説明

充電機能を備えた多段式駐車装置及びその制御方法

【課題】 充電中継部を有する電気自動車搭載用パレットの昇降時に、充電中継ケーブルを支持してパレットの移動に追従させることができる多段式駐車装置を提供すること。
【解決手段】 搭載した電気自動車EVに充電する充電中継スタンド60を有する電気自動車搭載用昇降パレット7を含む複数段のパレットを備え、この昇降パレット7を駐車装置本体の骨組構造体11に沿って昇降させる昇降駆動機構24を有し、前記駐車装置本体の骨組構造体11と前記昇降パレット7との間に、この昇降パレット7の昇降高さ範囲で伸縮する上下伸縮ガイド機構70を備え、この上下伸縮ガイド機構70は、前記昇降パレット7の移動に追従するように前記骨組構造体11から昇降パレット7に導く充電中継ケーブル61を支持する支持部を有しているようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気自動車への充電機能を備えた機械式駐車装置に関し、詳しくは、充電中継部を有する電気自動車搭載用パレットを昇降させる多段式駐車装置と、その制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、複数の車両を駐車させるための機械式駐車装置がマンション、ビジネス街、及びショッピング街等に設置され、スペースの有効利用が図られている。この機械式駐車装置としては、昇降多段式、昇降横行多段式、ピット多段昇降式等、パレットを昇降移動させることで複数の車両を格納できるようにした形式の駐車装置が設置条件等に応じて採用されている。
【0003】
一方、近年、電気自動車(この明細書及び特許請求の範囲の書類中における「電気自動車」は、「電気自動車」、「電動機と内燃機関とを組合わせたハイブリッド車」等の充電を必要とする自動車をいう)が普及している。このような電気自動車は排気ガス量を減らせるので環境保全上優れているが、従来の燃料の代わりに電気を蓄電池(バッテリ)に充電する必要がある。そのため、上記したような駐車装置に格納している時間を利用して充電しようとする充電機能付きの駐車装置が発明されている。
【0004】
例えば、この種の駐車装置に関する先行技術として、2段一体昇降式駐車装置において、外部の充電器からの充電コードを、一体昇降式駐車パレットの後部に設置したコード巻き取り機を介し各パレットに搭載した電気自動車の充電コネクタに接続するようにしたものがある(例えば、特許文献1参照)。この駐車装置では、充電コードをパレットの昇降に合わせて自動的に繰り出し・巻き取ることで、充電コードに弛みを生じないように処理している。
【0005】
なお、他の先行技術として、機械式駐車設備の昇降体に導く動力源用給電ケーブルの支持構造として、昇降路の天井と昇降体の後方部との間に、上下方向に伸縮するパンタグラフ方式の伸縮ガイド機構を設け、この伸縮ガイド機構に給電ケーブルを沿わせて支持するようにしたものがある(例えば、特許文献2参照)。
【0006】
また、他の先行技術として、昇降横行多段式駐車装置において、横行パレットと躯体支柱との間にV宇状パイプリンクを取り付け、横行パレットの電動機用給電ケーブルをパイプリンク内に挿通することで、ケーブルの露出に起因する紫外線による老朽化防止を図ろうとしたものもある(例えば、特許文献3参照)。
【0007】
さらに、他の先行技術として、横行パレットと躯体支柱との間に水平面で屈曲するV宇状のパイプリンクを取り付け、横行パレットの給電用ケーブルをパイプリンク内に挿通することで、横行パレットの横行時に横行駆動部給電用ケーブルをガイドしながらパレットを横行させることができるようにしたものもある(例えば、特許文献4参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特許第2753770号公報
【特許文献2】特開平8−177260号公報
【特許文献3】特開平11−93446号公報
【特許文献4】特開平7−34694号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところで、上記電気自動車搭載用パレットには、搭載した電気自動車に接続する充電ケーブルの充電中継部を有するものがある。この充電中継部としては、パレット上に立設したスタンドや、パレットの下面に充電中継ケーブルを格納したケーブル埋込み式収納箱等があり、この充電中継部と電気自動車とを充電ケーブルで接続して充電するようになっている。そのため、上記充電中継部には躯体側から電力を供給する充電中継ケーブルが接続されている。
