説明

保持装置

【課題】音が発生することなく移動ユニットの移動及び位置保持を行い、移動ユニットの位置保持時に駆動部材が電力を消費することなく、かつ、移動ユニットの移動時に駆動部材及び保持装置自体での消費電力を低減可能な保持装置を提供すること。
【解決手段】保持ユニット41A,41Bは、第1のレバー移動方向又は第2のレバー移動方向に移動可能で、かつ、第1のレバー移動方向及び第2のレバー移動方向に垂直な方向に移動不可能な状態でレバー部材31に取付けられるピン部材43と、移動ユニット10と接触した際に、レバー部材31の運動エネルギーを吸収して、これ以上は収縮しない状態まで収縮する第1の弾性部材51と、第1の弾性部材51より硬い第2の弾性部材53と、を備える。第2の弾性部材53は、第1の弾性部材51がこれ以上は収縮しない状態まで収縮した後に、第1の弾性部材51により吸収されなかったレバー部材31の運動エネルギーをすべて吸収する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、駆動部材の通電時に発生する駆動力により移動する移動ユニットの位置を保持する保持装置に関する。
【背景技術】
【0002】
移動ユニットを移動する駆動力を通電時に発生する駆動部材として、ボイスコイルモータ(VCM)がある。ボイスコイルモータ等の駆動部材では、非通電時に移動ユニットの位置を保持する力が発生しない。このため、ボイスコイルモータの非通電時に移動ユニットが用いられる製品のユーザが製品を傾けたり、振ったりした場合には、重力等により移動ユニットの位置がずれてしまう。したがって、移動ユニットを停止させる際にも、移動ユニットの位置を保持するため、ボイスコイルモータに流れる電流の制御が必要となる。移動ユニットの位置を保持するための電流制御により、ボイスコイルモータの消費電力が増大してしまう。
【0003】
特許文献1には、ステージ部に撮像部が取付けられた移動ユニットを備える手振れ補正装置が開示されている。この手振れ補正装置では、ボイスコイルモータの通電時に発生する駆動力により、固定部材に対して移動ユニットが移動し、撮像時の手振れ補正が行われる。特許文献1のある実施形態の手振れ補正装置では、固定部材に摩擦発生部が設けられている。ステージ部と摩擦発生部との間に発生する摩擦力により、移動ユニットの位置が保持される。このため、ボイスコイルモータの非通電時でも、移動ユニットの位置保持が可能となる。以上のように、摩擦発生部が、移動ユニットの位置を保持する保持装置に設けられている。
【0004】
また、特許文献1の別のある実施形態の手振れ補正装置では、固定部材に第1の磁石が固定されている。また、ステージ部に第2の磁石が固定されている。第1の磁石と第2の磁石との間の引力により、移動ユニットの位置が保持される。このため、ボイスコイルモータの非通電時でも、移動ユニットの位置保持が可能となる。また、この実施形態では、手振れ補正装置は、規制解放用のコイルを備える。移動ユニットを固定部材に対して移動する際には、規制解放用のコイルを通電する。規制解放用のコイルを通電することにより、固定部材から離れる方向に移動ユニットに対して電磁力が発生する。この電磁力により、 第1の磁石と第2の磁石との間の引力が打ち消され、第1の磁石と第2の磁石との間の引力の影響を受けることなく、移動ユニットが固定部材に対して移動する。以上のように、第1の磁石と、第2の磁石と、規制解放用のコイルとが、移動ユニットの位置を保持する保持装置に設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−171770号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記特許文献1のステージ部と摩擦発生部との間に摩擦力が発生する実施形態では、移動ユニットが固定部材に対して移動する際にも、ステージ部と摩擦発生部とが接触している。このため、移動ユニットの移動時に、騒音が発生する。また、ステージ部と摩擦発生部とが接触しているため、移動ユニットの移動時にもステージ部と摩擦発生部との間に摩擦力が発生する。このため、移動ユニットを移動させる駆動力を、大きくする必要がある。したがって、移動ユニットの移動時に駆動部材であるボイスコイルモータでの消費電力が増加する。
【0007】
上記特許文献1の第1の磁石と第2の磁石との間に引力が発生する実施形態では、規制解放用のコイルを通電することによって発生する電磁力により、移動ユニットと固定部材 との間の引力が打ち消される。このため、移動ユニットの移動時に移動ユニットが固定部材に引寄せられず、移動ユニットを保持する保持力が発生しない。したがって、駆動部材であるボイスコイルモータの駆動時に、ボイスコイルモータでの消費電力を増加させる必要がない。しかし、固定部材と移動ユニットとの間の引力を打ち消す電磁力を発生させるため、移動ユニットを移動させる際には、常に保持装置の規制解放用のコイルを通電する必要がある。したがって、保持装置自体の消費電力が増加してしまう。
【0008】
本発明は上記課題に着目してなされたものであり、その目的とするところは、騒音が発生することなく移動ユニットの移動及び位置保持を行い、移動ユニットの位置保持時に駆動部材が電力を消費することなく、かつ、移動ユニットの移動時に駆動部材及び保持装置自体での消費電力を低減可能な保持装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明のある態様では、駆動部材の通電時に発生する駆動力により移動する移動ユニットの位置を保持する保持装置であって、レバー部材と、前記移動ユニットの移動方向に平行ではなく、かつ、前記移動ユニットに向かう方向である第1のレバー移動方向、又は、前記第1のレバー移動方向とは反対方向である第2のレバー移動方向に、前記レバー部材を移動させるレバー駆動ユニットと、前記レバー部材に連結され、前記移動ユニットに当接することより前記移動ユニットの位置を保持する保持ユニットと、を備え、前記保持ユニットは、前記レバー部材より前記第1のレバー移動方向側に配置される第1の板状部を備え、前記第1のレバー移動方向又は前記第2のレバー移動方向に移動可能で、かつ、前記第1のレバー移動方向及び前記第2のレバー移動方向に垂直な方向に移動不可能な状態で前記レバー部材に取付けられるピン部材と、前記第1の板状部より前記第1のレバー移動方向側に配置される第1の弾性部材であって、前記レバー部材の前記第1のレバー移動方向への移動により前記移動ユニットと接触した際に、前記レバー部材の運動エネルギーを吸収して、これ以上は収縮しない状態まで収縮することにより、前記移動ユニットの位置を固定する第1の弾性部材と、前記第1の板状部と前記レバー部材との間に配置され、前記第1の弾性部材より硬い第2の弾性部材であって、前記第1の弾性部材がこれ以上は収縮しない前記状態まで収縮した後に、前記第1の弾性部材により吸収されなかった前記レバー部材の前記運動エネルギーをすべて吸収する第2の弾性部材と、を備えることを特徴とする保持装置を提供する。
【0010】
この保持装置では、前記レバー駆動ユニットは、ケース部材と、第1の芯位置と第2の芯位置との間で第1の芯移動方向、又は、前記第1の芯移動方向とは反対方向である第2の芯移動方向に移動可能な状態で前記ケース部材に取付けられる芯部材であって、前記第1の芯移動方向に移動することにより、前記レバー部材を前記第1のレバー移動方向に移動させ、前記第2の芯移動方向に移動することにより、前記レバー部材を前記第2のレバー移動方向に移動させる芯部材と、通電することにより、前記第1の芯位置まで前記第1の芯移動方向に前記芯部材を移動させる駆動力を発生する第1のコイルと、通電することにより、前記第2の芯位置まで前記第2の芯移動方向に前記芯部材を移動させる駆動力を発生する第2のコイルと、前記芯部材が前記第1の芯位置まで前記第1の芯移動方向に移動した際に、前記第1の芯位置で前記芯部材を保持する第1の磁力を発生する第1の磁石と、前記芯部材が前記第2の芯位置まで前記第2の芯移動方向に移動した際に、前記第2の芯位置で前記芯部材を保持する第2の磁力を発生する第2の磁石と、を備えることが好ましい。この場合、前記レバー駆動ユニットは、前記芯部材が前記第2の芯位置に位置する際に、前記芯部材が衝突し、前記芯部材の運動エネルギーをすべて吸収する駆動側弾性部材を備えることが好ましい。
【0011】
また、前記ピン部材は、前記レバー部材より前記第2のレバー移動方向側に配置される第2の板状部を備え、前記保持ユニットは、前記第2の板状部と前記レバー部材との間に配置される第3の弾性部材であって、前記レバー部材の前記第2のレバー移動方向へ移動した際に、前記レバー部材の運動エネルギーをすべて吸収する第3の弾性部材を備えることが好ましい。
【0012】
また、前記保持ユニットは、前記ピン部材と、前記第1の弾性部材と、前記第2の弾性部材とを備える第1の保持ユニットと、前記ピン部材と、前記第1の弾性部材と、前記第2の弾性部材とを備え、前記第1の保持ユニットとは異なる位置で前記レバー部材に連結される第2の保持ユニットであって、前記第1の弾性部材が前記第1の保持ユニットとは異なる位置で前記移動ユニットに接触する第2の保持ユニットと、を備えることが好ましい。この場合、前記第1の保持ユニットは、前記第2の保持ユニットとは離れた位置で、かつ、前記移動ユニットの重心を中心として前記第2の保持ユニットとは反対側の位置で、前記第1の弾性部材が前記移動ユニットに接触することが好ましい。
【0013】
また、保持装置は、ボイスコイルモータの駆動力により移動する前記移動ユニットの位置を保持してもよい。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、騒音が発生することなく移動ユニットの移動及び位置保持を行い、移動ユニットの位置保持時に駆動部材が電力を消費することなく、かつ、移動ユニットの移動時に駆動部材及び保持装置自体での消費電力を低減可能な保持装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る移動ユニット駆動装置を示す斜視図。
【図2】第1の実施形態に係る移動ユニット駆動装置を、上側フレームを省略した状態で示す斜視図。
【図3】第1の実施形態に係る移動ユニット駆動装置を、上側フレーム及び移動ユニットを省略した状態で示す斜視図。
【図4】第1の実施形態に係る移動ユニット駆動装置を示す正面図。
【図5】第1の実施形態に係る移動ユニット駆動装置のボイスコイルモータによる電磁力を説明する斜視図。
【図6】第1の実施形態に係る移動ユニット駆動装置の移動ユニットの移動状態を説明する概略図。
【図7】第1の実施形態に係る保持装置を示す斜視図。
【図8】第1の実施形態に係る保持装置のレバー部材、第1の保持ユニット及び第2の保持ユニットの構成を示す斜視図。
【図9】第1の実施形態に係る保持装置のレバー部材の、移動ユニットの位置保持を解除する際の動作を示す概略図。
【図10】第1の実施形態に係る保持装置のレバー部材の、移動ユニットの位置を保持する際の動作を示す概略図。
【図11】レバー部材と移動ユニットとの間に弾性部材が1つのみ設けられた保持装置を参照例として示す概略図。
【図12】第1の実施形態に係る保持装置のレバー部材の移動量と第1の弾性部材及び第2の弾性部材の収縮量との関係を示す概略図。
【図13】第1の実施形態に係る保持装置のソレノイドの、芯部材が第1の芯位置に位置する状態を示す概略図。
【図14】第1の実施形態に係る保持装置のソレノイドの、芯部材が第2の芯位置に位置する状態を示す概略図。
【図15】第1の実施形態の変形例に係る保持装置のソレノイドの、芯部材が第2の芯位置に位置する状態を示す概略図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
(第1の実施形態)
本発明の第1の実施形態について、図1乃至図15を参照して説明する。
【0017】
