説明

光ファイバの接続構造

【課題】光ファイバの保護チューブを接着固定して抜けにくくする、光ファイバの接続構造を提供する。
【解決手段】光源からの光を導光する光ファイバの先端部を、該光ファイバにより導光された照明光を観察対象物に照射する光学ユニットに、基板を介して接続するための光ファイバと光学ユニットの接続構造において、光ファイバの先端部は長手方向にわたり中空状の保護管によって被覆され、保護管は基板に設けられた貫通穴を通って光学ユニット内に至っており、保護管の先端部は中空状のジョイントチューブによって被覆固定され、ジョイントチューブの先端部は貫通穴に嵌め込み固定され、保護チューブの先端部の内周面はジョイントチューブの外周面に圧入された状態で固定され、保護チューブの先端部の外周面と基板とは接着固定されていることを特徴とする光ファイバと光学ユニットの接続構造を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光ファイバの接続構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年では、医師が患者の体腔内を観察する手段として、共焦点レーザを用いた走査型内視鏡を使用した検査が行われている。このような内視鏡としては、特許文献1のような構造が用いられている。この共焦点レーザ走査型内視鏡では、ビデオプロセッサの光源からの照明光が、光ファイバによって内視鏡挿入部の先端部に設けられた光学ヘッドに導かれ、対物レンズにより観察対象物に集光される。光学ヘッドには観察対象物を走査するための走査装置が組み込まれている。走査装置は、2つの歯部を有するフォーク、歯部を振動させるドライブコイルを備える。2つの歯部には一方にXドライブコイル、他方にYドライブコイルが設けられている。これらのドライブコイルにより各歯部が互いに直交する方向に振動して、照明光による観察対象物の走査を行う。観察対象物から反射した光は、対物レンズに入射し、光ファイバによって共焦点的に受光されて、後段の光検出器等を経由して観察画像が生成される。
【0003】
図1(a)および(b)に、光ファイバと光学ヘッドの接続箇所における概略構造を示す。図1(b)は、図1(a)における光学ヘッド、光ファイバ、および保護チューブの断面を示す図である。光ファイバ5は、ビデオプロセッサ側の基端部から光学ヘッド3との接続箇所に至るまで保護チューブ1によって保護されている。保護チューブ1については、光ファイバ5のコア材の曲げ可能な範囲においてしわが発生したり、折れたりすることなく、コア材に合わせて湾曲することが可能な弾性率を有し、コア材よりも光の屈折率が小さく、さらに、耐薬品性や耐熱性が高く、かつ加工が容易でチューブ内周面を平滑にすることが可能なことなどが必要となる点を考慮し、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)やポリ塩化ビニル等の電気絶縁性や耐食性に優れた素材からなる中空円筒形状の部材として形成するのがよい。また、保護チューブ1は、屈曲時等に座屈しない程度の厚みを持たせて形成されている。光ファイバ5を覆う保護チューブ1は、その先端部が基板2に設けられた貫通穴の大径部2aに嵌め込まれている。基板2には、歯部の振動を制御するためのオペアンプや抵抗、コンデンサ等が設けられる。
【0004】
図2に、図1(a)および(b)における保護チューブ1や光ファイバ5と光学ヘッド3との接続箇所の拡大図を示す。当該接続箇所においては保護チューブ1と光ファイバ5との間に、外径が保護チューブ1の内径よりも小さく、内径が光ファイバ5の外径よりも大きい長尺な中空円筒形状の保護管4を設ける。保護管4には光ファイバ5が挿し通されている。また、保護管4の先端側は、基板2の貫通穴の小径部2bを通るように設けられ、基端側は、図1(b)に示すように、基板2から離れた位置まで光ファイバ5を保護すべく被覆されている。保護管4は貫通穴の小径部2bの内周面と接着剤によって固定されている。また、保護チューブ1の先端部が基板2の貫通穴の大径部2aに嵌め込まれた状態で、保護チューブ1の外周部と基板2の表面に接着剤6が盛られ、保護チューブ1および基板2が接着固定される。このように、保護チューブ1と保護管4によって光ファイバ5を二重に保護し、保護チューブ1と基板2を固定して、光ファイバ5を光学ヘッド3内に導く。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−514970号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところが、上記のような接続箇所の構成では、保護チューブ1の外径を基板2の貫通穴の大径部2aに嵌め込んで接着剤6により接着固定しただけであるため、接着強度が十分でない場合もあり構造的に抜けやすい。このため、保護チューブ1が接続箇所から抜けて、保護管4のみによって被覆された光ファイバ5が剥き出しになり、外力が加わることにより簡単にファイバ表面に傷が付いたり、ファイバが折れてしまったりする等のリスクがあった。
