説明

信号処理回路の利得調整方式

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】この発明は、多線読み出し電流出力タイプの固体撮像素子の信号処理回路の利得調整方式に関する。
【0002】
【従来の技術】固体撮像素子には種々のタイプのものがあり、その中でCMD,AMIなどを画素として用いた電流出力タイプの固体撮像素子があり、またその読み出し方式にも、出力ラインを二線以上とした多線読み出し方式がある。図4は、従来の電流出力タイプの固体撮像素子の二線読み出し方式を示す回路構成図である。図において、101 は光信号を電気信号に変換するCMD,AMIなどを画素として用いた固体撮像素子、102, 103は固体撮像素子101 から送られた電流信号を電圧信号に変換する、電圧フォロワ型オペアンプと帰還抵抗からなるプリアンプ、104,105 はプリアンプ102, 103の出力信号を適当なレベルにするためのアンプ、106 ,107 は利得調整用のボリウム、108, 109は各チャネル1,2の出力ライン、110 はチャネル切換パルスにより制御される切換スイッチ、111 は一線化された出力信号の出力端子である。
【0003】このように構成された二線読み出し方式において、固体撮像素子101 からチャネル1及び2に出力された映像信号は、プリアンプ102, 103により電流から電圧に変換され、次段のアンプ104, 105に送られる。そしてアンプ104, 105で適当なレベルに調整されて切換スイッチ110 に送られ、各チャネルの信号はチャネル切換パルスにより制御される切換スイッチ110 により選択され、一線化された出力信号となり出力端子111 に出力されるようになっている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】ところで、従来の多線読み出し方式においては、信号出力レベルを各出力ライン毎にアンプの利得を調整して行っており、そのため一度利得を調整しても、図5の信号波形図に示すように温度ドリフト等により各チャネルの出力ラインの出力信号にレベル差ΔVが生じ、一線化出力信号を合成して一画面とした時、画面に縦キズが生ずるという問題点があった。また各出力ライン毎に利得を調整するため、利得を変更する場合には各出力ライン全ての利得を調整しなければならず、極めて煩雑な作業を必要としていた。
【0005】本発明は、従来の多線読み出し方式の信号処理回路の利得調整における上記問題点を解消するためになされたもので、各出力ラインの出力信号レベルを容易に且つ精度よく均一にすることができ、また温度ドリフト等の経時変化に追従できるようにした信号処理回路の利得調整方式を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段及び作用】上記問題点を解決するため、請求項1記載の発明は、多線読み出し電流出力タイプの固体撮像素子の信号処理回路の利得調整方式において、固体撮像素子の固定パターンノイズの発生しない映像信号のブランキング期間に各出力ラインの信号処理回路の入力段にテスト信号を送出する手段を設け、信号処理回路で処理されたテスト信号のレベルが同一になるように信号処理回路の利得を調整するものである。
【0007】このように固定パターンノイズの発生しないブランキング期間に付加したテスト信号により、信号処理回路の利得を調整するようにしているので、容易に且つ精度よく各出力ラインの信号出力レベルを均一にすることができ、縦キズの発生を防止することができる。
【0008】また請求項2記載の発明は、多線読み出し電流出力タイプの固体撮像素子の信号処理回路の利得調整方式において、固体撮像素子の固定パターンノイズの発生しない映像信号のブランキング期間に各出力ラインの信号処理回路の入力段にテスト信号を送出する手段と、信号処理回路で処理されたテスト信号のレベルを検出する各出力ラインに設けられたテスト信号レベル検出手段と、該レベル検出手段で検出されたテスト信号のレベルに基づき利得を制御する1つの出力ラインを除いた各出力ラインに設けられた利得制御回路とを備え、単一の出力ラインのレベル調整により全出力ラインのレベルを均一に調整できるようにするものである。
【0009】このように構成した利得調整方式においては、各出力ラインのレベル検出信号に基づいて利得制御回路が制御されるので、単一の出力ラインの利得設定により全ラインのレベル調整が自動的に行われる。また撮像動作中に各出力ラインのテスト信号レベルを検出するようにしているので、温度ドリフト等の経時変化に対する追従性が得られる。
