説明

光センサ装置およびその製造方法

【課題】信頼性が高く且つ小型で低コストの光センサ装置を提供する。
【解決手段】ガラス蓋基板2と、分割されて露出したスルーホール電極5を外周に有するキャビティ付きガラス基板9と、ガラス蓋基板2に実装された光センサ素子3とを備え、ガラス蓋基板2とキャビティ13を有するガラス基板9とが接合された構造の光センサ装置であり、ガラス基板9で密閉し、分割したスルーホール電極を用いる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガラス基板を用いたパッケージ材料に光センサ素子を実装した光センサ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、モバイルパソコン、タブレットパソコン、スマートフォンといった携帯端末の普及が急速に拡大している。この理由としては、これらの携帯端末が多くの機能を有していることは勿論、重量が軽いこと、厚みが薄いことなど、より携帯性に富んだデザインを特徴に持ち合わせていることも大きい。一方、携帯端末に使用する電子部品点数は、多機能化や携帯性の追求に伴い非常に多くなっており、より小型、薄型、省電力、低コストが常に求められるようになった結果、電子部品では樹脂モールドパッケージの採用が多く見受けられるようになっている。低消費電力を担う搭載電子部品の一つである光センサも例外ではなく、他の電子部品と同様に、樹脂モールドパッケージによる小型、薄型、低コストを狙った製品が多く開発されている。
【0003】
図6は特許文献1に開示された電子部品であり、樹脂材料からなる絶縁性基板の上に受光素子を実装して樹脂モールドした照度センサパッケージの断面図である。樹脂基板20には表面に電極22が形成されている。電極22は基板裏面を囲むように配線されており、外部との接続が行うことができる構造になっている。電極23の上には光センサ素子21が実装されている。光センサ素子21の上面21aと電極24とはワイヤー26により電気的に接続されている。光センサ素子21は電極23へ導電性ペースト25によって固着されている。導電性ペースト25は光センサ素子21と電極24とを電気的に接続をしている。
【0004】
また、この図では光センサ素子21は樹脂27によって全体をモールドされている。樹脂27は透光性の樹脂からなり、エポキシ樹脂などが使用されている。樹脂27の上には赤外光吸収膜28が設けられている。赤外光吸収膜28は樹脂が使われており、液状樹脂又はフィルムを樹脂27上に接着して重ねた構造としている。液状樹脂はエポキシ樹脂などが使用されている。フィルム状のものでは樹脂接着剤を介してフィルムを樹脂27に接着される。これにより光センサ素子21は赤外光をカットされた可視光を受光することができるため視感度に対応した光センサとしての機能を果たすことができる。また赤外光吸収膜28は、使用する赤外光吸収物質を透光性樹脂27中に分散、混合させても赤外光吸収効果が得られるというものである。
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載された光センサ装置は、素子の封止にエポキシ樹脂などが使用されたパッケージ構造を成しているため、材料の持つ耐熱性や耐湿性などをはじめとした環境信頼性に弱いことが挙げられる。特に赤外光吸収膜を構成する樹脂又はフィルムは厚みが薄くなっており、熱や水分に対して弱いものとなっている。
【0006】
また、特許文献1に記載された光センサ装置では、目的の特性を得る赤外光吸収膜にエポキシ樹脂などの樹脂を使用例としている。赤外光吸収膜にエポキシ樹脂などを用いた場合、水分や熱などによって樹脂が分解する恐れがある。この結果、目的とする赤外光を吸収することができなくなり、徐々に所望の特性が得られなくなる課題がある。
【0007】
この様な中、ガラスをパッケージ材料に使用した電子部品が一部で実用化されている。ガラス材料は、外部から浸入する水分や汚染物質を防ぎ、気密性も高い。また、ガラス材料は、半導体素子を形成するシリコン基板と熱膨張係数が近似していることから、ガラスパッケージに半導体素子を実装した場合、実装面や接合面の信頼性を高めることができる。さらに、ガラス材料は安価であることから、製品コストの上昇を抑制できる。
