説明

光ディスク装置

【課題】ディスクの回転数を大幅に低下させることなく、かつ、消費電流を抑制した光ディスク装置を提供する。
【解決手段】光ディスク装置は、スピンドルモータ12と、スレッドモータ18を有する。システムコントローラ32は、シーク動作がない場合にスピンドルモータ12を第1の回転駆動電流で回転駆動し、第1の方向にシークする場合にスピンドルモータ12を第1の回転駆動電流よりも小さい第2の回転駆動電流まで減少させるとともにスレッドモータ18の移動駆動電流を第1の移動駆動電流とし、駆動トルクの小さい第2の方向にシークする場合にスレッドモータ18を第1の移動駆動電流よりも小さい第2の移動駆動電流とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は光ディスク装置に関し、特に消費電流の抑制に関する。
【背景技術】
【0002】
光ディスク装置においては、消費電流の低減が求められている。特に、ノート型のパーソナルコンピュータにUSB接続される光ディスク装置(ディスクドライブ)においては、USBの規格により最大消費電流が定まっており(例えば500mA)、光ディスク装置の消費電流を最大消費電流内に制限する必要がある。
【0003】
特許文献1には、ハードディスクドライブにおけるアクチュエータの駆動制御方法が開示されている。すなわち、ヘッドアンロード時にアクチュエータの駆動源であるボイスコイルモータ(VCM)に供給する駆動電流を増大させることにより、ヘッドアンロード時のトルクをアップさせるとともに、シーク動作時の消費電力を抑えることが開示されている。
【0004】
また、特許文献2には、スレッドモータによる粗シーク動作の間、スピンドルモータへの駆動電流供給を停止し、粗シーク動作が終了した後にスピンドルモータへの駆動電流供給停止を解除することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−158097号公報
【特許文献2】特開2001−67764号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1においては、ヘッドアンロード時の駆動電流について記載されているだけであり、データを記録再生するエリアでのシーク動作については一律の駆動電流が記載されているだけである。
【0007】
また、特許文献2では、シーク動作時にスピンドルモータへの駆動電流供給を停止することで、スレッドモータでの消費電流とスピンドルモータでの消費電流を加算した全体の消費電流を低減することは可能であるものの、スピンドルモータへの駆動電流供給を停止するとディスクの回転数が摩擦により低下するため、シーク動作を連続して行うとディスクの回転数が著しく低下してしまい、場合によっては再生が困難ないし不能となり得る。
【0008】
本発明の目的は、ディスクの回転数を大幅に低下させることなく、かつ、消費電流を抑制した光ディスク装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、光ディスクにデータの記録あるいは再生を行う光ディスク装置であって、前記光ディスクを回転駆動する回転駆動手段と、前記光ディスクの半径方向に沿って光ピックアップを移動駆動する移動駆動手段と、前記移動駆動手段が前記光ピックアップを駆動していない場合に前記回転駆動手段は第1の回転駆動電流で前記光ディスクを回転駆動し、前記移動駆動手段が前記光ピックアップを第1の方向に駆動する場合に前記回転駆動手段の回転駆動電流を前記第1の回転駆動電流よりも小さい第2の回転駆動電流まで減少させるとともに前記移動駆動手段の移動駆動電流を第1の移動駆動電流とし、前記移動駆動手段が前記光ピックアップを前記第1の方向と反対方向であって前記第1の方向よりも必要駆動トルクの小さい第2の方向に駆動する場合に前記回転駆動手段の回転駆動電流を前記第2の回転駆動電流とするとともに前記移動駆動手段の移動駆動電流を前記第1の移動駆動電流よりも小さい第2の移動駆動電流とする制御手段とを有することを特徴とする。