【0010】
【実施例】次に実施例について説明する。図1は、請求項1記載の発明に係る利得調整方式の実施例を説明するための回路構成図である。図において、1は光信号を電気信号に変換するCMD,AMIなどを画素として用いた電流出力タイプの固体撮像素子で、2つのチャネルの出力ライン2-1,2-2に対して出力信号を読み出すようになっている。3-1,3-2は固体撮像素子1から出力ライン2-1,2-2を通して送られる電流信号を電圧信号に変換する、電圧フォロワ型オペアンプと帰還抵抗からなるプリアンプである。そしてプリアンプ3-1,3-2の入力段の出力ライン2-1,2-2には、それぞれダイオード4-1,4-2と抵抗5-1,5-2を直列接続したテスト信号印加回路が接続されており、2つの抵抗5-1,5-2の共通接続点には、固体撮像素子1の映像信号のブランキングパルスで制御されるテストON/OFF切換スイッチ6を介して、テスト信号入力端子7が接続されている。なおダイオード4-1,4-2はテストOFF時に逆バイアスしてテスト信号系をカットするためのものであり、抵抗5-1,5-2はテスト電圧信号を電流信号に変換するためのものである。9-1,9-2はプリアンプ3-1,3-2の出力信号を適当なレベルにするためのアンプ、10-1,10-2はアンプ9-1,9-2の利得調整用のボリウム、11は各チャネルの出力ラインの出力信号を切換出力し、一線化出力とするチャネル切換スイッチ、12は一線化出力信号の出力端子である。
【0011】次に、この実施例の動作について説明する。撮像動作が開始すると、固体撮像素子1から映像信号がそれぞれチャネル1信号及びチャネル2信号として出力ライン2-1,2-2に出力される。この際、映像信号の固定パターンノイズの発生しないブランキング期間に、テストON/OFF切換スイッチ6がテストON側に切り換えられ、テスト信号が抵抗5-1,5-2及びダイオード4-1,4-2を介して、各出力ライン2-1,2-2に付加される。固体撮像素子1からの映像信号と付加されたテスト信号の合成信号は、プリアンプ3-1,3-2により電流から電圧に変換され、次段のアンプ9-1,9-2に送られる。なお上記合成信号のテスト信号部には固体撮像素子1の固定パターンノイズは含まれていない。
【0012】チャネル1の信号は、ボリウム10-1に基づいて利得調整されたアンプ9-1により増幅され、チャネル切換スイッチ11に送られる。一方チャネル2の信号は、図2に示すように、各アンプ9-1,9-2の各チャネル出力信号のテスト信号部ST の基準レベルREFが同一になるように、ボリウム10-2で利得調整されたアンプ9-2により増幅され、同様にチャネル切換スイッチ11に送られる。チャネル切換スイッチ11に入力された各チャネルの出力信号は、チャネル切換パルスにより切換選択され、一線化出力信号に合成されて出力端子12へ送出される。
【0013】このように各アンプ9-1,9-2からの出力信号のテスト信号部ST の出力基準レベルREFが同一になるように各アンプ9-1,9-2の利得が調整されるので、容易に且つ精度よく各チャネルの信号出力レベルを均一にすることができる。
【0014】次に、請求項2記載の発明の実施例を図3に示した回路構成図に基づいて説明する。なお図3において、図1に示した実施例と同一又は対応する部材には同一符号を付し、その説明を省略する。この実施例においては、チャネル2のアンプ9-2には利得調整用のボリウムは設けず、その代わりチャネル2には利得調整回路21が設けられている。そして更に各チャネル1,2にはアンプ9-1,9-2により増幅された出力信号のテスト信号部の基準レベルを検出するテスト信号レベル検出回路22-1,22-2が設けられ、これらの検出回路のレベル検出信号は比較器23に入力され、比較器23の出力により利得調整回路21が制御されるように構成されている。
【0015】次にこの実施例の動作について説明する。撮像動作を開始すると、固体撮像素子1から映像信号がチャネル1及び2の各出力ライン2-1,2-2にそれぞれ出力される。この際、図1に示した実施例と同様に、映像信号の固定パターンノイズの発生しないブランキング期間にのみテスト信号が全チャネルの出力ライン2-1,2-2に対して付加される。固体撮像素子1からの映像信号とテスト信号の合成信号は、プリアンプ3-1,3-2により電流から電圧に変換され、次段のアンプ9-1,9-2に送られる。チャネル1の信号はボリウム10-1により利得調整されたアンプ9-1により増幅され、アンプ9-1の出力信号はチャネル切換スイッチ11に送られる一方、テスト信号レベル検出回路22-1によりテスト信号部の基準レベルが検出され、比較器23に送られる。
