説明

保護回路

【課題】電流検出抵抗を必要とせず、また負荷としてのモータ制御回路16の駆動回路12が短絡等の異常であれば電流を遮断し正常に戻れば再び電流を流すようにした保護回路を提供する。
【解決手段】入力電圧aをトランジスタTr1を介して負荷側に印加し、トランジスタTr1の負荷側の電圧と基準電圧bを比較手段cで比較し、トランジスタTr1の負荷側の電圧が基準電圧bより低くなると比較手段cの出力によりトランジスタTr1がOFF制御される保護回路において、負荷側に所定電流値以上の過大電流が流れるとトランジスタTr1のエミッタ・コレクタ間電圧が所定電圧値以上に大きくなって、トランジスタTr1の負荷側の電圧が基準電圧bよりも低くなるように、トランジスタTr1のベース電流を設定する。また、トランジスタTr1と並列に復帰抵抗RXを接続する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、負荷の異常により、負荷に過大な電流が流れるのを遮断する保護回路に関し、また負荷が正常に戻ると再び電流を流すようにした保護回路に関するものである。
【背景技術】
【0002】
負荷の短絡等の異常により、負荷に過大電流が流れるのを遮断する従来の保護回路の一例を図5を参照して説明する。図5は、従来の保護回路の一例の回路図である。図5において、入力電圧aが、NPN型のトランジスタTr1のエミッタ・コレクタ間と電流検出抵抗RYを直列に介して、さらに負荷側のスイッチSWを介して負荷10に印加される。また、入力電圧aの入力端はベース電流制御抵抗RBを介してPNP型のトランジスタTr2のエミッタに接続され、そのコレクタがトランジスタTr1のベースに接続される。トランジスタTr2のベースは、NPN型のトランジスタTr3のコレクタ・エミッタ間を介して接地される。そして、電流検出抵抗RYの負荷側の電圧が比較手段cの一方の入力端に与えられる。比較手段cの他方の入力端には、基準電圧bが与えられる。さらに、この比較手段cの出力端がトランジスタTr3のベースに接続される。また、この出力端には、プルアップ抵抗R1とベースブリーダ抵抗R2により、入力電圧aを分割した適宜に設定されたバイアス電圧が印加されている。
【0003】
かかる構成において、負荷側のスイッチSWが閉成されると、負荷10に入力電圧aが印加される。ここで、負荷10の短絡等の異常により過大電流が流れると、電流検出抵抗RYで大きな電圧降下を生じ、比較手段cの一方の入力端に印加される電圧が基準電圧bよりも低下し、これを比較手段cが検出して出力端から出力される信号が「L」となって、トランジスタTr1がOFF制御される。もって、トランジスタTr1のOFF制御で負荷10に流れる過大電流が遮断される。ここで、ベース電流制御抵抗RBは、トランジスタTr1が飽和領域で動作するように、例えば150Ω等に設定されており、過大電流が流れてもエミッタ・コレクタ間電圧はさして大きくならない。
【0004】
また、負荷に過大電流が流れるのを検出しても、所定時間継続して流し、その後は過大電流のON・OFF制御を繰り返すようにした技術が、特開昭63−59718号公報(特許文献1)に示されている。この特許文献1に記載された技術は、負荷に流れる過大電流により負荷に印加される電圧が低下したのを検出しても直ちに遮断することなく、所定時間継続後に過大電流を遮断することで、電圧平滑コンデンサ等に流入する突入電流によって電流が遮断されることがないようにしたものである。
【特許文献1】特開昭63−59718号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
図5に示す従来技術にあっては、過大電流を検出するための電流検出抵抗RYが必要である。この電流検出抵抗RYは、容量が比較的に大きくてその外形が大きく、広い設置スペースを必要とし、また高価なものである、という不具合がある。また、特許文献1記載の従来技術では、負荷が短絡等の異常な状態でも、過大電流が断続的に流れ、電源がバッテリー等であれば、その消耗が激しい、という不具合がある。
【0006】
本発明は、上述したごとき従来技術の不具合を改善すべくなされたもので、電流検出抵抗を必要とせず、また負荷が短絡等の異常であれば電流を遮断するが負荷が正常に戻れば再び電流を流すようにした保護回路を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
かかる目的を達成するために、本発明の保護回路は、入力電圧をトランジスタを介して負荷に印加し、前記トランジスタの負荷側の電圧と基準電圧を比較手段で比較し、前記トランジスタの負荷側の電圧が前記基準電圧より低くなると前記比較手段の出力により前記トランジスタがOFF制御される保護回路において、前記負荷に所定電流値以上の過大電流が流れると前記トランジスタのエミッタ・コレクタ間電圧が所定電圧値以上に大きくなって、前記トランジスタの負荷側の電圧が前記基準電圧よりも低くなるように、前記トランジスタのベース電流を設定して構成されている。
