説明

偏光照明装置

【課題】反射光に基づく被照射面のぎらつきを低減でき、光源からの出射光の利用効率に優れた偏光照明装置を提供すること。
【解決手段】本発明の偏光照明装置(1)は、光源(11)と、光源(11)から出光した光を直線偏光に偏光分離するワイヤグリッド偏光子(121)と、を具備する偏光照明装置(1)であって、ワイヤグリッド偏光子(121)は、所定方向に延在して設けられた複数の金属ワイヤ(121a)を有し、金属ワイヤ(121a)の延在方向が、被照射面の面内方向に対して略平行となることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、直線偏光を用いた偏光照明装置に関し、例えば、読書灯などに好適に用いられる偏光照明装置に関する。
【背景技術】
【0002】
読書灯は、事務机や学習机において古くから用いられている。一般的な読書灯においては、偏光ではなく自然光が用いられている。偏光を作るためには、プリズム状の偏光子や二色性色素を使用した吸収型偏光子を用いる必要がある。しかしながら、これらの偏光子は高価であると共に、偏光を作る際の光の損失が多く、これらの偏光子を用いた偏光が照明に使用されることは少なかった。一方で、本件出願人は、偏光照明に使用できる反射型偏光子としてワイヤグリッド偏光子を開発し、このワイヤグリッド偏光子の持つ高い偏光度、及び高い反射率を活用した偏光光源について出願している(例えば、特許文献1及び特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011−107308号公報
【特許文献2】特開2011−107309号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、光源としての蛍光管光源と、この蛍光管光源からの無偏光光(自然光)を偏光分離する誘電体多層膜と、を備えた読書灯が市販されている(例えば、商品名:フィルターライト、3M社製)。この読書灯においては、蛍光管光源から分離した直線偏光を被照射面となる紙面に照射することにより、紙面からの反射光に基づくぎらつきを低減する。
【0005】
しかしながら、上記読書灯においては、直線偏光の偏光度が必ずしも十分ではなく、また直線偏光が最大の効果を生むように使用法が設定されていないことから、広く普及するには至っていない。
【0006】
本発明は、かかる点に鑑みてなされてものであり、反射光に基づく被照射面のぎらつきを低減でき、光源からの光の利用効率に優れた偏光照明装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の偏光照明装置は、光源と、前記光源から出光した光を直線偏光に偏光分離するワイヤグリッド偏光子と、を具備する偏光照明装置であって、前記ワイヤグリッド偏光子は、所定方向に延在して設けられた複数の金属ワイヤを有し、金属ワイヤの延在方向が、被照射面の面内方向に対して略平行となることを特徴とする。
【0008】
この構成によれば、金属ワイヤの延在方向が被照射面の面内方向に対して略平行となるので、被照射面の面内方向に反射率の低い直線偏光を照射でき、被照射面からの反射光に基づくぎらつきを低減することができる。また、光源からの光をワイヤグリッド偏光子で偏光分離するので、高い偏光度の直線偏光が得られるだけでなく、光源からの光の損失を低減でき、光源からの出射光の利用効率を向上できる。
【0009】
本発明の偏光照明装置においては、前記直線偏光の偏光軸の方向を表示する偏光軸表示手段を備えることが好ましい。
【0010】
本発明の偏光照明装置においては、出射光の方向と前記被照射面の面内方向とのなす角度が30度〜70度の範囲内であることが好ましい。
【0011】
本発明の読書灯は、上記偏光照明装置を備えたことを特徴とする。この構成によれば、直線偏光を照明光として使用するので、本の紙面などの被照射面からの反射光に基づくぎらつきを低減できる。これにより、視認性を高めることが可能となると共に、目の疲れを低減することが可能となる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、反射光に基づく被照射面のぎらつきを低減でき、光源からの光の利用効率に優れた偏光照明装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】光幕反射の説明図である。
【図2】ガラス面に対する縦偏光及び横偏光の入射角と反射率との関係を示す図である。
