端のずれ上がりについては、引用文献1に図示されるように被着便座基部後端側からテープを回してカバー端のフックに引っ掛ければ、安定した覆着を行うことができるが、便座基部後端側にテープを回すのは作業的に困難であり、また、覆着状態を便座表面から見た場合の美観にも問題がある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は上記した問題点に対応しようとするものであり、便座を包む帯状カバーの一側腹縁の中央部分を凹形に形成し、その凹形の中央部に凸形部を設けると共に、前記一側の端縁に沿って所定幅を内側に折り重ねて折重端縁を縫着することにより凸段部を形成し、便座外周縁角にこの凸段部を係止して芯出しと位置合わせを行って被着バランスの調整を行えるように構成した。
【0010】
また、凹形形成側腹縁の凸形縫着部中央表側端縁と、対応する他側腹縁に一対の係合雌雄部材を取り付けて、被着にあたり先ずこれを係着して便座先端の中心位置とカバーの中心位置の芯出しと位置合わせを行って被着バランスを整えるようにすると共に、この一対の係合部材の色彩を、他の係合雌雄部材と異なる色彩にして一目でカバー中心の係合部材であることの判別を可能にしてカバー着脱作業をやり易いように構成した。
【0011】
更に、帯状カバーの両側を凹形形成側腹縁を上縁として逆台形状になるように斜めにカットし、更に、両カット部の上端角部をカットして同カット部の中点を折曲基準として縫着折重端縁を構成すると共に、折重下部の側幅縁に沿って平帯状ゴム紐を設定し、その延長両端部に掛合孔部材と鉤部材を、それぞれ取り付けて掛着するようにして、被着便座基部において覆着したカバーが幅の狭い先端側に向かってずれたり、せり上がってカバー表面に皺ができることを防止し、便座に対するカバーの密着性を維持できるようにした。
【0012】
加えて、帯状カバー両側に設定した平帯状ゴム紐の延長両端部に取り付ける掛合孔部材の掛合部形状を直線状に構成し、鉤部材掛合鉤の形状を掛合孔の前記直線状部に掛合する安定幅を持つコの字形鉤に構成して、曲面同士の不安定な掛架構造ではなく、角部と面接合による安定した嵌合掛架構造に構成した。
【実施例】
【0013】
以下、図面を参照して本発明の実施例を説明する。1は帯状のカバー本体で、パイル編生地等、ニット製による柔軟で伸縮性に富んだ素材によって帯状に構成され、その略中央部は一辺11の中央部分を凹形11aに形成し、更に、その凹形11aの中央部に凸形部11bを設けると共に、前記一辺11の端縁を折線12に沿って内側に折り重ねて折重端縁を縫着することにより凸段部13が形成されている。
【0014】
カバー本体1の両側辺14は、一辺11を上縁として逆台形状になるように斜めにカットされ、更に、両カット部の上端角部をカットしたカット辺15の中点を基準として前記折線12が設定され、これにより折重縫着した端縁が前記凸段部13を構成する。
【0015】
この凸段部13における凸形部11bを折重縫着した部分を、被着便座Aの外周縁角Aaに当接して被着便座Aの先端をくるむようにカバー生地を折り曲げ引張し、凸形部11bを折重縫着した部分の表側端縁に雄係合部材として設定されたボタン5aと掛合孔を開設した雌係合部材としての係掛板6aを係合することによりカバー着合の芯出しをする。
【0016】
このボタン5aと係掛板6aはカバー本体1が丸められた状態のときでも、他の係合部材と直ぐに見分けられるように他とは異なった目立ち易い色彩が施されており、被着時にこの係合部材を見つけ出すことにより、凸形部11bの折重縫着部位置も判るので迷わずに覆着作業に入ることができる。
【0017】
帯状のカバー本体1の上下側腹縁部11、16には、被着便座Aを包摂したカバーの両側腹縁を接合する係掛具として係掛ボタン5とボタン5の着合孔61を設けた係掛板6が、それぞれの対応位置に所定間隔で並列設定されている。
【0018】
係掛板6は、軟質樹脂やナイロン或いはポリプロピレン等によって薄い板状に形成され、略中央部に係掛ボタン5を挿通し先端側が狭隘となって引張により係掛ボタンの基部と係掛する着合孔61とボタン5を受け入れる幅広の広径部62a、広径部62aから着合孔61に導く斜辺部62b、62bが設けられ、先端部が把持部63、基端部が取付け部64となっていてカバー本体1の側腹縁部に縫着される。
【0019】
