説明

光ファイバセンサ式温度計測装置

【課題】ひずみを検出する円柱状をなす金属製検査体を用い、外周側面にアクリレートコーティングが施されたFBGつき光ファイバを複数巻き巻回し、検査体との接着長を長く確保するのと同等の効果が得られ、温度計測装置本体が比較的設置場所をとることのない光ファイバセンサ式温度計測装置を提供することを目的とする。
【解決手段】FBGからのひずみ伝達を確保すべく、検査体への所定の接着長を必要とするアクリレートコーティングされた光ファイバセンサ式温度計測装置であって、金属部材からなる円柱状の検査体と、外周側面に巻回されたアクリレートコーティングのFBGつき光ファイバセンサとを有して計測装置本体が形成され、円柱状検査体へのひずみ伝達を確保する所定の接着長は、外周側面へのアクリレートコーティングされたFBGつき光ファイバの複数回巻回された巻回面での面接着された面接着部の長さ合計で確保できる、ことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、FBG光ファイバセンサを用いた温度計測装置にかかり、特に、検出部となるFBGの長さ及びその両端側の光ファイバの長さとをあわせてひずみの伝達が良好に確保できる検査体への所定の接着長さを必要とするアクリレートコーティングされたFBGつき光ファイバセンサ式温度計測装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、FBGを検出部として用いた光ファイバによって温度を計測する手法及び装置は、一般に知られている。
例えば、温度によって膨張伸縮する平板状の金属片など長尺な母材(検査体)にFBGつき光ファイバを接着して温度計を形成する。すなわち、該平板状をなす金属片は、周囲の温度変化に対して膨張収縮するものであり、該金属片の膨張伸縮に伴ってFBGがひずむ際に検出されるひずみ値を検出して温度を検出するのである。
すなわち、この様に前記長尺な平板状の金属片たる母材(検査体)にFBGを接着させることにより、母材の温度変化による膨張収縮を前記FBGに伝達し、該FBGが前記の膨張伸縮で生ずるひずみ(波長差)で、温度差を読み取るのである。
【特許文献1】特開2001−33325号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ここで、例えばFBGのコーティングの仕様によっては、良好なひずみ伝達の確保のため、FBGの金属片たる母材への所定必要長とされる接着長の絶対的な確保が課題となり(参考文献)、アクリレートコーティングを施したFBGを使用すると、FBGの長さとその両側に接続された光ファイバの長さとを併せ比較的長い接着長が必要とされるものであった。
よって、アクリレートコーティングを施したFBGを利用する温度計測装置を使用する場合には、長尺な金属片たる母材を用いる必要があり、その結果、母材の長さを長くとらなければならない関係上、光ファイバを使用した温度計測装置の設置箇所に限界が生じることとなり、もって光ファイバセンサ式温度計測装置を設置できない箇所が多数生じてしまうとの課題があった。
【0004】
ここで、以下の参考文献を示す。
(参考文献)
“Detailed technical specifications required
for the Bragg grating strain sensor array” by the European Community under the
Information Society Technologies
上記参考文献によれば、コーティングされたFBGの種類としては
A Acrylate microcoating
B Polyimide microcoating
C Nylon buffer
D Micro tube coating
の4つが挙げられる。
上記C、Dについては“コーティングを通したひずみの伝達性”が悪く、温度計測装置としての光ファイバセンサの使用が躊躇される。
Aについては製品のコストは安価ではあるが、“コーティングを通したひずみの伝達性”の良好性を確保するため母材との比較的長い接着長を必要とする。
そして、Bについては、“コーティングを通したひずみの伝達性”は良好であるが、製品のコストが高価になってしまう。
【0005】