【図3】本実施の形態に係る偏光照明装置の模式図である。
【図4】本実施の形態に係る偏光照明装置のワイヤグリッド偏光子における金属ワイヤの延在方向を示す模式図である。
【図5】本実施の形態に係る偏光軸表示手段の一態様を示す図である。
【図6】本実施の形態に係る偏光軸表示手段の説明図である。
【図7】本実施の形態に係る偏光軸表示手段の他の態様を示す図である。
【図8】本実施の形態に係る偏光照明装置を備えた読書灯の一例を示す図である。
【図9】本実施の形態に係る偏光照明装置を備えた読書灯の他の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
ワイヤグリッド偏光子は、基材と、この基材上に設けられ特定方向に延在する複数の微細な金属線(金属ワイヤ)と、を備えた反射型偏光子である。ワイヤグリッド偏光子においては、金属ワイヤの延在する方向(以下、「反射軸」という)の直線偏光を金属反射するため、反射した直線偏光の再利用が可能となる。また、ワイヤグリッド偏光子は、無機物で構成することもできるので、高い耐熱性や高い耐光性を実現することも可能となる。近年、数十nmサイズの微細加工技術の進歩により、本発明者らは、高い偏光度が得られるワイヤグリッド偏光子を開発し、実用化している。
【0015】
ところで、読書灯などに用いられる照明装置においては、被照射面となる紙面の視認性を高めると共に、目の疲労を少なくする観点から、紙面からの反射光に基づくぎらつきを低減することが重要である。自然光を用いた一般的な照明装置においては、図1に示すように、机101上の紙面102に対して所定の角度θをなす方向から光が入射すると、紙面102で反射した光が読者103の視線の方向に向けて反射する光膜反射が生じる。このように光膜反射が生じた場合、紙面102全体の輝度が上がり、ぎらつきによって印刷文字が見えにくくなる問題がある。このため、図1に示す例では、光膜反射を避ける観点から、領域A以外の場所に照明装置を配置する必要がある。
【0016】
本発明者らは、紙面などの被照射面からの反射光に基づくぎらつきの要因が、被照射面の面内方向に対して略平行な振動面を持つ直線偏光(以下、「横偏光」という)にあることに着目した。読書灯などの照明装置において、横偏光は、被照射面からの反射率が高く、紙面のぎらつきや、紙面の印字部分の光沢が増大する要因となる。このため、横偏光が紙面に照射されると印字文字の視認性が悪化し、色の識別が困難となる場合がある。
【0017】
一方、被照射面となる紙面に対して垂直方向の振動面を持つ直線偏光(以下、縦偏光という)は、被照射面からの反射率が低く(特に入射角30度〜70度の範囲)、紙面のぎらつきや、紙面の印字部分の光沢が増大する要因とはならない。このため、縦偏光を紙面に照射することにより、紙面の十分な視認性が得られ、かつ、色の識別も容易となりうる。
【0018】
図2を参照して、被照射面としての屈折率1.5のガラス面における縦偏光及び横偏光の入射角θと反射率との関係について説明する。縦偏光の反射率が実質的にゼロとなる角度は、ブリュースター角と呼ばれ、被照射面に用いられる部材の屈折率によって決定される。被照射面の部材の屈折率が1.3〜2.0となる範囲内においては、ブリュースター角が52度〜63度の範囲内となり、屈折率の変化に対するブリュースター角の変化が比較的少なく、縦偏光の反射率の低い領域もあまり変わらない。
【0019】
本発明者らは、ワイヤグリッド偏光子を用いて縦偏光を効率的に得ることにより、光源から縦偏光を被照射面に照射すると共に、被照射面からの反射光のぎらつきの原因となる横偏光を低減できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0020】
以下、本発明の一実施の形態について、添付図面を参照して詳細に説明する。
図3は、本発明の一実施の形態に係る偏光照明装置1の模式図である。本実施の形態に係る偏光照明装置1は、光源11と、この光源11の出光面側に配置され、光源11から出光した光を偏光変換する偏光変換素子12と、を具備する。光源11と偏光変換素子12との間には、光源11から出光した光を集光するレンズ13が配置され、レンズ13と偏光変換素子12との間には、偏光変換素子12によって偏光分離された偏光軸の方向を示す偏光軸表示手段14が配置される。ここで、偏光軸とは直線偏光の振動面の方向をいう。
【0021】
