説明

保護眼鏡用遮光レンズ

【課題】波長430nm以下の紫外・可視光線を遮光した保護眼鏡用遮光レンズとすることであり、または波長500nm以下まで遮光域を広げた保護眼鏡用遮光レンズとすることであり、さらにまた需要者の多様な色調の調整要望に応えられる保護眼鏡用遮光レンズとすることである。
【解決手段】合成樹脂製の眼鏡用レンズに紫外線吸収剤を配合し、所定波長以下の紫外・可視光線を遮光する保護眼鏡用遮光レンズであり、前記合成樹脂100質量部に対して融点140〜150℃のインドール系紫外線吸収剤を0.01〜2質量部配合し、好ましくは油溶性染料を併用し、波長430nm以下の紫外・可視光線を遮光した保護眼鏡用遮光レンズとする。所定量のインドール系紫外線吸収剤が、合成樹脂に充分に溶解し、効率よくその作用を発揮することにより、透明性の高い淡い色調でありながらも、従来400nm以下でしか遮光できなかった遮光性が改善され、波長430nm以下または波長500nm以下の紫外・可視光線を遮光することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、医療用眼鏡等に用いられ、眼の保護のために特定波長域を遮光する保護眼鏡用遮光レンズに関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、眼鏡用レンズに特定波長域に光吸収性のある無機系または有機系の色素を配合することにより、防眩性や視認性の良い機能を付与できることが知られている。
【0003】
特に、眼に有害な紫外・可視光線や眩しさを感じさせる所定域の光透過を遮断するために、紫外線等の遮光性のある保護眼鏡が使用されている。
【0004】
例えば、網膜色素変性症などのように、眩しさを感じる光線を厳密に避ける必要のある場合には、波長500nm以下の紫外・可視光線を完全に遮光する必要がある。
【0005】
また、白内障などのように、ある程度のまぶしさを抑制する必要がある症状に対しては、波長420nm以下を充分にカットする保護眼鏡が適切である。
【0006】
さらには、歩行時にも保護眼鏡を着用する場合に、安全のために信号機の色を識別できる程度に防眩性に調整するためには、75%以上の光線透過率で波長420nm以下を抑制する保護眼鏡が適切である。
【0007】
このような保護眼鏡に用いられる医療用レンズとしては、例えばCR39と通称されるジエチレングリコールビスアリルカーボネート樹脂を主成分とし、有機酸コバルトを配合した樹脂製眼鏡レンズであり、かつ偏光膜を樹脂中に埋め込むようにキャスティング重合し、防眩効果と偏光特性を併有させた医療用レンズが知られている(特許文献1)。
【0008】
また、吸収ピーク波長が390〜410nm、その吸収ピーク波長での分光透過率が0〜70%、その吸収ピーク波長での分子吸光係数が20℃で2×103となるイエロー系分散染料により、染色加工した遮光用レンズが知られている(特許文献2)。
【0009】
また、着色樹脂組成物、樹脂製フィルム、感熱記録材料、液晶表示材料などに添加して使用される紫外線吸収剤、またはハレーション防止染料として利用できるインドール系化合物が知られている(特許文献3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開平5−212103号公報
【特許文献2】特開平7−306387号公報
【特許文献3】特許第2846091号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかし、上記した従来の医療用レンズとしての樹脂製の遮光レンズは、樹脂に充分な相溶性のある紫外線吸収剤を適当に選択できるものではなく、特に波長430nm以下の紫外・可視光線を確実に遮光することが困難なものであった。
