説明

保護膜付パッキン及びパッキンの凹部への挿入接着方法

【課題】容易に保護紙を剥がすことができる保護紙付パッキンを提供するとともに、パッキンを狭隘な凹部に挿入して接着するパッキンの凹部への挿入接着方法を提供する。
【解決手段】この保護紙付パッキンは、保護子本体59にパッキン53の外周の一部から突出する耳部61を設けた保護子付パッキン51において、この耳部61の保護膜本体59への接続部は、把持部61の外縁がパッキン53の外周縁に対して鈍角をなすように形成されている。また、このパッキンの凹部への挿入方法は、把持部材87によってパッキン85を押圧し、把持部材87の幅を凹部95の幅より小さくして挿入するようにしている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パッキンの接着面を剥離可能な保護膜で覆った保護膜付パッキンおよび狭隘な凹部にパッキンを容易に挿入して接着する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
今日エアコンやダクト等には、空気流路の気密性を維持するため種々のパッキンが使用されている。これらパッキンは、エアコンの筐体間やダクトの接続部において一方の部品と他方の部品との間に介装されるが、装着を容易にするため接着面を有している。このようなパッキンは、図6の(a)に示すように、パッキン11の下面に接着面13を有し、この接着面13に保護紙15が貼り付けられている。この保護紙15は、図6の(b)に示すように、パッキンの幅H1に対して保護紙15の幅H2がH1<H2となるようにパッキン11の外周から一定幅以上はみ出して形成されている。また、図6の(c)に示すように、パッキンの両端部から突出して耳部17が形成され、この耳部17の外縁がパッキンの外縁に対して略直角になされているものもある。
【0003】
しかしながら、図6の(b)に示す保護紙付パッキン19は、パッキンの全周にわたって保護紙が突出しているため、保護紙の使用量が増加し、コスト的に不利になるという問題点があった。また、図6の(c)に示す保護紙付パッキン21は、耳部17の外縁がパッキンの外縁から直角に突出しているため、図6の(d)に示すように、保護紙を剥がす際に耳部の根元23から破れてしまうことがあり、作業性が低下するという問題点があった。したがって、通常は耳が破れないように剥がす速度を遅くしており、このため作業性が低下する。
【0004】
一方、保護紙を取り除かれたパッキンを狭隘な凹部の底に貼付ける場合、以下のような問題があった。
【0005】
すなわち、図7の(a)に示すように、下面に接着面31を有するパッキン33を、把持具35で把持して、リブ37で囲まれた凹部39の底部41に接着しようとする場合、図7の(b)及び(c)に示すように、パッキン33の接着面31の端部がリブ37に接触して貼り付いてしまい、パッキンの挿入が困難になるという問題があった。
【0006】
なお、フィルムに粘着剤を塗布した粘着テープについては、特許文献1に開示されている。
【0007】
【特許文献1】特開2003−105291
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記問題点を解決することをその課題とし、容易に保護紙を剥がすことができるとともに、保護紙の使用量を削減でき歩留まりを向上させることができる保護紙付パッキンを提供することを目的とする。本発明は、また、下面に接着面を有するパッキンを狭隘な凹部に挿入して接着するパッキンの凹部への挿入接着方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため、接着面(55)を有するパッキン(53)と、前記接着面(55)を覆うとともに使用時には剥離される保護膜本体(59)とを有し、前記保護膜本体(59)に前記パッキン(53)の外周の一部から突出する把持部(61)を設けた保護膜付パッキン(51)において、この把持部(61)の前記保護膜本体(59)への接続部は、前記把持部(61)の外縁が前記パッキン(53)の外周縁に対して鈍角をなすように形成されている手段を提供することができる。
【0010】
この手段によると、把持部(61)の根元部外縁とパッキン(53)の外周とのなす角度を鈍角にしているから、耳部を把持して保護紙をパッキンから引き剥がす際に耳部が根元から破断するのを防止しすることができる。
【0011】
また、上記課題を解決するため、パッキン(85)の両側面を薄板状の把持部材(87)で把持し、この把持部材(87)によって前記パッキン(85)を押圧し、前記把持部材(87)の幅をこのパッキン(85)を挿入する凹部(95)の幅より小さくし、前記把持部材(87)とこの把持部材(87)によって押圧把持された前記パッキン(85)を前記凹部(95)に挿入し、前記パッキン(85)の前記凹部(95)への挿入方向後方側に配置された押出部材(89)を挿入方向前方に移動させることによって、前記パッキン(85)を前記凹部(95)の底面(97)に押圧し、その後、前記把持部材(87)を前記押出部材(89)に対して挿入方向後方に移動させることによって、前記凹部(95)に収納された前記パッキン(85)から前記把持部材(87)を引き抜く方法を提供することができる。