本発明の1つの実施形態では、前記制御手段は、前記移動駆動手段が前記光ピックアップを前記第2の方向に駆動する場合に前記回転駆動手段の回転駆動電流を前記第2の回転駆動電流よりも大きく前記第1の回転駆動電流よりも小さい第3の回転駆動電流とするとともに前記移動駆動手段の移動駆動電流を前記第2の移動駆動電流とする。
【0010】
また、本発明は、さらに、前記移動駆動手段の脱調を検出する脱調検出手段を有し、前記制御手段は、前記脱調検出手段で前記脱調が検出された場合に、前記第1の移動駆動電流、前記第2の移動駆動電流、前記第2の回転駆動電流、前記第3の回転駆動電流の少なくともいずれかを変更することを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、ディスクの回転数を大幅に低下させることなく、かつ、消費電流が抑制される。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】実施形態の構成ブロック図である。
【図2】実施形態のシーク構造の平面図である。
【図3】図2における歯形成部材の詳細斜視図である。
【図4】図2の側面図である。
【図5】実施形態の処理フローチャートである。
【図6】実施形態の他の処理フローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面に基づき本発明の実施形態について説明する。
【0014】
図1に、本実施形態における光ディスク装置の全体構成を示す。CDやDVD、Blu−ray等の光ディスク10はスピンドルモータ(SPM)12により駆動される。スピンドルモータSPM12は、ドライバ14で駆動され、ドライバ14はサーボプロセッサ30により所望の回転速度となるようにサーボ制御される。
【0015】
光ピックアップ16は、レーザ光を光ディスク10に照射するためのレーザダイオード(LD)や光ディスク10からの反射光を受光して電気信号に変換するフォトディテクタ(PD)を含み、光ディスク10に対向配置される。光ピックアップ16はステッピングモータで構成されるスレッドモータ18により光ディスク10の半径方向に駆動され、スレッドモータ18はドライバ20で駆動される。ドライバ20は、ドライバ14と同様にサーボプロセッサ30によりサーボ制御される。また、光ピックアップ16のLDはドライバ22により駆動され、ドライバ22は、オートパワーコントロール回路(APC)24により、駆動電流が所望の値となるように制御される。APC24及びドライバ22は、システムコントローラ32からの指令によりLDの発光量を制御する。図1ではドライバ22は光ピックアップ16と別個に設けられているが、ドライバ22を光ピックアップ16に搭載してもよい。
【0016】
光ディスク10に記録されたデータを再生する際には、光ピックアップ16のLDから再生パワーのレーザ光が照射され、その反射光がPDで電気信号に変換されて出力される。光ピックアップ16からの再生信号はRF回路26に供給される。RF回路26は、再生信号からフォーカスエラー信号やトラッキングエラー信号を生成し、サーボプロセッサ30に供給する。サーボプロセッサ30は、これらのエラー信号に基づいて光ピックアップ16をサーボ制御し、光ピックアップ16をオンフォーカス状態及びオントラック状態に維持する。また、RF回路26は、再生信号に含まれるアドレス信号をアドレスデコード回路28に供給する。アドレスデコード回路28はアドレス信号から光ディスク10のアドレスデータを復調し、サーボプロセッサ30やシステムコントローラ32に供給する。
【0017】
アドレス信号は例えばウォブル信号であり、このウォブル信号を再生信号から抽出しデコードすることでアドレスデータを得る。また、RF回路26は、再生RF信号を2値化回路34に供給する。2値化回路34は、再生信号を2値化し、得られた信号をエンコード/デコード回路36に供給する。エンコード/デコード回路36では、2値化信号を復調及びエラー訂正して再生データを得、当該再生データをインタフェースI/F40を介してパーソナルコンピュータなどのホスト装置に出力する。なお、再生データをホスト装置に出力する際には、エンコード/デコード回路36はバッファメモリ38に再生データを一旦蓄積した後に出力する。
【0018】