【0010】
しかしながら、この充電中継ケーブルは電気自動車搭載用パレットが電気自動車の入出庫時に昇降/横行移動するので、その昇降/横行移動に追従するように駐車装置他部位や躯体との間で移動(以下、「案内」ともいう)させなければならないが、この充電中継ケーブルを電気自動車搭載用パレットの移動に追従させて安定して移動をさせることができる多段式駐車装置はない。
【0011】
なお、上記特許文献1の駐車機は、昇降パレットに搭載された電気自動車に給電することはできるが、昇降時に充電コードの繰り出し・巻き取りを伴うので、充電コードの痛みやコード巻き取り機の信頼性に問題がある。しかも、横行時に充電コードを支持して案内することはできない。
【0012】
また、上記特許文献2の支持構造は、エレベータ式の機械式駐車設備において昇降体に動力用電源の給電ケーブルを導くためのものであり、本発明のように昇降する電気自動車搭載用パレットと駐車装置本体との間で充電中継ケーブルを安定して支持することについては何ら記載されておらず、パレットの昇降・横行時における上記充電中継ケーブルの揺れ対策を可能とするものではない。
【0013】
さらに、上記特許文献3,4では、昇降するパレットの昇降時に充電中継ケーブルを支持して移動させることはできない。
【0014】
そこで、本発明は、充電中継部を有する電気自動車搭載用パレットの昇降/横行時に、充電中継ケーブルを支持してパレットの移動に追従させることができる多段式駐車装置と、その制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記目的を達成するために、本発明に係る充電機能を備えた多段式駐車装置は、搭載した電気自動車に充電する充電中継部を有する電気自動車搭載用パレットを含む複数段のパレットを備えた多段式駐車装置であって、前記電気自動車搭載用パレットは、駐車装置本体の躯体に沿って昇降させる昇降駆動機構を具備した昇降パレットおよび昇降・横行させる昇降・横行パレットの少なくとも一方を有し、前記駐車装置本体側と前記電気自動車搭載用パレットとの間に、該電気自動車搭載用パレットの昇降高さ範囲で伸縮する上下伸縮ガイド機構を備え、該上下伸縮ガイド機構は、前記電気自動車搭載用パレットの移動に追従するように前記駐車装置本体側から電気自動車搭載用パレットに導く充電中継ケーブルを支持する支持部を有している。この明細書及び特許請求の範囲の書類中における「躯体」は、駐車装置本体を構成する骨組構造体の梁等の固定体をいう。また、昇降のみのパレットを「昇降パレット」、昇降及び横行するパレットを「昇降・横行パレット」、横行のみのパレットを「横行パレット」という。これにより、充電中継部を備えた車両搭載用パレットの昇降時に、上下伸縮ガイド機構の支持部に支持した充電中継ケーブルの揺れ等を確実に防止した状態でパレットを移動させることができるので、昇降する電気自動車搭載用パレットと駐車装置本体の躯体との間における充電中継ケーブルの支持と移動とを確実に行うことが可能となる。
【0016】
また、前記電気自動車搭載用パレットは、最上段で昇降する昇降パレットと中段で昇降及び横行する昇降・横行パレットとを有し、該昇降パレット及び昇降・横行パレットは、上昇定位置で前記充電中継部からの充電が可能となるように構成されていてもよい。このようにすれば、電気自動車搭載用パレットが上昇定位置にある時にのみ搭載した電気自動車に対する充電が行われるようにでき、電気自動車に対する充電を行なう位置を制限することができる。
【0017】
さらに、前記上下伸縮ガイド機構は、前記充電中継ケーブルを支持した状態で前記昇降高さ範囲で伸縮するパンタグラフ方式のリンク機構で構成されていてもよい。このようにすれば、充電中継ケーブルをパンタグラフ方式のリンク機構で支持して安定した姿勢で伸縮させることができる。
【0018】
また、前記リンク機構は、前記電気自動車搭載用パレットの側部に配設されていてもよい。このようにすれば、駐車装置の形式が変化しても寸法変化が少ない電気自動車搭載用パレットの幅方向の側部に充電中継ケーブルの上下伸縮ガイド機構を備えさせるので、既設の多段式駐車装置における改造も容易に行うことができる。
【0019】
さらに、前記駐車装置本体は、前記昇降パレットを昇降させる昇降駆動機構を具備した固定枠体と、前記昇降・横行パレットを昇降させる昇降駆動機構と横行させる横行駆動源とを具備した横行枠体とを備え、前記上下伸縮ガイド機構は、前記昇降パレットと固定枠体との間、及び前記昇降・横行パレットと横行枠体との間に備えられていてもよい。このようにすれば、昇降パレットは固定枠体との間で、横行パレットは横行枠体との間で、上下伸縮ガイド機構によって駐車装置他部位や躯体との間における充電中継ケーブルの案内支持を確実に行うことができる。
