説明

光ファイバテープ心線

【課題】表面凹凸の小さい難燃性の光ファイバテープ心線を提供する。
【解決手段】光ファイバ心線を被覆する第1テープ被覆と、第1テープ被覆の外周をさらに被覆する第2テープ被覆からなり、第1テープ被覆及び第2テープ被覆が、照射硬化性モノマー及びオリゴマーに、リン酸エステル、ホスホン酸エステル、ホスフィンオキシド類、難燃性窒素含有へテロ環状エチレン性不飽和化合物、リン含有アクリレート、メタクリレート官能性オリゴマー、及びこれらの混合物の難燃性物質Aを加えた紫外線硬化樹脂からなる。ここで、第1テープ被覆のみが金属水酸化物、金属炭酸塩、金属酸化物、及びこれらの混合物の難燃性物質Bをさらに含んでいる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、光ファイバテープ心線に関し、特に難燃性を有する光ファイバテープ心線に関する。
【背景技術】
【0002】
機器内の信号伝送に用いられる方式としては、電気伝送方式及び光インターコネクション方式の二種類がある。近年のCPUクロック周波数の高速化に伴い、電気伝送方式においては、高密度配線によるクロストークの発生が問題となり、波形成形技術等の適用が必要となってきている。この結果、機器内での信号伝送方式として電気伝送方式を適用した場合には、伝送距離100m及び伝送速度10Gbps程度が伝送限界となることが分かってきている。
【0003】
一方、機器内での信号伝送方式として光インターコネクション方式を適用すれば、電気伝送方式と比較して遥かに広帯域な伝送を行うことが可能であるとともに、小型かつ低消費電力の光部品を使用した信号伝送システムを構築できる。このため、光インターコネクション方式は、電気伝送方式に代わる機器内信号伝送技術として現在注目されている。
【0004】
光インターコネクション方式には、光伝送手段として光導波回路を用いた方式や光ファイバを用いた方式があるが、機器内で使用される全ての光部品はできるだけ省スペース収納可能であることが望ましいことから、フレキシブルな配線が可能であり、かつ低損失な光伝送が可能である光ファイバは光インターコネクションに適した光部品の一つと位置づけられている。
【0005】
一方、近年、火災防止の観点や環境負荷の低減の要請から、電子・電気機器内部に使用される配線部材を含む部品には難燃性が要求され、かつ、これらの部品が炎に曝された場合でも、燃焼時に塩化水素ガス等の有害ガスを発生するおそれがないことが求められている。
これに対して、光ファイバ及び光ファイバテープ心線の多くは紫外線硬化樹脂によって被覆されているが、一般的な紫外線硬化樹脂被覆層は難燃性ではない。そこで、紫外線硬化樹脂被覆光ファイバ心線あるいは光ファイバテープ心線に難燃性を付与するためには、例えば一層または複数層の紫外線硬化樹脂被覆層で被覆し、束状にされたこれら複数の光ファイバ心線のさらに外側を難燃性ポリ塩化ビニル(PVC)あるいは難燃性ポリエチレン(PE)等のいわゆる難燃性熱可塑樹脂からなる最外被覆層で被覆する必要があった(例えば、特許文献1参照)。
【0006】
しかしながら、紫外線硬化樹脂被覆層の外側に難燃性の熱可塑性樹脂からなる被覆層を設けると次のような問題があった。即ち、
1)製造工程が1工程増えて生産性が低下する。
2)熱可塑性樹脂からなる被覆層は押出被覆により形成するため、被覆厚を薄くするのには限界があり、その結果光ファイバテープ心線の心線断面積が大きくなり、機器内配線において小スペースに収納する場合、曲げ径を小さくできない。
【0007】
そこで、光ファイバテープ心線の心線断面積を小さくし、かつ難燃性を付与するために、難燃性紫外線硬化樹脂で被覆した光ファイバ及び光ファイバテープ心線が提案されている(例えば、特許文献2及び3)。
また、前記難燃紫外線硬化樹脂としてはハロゲン化エポキシ樹脂を含む被覆材が一例として挙げられる(特許文献4)。しかし、このような樹脂を含む被覆材の場合、炎に曝されると燃焼時に塩化水素ガス等の有害ガスを発生するおそれが生じ、環境負荷の低減という観点からは好ましくない。