両側辺14、14には、その端縁に沿って平帯状ゴム紐2、2を設定し、その延長両端部に掛合孔部材3と鉤部材4を、それぞれ取り付けるようにし、被着便座基部のヒンジ部角或いは便座のクッションゴム脚Bから被着便座開口部内角に鉤部材4の取付け平ゴム42を引張しカバー生地を掛け回して、覆着したカバーが幅の狭い先端側に向かってずれたり、せり上がってカバー表面に皺ができることを防止した。
【0020】
平帯状ゴム紐2、2には、便座表面とカバーの密着固定力を持たせるために長手方向中央部に帯状にシリコンゴム等の粘性材21が塗装され、掛合孔部材3と鉤部材4は折重縫着による凸段部13を介して平帯状ゴム紐2の延長線上に側端14に沿って着設されている。
【0021】
平帯状ゴム紐2、2の延長両端部に取り付けられる掛合孔部材3は、下端の掛合部31bの形状を直線状に構成した一つ又は複数の掛合孔31aを列設した幹部31と幹部より幅広に取付け孔32aを形成した取付け基部32から成り、他方隅端に取り付けられる鉤部材4は、掛合鉤41の形状を前部立ち上がり部41a、掛合底41b、後部立ち上がり41cの屈曲角度を90度とし、掛合孔31aの前記直線状部31bに掛合する安定幅を持つコの字形鉤に構成した。
【0022】
従来の掛合孔部材と鉤部材による係合は、掛合部の形状を曲面とすることにより、幅広く余裕のある掛合を便宜なものとしてきているが、不安定な形状の被着便座基部の被覆についてはカバー生地が滑りやすく密着性を確保することが困難であることから、掛合孔の掛合部位を直線状のものとし、掛合鉤41の形状を屈曲角度90度とし、掛合孔31aの前記直線状部31bに掛合する安定幅を持つコの字形鉤に構成することにより、カバー生地のずれを生じないきっちりとした密着性のある係合としたものである。
【0023】
上記コの字形鉤の構成に加え、カバー本体1の両側端14、14には、長手方向中央部に帯状に粘性材21を塗装した平帯状ゴム紐2が側端14に沿って着設され、その先端部に掛合孔部材3と鉤部材4が接合されているので、ゴム紐2を引張って掛合孔部材3に対応鉤部材4を係掛することにより、側端14に沿って着設されたゴム紐2の粘性材21塗装面が被着便座の表面に当接し、滑り易い便座表面に粘着してカバーの密着性が維持されるものである。
【0024】
前記のようにボタン5aと係掛板6aが係合されると、その係合部を起点として折重線17を目安として被着便座Aの外周縁に沿ってカバー本体1の端部を折り曲げ引張しながら、各端縁に設定されたボタン5と係掛板6を係合し、被着便座基部Abにおいてその延長両端部に掛合孔部材3と鉤部材4を、それぞれ取り付けて掛着する。
【0025】
カバー本体1は柔軟で伸縮性に富んだ素材によって構成され、係掛板6は或る程度の剛性をもっているので、被着便座Aからカバーを取り外す際には把持部63を持って引張ると係掛ボタン5が着合孔61の斜辺部62b、62bに案内されて容易に広径部62aに導かれ片手で取り外すことも可能となる。
【0026】
なお、実施例としては係掛具2、3を係掛ボタンと係掛板としたが、他の係掛具や側腹縁接合手段によっても良い。
【0027】
本発明は上記のようにカバー本体1の頂部を便座外周縁角に対応する折重端縁縫着により、便座外周縁角に係る凸段部13を形成し、その中央部の表側端縁にボタン5aと係掛板6aを取付け係合することによりカバー着合の起点を固定し、被着便座基部の被覆について掛合孔部材3と鉤部材4による固定性のある係合としたので、被着バランスの調整によりカバー生地を被着便座表面に馴染ませ、固定性のある係合によりカバーの密着性を確保できたものである。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明による便座カバーの実施例を示すもので、カバー本体の頂部に便座外周縁角に対応する折重端縁縫着による凸段部を形成するための生地裁断の1例を示す折曲縫着前のカバー生地の展開図である。
【図2】同じく、被着便座先端形状に対応させて折曲縫着後のカバー本体の全体形状と係合具の配設状况を示す便座カバーの全体背面図である。
【図3】同じく、被着便座への覆着状態と係掛具によるカバー側腹縁部の係着状况を示す被着便座裏面の全体図である。
【図4】同じく、被着便座基部に対するカバー側端部の覆着状態と係掛具の係着状况を示す被着便座基部裏面の部分拡大図である。