図1乃至図4は、本実施形態に係る移動ユニット駆動装置1を示す図である。図1乃至図4に示すように、移動ユニット駆動装置1は、上側フレーム3と、固定ねじ5を介して上側フレーム3に固定される下側フレーム7とを備える。上側フレーム3と下側フレーム7との間には、移動ユニット10が設けられている。移動ユニット10は、撮像素子11と、撮像素子11が固定される保持フレーム13とを備える。また、上側フレーム3と保持フレーム13との間、及び、下側フレーム7と保持フレーム13との間には、ボール15が設けられている。ボール15により、上側フレーム3及び下側フレーム7に対して移動可能な状態で、移動ユニット10が支持されている。
【0018】
移動ユニット駆動装置1は、移動ユニット10を移動させる駆動部材である4つのボイスコイルモータ(VCM)20A〜20Dを備える。それぞれのボイスコイルモータ20A〜20Dは、保持フレーム13に固定されるコイル(21A〜21D)と、下側フレーム7に固定される永久磁石(23A〜23D)とを備える。コイル21A〜21Dは、撮像素子11及び保持フレーム13と一体に移動可能であり、移動ユニット10の一部となっている。
【0019】
図2に示すように、それぞれのコイル21A〜21Dは、対応するVCMドライバ(25A〜25D)に接続されている。VCMドライバ25A〜25Dは、VCMコントローラ27に接続されている。VCMコントローラ27は、移動ユニット駆動装置1全体を制御するシステムコントローラ29に接続されている。VCMコントローラ27により、それぞれのボイスコイルモータ20A〜20Dの通電状態、及び、それぞれのコイル21A〜21Dに流れる電流の方向、大きさが制御される。
【0020】
図5は、ボイスコイルモータ20Aの原理を説明する図である。図5に示すように、ボイスコイルモータ20Aでは、永久磁石23Aにより磁界Mが発生している。この状態で、VCMコントローラ27によりコイル21Aに電流I1を流す。この際、フレミング左手の法則により、移動ユニット10を移動させる駆動力である電磁力F1が発生する。一方、VCMコントローラ27によりコイル21Aに電流I1とは反対方向の電流I2を流す。この際、フレミング左手の法則により、電磁力F1とは反対方向に駆動力である電磁力F2が発生する。なお、他のボイスコイルモータ20B〜20Dについても、ボイスコイルモータ20Aと同様にして、移動ユニット10を移動させる駆動力である電磁力が発生する。
【0021】
図6は、移動ユニット10の移動状態を説明する図である。図6に示すように、移動ユニット10は、上側フレーム3及び下側フレーム7に対して、矢印Xの方向及び矢印Yの方向に移動可能であるとともに、矢印θの方向に回動可能である。ここで、ボイスコイルモータ20A,20Bにより矢印Xの方向に電磁力が発生し、ボイスコイルモータ20C,20Dにより矢印Yの方向に電磁力が発生する。VCMコントローラ27は、システムコントローラ29からのそれぞれのコイル21A〜21Dの位置情報等に基づいて、それぞれのコイル21A〜21Dに流れる電流の大きさを制御している。これにより、移動ユニット10の矢印θの方向への回動が防止される状態に、それぞれのボイスコイルモータ20A〜20Dの電磁力の大きさが調整することが可能となる。また、移動ユニット10が矢印θの方向へ回動する状態に、それぞれのボイスコイルモータ20A〜20Dの電磁力の大きさが調整することも可能である。
【0022】
図7は、移動ユニット10の位置を保持する保持装置30を示す図である。図7に示すように、保持装置30は、略T字状のレバー部材31を備える。レバー部材31は、レバー駆動ユニットであるソレノイド33に連結されている。下側フレーム7には、第1の固定フレーム35Aが固定されている。第1の固定フレーム35Aには、第2の固定フレーム35Bが固定されている。また、第2の固定フレーム35Bには、略U字状の第3の固定フレーム35Cが固定されている。第3の固定フレーム35Cには、ソレノイド33が取付けられている。また、第2の固定フレーム35Bには、支軸37を介してレバー部材31が連結されている。レバー部材31は、支軸37を中心として第2の固定フレーム35Bに対して回動可能である。
【0023】
レバー部材31のソレノイド33とは反対側の部位には、第1の保持ユニット41A及び第2の保持ユニット41Bが連結されている。第1の保持ユニット41A及び第2の保持ユニット41Bは、互いに対して異なる位置でレバー部材31に連結されている。本実施形態では、第1の保持ユニット41Aは、第2の保持ユニット41Bとは離れた位置で、かつ、レバー部材31の重心を中心として第2の保持ユニット41Bとは反対側の位置で、レバー部材31に連結されている。
【0024】
図8は、レバー部材31、第1の保持ユニット41A及び第2の保持ユニット41Bの構成を示す図である。図9及び図10は、レバー部材31の移動状態を示す図である。図9及び図10に示すように、レバー部材31は、ソレノイド33が後述する原理で作動することにより、支軸37を中心として回動(移動)する。レバー部材31は、移動ユニット10の移動方向(例えば図6の矢印X、矢印Yの方向)に平行ではなく、かつ、移動ユニット10に向かう方向である第1のレバー移動方向(図9及び図10の矢印A1の方向)、又は、第1のレバー移動方向とは反対方向である第2のレバー移動方向(図9及び図10の矢印A2の方向)に移動する。本実施形態では、第1のレバー移動方向及び第2のレバー移動方向は、移動ユニット10の移動方向に対して略垂直な方向である。
【0025】
レバー部材31が第1のレバー移動方向に移動することにより、第1の保持ユニット41A及び第2の保持ユニット41Bが移動ユニット10に当接する。そして、第1の保持ユニット41A及び第2の保持ユニット41Bと移動ユニット10との間の摩擦力により、移動ユニット10の位置を保持する(図10参照)。
【0026】
図8に示すように、第1の保持ユニット41Aは、レバー部材31に取付けられるピン部材43を備える。ピン部材43は、レバー部材31より第1のレバー移動方向側に配置される第1の板状部45と、レバー部材31より第2のレバー移動方向側に配置される第2の板状部47と、第1の板状部45から第2の板状部47まで延設される柱状部49とを備える。柱状部49がレバー部材31の孔状部48Aに挿通された状態で、ピン部材43がレバー部材31に取付けられている。また、ピン部材43は、第1のレバー移動方向又は第2のレバー移動方向に移動可能で、かつ、第1のレバー移動方向及び第2のレバー移動方向に垂直な方向に移動不可能な状態で、レバー部材31に取付けられている。