【0008】
図7は特許文献2に開示された電子部品であり、セラミック材料からなる基板の上に光センサ素子を実装して、絶縁性の枠と透明ガラス板で密封封止された照度センサパッケージの断面図である。セラミック基板31には表面と裏面にメタライズされた配線パターン32、39が設けられており、貫通電極38によって電気的に接続されている。この基板31上には光センサ素子33が実装され、光センサ素子33の上面と基板表面に設けられた配線パターン32とはワイヤー34によって電気的に接続されている。前記基板31上には、ワイヤー34と配線パターン32の接続箇所の外側を取り囲んで、絶縁枠35が接着剤36を介して固定されている。さらに絶縁枠35の上端には透明ガラス37が接着剤36で接着されている。
【0009】
光センサ素子33は絶縁枠35と透明ガラス37とで囲まれた中空状態となっており、樹脂モールドで封止された構造においてしばしば問題とされる、素子とワイヤーへのストレスが無い構造となっている。透明ガラス37を通して外部からの光が光センサ素子33の上面に入射され、光センサ素子33で発生した起電力はワイヤー34から配線パターン32を伝わり、貫通電極38を通して基板31の裏面側配線パターン39へと伝わる。基板31はセラミック材の積層ではなく単層であること、また、基板材料にはセラミックの他にガラスエポキシ樹脂等を用いることにより、パッケージのコスト低減を計ることができるというものである。
【0010】
特許文献2に記載された光センサ装置は、前述の特許文献1に記載された光センサ装置において使用されていた樹脂を使用しておらず、セラミックやガラスといった信頼性に対して強い材料を主に使用している。これにより樹脂材料が課題とされる弱い箇所は省くことができているが、一方、特許文献2に記載された光センサ装置では、基板、絶縁枠、透明ガラスといった別々の材料と部品を使用して組み立てなければならず、パッケージのコストを低下しにくい。また、パッケージを構成している主要部品である基板、絶縁枠、透明ガラスでは各部品材料間の膨張係数は著しく異なる。このため高温から低温を繰り返す温度サイクル試験環境下では、膨張係数の差によって発生するストレスからパッケージへのダメージを受けやすくなる。
【0011】
また、特許文献2に記載された光センサ装置では、光センサ素子33は周囲を絶縁枠35で囲まれた構造になっているため、絶縁枠35の面積と、更には絶縁枠35の外部に貫通電極38を設けるためのスペースが必要になり、パッケージサイズの小型化が難しいという課題がある。
【0012】
図8は特許文献3に開示された電子部品であり、キャビティを有するセラミック基板に光半導体素子を実装し、ガラス等の透明蓋で密閉した光半導体装置の断面図である。セラミック基板41は、枠上に打ち抜いたグリーンシート、金属ペーストを印刷したグリーンシートおよびスルーホールに充填したグリーンシート等を複数積層することにより、配線導体42とキャビティを形成することができる。透明蓋45は周囲に複数の穴45aが形成され、穴45aに接合剤47を充填してセラミック基板41と接合している。
【0013】
特許文献3の光半導体装置は、特許文献2のような絶縁枠がなく、セラミックとガラスだけからなるため高信頼性が期待できる。しかし、セラミック基板は、打ち抜きや、金属ペーストの印刷/充填を施したグリーンシートの積層等工程数が多く、且つ高熱処理が必要であるため、製造コストが高い。また、配線導体42のエリアを確保するためにパッケージサイズの小型化が難しく、製造時の取個数が少なくなるため更にコストが増えるという課題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】特開2007−36264号公報
【特許文献2】特開昭61−214565号公報
