説明

光ファイバ増幅器、光検出装置、及び距離測定装置

【課題】短時間且つ所望のタイミングで増幅率を変更することができる光ファイバ増幅器と、この光ファイバ増幅器を用いた光検出装置及び距離測定装置と、を提供する。
【解決手段】光ファイバ光増幅器は、希土類が添加された光ファイバで構成され、当該光ファイバの一端から入射された信号光を増幅し、増幅された信号光を当該光ファイバの他端から射出する第1の光ファイバと、希土類が添加された光ファイバで構成され且つ第1の光ファイバの他端に結合された第2の光ファイバと、第2の光ファイバに第1の励起光を注入する励起光源と、誘導放出を生起させるスイッチ光を第2の光ファイバに入射させるスイッチ光源とを含み、スイッチ光の入射により第2の光ファイバから誘導放出された第2の励起光を第1の光ファイバに注入する増幅励起部と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光ファイバ増幅器、光検出装置、及び距離測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、測定対象物に対し光パルスを照射し、光パルスが射出されてから反射光パルスを受光するまでに要した応答時間を計測して、測定対象物までの距離を測定する距離測定装置が用いられている。距離測定装置では、測定対象物までの距離が長くなると、外乱等の要因により反射光パルスによる信号強度が小さくなり、測定精度が低下するという問題がある。特に、車両用の距離測定装置など、広い範囲で測定対象物までの距離を測定する必要がある距離測定装置では、測定精度の低下は大きな問題となる。このため、受信信号を増幅する方法が種々検討されている。
【0003】
例えば、アバランシェ・フォトダイオード(APD)等、半導体光増幅器を用いて測定精度を高めた距離測定装置が提案されている(特許文献1、特許文献2)。しかしながら、APD等の光電子増倍素子は、雑音の発生が多いという問題がある。他の光増幅器としては、光増幅媒体として光ファイバを用いた光ファイバ増幅器が知られている。光ファイバ増幅器は、半導体光増幅器に比べて雑音の発生が少ないという利点を有する。
【0004】
上記の事情から、測定精度が要求される距離測定装置において、受光された反射光パルスを増幅する光増幅器として、光ファイバ増幅器の利用が期待されている。光ファイバ増幅器は、希土類が添加された光ファイバと、当該光ファイバに励起光を注入する励起光源とを備えている。励起光が注入されると、光ファイバは反転分布状態となる。この反転分布状態の光ファイバに信号光が入力されると、誘導放出により信号光が増幅される。
【0005】
従来、光ファイバ増幅器は、光伝送システムの光増幅器等の用途に使用されてきた。このため、増幅率は一定に保持されるのが通常である。例えば、波長多重方式の光伝送システムにおいて波長変動により増幅率が変動するのを防止するために、複数の光ファイバ増幅器を多段接続し、後段の光ファイバ増幅器の増幅率を調整して、全体の増幅率を一定にする利得制御方法が提案されている(特許文献3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平07−167954号公報
【特許文献2】特開2006−329797号公報
【特許文献3】特開2005−277061号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、距離測定装置等に使用される光検出装置では、遠距離に在る測定対象物からの反射光パルスによる微弱信号等、測定対象物までの距離に応じた強度の信号を検出しなければならない。従って、光ファイバ増幅器の増幅率を一定としたのでは、近距離に在る測定対象物からの反射光パルスや内部反射光等、高強度の反射光により、光検出装置が飽和して微弱信号を検出できないという問題がある。
【0008】
この問題を解決するために、反射光の強度に応じて光ファイバ増幅器の増幅率を変更することが考えられる。しかしながら、半導体レーザ等の励起光源から励起光を注入する場合、光ファイバ増幅器の増幅率は、励起光の注入によって光ファイバに蓄積されたエネルギーに比例して増加する。従って、光ファイバ増幅器の増幅率を瞬時に増加させることは困難であった。
【0009】
本発明は、上記問題を解決すべく成されたものであり、本発明の目的は、短時間且つ所望のタイミングで増幅率を変更することができる光ファイバ増幅器を提供することにある。また、本発明の他の目的は、微弱な信号光を精度よく検出することができる光検出装置を提供することにある。また、本発明の更に他の目的は、測定対象物までの距離を精度良く測定することができる距離測定装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために請求項1に記載の光ファイバ増幅器は、希土類が添加された光ファイバで構成され、当該光ファイバの一端から入射された信号光を増幅し、増幅された信号光を当該光ファイバの他端から射出する第1の光ファイバと、希土類が添加された光ファイバで構成され且つ前記第1の光ファイバの前記他端に結合された第2の光ファイバと、前記第2の光ファイバに第1の励起光を注入する励起光源と、誘導放出を生起させるスイッチ光を前記第2の光ファイバに入射させるスイッチ光源とを含み、前記スイッチ光の入射により前記第2の光ファイバから誘導放出された第2の励起光を前記第1の光ファイバに注入する増幅励起部と、を備えた光ファイバ光増幅器である。
【0011】