光源11としては、LEDなどの点光源や、線光源が用いられる。光源11は、無偏光光を被照射面に向けて照射する。レンズ13は、光源11から出光した光を集光して略平行光とし、集光した略平行光を偏光変換素子12に向けて出光する。
【0022】
偏光変換素子12は、概して平板形状を有するワイヤグリッド偏光子121、光反射部材122及び位相差板123と、を備える。ワイヤグリッド偏光子121は、光源11からの光の出光方向に対して、その主面が所定の角度をなすように配置される。光反射部材122は、ワイヤグリッド偏光子121との間で所定の間隔をとるように、ワイヤグリッド偏光子121に対して略平行に配置される。位相差板123は、その主面が光源11からの光の出光方向に対して略垂直(被照射面に対して略平行)となるように配置される。なお、特許文献1に示すように、ワイヤグリッド偏光子121を曲面で使用し、偏光変換素子12を構成することもできる。
【0023】
ワイヤグリッド偏光子121は、特定方向に延在する複数の金属ワイヤ121a(図3において不図示、図4参照)を有しており、反射型偏光子として機能する。金属ワイヤ121aは、その延在方向が被照射面(例えば、紙面)に対して略平行となるように設けられる。ワイヤグリッド偏光子121は、光源11から出光した出射光のうち、金属ワイヤ121aの延在方向と略垂直方向の縦偏光(P偏光)を透過して被照射面に向けて出光すると共に、金属ワイヤ121aの延在方向と略平行方向の横偏光(S偏光)を光反射部材122に向けて反射することにより偏光分離する。
【0024】
図4は、ワイヤグリッド偏光子121の平面模式図である。図4に示すように、ワイヤグリッド偏光子121は、複数の金属ワイヤ121aの延在方向が、被照射面の面内方向に対して略平行となるように配置される。複数の金属ワイヤ121aは、被照射面の面内方向において所定の間隔Dで設けられる。ワイヤグリッド偏光子121は、金属ワイヤ121aの延在方向と略同一方向が、直線偏光成分を反射する反射軸となり、金属ワイヤ121aの延在方向に対して略直交する方向が、直線偏光成分を透過する透過軸となる。本実施の形態に係る偏光照明装置1においては、金属ワイヤ121aの延在方向となる反射軸の方向が、被照射面の面内方向に対して略平行となるようにワイヤグリッド偏光子121を配置する。この構成により、光源11から出光した出射光のうち、被照射面の面内方向に対する垂直方向の縦偏光(P偏光)を透過すると共に、被照射面の面内方向における横偏光(S偏光)を反射することが可能となる。この結果、被照射面からの反射光に基づくぎらつきの原因となる横偏光(S偏光)を除去できる。
【0025】
光反射部材122は、ワイヤグリッド偏光子121によって反射された横偏光(S偏光)を位相差板123に向けて反射する。位相差板123は、光反射部材122によって反射された横偏光(S偏光)に所定の位相差を生じさせて縦偏光(P偏光)に変換し、変換した縦偏光(P偏光)を被照射面に向けて出光する。
【0026】
偏光軸表示手段14は、例えば、偏光変換素子12と光源11との間に配置される。偏光軸表示手段14は、偏光照明装置1からの出射光が、被照射面に対して適切な縦偏光となる方向を示すための目印として機能する。偏光軸表示手段14は、偏光照明装置1の出射光の照射面(照射領域)の形状の制御や、レーザ光により、偏光照明装置1からの出射光の偏光軸を表示し、照射方向を案内する。
【0027】
図5は、偏光軸表示手段14の一態様を示す図であり、偏光軸表示手段14として光遮蔽板15を用いた例を示している。なお、図5においては、出光面側からレンズ13及び偏光軸表示手段14を見た状態を示している。
【0028】
図5A,図5Bに示す例では、平面視にて略円形形状のレンズ13の左側、下側と重なるように光遮蔽板15が配置されている。この場合、レンズ13によって集光された光源11からの光の一部が遮られるので、出射光16の照射領域16aに一対の直線部16b(図6A参照)又は角部16c(図6B参照)が設けられる。図6Aに示す例では、照射領域16aに設けられた一対の直線部16bが、被照射面としての略矩形形状の紙面の二辺に沿う状態となるように、偏光照明装置1からの出射光の方向を制御することにより、紙面に対して適切な縦偏光を照射することが可能となる。また、図6Bに示す例では、照射領域16aに設けられた角部16cが略直角となるように、偏光照明装置1からの出射光の方向を制御することにより、被照射面に対して適切な縦偏光を照射することが可能となる。なお、図5に示す例では、光遮蔽板15を用いた例について説明したが、光マスクを用いて照射領域16a中に線を表示してもよい。