例えば、光学レンズ用としては未利用であった2,3-ベンゾピロール系、すなわちインドール系化合物は、ジエチレングリコールビスアリルカーボネート樹脂(CR39)などの合成樹脂に充分に溶解しない物性であるために、レンズ用の紫外線吸収剤としての使用は想定されることなく、実際、紫外線を遮光するためにインドール系紫外線吸収剤が用いられることはなかった。
そのため、紫外線ばかりでなく波長430nm以下の紫外・可視光線を遮光する保護眼鏡用遮光レンズについても、インドール系紫外線吸収剤を用いて実際に製造できなかったという問題点がある。
【0012】
また、クロムやクロム酸化物の蒸着または有機コバルト化合物を使用した遮光レンズでは、色調が黄色や赤色のレンズしか製造できず、需要者の多様な色調の要望に応えられないという問題点もある。
【0013】
これらの問題は、波長500nm以下まで遮光域を広げようとする場合においては、特にその解決は容易なことではない。
【0014】
そこで、この発明の課題は、上記した問題点を解決して波長430nm以下の紫外・可視光線を遮光した保護眼鏡用遮光レンズとすることであり、好ましくは波長500nm以下まで遮光域を広げた保護眼鏡用遮光レンズとすることであり、さらに需要者の多様な色調の調整要望にも応えられる保護眼鏡用遮光レンズとすることである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記の課題を解決するために、この発明においては、眼鏡レンズ用の合成樹脂100質量部に対して融点140〜150℃のインドール系紫外線吸収剤を0.01〜2質量部配合し、波長430nm以下の紫外・可視光線を遮光した保護眼鏡用遮光レンズとしたのである。
【0016】
上記したように構成されるこの発明の保護眼鏡用遮光レンズは、合成樹脂100質量部に対してインドール系紫外線吸収剤を0.01〜2質量部という所定量を配合することにより、合成樹脂に充分に溶解するものであり、しかも効率よくその特定波長域の光線吸収作用を発揮するため、透明性の高い淡い色調でありながらも遮光性を改善して、波長430nm以下の紫外・可視光線を遮光することができるものになる。
【0017】
このような遮光レンズに紫外線吸収剤として油溶性染料を併用する場合には、インドール系紫外線吸収剤が、所定濃度で配合された場合に合成樹脂によく溶解して効率よく波長430nm以下の紫外・可視光線を遮光すると共に、油溶性染料の特性に応じて所定波長以下まで広い波長域に、またはインドール系紫外線吸収剤による遮光波長域に重複する域について充分に紫外・可視光線を遮光することができる。
【0018】
油溶性染料として、黄色系油溶性染料を使用すると、所定波長以下の紫外・可視光線を遮光することができ、また需要者の要望する多様な色調のうち、淡い黄色系やブラウン系などにも対応して色調調整できる保護眼鏡用遮光レンズになる。
【0019】
油溶性染料として、黄色系油溶性染料を使用すると、特に波長500nm以下の紫外・可視光線を確実に安定的に遮光できる保護眼鏡用遮光レンズになる。
【0020】
このような保護眼鏡用遮光レンズが、偏光フィルム層と一体化された偏光レンズである場合には、所定波長域の紫外・可視光線の遮光性と共に防眩性をも備えた保護眼鏡用遮光レンズとなる。
【発明の効果】
【0021】
この発明は、以上説明したように、合成樹脂に対して所定融点温度範囲のインドール系紫外線吸収剤を所定量配合し、好ましくは紫外線吸収剤として油溶性染料を配合して波長430nm以下または波長500nm以下の紫外・可視光線を遮光する保護眼鏡用遮光レンズとしたので、波長430nm以下の紫外・可視光線を遮光した保護眼鏡用遮光レンズとなり、さらには波長500nm以下まで遮光域を広げた保護眼鏡用遮光レンズとなり、さらには需要者の多様な色調の調整要望に応えられる保護眼鏡用遮光レンズまたは偏光レンズとなる利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】実施例1の分光スペクトルを示し、透過率と波長の関係を示す図表