かくして、本発明はこれら従来の課題に鑑みて創案されたものであり、ひずみを検出する検査体として円柱状をなす金属製母材(金属製検査体)を用い、該検査体の外周側面にアクリレートコーティングが施されたFBGつき光ファイバを複数巻き巻回し、巻回平面で面接着することで、検査体との接着長を長く確保するのと同等の効果が得られ、もって、上記Aに示されたAcrylate microcoatingが施されたFBGを使用した場合であっても、温度計測装置本体の大きさが長尺で大きな装置形状とはならず、比較的設置場所をとることのない光ファイバセンサ式温度計測装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明による光ファイバセンサ式温度計測装置は、
FBGの長さ及び該FBG両端側に接続された光ファイバの長さとをあわせて、前記FBGからのひずみ伝達を確保すべく、検査体への所定の接着長を必要とするアクリレートコーティングされた光ファイバセンサ式温度計測装置であって、
温度によって膨張収縮する金属部材からなる円柱状の検査体と、該円柱状検査体の外周側面に複数回数巻回されたアクリレートコーティングのFBGつき光ファイバセンサと、を有して計測装置本体が形成され、
前記円柱状検査体への前記ひずみ伝達を確保する所定の接着長は、円柱状検査体外周側面への前記アクリレートコーティングされたFBGつき光ファイバの複数回巻回された巻回面での面接着された面接着部の長さ合計で確保できる、
ことを特徴とし、
または、
前記円柱状検査体への巻回面での面接着部は、前記FBGを含んで円柱状検査体外周側面の周方向を横辺とし、高さ方向を縦辺として略平面状に接着して形成された、
ことを特徴とし、
または、
前記面接着部は、前記横辺を長辺に、前記縦辺を短辺にした略長方形状の平面接着あるいは横長楕円状の平面接着並びに前記横辺及び縦辺を略同等の長さの正方形状の平面接着あるいは楕円状の平面接着にして形成された、
ことを特徴とし、
または、
前記計測装置本体を収納、保護する保護容器を有し、該保護容器は前記計測装置本体と同等の金属部材からなり、
該保護容器内には、計測装置本体の上下面と前記保護容器の内周面に介在される緩衝材が設けられると共に、内面側から円柱状検査体の面に係止する突起が設けられ、前記保護容器には前記光ファイバ導入用孔部及び導出用孔部が形成された、
ことを特徴とし、
または、
前記円柱状検査体の外周側面には、巻回して接着される光ファイバ巻回ガイド用溝が設けてある、
ことを特徴とし、
または、
前記面接着での円柱状検査体への接着長さは、少なくとも全体で15センチメートル以上である、
ことを特徴とし、
または、
前記金属部材はアルミ製金属部材である、
ことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明による光ファイバセンサ式温度計測装置によれば、
円柱状の金属製母材を用い、該母材の外周面にアクリレートコーティングが施されたFBGつき光ファイバを複数回巻き付け、巻回することで、母材との接着長を長く確保するのと同等の効果が得られ、もって、上記AのAcrylate
microcoatingが施されたFBGを利用しても、温度計測装置本体の大きさが長尺な大きな装置とはならず、設置場所をとらないコンパクトで正確な計測が行える光ファイバセンサ式温度計測装置を提供できるとの優れた効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明を図に示す発明を実施するための最良の形態に基づいて説明する。
符号1は、アクリレートコーティングが施されたFBGを検出部2として使用する光ファイバを示す。
ここで、アクリレートコーティングが施されたFBGを検出部2として使用する光ファイバ1は、検出部2となるFBG及びその両端側の光ファイバ1とをあわせて比較的長い、例えば15センチメートル以上を有した検査体3への接着長さを必要とする。
ここで、アクリレートコーティングが施されたFBGを検出部2として使用する光ファイバ1は、その製品価格が安価で提供されているが、課題として、検査すべき検査体3に対し、所定長の、例えば略15センチメートル以上の接着長が必要とされる。この程度の接着長が確保できない場合には、良好な「ひずみ伝達性」が得られない。
【0009】
しかして、本発明の装置では、この点を大幅に改良した。すなわち、従来の平板状をなす金属片など検査体たる母材の形状概念を大幅に打破し、円柱状をなす検査体3を用いることとし、しかもその円柱状検査体3の外周側面に前記アクリレートコーティングが施されたFBGつき光ファイバ1を複数回巻回し、いわゆる円柱状をなす金属製検査体3との必要な接着長さを面接着することによって確保したのである。
【0010】
前記円柱状をなす金属製検査体3としては、アルミ製検査体3が具体例としてあげられる。アルミ製部材は温度の変化によって膨張伸縮の度合いが大きく、また防錆性、防蝕性に優れているからである。しかも製品コストを安価にできる。