光ディスク10にデータを記録する際には、ホスト装置からの記録すべきデータはインタフェースI/F40を介してエンコード/デコード回路36に供給される。エンコード/デコード回路36は、記録すべきデータをバッファメモリ38に格納し、当該記録すべきデータをエンコードして変調データとしてライトストラテジ回路42に供給する。ライトストラテジ回路42は、変調データを所定の記録ストラテジに従ってマルチパルス(パルストレーン)に変換し、記録データとしてドライバ22に供給する。記録ストラテジは記録品質に影響することから、データ記録に先立って最適化が行われる。記録データによりパワー変調されたレーザ光は光ピックアップ16のLDから照射されて光ディスク10にデータが記録される。データ記録時の記録パワーは、OPC(Optical Power Control)により光ディスク10の内周側に形成されたPCA(Power Calibration Area:パワー較正領域)を用いてテストデータを試し書きすることで最適化される。データを記録した後、光ピックアップ16は再生パワーのレーザ光を照射して当該記録データを再生し、RF回路26に供給する。RF回路26は再生信号を2値化回路34に供給し、2値化されたデータはエンコード/デコード回路36に供給される。エンコード/デコード回路36は、変調データをデコードし、バッファメモリ38に格納されている記録データと照合する。ベリファイの結果はシステムコントローラ32に供給される。システムコントローラ32はベリファイの結果に応じて引き続きデータを記録するか、あるいは交替処理を実行するかを決定する。システムコントローラ32は、システム全体の動作を制御し、サーボプロセッサ30を介してスレッドモータ18を駆動し、光ピックアップ16の位置を制御する。また、システムコントローラ32は、OPCを制御して記録パワーを最適化する。
【0019】
このように、光ディスク10はスピンドルモータ12により回転駆動され、スピンドルモータ12はドライバ14により駆動される一方、光ピックアップ16はスレッドモータ18により駆動され、スレッドモータ18はドライバ20により駆動される。ホストからライトコマンドあるいはリードコマンドが発行され、これらのコマンドを実行すべく光ピックアップ16を光ディスク10の半径方向に沿って移動させる(シーク)際には、スピンドルモータ12での消費電流とスレッドモータ18での消費電流が加算されることとなり、合計消費電流が増大してしまう。
【0020】
一方、光ピックアップ16のシーク動作中にスピンドルモータ12の駆動電流供給を停止してしまうと、光ディスク10の回転数が低下してしまい、再生動作に支障が生じ得る。
【0021】
そこで、本実施形態では、光ピックアップ16のシーク動作中においても、スピンドルモータ12に駆動電流を供給して光ディスク10の回転数低下を抑制し、かつ、全体の消費電流を抑制すべく、シーク動作時の消費電流をシーク動作時の必要トルクの変化に応じて増減制御する。
【0022】
以下、光ピックアップ10のシーク動作時の必要トルクの変化について説明する。
【0023】
光ピックアップ10はスレッドモータ18により駆動されるが、具体的にはステッピングモータとリードスクリューから構成される。
【0024】
図2及び図3に、光ピックアップ12の駆動機構の一例を示す。光ヘッド50は、ヘッドベース52の上面に保持される。ヘッドベース52は、光ディスク10の半径方向に平行に配置された丸棒形状の主ガイドバー58aと副ガイドバー58bとの間に設けられ、ヘッドベース52の一方の側面に形成された円形状のガイド孔54を主ガイドバー58aが貫通し、他方の側面に形成された半円形状のガイド部56に副ガイドバー58bが収まり、ガイドバー58a、58b上にスライド自在に支持される。
【0025】
主ガイドバー58aの近傍には、主ガイドバー58aに平行となるようにリードスクリュー60が設けられる。リードスクリュー60の外周面には螺旋溝60aが形成され、端部にはステッピングモータ61が取り付けられる。
【0026】