【0029】
図7は、偏光軸表示手段14の他の態様を示す例であり、偏光軸表示手段14として、照射領域16aに対して直線状のレーザ光17を照射するレーザ光照射手段(不図示)を用いた例を示している。図7Aに示すように、この場合、光源11の外部に配置されたレーザ光照射手段により、出射光16中に面状のレーザ光17が照射され、照射領域16a中に線状のレーザ光17が表示される。このレーザ光17が、所定の幅以下の直線となるように偏光照明装置1の出射光の方向を制御することにより、被照射面に対して適切な縦偏光を照射することが可能となる。
【0030】
また、偏光軸表示手段14と偏光変換素子12との間や偏光変換素子12の出光面側などの位置に拡散板を配置して任意の方向に光を拡散させてもよい。例えば、光源11として、青色LEDと黄色蛍光材とを用いた白色LEDを用いる場合においては、レンズを用いて出光方向を制御すると、青色と黄色とに出射光が分離する場合がある。このような場合においては、光拡散板を配置することにより、色分離を抑制することができる。この場合、偏光軸の方向がずれないように拡散板を配置することが必要である。拡散板に複屈折がある場合は、拡散板の光学軸と偏光軸を合わせることが好ましい。拡散板としては、光の透過率が高く、拡散方向の制御が容易な、表面の透明微細凹凸形状を利用したものが好ましい。
【0031】
光源11としては、本発明の効果を奏する範囲であれば特に制限されず、各種点光源、線光源などを用いることができる。これらの中でも、レンズ13により平行光を得る観点から、発光領域が小さい光源11を用いることが好ましい。発光領域が小さい光源11としては、例えば、発光ダイオード(LED)が挙げられる。LEDは、発光領域が小さく、かつ、出射光の指向性が強いことから、レンズ13よって容易に平行光とすることが可能となり、光源11として好適に用いることが可能である。また。光源11としては、青色LEDと黄色蛍光材とを併用した白色LEDを用いることもできる。このような白色LEDを用いる場合においては、レンズ13からの出光が青色と黄色とに分離することを低減するため、青色LEDからレンズ13への出光方向と黄色蛍光材からレンズ13への出光方向とが略同一方向となるように配置することが好ましい。
【0032】
偏光変換素子12としては、特開2008−083657号公報に示されるようなワイヤグリッド偏光子121を備えたものが、偏光性能の入射角依存性が少なく高い偏光度が得られるといった光学性能や加工性などの点から好ましい。なお、本発明の効果を奏する範囲で、誘電体多層膜による偏光子も偏光変換素子13として使用できる。ワイヤグリッド偏光子121の金属ワイヤ121aのピッチは、偏光変換において反射光の偏光度を高め、偏光照明装置の出射光(偏光)の偏光度を向上させる観点から、100nm〜120nm程度にすることが好ましい。
【0033】
レンズ13としては、本発明の効果を奏する範囲であれば特に制限されず、各種レンズ部材を用いることができる。レンズ13としては、例えば、光透過性材料で構成された凸レンズや、断面形状が略放物線をなす凹面鏡などを用いることができる。レンズ13として凸レンズを用いる場合には、光源11(例えば、LED)からの出射光を略平行光に近づける観点から、凸レンズの焦点に光源11を配置することが好ましい。また、レンズ13として凸レンズの中でも、フレネルレンズを用いる場合においては、焦点距離が短くても薄くでき、かつ、比較的口径を大きくできるため好ましい。光源11としてLEDを線状に配列した線状光源を用い、レンズ13として凸レンズを用いる場合においては、必ずしもLED毎に凸レンズを設置する必要はなく、ロッドレンズとしてもよい。
【0034】
次に、以上のように構成された偏光照明装置1の全体動作について説明する。光源11から被照射面に向けて出光した無偏光光(自然光)は、レンズ13によって集光され略平行光となり偏光変換素子12に入光する。偏光変換素子12に入光した自然光は、ワイヤグリッド偏光子121によって縦偏光(P偏光)がワイヤグリッド偏光子121を透過して被照射面に照射されると共に、横偏光(S偏光)がワイヤグリッド偏光子121によって光反射部材122に向けて反射される。ワイヤグリッド偏光子121によって反射された横偏光(S偏光)は、光反射部材122によって再度に照射面に向けて反射され、位相差板123に入光する。位相差板123に入光した横偏光(S偏光)は、1/2波長位相差が生じて縦偏光(P偏光)に変換されて被照射面に向けて出光する。