【0008】
そして、前記トランジスタと並列に復帰抵抗を接続して構成しても良い。
【発明の効果】
【0009】
請求項1記載の保護回路にあっては、負荷に短絡等の異常があって過大電流が流れると、トランジスタのエミッタ・コレクタ間電圧が大きくなり、トランジスタの負荷側の電圧が基準電圧より低いものとなる。これを比較手段で検出して、トランジスタがOFF制御されて過大電流が直ちに遮断される。トランジスタのエミッタ・コレクタ間電圧の大きさの変化により過大電流を検出しており、従来技術のごとき電流検出抵抗を必要とせず、それだけ部品点数が少なく、しかも高価な部品が省かれる。
【0010】
請求項2記載の保護回路にあっては、トランジスタと並列に復帰抵抗を接続することで、負荷が正常に戻れば、復帰抵抗を介して流れる電流によりトランジスタの負荷側の電圧が正常値に戻って基準電圧よりも高くなり、トランジスタは再びON制御となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の第1実施例を図1および図2を参照して説明する。図1は、本発明の保護回路の第1実施例の回路図である。図2は、トランジスタのコレクタ電流に対するエミッタ・コレクタ間電圧を示す特性図である。図1において、図5と同じまたは均等な部材には、同じ符号を付けて重複する説明を省略する。
【0012】
図1に示す本発明の保護回路の第1実施例において、図5に示す従来技術と相違するところは、図5における電流検出抵抗RYが省かれ、トランジスタTr1のコレクタが直接に負荷側に接続されたことにある。そして、トランジスタTr1は、負荷10が短絡等の異常な状態で過大電流が流れる場合に非飽和領域で動作して、エミッタ・コレクタ間の電圧降下が急激に大きくなり、その負荷側の電圧が基準電圧bよりも低くなるように、ベース電流制御抵抗RBによりベース電流が設定されている。例えば、ベース電流制御抵抗RBは、図2に示す特性図で、300Ωまたは600Ω等に設定されている。
【0013】
かかる構成において、負荷10が正常でトランジスタTr1のコレクタ電流として200〜400mAの電流が流れる状態にあっては、エミッタ・コレクタ間電圧は0.7V程度である。しかし、負荷10が短絡等の異常で例えば所定電流値1.2A以上の過大電流として1.5〜2Aが流れる状態にあっては、エミッタ・コレクタ間電圧は所定電圧値以上の3〜4Vまたはそれ以上と急激に大きく変化する。そこで、このトランジスタTr1のエミッタ・コレクタ間電圧の大きな電圧降下を比較手段cで確実に検出でき、トランジスタTr1がOFF制御される。もって、負荷10の正常または異常を確実に検出することができる。ここで、本発明の第1実施例にあっては、図5に示す従来技術における電流検出抵抗RYの作用を、トランジスタTr1で行うこととなる。よって、図5に示す従来技術における電流検出抵抗RYが省かれる分だけ回路の設置スペースが小さくて足り、しかも高価な部品が省かれて経済的であり、さらに部品点数が少ないために製造工程が簡略化され得る。
【0014】
次に、本発明の第2実施例を図3を参照して説明する。図3は、本発明の保護回路の第2実施例の回路図である。図3において、図1および図5と同じまたは均等な部材には、同じ符号を付けて重複する説明を省略する。
【0015】
図3に示す本発明の保護回路の第2実施例において、図1に示す第1実施例と相違するところは、トランジスタTr1のエミッタ・コレクタ間に並列に復帰抵抗RXが接続されたことにある。この復帰抵抗RXは、一例として100kΩに設定されている。また、負荷側には、スイッチSWを介して負荷としてのモータ制御回路16が接続されている。このモータ制御回路16は、トランジスタ等の電子部品で回路構成された駆動回路12が制御信号に応じてモータ14を適宜に正転または反転させるように構成されている。
【0016】
かかる構成で、負荷側のスイッチSWが閉成されて負荷としてのモータ制御回路16が正常であれば、トランジスタTr1の負荷側の電圧は基準電圧bよりも高い状態であり、トランジスタTr1のON制御が維持される。しかるに、制御信号に外部雑音が重畳されるなどして、駆動回路12が誤動作して短絡状態になると、これに所定電流値以上の過大電流が流れ、トランジスタTr1のエミッタ・コレクタ間電圧が所定電圧値以上に大きくなり、トランジスタTr1の負荷側の電圧が基準電圧bよりも低い状態となって、これが比較手段cで検出されて直ちにトランジスタTr1がOFF制御されて過大電流が遮断される。そして、このトランジスタTr1がOFF制御されている間に、復帰抵抗RXを介して負荷側に例えば1μA程度の僅かな電流が流れる。ここで、外部雑音もなくなり駆動回路12が正常に戻ると、復帰抵抗RXを介して流れる電流によって、トランジスタTr1の負荷側の電圧が高くなって、基準電圧bよりも高くなり、比較手段cの出力端の信号が「H」に反転し、その信号によりトランジスタTr1が再びON制御される。もって、負荷が異常であればトランジスタTr1がOFF制御され、負荷が正常に戻ればトランジスタTr1がON制御される。なお、トランジスタTr1のOFF制御は、負荷が異常な場合に限られず、外部雑音等により入力電圧aの電圧が瞬間的に低下し、これによりトランジスタTr1の負荷側の電圧が基準電圧bよりも瞬間的に低下した場合にも生ずる。かかる場合であっても、入力電圧aが正常に戻れば、トランジスタTr1も再びON制御となる。