【0007】
そこで、本発明は上記に鑑みてなされたものである。本発明の目的は、光ファイバ5と基板2との接続箇所において基板に接着固定された保護チューブが抜けてしまうリスクを低減し、より強固な固定を可能とし、さらに光ファイバが折れないように保護を強化することが可能な光ファイバの接続構造を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る光ファイバの接続構造は、光源からの光を導光する長尺の光ファイバの先端部を、該光ファイバにより導光された照明光を観察対象物に照射する光学ユニットに、基板を介して直接的あるいは間接的に接続するための光ファイバと光学ユニットとの接続構造であって、光ファイバの先端部は、長手方向にわたり中空状の保護管によって被覆されており、保護管は、基板に設けられた貫通穴を通って、光学ユニット内に至っており、保護管の先端部は、中空状のジョイントチューブによって被覆固定され、ジョイントチューブの先端部は、貫通穴に嵌め込み固定されており、光ファイバをその全長にわたって被覆する保護チューブの先端部の内周面は、ジョイントチューブの外周面に圧入された状態で固定され、該保護チューブの先端部の外周面と基板とは接着剤にて接着固定されている。
【0009】
好ましくは、貫通穴を通る保護管の外周面の一部と該貫通穴の内周面の一部とは接着固定されている。また、貫通穴は、大径部と小径部とを有し、該大径部と該小径部とは繋がっていて、該大径部には、ジョイントチューブの先端部が嵌め込み固定され、該小径部には、保護管の外周面の一部が接着固定される。さらに、ジョイントチューブは、保護チューブが挿入される端部の外周面がテーパ状である。
【0010】
また、保護チューブ、前記保護管、前記ジョイントチューブの硬度をそれぞれHa,Hb,Hcとすると、以下の式(1)が成り立つ。
Hc>Hb>Ha・・・(1)
【0011】
さらに好ましくは、保護チューブにおいて、接着剤が塗布される外周面に全周にわたって溝が形成されている。また、当該溝が螺旋状に形成されている。そして、基板は光学ユニットの一端に設けられている。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係る光ファイバの接続構造によれば、光ファイバを保護する保護チューブの抜け止めをより確実に行うとともに、光ファイバが折れないように光ファイバの保護を強化することができる。また、光ファイバを照明部に接続する際に光ファイバが貫通する照明部の基板に対して、保護チューブ、保護管、ジョイントチューブ等の各部材を基板に対して一体的に接着固定し、さらに強固な固定を実現しつつ接続箇所における光ファイバの保護も強化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】(a)は従来の光ファイバの接続構造の概略を示す斜視図であり、(b)はその断面斜視図である。
【図2】従来の光ファイバの接続構造の拡大断面図である。
【図3】(a)は、本発明の第1の実施形態における光ファイバの接続構造の概略を示す斜視図であり、(b)はその断面斜視図である。
【図4】本発明の第1の実施形態における光ファイバの接続構造の拡大断面図である。
【図5】本発明の第2の実施形態における光ファイバの接続構造の拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明に係る光ファイバの接続構造について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、複数の図にまたがって同じ部材を示す場合は同じ番号を付すこととする。
【0015】
図3(a)および(b)に、本発明の第1の実施形態における光学ヘッドと光ファイバとの接続箇所における光ファイバの接続構造の概略を示す。図3(a)は、保護チューブ1、基板2、および光学ヘッド3の外観を示す図であり、図3(b)は、図3(a)のファイバの接続構造の断面を示す斜視図である。光ファイバ5は、ビデオプロセッサの光源(図示せず)からの照明光を光学ヘッド3の射出端まで導くように、ビデオプロセッサ側にその基端部が配置され、該基端部から延伸した光ファイバ5の先端部は、光学ヘッド3内の射出端まで延びている。長尺な光ファイバ5は、その長手方向すべてにわたって保護チューブ1により被覆されており、保護チューブ1は、光ファイバ5と同様にビデオプロセッサ側の基端部から延びて、その先端が光学ヘッド3の一端に配置された基板2に当接している。なお、本発明の実施形態においては、ビデオプロセッサ側を基端側、光学ヘッド3側を先端側と表現している。
【0016】