一方、前記難燃紫外線硬化樹脂として実質的にハロゲンを含まない被覆材も提案されている(特許文献5)。
【0008】
【特許文献1】特開2002−214492
【特許文献2】実開平5−96811
【特許文献3】特開2005−326567
【特許文献4】特開2004−83404
【特許文献5】特開2005−189816
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、特許文献5に記載されているような実質的にハロゲンを含まない樹脂の場合、難燃性を付与するために金属酸化物、金属水酸化物や金属炭酸塩等が顔料分散体として比較的多量に含まれている。これら難燃性顔料は単体でも数μmから数十μmの粒子径を有する上に、溶媒中で容易に凝集して粒子塊を形成し、より巨大な粒子として振舞うようになる。その結果、これら粒子または粒子塊が厚さ数十μmの被覆層表面に浮き出てしまい、被覆層表面の凹凸レベルが増すことになる。これにより、この光ファイバテープ心線をコネクタ接続する場合、コネクタ内での光ファイバ突合せ位置がこの凹凸レベルの増加によって正しい位置からずれてしまい、接続部での伝送損失が増加する原因となる。
【0010】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、光ファイバテープ心線の断面積を小さくし、かつ、コネクタ接続する際の伝送損失を小さくした難燃性を有する光ファイバテープ心線を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記課題を解決するため、上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係る光ファイバテープ心線は、ガラス光ファイバの外周に被覆を有する複数の光ファイバ心線を平行に並べテープ被覆によって一括被覆した光ファイバテープ心線であって、前記テープ被覆は前記光ファイバ心線を被覆する第1テープ被覆と、前記第1テープ被覆の外周をさらに被覆する第2テープ被覆からなり、前記第1テープ被覆及び前記第2テープ被覆が、照射硬化性モノマー及びオリゴマーに、リン酸エステル、ホスホン酸エステル、ホスフィンオキシド類、難燃性窒素含有へテロ環状エチレン性不飽和化合物、リン含有アクリレート、メタクリレート官能性オリゴマー、及びこれらの混合物のうち少なくとも一つの難燃性物質Aを加えた紫外線硬化樹脂からなり、前記第1テープ被覆のみが金属水酸化物、金属炭酸塩、金属酸化物、及びこれらの混合物のうち少なくとも一つの難燃性物質Bをさらに含む紫外線硬化樹脂からなることを特徴とする。
【0012】
また、本発明に係る光ファイバテープ心線は、上記の発明において、前記第1テープ被覆及び前記第2テープ被覆が実質的にハロゲンを含まない難燃性の紫外線硬化樹脂であることを特徴とする。
【0013】
また、本発明に係る光ファイバテープ心線は、上記の発明において、前記難燃性物質Bが、三水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、及びこれらの混合物のうち少なくとも1つであることを特徴とする。
【0014】
また、本発明に係る光ファイバテープ心線は、上記の発明において、前記難燃性物質Aが、リン酸エステル又はホスホン酸エステル、トリフェニルホスフェート、ジエチルエチルホスホネート、トリス(2−シアノエチル)ホスフィンオキシド、及びこれらの混合物のうち少なくとも1つであることを特徴とする。
【0015】
また、本発明に係る光ファイバテープ心線は、上記の発明において、前記難燃性物質Aが、エチレン性不飽和リン含有ウレタンオリゴマーであることを特徴とする。
また、本発明に係る光ファイバテープ心線は、上記の発明において、前記光ファイバテープ心線の表面粗さが5.0nm以下であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明に係る光ファイバテープ心線は、光ファイバテープ心線の断面積を小さくし、かつ、コネクタ接続する際の伝送損失を小さくした難燃性を有する光ファイバテープ心線を実現できるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下に、図面を参照して本発明に係る光ファイバテープ心線の実施の形態を詳細に説明する。なお、この実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。
【0018】
図1は、本発明の実施の形態1に係る光ファイバテープ心線を模式的に表した断面図である。図1に示すように、本実施の形態1に係る光ファイバテープ心線11は、ガラス光ファイバ15の外周に一次被覆層16と、二次被覆層17とを備えた光ファイバ心線12を4本平行に並べ、第1テープ被覆13、第2テープ被覆14によって一括被覆して形成したものである。
なお、図1では、光ファイバ心線12同士が接触して配置された光ファイバテープ心線を示しているが、光ファイバ心線12同士は非接触の状態で配置してもよい。また、光ファイバ心線12の本数は4本に限定されない。
【0019】
第1テープ被覆13及び第2テープ被覆14は、少なくとも一つの難燃性物質Aを含む紫外線硬化樹脂からなり、第1テープ被覆13のみが、さらに少なくとも一つの難燃性物質Bを含む紫外線硬化樹脂からなる。
【0020】
難燃性物質Aとしては、リン酸エステル、ホスホン酸エステル、ホスフィンオキシド類、難燃性窒素含有へテロ環状エチレン性不飽和化合物、リン含有アクリレート、メタクリレート官能性オリゴマー、及びこれらの混合物がある。
また、第1テープ被覆13のみに含まれる難燃性物質Bとしては、金属水酸化物、金属炭酸塩、金属酸化物、及びこれらの混合物がある。
【0021】
さらに具体的には、難燃性物質Aとしては、とりわけてリンは、可溶性で難燃性の有機誘導体として該組成物に加えることができる。適当な難燃性有機リン化合物の例は、トリアリールリン酸エステル及びトリキシリルリン酸エステル、環状ジホスホン酸エステルなどのようなアリールリン酸エステルが含まれる。イソプロピル化トリフェニルリン酸エステルのようなアルキル化トリフェニルリン酸エステルは、特に好ましい。本発明で使用するのに適する他のリン酸エステル及びホスホン酸エステルの例には、アルキルリン酸エステル、アリールリン酸エステル、アルキルアリールリン酸エステル、アルキル化ポリフェニルリン酸エステルのようなアルキル化ポリアリールリン酸エステル、アルキルホスホン酸エステル、アリールホスホン酸エステル、アルキルアリールホスホン酸エステル、及び、アルキル化ポリフェニルホスホン酸エステルのようなアルキル化ポリアリールホスホン酸エステルが含まれる。本発明で使用するのに適する難燃性窒素含有複素環式エチレン性不飽和オリゴマーには、五官能性アクリル酸メラミン、トリス( ヒドロキシエチル) イソシアヌレートのアクリル酸又はメタクリル酸エステル、イソシアヌル酸トリアリル、シアヌル酸トリアリル、及び、トリアクリロイルヘキサヒドロトリアジンが含まれる。
【0022】
難燃性物質Bとしては、アンチモン、ホウ素、スズ、モリブデン、リン、アルミニウム、マグネシウム、及び亜鉛のような元素を用いることができる。これらの元素は、たとえば未硬化の紫外線硬化樹脂に、酸化物、水酸化物、及び炭酸塩として、また、当酸化物、水酸化物及び炭酸塩の水和物として含ませることができる。
金属酸化物としては、アルミナ3水和物としても知られている3水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウムなどがある。酸化アンチモン、3酸化アンチモン、5酸化アンチモン、アンチモン酸ナトリウム、及び酸化アンチモン類の水和物、酸化モリブデン類、炭酸カルシウム、酸化スズ、スズ酸亜鉛、水酸化スズ酸亜鉛、ホウ酸亜鉛、及びメタホウ酸バリウムのような他の金属酸化物も適している。