【0027】
ピン部材43の第1の板状部45より第1のレバー移動方向側には、第1の弾性部材51が配置されている。ピン部材43の第1の板状部45とレバー部材31との間には、第1の弾性部材51より硬い第2の弾性部材53が配置されている。第2の弾性部材53は第1の弾性部材51より硬いため、第1の弾性部材51より吸収可能な運動エネルギーが大きい。また、ピン部材43の第2の板状部47とレバー部材31との間には、第3の弾性部材55が配置されている。
【0028】
第1の保持ユニット41Aにより移動ユニット10の位置を保持する原理について説明する。レバー部材31が第1のレバー移動方向へ移動することにより、第1の保持ユニット41Aでは、第1の弾性部材51が移動ユニット10に接触する。この際、レバー部材31の運動エネルギーにより、第2の弾性部材53及び第1の板状部45を介して、第1の弾性部材51が移動ユニット10に押付けられる。そして、第1の弾性部材51と移動ユニット10との間の摩擦力により、移動ユニット10の位置が保持される。
【0029】
ここで、第1の弾性部材51は第2の弾性部材53を設けず、参照例として図11に示すように、レバー部材31と移動ユニット10との間に弾性部材57を1つのみ設けて、移動ユニット10の位置を保持する場合を考える。この場合、レバー部材31が第1のレバー移動方向へ移動することにより、弾性部材57が移動ユニット10に接触する。そして、レバー部材31の運動エネルギーにより、弾性部材57が移動ユニット10に押付けられる。
【0030】
この際、弾性部材57は、レバー部材31の運動エネルギーを吸収して、収縮する。ここで、レバー部材31の運動エネルギーが小さい場合、弾性部材57は、これ以上は収縮しない状態まで収縮せず、余分な弾性エネルギーが余ってしまう。余分な弾性エネルギーが余っている場合、弾性部材57の余った弾性エネルギーにより移動ユニット10が移動する。一方、レバー部材31の運動エネルギーが大きい場合、弾性部材57によりすべての運動エネルギーが吸収されない。すなわち、弾性部材57がこれ以上は収縮できない状態まで収縮し場合でも、レバー部材31の運動エネルギーが余分に余ってしまう。余った、運動エネルギーにより、騒音、振動等が発生してしまう。
【0031】
したがって、図11の構成では、騒音等を発生することなく、移動ユニット10の位置保持を適切に行うために、適切な大きさの運動エネルギーでレバー部材31を移動する必要がある。しかし、適切な大きさの運動エネルギーでレバー部材31を移動することは、実際の保持装置30の設計では困難である。
【0032】
そこで、本実施形態では、第1の弾性部材51と、第1の弾性部材51より硬く、吸収可能な運動エネルギーが大きい第2の弾性部材53とが設けられている。本実施形態では、第1の弾性部材51が吸収可能な運動エネルギーより大きい運動エネルギーでレバー部材31を移動する。そして、吸収可能な運動エネルギーが大きい第2の弾性部材53により、第1の弾性部材51により吸収されなかったレバー部材31の運動エネルギーをすべて吸収している。
【0033】
図12は、レバー部材31の移動量と第1の弾性部材51及び第2の弾性部材53の収縮量との関係を示す図である。図12で、Lは第1の弾性部材51が移動ユニット10と接触し始めた状態からの第1のレバー移動方向へのレバー部材31の移動量を示し、S1は第1の弾性部材51の収縮量、S2は第2の弾性部材53の収縮量を示している。
【0034】
図12に示すように、第1の弾性部材51が移動ユニットに押付けられ際には、第1の弾性部材51及び第2の弾性部材53はレバー部材31の運動エネルギーを吸収して、収縮する。ただし、第2の弾性部材53は吸収可能な運動エネルギーが大きいため、ほとんど収縮せず、第1の弾性部材51のみが大きく収縮する。そして、これ以上は収縮しない状態まで第1の弾性部材51が収縮し、移動ユニット10の位置が固定される。
【0035】
そして、第1の弾性部材51がこれ以上は収縮しない状態まで収縮した後は、第2の弾性部材53のみが収縮する。そして、第1の弾性部材51により吸収されなかったレバー部材31の運動エネルギーを、第2の弾性部材53がすべて吸収する。これにより、騒音、振動等の発生が防止される。第1の弾性部材51により吸収可能な運動エネルギーと第2の弾性部材53により吸収可能な運動エネルギーとの合計をレバー部材31の運動エネルギーより大きく設計することにより、このような構成が可能となる。
【0036】
ただし、レバー部材31の運動エネルギーが第2の弾性部材53によりすべて吸収された際に、第2の弾性部材53がこれ以上は収縮しない状態まで収縮してなく、余分な弾性エネルギーが余っている。そこで、本実施形態では、第1のレバー移動方向及び第2のレバー移動方向に垂直な方向に移動不可能な状態で、ピン部材43がレバー部材31に取付けられ、第1の弾性部材51と第2の弾性部材53との間にピン部材43の第1の板状部45が配置されている。このため、第2の弾性部材53の余った弾性エネルギーによる第1の弾性部材51の移動が防止される。
【0037】
すなわち、第1の弾性部材51が吸収可能な運動エネルギーをE1、第2の弾性部材53が吸収可能な運動エネルギーをE2とすると、
E1<E2 …(1)
となる。また、レバー部材31の運動エネルギーをELとする。そして、第1の弾性部材51がこれ以上は収縮しない状態まで収縮し、第2の弾性部材53のみで運動エネルギーの吸収を開始した際の、第2の弾性部材53が吸収している運動エネルギーをE´2とすると、
E1+E´2<EL …(2)
となる。ここで、第1の弾性部材51がこれ以上は収縮しない状態まで収縮するまでは、第1の弾性部材51により吸収される運動エネルギーE1と第2の弾性部材53により吸収される運動エネルギーE´2は同一であるため、
E1=E´2 …(3)
となる。したがって、式(2)及び式(3)から、
2E1<EL …(4)