【特許文献3】特開2006−13264号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
そこで本発明は、信頼性が高く且つ小型で低コストの光センサ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記目的を達成するために、本発明の光センサ装置は、ガラス蓋基板と、分割されて露出したスルーホール電極を外周部に有するキャビティ付きガラス基板と、いずれかの基板に実装された光センサ素子とを備え、ガラス蓋基板とキャビティを有するガラス基板とが接合された構造にした。
【0017】
また、前記分割されて露出したスルーホール電極をコーナー部に設けた。
また、前記分割されて露出したスルーホール電極を対向する外周の2辺に設けた。
また、前記キャビティ付きガラス基板に遮光性のあるガラスを用いた。
また、前記ガラス蓋基板にフィルター機能を有するガラスを用いた。
【0018】
また、複数のキャビティとキャビティ外周部に複数の貫通穴を有するガラス基板に導電膜を形成する工程と、前記導電膜を所定の形状にパターニングする工程と、前記パターニングされた導電膜に光センサ素子を実装する工程と、ガラス蓋基板と前記キャビティを有する基板を接着剤で接合する工程と、
前記接合されたガラス基板を、貫通穴が分断される位置で切断する工程と、を備えることにした。
【0019】
また、ガラス蓋基板の片面に導電膜を形成する工程と、前記導電膜を所定の形状にパターニングする工程と、前記パターニングされた導電膜に光センサ素子を実装する工程と、複数のキャビティとキャビティ外周部に複数の貫通穴を有するガラス基板に導電膜を形成する工程と、前記導電膜を所定の形状にパターニングする工程と、前記ガラス蓋基板とキャビティを有する基板を、導電粒子を添加した接着剤で接合する工程と、前記接合されたガラス基板を、貫通穴が分断される位置で切断する工程と、を備えることにした。
【0020】
また、前記ガラス基板を切断する工程に、ダイシング法を用いた。
また、前記ガラス基板を切断する工程に、超音波切断法を用いた。
【発明の効果】
【0021】
本発明の光センサ装置は、光センサ素子をガラスで完全に密閉することができ、また、ガラス材だけからなるパッケージ構造であるため膨張係数の差がなく、非常に信頼性の高いパッケージが得られる。さらに、分割されて露出したスルーホール電極を用いることによってパッケージサイズを小型化でき、製造時の取個数アップによる低コスト化が可能になる。したがって、コスト、信頼性にともに優れた光センサ装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の光センサ装置の構成を模式的に示す平面図、断面図および裏面図である。
【図2】本発明の光センサ装置の構成を模式的に示す平面図、断面図および裏面図である。
【図3】本発明の光センサ装置の構成を模式的に示す平面図、断面図および裏面図である。
【図4】本発明の光センサ装置の製造工程を模式的に示す平面図および断面図である。
【図5】本発明の光センサ装置の製造工程を模式的に示す平面図および断面図である。
【図6】従来公知の光センサを示す模式断面図である。
【図7】従来公知の半導体光センサ装置を示す模式断面図である。
【図8】従来公知の光半導体装置を示す模式断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明の光センサ装置は、ガラス蓋基板と、分割されて露出したスルーホール電極を外周部に有するキャビティ付きガラス基板と、いずれかの基板に実装された光センサ素子とを備え、ガラス蓋基板とキャビティを有するガラス基板とが接合された構造からなる。
【0024】
(実施例1)
以下、図に基づいて本実施例の光センサ装置の構成を説明する。
図1は本実施例を示す模式図であり、図1(a)はその平面図、(b)は図1(a)の一点鎖線XYで切断したときの断面図、(c)は裏面図である。
【0025】