請求項2に記載の光ファイバ増幅器は、前記第2の光ファイバが、第1の部分と第2の部分とで構成されており、前記第1の部分と前記第2の部分との間に、前記第1の励起光の波長の光を選択的に透過する波長フィルタが配置された、請求項1に記載の光ファイバ光増幅器である。
【0012】
請求項3に記載の光ファイバ増幅器は、前記第1の光ファイバの前記一端に結合され、誘導放出を生起させる第2のスイッチ光を前記第1の光ファイバに入射させる第2のスイッチ光源を更に備えた、請求項1又は2に記載の光ファイバ光増幅器である。
【0013】
請求項4に記載の光検出装置は、請求項1〜3のいずれか1項に記載の光ファイバ光増幅器と、前記第1の光ファイバの前記一端に信号光を入射させる受光光学系と、前記光ファイバ光増幅器で増幅された信号光を電気信号に変換する光電変換部と、を備えた光検出装置である。
【0014】
請求項5に記載の距離測定装置は、測定対象物に対し光パルスを照射する光出力部と、請求項1又は請求項2に記載の光ファイバ光増幅器と、測定対象物で反射された反射光パルスを受光して前記第1の光ファイバの前記一端に信号光として入射させる受光光学系と、前記光ファイバ光増幅器で増幅された反射光パルスを電気信号に変換する光電変換部とを含む光検出部と、前記励起光源を常時点灯すると共に、前記反射光パルスが受光されるタイミングに応じて前記スイッチ光源を点灯するように、前記励起光源及び前記スイッチ光源の各々を駆動制御する駆動制御部と、前記光パルスが射出されたタイミング及び前記光パルスに対応する反射光パルスが受光されたタイミングを取得し、前記光パルスが射出されてから前記反射光パルスを受光するまでに要した応答時間を計算して、計算された応答時間に基づいて測定対象物までの距離を演算する演算手段と、を備えた距離測定装置である。
【0015】
請求項6に記載の距離測定装置は、測定対象物に対し光パルスを照射する光出力部と、請求項3に記載の光ファイバ光増幅器と、測定対象物で反射された反射光パルスを受光して前記第1の光ファイバの前記一端に信号光として入射させる受光光学系と、前記光ファイバ光増幅器で増幅された反射光パルスを電気信号に変換する光電変換部とを含む光検出部と、前記励起光源を常時点灯すると共に、前記反射光パルスより前に到達する前記反射光パルス以外の反射光が受光されるタイミングに応じて前記第2のスイッチ光源を点灯した後に、前記反射光パルスが受光されるタイミングに応じて前記スイッチ光源を点灯するように、前記励起光源、前記第2のスイッチ光源及び前記スイッチ光源の各々を駆動制御する駆動制御部と、前記光パルスが射出されたタイミング及び前記光パルスに対応する反射光パルスが受光されたタイミングを取得し、前記光パルスが射出されてから前記反射光パルスを受光するまでに要した応答時間を計算して、計算された応答時間に基づいて測定対象物までの距離を演算する演算手段と、を備えた距離測定装置である。
【発明の効果】
【0016】
各請求項に係る発明によれば、以下に記載した効果を奏する。
【0017】
請求項1に係る光ファイバ増幅器によれば、短時間且つ所望のタイミングで増幅率を変更することができる。請求項2に係る光ファイバ増幅器によれば、第2の光ファイバにおけるエネルギー損失を低減することができる。請求項3に係る光ファイバ増幅器によれば、短時間且つ所望のタイミングで増幅率をゼロにすることができる。
【0018】
請求項4に係る光検出装置によれば、短時間且つ所望のタイミングで光ファイバ増幅器の増幅率を変更して、微弱な信号光を精度よく検出することができる。
【0019】
請求項5に係る距離測定装置によれば、短時間且つ所望のタイミングで光ファイバ増幅器の増幅率を変更して、測定対象物までの距離を精度良く測定することができる。請求項6に係る距離測定装置によれば、短時間且つ所望のタイミングで光ファイバ増幅器の増幅率を増減して、測定対象物までの距離を精度良く測定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の実施の形態に係る光ファイバ増幅器の一例を示す概略構成図である。
【図2】光ファイバ増幅器の動作原理を説明するためのタイミングチャートである。
【図3】光ファイバ増幅器の変形例を示す概略構成図である。
【図4】光ファイバ増幅器の変形例を示す概略構成図である。
【図5】本発明の実施の形態に係る距離測定装置の一例を示す概略構成図である。
【図6】「増幅率変更処理」の処理ルーチンを示すフローチャートである。
【図7】本発明の実施の形態に係る距離測定装置の他の一例を示す概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態の一例を詳細に説明する。
【0022】
<光ファイバ増幅器の基本構成>
図1は本発明の実施の形態に係る光ファイバ増幅器の一例を示す概略構成図である。図1に示すように、光ファイバ増幅器10は、入力された信号光「Sin」を増幅して、増幅された信号光「Sout」を出力する光増幅器である。以下では、信号光「Sin」及び「Sout」を区別する必要がない場合には、単に「信号光」と称する。光ファイバ増幅器10は、増幅用光ファイバ12と、増幅用光ファイバ12に第2励起光を注入する増幅励起部20とを備えている。増幅用光ファイバ12の入射端には、信号光「Sin」が入力される。
【0023】
増幅励起部20は、蓄積用光ファイバ14、蓄積用光ファイバ14に第1励起光を注入する励起光源16、蓄積用光ファイバ14にスイッチ光を入射させるスイッチ光源18、及びスイッチ光と第1励起光とを合波する光合波器22を備えている。蓄積用光ファイバ14は、一端がスイッチ光源18に結合され、他端が光合波器22に結合されている。励起光源16は、連結用光ファイバ26を介して光合波器22に結合されている。
【0024】
