説明

保護フレーム構造体

【課題】重量物を車両に搭載するために用いる、軽量で剛性に優れた保護フレーム構造体の提供を目的とする。
【解決手段】車両のフロアパネルに固定する左右一対のサイドフレームと、左右のサイドフレームのフロント側端部付近間を連結したフロントフレームと、リア側端部付近間を連結したリアフレームとを有し、サイドフレームはアルミ押出材で製作してあり、フロントパネルに固定するためのブラケット部を一体的に形成するとともに、フロントフレーム及びリアフレームを連結するための嵌合凹部を一体的に形成してあり、フロントフレーム及びリアフレームの端部をサイドフレームに形成した嵌合凹部に呑み込ませて連結してあることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は車両に重量物を搭載するのに用いるための保護フレーム構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電気自動車、ハイブリッド自動車等の開発及び普及に伴い、従来より、容量の大きいバッテリー等の重量物を車両に搭載する必要が生じている。
これらの重量物は車両が衝突した場合に保護する必要があり、特に搭載する重量物が電源部である場合に、衝突時に電源部の損傷を防ぐ必要性がある。
そこで、重量物を車両に搭載する場合に、この重量物を車両衝突時に保護するための保護フレーム構造体が必要となる。
その一方で、保護フレーム構造体が重くなると車両の軽量化を図るのに障害となる。
特許文献1には、アルミ押出材を用いた車両用バッテリーの保護筐体を開示するが、各壁材等を単に溶接するものであり、連結強度及びその信頼性に欠ける問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開特開2008−285150号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、重量物を車両に搭載するために用いる、軽量で剛性に優れた保護フレーム構造体の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に係る保護フレーム構造体は、車両のフロアパネルに固定する左右一対のサイドフレームと、左右のサイドフレームのフロント側端部付近間を連結したフロントフレームと、リア側端部付近間を連結したリアフレームとを有し、サイドフレームはアルミ押出材で製作してあり、フロアパネルに固定するためのブラケット部を一体的に形成するとともに、フロントフレーム及びリアフレームを連結するための嵌合凹部を一体的に形成してあり、フロントフレーム及びリアフレームの端部をサイドフレームに形成した嵌合凹部に呑み込ませて連結してあることを特徴とする。
本明細書においては、車両の前側をフロント側と称し、車両の幅方向を左右方向と表現する。
ここで、車両のフロアパネルとは車体を構成する底部のパネル部をいい、フロアパネルは車両の構造部材であるサイドメンバーに取り付けられている。
本発明に係る保護フレーム構造体は、車両に重量物を搭載する際に、この重量物を車両に固定すること及び衝突時に保護することを目的で使用されるものをいう。
重量物の例としては、概ね50kg以上の重量を有し、車両搭載時に固定する必要があるものであり、例えばハイブリッド自動車や電気自動車におけるバッテリー等が代表例として挙げられる。
なお、本発明に係る重量物には積載荷物のような、運送重量物は含まれない。
【0006】
本発明においては、サイドフレームが上方に立ち上げた立上げ部を一体的に有し、この立上げ部の上部にアッパー部材を連結することで保護フレーム構造体を形成してもよい。
重量物はサイドフレームあるいは、フロント及びリアフレームに固定することになるが、アッパー部材でこの重量物の上部を覆うように、サイドフレーム間の上部を連結すると車両衝突時の保護性が向上する。
従って、アッパー部材の構造には特に制限が無く、パネル材でも、フレームを枠組みした枠部材でも良い。
また、サイドフレームをアルミ押出材で製作した場合に断面形状の自由度が高いことからサイドフレームにフロント及びリアフレームを連結するための嵌合凹部のみならず、縦フレームを連結するための上方に開口した嵌合凹部を同時に形成し、縦フレームの下端部をこの嵌合凹部に呑み込ませて連結してもよい。