なお、難燃性物質Bは、粒径の表面への浮き出しを小さく抑え、かつ光ファイバ心線のマイクロベンドロスの発生を抑制する観点から、小粒径の顔料分散体として含ませることが好ましい。
【0023】
本発明の、ハロゲンを含まない難燃性紫外線硬化樹脂を製造するための適当な成分の例は、たとえば米国特許第7,221,841号(特開2005−189816)等にも開示されている。
【0024】
本発明によれば、第1テープ被覆13のみが難燃効果の高い、金属水酸化物、金属炭酸塩、金属酸化物、及びこれらの混合物のうち少なくとも一つの難燃性物質Bを含み、難燃性物質Bが光ファイバテープ心線11の表面に浮き出す懸念が無く表面の凹凸が増加することが無い。さらに、第1テープ被覆13および第2テープ被覆14の両方に照射硬化性モノマー及びオリゴマーに、リン酸エステル、ホスホン酸エステル、ホスフィンオキシド類、難燃性窒素含有へテロ環状エチレン性不飽和化合物、リン含有アクリレート、メタクリレート官能性オリゴマー、及びこれらの混合物のうち少なくとも一つの難燃性物質Aを加えたことから高い難燃性の維持とコネクタに接続する際の伝送損失を小さくできると共に、燃焼時に塩化水素ガス等の有害ガスが発生するおそれの無い光ファイバテープ心線とすることができる。
【0025】
難燃性物質Aとしては、リン酸エステル又はホスホン酸エステル、トリフェニルホスフェート、ジエチルエチルホスホネート、トリス(2−シアノエチル)ホスフィンオキシド、及びこれらの混合物のうち少なくとも1つであることが、ハロゲンを含まないという観点から好ましい。
【0026】
さらに難燃性物質Aは、エチレン性不飽和リン含有ウレタンオリゴマーであることがさらに好ましい。当該リン含有ウレタンアクリレートオリゴマーは、何ら追加の難燃性物質を添加することなく、本発明の照射硬化性オリゴマーとして、及び本発明の光ファイバテープ心線被覆組成物の難燃性物質として機能しうる。
ただし、当然ながら、当該リン含有ウレタン( メタ) アクリレートオリゴマーのみならず、別の種類の難燃性物質Aを加えることもできる。このように別の種類の難燃性物質Aをさらに加えた場合は、より確実な難燃性を得ることができる。
【0027】
難燃性物質Bとしては、三水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、及びこれらの混合物のうち少なくとも1つであることが、水和物であるという観点から好ましい。即ち、含水物質であるがゆえに、燃焼時に水分子の離脱が生じ、その際に燃焼熱を下げる効果を発揮するからである。
【0028】
また、コネクタ接続時の伝送損失を防ぐという観点から光ファイバテープ心線の表面粗さが5.0nm以下であることが好ましく、たとえば、第2テープ被覆に難燃性物質Bを含まない被覆層を形成することで光ファイバテープ心線の表面粗さを5.0nm以下とすることができる。
【実施例】
【0029】
実施例と比較例の仕様と性能について表1に示す。
【0030】
【表1】

【0031】
(実施例1〜4、比較例1,3)
外径約125μmのガラス光ファイバ15の外周に、ウレタンアクリレート系の紫外線硬化樹脂からなる柔らかい1次被覆層16と硬い2次被覆層17を被覆し、更にその外周に紫外線硬化樹脂からなる着色材を塗布して着色層18を形成し、外径約250μmの光ファイバ心線12を製造した。光ファイバ心線は、ITU−T(International Telecommunication Union Telecommunication Standard Sector)G.652準拠のシングルモード光ファイバとした。そして、この光ファイバ心線12の4本を帯状に並べ、紫外線硬化樹脂である1次テープ被覆13によって一括被覆した光ファイバテープ心線の外周をさらに紫外線硬化樹脂である2次テープ被覆14によって被覆した光ファイバテープ心線11を製造した。