増幅用光ファイバ12の出射端には、信号光「Sin」と第2励起光とを合波する光合波器24が結合されている。光合波器24は、連結用光ファイバ28を介して光合波器22に結合されている。また、光合波器24には、増幅された信号光「Sout」を出力するために、連結用光ファイバ30が結合されている。
【0025】
なお、光ファイバ増幅器10内には、矢印で示す方向に整流作用を付与するために、アイソレータ11、13、15、17が設けられている。この例では、アイソレータ11は、増幅用光ファイバ12の上流側に設けられている。また、アイソレータ13は、蓄積用光ファイバ14とスイッチ光源18との間に設けられている。また、アイソレータ15は、連結用光ファイバ30の中間位置に設けられている。更に、アイソレータ17は、光合波器22と光合波器24との間に設けられている。
【0026】
増幅用光ファイバ12及び蓄積用光ファイバ14は、エルビウム(Er)やネオジウム(Nd)等の希土類元素がコアに添加された光ファイバであり、光増幅媒体として使用される。信号光が波長1.55μmのレーザ光である場合には、増幅用光ファイバ12及び蓄積用光ファイバ14としては、エルビウムが添加されたEr添加光ファイバが好適である。本実施の形態では、波長1.55μmのレーザ光を信号光とする場合について説明する。
【0027】
励起光源16は、蓄積用光ファイバ14に第1励起光を注入して、添加された希土類元素を励起するための励起光源である。従って、励起光源16としては、希土類イオンのエネルギー準位に応じた発振波長のレーザ光源を用いることができる。また、連続発振するCW型の半導体レーザを用いることができる。
【0028】
例えば、蓄積用光ファイバ14としてEr添加光ファイバを用いる場合には、励起光源16として、エルビウムイオン(Er+3)のエネルギー準位に応じて、発振波長0.98μm又は発振波長1.48μmの半導体レーザを用いることができる。本実施の形態では、励起光源16として、発振波長0.98μmの半導体レーザを用いて、波長0.98μmの第1励起光を注入する場合について説明する。
【0029】
スイッチ光源18は、蓄積用光ファイバ14に、誘導放出を生起させるスイッチ光を入力するスイッチ光源である。従って、スイッチ光源18は、スイッチ光を生成できればよく、スイッチ光の波長についても特に制限はない。本実施の形態では、スイッチ光源18として、発振波長1.48μmの半導体レーザを用いて、波長1.48μmのスイッチ光を入射する場合について説明する。
【0030】
上記の通り、蓄積用光ファイバ14としてEr添加光ファイバを用いる場合には、エルビウムイオンが波長0.98μmの第1励起光により励起されて、Er添加光ファイバ内に反転分布が形成される。この反転分布状態のEr添加光ファイバに、波長1.48μmのスイッチ光が入射することで、誘導放出が起きる。誘導放出により蓄積用光ファイバ14からは、波長0.98μmの第2励起光が放出される。
【0031】
また、増幅用光ファイバ12としてEr添加光ファイバを用いる場合には、エルビウムイオンが波長0.98μmの第2励起光により励起されて、Er添加光ファイバ内に反転分布が形成される。この反転分布状態のEr添加光ファイバに、波長1.55μmの信号光が入射することで、誘導放出が起きて信号光が増幅される。
【0032】
光合波器22は、波長の異なる第1励起光(波長0.98μm)とスイッチ光(波長1.48μm)とを合波する。また、光合波器24は、波長の異なる第2励起光(波長0.98μm)と信号光(波長1.55μm)とを合波する。従って、光合波器22及び光合波器24としては、波長多重化方式(WDM:Wavelength Domain Multiplexing)において光合波回路として使用される、WDMカプラー等を用いることができる。
【0033】
<光ファイバ増幅器の動作原理>
次に、図1及び図2を参照して光ファイバ増幅器の動作原理を説明する。図2は光ファイバ増幅器の動作原理を説明するためのタイミングチャートである。信号光「Sin」の到達時(t=t)を予想するための基準時を「t=0」とする。図2に示すように、光ファイバ増幅器10に、真の信号光「Sin」以外に、強度の大きなノイズ光が入力される場合について説明する。ノイズ光は、真の信号光「Sin」の到達前(t=t)に、光ファイバ増幅器10に到達する。
【0034】
励起光源16は常時点灯されており、矢印Bで図示した通り、蓄積用光ファイバ14には第1励起光が注入されている。第1励起光が蓄積用光ファイバ14に注入されると、注入された励起光に応じて蓄積用光ファイバ14にエネルギーが蓄積される。従って、蓄積用光ファイバ14の反転分布密度は、基準時から徐々に増加する。これにより、蓄積用光ファイバ14は反転分布状態になる。一方、増幅用光ファイバ12に蓄積されたエネルギーは徐々に放出されて、増幅用光ファイバ12の反転分布密度は基準時から徐々に減少する。ここでは、ノイズ光の到達前(t=t)に、増幅用光ファイバ12の反転分布密度がゼロになるようにする。なお、反転分布密度は「光増幅率(利得)」と同義である。
【0035】
光ファイバ増幅器10にノイズ光が到達すると、ノイズ光は増幅用光ファイバ12に入射する。ノイズ光の到達時(t=t)に、既に増幅用光ファイバ12の反転分布密度はゼロになっている。従って、ノイズ光は、増幅用光ファイバ12で増幅されることなく、増幅用光ファイバ12、光合波器24、及び連結用光ファイバ30を通過して、連結用光ファイバ30の出射端から射出される。
【0036】