その場合には縦フレームの上部をアッパー部材で連結するとよい。
【0007】
本発明に用いるアルミ押出材とは、アルミニウム合金を押出成形にて加工して得られた部材をいい、アルミニウム合金はJIS6000系、7000系等の各種押出材用合金を採用することができる。
【0008】
嵌合凹部の形成方法としては、押出材のベース部から2つのリブを対向して延出させることでこの対向リブ間に嵌合凹部を形成することが可能である。
また、嵌合凹部と表現したのは、フロントフレーム、リアフレームあるいは縦フレームの端部を、対向した一対のリブで挟み込むように嵌着できることを趣旨としたものである。
また、嵌合凹部に呑み込ませたフロントフレーム、リアフレーム、あるいは縦フレームの端部との固定方法はボルト締結でも溶接接合でもよい。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係る保護フレーム構造体にあっては、左右一対のサイドフレームを、車体を構成するフロアパネルに固定し、フロントフレーム及びリアフレームの両端部をサイドフレームに形成した嵌合凹部に呑み込ませるように連結したことにより、この保護フレームに重量物を固定すると、重量物の荷重はフロアパネルを介して車両サイドメンバーで支えることになるので保護フレームの軽量化が可能になり、且つ、フレーム間の連結部の連結強度が高く、従来の突合溶接に比較して連結強度の信頼性が高い。
これにより、保護フレーム構造体の軽量化と剛性確保の両立を図ることが可能になるとともに車両衝突時に車両搭載物を保護することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】車両のフロアパネルに固定した保護フレーム構造体を透視図として示す。
【図2】本発明に係る保護フレーム構造体の第1の実施例を示す。
【図3】連結部の拡大図を示す。
【図4】第2の実施例の連結構造例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明に係る保護フレーム構造体10(以下単に構造体と称する)の構造例を以下図面に基づいて説明する。
図1に車両1のフロアパネルに本発明に係る保護フレーム構造10を固定した状態を透視図として示す。
構造体10は、図2に示すように左右一対のサイドフレーム11R,11Lと、そのフロント側の端部付近間を連結したフロントフレーム12及びリア側の端部付近間を連結したリアフレーム13とを有している。
これら、サイドフレーム11R,11L、フロントフレーム12及びリアフレーム13はアルミ押出材にて製作してある。
本実施例においては、サイドフレーム11R,11Lとして、図2において、上下方向の立ち上げ幅が大きい押出材を用い、フロアパネル2に固定するブラケット部11a、及びフロントフレーム12の端部、リアフレームの13の端部を呑み込み連結する嵌合凹部Jから立上げ部14を一体的に形成することで左右のサイドフレームの内側に搭載する、重量物の収容空間を設けた例となっている。
なお、図2ではフロアパネル2を部分的に表してある。
【0012】
さらに詳細に説明すると、フロントフレーム12及びリアフレーム13とサイドフレーム11R,11Lとの連結は嵌合連結構造になっていて、フロントフレーム12とサイドフレーム11Lとの連結部拡大図を図3に示す。
サイドフレーム11Lは、立上げ部14を一体的に形成するために側壁11e,11fの途中をリブ11gで連結した中空断面形状のアルミ押出材になっているとともに、図3にて、下端部の外側にフランジ部11a及び内側に上下一対の連結用リブ11c,11dを延出させた一体構造になっている。
この上下の対向配置した連結用リブ11c,11dで嵌合凹部Jを形成し、嵌合凹部Jにフロントフレーム12の端部12aを呑み込ませる。
リブとフロントフレーム12の側壁との連結方法はボルト締結でも溶接接合でもよい。
フロントフレームの反対側の端部及びリアフレーム13の両端部も同様の構造になっているので説明を省略する。
【0013】
左右のサイドフレーム11R,11Lは、図1に示すように車体のフロアパネルであって、車体の幅方向両側、車両前後方向に固定できるようになっている。
フロアパネル2は車両のサイドメンバー(図示省略)に連結されている。