歯形成部材62は、図3に示すように、ヘッドベース52に取り付けられる結合部63と、主ガイドバー58aに擦動自在なスライド部64と、リードスクリュー60の螺旋溝60aに噛み合う歯72が形成された可動板66から構成される。下向きにガイド面を向けたスライド部64の一方側面の上端に結合部63が設けられ、他方側面の下端には屈曲部74を介して折り返すように可動板66が設けられる。歯形成部材62は、ヘッドベース52のガイド孔54上面に形成された開口(図示せず)をスライド部64で覆うように、かつ、可動板66がリードスクリュー60側に配置されるように、結合部63に形成されたネジ孔76にネジ68を締め付けることによりヘッドベース52に取り付けられる。これにより、ヘッドベース52のガイド孔54に貫通した主ガイドバー58aにスライド部64が擦動自在に接触する。
【0027】
可動板66は、下端が屈曲部74を介してスライド部64に一体形成され、上端が自由端になっている。可動板66の表面66aにはリードスクリュー60の螺旋溝60aと噛み合う2つの歯72が形成される。また、可動板66の裏面66bには突起78が形成され、スライド部64には突起78に向かって凸部80が形成される。突起78及び凸部80にはコイルスプリング70の両端がそれぞれ取り付けられる。
【0028】
ヘッドベース52を光ディスク10の半径方向に移動させる(シーク)際には、ステッピングモータ61を駆動しリードスクリュー60を回転させる。リードスクリュー60の螺旋溝60aと歯形成部材62の歯72とは噛合状態にあるから、歯形成部材62はリードスクリュー60の回転する動力を光ディスク10の半径方向への並進する動力に変換し、歯形成部材62が取り付けられたヘッドベース52は、リードスクリュー60と平行となるように設けられたガイドバー58a,58bをスライド移動する。
【0029】
図4に、リードスクリュー60の回転時の状態を表す側面図を示す。リードスクリュー60の回転方向が図中A方向である場合、リードスクリュー60の螺旋溝60aと歯72とが噛み合う結果、可動部66はコイルスプリング70に抗してヒンジ軸84を中心に裏面66b側へ回転する。すると、コイルスプリング70の弾性力により可動部66は相対的に強くリードスクリュー60に付勢されることとなるから、回転に必要なトルクが増大する。一方、リードスクリュー60の回転方向が図中Bである場合、可動部66は表面66a側へ回転するため、コイルスプリング70の付勢力が弱まり、回転に必要なトルクが減少する。リードスクリュー60の回転方向はシーク方向に対して一義的に決定されるから、シーク方向に応じて回転に必要なトルクが増大あるいは減少することになる。
【0030】
このように、シーク動作時のシーク方向に応じて必要トルクが変化し、本実施形態ではこの変化に着目し、光ピックアップ10を必要トルクが大きい方向にシークさせる際には駆動電流を増大させる一方、光ピックアップ10を必要トルクが小さい方向にシークさせる際には駆動電流を減少させる。光ピックアップ10を確実にシークさせるべく、必要トルクが大きい場合を基準としてステッピングモータの駆動電流を一律に設定することも可能であるが、そうすると必要トルクが小さい場合においては過剰な駆動電流を消費することになる。そこで、必要なトルクの大小に応じてステッピングモータの駆動電流も適応的に増減制御することで、消費電流を抑制することができる。
【0031】
一方、シーク動作中はスピンドルモータ12の駆動電流を抑制することが好適であるが、単に抑制するだけでは光ディスク10の回転数低下を招くおそれがある。そこで、必要なトルクが小さい場合にステッピングモータの駆動電流を減少させた分だけ、スピンドルモータ12の駆動電流の抑制量を低減する。これにより、光ディスク10の回転数低下を効果的に抑制する。
【0032】
図5に、本実施形態の処理フローチャートを示す。まず、シーク動作がない場合において、スピンドルモータ(SPM)の駆動電流と光ディスク10の回転数を制御する(S101)。すなわち、光ディスク10が所望の回転数となるようにスピンドルモータ(SPM)12の駆動電流を制御する。このとき、シーク電流、つまりスレッドモータ18(ステッピングモータとリードスクリューで構成される場合のステッピングモータ)の駆動電流は0である。
【0033】