【図2】実施例2の分光スペクトルを示し、透過率と波長の関係を示す図表
【図3】実施例3の分光スペクトルを示し、透過率と波長の関係を示す図表
【図4】実施例4の分光スペクトルを示し、透過率と波長の関係を示す図表
【図5】実施例5の分光スペクトルを示し、透過率と波長の関係を示す図表
【図6】比較例1の分光スペクトルを示し、透過率と波長の関係を示す図表
【図7】比較例2の分光スペクトルを示し、透過率と波長の関係を示す図表
【発明を実施するための形態】
【0023】
この発明の保護眼鏡用遮光レンズは、合成樹脂製の眼鏡用レンズに紫外線吸収剤を配合し、所定波長以下の紫外・可視光線を遮光する保護眼鏡用遮光レンズであり、特に合成樹脂100質量部に対して融点140〜150℃のインドール系紫外線吸収剤を0.01〜2質量部配合し、波長430nm以下の紫外・可視光線を遮光可能にしている。
【0024】
ここで、この発明において眼鏡用レンズに用いる合成樹脂は、特に限定されるものではなく、例えばアクリル樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリカーボネート樹脂等の熱可塑性樹脂、またはアリルジグリコールカーボネート樹脂(CR−39樹脂、またはADC樹脂とも称される。)、ポリウレタン樹脂、ポリチオウレタン樹脂などの熱硬化性樹脂が挙げられる。
【0025】
この発明に用いるインドール系紫外線吸収剤は、少なくとも紫外線を吸収し、配合量によっては紫外域を超えて一部の可視光線まで吸収する性質のある化合物であって、ベンゼン環とピロール環が縮合した構造をとるインドール環構造を有するものであり、具体的には、4−(1H−インドール)−3−イルメチレン−2−フェニルオキサゾリン−5−オン、3−(β−シアノ−β−ベンゾイルビニル)インドールまたはオリエント化学社製:BONASORB UA−3912などの周知なインドール系紫外線吸収剤のうち、融点140〜150℃、好ましくは142〜146℃のものを選択的に採用する。
【0026】
インドール系紫外線吸収剤として上記所定温度範囲の融点を超えるものでは、レンズ材料の樹脂に対する相溶性、すなわち、溶解性が低いので、必要量が溶け難く充分な紫外・可視光線吸収性を示されないことになる。また、上記所定温度範囲未満の融点のものは、樹脂に添加して溶融成型する際に揮発してレンズの遮光性能が低下するので好ましくない。
【0027】
インドール系紫外線吸収剤の一般的な化学構造において、融点を適切に低下させるためには、分子量を小さくすることなどにより、分子の自由回転度を高くし、分子間力や化学結合力も小さくし、融点を可及的に低く調整することが可能である。
【0028】
このようなインドール系紫外線吸収剤は、前記合成樹脂100質量部に対して0.01〜2質量部、好ましくは0.1〜1質量部の所定範囲で配合することにより、合成樹脂に充分に溶解し、添加効率よくその遮光作用を発揮するので、透明性の高い淡い色調のレンズになる。
【0029】
前記所定範囲未満の少量では、紫外・可視光線の遮光について、特に波長430nm以下では充分な遮光が困難であり、前記所定範囲を超える配合割合では、透明性の高い淡い色調のレンズとすることが困難である。
【0030】
紫外線吸収剤として油溶性染料を併用すれば、紫外線遮光性の性能向上および低価格化にも好ましく、特に波長500nm以下の紫外・可視光線を遮光する場合においてイエロー系などの油溶性染料を使用することが好ましい。
【0031】
このような油溶性染料としては、一般的な有機溶剤可溶型染料であり、眼鏡用レンズの材料に成形する際に可溶なものである。その具体例としては、ブルー系、グリーン系、イエロー系、ブラウン系、ブラック系などのアントラキノン系油溶性染料、アゾ系油溶性染料、金属錯体系染料、フタロシアニン系、トリアリルメタン系等が挙げられる。
【0032】