サイドフレーム11R,11Lにはこのフロアパネル2に固定するためのブラケット部11aを押出成形にて一体的に形成してあり、取付孔11bを用いてボルトオン可能になっている。
二次電池モジュール等の電源部のような重量物はサイドフレーム11R,11Lとフロントフレーム12、リアフレーム13との枠組材に固定する。
また、本発明における構造体にあっては、サイドフレーム11R,11Lの上端部間をアッパー部材20にて連結するとよい。
図2に示した実施例では、アッパー部材20としてプレス成形したパネル部材を用いた例になっているが、フレーム部材を枠組したものでもよい。
【0014】
このような構造体10を採用したことにより、車両が衝突した際に重量物に衝突荷重が加わると、その荷重は左右一対のサイドフレーム11R,11Lを介してフロアパネルに伝達される。
また、サイドフレーム11R,11Lとフロントフレーム12及びリアフレーム13とのコーナー連結部が嵌合連結構造になっているので、ねじり剛性が高く、車両の前後方向の衝突のみならず、側突に対しても車両搭載物を保護する。
図2に示したように立上げ部14をサイドフレーム11R,11Lに一体的に形成してあると側突に対する保護効果が更に大きい。
【0015】
図4にフレーム連結構造として、第2の実施例を示す。
サイドフレーム111Lを代表例として説明するが、他のフレームの連結部も同様である。
サイドフレーム111Lから外側にブラケット部111a,内側に対向して連結用リブ111c,111dを形成するとともに、上方に向けて対向配置した連結用リブ111e,111fを形成し、この連結用リブ111e,111fとの間に形成される嵌合凹部に縦フレーム15の下端部を呑み込ませて嵌合連結する例となっている。
この場合にも嵌合連結になっているのでねじり剛性が高い。
図4では、フロント側のコーナー部を部分的に示したが、縦フレーム15はサイドフレーム111Lの前後方向に亘って複数本配置し、その上部をアッパー部材で連結してある。
また、縦フレーム15は中空断面からなる押出材で製作されている。
実施例2は、実施例1の立上げ部14の替わりに縦フレーム15を採用したものであり、立ち上げ高さを確保しやすく、立上げ部が高い場合に、保護フレーム構造体全体の軽量化を図るのに有効である。
【符号の説明】
【0016】
1 車両
2 フロアパネル
10 保護フレーム構造体
11a ブラケット部
11R,11L サイドフレーム
12 フロントフレーム
13 リアフレーム
14 立上げ部
15 縦フレーム
20 アッパー部材
111L サイドフレーム
J 嵌合凹部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両のフロアパネルに固定する左右一対のサイドフレームと、
左右のサイドフレームのフロント側端部付近間を連結したフロントフレームと、リア側端部付近間を連結したリアフレームとを有し、
サイドフレームはアルミ押出材で製作してあり、フロアパネルに固定するためのブラケット部を一体的に形成するとともに、フロントフレーム及びリアフレームを連結するための嵌合凹部を一体的に形成してあり、フロントフレーム及びリアフレームの端部をサイドフレームに形成した嵌合凹部に呑み込ませて連結してあることを特徴とする保護フレーム構造体。
【請求項2】
サイドフレームは、立上げ部を一体的に有し、当該立上げ部の上部にアッパー部材を連結してあることを特徴とする請求項1記載の保護フレーム構造体。
【請求項3】
サイドフレームは、上方に開口した嵌合凹部を有し、当該嵌合凹部に縦フレームの下端部を呑み込ませて連結し、当該縦フレームの上部にアッパー部材を連結してあることを特徴とする請求項1記載の保護フレーム構造体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−6037(P2011−6037A)
【公開日】平成23年1月13日(2011.1.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−154435(P2009−154435)
【出願日】平成21年6月29日(2009.6.29)
【出願人】(000100791)アイシン軽金属株式会社 (137)
【Fターム(参考)】