の関係が成り立つ。また、第1の弾性部材51により吸収可能な運動エネルギーE1と第2の弾性部材53により吸収可能な運動エネルギーE2との合計がレバー部材31の運動エネルギーELより大きいため、
EL<E1+E2 …(5)
の関係が成り立つ。
【0038】
以下、第1の弾性部材51及び第2の弾性部材53を形成する材料について説明する。第1の弾性部材51及び第2の弾性部材53を形成する材料として、ニトリルゴム(NBR)、ポリエチレンフォーム、ウレタンフォーム等がある。ここで、ニトリルゴムの摩擦係数は2〜3程度であり、ポリエチレンフォーム、ウレタンフォームの摩擦係数は0.7〜1程度である。ここで、移動ユニット10を保持する力量をF3、レバー部材31が押圧する力量をF4、第1の弾性部材51の摩擦係数をμとすると、
F3=μF4 …(6)
となる。このため、第1の弾性部材51の摩擦係数μが大きいほど、移動ユニット10を保持する力量F3が大きくなる。
【0039】
また、保持装置30の長期間の使用により、第1の弾性部材51及び第2の弾性部材53が圧縮歪により変形し、元の形状に戻らないことがある。第1の弾性部材51及び第2の弾性部材53が変形することにより、第1の弾性部材51及び第2の弾性部材53が吸収可能な運動エネルギーが小さくなる。したがって、上述の式(1)〜式(5)の関係が成立しなくなる。ここで、一例として、所定の温度状態及び圧力状態の下で所定の力量で所定の時間だけ収縮した場合、ニトリルゴムは圧縮歪により元の形状から10%程度収縮した状態に変形し、ポリエチレンフォーム、ウレタンフォームは圧縮歪により元の形状から2%程度収縮した状態に変形する。
【0040】
以上のように、第1の弾性部材51及び第2の弾性部材53の材料として、摩擦係数は大きいが圧縮歪により変形し易い材料、及び、摩擦係数は小さいが圧縮歪により変形し難い材料が選択可能である。
【0041】
上述の材料から、第1の弾性部材51と第2の弾性部材53とで異なる材料を用いて、第1の弾性部材51が吸収可能な運動エネルギーE1より第2の弾性部材53が吸収可能な運動エネルギーE2を大きく設計する。ただし、第1の弾性部材51と第2の弾性部材53とで同一の材料を用い場合も、材料の密度、面積等を第1の弾性部材51と第2の弾性部材53とで変化させることにより、第1の弾性部材51が吸収可能な運動エネルギーE1より第2の弾性部材53が吸収可能な運動エネルギーE2が大きくなる。
【0042】
例えば、第1の弾性部材51及び第2の弾性部材53の材料として、発泡ウレタンを用いる。発泡ウレタンは、空気と素材との割合を変化させることにより、密度が変化する。このため、密度が15%、20%、40%、50%等の数種類の発泡ウレタンから、第1の弾性部材51及び第2の弾性部材53に用いられる発泡ウレタンを選択可能である。第2の弾性部材53に用いられる発泡ウレタンの密度を第1の弾性部材51に用いられる発泡ウレタンより大きくすることにより、第1の弾性部材51が吸収可能な運動エネルギーE1より第2の弾性部材53が吸収可能な運動エネルギーE2が大きくなる。また、同一の材料では、材料の面積を大きくすることにより、弾性部材(51,53)が吸収可能な運動エネルギーが大きくなる。
【0043】
以上のように、第1の保持ユニット41Aの構成及び第1の保持ユニット41Aにより移動ユニット10の位置を保持する原理について説明したが、第2の保持ユニット41Bについても第1の保持ユニット41Aと同様である。すなわち、第2の保持ユニット41Bも、第1の保持ユニット41Aと同様の構成であり、第1の保持ユニット41Aと同様にして移動ユニット10の位置を保持する。
【0044】
また、本実施形態では、第1の保持ユニット41Aは、第2の保持ユニット41Bとは離れた位置でレバー部材31に連結されている。これにより、移動ユニット10と第1の保持ユニット41Aとの間、及び、移動ユニット10と第2の保持ユニット41Bとの間の離れた2箇所で、摩擦力が発生する。したがって、移動ユニット10の位置を保持する際に、図6の矢印θの方向への移動ユニット10の回動も防止される。なお、第1の保持ユニット41Aは、移動ユニット10の重心を中心として第2の保持ユニット41Bとは反対側の位置で、第1の弾性部材51が移動ユニット10に接触することが好ましい。このような配置にすることにより、移動ユニット10の回動がより有効に防止される。
【0045】
移動ユニット10の位置保持を解除する際には、レバー部材31が第2のレバー移動方向に移動させる。これにより、第1の保持ユニット41A及び第2の保持ユニット41Bが移動ユニット10に当接しない状態となる。この際、第1の保持ユニット41A及び第2の保持ユニット41Bと移動ユニット10との間の摩擦力が発生しないため、移動ユニット10の位置保持が解除される(図9参照)。そして、この状態で移動ユニット10の移動が行われる。
【0046】
ここで、第1の保持ユニット41Aでは、ピン部材43の第2の板状部47とレバー部材31との間に、第3の弾性部材55が配置されている。移動ユニット10の位置保持の解除時にレバー部材31が第2のレバー移動方向へ移動した際には、レバー部材31の運動エネルギーを第3の弾性部材55がすべて吸収する。第3の弾性部材55により吸収可能な運動エネルギーをレバー部材31の運動エネルギーより大きく設計することにより、このような構成が可能となる。第3の弾性部材55でレバー部材31の運動エネルギーがすべて吸収されることにより、騒音、振動等の発生が防止される。
【0047】
なお、第2の保持ユニット41Bでも第1の保持ユニット41Aと同様に、移動ユニット10の位置保持の解除時に、第3の弾性部材55によりレバー部材31の運動エネルギーが吸収される。
【0048】
図13及び図14は、ソレノイド33を示す図である。図13及び図14に示すように、ソレノイド33は、第3の固定フレーム35Cに固定されるケース部材61を備える。ケース部材61には、鉄芯等の芯部材63が移動可能に取付けられている。芯部材63は、図13に示す第1の芯位置と図14に示す第2の芯位置との間で、軸に平行な第1の芯移動方向(図13の矢印C1の方向)、又は、第1の芯移動方向とは反対方向である第2の芯移動方向(図14の矢印C2の方向)に、ケース部材61に対して移動可能である。ソレノイド33は、芯部材63でレバー部材31に連結されている。