ノイズ光が通過してから予め定めた時間経過後(t=t)に、スイッチ光源18が点灯される。スイッチ光源18が点灯されると、蓄積用光ファイバ14にスイッチ光が入射されて、誘導放出により蓄積用光ファイバ14から第2励起光が放出される。放出された第2励起光は、矢印Aで図示した通り、光合波器22、連結用光ファイバ28、及び光合波器24を通過して、増幅用光ファイバ12に注入される。
【0037】
第2励起光が増幅用光ファイバ12に注入されると、注入された励起光に応じて増幅用光ファイバ12にエネルギーが蓄積される。ここでは、蓄積用光ファイバ14に蓄積されたエネルギーは、誘導放出により増幅用光ファイバ12に転送される。増幅用光ファイバ12の反転分布密度は、急激に増加する。これにより、増幅用光ファイバ12は、非常に短時間で反転分布状態になる。ここで「短時間」とは、励起光源から励起光を注入する場合には達成できない「数十ナノ秒(nsec)」程度の時間を意味する。
【0038】
光ファイバ増幅器10に真の信号光「Sin」が到達すると、信号光「Sin」は増幅用光ファイバ12に入射する。信号光「Sin」の到達時(t=t)に、既に増幅用光ファイバ12は反転分布状態となっている。従って、入射した信号光「Sin」は、増幅用光ファイバ12で増幅される。増幅された信号光「Sout」は、光合波器24及び連結用光ファイバ30を通過して、信号光の到達時から予め定めた時間経過後(t=t)に、連結用光ファイバ30の出射端から射出される。
【0039】
以上説明した通り、本発明の実施の形態に係る光ファイバ増幅器では、蓄積用光ファイバ14に蓄積されたエネルギーを誘導放出により増幅用光ファイバ12に転送することで、増幅用光ファイバ12の反転分布密度を急激に増加させて、光ファイバ増幅器10の増幅率を短時間で変化させることができる。また、蓄積用光ファイバ14にスイッチ光を入力することにより、光ファイバ増幅器10の増幅率を所望のタイミングで変化させることができる。更に、光ファイバ増幅器10の増幅率を短時間で変化させることで、分解能が向上し、単位時間当たりの処理能力(スループット)が向上する。
【0040】
<光ファイバ増幅器の変形例>
次に、光ファイバ増幅器の変形例について説明する。図3は光ファイバ増幅器の変形例を示す概略構成図である。図1に示す光ファイバ増幅器と同じ構成部分には、同じ符号を付して説明を省略する。図3に示すように、光ファイバ増幅器10Aは、増幅用光ファイバ12の入射側に、増幅用光ファイバ12に第2のスイッチ光を入射させるスイッチ光源32、アイソレータ33、第2のスイッチ光と信号光とを合波する光合波器34、連結用光ファイバ36、及び連結用光ファイバ38を備えている。
【0041】
増幅用光ファイバ12の入射端には、光合波器34が結合されている。スイッチ光源32は、連結用光ファイバ38を介して光合波器34に結合されている。また、光合波器34には、信号光「Sin」を入力するために、連結用光ファイバ36が結合されている。アイソレータ33は、連結用光ファイバ36の中間位置に設けられている。
【0042】
スイッチ光源32は、増幅用光ファイバ12に、誘導放出を生起させるスイッチ光を入力するスイッチ光源である。従って、スイッチ光源32は、スイッチ光を生成できればよく、スイッチ光の波長についても特に制限はない。本実施の形態では、スイッチ光源32として、発振波長1.53μmの半導体レーザを用いて、波長1.53μmの第2のスイッチ光を入射する場合について説明する。
【0043】
また、光合波器34は、波長の異なる第2のスイッチ光(波長1.53μm)と信号光(波長1.55μm)とを合波する。従って、光合波器34としては、WDMカプラー等を用いることができる。
【0044】
上記の通り、増幅用光ファイバ12としてEr添加光ファイバを用いる場合には、エルビウムイオンが、波長0.98μmの第2励起光により励起されて、Er添加光ファイバ内に反転分布が形成される。この反転分布状態のEr添加光ファイバに、波長1.53μmのスイッチ光が入射することで、誘導放出が起きる。誘導放出により増幅用光ファイバ12の反転分布密度が急激に減少する。
【0045】
例えば、図2に実線で示すように、第2のスイッチ光を入力しない場合には、増幅用光ファイバ12の反転分布密度は基準時から徐々に減少する。これに対し、スイッチ光源32が点灯されると、第2のスイッチ光が連結用光ファイバ38を介して増幅用光ファイバ12に入力される。第2のスイッチ光が入力されると、増幅用光ファイバ12に蓄積されたエネルギーは急激に放出される。
【0046】
これにより、図2に一点鎖線で示すように、増幅用光ファイバ12の反転分布密度は急激に減少する。即ち、変形例に係る光ファイバ増幅器10Aでは、スイッチ光源32を点灯することにより、増幅用光ファイバ12の増幅率を、短時間且つ所望のタイミングでゼロにすることができる。
【0047】
図4は光ファイバ増幅器の他の変形例を示す概略構成図である。図1に示す光ファイバ増幅器と同じ構成部分には、同じ符号を付して説明を省略する。図4に示すように、光ファイバ増幅器10Bは、増幅用光ファイバ12と、増幅用光ファイバ12に第2励起光を注入する増幅励起部20Aとを備えている。また、光ファイバ増幅器10Bでは、蓄積用光ファイバ14が第1部分14Aと第2部分14Bとで構成されている。第1部分14Aと第2部分14Bとの間には、波長フィルタ39が挿入されている。波長フィルタ39は、励起光源16で生成される第1の励起光の波長の光を選択的に透過する波長フィルタである。
【0048】
波長フィルタ39としては、バンドパスフィルタ(BPF)等を用いることができる。本実施の形態では、励起光源16から波長0.98μmの第1励起光を、蓄積用光ファイバ14に注入する。従って、波長フィルタ39としては、波長0.98μmの光を選択的に透過するBPFを用いる。蓄積用光ファイバ14の中間位置に波長フィルタ39を挿入することで、自然放出光の増幅や光の逆流に起因するエネルギー損失を低減することができる。