次に、シーク開始命令があったか否かを判定する(S102)。シーク命令があった場合、システムコントローラ32は、当該シーク命令にかかるシーク方向がトルクが大きい方向(大きいトルクが必要な方向)であるか否かを判定する(S103)。大きいトルクが必要な方向である場合、システムコントローラ32は、シーク電流及びスピンドルモータ(SPM)12の駆動電流をトルク大用に設定する(S104)。また、シーク方向がトルクが大きい方向でない場合、シーク電流及びスピンドルモータ(SPM)12の駆動電流をトルク小用に設定する(S105)。
【0034】
例えば、シーク動作がない場合のスピンドルモータ(SPM)12の駆動電流を250mAとすると、シーク方向がトルク大の方向である場合にはスピンドルモータ(SPM)12の駆動電流を250mA(第1の回転駆動電流)から100mA(第2の回転駆動電流)に減少させるとともに、シーク電流を150mA(第1の移動駆動電流)に設定する。また、シーク方向がトルク小の方向である場合にはスピンドルモータ(SPM)12の駆動電流を250mA(第1の回転駆動電流)から100mA(第2の回転駆動電流)に減少させるとともに、シーク電流を150mA(第1の移動駆動電流)から100mA(第2の移動駆動電流)に減少させる。あるいは、第2の設定方法として、シーク方向がトルク小の方向である場合にはスピンドルモータ(SPM)12の駆動電流を250mA(第1の回転駆動電流)から150mA(第3の回転駆動電流)に減少させるとともに、シーク電流を150mA(第1の移動駆動電流)から100mA(第2の移動駆動電流)に減少させる。第2の設定方法では、スピンドルモータ(SPM)12の駆動電流が100mAではなく150mAと50mA分だけ増大している点に留意されたい。これは、シーク電流をトルク小に応じて150mAから100mAに減少させたことに伴い、この差分の50mAをスピンドルモータ(SPM)12の駆動電流に振り分けたものである。
【0035】
第2の設定方法において、シーク電流をトルク小に応じて150mAから100mAに減少させたことに伴い、この差分の50mAを全てスピンドルモータ(SPM)12の駆動電流に振り分けるのではなく、その一部のみを振り分けてもよい。例えば、50mAのうちの30mAだけを振り分けてスピンドルモータ(SPM)12の駆動電流を130mAに設定する等である。いずれの場合においても、駆動電流が100mAの場合に比べて駆動電流が増大し、その分だけ光ディスク10の回転数低下を抑制できる。
【0036】
以上のようにしてシーク方向に応じてシーク電流とスピンドルモータ(SPM)12の駆動電流を設定した後、シーク動作を開始する(S106)。シークが終了した後(S107)、再びS101以降の処理を繰り返す。
【0037】
本実施形態では、このようにシーク方向によって必要トルクが異なる場合、トルクが大きい方向の駆動電流とトルクが小さい方向の駆動電流を同一とせず、トルクが小さい方向の駆動電流をトルクに応じて減少させることで全体の消費電流を抑制する。通常、必要トルクに大小がある場合、トルクが大きい場合を基準として駆動電流を設定する(これを基準駆動電流とする)が、トルクが小さい場合において過剰駆動電流となって全体の消費電流が増大する。本実施形態では、トルクが小さい場合に基準駆動電流をそのまま維持するのではなく、基準駆動電流よりも減少させることで全体の消費電流を低減する。また、基準駆動電流よりも減少させた場合において、その減少分をスピンドルモータ(SPM)12の駆動電流に振り分けることで、全体の消費電流を抑制しつつ、光ディスク10の回転数低下を抑制できる。
【0038】
図6に、本実施形態の他の処理フローチャートを示す。この処理では、スレッドモータ18がリードスクリューとステッピングモータで構成されている場合において、脱調の有無に応じて駆動電流を変化させる場合である。
【0039】
まず、シーク動作がない場合において、スピンドルモータ(SPM)の駆動電流と光ディスク10の回転数を制御する(S201)。すなわち、光ディスク10が所望の回転数となるようにスピンドルモータ(SPM)12の駆動電流を制御する。このとき、シーク電流、つまりスレッドモータ18(ステッピングモータとリードスクリューで構成される場合のステッピングモータ)の駆動電流は0である。
