説明

光ピックアップ装置

【課題】再生信号から得られる指標値が所定範囲内にあり、複数種類の光ディスクの記録再生を良好にする光ピックアップ装置を提供する。
【解決手段】対物レンズ駆動部は、2つの対物レンズ14、15を保持するレンズホルダ18と、レンズホルダ18を支持し、2つの対物レンズ14、15のいずれか一方の光軸と一致するすり鉢状の開口部が形成されたホルダベース16と、ホルダベース16の下面にすり鉢状の開口部に沿って傾動可能に取り付けられ、レンズホルダ18側と反対側にいずれか一方の対物レンズ14、15が傾くことによって生じるコマ収差及び記録再生光の色収差を補正する色収差補正素子33を収納可能な凹部が形成されたホルダ30とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザ光の使用波長の異なる複数種類の光ディスクに対して情報を記録又は情報の再生を行う際に、指標値が所定の範囲内にあり、複数種類の光ディスクの記録再生を良好にする光ピックアップ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
各種の規格化された光ディスクが存在しており、これらの光ディスクは、1台の光ディスク装置で記録再生を行うことが要求されている。
この要求に対応するために、2つの対物レンズを搭載した光ピックアップ装置や2系統の光学系を搭載した光ピックアップ装置を備えた光ディスク装置が提案されてきた。
特許文献1には、2つの対物レンズを搭載した光ピックアップ装置について記載されている。
特許文献1に記載の光ピックアップ装置は、移動ベースとこの移動ベース上に固定された対物レンズ駆動部とを有している。移動ベースは、この両端部に設けられた一対の軸受部がそれぞれ一対のガイド軸に摺動自在に支持されている。一対のガイド軸は、光ディスクの半径方向に固定されている。対物レンズ駆動部は、移動ベースに固定された固定ブロックと、フォーカシング方向、トラッキング方向及びチルト方向へ動作されると共に2つの対物レンズを保持する可動ホルダーと、固定ブロックと可動ホルダーとを連結する支持バネと、2つの対物レンズと固定ブロックとの間に配置され、フォーカシング方向、トラッキング方向又はチルト方向への動作に通電される駆動コイルとを備えているものである。
光ディスクとしては、DVD(Digital Versatile Disc)、CD(Compact Disc)、BD(Blu−Ray Disc)、AOD(Advanced Optical Disc)が用いられる。
【特許文献1】特開2005−302164号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、一方の対物レンズをCD用とし、他方の対物レンズをDVD用とし、対物レンズ駆動部が微小に傾いて移動ベースに固定された場合には、CD用の対物レンズのコマ収差は許容されるが、DVD用の対物レンズのコマ収差は許容されず、CDは問題なく記録再生できるのに対して、DVDはジッタ値が悪く良好な記録再生ができないといった問題を生じていた。
また、記録密度が近接した2つの異なる規格の光ディスクの記録再生を行う場合には、一方の光ディスクの記録再生を良好に行うために、対物レンズ駆動部を移動ベース上に固定すると、他方の光ディスク用の対物レンズのコマ収差は許容されないため、他方の光ディスクはジッタ値が悪く良好な記録再生ができないといった問題も生じていた。
【0004】
更に、光ディスクとして、HD−DVD(High Density−Digital Versatile Disc)を用いた場合には、HD−DVD規格では、再生信号から得られる振幅情報を特殊処理して得られたPRSNR(Partial Response Signal to Noise Ratio)値等の指標値が所定範囲内にあり、光ディスクの記録再生を良好に行える対物レンズ駆動部を移動べース上に固定することが必要とされている。
このため、一方の対物レンズをHD−DVD用とし、他方の対物レンズをBD用とした場合に、対物レンズ駆動部が移動ベースに対して光学的にフラットになるように固定されたとしても、HD−DVD規格を満たす記録再生信号を得ることはできなかった。
【0005】