【0020】
一方、本発明に係る多段式駐車装置の制御方法は、前記いずれかの充電機能を備えた多段式駐車装置の制御方法であって、前記充電中継ケーブルに給電制御する制御装置により、前記電気自動車搭載用パレットが上昇定位置に位置決めされている時にのみ充電可能に構成している。これにより、電気自動車搭載用パレットが確実に上昇定位置に位置決めされた時にのみ搭載した電気自動車に対する充電が行われるようにでき、電気自動車に対する充電を格納定位置に制限することができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、充電中継部を備えた車両搭載用パレットの昇降時に、上下伸縮ガイド機構で充電中継ケーブルの揺れを抑えて充電中継ケーブルをパレットの移動に追従させて安定して移動させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明を採用した一実施形態に係る昇降横行多段式駐車装置の全体概略正面図である。
【図2】図1に示すII−II矢視側面図である。
【図3】(a) は、図2に示すIII−III矢視拡大平面図であり、(b) は、(a) に示す昇降駆動機構の概略図である。
【図4】図1に示す昇降横行多段式駐車装置の制御ブロック図である。
【図5】図1に示す昇降横行多段式駐車装置の充電パレットに対する充電制御のフローチャートである。
【図6】図1に示す昇降横行多段式駐車装置の作用説明図であり、図2の状態から中下段パレットが乗入れ部に下降して着床した状態を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。以下の実施形態では、1段目が地上乗入れ部となった4段3列の昇降横行多段式駐車装置で、全てのパレットが電気自動車搭載用パレットの例を説明する。また、この明細書及び特許請求の範囲の書類中における方向の概念は、図1に示すように駐車装置の正面に向った状態で、上下方向、左右方向、手前側を前方向、奥側を後方向とする。
【0024】
図1に示すように、この駐車装置10は、駐車装置本体の躯体である骨組構造体11(以下、「躯体11」ともいう)により、地上乗入れ部である最下段(1階)12と、中下段(2階)13、中上段(3階)14、及び最上段(4階)15の4段に形成されている。また、上記骨組構造体11は、横3列に格納可能な大きさで形成されており、中下段13と中上段14の横梁16は、後述する横行枠体たる横行パワーユニット20,30が横行するレール体(以下、符号16を付す)を兼ねている。
【0025】
上記最上段15には、骨組構造体11の上部に嵩上げ用梁17が設けられ、この嵩上げ用梁17に左列、中央列、右列の3列分のパワーユニット40(固定枠体)が固定されている。各パワーユニット40には、充電中継スタンド60(充電中継部)が設けられた最上段昇降パレット1〜3が各々設けられている。また、各パワーユニット40には、昇降パレット1〜3を昇降用ワイヤロープ42で昇降させる昇降駆動機構41と、この昇降駆動機構41を駆動する昇降駆動源43がそれぞれ設けられている。
【0026】
上記中上段14には、横行駆動源31で駆動する車輪32によって上記横梁兼レール体16に沿って横行する2列分の横行パワーユニット30(横行枠体)が設けられている。この各横行パワーユニット30には、充電中継スタンド60(充電中継部)が設けられた中上段昇降パレット4,5が各々設けられている。また、各横行パワーユニット30には、昇降パレット4,5を昇降用ワイヤロープ33で昇降させる昇降駆動機構34と、この昇降駆動機構34を駆動する昇降駆動源35がそれぞれ設けられている。
【0027】
さらに、この実施形態では、各横行パワーユニット30の後方中央部と駐車装置本体の躯体である骨組構造体11との間に、この骨組構造体11から横行パワーユニット30に動力用ケーブル62と充電中継ケーブル61とをまとめて案内するV字状屈伸式の案内リンク機構36が設けられている。この案内リンク機構36は、上端が骨組構造体11に回動可能に軸支され、下端が横行パワーユニット30に回動可能に軸支され、中間軸支部37が屈曲することで横行パワーユニット30の横行動作に追従するようになっている。この案内リンク機構36に、動力用ケーブル62(横行パワーユニット30の横行駆動源及びパレット昇降駆動源給電用)と上記充電中継ケーブル61とをまとめて沿わせて支持している。