【0040】
次に、システムコントローラ32は、脱調履歴の更新がないか否かを判定する(S202)。脱調履歴の更新がある場合(S202でNOと判定された場合)、設定値が変更済みか否かをさらに判定し(S203)、設定値が更新されていない場合には、トルク大、小それぞれの場合のシーク電流、スピンドルモータ(SPM)12の駆動電流を脱調履歴に応じて変更し、脱調履歴に応じて設定を変更済みであることをメモリに記録する(S204)。脱調履歴に応じた変更は、具体的には、シークする際に脱調が生じた場合に、そのシーク方向のシーク電流を所定量だけ増大させるものである。
【0041】
脱調履歴の更新がない場合、あるいは脱調履歴の更新があってこれに応じて設定値を変更済みの場合、次に、シーク開始命令があったか否かを判定し(S205)、シーク開始命令があればさらにトルク必要方向か否かを判定する(S206)。すなわち、当該シーク命令にかかるシーク方向がトルクが大きい方向(大きいトルクが必要な方向)であるか否かを判定する。大きいトルクが必要な方向である場合、システムコントローラ32は、シーク電流及びスピンドルモータ(SPM)12の駆動電流をトルク大用に設定する(S207)。また、シーク方向がトルクが大きい方向でない場合、シーク電流及びスピンドルモータ(SPM)12の駆動電流をトルク小用に設定する(S208)。
【0042】
例えば、シーク動作がない場合のスピンドルモータ(SPM)12の駆動電流を250mAとすると、シーク方向がトルク大の方向である場合にはスピンドルモータ(SPM)12の駆動電流を250mAから100mAに減少させるとともに、シーク電流を150mAに設定する。また、シーク方向がトルク小の方向である場合にはスピンドルモータ(SPM)12の駆動電流を250mAから100mAに減少させるとともに、シーク電流を150mAから100mAに減少させる。そして、シーク方向がトルク大の方向において脱調が生じた場合には、シーク方向がトルク大の方向ではスピンドルモータ(SPM)12の駆動電流を80mA(第4の回転駆動電流)に設定するとともに、シーク電流を170mA(第3の移動駆動電流)に増大設定する。また、シーク方向がトルク小の方向ではスピンドルモータ(SPM)12の駆動電流を100mAに設定するとともに、シーク電流を100mAに設定する。シーク方向がトルク小の方向で脱調が生じていない場合には、シーク電流を100mAからさらに80mAに減少させ、その差分の20mAをスピンドルモータ(SPM)12の駆動電流に振り分けて120mAに増大してもよい。
【0043】
このようにして設定した設定値でシーク動作を行い、シークが終了したか否かを判定する(S210)。そして、シーク動作中に脱調が生じた場合には(S211)、脱調履歴を更新する(S212)。脱調履歴が更新されると、上記のS202で更新ありと判定され、更新された新たな脱調履歴に応じて再び設定値が変更される(S204)。
【0044】
脱調は、必要なトルクが大きい場合に生じ得る。このように、脱調の履歴に応じ、脱調が生じたシーク方向について駆動電流を増大することで、以後の脱調の発生を抑制することができる。光ディスク装置を鉛直方向に配置し、シーク方向が鉛直上方の場合に脱調が生じ易い場合に効果的であろう。
【0045】
本実施形態では、シーク方向に応じてシーク電流とスピンドルモータ(SPM)12の駆動電流を増減調整しているが、シーク方向に応じてシーク電流の上限値とスピンドルモータ(SPM)12の駆動電流の上限値をそれぞれ増減調整してもよい。具体的には、シーク動作がない場合のスピンドルモータ(SPM)12の駆動電流の上限値を250mAとすると、シーク方向がトルク大の方向である場合にはスピンドルモータ(SPM)12の駆動電流の上限値を250mAから100mAに減少させるとともに、シーク電流の上限値を150mAに設定する。また、シーク方向がトルク小の方向である場合にはスピンドルモータ(SPM)12の駆動電流の上限値を250mAから100mAに減少させるとともに、シーク電流の上限値を150mAから100mAに減少させる。あるいは、第2の設定方法として、シーク方向がトルク小の方向である場合にはスピンドルモータ(SPM)12の駆動電流の上限値を250mAから150mAに減少させるとともに、シーク電流の上限値を150mAから100mAに減少させる。