【0035】
このように、本実施の形態に係る偏光照明装置1においては、偏光分離にワイヤグリッド偏光子121を用いることから、偏光度が高い縦偏光が得られるので、被照射面からの反射光に基づくぎらつきを低減することができる。これにより、光膜反射が生じる領域に偏光照明装置1を配置した場合においても、被照射面からの反射光に基づくぎらつきを低減できると共に、紙面などに印字された文字を容易に識別することが可能となる。この結果、偏光照明装置1の配置の自由度が増すと共に、従来の照明装置のように、光膜反射の防止のために広い面積を大光量で照らす間接照明を用いる必要がなく、直接照明として用いることも可能となるので、照明装置の簡略化及び消費電力の低減が可能となる。
【0036】
さらに、本実施の形態に係る偏光照明装置1においては、反射型偏光子としてのワイヤグリッド偏光子を用いるので、光源11からの光の損失を低減することが可能となり、光源11からの出射光の利用効率を向上できる。ワイヤグリッド偏光子121で反射した一方の偏光(横偏光)を位相差板123によって縦偏光に変換し、ワイヤグリッド偏光子121を透過した縦偏光と合わせて被照射面に照射するので、高い偏光度を有する縦偏光を高い効率で作ることが可能となり、光源11からの光の利用効率を更に向上することが可能となる。
【0037】
本実施の形態に係る偏光照明装置1においては、出射光の方向(以下、「光軸」という)と被照射面の面内方向とのなす角度が30度〜70度の範囲内であることが好ましい。一般的な照明装置を用いた場合においては、照明装置から被照射面に入射する光の入射角度が30度〜70度の範囲において、紙面などの被照射面からの反射光に基づくぎらつきが顕著となる光膜反射が生じる。本実施の形態に係る偏光照明装置1においては、金属ワイヤ121aの延在方向が、被照射面の面内方向に対して略平行となるように配置することにより、偏光照明装置1を光膜反射が生じる領域に配置した場合においても、被照射面からの反射光に基づくぎらつきを抑制することが可能となる。また、被照射面となる紙面や印字部分で乱反射した光が目に入ることを抑制できるため、紙を含め印字がぎらつくことがなく、紙面などの視認性が高まり、照射平面のぎらつきを低減でき、色を正しく識別することが可能となる。
【0038】
本実施の形態に係る偏光照明装置1は、光軸及び偏光軸を含む平面と紙面などの被照射面とが略直交する位置に配置することが好ましい。例えば、偏光照明装置1、被照射面及び読者の目の位置が略同一平面内に存在する場合においては、偏光照明装置1の偏光軸がこの平面と平行になり、被照射面とこの平面とが略直交するように配置することが好ましい。また、偏光照明装置1の位置及び机(作業台)の位置が固定される場合においては、予め偏光照明装置1の偏光軸と被照射面となる机の表面とを適宜配置することにより、偏光軸表示手段14を省略することも可能となる。この場合においては、偏光軸(偏光面)を回転できるように配置し、読者の目の位置や被照射面の向きに応じて最適な偏光照明装置1の配置とすることが好ましい。
【0039】
また、本実施の形態に係る偏光照明装置1においては、光軸及び偏光軸を含む平面と被照射面とのなす角度は略直交することが好ましいが、この配置にずれを有する場合、光軸及び偏光軸を含む平面と被照射面とのなす角度が、45度になると、偏光照明装置1からの出射光が実質的に無偏光光となる。このため、反射光に基づくぎらつきを低減する観点から、光軸及び偏光軸を含む平面と被照射面とがなす角度の直交からのずれ角度としては、30度以下であることが好ましい。
【0040】
偏光照明装置1は、被照射面の色、反射率、反射光の光量及び反射方向などに応じてその配置を適宜変更可能である。この場合、許容されるぎらつきの程度によって、偏光照明装置1の偏光度を設定する。通常、偏光度が30%以上であれば、反射光に基づくぎらつきを防止する効果が得られる。偏光度としては、十分にぎらつきを防止する観点から、50%以上であることが好ましい。また、偏光度の上限に特に制限はなく、100%以下であって、100%に近いことが好ましい。
【0041】
また、偏光照明装置1、被照射面及び読者の目の位置が略同一平面内に配置した場合、偏光軸は、被照射面上に偏光フィルムなどの板状の偏光子を配置し、偏光フィルムの透過光量が最も低くなる方向を求めることによっても、識別することが可能となる。この場合においては、偏光フィルムの吸収軸(又は反射軸)の方向が、偏光照明装置1の偏光面と略平行であればよい。例えば、本のしおりやブックカバーの一部を偏光フィルムで構成し、それらに偏光フィルムの吸収軸(反射軸)の方向を表示するなどの方法が挙げられる。