【0049】
<距離測定装置>
次に、本発明の実施の形態に係る距離測定装置について説明する。ここでは、距離測定装置を、レーザ光の直進性を利用して、広い範囲で測定対象物までの距離を測定できるレーザレーダ装置として構成した例について説明する。図5は本発明の実施の形態に係る距離測定装置の一例を示す概略構成図である。
【0050】
図5に示すように、距離測定装置100は、レーザ光パルスを出力する光出力部40と、測定対象物で反射されたレーザ光パルスを検出する光検出部50と、を備えている。レーザ光パルスを検出する光検出部50は、本発明の実施に形態に係る光ファイバ増幅器を備えている。図5に示す例では、図3に示す光ファイバ増幅器10Aと同じ構成の光ファイバ増幅器を備える例について説明する。図3に示す光ファイバ増幅器と同じ構成部分には、同じ符号を付して説明を省略する。
【0051】
また、距離測定装置100は、これら光出力部40及び光検出部50の外に、装置全体を制御し且つ距離の演算などの各種処理を実行する制御部60と、測定結果を表示するディスプレイ等の表示部70と、を備えている。表示部70は、制御部60に接続されている。
【0052】
なお、以下では、レーザ光パルスを単に「光パルス」と称し、測定対象物で反射されたレーザ光パルスを「反射光パルス」と称する。また、後述する「励起光」と区別する意味で、「反射光パルス」を「信号光」と称する場合がある。
【0053】
まず、レーザ光パルスを出力する光出力部40について説明する。光出力部40は、光パルスを射出するレーザ光源42、レーザ光源42を駆動する駆動部44、及び測定対象物(図示せず)に対して光パルスを照射する照射光学系としてのレンズ46を備えている。駆動部44は、制御部60に接続されている。レーザ光源42としては、半導体レーザを用いることができる。例えば、発振波長1.55μmの半導体レーザがアイセーフの観点から好適である。本実施の形態では、レーザ光源42として、発振波長1.55μmの半導体レーザを使用する場合について説明する。
【0054】
ここで光出力部40の動作を簡単に説明する。上記の光出力部40では、制御部60から駆動部44に制御信号が入力される。駆動部44は、入力された制御信号に基づいてレーザ光源42を駆動する。レーザ光源42からは光パルスが射出される。射出された光パルスは、レンズ46により測定対象物に照射される。レーザ光源42を構成する半導体レーザには、通常、出力モニタ用のフォトダイオードが内蔵されている。従って、レーザ光源42から出力された光パルスは、内蔵されたフォトダイオードで検出(光電変換)される。検出信号は、光パルスの出力信号として、駆動部44を介して制御部60に入力される。
【0055】
次に、測定対象物で反射された反射光パルスを検出する光検出部50について説明する。光検出部50は、反射光パルスを受光する受光光学系としてのレンズ52、レンズ52で集光された反射光パルスを増幅する光ファイバ増幅器10A、及び光ファイバ増幅器10Aで増幅された反射光パルスを検出(光電変換)する光検出器54を備えている。光検出器54には、波長1.55μmを含む赤外線に感度を有するフォトダイオード等を使用することができる。光検出器54は、制御部60に接続されている。光検出器54で光電変換された電気信号は、検出信号として制御部60に入力される。
【0056】
光ファイバ増幅器10Aは、上述した通り、信号光「Sin」を入力する連結用光ファイバ36と、増幅された信号光「Sout」を出力する連結用光ファイバ30とを備えている。連結用光ファイバ30の出射端は、増幅された反射光パルス「Sout」が光検出器54で検出されるように、光検出器54に近接させて配置されている。また、連結用光ファイバ36の入射端は、レンズ52で集光された反射光パルス「Sin」が入射するように、レンズ52の集光位置に配置されている。
【0057】
また、光ファイバ増幅器10Aは、上述した通り、励起光源16、スイッチ光源18、及びスイッチ光源32を備えている。従って、光検出部50は、励起光源16を駆動する駆動部56、スイッチ光源18を駆動する駆動部57、及びスイッチ光源32を駆動する駆動部58を更に備えている。駆動部56、駆動部57及び駆動部58の各々は、制御部60に接続されている。励起光源26、スイッチ光源18、及びスイッチ光源32の各々には、出力モニタ用のフォトダイオードが内蔵されており、光電変換された電気信号(検出信号)は、出力信号として対応する駆動部を介して制御部60に入力される。
【0058】
ここで光検出部50の動作を簡単に説明する。上記の光検出部50では、測定対象物で反射された反射光パルスが、レンズ52により集光される。集光された反射光パルス「Sin」は、連結用光ファイバ36の入射端から光ファイバ増幅器10Aに入射する。一方、制御部60から駆動部56、駆動部57及び駆動部58の各々に制御信号が入力される。駆動部56、駆動部57及び駆動部58の各々は、入力された制御信号に基づいて励起光源26、スイッチ光源18、及びスイッチ光源32の各々を駆動する。
【0059】
なお、励起光源26、スイッチ光源18、及びスイッチ光源32の各々は、遠距離に在る測定対象物からの反射光パルスによる微弱信号等、測定対象物までの距離に応じた強度の信号を検出するために、光ファイバ増幅器10Aの増幅率を変更するように駆動制御される。光ファイバ増幅器10Aの増幅率を変更する「増幅率変更処理」については、後で詳しく説明する。