図4は、本実施形態における光ファイバ5と光学ヘッド3との接続箇所における光ファイバ5の接続構造を示すものであり、保護チューブ1、光学ヘッド3、光ファイバ5等の接続関係を示す拡大図である。光ファイバ5の先端側は、内径が光ファイバ5の外径よりも大きい長尺の中空円筒形状の保護管4に挿し通されている。光ファイバ5および保護管4の先端部は、光学ヘッド3の一端に配置された基板2の貫通穴の小径部2dを貫通し、光学ヘッド3内に延びている。また、保護管4の外周面は、この貫通穴の小径部2dの内周面と接着剤によって接着固定される。なお、光ファイバ5は保護管4に挿し通されているだけであり、接着固定はされていない。
【0017】
中空円筒形状のジョイントチューブ7は、保護チューブ1の先端部と保護管4の先端側との間に挿入されており、該ジョイントチューブ7には保護管4および光ファイバ5が挿し通されている。また、ジョイントチューブ7の内周面と保護管4の外周面の嵌合箇所は、接着剤によって接着固定されている。さらに、ジョイントチューブ7の先端部は、基板2に設けられた貫通穴の大径部2cに嵌め込まれて接着剤によって接着固定されている。そして、ジョイントチューブ7の外周面には保護チューブ1の先端部の内周面が圧入して接続され、ジョイントチューブ7の外周面と保護チューブ1の内周面が接着剤にて接着固定される。ジョイントチューブ7のビデオプロセッサ側の基端部は外周の形状がテーパ状になっており、保護チューブ1の内周面を圧入状態でジョイントチューブ7の外周面に挿入しやすくなっている。保護チューブ1は基板2に当接して設けられており、保護チューブ1の外周面と基板2の表面には接着剤6が盛られて互いに接着固定されている。
【0018】
したがって、ジョイントチューブ7は、基板2に固定され、さらに保護チューブ1および保護管4と互いに固定される。このため、従来は、保護チューブ1および保護管4をそれぞれ独立して基板2に接着固定していたが、ジョイントチューブ7を設けることにより、保護チューブ1、保護管4、およびジョイントチューブ7を一体的に基板2に固定することができるため、基板2に対してより強固に固定を行うことができる。さらに、保護チューブ1に対してはジョイントチューブ7の外周面と接する面積だけ、また保護管4に対してはジョイントチューブ7の内周面と接する面積だけ、それぞれ接着面積を増やすことができる。そして、保護チューブ1は、ジョイントチューブ7に圧入状態で挿入されるため、ジョイントチューブ7への固定がより強固になり、かつ接続箇所から抜けにくくなる。また、このように保護管4とジョイントチューブ7を用いて光ファイバ5を保護することにより、光ファイバ5が屈曲したときに接続箇所に曲げモーメントが発生して光ファイバ5が折れないようにすることができる。
【0019】
図5は、本発明の第2の実施形態におけるファイバの接続構造の概略を示す図である。図5は、第1の実施形態の図4に対応する拡大図である。本実施形態においては、保護チューブ10の先端部の外周面形状以外は、第1の実施形態と同じ構成であり、ここではそれらの構成については説明を省略する。保護チューブ10の先端部の外周面には、螺旋状の溝が形成されており、さらにその上に接着剤6が盛られて保護チューブ10の先端部と基板2とが接着固定されている。したがって、この螺旋構造により、保護チューブ10と接着剤6との接着面積を増やし、かつ保護チューブ10を接着剤6に対して係合させて抜け止めされた状態にすることができる。
【0020】
次に、本発明に係る光学ヘッド3と光ファイバ5との接続箇所における接続構造を構成する各部材の関係について説明する。保護チューブ1および10には、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)やポリ塩化ビニル等の電気絶縁性や耐食性に優れた素材が用いられる。また、保護管4には、ポリイミド、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、エチレン―テトラフルオロエチレンコポリマ(ETFE)等の電気絶縁性や耐食性、機械的強度、耐疲労性に優れた素材が用いられる。そして、ジョイントチューブ7には、金属やポリフェニレンオキサイド樹脂、アクリロニトリルブタジエンスチレン(ABS)樹脂、ポリカーボネート(PC)等の耐摩耗性、降伏強さ、弾性率等に優れた素材が用いられる。
【0021】
保護チューブ1および10と、保護管4と、ジョイントチューブ7の硬度をそれぞれHa,Hb,Hcとすると、Hc>Hb>Haとする。また、保護チューブ1および10と、保護管4と、ジョイントチューブ7の長手方向の長さをそれぞれLa,Lb,Lcとすると、La>Lb>Lcとする。このように各部材の硬度と長さを設定することにより、内視鏡挿入部を湾曲させる際に、保護チューブ1、保護管4、ジョイントチューブ7、および光ファイバ5と基板2との接続箇所近傍における屈曲を避けて各部材の接着強度を維持しつつ保護チューブ1の抜け止めを実現することができる。