そこで、本発明は、上記のような問題点を解消するもので、再生信号から得られる指標値が所定範囲内にあり、複数種類の光ディスクの記録再生を良好にする光ピックアップ装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記の目的を達成するために、以下の構成よりなる。
すなわち、
(1)光ディスクの半径方向に固定された一対のガイドシャフト上を摺動可能な移動ベースと、前記移動ベース上に載置された対物レンズ駆動部とを備えた光ピックアップ装置において、
前記対物レンズ駆動部は、
前記光ディスクに記録再生光を集光する2つの対物レンズを保持するレンズホルダと、
前記レンズホルダを支持し、前記2つの対物レンズのいずれか一方の光軸と一致するすり鉢状の開口部が形成されたホルダベースと、
前記ホルダベースの下面に前記すり鉢状の開口部に沿って傾動可能に取り付けられ、前記レンズホルダ側と反対側に前記いずれか一方の対物レンズが傾くことによって生じるコマ収差及び前記記録再生光の色収差を補正する色収差補正素子を収納可能な凹部が形成されたホルダとを備えたことを特徴とする光ピックアップ装置。
(2)前記ホルダは、前記ホルダベースに一端が固定されたスプリングと調整ネジとで前記ホルダベースに取り付けられていることを特徴とする(1)記載の光ピックアップ装置。
【発明の効果】
【0007】
本発明は、上記構成によって、再生信号から得られる指標値が所定範囲内にあり、複数種類の光ディスクの記録再生を良好にすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下に、本発明の実施形態に係る光ピックアップ装置について、図1〜図6を用いて説明する。
図1は、本発明の実施形態に係る光ピックアップ装置を光ディスク側から見た図である。
図2は、本発明の実施形態に係る光ピックアップ装置の斜視図である。
図3は、対物駆動部の具体的構成を示す図である。
図4は、光ピックアップ装置の特徴部を示す斜視図である。
図5は、ベース及びホルダの断面図である。
図6は、ベースに対してホルダを傾斜させた状態を示す断面図である。
【0009】
図1及び図2に示すように、本発明の実施形態に係る光ピックアップ装置1は、移動ベース2上に対物レンズ駆動部3と、第1のデバイス4と、第2のデバイス5と、偏光ビームスプリッタ6と、レンズ7と、立ち上げプリズム8と、立ち上げミラー9とが配置された構成を有する。
移動ベース2の両端部に設けられた軸受部10、10は、それぞれ一対のガイドシャフト11、11に摺動自在に支持されている。一対のガイドシャフト11、11は、光ディスクDの半径方向に配置され、光ピックアップ装置1は、一対のガイドシャフト11、11上で光ディスクDの半径方向に可動できる。
この光ピックアップ装置1は、初期状態では、光ディスク装置のスピンドルモータ12の回転軸12Aに直結したターンテーブル13の近傍に配置され、回転軸12Aと対物レンズ14の中心とを結ぶ直線は、半径方向に一致した方向にある。
【0010】
図2に示すように、第1のデバイス4は、P偏光の第1のレーザ光を出射する第1のレーザ素子(不図示)とこの第1のレーザ光が光ディスクDで反射されて戻ってきた戻り光を検出する第1の光検出器(不図示)とが一体化された構成である。
第1のデバイス5は、S偏光の第2のレーザ光を出射する第2のレーザ素子(不図示)とこの第2のレーザ光が光ディスクDで反射されて戻ってきた戻り光を検出する第2の光検出器(不図示)が一体化された構成である。
偏光ビームスプリッタ6は、P偏光の第1のレーザ光を透過し、S偏光の第2のレーザ光を反射する偏光分離膜6Aを有する。
レンズ7は、偏光ビームスプリッタ6から出射した第1或いは第2のレーザ光を集光する。
立ち上げプリズム8は、偏光ビームスプリッタ6から出射した第1のレーザ光を垂直上方に反射させる一方、第2のレーザ光を透過させる。対物レンズ14は、立ち上げプリズム8で反射された第1のレーザ光を光ディスクDに集光する。立ち上げミラー9は、偏光ビームスプリッタ6を透過した第2のレーザ光を垂直上方に反射させる。対物レンズ15は、立ち上げミラー9で反射された第2のレーザ光を光ディスクDに集光する。
【0011】