【図5】同じく、掛合孔部材の形状の1例を示す掛合孔部材の拡大正面図である。
【図6】同じく、掛合鉤部材の形状の1例を示す掛合鉤部材の拡大正面図とこれに対応するA−A断面図である。
【図7】同じく、カバー側端縁に沿設される係掛ボタンと係掛板の形状の各1例を示す係掛ボタンと係掛板の正面図である。
【符号の説明】
【0029】
1 カバー本体
11 カバー本体の中央部凹形形成辺
11a カバー本体の凹形状部
11b カバー本体の凹形状部中央の凸形部
12 カバー本体の折重端縁縫着折線
13 カバー本体の折重端縁縫着による凸段部
14 カバー本体の両側辺
15 カバー本体の両側のカット辺
16 カバー本体の下側腹縁部
17 被着便座の外周縁に沿ってカバー本体端部を折曲る折重線
2 平帯状ゴム紐
21 平帯状ゴム紐に塗装された粘性材
3 掛合孔部材
31 掛合孔部材の幹部
31a 掛合孔部材の掛合孔
31b 掛合孔部材掛合孔下端の掛合部
32 掛合孔部材の取付け基部
32a 掛合孔部材の取付け孔
4 鉤部材
41 鉤部材の掛合鉤
41a 掛合鉤の前部立ち上がり部
41b 掛合鉤の掛合底
41c 掛合鉤の後部立ち上がり部
42 鉤部材取付け平ゴム
5 係掛ボタン
5a カバー折重端縁凸部中央の表側端縁に設定された基準係掛ボタン
6 係掛板
6a 基準係掛ボタンに対応する係掛板
61 係掛板の係掛ボタン着合孔
62a 係掛板の広径部
62b 係掛板のボタンを着合孔に導く斜辺部
63 係掛板の先端把持部
64 係掛板の基端取付け部
A カバー被着便座
Aa カバー被着便座の外周縁角
Ab カバー被着便座の基部
B カバー被着便座のクッションゴム脚


【特許請求の範囲】
【請求項1】
便座を包む帯状カバーの一側腹縁の中央部分を凹形に形成し、その凹形の中央部に凸形部を設けると共に、前記一側の端縁に沿って所定幅を内側に折り重ねて折重端縁を縫着することにより、便座外周縁角に係る凸段部を形成したことを特徴とする便座カバー
【請求項2】
凹形形成側腹縁の凸形縫着部中央表側端縁に雄若しくは雌の係合部材、対応する他側腹縁に前記雄若しくは雌の係合部材に対応する係合部材を設定し、帯状カバー両側幅縁一方の隅端に、一つ又は複数の掛合孔を列設した幹部と幹部より幅広に取付け孔を形成した取付け基部から成る掛合孔部材、他方隅端に掛合孔に掛合する鉤部材をそれぞれ取付け、中央部の係合雌雄部材と両側各隅端部の掛合各部材との間に適宜間隔をもって雄若しくは雌の係合部材、他側腹縁にこれと対応する雄若しくは雌の係合孔部材をそれぞれ対応させて設定したことを特徴とする請求項1記載の便座カバー
【請求項3】
凹形形成側腹縁の凸形縫着部中央表側端縁の雄若しくは雌の係合部材と、これに対応する他側腹縁に前記雄若しくは雌の係合部材に対応させて設定された係合部材の色彩を、他の係合雌雄部材と異なる色彩にしたことを特徴とする請求項2記載の便座カバー
【請求項4】
帯状カバーの両側を凹形形成側腹縁を上縁として逆台形状になるように斜めにカットし、更に、両カット部の上端角部をカットして同カット部の中点を折曲基準として縫着折重端縁を構成すると共に、折重下部の側幅縁に沿って平帯状ゴム紐を設定し、その延長両端部に掛合孔部材と鉤部材を、それぞれ取り付けるようにしたことを特徴とする請求項2又は請求項3記載の便座カバー
【請求項5】
帯状カバー両側に設定した平帯状ゴム紐の延長両端部に取り付ける掛合孔部材の掛合部形状を直線状に構成し、鉤部材掛合鉤の形状を掛合孔の前記直線状部に掛合する安定幅を持つコの字形鉤に構成したことを特徴とする請求項2又は請求項4記載の便座カバー
【請求項6】
掛合部形状を直線状に構成した一つ又は複数の掛合孔を列設した幹部と幹部より幅広に取付け孔を形成した取付け基部から成る掛合孔部材と、掛合孔の前記直線状部に掛合する安定幅を持つコの字形鉤に構成した鉤部材とから成る便座カバー端縁係着具

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−212462(P2008−212462A)
【公開日】平成20年9月18日(2008.9.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−55551(P2007−55551)
【出願日】平成19年3月6日(2007.3.6)
【出願人】(591205684)オカ株式会社 (14)
【Fターム(参考)】