【0046】
本実施形態では、図2〜図4に示すシーク構造を例示したが、本発明はこれに限定されるものでないことはいうまでもなく、シーク方向により必要トルクが変化し得る任意の構造に適用できる。
【0047】
さらに、本実施形態ではホストにUSB接続される光ディスク装置を例示したが、本発明はこれに限定されるものではなく、駆動電流あるいは消費電流の上限値が制限される任意の光ディスク装置に適用できる。
【符号の説明】
【0048】
10 光ディスク、12 スピンドルモータ(SPM)、16 光ピックアップ、18 スレッドモータ、32 システムコントローラ、50 光ヘッド、60 リードスクリュー、61 ステッピングモータ、66 可動板、72 歯。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光ディスクにデータの記録あるいは再生を行う光ディスク装置であって、
前記光ディスクを回転駆動する回転駆動手段と、
前記光ディスクの半径方向に沿って光ピックアップを移動駆動する移動駆動手段と、
前記移動駆動手段が前記光ピックアップを駆動していない場合に前記回転駆動手段は第1の回転駆動電流で前記光ディスクを回転駆動し、前記移動駆動手段が前記光ピックアップを第1の方向に駆動する場合に前記回転駆動手段の回転駆動電流を前記第1の回転駆動電流よりも小さい第2の回転駆動電流まで減少させるとともに前記移動駆動手段の移動駆動電流を第1の移動駆動電流とし、前記移動駆動手段が前記光ピックアップを前記第1の方向と反対方向であって前記第1の方向よりも必要駆動トルクの小さい第2の方向に駆動する場合に前記回転駆動手段の回転駆動電流を前記第2の回転駆動電流とするとともに前記移動駆動手段の移動駆動電流を前記第1の移動駆動電流よりも小さい第2の移動駆動電流とする制御手段と、
を有することを特徴とする光ディスク装置。
【請求項2】
請求項1記載の装置において、
前記制御手段は、前記移動駆動手段が前記光ピックアップを前記第2の方向に駆動する場合に前記回転駆動手段の回転駆動電流を前記第2の回転駆動電流よりも大きく前記第1の回転駆動電流よりも小さい第3の回転駆動電流とするとともに前記移動駆動手段の移動駆動電流を前記第2の移動駆動電流とすることを特徴とする光ディスク装置。
【請求項3】
請求項2記載の装置において、
前記第3の回転駆動電流は、前記第2の回転駆動電流に、前記第1の移動駆動電流と前記第2の移動駆動電流との差分量を加算したものであることを特徴とする光ディスク装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかにおいて、さらに、
前記移動駆動手段の脱調を検出する脱調検出手段
を有し、
前記制御手段は、前記脱調検出手段で前記脱調が検出された場合に、前記第1の移動駆動電流、前記第2の移動駆動電流、前記第2の回転駆動電流、前記第3の回転駆動電流の少なくともいずれかを変更することを特徴とする光ディスク装置。
【請求項5】
請求項4記載の装置において、
前記制御手段は、前記移動駆動手段が前記光ピックアップを前記第1の方向に駆動する場合において前記脱調検出手段で前記脱調を検出したときに、前記回転駆動手段の回転駆動電流を前記第2の回転駆動電流よりも小さい第4の回転駆動電流とするとともに前記移動駆動手段の移動駆動電流を第1の移動駆動電流よりも大きい第3の移動駆動電流とすることを特徴とする光ディスク装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−28820(P2011−28820A)
【公開日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−176322(P2009−176322)
【出願日】平成21年7月29日(2009.7.29)
【出願人】(000003676)ティアック株式会社 (339)
【Fターム(参考)】