図1(b)のガラス基板2(以下ガラス蓋基板2)は、センサに合わせた特性を有する光フィルター10が設けられている。たとえば照度センサの場合は視感度補正曲線に合わせた光フィルターが使われ、屈折率の異なる金属酸化膜の多層膜をガラス基上に成膜したり、顔料を添加した樹脂をコーティングすることによって光フィルター機能をもたせることができる。また、リン酸塩系ガラス等ガラス基板2自体にフィルター機能をもたせれば、フィルター10を除去することができる。
【0026】
ガラス基板9(以下キャビティ基板9)は、キャビティ13と、4分割された貫通穴17をコーナーに有しており、貫通穴にはスルーホール電極5、キャビティ内には実装用電極8、キャビティ反対面には接続用の外部電極7が設けられている。これら電極は配線電極6を介して接続している。外部電極7の形状は図1(c)に一例を図示してあり、実装用電極8、配線電極6の形状は図1(a)に一例を図示してあるが、電極5〜8が導通されていれば、特に形状は問わない。また、図1は4端子のセンサを例にした場合であり、3端子であればコーナーのいずれかの電極を削除できるし、5端子以上の場合は、いずれかの辺に2分割されたスルーホール電極を追加すればよい。
【0027】
図1(b)のキャビティ基板9のキャビティ部13には、光センサ素子3がダイボンディング剤12によって固定されており、センサ素子3と実装用電極8間はワイヤー4によって電気的導通がとられている。
ガラス蓋基板2とキャビティ基板9は、図1(b)のように接着剤21を介して接合されている。接着剤は熱硬化型、UV硬化型、UV+熱硬化型のいずれでも使用できる。
【0028】
ガラス蓋基板2とキャビティを有するガラス基板9によって囲まれている光センサ素子3は密閉された中空状態とすることができる。この結果、光センサ素子3では樹脂モールドによって封止された構造などで発生する素子へのストレスは無く、信頼性を高いものとすることができる。
また、分割したスルーホール電極を用いているため、パッケージサイズを小さくすることができ、パッケージコスト低減が図れる。
【0029】
(実施例2)
図2は本実施例を示す模式図であり、図2(a)はその平面図、(b)は図2(a)の一点鎖線XYで切断したときの断面図、(c)は裏面図である。
図2(b)のガラス基板2(以下ガラス蓋基板2)は、光フィルター10と実装用電極14が設けられている。センサ素子3はたとえばAuバンプ15を介して実装用電極14にフリップチップボンディングされている。実装用電極14の形状は図2(a)に図示しているが、センサ素子のフリップチップボンディング部とガラス基板9の配線電極6をつなぐ形状になっていれば、このとおりである必要はない。
【0030】
ガラス基板9(以下キャビティ基板9)は、キャビティ13と、4分割された貫通穴17をコーナーに有しており、貫通穴にはスルーホール電極5、キャビティ面側には配線電極6、キャビティ反対面には接続用の外部電極7が設けられている。外部電極7の形状は図2(c)に一例を図示してあり、実装用電極14、配線電極6およびスルーホール電極5の形状は図2(a)に一例を図示してあるが、電極5〜7が導通されていれば、特に形状は問わない。また、図2は4端子のセンサを例にした場合であり、3端子であればコーナーのいずれかの電極を削除できるし、5端子以上の場合は、いずれかの辺に2分割されたスルーホール電極を追加すればよい。
【0031】
ガラス蓋基板1とキャビティ基板9は、図2(b)のように導電粒子添加の接着剤10を介して接合されており、実装用電極14と配線電極6は接着剤11の導電粒子を介して電気的に接続されている。接着剤は熱硬化型、UV硬化型、UV+熱硬化型のいずれでも使用できる。
【0032】
実施例1と同様に、ガラス蓋基板2とキャビティを有するガラス基板9によって囲まれている光センサ素子3は密閉された中空状態とすることができるため、信頼性を高い光センサ装置を提供することができる。
【0033】
また、本実施例ではフリップチップボンディングによる実装を用いているため、ワイヤボンディングエリアが不要になり、分割したスルーホール電極と併せて、よりパッケージサイズの小型化が可能になり、さらなるパッケージコスト低減が図れる。