また、保護眼鏡用遮光レンズが、偏光フィルム層と一体化された偏光レンズであることは防眩性の向上した遮光レンズであるために好ましい。
【0033】
偏光フィルム層を有する偏光レンズである場合、偏光フィルムは、周知製法に従って得られる。例えばポリビニルアルコール製フィルムにヨウ素もしくはヨウ素化合物または染料を含浸等によって含ませ、一軸延伸したものを採用することが好ましい。
【0034】
偏光眼鏡用レンズは、レンズ材料のインサート成形により偏光フィルムの両側に、例えば1〜15mmの間隙を開けてレンズ成型キャビティ内に偏光フィルムを配置し、この偏光フィルムに接する間隙にレンズ材料を注入して埋設することにより、偏光フィルムを眼鏡用レンズ基材と一体化させてレンズ素材を製造することができ、得られたレンズ素材はレンズ度数の必要に応じて研削や研磨を経て眼鏡レンズとして製品化することができる。
【0035】
その他にも、偏光眼鏡用レンズは、予め成形しておいた2枚のレンズ基材の間に偏光フィルムをラミネートするなどの周知の製造法を採用したものであってもよい。
【0036】
なお、この発明の遮光性レンズは、赤外線吸収剤を添加する事により赤外線も吸収出来るようになる。全赤外線を吸収するタイプや800nmや1000nmなどの近赤外線を吸収する赤外線吸収剤を選択する事により波長吸収域を調整することも可能である。
【0037】
この発明の遮光レンズにハードコート処理を施すこともできる。シリコン系化合物などを含む溶液にレンズを浸漬することにより強化被膜を形成させて表面硬度を向上させてもよい。また、防汚処理、反射防止処理、耐薬品性処理、帯電防止処理、ミラー処理などの周知の処理を施して更に性能をアップさせることも可能である。
【実施例1】
【0038】
ADC樹脂の液体モノマーであるCR−39(ジエチレングリコールビスアリルカーボネート)に重合開始剤IPP(ジイソプロピル パーオキシ ジカーボネート)を添加したもの100質量部に対して、インドール系紫外線吸収剤(オリエント化学社製:BONASORB UA−3912、CAS.No.102311-49-9、融点142〜146℃)1.5質量部を配合し、これらを適量の溶媒と共に混合・攪拌して真空脱気して液状の成形材料を調製し、これを凸面&凹面のガラスモールドにガスケットをセットして厚さが2mmとなるようにしたレンズ成型キャビティ内に注入した。
【0039】
成形材料は常温から徐々に昇温するように加熱し、120℃で4時間キュアして、冷却してモールドから取り出し、100℃で2時間アニリングし、透過率が約40%のブラウン色のレンズを得た。
得られたレンズについて、分光スペクトルを日立製作所社製:U−2000スペクトロフォトメーターで測定し、波長と透過率の関係を図1に示した。
【実施例2】
【0040】
イソシアネートとポリチオールを化合させる高屈折率樹脂(三井化学社製:チオウレタン系樹脂MR−7、屈折率1.67)の原料A液とB液を混合した100質量部に対して、インドール系紫外線吸収剤(オリエント化学社製:BONASORB UA−3912、CAS.No.102311-49-9、融点142〜146℃)を0.3質量部と油溶性染料(チバガイギー社製:オラゾールイエロー2GLN)0.008質量部を添加し、これらを混合・攪拌して真空脱気して液状の成形材料を調製し、これを凸面&凹面のガラスモールドにガスケットをセットして厚さが2mmとなるようにしたレンズ成型キャビティ内に注入した。
【0041】
成形材料は常温から徐々に昇温するように加熱し、120℃で4時間キュアして、冷却してモールドから取り出し、100℃で2時間アニリングし、透過率が約65%のブラウン色レンズを得た。上記同様にして、分光スペクトルを測定し、波長と透過率の関係を図2に示した。
【実施例3】
【0042】