【0042】
本実施の形態に係る偏光照明装置1は、読書灯などに好適に用いることができる。図8は、偏光照明装置1を使用した読書灯の一例を示す図である。なお、図8Aにおいては、偏光照明装置1を備えた読書灯の模式的な外観を示し、図8Bにおいては、図8Aに示す偏光照明装置1を備えた読書灯の側面図を示し、図8Cにおいては、図8Bに示す偏光照明装置1の拡大図を示している。
【0043】
図8Aに示すように、本実施の形態に係る読書灯2は、例えば、平面視にて略矩形形状の天板200を有する読書机の一端部から垂直にするパーテーション201の上端部に配置された偏光照明装置1を備える。偏光照明装置1は、光源11として点光源を備えており、天板200上における被照射面202に対して所定の入射角度θ(例えば、30度〜70度)で光が照射されるように配置される(図8B参照)。ワイヤグリッド偏光子121は、金属ワイヤ121aの延在方向が、天板200上における被照射面202(例えば、紙面)の面内方向に対して略平行になるように配置される。
【0044】
図8Cに示すように、偏光照明装置1は、図3に示した構成を有する。偏光照明装置1は、その出射光の照射方向が被照射面202に対して所定の角度をなすように配置される。なお、図8Cに示す例では、ワイヤグリッド偏光子121の主面とパーテーションの主面201とが略平行となる例について示しているが、ワイヤグリッド偏光子121は、その主面がパーテーション201の主面に対して所定の角度をなすように配置してもよい。
【0045】
この読書灯2においては、偏光照明装置1の点光源から出光した自然光が、ワイヤグリッド偏光子121を介して縦偏光として被照射面に照射されるので、天板200上における被照射面202からの反射光に基づくぎらつきを低減することができる。これにより、読者の目203に対し光膜反射が生じる領域に偏光照明装置1を配置した場合においても、反射光に基づく被照射面202からの反射光に基づくぎらつきを低減できるので、被照射面202の視認性が向上し、目の疲労を軽減することが可能となる。また、パーテーション201における任意の領域に偏光照明装置1を配置できるので、偏光照明装置1の配置の自由度が向上すると共に、周囲の環境とは独立した必要最小限の光で読者に見やすく十分な光を供給することが可能となる。
【0046】
図9は、偏光照明装置1を備えた読書灯の他の例を示す図である。なお、図9Aにおいては、図8Aと同様に偏光照明装置1を備えた読書灯の模式的な外観を示し、図9Bにおいては、図8Cと同様に読書灯を側面から見た際の拡大図を示している。
【0047】
図9Aに示すように、この読書灯2は、光源11として、天板200及びパーテーション201の主面に沿って延在する線状光源11aを有する偏光照明装置1を備える。また、図9Bに示すように、この読書灯2は、レンズ13として、線状光源の延在方向(紙面手前−奥行き方向)に沿って延在するロッドレンズ13aを備える。その他の構成については、図8に示した読書灯2と同一であるため、説明を省略する。なお、図8,図9に示す読書灯2においては、上述した表面に透明微細凹凸構造を有する拡散方向制御型の拡散板を用いることが有効である。
【0048】
また、本実施の形態に係る偏光照明装置1は、自動車などの車両用室内灯、飛行機用室内灯、又は自動車などの車外灯(ヘッドライト)としても好適に用いることが可能である。車両用室内灯や飛行機用室内灯などに用いる場合においては、乗客に対して光膜反射が生じる領域に偏光照明装置1を配置した場合においても、被照射面からの反射光に基づくぎらつきを抑制できるので、自動車や飛行機などのレイアウトの自由度を向上することが可能となる。また、自動車の車外灯として用いる場合においては、例えば、地面(水平面)に対してワイヤグリッド偏光子121の金属ワイヤ121aの延在方向が略平行となるように偏光照明装置1を配置することにより、輝度の高い光源11を用いた場合においても、地面などからの反射光に基づくぎらつきを向上できる。これにより、夜間や雨天時の運転の安全性を向上できる。
【0049】