図3に示すように、対物レンズ駆動部3は、ホルダベース16の一端を折り曲げて形成された側面に接着された固定部17と、ホルダベース16上面に固定され、第1、第2のデバイス4、5から出射する第1、第2のレーザ光を光ディスクDに集光する2つの対物レンズ14、15を載置する上面18A及び固定部17に対向し、2つの対物レンズ14、15を2分する方向に突き出た一対の突起部19A、19Bが形成された側面18B、18Bを有するレンズホルダ18と、一対の突起部19A、19Bと固定部17との間に固定された一対のサスペンションワイヤ20、20とから構成されている。一対のサスペンションワイヤ20、20は、それぞれ3本ずつの金属線からなり、電流の通電が可能である。
レンズホルダ18の側面18Bに直交する両側面18C、18Dには、フォーカシングコイル21、トラッキングコイル22及びチルトコイル23が形成されている。各コイルが形成された両側面18C、18D側には、一対のマグネット24、25と、この一対のマグネット24、25に密着した一対のヨーク26、27とがそれぞれ側面18C、18D側から順に形成されている。
【0012】
更に、図4及び図5に示すように、ホルダベース16は、下方に向かって孔径が広くなったすり鉢状の開口部28とその厚さ方向に貫通するネジ孔29とを有している。ホルダ30は、ホルダベース16の開口部28の径よりも若干広い径の底部30Aと、この底部30Aに連続し、すり鉢状の開口部28に摺接する傾斜面30Bと、傾斜面30Bに連続してホルダベース16の下面に接する直線部30Cと、直線部30Cに形成されたネジ孔29と同径のネジ孔30Dと、底部30Aと反対側の面に形成されたすり鉢状の開口部28よりも広い凹部30Eとを有している。
開口部28と凹部30Eとは、それらの中心軸が対物レンズ15の光軸と一致するように形成されている。
【0013】
ホルダ30は、ネジ孔30Dからホルダベース16のネジ孔29に調整ネジ31、31をねじ込んでホルダベース16に調整固定されている。
更に、スプリング32は、一端がホルダベース16上に固定され、他端がホルダ30の直線部30Cの突起部30Fをホルダベース16側に押し付けるように接触している。
ホルダ30の凹部30Eには、対物レンズ15を含めた構成光学部品全体のコマ収差及び色収差を補正する色収差補正素子33が固定されている。
また、レンズホルダ18の下部には、第1のレーザ光の波長によってその第1のレーザ光を絞ることができる波長選択性フィルタ34が対物レンズ14の光軸と一致するように取り付けられている。
【0014】
次に、この光ピックアップ装置1の動作について説明する。
ここでは、第1のレーザ光は、BD用レーザ光であり、第2のレーザ光は、HD−DVD用レーザ光であり、対物レンズ14は、第1のレーザ光が入射或いは出射し、対物レンズ15は、第2のレーザ光が入射或いは出射するものとする。
また、対物レンズ駆動部3は、BD用の光ディスクDに対してコマ収差を生じないように調整されて固定されているものとする。
まずは、光ディスクDにHD−DVD用を用いた場合の再生の場合について説明する。
図1に示すように、ターンテーブル13上に光ディスクDを載置した後、回転させる。図2に示すように、第2のデバイス5の第2のレーザ素子からS偏光の第2のレーザ光を出射させ、偏光ビームスプリッタ6の偏光分離膜6Aで反射させ、レンズ7により立ち上げプリズム8を介して立ち上げミラー9に集光させ、この立ち上げミラー9で反射させた後、対物レンズ駆動部3の対物レンズ15で光ディスクDの情報トラックに照射する。
【0015】
光ディスクDの情報トラックで反射された戻り光は、対物レンズ15を介して立ち上げミラー9で反射され、立ち上げプリズム8、レンズ7、偏光ビームスプリッタ6の偏光分離膜6Aで反射した後、第2のデバイス5の第2の光検出器で検知される。この第2の光検知器で検知された情報信号は、図示しない処理回路により処理されて、再生信号が得られる。光ディスクDの情報は、光ピックアップ装置1を一対のガイドシャフト11、11に沿って摺動させながら、上記動作を順次行って再生できる。
【0016】