【0049】
ケース部材61の内周面には、第1のコイル65Aが固定されている。また、ケース部材61の内周面の第1のコイル65Aより第2の芯移動方向側の部位には、第2のコイル65Bが固定されている。図2に示すように、第1のコイル65A及び第2のコイル65Bは、ソレノイドドライバ67に接続されている。ソレノイドドライバ67は、ソレノイドコントローラ69に接続されている。ソレノイドコントローラ69は、システムコントローラ29に接続されている。ソレノイドコントローラ69により、第1のコイル65A及び第2のコイル65Bの通電状態が制御されている。
【0050】
ソレノイドコントローラ69によって第1のコイル61Aを通電することにより、第1の芯位置まで第1の芯移動方向に芯部材63を移動させる駆動力である電磁力が発生する。芯部材63が第1の芯移動方向に移動することにより、レバー部材31が第1のレバー移動方向に移動する。そして、第1の保持ユニット41A及び第2の保持ユニット41Bが移動ユニット10と接触し、第1の保持ユニット41A及び第2の保持ユニット41Bにより移動ユニット10の位置が保持される。
【0051】
ケース部材61の第1の芯移動方向側の内周面には、第1の磁石71Aが固定されている。第1の磁石71Aは、芯部材63が第1の芯位置まで第1の芯移動方向に移動した際に、第1の芯位置で芯部材63を保持する第1の磁力を発生する。第1の磁石71Aの第1の磁力により芯部材63が第1の芯位置で保持されるため、芯部材63の第1の芯位置での位置保持の際に、第1のコイル65A及び第2のコイル65Bを通電する必要はない。したがって、保持装置30自体の消費電力が低減される。
【0052】
ここで、図13に示すように、芯部材63が第1の芯位置で位置保持される際は、第1の磁石71Aと芯部材63との間に隙間が形成されている。すなわち、第1の磁石71Aの第1の磁力は、第1の磁石71Aとの間に隙間を有する第1の芯位置で芯部材63を保持する大きさに設計されている。第1の磁石71Aとの間に隙間を有する状態で芯部材63が第1の芯位置で保持されることにより、第1の磁石71Aに芯部材63が衝突しない。このため、騒音、振動等の発生が防止される。また、第1の弾性部材51をこれ以上収縮しない状態まで収縮し、さらに第2の弾性部材53を収縮する移動ユニット10の位置保持時の適切な力量をレバー部材31が有する状態に、芯部材63が第1の芯位置で保持されている。
【0053】
そして、芯部材63を第1の芯位置から移動する際には、ソレノイドコントローラ69によって第2のコイル61Bを通電することにより、第2の芯位置まで第2の芯移動方向に芯部材63を移動させる駆動力である電磁力が発生する。第2のコイル61Bによる電磁力が第1の磁石71Aの第1の磁力より大きくなることにより、芯部材63が第1の芯位置から第2の芯移動方向に移動する。芯部材63が第2の芯移動方向に移動することにより、レバー部材31が第2のレバー移動方向に移動する。そして、第1の保持ユニット41A及び第2の保持ユニット41Bが移動ユニット10と接触しない状態となり、第1の保持ユニット41A及び第2の保持ユニット41Bによる移動ユニット10の位置保持が解除される。
【0054】
ケース部材61の第2の芯移動方向側の内周面には、第2の磁石71Bが固定されている。第2の磁石71Bは、芯部材63が第2の芯位置まで第2の芯移動方向に移動した際に、第2の芯位置で芯部材63を保持する第2の磁力を発生する。第2の磁石71Bの第2の磁力により芯部材63が第2の芯位置で保持されるため、芯部材63の第2の芯位置での位置保持の際に、第1のコイル65A及び第2のコイル65Bを通電する必要はない。したがって、保持装置30自体の消費電力が低減される。
【0055】
また、芯部材63と第2の磁石71Bとの間には、駆動側弾性部材73が設けられている。駆動側弾性部材73は、芯部材63が第2の芯位置に位置する際に、芯部材63が衝突し、芯部材63の運動エネルギーをすべて吸収する。これにより、騒音、振動等の発生が防止される。駆動側弾性部材73により吸収可能な運動エネルギーを芯部材63の運動エネルギーより大きく設計することにより、このような構成が可能となる。
【0056】
なお、本実施形態では、駆動側弾性部材73は、芯部材63と第2の磁石71Bとの間に設けられているが、これに限るものではない。例えば、変形例として図15に示すように、ケース部材61の第1の芯移動方向側に、駆動側弾性部材73が設けられてもよい。この場合、芯部材63には、外周方向に突出する突出部75を備える。芯部材63が第2の芯位置に位置する際は、芯部材63の突出部75が駆動側弾性部材73に衝突している。そして、駆動側弾性部材73で芯部材63の運動エネルギーをすべて吸収している。ここで、芯部材63の突出部75が駆動側弾性部材73に衝突することにより、芯部材63の第2の芯位置より第2の芯移動方向側への移動が規制される。また、本変形例では、芯部材63が第2の芯位置に位置する際には、芯部材63と第2の磁石71Bとの間に隙間を有する。
【0057】
そして、芯部材63を第2の芯位置から移動する際には、ソレノイドコントローラ69によって第1のコイル61Aを通電することにより、第1の芯位置まで第1の芯移動方向に芯部材63を移動させる駆動力である電磁力が発生する。第1のコイル61Aによる電磁力が第2の磁石71Bの第2の磁力より大きくなることにより、芯部材63が第2の芯位置から第1の芯移動方向に移動する。そして、上述のようにレバー部材31が第1のレバー移動方向に移動し、第1の保持ユニット41A及び第2の保持ユニット41Bにより移動ユニット10の位置が保持される。
【0058】
以上のように、本実施形態のソレノイド33では、第1の磁石71Aの第1の磁力により芯部材63が第1の芯位置で保持される。また、第2の磁石71Bの第2の磁力により芯部材63が第2の芯位置で保持される。このため、第1の芯位置と第2の芯位置との間で芯部材63を移動する場合以外は、第1のコイル65A又は第2のコイル65Bを通電する必要はない。したがって、保持装置30自体の消費電力が低減される。