【0022】
また、基板2には小型化のため積層回路基板が用いられており、基板2上にはいずれも図示しないオペアンプや抵抗、コンデンサ等が設けられている。そのため、基板2に設ける貫通穴はできるだけ小さい面積である方が好適である。したがって、本発明によれば、保護チューブよりも外径の小さいジョイントチューブを嵌め込むための貫通穴の大径部を設ければよいため、該貫通穴を従来よりも小さい面積で設けることができる。
【0023】
以上が本発明の実施形態に関する説明である。なお、ジョイントチューブの表面に荒らし加工を施して他の部材との接着力を高めるようにしてもよい。また、上記の説明では、保護チューブの外周面に螺旋状の溝を設けているが、円環状の溝や返し等を設けるといった他の構造を採用して保護チューブの抜け止めを防止するようにしてもよい。さらに、光ファイバを光学ヘッドに直接的に接続する構成として、基板の代わりに光学ヘッドの筐体を用いる構成や、光ファイバを光学ヘッドに間接的に接続する構成として、仕切り部材等の光学ヘッド以外の部材に上記構成を用いて光ファイバを挿し通す構成も可能である。この場合も、ジョイントチューブを嵌め込むための貫通穴の面積はできるだけ小さい方が好ましい。
【符号の説明】
【0024】
1,10 保護チューブ
2 基板
2a,2c 貫通穴の大径部
2b,2d 貫通穴の小径部
3 光学ヘッド
4 保護管
5 光ファイバ
6 接着剤
7 ジョイントチューブ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光源からの光を導光する長尺の光ファイバの先端部を、該光ファイバにより導光された照明光を観察対象物に照射する光学ユニットに、基板を介して直接的あるいは間接的に接続する光ファイバと光学ユニットとの接続構造であって、
前記光ファイバの先端部は、長手方向にわたり中空状の保護管によって被覆されており、
前記保護管は、前記基板に設けられた貫通穴を通って、前記光学ユニット内に至っており、
前記保護管の先端部は、中空状のジョイントチューブによって被覆固定され、
前記ジョイントチューブの先端部は、前記貫通穴に嵌め込み固定されており、
前記光ファイバをその全長にわたって被覆する保護チューブの先端部の内周面は、前記ジョイントチューブの外周面に圧入された状態で固定され、該保護チューブの先端部の外周面と前記基板とは接着剤にて接着固定されている、
ことを特徴とする光ファイバと光学ユニットとの接続構造。
【請求項2】
前記貫通穴を通る前記保護管の外周面の一部と該貫通穴の内周面の一部とは接着固定されていることを特徴とする請求項1に記載の光ファイバと光学ユニットとの接続構造。
【請求項3】
前記貫通穴は、大径部と小径部とを有し、該大径部と該小径部とは繋がっていて、該大径部には、前記ジョイントチューブの先端部が嵌め込み固定され、該小径部には、前記保護管の外周面の一部が接着固定されることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の光ファイバと光学ユニットとの接続構造。
【請求項4】
前記ジョイントチューブは、前記保護チューブが挿入される端部の外周面がテーパ状であることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の光ファイバと光学ユニットとの接続構造。
【請求項5】
前記保護チューブ、前記保護管、前記ジョイントチューブの硬度をそれぞれHa,Hb,Hcとすると、以下の式(1)が成り立つ
Hc>Hb>Ha・・・(1)
ことを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の光ファイバと光学ユニットとの接続構造。
【請求項6】
前記保護チューブにおいて、接着剤が塗布される外周面に全周にわたって溝が形成されていることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の光ファイバと光学ユニットとの接続構造。
【請求項7】
前記溝が螺旋状に形成されていることを特徴とする請求項6に記載の光ファイバと光学ユニットとの接続構造。
【請求項8】
前記基板は前記光学ユニットの一端に設けられていることを特徴とする請求項1から請求項7のいずれか一項に記載の光ファイバと光学ユニットとの接続構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−33691(P2011−33691A)
【公開日】平成23年2月17日(2011.2.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−177709(P2009−177709)
【出願日】平成21年7月30日(2009.7.30)
【出願人】(000113263)HOYA株式会社 (3,820)
【Fターム(参考)】