【0034】
(実施例3)
図3は本実施例を示す模式図であり、図3(a)はその平面図、(b)図3(a)の一点鎖線XYで切断したときの断面図、(c)は裏面図である。
図3(b)のガラス基板2(以下ガラス蓋基板2)は、光フィルター10と実装用電極14が設けられている。センサ素子3はたとえばAuバンプを介して実装用電極14にフリップチップボンディングされている。
【0035】
ガラス基板9(以下キャビティ基板9)は、キャビティ13と、2分割された貫通穴17を対抗する2辺に有しており、貫通穴にはスルーホール電極5、キャビティ面側には配線電極6、キャビティ反対面には接続用の外部電極7が設けられている。外部電極7の形状は図2(c)に一例を図示してあり、実装用電極14、配線電極6およびスルーホール電極5の形状は図3(a)に一例を図示してあるが、電極5〜7が導通されていれば、特に形状は問わない。また、図3は4端子のセンサを例にした場合であり、3端子であればいずれかのスルーホール電極を削除できるし、5端子以上の場合は、いずれかの辺に2分割されたスルーホール電極を追加すればよい。
【0036】
ガラス蓋基板1とキャビティ基板9は、図3(b)のように導電粒子添加の接着剤11を介して接合されており、実装用電極14と配線電極6は接着剤11の導電粒子を介して電気的に接続されている。
【0037】
本実施例では、2分割したスルーホール電極を対抗する2辺に設けることにより、スルーホール電極のない辺の面積を最小化でき、更なる小型化によるパッケージコスト低減が図れる。
【0038】
(実施例4)
図4は本実施例の光センサ装置の製造工程を模式的に示す断面図および平面図である。
<成型工程>
図4(a)および(b)は、成形工程を示す断面図であり、図4(b’)は平面図である。
【0039】
図4(a)のガラス基板を加工し、図4(b)および(b’)に示すキャビティ13及び貫通穴17を有するキャビティ基板9形成する。加工方法としては、高温下でガラスを軟化させて所定の型形状に成形するいわゆる成型法や、サンドブラスト法、ドリル等が挙げられる。コスト面からは成形法が望ましいが、成形法でキャビティを形成し、貫通穴はドリルで加工するなど複数の工程を組み合わせても良い。
【0040】
<導電膜形成工程>
図4(c)は、キャビティ基板9に導電膜16を成膜した状態を示している。成膜にはメッキ法や、スパッタリング法が挙げられるが、コストや貫通穴17への成膜性からメッキ法が好ましい。メッキ法では、ガラス表面の粗面化、触媒活性化等の処理後、無電解Niメッキで下地メッキを行い、その上に電解メッキでAu膜等を形成するのが一般的である。
【0041】
<パターニング工程>
図4(d)は、導電膜16をスルーホール電極5、配線電極6、外部電極7および実装用電極14にパターニングした状態を示している。パターニングは、電極を残したい領域にフォトリソ法でレジスト膜を残し、ついで電極をエッチングすることにより行う。キャビティ底面へのパターニングが難しい場合は、インクジェット法でナノ金属インクを所定の形状に塗布し、焼成することによって導電膜を形成することも可能である。
【0042】
<素子実装工程>
図4(e)は、光センサ素子3をキャビティ底面にダイボンディングし、ついで光センサ素子の電極と実装用電極14をワイヤー4でワイヤボンディングした状態を示している。ワイヤボンディングはAu、AlやCuワイヤー等が利用できる。
【0043】
<接合工程>
図4(f)は、光フィルター10を有するガラス蓋基板2に接着剤11を塗布した状態を示している。塗布方法としては、スクリーン印刷、オフセット印刷、フレキソ印刷やディスペンサーによる塗布等があり、パッケージ仕様によって使い分けすることができる。また接着剤11には、エポキシ系、アクリル系等の接着剤が使用できる。
【0044】
図4(g)は、ガラス蓋基板2とキャビティ基板9を接合した状態を示しており、接着剤11が塗布されたガラス蓋基板2とキャビティ基板9をアライメントし、加圧しながら高温下もしくはUV照射して接着剤を硬化させることによって得られる。