また金属製検査体3は、図8に示すように、円柱状の形状のみならず、楕円柱状であっても構わない(図9,図10参照)。
この円柱状あるいは楕円柱状をなすアルミ製検査体3の外周側面にアクリレートコーティングが施されたFBGを検出部2として使用する光ファイバ1が複数回巻回される。
例えば、直径3,5センチメートル程度で高さが1センチメートル程度の円柱状アルミ製検査体3が使用される場合、この外周側面には光ファイバ1が4回乃至5回程度巻回される。
【0011】
図1にはその例が示されており、円柱状アルミ製検査体3の外周側面にアクリレートコーティングが施されたFBGを検出部2として使用する光ファイバ1が複数回巻回されている。ここで、図2及び図3から理解されるように円柱状検査体3の外周側面にFBGつき光ファイバ1が巻回しやすいよう、光ファイバ巻回ガイド用溝9を形成しておいてもかまわない。
そして、接着剤によって検出部2であるFBGを含め、その上下に巻回されている光ファイバ1の部分が略長方形状の面接着状態で前記検査体3の外周側面に接着され、いわゆる面接着部8が形成されている。
ここで、この面接着部8の接着範囲にある光ファイバ1の長さを全体で合計し、直線状に換算して計算すると、充分に15センチメートルを超えるものとなる。
【0012】
実験の結果によると、検査体3への接着長は決して直線状の状態に限られるものではなく、検出部2であるFBGを中心に複数回巻回された上下の光ファイバ1の部分を接着した状態、すなわち面接着の状態に形成した面接着部8の形成によっても良好な「ひずみ伝達性」が得られた。
従って、前記光ファイバ1の巻回回数を少なくする代わりに、円柱状検査体3の外周側面ほぼ全周の光ファイバ1を面接着した面接着部8を形成し、所定の接着長を確保してもかまわない。この場合は、円柱状検査体3の直径をさらに小さくすることができ、その結果光ファイバセンサ式温度計測装置をさらに小型化できることとなる。
また、面接着部8の形状につき、何ら限定されるものではなく、長方形状、横長楕円形状、正方形状、円形状のいずれの面接着部8の形状でもかまわない。
【0013】
この様に、本発明では、円柱状をなす金属製の検査体3と、該検査体3の外周側面に複数回巻回されるFBGつき光ファイバ1とによって計測装置本体7が形成される。
【0014】
つぎに、図1及び図2に示す様に、FBGつき光ファイバ1と、該光ファイバが巻回され、接着されたアルミ製円柱状検査体3とを有する計測装置本体7は、略方形状をなす保護容器4に収納される。
この保護容器4は前記アルミ製円柱状検査体3と同様の金属部材、すなわちアルミ製金属部材で形成するものとする。
この様に同じ金属部材で構成すれば、同等の熱伝導性を有することになり、もって内部に収納されたアルミ製円柱状検査体3の伸縮の誤差、ひいては検出する温度の誤差をもたらすことがない。
【0015】
また、保護容器4の上下面内部側から、あるいは少なくとも上下のいずれかの内面側からは円柱状検査体3の中心軸に向かい保持用の突起5を突出しておき、前記円柱状検査体3の上下面に係止させておくとよい。これにより、保護容器4の内部で円柱状検査体3がいたずらに動くことが防止できる。
なお、前記突起5は上下面から各々1個ずつ、あるいは上面または下面から1個ずつ突出させ、円柱状検査体3の上面あるいは下面に係止させるものとする。例えば、上面あるいは下面において2個以上の突起5で係止すると、その2カ所の間でのアルミ製円柱状検査体3の伸縮が妨害規制され、もって正確なひずみ検出ができなくなるからである。
また、このアルミ製円柱状検査体3の上下面側には保護容器4内面との間に緩衝材6,6が介在されている。そして、該緩衝材は比較的熱伝導性に影響を及ぼさない樹脂などで形成するものとする。
【0016】
次に、図6,図7を参照して本発明の具体的な実施の形態につき説明する。図6から理解されるように、本発明による光ファイバセンサ式温度計測装置11・・・を直列につなぎ、その間に各々光ファイバセンサ式計測装置10・・・を設置した設備に使用してもかまわない
前記光ファイバセンサ式計測装置10は、地盤の地滑り状態の検知装置に使用されたり、あるいはトンネルの内面クラックの検知装置に使用されたりされる。そしてこの際の現場それぞれの箇所の温度確認に本件装置11が使用されるのである。
【0017】
また、図7では、例えば、大規模恒温(冷凍)施設における各箇所の温度管理に使用する例を示したものである。