なお、1次テープ被覆、2次テープ被覆は、表1に示すように、照射硬化性モノマー及びオリゴマーからなるウレタンアクリレートベースの非難燃紫外線樹脂に難燃剤を混合して形成した。
【0032】
(比較例2,4)
テープ被覆を1層とした以外は、実施例1〜4、比較例1,3と同様にして光ファイバテープ心線を製造した。
【0033】
得られた実施例、比較例の4心光ファイバテープ心線の幅と厚さを以下の表2に示す。
【0034】
【表2】

【0035】
尚、本発明はここに示す光ファイバテープ心線の幅と厚さに制限されるものではないが、好ましい光ファイバテープ心線の幅としては1.05〜1.20mmの範囲であり、より好ましい範囲は1.06〜1.15mmである。また、光ファイバテープ心線として好ましい厚さとしては0.29〜0.40mmの範囲であり、より好ましい範囲は0.30〜0.36mmの間である。光ファイバテープ心線の幅が1.05mm未満または厚さが0.29mm未満の場合、テープ被覆層が薄すぎて、内部の光ファイバの全周囲を覆うことができない場合が生じる。逆に光ファイバテープ心線の幅が1.20mmよりも広い、あるいは厚さが0.40mmよりも厚い場合、光ファイバ心線同士の谷間に存在するテープ被覆樹脂が十分に硬化しなくなり、コネクタ接続の際の光ファイバテープ心線解体時に未硬化樹脂によるべたつき等の不具合が生じる場合があるためである。
【0036】
製造した4心光ファイバテープ心線それぞれの光学特性、コネクタ接続性及び燃焼性を表1に示す。
なお、実施例、比較例に例示した光ファイバテープ心線の試験方法は以下の通りである。
【0037】
(接続損失)
各実施例、比較例につき2本ずつ光ファイバテープ心線を用意し、光ファイバテープ心線の先端にコネクタを取り付け、コネクタ接続し、接続損失を測定した。4本の光ファイバの接続損失の平均値を表1に記す。なお、接続損失は波長(λ)1.30μmのLD光を光ファイバテープ心線の一端側から入射し、コネクタ接続部を介した場合とコネクタ接続部を介さず、同長さの1本の光ファイバテープ心線とした場合の光ファイバテープ心線の他端からの出射光を光パワメータで測定し、その差を算出することにより得た。
コネクタ接続部にはJIS規格C5981に規定されるMTコネクタの4心タイプ(古河電気工業(株)社製)を用いた。該コネクタは2本のガイドピンによりフェルール内の光ファイバを精密位置決めして突き合わせ、クリップで一定の押し圧をかけることにより、安定した接続状態を確保する構造になっている。
【0038】
(同心度)
JIS規格C5961に規定される、フェルールの中心軸と光ファイバのコア中心軸との距離の2倍として定義されるものである。測定方法はフェルール外径基準方法とした。
【0039】
(表面粗さ)
JIS規格B0601における算術平均粗さ(Ra)を意味しており、粗さ曲線からその平均線の方向に基準長さLだけ抜き取り、この抜き取り部分の平均線から測定曲線までの偏差の絶対値を合計して平均した値である。窒素雰囲気下でUV硬化(メタルハライドランプ 240W/cm)によって厚さ約100μmのフィルム状の試料を作成し、測定を行った。なお、2層構造の場合は、1次テープ被覆と2次テープ被覆を厚さ50μmずつ積層し、約100μmのフィルム状の試料とし、2次テープ被覆表面側の表面粗さを測定した。
【0040】
(難燃性)
UL規格(UL94「機器の部品用プラスチック材料の燃焼試験方法」)に準じ、燃焼性試験を行い判断した。「VTM-1」、「VTM-2」は以下の燃焼程度を示す基準である。
表面粗さを測定した資料と同様の厚さ約100μmのフィルム状の試料を円筒型に保持し、1組5枚の試料に対して各試料につき3秒間の接炎を2回行い、その場合の燃焼時間の合計、燃焼距離により下記の如く、クラス分類する。VTM-1は、VTM-2よりも燃焼しにくいことを意味する。

燃焼クラス判定基準 VTM-1 VTM-2
各試料の残炎燃焼時間 ≦30秒 ≦30秒
5枚の試料の燃焼時間合計 ≦250秒 ≦250秒
第2回接炎後の残炎時間+無炎燃焼時間 ≦60秒 ≦60秒