【0060】
上述した通り、光ファイバ増幅器10Aに入射した反射光パルス「Sin」は、増幅用光ファイバ12に蓄積されたエネルギーに比例した光増幅率で増幅され、増幅された反射光パルス「Sout」が連結用光ファイバ30の出射端から射出される。射出された反射光パルス「Sout」は、光検出器54で検出(光電変換)される。検出信号は、反射光パルスの受信信号として、制御部60に入力される。
【0061】
次に、制御部及び表示部について簡単に説明する。図示はしていないが、制御部60は、A/D変換器、ROM,RAM等の記憶部、CPU等の中央処理装置を備えている。ROMには、後述する「増幅率変更処理」の処理ルーチンを実行するためのプログラム等が記憶されている。RAMは、CPUによって行われる各種演算等を行うメモリ等として使用される。制御部60には、上述した通り、光パルスの出力信号、励起光の出力信号、スイッチ光の出力信号、及び反射光パルスの受信信号が入力される。制御部60に入力されたこれらのアナログ信号は、A/D変換器(図示せず)でデジタル信号に変換され、記憶部(図示せず)に保持される。
【0062】
制御部60は、これらのデジタル信号に基づいて、光出力部40から光パルスが出力されたタイミングと、光検出部50で対応する反射光パルスが検出されたタイミングと、を取得する。光パルスの出力タイミングとは、レーザ光源42から光パルスが射出されたタイミングである。また、反射光パルスの検出タイミングとは、反射光パルスがレンズ52で受光されたタイミングである。
【0063】
実際には、反射光パルスは、レンズ52で受光され、光ファイバ増幅器10Aで増幅された後に、光検出器54で検出される。反射光パルスは、連結用光ファイバ36、増幅用光ファイバ12及び連結用光ファイバ30を伝搬するのに要する時間だけ遅延して、光検出器54で検出される。従って、この遅延時間により計測誤差が発生しないように、光検出器54での反射光パルスの検出タイミングから遅延時間だけ遡ったタイミングを、反射光パルスの検出タイミングとする。
【0064】
制御部60は、取得された光パルスの出力タイミングと、取得された反射光パルスの検出タイミングとに基づいて、光パルスが射出されてから反射光パルスを受光するまでに要した応答時間を計算する。また、制御部60は、計算された応答時間に基づいて、測定対象物までの距離を演算する。そして、演算により得られた測定対象物までの距離を、測定結果として表示部70に表示する。
【0065】
<増幅率変更処理>
次に、光ファイバ増幅器の増幅率を変更する「増幅率変更処理」について説明する。図6は「増幅率変更処理」の処理ルーチンを示すフローチャートである。制御部60のCPUは、ROMに記憶された「増幅率変更処理」を実行するためのプログラムを読み出して、RAMをワークエリアとして使用して「増幅率変更処理」の処理ルーチンを実行する。
【0066】
光出力部40のレーザ光源42からは、所定強度の光パルスが一定の間隔で出力されている。また、光検出部50の励起光源16は常時点灯されている。本実施の形態では、光パルスの出力信号が取得されると、光パルスの立ち上がり時間をスタート(t=0)として時間t(秒)の計測を開始すると共に、「増幅率変更処理」が開始される。ここでは、ノイズ光は、光パルスが装置内部で反射されて発生する「内部反射光」として説明する。また、真の信号光は、光パルスに対応する「反射光パルス」である。
【0067】
まず、ステップ100で、光パルスの出力信号に基づいて、スイッチ光源32を点灯する時間(t)と、スイッチ光源18を点灯する時間(t)とを計算する。「内部反射光」の到達時間(t)及び反射光パルス「Sin」の到達時間(t)は、光パルスの立ち上がり時間から計算することができる。
【0068】
スイッチ光源32を点灯する時間(t)は、「内部反射光」の到達時間(t)よりも早い時間となるように設定されている。また、スイッチ光源18を点灯する時間(t)は、「内部反射光」の到達時間(t)よりも遅い時間で、且つ反射光パルス「Sin」の到達時間(t)よりも早い時間となるように設定されている。
【0069】
次に、ステップ102で、時間(t)になったか否かを繰り返し判断する。時間(t)になると、肯定判定してステップ104に進む。ステップ104では、スイッチ光源32を点灯するように、駆動部58に制御信号を入力する。スイッチ光源32が点灯されると、第2のスイッチ光が増幅用光ファイバ12に入力されて、増幅用光ファイバ12の反転分布密度、即ち、光ファイバ増幅器10の光増幅率は、時間(t)から短時間でゼロになる。
【0070】
「内部反射光」の到達時(t)には、増幅用光ファイバ12の反転分布密度はゼロである。従って、「内部反射光」は、光ファイバ増幅器10で増幅されることなく、連結用光ファイバ30の出射端から射出される。
【0071】
次に、ステップ106で、時間(t)になったか否かを繰り返し判断する。時間(t)になると肯定判定してステップ108に進む。ステップ108では、スイッチ光源18を点灯するように、駆動部57に制御信号を入力する。スイッチ光源18が点灯されると、スイッチ光が蓄積用光ファイバ14に入力されて、誘導放出により蓄積用光ファイバ14から第2励起光が放出される。第2励起光が増幅用光ファイバ12に注入されると、増幅用光ファイバ12の反転分布密度、即ち、光ファイバ増幅器10の光増幅率は、時間(t)から短時間で増加する。
【0072】
反射光パルス「Sin」の到達時間(t)には、増幅用光ファイバ12は反転分布状態になっている。従って、反射光パルス「Sin」は、光ファイバ増幅器10で増幅される。時間(t)には、増幅された反射光パルス「Sout」が、連結用光ファイバ30の出射端から射出される。