以上説明したように、上記実施の形態に係る偏光照明装置1においては、金属ワイヤ121aの延在方向が、被照射面の面内方向と略平行になるようにワイヤグリッド偏光子121を配置したので、光源11から出光した無偏光光が、ワイヤグリッド偏光子121で構成される偏光変換素子12により縦偏光として出射される。これにより、被照射面からの反射光のぎらつきの要因となる被照射面の面内方向に略平行な横偏光を大幅に減らすことができるので、反射光による被照射面のぎらつきを低減できる。この結果、紙面などの被照射面からの反射光時に基づくぎらつきを抑制できる。
【0050】
また、上記実施の形態に係る偏光照明装置1においては、偏光軸表示手段14を備えることにより、被照射面に対して高い偏光度を有する直線偏光を、その直線偏光の向きを容易に識別することが可能となる。これにより、ぎらつきが少なく視認性が高い状態で被照射面上の文字などを観察することが可能となる。さらに従来の照明装置を用いた場合に光膜反射が生じる方向に偏光照明装置1を配置することもできるので、偏光照明装置1の配置の自由度が増し、かつ、少ない光量で効率よく照明することができる。また、偏光の振動面の向きを認識できるようにすることで、適切な偏光が得られる状態で偏光照明装置1を使用することが容易となり、視認性が高く、目が疲れにくい読書灯などを実現できる。
【0051】
さらに、上記実施の形態に係る偏光照明装置1においては、偏光軸表示手段14を備えることにより、偏光照明装置1の偏光軸を識別することが容易となる。これにより、偏光照明装置1を使用する際に、使用状況に応じて適切な偏光を得ることが容易となるので、スタンドライトや携帯可能な読書灯などに偏光照明装置1を用いる場合においても、被照射面に対して適切な偏光を照射することが可能となる。
【0052】
なお、本発明は上記実施の形態に限定されず、種々変更して実施することが可能である。上記実施の形態において、添付図面に図示されている大きさや形状などについては、これに限定されず、本発明の効果を発揮する範囲内で適宜変更することが可能である。例えば、上記実施の形態においては、偏光変換素子にワイヤグリッド偏光子を用いた例について説明したが、本発明の効果を奏する範囲で、ワイヤグリッド偏光子以外の偏光子を使用してもよい。その他、本発明の目的の範囲を逸脱しない限りにおいて適宜変更して実施することが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0053】
本発明は、反射光に基づく被照射面のぎらつきを低減でき、光源からの出射光の利用効率に優れた偏光照明装置を実現できるという効果を有し、特に、一般事務、読書などに用いる机で使用する読書灯、車両、船舶、航空機などのスポットランプとして好適に用いることが可能である。
【符号の説明】
【0054】
1 偏光照明装置
11 光源
11a 線状光源
12 偏光変換素子
121 ワイヤグリッド偏光子
122 光反射部材
123 位相差板(1/2波長板)
13 レンズ
13a ロッドレンズ
14 偏光軸表示手段
15 光遮蔽板
16 照射光
16a 照射領域
16b 直線部
16c 角部
17 レーザ光
100 読書灯
200 天板
201 パーテーション
202 被照射面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光源と、前記光源から出光した光を直線偏光に偏光分離するワイヤグリッド偏光子と、を具備する偏光照明装置であって、
前記ワイヤグリッド偏光子は、所定方向に延在して設けられた複数の金属ワイヤを有し、金属ワイヤの延在方向が、被照射面の面内方向に対して略平行となることを特徴とする偏光照明装置。
【請求項2】
前記直線偏光の偏光軸の方向を表示する偏光軸表示手段を備えたことを特徴とする請求項1記載の偏光照明装置。
【請求項3】
出射光の方向と前記被照射面の面内方向とのなす角度が30度〜70度の範囲内であることを特徴とする請求項1又は請求項2記載の偏光照明装置。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれかに記載の偏光照明装置を備えたことを特徴とする読書灯。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公開番号】特開2013−109955(P2013−109955A)
【公開日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−254057(P2011−254057)
【出願日】平成23年11月21日(2011.11.21)
【出願人】(309002329)旭化成イーマテリアルズ株式会社 (771)
【Fターム(参考)】