滴下物による綿への着火の有無 なし あり
125mm標線までの残炎又は無炎燃焼の有無 なし なし
【0041】
上記のように、実施例1〜4に関しては、いずれの特性についても良好な結果が得られている。一方、比較例1、3では難燃性がVTM-1に合格せず、本発明の実施例に比べて劣る結果となっている。これは難燃性顔料または難燃性有機リン化合物のいずれか一方が配合されていないため、難燃性が十分に改善されるに至っていないことを示している。さらに比較例2では、難燃性顔料を含む第1テープ被覆のみを形成しているため、コネクタ接続に際してテープ被覆表面の凹凸が影響して接続損失及び同心度が低下している。比較例4に至っては、難燃性が全く認められない。
以上より、本発明による光ファイバテープ心線は、心線断面積を小さくして機器内に収納する際の曲げ径を小さくすることが可能となり、高い難燃性の維持とコネクタ接続する際の伝送損失の小さくすることができると共に、燃焼時に塩化水素ガス等の有害ガスが発生するおそれが無い。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】本発明の一実施形態にかかる光ファイバテープ心線の一実施形態を示す断面図である。
【符号の説明】
【0043】
11…光ファイバテープ心線
12…光ファイバ心線
13…第1テープ被覆
14…第2テープ被覆
15…ガラス光ファイバ
16…1次被覆層
17…2次被覆層
18…着色層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガラス光ファイバの外周に被覆を有する複数の光ファイバ心線を平行に並べテープ被覆によって一括被覆した光ファイバテープ心線であって、
前記テープ被覆は前記光ファイバ心線を被覆する第1テープ被覆と、前記第1テープ被覆の外周をさらに被覆する第2テープ被覆からなり、
前記第1テープ被覆及び前記第2テープ被覆が、照射硬化性モノマー及びオリゴマーに、リン酸エステル、ホスホン酸エステル、ホスフィンオキシド類、難燃性窒素含有へテロ環状エチレン性不飽和化合物、リン含有アクリレート、メタクリレート官能性オリゴマー、及びこれらの混合物のうち少なくとも一つの難燃性物質Aを加えた紫外線硬化樹脂からなり、
前記第1テープ被覆のみが金属水酸化物、金属炭酸塩、金属酸化物、及びこれらの混合物のうち少なくとも一つの難燃性物質Bをさらに含む紫外線硬化樹脂からなることを特徴とする光ファイバテープ心線。
【請求項2】
前記第1テープ被覆及び前記第2テープ被覆が実質的にハロゲンを含まない難燃性の紫外線硬化樹脂であることを特徴とする請求項1に記載の光ファイバテープ心線。
【請求項3】
前記難燃性物質Bが、三水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、及びこれらの混合物のうち少なくとも1つであることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の光ファイバテープ心線。
【請求項4】
前記難燃性物質Aが、リン酸エステル又はホスホン酸エステル、トリフェニルホスフェート、ジエチルエチルホスホネート、トリス(2−シアノエチル)ホスフィンオキシド、及びこれらの混合物のうち少なくとも1つであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1に記載光ファイバテープ心線。
【請求項5】
前記難燃性物質Aが、エチレン性不飽和リン含有ウレタンオリゴマーであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1に記載光ファイバテープ心線。
【請求項6】
前記光ファイバテープ心線の表面粗さが5.0nm以下であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1に記載光ファイバテープ心線。

【図1】
image rotate