ポリイソシアネートとポリヒドロキシ化合物を反応させたプレポリマーを主要成分とし、硬化剤として芳香族ポリアミン(MOCA)を含有するポリウレタン樹脂材料100質量部に対して、インドール系紫外線吸収剤(オリエント化学社製:BONASORB UA−3912、CAS.No.102311-49-9、融点142〜146℃)を0.15質量部と油溶性染料(チバガイギー社製:オラゾールイエロー2GLN)0.004質量部を添加し、これらを混合・攪拌して真空脱気して液状の成形材料を調製し、これを凸面&凹面のガラスモールドにガスケットをセットして厚さが2mmとなるようにしたレンズ成型キャビティ内に注入した。
【0043】
成形材料は常温から徐々に昇温するように加熱し、120℃で4時間キュアして、冷却してモールドから取り出し、100℃で2時間アニリングし、透過率が約75%の薄い黄色レンズを得た。上記同様にして、分光スペクトルを測定し、波長と透過率の関係を図3に示した。
【実施例4】
【0044】
ADC樹脂の液体モノマーであるCR−39(ジエチレングリコールビスアリルカーボネート)に重合開始剤IPP(ジイソプロピル パーオキシ ジカーボネート)を添加したもの100質量部に対して、インドール系紫外線吸収剤(オリエント化学社製:BONASORB UA−3912、CAS.No.102311-49-9、融点142〜146℃)1.5質量部配合し、これらを適量の溶媒と共に混合・攪拌して真空脱気して液状の成形材料を調製し、これを凸面&凹面のガラスモールドに偏光素子(偏光フィルム)を挿入し、ガスケットをセットして厚さが2mmとなるようにしたレンズ成型キャビティ内に注入した。
【0045】
成形材料は常温から徐々に昇温するように加熱し、100℃で8時間キュアして、冷却してモールドから取り出し、90℃で2時間アニリングし、透過率が約30%のブラウン色のレンズを得た。
【0046】
なお、別途、上記の偏光素子(偏光フィルム)は以下のように製造した。
厚さ0.075mmのポリビニルアルコールフィルム(通称ビニロンフィルム)を4倍に一軸延伸した後、ヨウ素0.1重量%を含む水溶液(染料液)に浸漬し、その後にホウ酸3重量%を含有する水溶液に浸漬し、液切りした後、70℃で5分間加熱処理して複数枚の偏光フィルム(厚さ0.03mm)を製造した。
【0047】
得られた偏光フィルムを球面ガラスに当てて球面に成形し、その両面にウレタン系接着剤(東洋ポリマー社製:ポリオネート1000)を塗布し乾燥した。
上記同様にして、分光スペクトルを測定し、波長と透過率の関係を図4に示した。
【実施例5】
【0048】
ADC樹脂の液体モノマーであるCR−39(ジエチレングリコールビスアリルカーボネート)に重合開始剤IPP(ジイソプロピル パーオキシ ジカーボネート)を添加したもの100質量部に対して、インドール系紫外線吸収剤(オリエント化学社製:BONASORB UA−3912、CAS.No.102311-49-9、融点142〜146℃)0.8質量部と油溶性染料(チバガイギー社製:オラゾールイエロー2GLN)0.025質量部を添加し、これらを混合・攪拌して真空脱気して液状の成形材料を調製し、これを凸面&凹面のガラスモールドに偏光素子を挿入し、ガスケットをセットして厚さが2mmとなるようにしたレンズ成型キャビティ内に注入した。
【0049】
成形材料は常温から徐々に昇温するように加熱し、100℃で8時間キュアして、冷却してモールドから取り出し、90℃で2時間アニリングし、透過率が約40%のブラウン色のレンズを得た。
上記同様にして、分光スペクトルを測定し、波長と透過率の関係を図5に示した。
【0050】
[比較例1]
ADC樹脂の液体モノマーであるCR−39(ジエチレングリコールビスアリルカーボネート)に重合開始剤IPP(ジイソプロピル パーオキシ ジカーボネート)を添加したもの100質量部に対し、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤(シプロ化成社製:SEESORB709)1.0質量部配合し、これらを適量の溶媒と共に混合・攪拌して真空脱気して液状の成形材料を調製し、これを凸面&凹面のガラスモールドに偏光素子を挿入し、ガスケットをセットして厚さが2mmとなるようにしたレンズ成型キャビティ内に注入した。