【0045】
<切断工程>
図4(h)は、キャビティ基板9側から見た接合後の平面図であり、破線m−l、m’−l’、m”−l”、h−i、h’−i”、h”−i”に沿って切断することにより、図4(i)の光センサ装置1を得ることができる。ガラスの切断方法としては、超硬刃によるスクライブ法、レーザーカット法、ダイシング法、超音波切断法等が挙げられるが、本発明では貫通穴部を切断する必要があるため、ダイシング法か超音波切断法が望ましい。特に超音波切断法はガラスの切断に適しており、ダイシング法より短時間での加工が可能であり、切断面の品質でも優れている。
【0046】
本は発明の製造方法によれば、簡便な工程で光センサ素子をガラスで密閉した中空状態の中に実装することができ、従来の樹脂モールドによって封止された構造などで発生する素子へのストレスが全くない、高信頼性の光センサ装置を提供することができる。また、スルーホール電極を切断によって分割するため、無駄になるエリアがなく、パッケージサイズの小型化と併せてパッケージ取個数を最大化し、大幅なコスト低減を実現できる。
【0047】
また、分割したスルーホール電極を用いているため、パッケージサイズを小さくすることができ、パッケージコスト低減が図れる。
【0048】
(実施例5)
図5は本実施例の光センサ装置の製造工程を模式的に示す断面図および平面図である。
<導電膜形成工程1>
図5(a)は、光フィルター10上に導電膜16を成膜したガラス蓋基板2の断面図を示している。平坦な基板上への成膜であるため、導電膜はメッキ法、蒸着法やスパッタリング法等の真空成膜法のいずれでも可能であるが、この導電膜はフリップチップボンディング用の電極としても使用するため、密着性が高く平坦性の優れている真空製膜法によってCr+Au、Ni+Au等の多層膜が適している。
【0049】
<パターニング工程1>
図5(b)は、導電膜16をパターニングし、実装用電極14を形成したガラス蓋基板2の断面図を示している。パターニングはフォトリソ法を用いることにより容易に電極14を形成することができる。他の方法としては、インクジェット法でナノ金属インクを所定の形状に塗布し、焼成することによって導電膜を形成してもよい。この場合は導電膜形成工程とパターニング工程を同時に行うことができる。
【0050】
<素子実装工程>
図5(c)は、光センサ素子3を実装用電極14にフリップチップボンディングした状態を示している。フリップチップボンディングは、あらかじめ光センサ素子にバンプを形成しておき、熱や超音波で実装用電極14と接合させることができる。バンプ材料としてはAuやハンダ等が挙げられるが、バンプを使わずに導電粒子を含む樹脂で接合させることもできる。
【0051】
<導電膜形成工程2>
図5(d)は、実施例4と同様の工程で形成されたキャビティ13、貫通穴17および導電膜16を有するキャビティ基板9の断面図である。
【0052】
<パターニング工程2>
図5(e)は、導電膜16をスルーホール電極5、配線電極6および外部電極7にパターニングした状態を示している。パターニングは、実施例4と同様に行うことができる。
【0053】
<接合工程>
図5(f)は、キャビティ基板9に接着剤11を塗布した状態を示している。塗布方法としては、実施例4と同様に行うことができるが、本実施例ではガラス蓋基板2の電極14とキャビティ基板9の配線電極6を電気的に接続する必要があるため、接着剤にあらかじめ導電粒子を添加しておく。導電粒子としては、Auボール、Wボール等の金属ボールや、プラスチックボールにNiやAuをメッキした導電粒子を用いることができる。
【0054】
図5(g)は、ガラス蓋基板2とキャビティ基板9を接合した状態を示しており、接着剤11が塗布されたキャビティ基板9とガラス蓋基板2をアライメントし、加圧しながら高温下もしくはUV照射して接着剤を硬化させることによって得られる。
【0055】
<切断工程>