【0017】
さらに、本発明の第3実施例を図4を参照して説明する。図4は、本発明の保護回路の第3実施例の回路図である。図4において、図1と図3および図5と同じまたは均等な部材には、同じ符号を付けて重複する説明を省略する。
【0018】
図4に示す本発明の保護回路の第3実施例において、図3に示す第2実施例と相違するところは、負荷側の回路構成にある。すなわち、トランジスタTr1の負荷側には、スイッチSWを介して負荷としての電圧平滑コンデンサ18と増幅回路20が並列接続された電子回路22が接続されている。この電圧平滑コンデンサ18は、比較的に容量が大きく、スイッチSWが閉成されると、大きな突入電流が流入する。すると、トランジスタTr1のエミッタ・コレクタ間の電圧降下が大きくなり、これを比較手段cで検出して直ちにトランジスタTr1がOFF制御される。しかし、復帰抵抗RXを介して負荷側に僅かな電流が流れるために、電圧平滑コンデンサ18に徐々に充電され、トランジスタTr1の負荷側の電圧も徐々に高くなり、この電圧が基準電圧bを越えたことが比較手段cで検出されると、トランジスタTr1が再びON制御される。もって、負荷側に大容量の電圧平滑コンデンサ18が含まれていても、トランジスタTr1がOFF制御されたままという不具合は生じない。なお、電圧平滑コンデンサ18と並列接続される回路は、増幅回路20に限られず、発振回路等の平滑な入力電圧を必要とするいかなる回路であっても良いことは容易に理解されるであろう。
【0019】
なお、上記実施例において、トランジスタTr1とTr2がダーリントン接続されているが、これに限られず、トランジスタTr1のベースにトランジスタTr3のコレクタが直接接続されても良い。また、トランジスタTr1は、NPN型に限られず、PNP型であっても良く、かかる回路構成に応じてベース電流制御抵抗RBの接続位置等を適宜変更しても良いことは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の保護回路の第1実施例の回路図である。
【図2】トランジスタのコレクタ電流に対するエミッタ・コレクタ間電圧を示す特性図である。
【図3】本発明の保護回路の第2実施例の回路図である。
【図4】本発明の保護回路の第3実施例の回路図である。
【図5】従来の保護回路の一例の回路図である。
【符号の説明】
【0021】
10 負荷
12 駆動回路
14 モータ
16 モータ制御回路
18 電圧平滑コンデンサ
20 増幅回路
22 電子回路
Tr1、Tr2、Tr3 トランジスタ
RB ベース電流制御抵抗
RX 復帰抵抗
RY 電流検出抵抗
R1 プルアップ抵抗
R2 ベースブリーダ抵抗
a 入力電圧
b 基準電圧
c 比較手段
SW スイッチ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力電圧をトランジスタを介して負荷に印加し、前記トランジスタの負荷側の電圧と基準電圧を比較手段で比較し、前記トランジスタの負荷側の電圧が前記基準電圧より低くなると前記比較手段の出力により前記トランジスタがOFF制御される保護回路において、前記負荷に所定電流値以上の過大電流が流れると前記トランジスタのエミッタ・コレクタ間電圧が所定電圧値以上に大きくなって、前記トランジスタの負荷側の電圧が前記基準電圧よりも低くなるように、前記トランジスタのベース電流を設定して構成したことを特徴とする保護回路。
【請求項2】
請求項1記載の保護回路において、前記トランジスタと並列に復帰抵抗を接続して構成したことを特徴とする保護回路。
【請求項3】
請求項2記載の保護回路において、前記負荷が、モータを駆動制御するモータ駆動制御回路であることを特徴とする保護回路。
【請求項4】
請求項2記載の保護回路において、前記負荷が、電圧平滑用コンデンサを含む電子回路であることを特徴とする保護回路。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−336739(P2007−336739A)
【公開日】平成19年12月27日(2007.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−167378(P2006−167378)
【出願日】平成18年6月16日(2006.6.16)
【出願人】(000006758)株式会社ヨコオ (158)
【Fターム(参考)】