【0028】
上記中下段13には、上記中上段14と同様に、横行駆動源21で駆動する車輪22によって上記横梁兼レール体16に沿って横行する2列分の横行パワーユニット20(横行枠体)が設けられ、各横行パワーユニット20には、充電中継スタンド60(充電中継部)が設けられた中下段昇降パレット6,7が各々設けられている。また、各横行パワーユニット20には、昇降パレット6,7を昇降用ワイヤロープ23で昇降させる昇降駆動機構24と、この昇降駆動機構24を駆動する昇降駆動源25がそれぞれ設けられている。
【0029】
さらに、この中下段13にも、各横行パワーユニット20の後方中央部と駐車装置本体の躯体である骨組構造体11との間に、この骨組構造体11から横行パワーユニット20に動力用ケーブル62と充電中継ケーブル61とをまとめて案内するV字状屈伸式の案内リンク機構26が設けられている。この案内リンク機構26に、動力用ケーブル62(横行パワーユニット20の横行駆動源及びパレット昇降駆動源給電用)と上記充電中継ケーブル61とをまとめて沿わせて支持している。
【0030】
上記最下段12には、乗入れ床50から浅く掘られたピット51内に配置された横行レール52に沿って横行する2列分の最下段横行パレット8,9が設けられている。これらの最下段横行パレット8,9は、横行駆動源53で駆動する車輪54によって横行するようになっている。各最下段横行パレット8,9には、充電中継スタンド60(充電中継部)と、骨組構造体11から動力用ケーブル62と充電中継ケーブル61とを案内するケーブル支持ポール56とが設けられている。なお、この乗入れ部12の最下段横行パレット8,9は昇降することがないため、上記したように横行パレット8,9にケーブル支持ポール56を立設し、このケーブル支持ポール56にレール体16(横梁)側から動力用ケーブル62及び充電中継ケーブル61を垂下げるようにしているが、中上段14及び中下段13と同様に、V字状屈伸式案内リンク機構36によって動力用ケーブル62及び充電中継ケーブル61を案内するようにしてもよい。
【0031】
また、最下段12には制御盤65が設けられており、この制御盤65内には、制御装置66と動力電源装置67及び充電電源装置68とが設けられている。この動力電源装置67から各段に動力用ケーブル62が導かれ、充電電源装置68から各段に充電中継ケーブル61が導かれている。この最下段12が地上乗入れ部12(最下段12と同一符号を付す)であり、この地上乗入れ部12の左方骨組構造体11に、運転盤69が設けられている。上記各パレット1〜9は、最上段15のパレットから連続番号1〜9を付している。
【0032】
そして、図2に示すように、このような昇降横行多段式駐車装置10において、最上段15のパワーユニット40と昇降パレット1〜3との間と、中上段14の横行パワーユニット30と昇降パレット4,5との間、及び中下段13の横行パワーユニット20と昇降パレット6,7との間に、これらのパレット1〜7の充電中継スタンド60に電力供給する充電中継ケーブル61を支持して案内する上下伸縮ガイド機構70が設けられている。
【0033】
この上下伸縮ガイド機構70は、上記パワーユニット20,30,40に設けられたブラケット73とパレット1〜7の側部中央部の枢支部72との間に設けられており、この実施形態では、パンタグラフ方式(並行四辺形で伸縮する機構の方式)のリンク機構71(以下、このリンク機構71を「パンタグラフ71」という)によって構成されている。このパンタグラフ71は、パレット側部中央部に枢支部72を配置することでリンク長を長くして大きな上下方向ストロークを確保するとともに、構造上安定した配置としている。このように上下伸縮ガイド機構70をパンタグラフ方式とすることにより、昇降時に安定した姿勢を保つことができる上下伸縮ガイド機構70としている。この例では、最上段15及び中上段14はリンク数の多いパンタグラフ71とし、中下段13はリンク数の少ないパンタグラフ71としている。
【0034】
また、駐車装置の形式が変化しても電気自動車EVの幅寸法によって決まる寸法変化の少ない昇降パレット1〜7の幅方向側部を利用して上下伸縮ガイド機構70を昇降パレット1〜7に備えさせることで、種々の形式の多段式駐車装置における上下伸縮ガイド機構70を共通化できるようにするとともに、既設の多段式駐車装置における改造も容易に行えるようにしている。
【0035】
そして、このパンタグラフ71に、後述する図6に示すように充電電源装置68からの充電中継ケーブル61を沿わせ、この充電中継ケーブル61を支持部74で支持している。この支持部74は、パレット移動時に充電中継ケーブル61を確実に支持できる位置に設けられている。この実施形態では、後述するように、バンド線等のケーブル支持具75によって支持部74に充電中継ケーブル61が支持されている。
【0036】
さらに、昇降パレット1〜7が上昇した時にパワーユニット20,30,40の定位置に位置決めされるように、昇降パレット1〜7の上面四隅に位置決め凸部材76が設けられ、パワーユニット20,30,40の下面の対応する位置に位置決め凹部材77が設けられた上昇定位置位置決め機構78が備えられている。昇降パレット1〜7が上昇し、位置決め凸部材76が位置決め凹部材77に嵌り込んだ状態が昇降パレット1〜7の上昇定位置である。
【0037】
また、この実施形態では、昇降駆動機構41による最上段15の昇降パレット1〜7の昇降ストロークを大きくするために、最上段15のパワーユニット40の前部を前方へ大きく突出させている。さらに、最下段12のピット51内には、昇降パレット1〜7が着床する着床パッド55が設けられている。
【0038】
図3(a) に示すように、上記中下段13の横行パワーユニット20は、四隅に上記車輪22が設けられ、前部の車輪の1つに横行駆動源21(モータ)が設けられている。また、横行パワーユニット20の後部に昇降駆動源25(モータ)が設けられ、この昇降駆動源25で駆動される昇降駆動機構24によって昇降パレット6,7が昇降駆動されるようになっている。
【0039】
上記昇降駆動機構24には、昇降駆動源25で駆動される2連の駆動スプロケット80が横行パワーユニット20の後端部に軸支され、この横行パワーユニット20の前端部には2連の従動シーブ81が軸支されている。また、駆動スプロケット80に掛けられたローラチェーン82の両端部にワイヤロープ23が継具83で連結されている。これらローラチェーン82とワイヤロープ23は、後述するように昇降パレット6,7を昇降させることができる所定長さに設定されている。
【0040】
図3(b) に示すように、上記ワイヤロープ23は、従動シーブ81に巻き掛けられて後方へ延びた後、昇降パレット6,7の前後位置上方に位置する横行パワーユニット20に設けられた吊持プーリ84に掛けられて下方へと延びて昇降パレット6,7の前後位置に固定されている。
【0041】
このような構成により、昇降駆動源25で駆動スプロケット80を回動させてローラチェーン82を前方へ繰り出すと、このローラチェーン82に連結されたワイヤロープ23が繰り出され、このワイヤロープ23に固定された昇降パレット6,7が下降する。駆動スプロケット80を反対方向に回転させると、ローラチェーン82が反対方向に移動して昇降パレット6,7が上昇する。
【0042】
そして、図3(a) に示すように、骨組構造体11であるレール体16から案内リンク機構26に沿って配線された動力用ケーブル62と充電中継ケーブル61とが横行パワーユニット20に配線され、動力用ケーブル62は横行パワーユニット20の後部中央から昇降駆動源25と横行駆動源21とに配線されている。また、充電中継ケーブル61は、横行パワーユニット20の横枠中央部から上下伸縮ガイド機構70であるパンタグラフ71を介して昇降パレット7に配線されている。この昇降パレット7に配線された充電中継ケーブル61は、昇降パレット7の裏面を通って側部後端部に設けられた充電中継部たる充電中継スタンド60に接続されている。この充電中継スタンド60は、パレット床面に設けられるケーブル埋込み式収納箱等の他形式充電中継部でもよい。
【0043】
上記充電中継スタンド60にはコネクタ63が設けられており、このコネクタ63に充電ケーブル85が接続され、充電ケーブル85の先端に設けられた充電アダプタ86が、昇降パレット7に搭載された電気自動車EVの充電口蓋87を開放した充電口88に接続されるようになっている。充電ケーブル85としては、駐車装置10に常備のものでも、各電気自動車EVに装備されたものでもよい。
【0044】
また、この実施形態では、充電中継スタンド60を昇降パレット7の一側後方部にのみ設けたが、電気自動車EVに設けられた充電口88の種々配置に簡便に適用できるよう、昇降パレット7(1〜9)の両側部に配設してもよい。
【0045】
図4に示すように、上記昇降横行多段式駐車装置10の制御ブロックとしては、「利用者ID/契約パレット番号1〜9/充電要求有無等」を一体的に記憶するRAMやCPU等を備え、各部を制御する信号を発する制御装置66と、最上段(4階)15のパワーユニット40の昇降パレット1〜3の昇降駆動部(昇降駆動源43)と、中上段(3階)14の各横行パワーユニット30の横行駆動部(横行駆動源31)及び昇降パレット4,5の昇降駆動部(昇降駆動源35)と、中下段(2階)13の各横行パワーユニット20の横行駆動部(横行駆動源21)及び昇降パレット6,7の昇降駆動部(昇降駆動源25)と、最下段12(1階;地上乗入れ部)の各横行パレット8,9の横行駆動部(横行駆動源53)と、昇降パレット1〜3の上昇定位置停止及び乗入れ部着床検知手段90と、中上・中下段横行パワーユニット30,20の横行位置検知手段91と、中上・中下段昇降パレット4〜7の上昇定位置停止及び乗入れ部着床検知手段92等と、上記運転盤69、及び充電制御装置93とが、I/O装置94(入出力装置)を介して接続されており、各部の間で信号の送受信が行われるようになっている。この充電制御装置93の機能は、上記制御装置66に兼ねさせてもよい。
【0046】
また、上記運転盤69には、最上部に、「非常停止」釦95が設けられ、その下方に「呼番号」表示部96と、入出庫を行う契約パレット番号や利用者ID等の入力に使用されるテンキー97とが設けられている。このテンキー97の下方には、「充電要求」釦98と、「スタート」釦99とが設けられ、最下部には、「電源入切」スイッチ100が配設されている。この例では、電気自動車EVの入庫時に、充電したい利用者は、テンキー97による呼び操作に続けて「充電要求」釦98を押し、「スタート」釦99を押すこととなる。
【0047】
さらに、上記充電制御装置93は、充電用電源105から電源が供給される充電電源装置68との送受信と、各昇降パレット1〜7及び横行パレット8,9に供給される電流を検知する電流検知手段106からの受信とを行うようになっている。この電流検知手段106は、上記充電電源装置68に設けられた各昇降パレット1〜7及び横行パレット8,9の開閉器107と昇降パレット1〜7及び横行パレット8,9との間で電流を検知するようになっている。この電流検知により、電気自動車EVの充電状態を判断するようになっている。
【0048】
この図では、昇降パレット7に搭載された電気自動車EVに充電されている状態を示しており、開閉器107からの充電中継ケーブル61が昇降時案内用のパンタグラフ71を介して昇降パレット7まで導かれ、この昇降パレット7の充電中継スタンド60に設けられたコネクタ63に接続されている。そして、このコネクタ63に接続された充電ケーブル85は、先端に設けられた充電アダプタ86が電気自動車EVのバッテリBTと接続された充電口88に接続されている。
【0049】
次に、図5に基いて、上記昇降横行多段式駐車装置10による各昇降パレット1〜7に対する充電制御のフローチャートを以下に説明する。この例では、昇降パレット1〜7がパワーユニット20,30,40の上昇定位置に位置決め固定されているときにのみ、搭載している電気自動車EVに対する充電を行うようにしている。
【0050】
スタートすると、まず充電要求の実車パレットか否かが判断され(S1)、次にその実車パレットが最下段以外のパレット1〜7か否かが判断される(S2)。この判断で最下段のパレット8,9と判断された場合には、出庫要求がされているか否かの判断(S3)がなされる。
【0051】
一方、上記最下段以外のパレット1〜7か否かの判断(S2)で最下段以外のパレット1〜7と判断された場合には、最上段・中上段・中下段の何れかのパレットであるため、その実車パレットが上昇定位置か否かが判断される(S4)。この判断は、例えば、リミットスイッチ(図示略)や、昇降駆動源25(モータ)の電流値等によって判断すればよい。この判断で、上昇定位置でなければ、パレットが乗入れ部着床中又は昇降中(充電中継ケーブル案内用のパンタグラフ71が伸長状態)であるため充電は行われない。また、上昇定位置であれば、充電中継ケーブル案内用のパンタグラフ71が折りたたみ状態であるため、出庫要求がされているか否かが判断される(S3)。なお、パレット4〜7が上昇定位置になければ、横行パワーユニット20,30は横行駆動されないが、上昇定位置であれば横行パワーユニット20,30が横行駆動中でも充電は継続される。
【0052】
そして、出庫要求がされている場合には、充電中か否かが判断され(S5)、充電中で無ければ終了する。充電中であれば、充電停止指令が出され(S6)、これにより開閉器107が開路となってエンドとなる。
【0053】
一方、上記出庫要求がされているか否かの判断(S3)で、出庫要求されていない場合には充電指令が出される(S7)。これにより、開閉器107が閉路となってパレット1〜7に搭載された電気自動車EVに対して充電される。そして、充電中には電流値が検出されており、検出電流値が設定電流値と同じかそれ以下になると(S8)、満充電又は充電ケーブル85の非接触(例えば、入庫時に運転盤69において「充電要求」釦98を押しても、既に満充電の場合や充電ケーブル85の接続不良等となっている場合を含む)と判断され、充電停止指令が出される(S6)。これにより、開閉器107が開路となってエンドとなる。
【0054】
なお、上記フローチャートでは、昇降パレット1〜7がパワーユニット20,30,40の上昇定位置に位置決め固定されているときにのみ、搭載している電気自動車EVに対する充電を行うようにしているが、出庫しようとするパレットが乗入れ部12に着床したときを除き、電気自動車EVが搭載された昇降パレット1〜7の昇降中も充電するようにしてもよい。即ち、電気自動車EVの出庫作業直前まで、電気自動車EVに充電できるようにしてもよい。
【0055】
図6に示すように、上記昇降横行多段式駐車装置10によれば、以下のように昇降パレットの昇降時に充電中継ケーブル61を支持してパレットの移動に追従させることができる。この説明では、中下段13の昇降パレット7を例に説明する。
【0056】
図示するように、上記昇降駆動機構24で中下段13の横行パワーユニット20に支持された昇降パレット7を吊下げて地上乗入れ部12に着床した状態では、横行パワーユニット20と昇降パレット7との間に設けられた上下伸縮ガイド機構70のパンタグラフ71が伸長することとなるが、このパンタグラフ71にバンド線等のケーブル支持具75で支持部74に支持された充電中継ケーブル61は、パンタグラフ71に沿った状態が保たれる。また、この充電中継ケーブル61は、横行パワーユニット20に設けられたブラケット73の上部からパンタグラフ71に沿わせて支持しているので、パンタグラフ71が折りたたまれるときも上記支持部74で確実に支持した状態が保たれる。従って、昇降パレット7の昇降時に充電中継ケーブル61が揺れたりすることはなく、安定した支持状態を保って移動(案内)させることができる。
【0057】
また、この地上乗入れ部12に位置させた状態の昇降パレット7は、ピット51内に設けられた着床パッド55に着床して、地上乗入れ部12でのパレット移動阻止を図った状態が保たれるようになっている。
【0058】
以上のように、上記昇降横行多段式駐車装置10によれば、昇降パレット1〜7の昇降時には、充電中継ケーブル61を上下伸縮ガイド機構70(パンタグラフ71)によって安定して支持しているので、昇降パレット1〜7の昇降動作中に揺れたりすることなく追従し、安定した支持状態を保つことができる。また、横行時も充電中継ケーブル61を上下伸縮ガイド機構70(パンタグラフ71)によって安定して支持しているので、横行動作中に揺れたりすることはなく、安定した支持状態を保つことができる。
【0059】
しかも、上記昇降横行多段式駐車装置10によれば、電気自動車EVの昇降パレット1〜7への乗降に大きく影響しないパレット側部で安定した充電中継ケーブル61の支持と案内とをすることができる。
【0060】
従って、上記昇降横行多段式駐車装置10によれば、充電中継ケーブル61は、昇降パレット1〜7の昇降中は勿論のこと、横行パワーユニット20,30の横行時も垂れ下がることがなく、周囲の駐車装置本体の躯体11等との接触や絡まりを確実に防止して案内することができる。
【0061】
なお、上記実施形態では、昇降横行多段式駐車装置10を例に説明したが、昇降パレットを有する駐車装置であれば、例えば、ピット格納式の3段3列横行昇降式駐車装置や2段昇降式駐車装置等、充電機能付きの他形式の駐車装置にも適用可能である。
【0062】
また、上記実施形態では、横行パワーユニット20,30の横行時に充電中継ケーブル61を案内する案内リンク機構を鉛直面内で屈伸動作するV字状屈伸式案内リンク機構36としたが、パレット下面の水平面内で屈伸するようなV字状屈伸式案内リンク機構としてもよい。
【0063】
さらに、上記実施形態では、全てのパレットを電気自動車搭載用パレット1〜9としたが、一般のパレットと電気自動車搭載用パレットとを混載させるようにしてもよい。この場合、電気自動車の普及状況に合わせて混載割合を適時変更すればよい。
【0064】
また、上述した実施形態は一例を示しており、本発明の要旨を損なわない範囲での種々の変更は可能であり、本発明は上述した実施形態に限定されるものではない。
【産業上の利用可能性】
【0065】
本発明に係る充電機能を備えた多段式駐車装置は、充電中継部を備えた車両搭載用パレットを昇降させる多段式駐車装置に利用できる。
【符号の説明】
【0066】
1〜3 最上段昇降パレット(電気自動車搭載用パレット)
4,5 中上段昇降パレット(電気自動車搭載用パレット)
6,7 中下段昇降パレット(電気自動車搭載用パレット)
8,9 最下段横行パレット(電気自動車搭載用パレット)
10 昇降横行多段式駐車装置
11 骨組構造体(躯体)
12 最下段(地上乗入れ部)
13 中下段
14 中上段
15 最上段
16 横梁(レール体)
20 横行パワーユニット(横行枠体)
21 横行駆動源
24 昇降駆動機構
25 昇降駆動源
26 案内リンク機構
30 横行パワーユニット(横行枠体)
31 横行駆動源
34 昇降駆動機構
35 昇降駆動源
36 案内リンク機構
37 中間軸支部
40 パワーユニット(固定枠体)
41 昇降駆動機構
43 昇降駆動源
53 横行駆動源
55 充電中継スタンド
56 ケーブル支持ポール
60 充電中継スタンド(充電中継部)
61 充電中継ケーブル
66 制御装置
67 動力電源装置
68 充電電源装置
70 上下伸縮ガイド機構
71 パンタグラフ(リンク機構)
72 枢支部
73 ブラケット
74 支持部
75 ケーブル支持具
78 上昇定位置位置決め機構
90 上昇定位置停止及び乗入れ部着床検知手段
92 上昇定位置停止及び乗入れ部着床検知手段
93 充電制御装置
106 電流検知手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
搭載した電気自動車に充電する充電中継部を有する電気自動車搭載用パレットを含む複数段のパレットを備えた多段式駐車装置であって、
前記電気自動車搭載用パレットは、駐車装置本体の躯体に沿って昇降させる昇降駆動機構を具備した昇降パレットおよび昇降・横行させる昇降・横行パレットの少なくとも一方を有し、
前記駐車装置本体側と前記電気自動車搭載用パレットとの間に、該電気自動車搭載用パレットの昇降高さ範囲で伸縮する上下伸縮ガイド機構を備え、
該上下伸縮ガイド機構は、前記電気自動車搭載用パレットの移動に追従するように前記駐車装置本体側から電気自動車搭載用パレットに導く充電中継ケーブルを支持する支持部を有していることを特徴とする充電機能を備えた多段式駐車装置。
【請求項2】
前記電気自動車搭載用パレットは、最上段で昇降する昇降パレットと中段で昇降及び横行する昇降・横行パレットとを有し、
該昇降パレット及び昇降・横行パレットは、上昇定位置で前記充電中継部からの充電が可能となるように構成されている請求項1に記載の充電機能を備えた多段式駐車装置。
【請求項3】
前記上下伸縮ガイド機構は、前記充電中継ケーブルを支持した状態で前記昇降高さ範囲で伸縮するパンタグラフ方式のリンク機構で構成されている請求項1又は2に記載の充電機能を備えた多段式駐車装置。
【請求項4】
前記リンク機構は、前記電気自動車搭載用パレットの側部に配設されている請求項3に記載の充電機能を備えた多段式駐車装置。
【請求項5】
前記駐車装置本体は、前記昇降パレットを昇降させる昇降駆動機構を具備した固定枠体と、前記昇降・横行パレットを昇降させる昇降駆動機構と横行させる横行駆動源とを具備した横行枠体とを備え、
前記上下伸縮ガイド機構は、前記昇降パレットと固定枠体との間、及び前記昇降・横行パレットと横行枠体との間に備えられている請求項2〜4のいずれか1項に記載の充電機能を備えた多段式駐車装置。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の充電機能を備えた多段式駐車装置の制御方法であって、
前記充電中継ケーブルに給電制御する制御装置を備え、
該制御装置は、前記電気自動車搭載用パレットが上昇定位置に位置決めされている時にのみ充電可能に構成されていることを特徴とする多段式駐車装置の制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−169064(P2011−169064A)
【公開日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−35563(P2010−35563)
【出願日】平成22年2月22日(2010.2.22)
【出願人】(000002358)新明和工業株式会社 (919)