この様に、本発明にかかる光ファイバセンサ式温度計測装置は、従来のいわゆる電気式の温度計ではないので、現地に電源は必要なく、光源装置があればよい。従って、大幅に温度管理についてのコストを安価にすることができるものとなる。しかも装置自体の耐久性も高く、温度検知の正確性も高いものである。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明実施例の概略構成を説明する構成説明図(その1)である。
【図2】本発明実施例の概略構成を説明する構成説明図(その2)である。
【図3】円柱状検査体の一実施例の概略構成を説明する構成説明図である。
【図4】計測装置本体の概略構成を説明する説明図(その1)である。
【図5】計測装置本体の概略構成を説明する説明図(その2)である。
【図6】本発明による光ファイバセンサ式計測装置の使用例を説明する構成説明図(その1)である。
【図7】本発明による光ファイバセンサ式計測装置の使用例を説明する構成説明図(その2)である。
【図8】計測装置本体の概略構成を説明する説明図(その3)である。
【図9】計測装置本体の概略構成を説明する説明図(その4)である。
【図10】計測装置本体の概略構成を説明する説明図(その5)である。
【符号の説明】
【0019】
1 光ファイバ
2 検出部
3 検査体
4 保護容器
5 突起
6 緩衝材
7 計測装置本体
8 面接着部
9 光ファイバ巻回ガイド用溝
10 光ファイバセンサ式計測装置
11 光ファイバセンサ式温度計測装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
FBGの長さ及び該FBG両端側に接続された光ファイバの長さとをあわせて、前記FBGからのひずみ伝達を確保すべく、検査体への所定の接着長を必要とするアクリレートコーティングされた光ファイバセンサ式温度計測装置であって、
温度によって膨張収縮する金属部材からなる円柱状の検査体と、該円柱状検査体の外周側面に複数回数巻回されたアクリレートコーティングのFBGつき光ファイバセンサと、を有して計測装置本体が形成され、
前記円柱状検査体への前記ひずみ伝達を確保する所定の接着長は、円柱状検査体外周側面への前記アクリレートコーティングされたFBGつき光ファイバの複数回巻回された巻回面での面接着された面接着部の長さ合計で確保できる、
ことを特徴とする光ファイバセンサ式温度計測装置。
【請求項2】
前記円柱状検査体への巻回面での面接着部は、前記FBGを含んで円柱状検査体外周側面の周方向を横辺とし、高さ方向を縦辺として略平面状に接着して形成された、
ことを特徴とする請求項1記載の光ファイバセンサ式温度計測装置。
【請求項3】
前記面接着部は、前記横辺を長辺に、前記縦辺を短辺にした略長方形状の平面接着あるいは横長楕円状の平面接着並びに前記横辺及び縦辺を略同等の長さの正方形状の平面接着あるいは楕円状の平面接着にして形成された、
ことを特徴とする請求項2記載の光ファイバセンサ式温度計測装置。
【請求項4】
前記計測装置本体を収納、保護する保護容器を有し、該保護容器は前記計測装置本体と同等の金属部材からなり、
該保護容器内には、計測装置本体の上下面と前記保護容器の内周面に介在される緩衝材が設けられると共に、内面側から円柱状検査体の面に係止する突起が設けられ、前記保護容器には前記光ファイバ導入用孔部及び導出用孔部が形成された、
ことを特徴とする請求項1、請求項2または請求項3記載の光ファイバセンサ式温度計測装置。
【請求項5】
前記円柱状検査体の外周側面には、巻回して接着される光ファイバ巻回ガイド用溝が設けてある、
ことを特徴とする請求項1、請求項2、請求項3または請求項4記載の光ファイバセンサ式温度計測装置。
【請求項6】
前記面接着での円柱状検査体への接着長さは、少なくとも全体で15センチメートル以上である、
ことを特徴とする請求項1、請求項2、請求項3、請求項4または請求項5記載の光ファイバセンサ式温度計測装置。
【請求項7】
前記金属部材はアルミ製金属部材である、
ことを特徴とする請求項1、請求項2、請求項3、請求項4、請求項5または請求項6記載の光ファイバセンサ式温度計測装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2008−216063(P2008−216063A)
【公開日】平成20年9月18日(2008.9.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−54294(P2007−54294)
【出願日】平成19年3月5日(2007.3.5)
【出願人】(000235543)飛島建設株式会社 (132)
【Fターム(参考)】