図4(h)は、ガラス蓋基板2側から見た接合後の平面図であり、破線m−l、m’−l’、m”−l”、h−i、h’−i”、h”−i”に沿って切断することにより、図4(i)の光センサ装置1を得ることができる。ガラスの切断方法としては、実施例4と同様に行うことができる。
【0056】
本発明の製造方法によれば、フリップチップボンディングによる実装を用いているため、ワイヤボンディングエリアが不要になり、分割したスルーホール電極と併せて、よりパッケージサイズの小型化が可能になり、さらなるパッケージコスト低減が図れる。
【産業上の利用可能性】
【0057】
ガラスによって素子周囲を囲った信頼性が高くかつ、低コストの光センサ装置を提供することができるので、屋内や屋外用途、さらには過酷な環境への使用にまで配慮した携帯端末や照明器具をはじめとする様々な光センサ装置搭載機器への供給に寄与することができる。
【符号の説明】
【0058】
1 光センサ装置
2 ガラス蓋基板
3 光センサ素子
4 ワイヤー
5 スルーホール電極
6 配線電極
7 外部電極
8、14 実装用電極
9 キャビティ基板
10 光フィルター
11,21 接着剤
12 ダイボンディング剤
13 キャビティ
17 貫通孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガラス蓋基板と、キャビティ付きガラス基板と、いずれかの基板に実装された光センサ素子とを備え、ガラス蓋基板とキャビティ付きガラス基板とが接合された構造であることを特徴とする光センサ装置。
【請求項2】
前記キャビティ付きガラス基板のコーナーに、分割されて露出したスルーホール電極が設けられた構造であることを特徴とする請求項1記載の光センサ装置。
【請求項3】
前記スルーホール電極が、対向する2辺に設けられた構造であることを特徴とする請求項2記載の光センサ装置。
【請求項4】
前記キャビティ付きガラス基板が遮光ガラスからなることを特徴とする請求項1〜3のうちいずれか1項に記載の光センサ装置。
【請求項5】
前記ガラス蓋基板が、フィルター機能を有していることを特徴とする請求項1〜4のうちいずれか1項に記載の光センサ装置。
【請求項6】
複数のキャビティとキャビティ外周部に複数の貫通穴を有するガラス基板に導電膜を所定のパターンに形成する工程と、
前記導電膜を所定の形状にパターニングする工程と、
前記パターニングされた導電膜に光センサ素子を実装する工程と、
ガラス蓋基板と前記ガラス基板とを接着剤で接合する工程と、
接合された前記ガラス基板及び前記ガラス蓋基板を、貫通穴が分断される位置で切断する工程と、を含む光センサ装置の製造方法。
【請求項7】
ガラス蓋基板の片面に導電膜を形成する工程と、
前記ガラス蓋基板に形成された導電膜を所定の形状にパターニングする工程と、
前記パターニングされた導電膜に光センサ素子を実装する工程と、
複数のキャビティとキャビティ外周部に複数の貫通穴を有するガラス基板に導電膜を形成する工程と、
前記ガラス基板に形成された導電膜を所定の形状にパターニングする工程と、
前記ガラス蓋基板と前記ガラス基板を、導電粒子を添加した接着剤で接合する工程と、
接合された前記ガラス基板及びガラス蓋基板を、貫通穴が分断される位置で切断する工程と、を含む光センサ装置の製造方法。
【請求項8】
前記ガラス基板を切断する工程が、ダイシング法であることを特徴とする請求項6又は7に記載の光センサ装置の製造方法。
【請求項9】
前記ガラス基板を切断する工程が、超音波切断法であることを特徴とする請求項6又は7に記載の光センサ装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−105784(P2013−105784A)
【公開日】平成25年5月30日(2013.5.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−246671(P2011−246671)
【出願日】平成23年11月10日(2011.11.10)
【出願人】(000002325)セイコーインスツル株式会社 (3,629)
【Fターム(参考)】