【0012】
この方法によれば、パッキン(85)の接着面(83)の端部がリブに接触して張り付いてしまうことを防止することができ、したがってパッキンの効率的な接着が可能となる。
【0013】
なお、上記各手段に付した括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示す一例である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態について、図1ないし図5を参照して説明する。
【0015】
図1の(a)及び(b)は、本発明の実施の形態である保護紙付パッキン51を示す。この保護紙付パッキンン51は中空矩形状のパッキン53を有している。このパッキン53はその下面に接着面55を有し、この接着面55に保護紙57が貼り付けられている。この保護紙57は、パッキン53の平面視形状と同一になされた保護紙本体59と、この保護紙本体59から突出して形成された耳部61を有している。そして、この耳部61は、保護紙57をパッキン53の接着面55に貼り付けたとき、パッキン53から突出してはみ出すようになっている。この耳部61は、保護紙本体59から離間するにしたがい幅が狭くなるような台形に形成されており、この耳部61の根元部外縁とパッキン53の外周すなわち保護紙本体59の外周とのなす角度は90°+10°=100°で鈍角になされている。また、この耳部61の保護紙本体59への接続部は、矩形状の保護紙本体59の角から0.5mm以上離間した位置にあり、耳部61の保護紙本体59からの突出長さは0.5mm以上になされている。そして、この保護紙付パッキン51は、図1の(c)に示すように、耳部61を把持して保護紙57を剥がし、パッキン53を所定の箇所に貼り付けるようになっている。
【0016】
次に、このように構成された保護紙付パッキン51をから保護紙57を剥がす方法について図2を参照して詳述する。
【0017】
まず、図2の(a)に示すように、保護紙付パッキン51をプレート71上に載置する。
【0018】
次に、図2の(b)に示すように、把持具73で保護紙付パッキン51の耳部61を把持する。
【0019】
次いで、図2の(c)に示すように、保護紙付パッキン51を図示しない保持具でプレート71から持ち上げるとともに、把持具73を回転させながら下方へ移動させて保護紙57をパッキン53から引き剥がしていく。ここで、耳部61の根元部外縁と保護紙本体59の外縁とのなす角度は鈍角100°になされているので、耳部61が根元部から破断することを防止することができ、スムーズに保護紙を剥離することができる。また、この際、保護紙57がパッキン53から引き剥がされる部分の保護紙57の折曲げ半径Rは5mm以上になるようにする。このようにすることによって保護紙57の破れを防止することができる。
【0020】
このようにこの保護紙付パッキン51にあっては、耳部61の根元部外縁とパッキン53の外周すなわち保護紙本体59の外周とのなす角度を100°と鈍角にしているから、耳部61を把持して保護紙57をパッキン53から引き剥がす際に耳部61が根元から破断するのを防止しすることができる。また、保護紙57がパッキン53から引き剥がされる部分の保護紙57の折曲げ半径Rは5mm以上になるようにしているから、保護紙57の折り曲げ部からの破れを防止することができる。
【0021】
なお、上記実施の形態にあっては、パッキンとして平面視矩形状のものを採用しているが、これに限る必要はなく、図3に示すような平面視略台形状のパッキン75でもよく、その場合においても、耳部77の根元部外縁とパッキン75の外周とのなす角度を鈍角にすることによってこの部分からの破れを防止することができる。
【0022】
次に、接着面から保護紙を剥離したパッキンを狭隘部に挿入接着する場合について、図4及び図5を参照して説明する。
【0023】
図4の(a)は、接着面付パッキンを狭隘部に挿入接着するパッキン挿入用チャック81を示している。このパッキン挿入用チャック81は、接着面83を有するパッキン85を把持する一対の把持部87と、この把持部87の挿入方向後方に位置する樹脂又は鉄製からなるプッシャ89とを有しいる。そして、このパッキン挿入用チャック81を使用してリブ91,93との間に形成された狭隘な凹部95にパッキンを挿入接着する。ここで、この貼り付けに使用されるパッキン85は、図4の(b)に示すように、高さをL1とし幅をW1とすると、L1<30mm,W1>5mm,2.0≧L1−(0.02W1)の関係が成立している。
【0024】
図5はこのパッキン挿入用チャック81を用いてパッキン85を凹部95底面97に接着する手順を示している。
【0025】
まず、図5の(a)に示すように、一対の把持部87、87をパッキン85の両側に位置せしめる。