【0059】
そこで上記構成の移動ユニット10の保持装置30では、以下の効果を奏する。すなわち、保持装置30では、ソレノイド33が作動することにより、レバー部材31が回動(移動)する。レバー部材31が第1のレバー移動方向に移動することにより、第1の保持ユニット41A及び第2の保持ユニット41Bの第1の弾性部材51が移動ユニット10に当接する。そして、第1の保持ユニット41A及び第2の保持ユニット41Bの第1の弾性部材51と移動ユニット10との間の摩擦力により、移動ユニット10の位置を保持する。以上のように、駆動部材であるボイスコイルモータ20A〜20Dが電力を消費することなく、移動ユニット10の位置保持を行うことができる。
【0060】
また、保持装置30では、レバー部材31が第2のレバー移動方向に移動させることにより、第1の保持ユニット41A及び第2の保持ユニット41Bが移動ユニット10に当接しない状態となる。この際、第1の保持ユニット41A及び第2の保持ユニット41Bと移動ユニット10との間の摩擦力が発生しないため、移動ユニット10の位置保持が解除される。そして、この状態で移動ユニット10の移動が行われる。第1の保持ユニット41A及び第2の保持ユニット41Bが移動ユニット10に当接しない状態で移動ユニット10の移動が行われるため、移動ユニット10の移動時の騒音を防止できる。また、移動ユニット10の移動時のボイスコイルモータ20A〜20Dの消費電力を低減することができる。
【0061】
また、保持装置30の第1の保持ユニット41A及び第2の保持ユニット41Bでは、第1の弾性部材51と、第1の弾性部材51より硬く、吸収可能な運動エネルギーが大きい第2の弾性部材53とが設けられている。移動ユニット10の位置を保持する際は、第1の弾性部材51が吸収可能な運動エネルギーより大きい運動エネルギーでレバー部材31を移動する。そして、吸収可能な運動エネルギーが大きい第2の弾性部材53により、第1の弾性部材51により吸収されなかったレバー部材31の運動エネルギーをすべて吸収している。移動ユニット10の位置を保持する際は、これ以上は収縮しない状態まで第1の弾性部材51が収縮しているため、第1の弾性部材51では余分な弾性エネルギーが余っていない。このため、移動ユニット10の位置が強固に固定される。また、第1の弾性部材51により吸収されなかったレバー部材31の運動エネルギーを第2の弾性部材53がすべて吸収することにより、騒音、振動等の発生を防止される。以上のように、騒音、振動等を発生することなく移動ユニット10の位置を確実に保持することができる。
【0062】
また、保持装置30の第1の保持ユニット41A及び第2の保持ユニット41Bでは、レバー部材31の運動エネルギーが第2の弾性部材53によりすべて吸収された際に、第2の弾性部材53がこれ以上は収縮しない状態まで収縮してなく、余分な弾性エネルギーが余っている。そこで、保持装置30では、第1のレバー移動方向及び第2のレバー移動方向に垂直な方向に移動不可能な状態で、ピン部材43がレバー部材31に取付けられ、第1の弾性部材51と第2の弾性部材53との間にピン部材43の第1の板状部45が配置されている。このため、第2の弾性部材53の余った弾性エネルギーによる第1の弾性部材51の移動が防止される。これにより、より確実に移動ユニット10の位置を保持することができる。
【0063】
また、保持装置30のソレノイド33では、第1の磁石71Aの第1の磁力により芯部材63が第1の芯位置で保持される。また、第2の磁石71Bの第2の磁力により芯部材63が第2の芯位置で保持される。このため、第1の芯位置と第2の芯位置との間で芯部材63を移動する場合以外は、第1のコイル65A又は第2のコイル65Bを通電する必要はない。したがって、保持装置30自体の消費電力を低減することができる。
【0064】
また、保持装置30のソレノイド33には、駆動側弾性部材73が設けられている。駆動側弾性部材73は、芯部材63が第2の芯位置に位置する際に、芯部材63が衝突し、芯部材63の運動エネルギーをすべて吸収する。これにより、移動ユニット10の位置保持を解除する際に、レバー駆動ユニットであるソレノイド33での騒音、振動等の発生を防止することができる。
【0065】
また、保持装置30のソレノイド33では、芯部材63が第1の芯位置で位置保持される際に、第1の磁石71Aと芯部材63との間に隙間が形成されている。すなわち、第1の磁石71Aの第1の磁力は、第1の磁石71Aとの間に隙間を有する第1の芯位置で芯部材63を保持する大きさに設計されている。第1の磁石71Aとの間に隙間を有する状態で芯部材63が第1の芯位置で保持されることにより、第1の磁石71Aに芯部材63が衝突しない。このため、移動ユニット10の位置を保持する際に、ソレノイド33での騒音、振動等の発生を防止することができる。
【0066】
また、保持装置30の第1の保持ユニット41A及び第2の保持ユニット41Bでは、ピン部材43の第2の板状部47とレバー部材31との間に、第3の弾性部材55が配置されている。移動ユニット10の位置保持の解除時にレバー部材31が第2のレバー移動方向へ移動した際には、レバー部材31の運動エネルギーを第3の弾性部材55がすべて吸収する。第3の弾性部材55でレバー部材31の運動エネルギーがすべて吸収されることにより、移動ユニット10の位置保持を解除する際に、騒音、振動等の発生を防止することができる。
【0067】
また、保持装置30では、第1の保持ユニット41Aは、第2の保持ユニット41Bとは離れた位置でレバー部材31に連結されている。これにより、移動ユニット10と第1の保持ユニット41Aとの間、及び、移動ユニット10と第2の保持ユニット41Bとの間の離れた2箇所で、摩擦力が発生する。したがって、移動ユニット10の位置を保持する際に、矢印θの方向への移動ユニット10の回動を防止することができる。また、第1の保持ユニット41Aは、移動ユニット10の重心を中心として第2の保持ユニット41Bとは反対側の位置で、第1の弾性部材51が移動ユニット10に接触している。これにより、移動ユニット10の回動をより有効に防止することができる。
【0068】
(その他の変形例)
なお、第1の実施形態では、移動ユニット10は、撮像素子11と、保持フレーム13とを備えるが、これに限るものではない。ボイスコイルモータ(20A〜20D)等の駆動部材の通電時に発生する駆動力により移動する移動ユニットであればよい。例えば、移動ユニット(10)が、レンズと、レンズを保持するレンズ枠とを備えてもよい。この場合、移動ユニット(10)の移動により、カメラの焦点距離の調整等が行われる。
【0069】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変形ができることは勿論である。
【符号の説明】
【0070】
1…移動ユニット駆動装置、10…移動ユニット、30…保持装置、31…レバー部材、33…ソレノイド、41A…第1の保持ユニット、41B…第2の保持ユニット、43…ピン部材、45…第1の板状部、51…第1の弾性部材、53…第2の弾性部材。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動部材の通電時に発生する駆動力により移動する移動ユニットの位置を保持する保持装置であって、
レバー部材と、
前記移動ユニットの移動方向に平行ではなく、かつ、前記移動ユニットに向かう方向である第1のレバー移動方向、又は、前記第1のレバー移動方向とは反対方向である第2のレバー移動方向に、前記レバー部材を移動させるレバー駆動ユニットと、
前記レバー部材に連結され、前記移動ユニットに当接することより前記移動ユニットの位置を保持する保持ユニットと、
を具備し、
前記保持ユニットは、
前記レバー部材より前記第1のレバー移動方向側に配置される第1の板状部を備え、前記第1のレバー移動方向又は前記第2のレバー移動方向に移動可能で、かつ、前記第1のレバー移動方向及び前記第2のレバー移動方向に垂直な方向に移動不可能な状態で前記レバー部材に取付けられるピン部材と、
前記第1の板状部より前記第1のレバー移動方向側に配置される第1の弾性部材であって、前記レバー部材の前記第1のレバー移動方向への移動により前記移動ユニットと接触した際に、前記レバー部材の運動エネルギーを吸収して、これ以上は収縮しない状態まで収縮することにより、前記移動ユニットの位置を固定する第1の弾性部材と、
前記第1の板状部と前記レバー部材との間に配置され、前記第1の弾性部材より硬い第2の弾性部材であって、前記第1の弾性部材がこれ以上は収縮しない前記状態まで収縮した後に、前記第1の弾性部材により吸収されなかった前記レバー部材の前記運動エネルギーをすべて吸収する第2の弾性部材と、
を備えることを特徴とする保持装置。
【請求項2】
前記レバー駆動ユニットは、
ケース部材と、
第1の芯位置と第2の芯位置との間で第1の芯移動方向、又は、前記第1の芯移動方向とは反対方向である第2の芯移動方向に移動可能な状態で前記ケース部材に取付けられる芯部材であって、前記第1の芯移動方向に移動することにより、前記レバー部材を前記第1のレバー移動方向に移動させ、前記第2の芯移動方向に移動することにより、前記レバー部材を前記第2のレバー移動方向に移動させる芯部材と、
通電することにより、前記第1の芯位置まで前記第1の芯移動方向に前記芯部材を移動させる駆動力を発生する第1のコイルと、
通電することにより、前記第2の芯位置まで前記第2の芯移動方向に前記芯部材を移動させる駆動力を発生する第2のコイルと、
前記芯部材が前記第1の芯位置まで前記第1の芯移動方向に移動した際に、前記第1の芯位置で前記芯部材を保持する第1の磁力を発生する第1の磁石と、
前記芯部材が前記第2の芯位置まで前記第2の芯移動方向に移動した際に、前記第2の芯位置で前記芯部材を保持する第2の磁力を発生する第2の磁石と、
を備えることを特徴とする請求項1の保持装置。
【請求項3】
前記レバー駆動ユニットは、前記芯部材が前記第2の芯位置に位置する際に、前記芯部材が衝突し、前記芯部材の運動エネルギーをすべて吸収する駆動側弾性部材を備えることを特徴とする請求項2の保持装置。
【請求項4】
前記ピン部材は、前記レバー部材より前記第2のレバー移動方向側に配置される第2の板状部を備え、
前記保持ユニットは、前記第2の板状部と前記レバー部材との間に配置される第3の弾性部材であって、前記レバー部材の前記第2のレバー移動方向へ移動した際に、前記レバー部材の運動エネルギーをすべて吸収する第3の弾性部材を備えることを特徴とする請求項1の保持装置。
【請求項5】
前記保持ユニットは、
前記ピン部材と、前記第1の弾性部材と、前記第2の弾性部材とを備える第1の保持ユニットと、
前記ピン部材と、前記第1の弾性部材と、前記第2の弾性部材とを備え、前記第1の保持ユニットとは異なる位置で前記レバー部材に連結される第2の保持ユニットであって、前記第1の弾性部材が前記第1の保持ユニットとは異なる位置で前記移動ユニットに接触する第2の保持ユニットと、
を備えることを特徴とする請求項1の保持装置。
【請求項6】
前記第1の保持ユニットは、前記第2の保持ユニットとは離れた位置で、かつ、前記移動ユニットの重心を中心として前記第2の保持ユニットとは反対側の位置で、前記第1の弾性部材が前記移動ユニットに接触することを特徴とする請求項5の保持装置。
【請求項7】
ボイスコイルモータの駆動力により移動する前記移動ユニットの位置を保持することを特徴とする請求項1乃至請求項6のいずれか1の保持装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2012−159674(P2012−159674A)
【公開日】平成24年8月23日(2012.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−18973(P2011−18973)
【出願日】平成23年1月31日(2011.1.31)
【出願人】(000000376)オリンパス株式会社 (11,466)
【Fターム(参考)】