フォーカス制御、トラッキング制御及びチルト制御は、図示しない処理回路により処理された処理信号をフォーカシングコイル21、トラッキングコイル22及びチルトコイル23に電流を流し、これによって生じる磁界と一対のマグネット24、25が形成する磁界との相互作用により行う。
この際に、コマ収差は、対物レンズ駆動部3の傾きや対物レンズ15の傾きにより発生するが、ホルダベース16に固定されたスプリング32、調整ネジ31、31により、ホルダベース16のすり鉢状の開口部28に底部30Aを摺接させて、図6に示すように対物レンズ駆動部3の傾きを調整し、再生信号の時間差歪(ジッタ)やPRSNR値等の指標値が最良な状態になるようにすることにより、コマ収差を解消することができる。
【0017】
光ディスクDへの情報の記録は、第1のレーザ光を図示しない変調回路により変調した後、前記したと同様に行って光ディスクDの情報記録層に記録する。
【0018】
以上のように、本発明の実施の形態によれば、スプリング32、調整ネジ31、31により、ホルダベース16のすり鉢状の開口部28に底部30Aを摺接させて、対物レンズ駆動部3の傾きを調整するので、光ディスクDから得られる再生信号の時間差ひずみやPRSNR値等の指標値が最良にするようにできるため、複数種類の光ディスクの記録再生を良好にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の実施形態に係る光ピックアップ装置を光ディスク側から見た図である。
【図2】本発明の実施形態に係る光ピックアップ装置の斜視図である。
【図3】対物駆動部の具体的構成を示す図である。
【図4】光ピックアップ装置の特徴部を示す斜視図である。
【図5】ベース及びホルダの断面図である。
【図6】ベースに対してホルダを傾斜させた状態を示す断面図である。
【符号の説明】
【0020】
1…光ピックアップ装置、2…移動ベース、3…対物レンズ駆動部、4…第1のデバイス、5…第2のデバイス、6…偏光ビームスプリッタ、7…レンズ、8…立ち上げプリズム、9…立ち上げミラー、10…軸受部、11…ガイドシャフト、12…スピンドルモータ、12…回転軸、13…ターンテーブル、14、15…対物レンズ、16…ホルダベース、17…固定部、18…レンズホルダ、19A、19B…突起部、20…サスペンションワイヤ、21…フォーカシングコイル、22…トラッキングコイル、23…チルトコイル、24、25…マグネット、26、27…ヨーク、28…開口部、29…ネジ孔、30…ホルダ、30A…底部、30B…傾斜面、30C…直線部、ネジ孔…30D、30E…凹部、31…調整ネジ、32…スプリング、33…色収差補正素子、34…波長選択性フィルタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
装着される光ディスクの半径方向に固定された一対のガイドシャフト上を摺動可能な移動ベースと、前記移動ベース上に載置された対物レンズ駆動部とを備えた光ピックアップ装置において、
前記対物レンズ駆動部は、
前記光ディスクに記録再生光を集光する2つの対物レンズを保持するレンズホルダと、
前記レンズホルダを支持し、前記2つの対物レンズのいずれか一方の光軸と一致するすり鉢状の開口部が形成されたホルダベースと、
前記ホルダベースの下面に前記すり鉢状の開口部に沿って傾動可能に取り付けられ、前記レンズホルダ側と反対側に前記いずれか一方の対物レンズが傾くことによって生じるコマ収差及び前記記録再生光の色収差を補正する色収差補正素子を収納可能な凹部が形成されたホルダとを備えたことを特徴とする光ピックアップ装置。
【請求項2】
前記ホルダは、前記ホルダベースに一端が固定されたスプリングと調整ネジとで前記ホルダベースに取り付けられていることを特徴とする請求項1記載の光ピックアップ装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2009−70440(P2009−70440A)
【公開日】平成21年4月2日(2009.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−235363(P2007−235363)
【出願日】平成19年9月11日(2007.9.11)
【出願人】(000004329)日本ビクター株式会社 (3,896)
【Fターム(参考)】