【0026】
次いで、(b)に示すように、一対の把持部87,87でパッキン85を把持するとともに押圧する。この際、把持部87,87の外幅は、リブ91,93によって形成される凹部95の内幅より小さく設定される。また、プッシャ89をパッキン85の上面に当接させる。この際、図4の(b)および(c)に示すように、押圧前のパッキンの幅をW1、押圧後のパッキンの幅をW2とすると、W=W1−W2がパッキン押さえ代となる。
【0027】
次に、(c)に示すように、パッキン85を把持した把持部87,87およびプッシャ89を下降させて凹部95に挿入する。
【0028】
次いで、(d)に示すように、プッシャ89を下方に押圧して、パッキン85の接着面83を凹部95の底面97に押圧する。そして、パッキン85の接着面83は凹部95の底面97に接着される。
【0029】
この状態の後、(e)に示すように、両把持部87,87をプッシャ89に対して上方に移動し、パッキン85から両把持部87,87を抜き取る。
【0030】
その後、(f)に示すように、両把持部87,87とプッシャ89とを同時に凹部95から上方に移動させる。このようにしてパッキン85は凹部95の底面97に接着される。
【0031】
このように、パッキン85をパッキン挿入接着用チャック81を使用して凹部95底面に接着するようにしているから、パッキン85の接着面83の端部がリブ91,93に接触して張り付いてしまうことを防止することができ、したがってパッキンの効率的な接着が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明の一実施形態である保護膜付パッキンを示す図であって、(a)はその平面図、(b)はその側面図、(c)はパッキンから保護膜を剥がしている状態を示す側面図。
【図2】パッキンから保護紙を剥がす手順を(a)から(d)に順を追って示した側面図。
【図3】保護紙付パッキンの他の例を示す平面図。
【図4】本発明の一実施の形態であるパッキン挿入用チャックおよびパッキンを示す図であって、(a)はチャック、パッキン、挿入する凹部を示す図、(b)はパッキンの寸法を示す図、(c)は押圧時のパッキンの幅寸法を示す図。
【図5】図4に示すパッキン挿入用チャックを用いでパッキンを凹部に挿入接着する手順を(a)から(f)に順を追って示す図。
【図6】従来の保護紙付パッキンを示す図であって、(a)はその一例を示す側面図、(b)は(a)に示す保護紙付パッキンの平面図、(c)は従来の保護紙付パッキンの他の例を示す平面図、(d)は(c)に示す保護紙付パッキンの問題点を示す斜視図。
【図7】従来のパッキン挿入方法及びその問題点を示す図であって、(a)は挿入前の状態を示す図、(b)、(c)は挿入時の問題点を示す図。
【符号の説明】
【0033】
51 保護紙付パッキン
53 パッキン
55 接着面
59 保護紙本体
61 耳部
85 パッキン
87 把持部材
89 押出部材
95 凹部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
接着面(55)を有するパッキン(53)と、前記接着面(55)を覆うとともに使用時には剥離される保護膜本体(59)とを有し、前記保護膜本体(59)に前記パッキン(53)の外周の一部から突出する把持部(61)を設けた保護膜付パッキン(51)において、
この把持部(61)の前記保護膜本体(59)への接続部は、前記把持部(61)の外縁が前記パッキン(53)の外周縁に対して鈍角をなすように形成されていることを特徴とする保護膜付パッキン。
【請求項2】
パッキン(85)の両側面を薄板状の把持部材(87)で把持し、
この把持部材(87)によって前記パッキン(85)を押圧し、前記把持部材(87)の幅をこのパッキン(85)を挿入する凹部(95)の幅より小さくし、
前記把持部材(87)とこの把持部材(87)によって押圧把持された前記パッキン(85)を前記凹部(95)に挿入し、
前記パッキン(85)の前記凹部(95)への挿入方向後方側に配置された押出部材(89)を挿入方向前方に移動させることによって、前記パッキン(85)を前記凹部(95)の底面(97)に押圧し、
その後、前記把持部材(87)を前記押出部材(89)に対して挿入方向後方に移動させることによって、前記凹部(95)に収納された前記パッキン(85)から前記把持部材(87)を引き抜く、
ことを特徴とするパッキンの凹部への挿入方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−88286(P2008−88286A)
【公開日】平成20年4月17日(2008.4.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−270432(P2006−270432)
【出願日】平成18年10月2日(2006.10.2)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】