【0073】
次に、ステップ110で、反射光パルスの受信信号が入力されたか否かを繰り返し判断する。反射光パルスの受信信号が入力された場合には、肯定判定して「増幅率変更処理」のルーチンを終了する。
【0074】
以上説明した通り、本発明の実施の形態に係る距離測定装置では、「内部反射光」等のノイズ光を受光するタイミングには光ファイバ増幅器の増幅率をゼロにして、ノイズ光は増幅せずに通過させると共に、光パルスに対応する「反射光パルス」を受光するタイミングには光ファイバ増幅器の増幅率を大きくして、「反射光パルス」を増幅する。
【0075】
従って、強度の高いノイズ光により光検出器が飽和して、遠距離に在る測定対象物からの反射光パルスによる微弱信号等が検出できなくなる等の不具合が発生し難くなり、微弱な信号光も精度よく検出することができる。これにより、測定対象物までの距離を精度良く測定することができる。
【0076】
<投受光光学系を用いた変形例>
次に、投受光光学系を用いた距離測定装置の変形例について説明する。「投受光光学系」は、光出力部の光パルスを照射する照射光学系と、光検出部の反射光パルスを受光する受光光学系とを兼用する光学系である。図7は本発明の実施の形態に係る距離測定装置の他の一例を示す概略構成図である。図7は、距離測定装置の要部の構成を示す図であり、電気的構成の図示は省略している。また、図7に示す例では、図4に示す光ファイバ増幅器10Bと類似の構成の光ファイバ増幅器を備える例について説明する。図4に示す光ファイバ増幅器と同じ構成部分には、同じ符号を付して説明を省略する。
【0077】
図7に示すように、距離測定装置200は、光パルスを出力する光出力部202、測定対象物で反射された反射光パルスを検出する光検出部204、光パルスを投光すると共に反射光パルスを受光する投受光光学系としてのレンズ206、投受光光の光路を変更する光サーキュレータ208、及び投受光光を入出力する連結用光ファイバ210を備えている。連結用光ファイバ210の入射端は、レンズ206で集光された反射光パルスが入射するように、レンズ206の集光位置に配置されている。連結用光ファイバ210の出射端は、光サーキュレータ208に結合されている。
【0078】
光出力部202は、光パルスを射出するレーザ光源(図示せず)、レーザ光源を駆動する駆動部(図示せず)、アイソレータ81、光パルスを増幅するための増幅用光ファイバ82、光ファイバ82に第3励起光を注入する励起光源84、アイソレータ83、連結用光ファイバ85、増幅された光パルスと第3励起光とを合波する光合波器86、及び連結用光ファイバ87を備えている。
【0079】
増幅用光ファイバ82は、レーザ光源から射出された光パルスが入力されるように、一端がレーザ光源に結合され、他端が光合波器86に結合されている。励起光源84は、連結用光ファイバ85を介して光合波器86に結合されている。光合波器86は、連結用光ファイバ87を介して光サーキュレータ208に結合されている。アイソレータ81は、増幅用光ファイバ82の上流側に設けられている。アイソレータ83は、光合波器86と光サーキュレータ208との間に設けられている。
【0080】
光検出部204は、反射光パルスを増幅する光ファイバ増幅器(図示せず)と、光ファイバ増幅器で増幅された反射光パルスを検出(光電変換)する光検出器(図示せず)とを備えている。光ファイバ増幅器は、図4に示す光ファイバ増幅器10Bと同様に、増幅用光ファイバ12と、増幅用光ファイバ12に第2励起光を注入する増幅励起部20Aとを備えている。
【0081】
また、光検出部204は、信号光「Sin」を入力する連結用光ファイバ36と、増幅された信号光「Sout」を出力する連結用光ファイバ30とを備えている。増幅用光ファイバ12の一端には、信号光「Sin」と第2励起光とを合波する光合波器24が結合されている。増幅用光ファイバ12の他端には、連結用光ファイバ30が結合されている。また、連結用光ファイバ36の一端は、光合波器24に結合されている。また、連結用光ファイバ36の他端は、光サーキュレータ208に結合されている。
【0082】
なお、この例では、増幅用光ファイバ12は、第1部分12Aと第2部分12Bとで構成されている。また、アイソレータも、アイソレータ15Aとアイソレータ15Bとに分けて設けられている。アイソレータ15Aは、第1部分12Aと第2部分12Bとの間に挿入されている。アイソレータ15Bは、増幅用光ファイバ12の下流側に設けられている。
【0083】
サーキュレータ208は、所定方向の光は通すが逆方向の光は遮断する、非相反性を有する光回路素子である。本実施の形態では、A〜Cの3端子を有するサーキュレータ208が用いられる。サーキュレータ208の端子Aには、光出力部202で増幅された光パルスを入力する連結用光ファイバ87が接続されている。サーキュレータ208の端子Bには、投受光光学系としてのレンズ206から投受光光を入出力する連結用光ファイバ210が接続されている。サーキュレータ20の端子Cには、光検出部204に対して、受光された反射光パルス(即ち、信号光「Sin」)を出力する連結用光ファイバ36が接続されている。
【0084】
これらの端子A〜C間では、A→B、B→Cの方向の光は通し、B→A、C→Bの方向の光は遮断する。即ち、光出力部202で増幅された光パルスは、連結用光ファイバ87及び連結用光ファイバ210を伝播してレンズ206に入射されて、測定対象物に向けて投光される。一方、レンズ206で受光された反射光パルスは、連結用光ファイバ210及び連結用光ファイバ36を伝播して、光検出部204の光ファイバ増幅器に入力される。