【0016】一方、チャネル2のプリアンプ出力は、アンプ9-2により増幅され、利得調整回路21によりチャネル1の信号レベルと同一レベルに制御され、チャネル切換スイッチ11に送られる一方、テスト信号レベル検出回路22-2により、テスト信号部の基準レベルが検出され、比較器23に送られる。比較器23ではレベル検出回路22-1の検出レベルに対するレベル検出回路22-2の検出レベルを比較し、チャネル1の検出レベルと同一になるように、利得調整回路21の利得制御を行う。すなわち、ボリウム10-1で決定されるチャネル1のテスト信号出力レベルが基準レベルとなり、他チャネルのテスト信号出力レベルがチャネル1と同じになるように動作する。なお、アンプ9-1の利得調整用のボリウム10-1は固定抵抗を用いてもよい。
【0017】
【発明の効果】以上実施例に基づいて説明したように、請求項1記載の発明によれば、固定パターンノイズの発生しないブランキング期間に付加したテスト信号により信号処理回路の利得を調整するようにしているので、容易に各出力ラインの信号出力レベルを高精度で均一にすることができ、縦キズの発生を防止することができる。
【0018】また請求項2記載の発明によれば、各出力ラインのレベル検出信号に基づいて利得制御回路が制御されるので、単一の出力ラインの利得設定により、全ラインのレベル調整が行われる。また撮像動作中に各出力ラインのテスト信号レベルを検出するようにしているので、温度ドリフト等の経時変化に対する追従性が得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】請求項1記載の発明に係る利得調整方式の実施例を説明するための回路構成図である。
【図2】図1に示した実施例における各チャネルのテスト信号を付加した出力信号波形を示す図である。
【図3】請求項2記載の発明の実施例を説明するための回路構成図である。
【図4】従来の固体撮像素子の多線読み出し方式を説明するための回路構成図である。
【図5】図4に示した従来の多線読み出し方式のチャネル切換部における信号波形を示す図である。
【符号の説明】
1 固体撮像素子
2-1,2-2 出力ライン
3-1,3-2 プリアンプ
4-1,4-2 ダイオード
6 テストON/OFF切換スイッチ
9-1,9-2 アンプ
10-1,10-2 アンプ利得調整用ボリウム
11 チャネル切換スイッチ
21 利得調整回路
22-1,22-2 テスト信号レベル検出回路
23 比較器

【特許請求の範囲】
【請求項1】 多線読み出し電流出力タイプの固体撮像素子の信号処理回路の利得調整方式において、固体撮像素子の固定パターンノイズの発生しない映像信号のブランキング期間に各出力ラインの信号処理回路の入力段にテスト信号を送出する手段を設け、信号処理回路で処理されたテスト信号のレベルが同一になるように信号処理回路の利得を調整することを特徴とする利得調整方式。
【請求項2】 多線読み出し電流出力タイプの固体撮像素子の信号処理回路の利得調整方式において、固体撮像素子の固定パターンノイズの発生しない映像信号のブランキング期間に各出力ラインの信号処理回路の入力段にテスト信号を送出する手段と、信号処理回路で処理されたテスト信号のレベルを検出する各出力ラインに設けられたテスト信号レベル検出手段と、該レベル検出手段で検出されたテスト信号のレベルに基づき利得を制御する1つの出力ラインを除いた各出力ラインに設けられた利得制御回路とを備え、単一の出力ラインのレベル調整により全出力ラインのレベルを均一に調整できるようにした利得調整方式。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図5】
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【図4】
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【特許番号】第2977055号
【登録日】平成11年(1999)9月10日
【発行日】平成11年(1999)11月10日
【国際特許分類】
【出願番号】特願平3−301256
【出願日】平成3年(1991)10月22日
【公開番号】特開平5−115044
【公開日】平成5年(1993)5月7日
【審査請求日】平成10年(1998)9月17日
【出願人】(000000376)オリンパス光学工業株式会社 (11,466)