【0051】
成形材料は常温から徐々に昇温するように加熱し、100℃で8時間キュアして、冷却してモールドから取り出し、90℃で2時間アニリングし、透過率が約85%の淡い黄色のレンズを得た。
上記同様にして、分光スペクトルを測定し、波長と透過率の関係を図6に示した。
【0052】
[比較例2]
ADC樹脂の液体モノマーであるCR−39(ジエチレングリコールビスアリルカーボネート)に重合開始剤IPP(ジイソプロピル パーオキシ ジカーボネート)を添加したもの100質量部に対し、赤色および黄色の有機染料を各0.1質量部配合し、これらを適量の溶媒と共に混合・攪拌して真空脱気して液状の成形材料を調製し、これを凸面&凹面のガラスモールドに偏光素子を挿入し、ガスケットをセットして厚さが2mmとなるようにしたレンズ成型キャビティ内に注入した。
【0053】
成形材料は常温から徐々に昇温するように加熱し、100℃で8時間キュアして、冷却してモールドから取り出し、90℃で2時間アニリングし、透過率が約15%の淡い黄色のレンズを得た。
上記同様にして、分光スペクトルを測定し、波長と透過率の関係を図7に示した。
【0054】
[比較例3]
実施例1において、インドール系紫外線吸収剤(オリエント化学社製:BONASORB UA−3912、CAS.No.102311-49-9、融点142〜146℃)に代えて、インドール系紫外線吸収剤(オリエント化学社製:BONASORB UA−3911、CAS.No.142676-93-5、融点202〜205℃)を用いたこと以外は、全く同様にして液状の成形材料を調製しようと試みたが、インドール系紫外線吸収剤が樹脂に完全に溶解しなかったため、レンズ成型キャビティ内に注入せずに製造を中止した。
【0055】
図1〜7の波長と透過率の関係を示す結果からも明らかなように、比較例1では、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤を用いたため、波長380nm以下しか遮光できず、430nm以下の紫外・可視光線を遮光できなかった。
【0056】
また、比較例2の染料の組み合わせによっても430nm以下の紫外・可視光線を充分にまたは確実に遮光できず、また透過率も低くなってレンズは暗くなり需要者の多様な色調の調整要望に応えられるものではなかった。
【0057】
一方、実施例1〜5では、インドール系(UA3912)の紫外線吸収剤の所定量を調整して用いたため、波長430nm以下、または波長500nm以下の紫外・可視光線を遮光でき、しかも需要者の多様な色調の調整要望に応えられる保護眼鏡用遮光レンズが得られていた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
合成樹脂製の眼鏡用レンズに紫外線吸収剤を配合し、所定波長以下の紫外・可視光線を遮光する保護眼鏡用遮光レンズにおいて、
前記合成樹脂100質量部に対して融点140〜150℃のインドール系紫外線吸収剤を0.01〜2質量部配合し、波長430nm以下の紫外・可視光線を遮光したことを特徴とする保護眼鏡用遮光レンズ。
【請求項2】
紫外線吸収剤として油溶性染料を含有する請求項1に記載の保護眼鏡用遮光レンズ。
【請求項3】
油溶性染料が、黄色系油溶性染料である請求項2に記載の保護眼鏡用遮光レンズ。
【請求項4】
波長500nm以下の紫外・可視光線を遮光する請求項2または3に記載の保護眼鏡用遮光レンズ。
【請求項5】
保護眼鏡用遮光レンズが、偏光フィルム層と一体化された偏光レンズである請求項1〜4のいずれかに記載の保護眼鏡用遮光レンズ。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate