説明

光スペクトラムアナライザ及び光スペクトラム解析方法

【課題】本発明は、容易な制御でOSNRを測定することのできる光スペクトラムアナライザ及び光スペクトラム解析方法の提供を目的とする。
【解決手段】本願発明の光スペクトラムアナライザ91は、波長可変バンドパスフィルタ12の透過波長を波長掃引信号発生部18で掃引したときのPD14−1の受光レベルPD1及びPD14−2の受光レベルPD2を用いて被測定信号光のスペクトラムを求め、被測定信号光の信号光波長λ近傍の第1波長λ及び第2波長λでの受光レベルPD1及び受光レベルPD2からなるデータグループを複数求め、データグループごとのASEノイズパワーPASEを算出し、複数のデータグループのASEノイズパワーPASEを用いて信号光波長λにおけるASEノイズパワーPASE[λ]を算出し、被測定信号光のスペクトラム及びASEノイズパワーPASEを用いてOSNRを算出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、OSNR(Optical Signal−to−Noise Ratio)測定機能を有する光スペクトラムアナライザ及び光スペクトラム解析方法に関する。
【背景技術】
【0002】
WDM(Wavelength Division Multiplexing)ネットワークにおいては、各チャネルの信号光パワー、信号光波長及びOSNR等の特性を測定し、伝送信号品質を維持することが必須である。特に、OSNRは、伝送信号品質を維持するためには極めて重要な測定項目である。
【0003】
ダイナミックな経路設定が可能なメッシュネットワークでは、DWDM(Dense Wavelength Division Multiplexing)信号は任意の経路設定が行われ、これにより各チャネルの信号光は異なる経路を通過し、また異なる光ファイバアンプ段数を通過する。この場合、各チャネルのASEノイズパワーが大きく異なるため、各チャネルの信号光のOSNRを測定することが必要となる。
【0004】
そこで、「推定法」、「偏波ヌリング法」、「偏光度から算出する方法」などの種々のOSNR測定法が提案されている(例えば、特許文献1及び2参照。)。
特許文献1のOSNR測定法は、1/4波長板と、直線偏光子と、受光器と、を備え、以下のように動作する。直線偏光子を回転させながら、1/4波長板及び直線偏光子を透過後の被測定信号光を受光器で受光する。これにより、偏波ヌリング法を用いてOSNRを測定する。
【0005】
特許文献2のOSNR測定法は、偏波コントローラと、波長可変バンドパスフィルタと、PBS(Polarization Beam Splitter)と、2つのPD(Photo Diode)と、を備え、以下のように動作する。信号光波長に波長可変バンドパスフィルタの波長を設定し、PDのいずれかが最大となるように偏波コントローラを設定し、波長可変バンドパスフィルタの透過波長を信号光波長に設定する。この状態で、波長可変バンドパスフィルタと偏波コントローラを通過させた光をPBSで偏光分離して、2つのPDで受光する。さらに波長可変バンドパスフィルタの透過波長を他の波長にして2つのPDで受光する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】US6813021B2
【特許文献2】EP1432150A2
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、従来のOSNR測定法では、以下のような問題があった。
特許文献1のOSNR測定法では、「偏波ヌリング法」を用いるため、偏光子の偏光軸に直交する直線偏光を正確に入力する必要があるため、偏波コントローラの制御に時間を要し、短時間での測定が困難である。
【0008】
特許文献2のOSNR測定法では、PDのいずれかが最大となるように偏波コントローラを設定し、波長可変バンドパスフィルタの透過波長を特定の波長に設定するため、偏波コントローラ及び波長可変バンドパスフィルタの制御に時間を要し、短時間での測定が困難である。また、特許文献2のOSNR測定法では、被測定信号光のスペクトラムを測定することはできない。
【0009】
そこで、本発明は、容易な制御かつ高速にOSNRを測定することのできる光スペクトラムアナライザ及び光スペクトラム解析方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、本願発明の光スペクトラムアナライザは、被測定信号光が入力され、前記被測定信号光のうちの任意の波長の光を透過させる波長可変バンドパスフィルタ(12)と、前記波長可変バンドパスフィルタからの透過光を直交する偏光成分に分離するPBS(Polarization Beam Splitter)(13)と、前記PBSで分離された一方の光を受光する第1の受光器(14−1)と、前記PBSで分離されたもう一方の光を受光する第2の受光器(14−2)と、前記第1の受光器及び前記第2の受光器の受光レベルを用いて前記被測定信号光のスペクトラム及び前記被測定信号光のOSNR(Optical Signal−to−Noise Ratio)を算出するスペクトラム演算部(15)と、前記波長可変バンドパスフィルタの透過波長を掃引する波長掃引信号発生部(18)と、を備え、前記スペクトラム演算部は、前記波長可変バンドパスフィルタの透過波長を掃引したときの前記第1の受光器及び前記第2の受光器の受光レベルを前記波長可変バンドパスフィルタの透過波長に関連付けて記憶し、前記第1の受光器及び前記第2の受光器の受光レベルを用いて前記被測定信号光のスペクトラムを取得し、前記被測定信号光のスペクトラムの信号光波長近傍の第1波長に前記波長可変バンドパスフィルタの透過波長を設定したときの前記第1の受光器及び前記第2の受光器の受光レベル、前記第1波長とは異なる前記信号光波長近傍の第2波長に前記波長可変バンドパスフィルタの透過波長を設定したときの前記第1の受光器及び前記第2の受光器の受光レベルからなるデータグループを複数求め、前記データグループごとのASE(Amplified Spontaneous Emission)ノイズパワーを算出し、複数の前記データグループの前記ASEノイズパワーを用いて前記信号光波長におけるASEノイズパワーを算出し、前記被測定信号光のスペクトラム及び前記信号光波長におけるASEノイズパワーを用いて前記被測定信号光のOSNRを算出する。
【0011】
本願発明の光スペクトラムアナライザは、波長可変バンドパスフィルタ(12)と、スペクトラム演算部(15)と、波長掃引信号発生部(18)と、を備えるため、被測定信号光のスペクトラムを測定することができる。本願発明の光スペクトラムアナライザは、PBS(13)と、第1の受光器(14−1)と、第2の受光器(14−2)と、スペクトラム演算部(15)と、を備えるため、後述する式(12)を用いてASEノイズパワーを算出し、後述する式(13)を用いてOSNRを算出することができる。ここで、本願発明の光スペクトラムアナライザは、スペクトラム演算部の記憶する各波長での受光レベルを用いてASEノイズパワーを算出するため、信号光波長に波長可変バンドパスフィルタの波長を設定した状態で一方の受光器の受光レベルが最大又は最小になるように偏波状態を正確に設定する必要がない。したがって、本願発明の光スペクトラムアナライザは、容易な制御かつ高速にOSNRを測定することができる。
【0012】
本願発明の光スペクトラムアナライザでは、前記波長可変バンドパスフィルタの前段又は前記波長可変バンドパスフィルタと前記PBSの間の光路に挿入され、前記被測定信号光の偏波状態を他の偏波状態に切り替える偏波切り替え部(11)と、前記偏波切り替え部の切り替える前記他の偏波状態を、前記第1の受光器及び前記第2の受光器の受光レベルの比が任意の範囲より大きくなるように変更する制御処理部(16)と、をさらに備えてもよい。
又は、予め異なる偏波状態で複数回、前記第1の受光器及び第2の受光器でスペクトラムを測定し、それら複数のスペクトラムデータの中から前記受光レベルの比が適切なデータを選択してOSNRを算出してもよい。
本発明により、任意の偏波状態の被測定信号光について、ASEノイズパワーを算出し、OSNRを測定することができる。
【0013】
上記目的を達成するために、本願発明の光スペクトラムアナライザは、被測定信号光が入力され、前記被測定信号光のうちの任意の波長の光を透過させる波長可変バンドパスフィルタ(12)と、前記波長可変バンドパスフィルタからの透過光を2つに分岐するBS(Beam Splitter)(21)と、前記BSで分岐された一方の光を受光する第1の受光器(14−1)と、前記BSで分岐されたもう一方の光が入力され、任意の偏波成分のみの光を通過させる偏光子(22)と、前記偏光子からの光を受光する第2の受光器(14−2)と、前記第1の受光器及び前記第2の受光器の受光レベルを用いて前記被測定信号光のスペクトラム及び前記被測定信号光のOSNR(Optical Signal−to−Noise Ratio)を算出するスペクトラム演算部(15)と、前記波長可変バンドパスフィルタの透過波長を掃引する波長掃引信号発生部(18)と、を備え、前記スペクトラム演算部は、前記波長可変バンドパスフィルタの透過波長を掃引したときの前記第1の受光器及び前記第2の受光器の受光レベルを前記波長可変バンドパスフィルタの透過波長に関連付けて記憶し、前記第1の受光器の受光レベルを用いて前記被測定信号光のスペクトラムを取得し、前記被測定信号光のスペクトラムの信号光波長近傍の第1波長に前記波長可変バンドパスフィルタの透過波長を設定したときの前記第1の受光器及び前記第2の受光器の受光レベル、前記第1波長とは異なる前記信号光波長近傍の第2波長に前記波長可変バンドパスフィルタの透過波長を設定したときの前記第1の受光器及び前記第2の受光器の受光レベルからなるデータグループを複数求め、前記データグループごとのASEノイズパワーを算出し、複数の前記データグループの前記ASEノイズパワーを用いて前記信号光波長におけるASEノイズパワーを算出し、前記被測定信号光のスペクトラム及び前記信号光波長におけるASEノイズパワーを用いて前記被測定信号光のOSNRを算出する。
【0014】
本願発明の光スペクトラムアナライザは、波長可変バンドパスフィルタ(12)と、スペクトラム演算部(15)と、波長掃引信号発生部(18)と、を備えるため、被測定信号光のスペクトラムを測定することができる。本願発明の光スペクトラムアナライザは、BS(21)と、偏光子(22)と、第1の受光器(14−1)と、第2の受光器(14−2)と、スペクトラム演算部(15)と、を備えるため、後述する式(34)を用いてASEノイズパワーを算出し、後述する式(13)を用いてOSNRを算出することができる。ここで、本願発明の光スペクトラムアナライザは、スペクトラム演算部の記憶する各波長での受光レベルを用いてASEノイズパワーを算出するため、信号光波長に波長可変バンドパスフィルタの波長を設定した状態で、第2の受光器のレベルが最小となるように偏波状態を正確に設定する必要がない。したがって、本願発明の光スペクトラムアナライザは、容易な制御かつ高速にOSNRを測定することができる。
【0015】
本願発明の光スペクトラムアナライザでは、前記波長可変バンドパスフィルタの前段又は前記波長可変バンドパスフィルタと前記BSの間の光路に挿入され、前記被測定信号光の偏波状態を他の偏波状態に切り替える偏波切り替え部(11)と、前記偏波切り替え部の切り替える前記他の偏波状態を、前記被測定信号光を前記第1の受光器及び前記第2の受光器で受光したときの、前記第1の受光器及び前記第2の受光器の受光レベルの差と前記第2の受光器の受光レベルとの比が任意の範囲より大きくなるように変更する制御処理部(16)と、さらに備えてもよい。
又は、予め異なる偏波状態で複数回、第1の受光器及び第2の受光器でスペクトラムを測定し、そのスペクトラムデータを基に、受光レベルの比が最適なデータを選択してOSNRを測定する。
本発明により、任意の偏波状態の被測定信号光について、ASEノイズパワーを算出し、OSNRを測定することができる。
【0016】
上記目的を達成するために、本願発明の光スペクトラム解析方法は、波長可変バンドパスフィルタの透過波長を掃引しながら、前記波長可変バンドパスフィルタを透過後の被測定信号光を直交する偏波成分に分離した各分離光を受光し、前記各分離光の受光レベルを前記波長可変バンドパスフィルタの透過波長に関連付けて記憶する直交偏光受光手順(S101)と、前記直交偏光受光手順で受光した各分離光の受光レベルを用いて前記被測定信号光のスペクトラムを測定する直交偏光スペクトラム測定手順(S102)と、前記直交偏光スペクトラム測定手順で測定したスペクトラムから信号光波長および信号光パワーを求める信号光測定手順(S103)と、前記波長可変バンドパスフィルタの透過波長を前記信号光波長近傍の第1波長に設定したときの前記各分離光の受光レベル、前記波長可変バンドパスフィルタの透過波長を前記第1波長とは異なる前記信号光波長近傍の第2波長に設定したときの前記各分離光の受光レベルからなるデータグループを複数求め、前記データグループごとのASEノイズパワーを算出し、複数の前記データグループの前記ASEノイズパワーを用いて前記信号光波長におけるASEノイズパワーを算出し、前記被測定信号光のスペクトラム及び前記信号光波長におけるASEノイズパワーを用いて前記被測定信号光のOSNRを算出する直交偏光OSNR算出手順(S104)と、を順に有する。
【0017】
本願発明の光スペクトラム解析方法は、直交偏光受光手順(S101)と、直交偏光スペクトラム測定手順(S102)と、を有するため、被測定信号光のスペクトラムを測定することができる。本願発明の光スペクトラム解析方法は、信号光測定手順(S103)と、直交偏光OSNR算出手順(S104)と、を有するため、後述する式(12)を用いてASEノイズパワーを算出し、後述する式(13)を用いてOSNRを算出することができる。ここで、本願発明の光スペクトラム解析方法は、直交偏光受光手順(S101)で記憶した各波長での受光レベルを用いてASEノイズパワーを算出する。したがって、本願発明の光スペクトラム解析方法は、容易な制御かつ高速にOSNRを測定することができる。
【0018】
本願発明の光スペクトラム解析方法では、前記被測定信号光を直交する偏波成分に分離した各分離光を受光し、前記各分離光の受光レベルの比が任意の範囲内である否かを判定し、前記任意の範囲内である場合には前記被測定信号光の偏波状態を他の偏波状態に切り替える直交偏光偏波切り替え手順(S105)を、前記直交偏光受光手順の前にさらに有してもよい。
又は、予め異なる偏波状態で複数回、第1の受光器及び第2の受光器でスペクトラムを測定し、そのスペクトラムデータを基に、受光レベルの比が最適なデータを選択してOSNRを測定する。
本発明により、任意の偏波状態の被測定信号光について、ASEノイズパワーを算出し、OSNRを測定することができる。
【0019】
上記目的を達成するために、本願発明の光スペクトラム解析方法は、波長可変バンドパスフィルタの透過波長を掃引しながら、前記波長可変バンドパスフィルタを透過後の被測定信号光を分岐した一方の分岐光を受光するとともに、もう一方の分岐光を偏光子に通過させ、前記偏光子を通過後の分岐光を受光し、前記各分岐光の受光レベルを前記波長可変バンドパスフィルタの透過波長に関連付けて記憶する被測定信号光受光手順(S201)と、前記被測定信号光受光手順で記憶した前記一方の分岐光の受光レベルを用いて前記被測定信号光のスペクトラムを測定する被測定信号光スペクトラム測定手順(S202)と、前記被測定信号光スペクトラム測定手順で測定したスペクトラムから信号光波長および信号光パワーを求める信号光測定手順(S203)と、前記被測定信号光のスペクトラムの信号光波長近傍の第1波長に前記波長可変バンドパスフィルタの透過波長を設定したときの前記各分岐光の受光レベル、前記第1波長とは異なる前記信号光波長近傍の第2波長に前記波長可変バンドパスフィルタの透過波長を設定したときの前記各分岐光の受光レベルからなるデータグループを複数求め、前記データグループごとのASEノイズパワーを算出し、複数の前記データグループの前記ASEノイズパワーを用いて前記信号光波長におけるASEノイズパワーを算出し、前記被測定信号光のスペクトラム及び前記信号光波長におけるASEノイズパワーを用いて前記被測定信号光のOSNRを算出する被測定信号光OSNR算出手順(S204)と、を順に有する。
【0020】
本願発明の光スペクトラム解析方法は、被測定信号光受光手順(S201)と、被測定信号光スペクトラム測定手順(S202)と、を有するため、被測定信号光のスペクトラムを測定することができる。本願発明の光スペクトラム解析方法は、信号光測定手順(S203)と、被測定信号光OSNR算出手順(S204)と、を有するため、後述する式(34)を用いてASEノイズパワーを算出し、後述する式(13)を用いてOSNRを算出することができる。ここで、本願発明の光スペクトラム解析方法は、被測定信号光受光手順(S201)で記憶した各波長での受光レベルを用いてASEノイズパワーを算出する。したがって、本願発明の光スペクトラム解析方法は、容易な制御かつ高速にOSNRを測定することができる。
【0021】
本願発明の光スペクトラム解析方法では、前記被測定信号光を分岐した一方の分岐光を受光するとともに、もう一方の分岐光を偏光子に通過させ、前記偏光子を通過後の分岐光を受光し、前記各分岐光の受光レベルの差と前記もう一方の分岐光の受光レベルとの比が任意の範囲内である否かを判定し、前記任意の範囲内である場合には前記被測定信号光の偏波状態を他の偏波状態に切り替える被測定信号光偏波切り替え手順(S205)を、前記被測定信号光受光手順の前にさらに有してもよい。
又は、予め異なる偏波状態で複数回、第1の受光器及び第2の受光器でスペクトラムを測定し、そのスペクトラムデータを基に、受光レベルの比が最適なデータを選択してOSNRを測定する。
本発明により、任意の偏波状態の被測定信号光について、ASEノイズパワーを算出し、OSNRを測定することができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、容易な制御かつ高速にOSNRを測定することのできる光スペクトラムアナライザ及び光スペクトラム解析方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】実施形態1に係る光スペクトラムアナライザの一例を示す。
【図2】被測定信号光の光スペクトラムの一例を示す。
【図3】実施形態1に係る光スペクトラム解析方法の一例を示す。
【図4】実施形態2に係る光スペクトラムアナライザの一例を示す。
【図5】実施形態2に係る光スペクトラム解析方法の一例を示す。
【図6】実施形態3に係る光スペクトラムアナライザの一例を示す。
【図7】実施形態3に係る光スペクトラム解析方法の一例を示す。
【図8】実施形態4に係る光スペクトラムアナライザの一例を示す。
【図9】実施形態4に係る光スペクトラム解析方法の一例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0024】
添付の図面を参照して本発明の実施形態を説明する。以下に説明する実施形態は本発明の実施の例であり、本発明は、以下の実施形態に制限されるものではない。なお、本明細書及び図面において符号が同じ構成要素は、相互に同一のものを示すものとする。
【0025】
(実施形態1)
図1に、実施形態1に係る光スペクトラムアナライザの一例を示す。実施形態1に係る光スペクトラムアナライザ91は、光入力部17と、波長可変バンドパスフィルタ12と、PBS(Polarization Beam Splitter)13と、第1の受光器としてのPD(Photo Detector)14−1と、第2の受光器としてのPD14−2と、ADC(Analog−to−Digital Converter)19−1と、ADC19−2と、スペクトラム演算部15と、制御処理部16と、波長掃引信号発生部18と、表示部20と、を備える。
【0026】
光入力部17に、被測定信号光が入力される。図2に、被測定信号光のスペクトラムの一例を示す。被測定信号光は、例えば、信号光波長λに信号光が載せられた波長分割多重光信号である。被測定信号光のスペクトラムは、各チャネルの信号光波長λに信号光パワーPのピークを有し、信号光波長λから任意の波長範囲に第1波長λ及び第2波長λを有する。第1波長λ及び第2波長λは、ROADM(Reconfigurable Optical Add/Drop Multiplexer)フィルタの波長範囲内である。第1波長λ及び第2波長λなどの各波長における信号光パワーPには、ASEノイズパワーPASEが含まれている。
【0027】
波長可変バンドパスフィルタ12は、光入力部17からの被測定信号光が入射され、被測定信号光のうちの任意の波長の光を透過させる。波長掃引信号発生部18は、波長可変バンドパスフィルタ12の透過波長を掃引する。PBS13は、波長可変バンドパスフィルタ12からの透過光を直交する偏光成分に分離する。これにより、被測定信号光のうちのαがPD14−2側に分離され、残りの(1−α)がPD14−1側に分離される。このαを、直交成分分離比αと呼ぶ。
【0028】
PD14−1は、PBS13で分離された一方の光を受光し、PD14−1の受光レベルPD1に応じたアナログ信号を出力する。ADC19−1は、PD14−1からのアナログ信号をデジタル信号に変換し、受光レベルPD1に応じたデジタル信号をスペクトラム演算部15に出力する。
【0029】
PD14−2は、PBS13で分離されたもう一方の光を受光し、PD14−2の受光レベルPD2に応じたアナログ信号を出力する。ADC19−2は、PD14−2からのアナログ信号をデジタル信号に変換し、受光レベルPD2に応じたデジタル信号をスペクトラム演算部15に出力する。
【0030】
スペクトラム演算部15は、受光レベルPD1及び受光レベルPD2を用いて被測定信号光のスペクトラム及び被測定信号光のOSNRを算出する。表示部20は、被測定信号光のスペクトラム及びASEノイズパワーPASE及びOSNRを表示する。制御処理部16は、波長掃引信号発生部18の動作を制御する。
【0031】
図3に、実施形態1に係る光スペクトラム解析方法の一例を示す。実施形態1に係る光スペクトラム解析方法は、直交偏光受光手順S101と、直交偏光スペクトラム測定手順S102と、信号光測定手順S103と、直交偏光OSNR算出手順S104と、を順に有する。以下、実施形態1に係る光スペクトラム解析方法の詳細について、図1を参照しながら説明する。
【0032】
直交偏光受光手順S101では、制御処理部16が波長掃引信号発生部18に波長掃引の指示を出力し、波長掃引信号発生部18が制御処理部16の指示に応じて波長可変バンドパスフィルタ12の透過波長を掃引する。波長可変バンドパスフィルタ12の透過波長を掃引しながら、PD14−1及びPD14−2は被測定信号の各分離光を受光する。スペクトラム演算部15は、受光レベルPD1及びPD2を波長可変バンドパスフィルタ12の透過波長に関連付けて記憶する。例えば、スペクトラム演算部15は、透過波長λでの受光レベルPD1[λ],PD2[λ]をメモリに記憶する。これにより、スペクトラム演算部15は、波長λから波長λまでの波長帯域を有する各チャネルの受光レベルPD1[λ],PD1[λ],・・・,PD1[λ],・・・,PD1[λ]及び受光レベルPD2[λ],PD2[λ],・・・,PD2[λ],・・・,PD2[λ]を記憶する。
【0033】
直交偏光スペクトラム測定手順S102では、スペクトラム演算部15は、直交偏光受光手順S101で受光した各分離光の受光レベルPD1及び受光レベルPD2を用いて被測定信号光のスペクトラムを測定する。例えば、波長λでの光パワーをPD1[λ]+PD2[λ]を用いて求める。波長λ〜λでの各波長での受光レベルPD1[λ],PD2[λ](ただしi=1,2,・・・N)を用いることで、被測定信号光のスペクトラムを求めることができる。
【0034】
信号光測定手順S103では、直交偏光スペクトラム測定手順S102で測定したスペクトラムから各チャネルの信号光波長λおよび信号光パワーP[λ]を求める。例えば、スペクトラム演算部15は、メモリからスペクトラムを読み出し、スペクトラムのピークを検出して各チャネルの信号光を検出する。そして、スペクトラムのピーク波長又はピークのセンタ波長から信号光波長λを求め、スペクトラムのピークの光パワーから信号光パワーP[λ]を求める。信号光パワーP[λ]は、スペクトラムを任意の範囲で積分して求めたパワーから求めてもよい。
【0035】
直交偏光OSNR算出手順S104では、被測定信号光のOSNRを算出する。
例えば、スペクトラム演算部15は、波長可変バンドパスフィルタ12の透過波長を第1波長λm1に設定したときの各分離光の受光レベルPD1[λm1]及びPD2[λm1]と、波長可変バンドパスフィルタ12の透過波長を第2波長λm2に設定したときの各分離光の受光レベルPD1[λm2]及びPD2[λm2]をメモリから読み出し、PD1[λm1]、PD2[λm1]、PD1[λm2]及びPD2[λm2]からなるデータグループ(m)を求める。第1波長λm1及び第2波長λm2は、信号光波長λから任意の波長範囲にある波長を選択する。
【0036】
スペクトラム演算部15は、複数のデータグループを求める。例えば、スペクトラム演算部15は、図2に示すように、信号光波長λの長波長側の第1波長λm1及び第2波長λm2のデータグループ(m)に加え、信号光波長λの短波長側の第1波長λi1及び第2波長λi2のデータグループ(i)も求めることが好ましい。また、スペクトラム演算部15の求めるデータグループの数は限定しない。例えば、スペクトラム演算部15は、図2に示すように、第1波長λm1及び第2波長λm2のデータグループ(m)と、第1波長λi1及び第2波長λi2のデータグループ(i)と、第1波長λj1及び第2波長λj2のデータグループ(j)と、第1波長λn1及び第2波長λn2のデータグループ(n)、の4つのデータグループを求めてもよい。
【0037】
次に、スペクトラム演算部15は、データグループ(m)毎のASEノイズパワーPASEを算出する。例えば、PD1[λm1]、PD2[λm1]、PD1[λm2]、PD2[λm2]を用い直交成分分離比αを算出して、後述する式(12)に代入する。これにより、データグループ(m)についてのASEノイズパワーPASEを求めることができる。他のデータグループ(i)、データグループ(j)、データグループ(n)ついても同様にASEノイズパワーPASEを算出する。
【0038】
次に、スペクトラム演算部15は、複数のデータグループのASEノイズパワーPASEを用いて信号光波長λにおけるASEノイズパワーPASE[λ]を算出する。例えば、複数のデータグループのASEノイズパワーPASEをフィッティング処理してフィッティング関数を算出し、フィッティング関数を用いて信号光波長λにおけるASEノイズパワーPASE[λ]を算出する。フィッティング関数は、例えば、1次関数、2次関数、3次関数、4次関数、5次関数、ローレンツ関数又はガウス関数である。また、スペクトラム演算部15は、複数のデータグループのASEノイズパワーPASEを平均化処理して信号光波長λにおけるASEノイズパワーPASE[λ]を算出してもよい。
【0039】
次に、スペクトラム演算部15は、信号光波長λにおけるASEノイズパワーPASE[λ]及び信号光パワーP[λ]を用いてOSNRを算出する。例えば、ASEノイズパワーPASE[λ]及び信号光パワーP[λ]を式(13)に代入する。
【0040】
以下、本実施形態に係る光スペクトラムアナライザ及び光スペクトラム解析方法の原理について説明する。伝送路のROADMフィルタの帯域内においては、信号光パワーP[λ]は波長可変バンドパスフィルタ12の掃引位置によって異なるが、ASEノイズパワーPASEは波長可変バンドパスフィルタ12のフィルタ帯域が等しければ同じレベルである。また、波長可変バンドパスフィルタ12の設定波長によって、隣接チャネル間の信号光のレベルは変化するが、PBS13で分離される直交成分分離比αは変わらない。したがって、ASEノイズパワーをPASE、信号光パワーをP、波長可変バンドパスフィルタ12の帯域幅をBとすると、波長λm1の受光レベルPD1[λm1]及びPD2[λm1]並びに波長λm2の受光レベルPD1[λm2]及びPD2[λm2]は、次式で表される。
【0041】
【数1】

【0042】
式(1)から式(3)を減算する。
【数5】

【0043】
式(2)から式(4)を減算する。
【数6】

【0044】
式(6)より、
【数7】

【0045】
式(7)を式(5)に代入すると、
【数8】

これを変形する。
【数9】

【0046】
式(1)にαを乗算し、式(2)に(1−α)を乗算して両者の差分をとることによって、ASEノイズパワーPASEを算出することができる。
【0047】
すなわち、式(1)にαを乗算すると、
【数10】

【0048】
式(2)に(1−α)を乗算すると、
【数11】

【0049】
式(10)から式(11)を減算して変形すると、
【数12】

【0050】
式(12)及び式(9)を用いることで、データグループ(m)のASEノイズパワーPASEを算出することができる。
【0051】
OSNRは、信号光パワーP及びASEノイズパワーPASEを用いて次式で表される。
OSNR=(P−PASE)/PASE …(13)
【0052】
本実施形態に係る発明によれば、ROADMフィルタが任意の関数の透過特性を持つ場合には、より正確なASEノイズパワーPASEの測定が可能であり、また、ASEノイズパワーPASEの測定誤差を圧縮する効果もある。
【0053】
受信アンプなどのリニアリティを考慮したりすると、信号光パワーPとASEノイズパワーPASEのパワー差が小さくなるような第1波長及び第2波長の受光レベルPD1及びPD2を用いること、また2つの偏波成分の直交成分分離比αが大きいことが望ましい。
【0054】
(実施形態2)
図4に、実施形態2に係る光スペクトラムアナライザの一例を示す。実施形態2に係る光スペクトラムアナライザ92は、実施形態1のPBS13に代えて、BS21と、偏光子22と、を備える。
【0055】
BS21は、波長可変バンドパスフィルタ12からの透過光を2つに分岐する。BS(Beam Splitter)21の分岐比は、例えば、γ:1−γである。これにより、被測定信号光のうちのγがPD14−2側に分岐され、残りの(1−γ)がPD14−1側に分岐される。BS21で分岐された一方の光は、PD14−1で受光される。PD14−1は、受光レベルPD1に応じたアナログ信号を出力する。ADC19−1は、PD14−1からのアナログ信号をデジタル信号に変換し、受光レベルPD1に応じたデジタル信号をスペクトラム演算部15に出力する。
【0056】
偏光子22は、BS21で分岐されたもう一方の光が入力され、任意の偏波成分のみの光を通過させる。これにより、BS21で分岐されたもう一方の光のうちのβが偏光子22を通過する。このβを偏光子22での通過率と呼ぶ。偏光子22を通過後の光は、PD14−2で受光される。PD14−2は、PD14−2の受光レベルPD2に応じたアナログ信号を出力する。ADC19−2は、PD14−2からのアナログ信号をデジタル信号に変換し、受光レベルPD2に応じたデジタル信号をスペクトラム演算部15に出力する。
【0057】
本実施形態では、PD14−1が被測定信号光の全ての偏光成分を受光し、PD14−2が特定の偏波状態の光を受光する。このため、光スペクトラムアナライザ92及び光スペクトラム解析方法は、実施形態1と以下のような構成の相違を有する。
【0058】
図5に、実施形態2に係る光スペクトラム解析方法の一例を示す。実施形態2に係る光スペクトラム解析方法は、被測定信号光受光手順S201と、被測定信号光スペクトラム測定手順S202と、信号光測定手順S203と、被測定信号光OSNR算出手順S204と、を順に有する。以下、実施形態2に係る光スペクトラム解析方法の詳細について、図4を参照しながら説明する。
【0059】
被測定信号光受光手順S201では、制御処理部16が波長掃引信号発生部18に波長掃引の指示を出力し、波長掃引信号発生部18が制御処理部16の指示に応じて波長可変バンドパスフィルタ12の透過波長を掃引する。波長可変バンドパスフィルタ12の透過波長を掃引しながら、PD14−1及びPD14−2は各分岐光を受光する。スペクトラム演算部15は、受光レベルPD1及びPD2を波長可変バンドパスフィルタ12の透過波長に関連付けて記憶する。例えば、スペクトラム演算部15は、透過波長λでの受光レベルPD1[λ],PD2[λ]をメモリに記憶する。これにより、スペクトラム演算部15は、波長λから波長λまでの波長帯域を有する各チャネルの受光レベルPD1[λ],PD1[λ],・・・,PD1[λ],・・・,PD1[λ]及び受光レベルPD2[λ],PD2[λ],・・・,PD2[λ],・・・,PD2[λ]を記憶する。
【0060】
被測定信号光スペクトラム測定手順S202では、スペクトラム演算部15は、PD14−1の受光レベルPD1[λ],PD1[λ],・・・PD1[λ]を用いて被測定信号光のスペクトラムを測定する。
【0061】
信号光測定手順S203では、被測定信号光スペクトラム測定手順S202で測定したスペクトラムから信号光波長λおよび信号光パワーP[λ]を求める。信号光測定手順S203は、実施形態1で説明した信号光測定手順S103と同様である。
【0062】
被測定信号光OSNR算出手順S204では、被測定信号光のOSNRを算出する。
例えば、スペクトラム演算部15は、波長可変バンドパスフィルタ12の透過波長を第1波長λm1に設定したときの各分岐光の受光レベルPD1[λm1]及びPD2[λm1]と、波長可変バンドパスフィルタ12の透過波長を第2波長λm2に設定したときの各分岐光の受光レベルPD1[λm2]及びPD2[λm2]をメモリから読み出し、PD1[λm1]、PD2[λm1]、PD1[λm2]及びPD2[λm2]からなるデータグループ(m)を求める。そして、実施形態1と同様にスペクトラム演算部15は、複数のデータグループを求める。
【0063】
次に、スペクトラム演算部15は、データグループ(m)毎のASEノイズパワーPASEを算出する。例えば、PD1[λm1]、PD2[λm1]、PD1[λm2]、PD2[λm2]を用い通過率βを算出して、後述する式(34)に代入する。これにより、データグループ(m)についてのASEノイズパワーPASEを求めることができる。他のデータグループ(i)、データグループ(j)、データグループ(n)ついても同様にASEノイズパワーPASEを算出する。この後のスペクトラム演算部15の動作については、実施形態1と同様である。
【0064】
BS21の分岐比(1−γ(λ):γ(λ))の値は予め測定しておき、スペクトラム演算部15のメモリに保存しておく。尚、波長λが近い場合には、γ(λ)を等しい値γとして扱うことができる。
【0065】
以下、本実施形態に係るOSNR評価装置及び光スペクトラム解析方法の原理について説明する。ASEノイズパワーをPASE、信号光パワーをP、BS21の分岐比をγ、偏光子22での通過率β、波長可変バンドパスフィルタ12の帯域幅をBとすると、波長λm1の受光レベルPD1[λm1]及びPD2[λm1]並びに波長λm2の受光レベルPD1[λm2]及びPD2[λm2]は、次式で表される。分岐された光のうち、信号光のβが通過し、ASE光の1/2が偏光子22を通過する場合について説明する。
【0066】
【数21】

【0067】
ここで、PD1[λm1]−PD2[λm1]=PD12[λm1]、PD1[λm2]−PD2[λm2]=PD12[λm2]とおく。
【0068】
式(21)から式(22)を減算してPD12[λm1]を求める。
【数25】

【0069】
式(23)から式(24)を減算してPD12[λm2]を求める。
【数26】

【0070】
式(22)、式(24)、式(25)及び式(26)を展開する。
式(22)から式(24)を減算する。
【数27】

【0071】
式(27)を変形する。
【数28】

【0072】
式(25)から式(26)を減算する。
【数29】

【0073】
式(29)に式(28)を代入する。
【数30】

これを変形する。
【数31】

【0074】
式(25)×γ・βから式(22)×(1−γ−γ・β)を減算する。
【数32】

これを変形する。
【数33】

【0075】
ここで、PD12[λm1]=PD1[λm1]−PD2[λm1]に戻す。
【数34】

【0076】
式(34)及び式(31)を用いることで、データグループ(m)のASEノイズパワーPASEを算出することができる。OSNRは、実施形態1で説明した式(13)を用いて求めることができる。なお、本実施形態では、BS21の分岐比が(1−γ):γである場合について説明した。
【0077】
OSNRは、式(23)で表される。本実施形態に係る発明によれば、ROADMフィルタが任意の関数の透過特性を持つ場合には、より正確なASEノイズパワーPASEの測定が可能であり、また、ASEノイズパワーPASEの測定誤差を圧縮する効果もある。
【0078】
受信アンプなどのリニアリティを考慮したりすると、本実施形態においても信号光パワーPとASEノイズパワーPASEのパワー差が小さくなるような第1波長及び第2波長の受光レベルPD1及びPD2を用いる方が望ましい。
【0079】
(実施形態3)
図6に、実施形態3に係る光スペクトラムアナライザの一例を示す。実施形態3に係る光スペクトラムアナライザ93は、実施形態1に係る光スペクトラムアナライザ91に、偏波切り替え部11をさらに備える。
【0080】
偏波切り替え部11は、光入力部17からの被測定信号光が入射され、被測定信号光の偏波状態を他の偏波状態に切り替える。偏波切り替え部11が切り替える偏波状態のバリエーションは2種類以上の偏波状態である。波長可変バンドパスフィルタ12は、偏波切り替え部11からの被測定信号光が入射され、被測定信号光のうちの任意の波長の光を透過させる。これにより、PD14−1及びPD14−2は、偏波切り替え部11を透過後の被測定信号光を受光する。
【0081】
図7に、実施形態3に係る光スペクトラム解析方法の一例を示す。実施形態3に係る光スペクトラム解析方法は、直交偏光偏波切り替え手順S105を、直交偏光受光手順S101の前に有する。以下、直交偏光偏波切り替え手順S105について、図6を参照しながら説明する。
【0082】
直交偏光偏波切り替え手順S105では、PD14−1及びPD14−2は、被測定信号光を直交する偏波成分にPBS13で分離した各分離光を受光する。スペクトラム演算部15は、受光レベルPD1及び受光レベルPD2の比が任意の範囲内であるか否かを判定する。任意の範囲内である場合、制御処理部16は、偏波切り替え部11に対して、被測定信号光の偏波状態を他の偏波状態に切り替えさせる。任意の範囲を超えていれば、制御処理部16は、偏波切り替え部11に対して、被測定信号光の偏波状態を他の偏波状態に切り替えさせない。
【0083】
これは、受光レベルPD1及び受光レベルPD2が等しい、すなわち、受光レベルPD1及び受光レベルPD2の比が1:1である場合、前述の式を用いてASEノイズパワーPASEを算出することができない場合がある。このため、この比が1:1又はその近傍を含む任意の範囲を決めておき、この任意の範囲内である場合は、被測定信号光の偏波状態を他の偏波状態に切り替えることにより、この比が任意の範囲を超えるように、つまり受光レベルPD1と受光レベルPD2とが異なる状態にして、ASEノイズパワーPASEを算出できるようにするためのものである。
【0084】
直交偏光偏波切り替え手順S105を実行することで、PD14−1及びPD14−2で受光する受光レベルの比を前記任意の範囲より大きくすることができるため、式(12)に示すASEノイズパワーPASEの誤差を小さくすることができる。これにより、OSNRの測定精度を高めることができる。
【0085】
(実施形態4)
図8に、実施形態4に係る光スペクトラムアナライザの一例を示す。実施形態4に係る光スペクトラムアナライザ94は、実施形態2に係る光スペクトラムアナライザ92に、偏波切り替え部11をさらに備える。
【0086】
偏波切り替え部11は、光入力部17からの被測定信号光が入射され、被測定信号光の偏波状態を他の偏波状態に切り替える。他の偏波状態については実施形態3と同様である。波長可変バンドパスフィルタ12は、偏波切り替え部11からの被測定信号光が入射され、被測定信号光のうちの任意の波長の光を透過させる。これにより、PD14−1及びPD14−2は、偏波切り替え部11を透過後の被測定信号光を受光する。
【0087】
図9に、実施形態4に係る光スペクトラム解析方法の一例を示す。実施形態4に係る光スペクトラム解析方法は、実施形態2で説明した被測定信号光受光手順S201の前に、被測定信号光偏波切り替え手順S205を、さらに有する。以下、被測定信号光偏波切り替え手順S205について、図8を参照しながら説明する。
【0088】
被測定信号光偏波切り替え手順S205では、被測定信号光をBS21で分岐し、各分岐光をPD14−1及びPD14−2で受光する。スペクトラム演算部15は、受光レベルPD1及び受光レベルPD2の差と受光レベルPD2との比が任意の範囲内であるか否かを判定する。任意の範囲内である場合、制御処理部16は、偏波切り替え部11に対して、被測定信号光の偏波状態を他の偏波状態に切り替えさせる。任意の範囲を超えていれば、制御処理部16は、偏波切り替え部11に対して、被測定信号光の偏波状態を他の偏波状態に切り替えさせない。前述の実施形態3と同様に、受光レベルPD1及び受光レベルPD2の差と受光レベルPD2との比が任意の範囲を超えるようにして、ASEノイズパワーPASEを算出できるようにするためのものである。
【0089】
直交偏光偏波切り替え手順S105を実行することで、PD14−1及びPD14−2で受光する受光レベルの比を前記任意の範囲より大きくすることができるため、式(34)に示すASEノイズパワーPASEの誤差を小さくすることができる。これにより、OSNRの測定精度を高めることができる。また、直交偏光偏波切り替え手順S105を実行することで、PD14−1又はPD14−2のうち一方の偏光成分を最小にすることができる。
【産業上の利用可能性】
【0090】
本発明は情報通信産業に適用することができる。
【符号の説明】
【0091】
11:偏波切り替え部
12:波長可変バンドパスフィルタ
13:PBS
14−1,14−2:PD
15:スペクトラム演算部
16:制御処理部
17:光入力部
18:波長掃引信号発生部
19−1,19−2:ADC
20:表示部
21:BS
22:偏光子
91、92、93、94:光スペクトラムアナライザ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被測定信号光が入力され、前記被測定信号光のうちの任意の波長の光を透過させる波長可変バンドパスフィルタ(12)と、
前記波長可変バンドパスフィルタからの透過光を直交する偏光成分に分離するPBS(Polarization Beam Splitter)(13)と、
前記PBSで分離された一方の光を受光する第1の受光器(14−1)と、
前記PBSで分離されたもう一方の光を受光する第2の受光器(14−2)と、
前記第1の受光器及び前記第2の受光器の受光レベルを用いて前記被測定信号光のスペクトラム及び前記被測定信号光のOSNR(Optical Signal−to−Noise Ratio)を算出するスペクトラム演算部(15)と、
前記波長可変バンドパスフィルタの透過波長を掃引する波長掃引信号発生部(18)と、を備え、
前記スペクトラム演算部は、
前記波長可変バンドパスフィルタの透過波長を掃引したときの前記第1の受光器及び前記第2の受光器の受光レベルを前記波長可変バンドパスフィルタの透過波長に関連付けて記憶し、
前記第1の受光器及び前記第2の受光器の受光レベルを用いて前記被測定信号光のスペクトラムを取得し、
前記被測定信号光のスペクトラムの信号光波長近傍の第1波長に前記波長可変バンドパスフィルタの透過波長を設定したときの前記第1の受光器及び前記第2の受光器の受光レベル、前記第1波長とは異なる前記信号光波長近傍の第2波長に前記波長可変バンドパスフィルタの透過波長を設定したときの前記第1の受光器及び前記第2の受光器の受光レベルからなるデータグループを複数求め、
前記データグループごとのASE(Amplified Spontaneous Emission)ノイズパワーを算出し、
複数の前記データグループの前記ASEノイズパワーを用いて前記信号光波長におけるASEノイズパワーを算出し、
前記被測定信号光のスペクトラム及び前記信号光波長におけるASEノイズパワーを用いて前記被測定信号光のOSNRを算出する
光スペクトラムアナライザ。
【請求項2】
前記波長可変バンドパスフィルタの前段又は前記波長可変バンドパスフィルタと前記PBSの間の光路に挿入され、前記被測定信号光の偏波状態を他の偏波状態に切り替える偏波切り替え部(11)と、
前記偏波切り替え部の切り替える前記他の偏波状態を、前記第1の受光器及び前記第2の受光器の受光レベルの比が任意の範囲より大きくなるように変更する制御処理部(16)と、
をさらに備えることを特徴とする請求項1に記載の光スペクトラムアナライザ。
【請求項3】
被測定信号光が入力され、前記被測定信号光のうちの任意の波長の光を透過させる波長可変バンドパスフィルタ(12)と、
前記波長可変バンドパスフィルタからの透過光を2つに分岐するBS(Beam Splitter)(21)と、
前記BSで分岐された一方の光を受光する第1の受光器(14−1)と、
前記BSで分岐されたもう一方の光が入力され、任意の偏波成分のみの光を通過させる偏光子(22)と、
前記偏光子からの光を受光する第2の受光器(14−2)と、
前記第1の受光器及び前記第2の受光器の受光レベルを用いて前記被測定信号光のスペクトラム及び前記被測定信号光のOSNR(Optical Signal−to−Noise Ratio)を算出するスペクトラム演算部(15)と、
前記波長可変バンドパスフィルタの透過波長を掃引する波長掃引信号発生部(18)と、を備え、
前記スペクトラム演算部は、
前記波長可変バンドパスフィルタの透過波長を掃引したときの前記第1の受光器及び前記第2の受光器の受光レベルを前記波長可変バンドパスフィルタの透過波長に関連付けて記憶し、
前記第1の受光器の受光レベルを用いて前記被測定信号光のスペクトラムを取得し、
前記被測定信号光のスペクトラムの信号光波長近傍の第1波長に前記波長可変バンドパスフィルタの透過波長を設定したときの前記第1の受光器及び前記第2の受光器の受光レベル、前記第1波長とは異なる前記信号光波長近傍の第2波長に前記波長可変バンドパスフィルタの透過波長を設定したときの前記第1の受光器及び前記第2の受光器の受光レベルからなるデータグループを複数求め、
前記データグループごとのASEノイズパワーを算出し、
複数の前記データグループの前記ASEノイズパワーを用いて前記信号光波長におけるASEノイズパワーを算出し、
前記被測定信号光のスペクトラム及び前記信号光波長におけるASEノイズパワーを用いて前記被測定信号光のOSNRを算出する
光スペクトラムアナライザ。
【請求項4】
前記波長可変バンドパスフィルタの前段又は前記波長可変バンドパスフィルタと前記BSの間の光路に挿入され、前記被測定信号光の偏波状態を他の偏波状態に切り替える偏波切り替え部(11)と、
前記偏波切り替え部の切り替える前記他の偏波状態を、前記被測定信号光を前記第1の受光器及び前記第2の受光器で受光したときの、前記第1の受光器及び前記第2の受光器の受光レベルの差と前記第2の受光器の受光レベルとの比が任意の範囲より大きくなるように変更する制御処理部(16)と、
をさらに備えることを特徴とする請求項3に記載の光スペクトラムアナライザ。
【請求項5】
波長可変バンドパスフィルタの透過波長を掃引しながら、前記波長可変バンドパスフィルタを透過後の被測定信号光を直交する偏波成分に分離した各分離光を受光し、前記各分離光の受光レベルを前記波長可変バンドパスフィルタの透過波長に関連付けて記憶する直交偏光受光手順(S101)と、
前記直交偏光受光手順で受光した各分離光の受光レベルを用いて前記被測定信号光のスペクトラムを測定する直交偏光スペクトラム測定手順(S102)と、
前記直交偏光スペクトラム測定手順で測定したスペクトラムから信号光波長および信号光パワーを求める信号光測定手順(S103)と、
前記波長可変バンドパスフィルタの透過波長を前記信号光波長近傍の第1波長に設定したときの前記各分離光の受光レベル、前記波長可変バンドパスフィルタの透過波長を前記第1波長とは異なる前記信号光波長近傍の第2波長に設定したときの前記各分離光の受光レベルからなるデータグループを複数求め、
前記データグループごとのASEノイズパワーを算出し、
複数の前記データグループの前記ASEノイズパワーを用いて前記信号光波長におけるASEノイズパワーを算出し、前記被測定信号光のスペクトラム及び前記信号光波長におけるASEノイズパワーを用いて前記被測定信号光のOSNRを算出する直交偏光OSNR算出手順(S104)と、
を順に有する光スペクトラム解析方法。
【請求項6】
前記被測定信号光を直交する偏波成分に分離した各分離光を受光し、前記各分離光の受光レベルの比が任意の範囲内であるか否かを判定し、前記任意の範囲内である場合には前記被測定信号光の偏波状態を他の偏波状態に切り替える直交偏光偏波切り替え手順(S105)を、前記直交偏光受光手順の前にさらに有することを特徴とする請求項5に記載の光スペクトラム解析方法。
【請求項7】
波長可変バンドパスフィルタの透過波長を掃引しながら、前記波長可変バンドパスフィルタを透過後の被測定信号光を分岐した一方の分岐光を受光するとともに、もう一方の分岐光を偏光子に通過させ、前記偏光子を通過後の分岐光を受光し、前記各分岐光の受光レベルを前記波長可変バンドパスフィルタの透過波長に関連付けて記憶する被測定信号光受光手順(S201)と、
前記被測定信号光受光手順で記憶した前記一方の分岐光の受光レベルを用いて前記被測定信号光のスペクトラムを測定する被測定信号光スペクトラム測定手順(S202)と、
前記被測定信号光スペクトラム測定手順で測定したスペクトラムから信号光波長および信号光パワーを求める信号光測定手順(S203)と、
前記被測定信号光のスペクトラムの信号光波長近傍の第1波長に前記波長可変バンドパスフィルタの透過波長を設定したときの前記各分岐光の受光レベル、前記第1波長とは異なる前記信号光波長近傍の第2波長に前記波長可変バンドパスフィルタの透過波長を設定したときの前記各分岐光の受光レベルからなるデータグループを複数求め、
前記データグループごとのASEノイズパワーを算出し、
複数の前記データグループの前記ASEノイズパワーを用いて前記信号光波長におけるASEノイズパワーを算出し、前記被測定信号光のスペクトラム及び前記信号光波長におけるASEノイズパワーを用いて前記被測定信号光のOSNRを算出する被測定信号光OSNR算出手順(S204)と、
を順に有する光スペクトラム解析方法。
【請求項8】
前記被測定信号光を分岐した一方の分岐光を受光するとともに、もう一方の分岐光を偏光子に通過させ、前記偏光子を通過後の分岐光を受光し、前記各分岐光の受光レベルの差と前記もう一方の分岐光の受光レベルとの比が任意の範囲内であるか否かを判定し、前記任意の範囲内である場合には前記被測定信号光の偏波状態を他の偏波状態に切り替える被測定信号光偏波切り替え手順(S205)を、前記被測定信号光受光手順の前にさらに有することを特徴とする請求項7に記載の光スペクトラム解析方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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