【0085】
本実施の形態に係る投受光光学系を用いた距離測定装置200では、上記の距離測定装置100と同様に、「内部反射光」等のノイズ光を受光するタイミングには光ファイバ増幅器の増幅率をゼロにして、ノイズ光は増幅せずに通過させると共に、光パルスに対応する「反射光パルス」を受光するタイミングには光ファイバ増幅器の増幅率を大きくして、「反射光パルス」を増幅することができる。
【0086】
投受光光学系を用いた距離測定装置では、投光光学系と受光光学系とが独立した距離測定装置と比較すると「内部反射光」等のノイズ光が発生し易い。従って、ノイズ光により光検出器が飽和して微弱信号等が検出できなくなる等の不具合が顕著に抑制され、微弱な信号光も精度よく検出することができる。これにより、測定対象物までの距離を精度良く測定することができる。
【符号の説明】
【0087】
10 光ファイバ増幅器
10A 光ファイバ増幅器
10B 光ファイバ増幅器
12 増幅用光ファイバ
14 蓄積用光ファイバ
16 励起光源
18 スイッチ光源
20 増幅励起部
22 光合波器
24 光合波器
26 励起光源
26 連結用光ファイバ
28 連結用光ファイバ
30 連結用光ファイバ
32 スイッチ光源
34 光合波器
36 連結用光ファイバ
38 連結用光ファイバ
39 波長フィルタ
40 光出力部
42 レーザ光源
44 駆動部
46 レンズ
50 光検出部
52 レンズ
54 光検出器
56 駆動部
57 駆動部
58 駆動部
60 制御部
70 表示部
100 距離測定装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
希土類が添加された光ファイバで構成され、当該光ファイバの一端から入射された信号光を増幅し、増幅された信号光を当該光ファイバの他端から射出する第1の光ファイバと、
希土類が添加された光ファイバで構成され且つ前記第1の光ファイバの前記他端に結合された第2の光ファイバと、前記第2の光ファイバに第1の励起光を注入する励起光源と、誘導放出を生起させるスイッチ光を前記第2の光ファイバに入射させるスイッチ光源とを含み、前記スイッチ光の入射により前記第2の光ファイバから誘導放出された第2の励起光を前記第1の光ファイバに注入する増幅励起部と、
を備えた光ファイバ光増幅器。
【請求項2】
前記第2の光ファイバが、第1の部分と第2の部分とで構成されており、
前記第1の部分と前記第2の部分との間に、前記第1の励起光の波長の光を選択的に透過する波長フィルタが配置された、請求項1に記載の光ファイバ光増幅器。
【請求項3】
前記第1の光ファイバの前記一端に結合され、誘導放出を生起させる第2のスイッチ光を前記第1の光ファイバに入射させる第2のスイッチ光源を更に備えた、請求項1又は2に記載の光ファイバ光増幅器。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の光ファイバ光増幅器と、
前記第1の光ファイバの前記一端に信号光を入射させる受光光学系と、
前記光ファイバ光増幅器で増幅された信号光を電気信号に変換する光電変換部と、
を備えた光検出装置。
【請求項5】
測定対象物に対し光パルスを照射する光出力部と、
請求項1又は請求項2に記載の光ファイバ光増幅器と、測定対象物で反射された反射光パルスを受光して前記第1の光ファイバの前記一端に信号光として入射させる受光光学系と、前記光ファイバ光増幅器で増幅された反射光パルスを電気信号に変換する光電変換部とを含む光検出部と、
前記励起光源を常時点灯すると共に、前記反射光パルスが受光されるタイミングに応じて前記スイッチ光源を点灯するように、前記励起光源及び前記スイッチ光源の各々を駆動制御する駆動制御部と、
前記光パルスが射出されたタイミング及び前記光パルスに対応する反射光パルスが受光されたタイミングを取得し、前記光パルスが射出されてから前記反射光パルスを受光するまでに要した応答時間を計算して、計算された応答時間に基づいて測定対象物までの距離を演算する演算手段と、
を備えた距離測定装置。
【請求項6】
測定対象物に対し光パルスを照射する光出力部と、
請求項3に記載の光ファイバ光増幅器と、測定対象物で反射された反射光パルスを受光して前記第1の光ファイバの前記一端に信号光として入射させる受光光学系と、前記光ファイバ光増幅器で増幅された反射光パルスを電気信号に変換する光電変換部とを含む光検出部と、
前記励起光源を常時点灯すると共に、前記反射光パルスより前に到達する前記反射光パルス以外の反射光が受光されるタイミングに応じて前記第2のスイッチ光源を点灯した後に、前記反射光パルスが受光されるタイミングに応じて前記スイッチ光源を点灯するように、前記励起光源、前記第2のスイッチ光源及び前記スイッチ光源の各々を駆動制御する駆動制御部と、
前記光パルスが射出されたタイミング及び前記光パルスに対応する反射光パルスが受光されたタイミングを取得し、前記光パルスが射出されてから前記反射光パルスを受光するまでに要した応答時間を計算して、計算された応答時間に基づいて測定対象物までの距離を演算する演算手段と、
を備えた距離測定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−204665(P2012−204665A)
【公開日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−68683(P2011−68683)
【出願日】平成23年3月25日(2011.3.25)
【出願人】(000003609)株式会社豊田中央研究所 (4,200)
【Fターム(参考)】