説明

光ファイバ斜め切断装置及び光ファイバ斜め切断方法

【課題】光ファイバをクランプした後、捻るまでの一連の作業を向上させると共に光ファイバの余長に制限されずに切断することのできる光ファイバ斜め切断装置を提供する。
【解決手段】レバー14を起立状態から水平状態に倒して可動クランプ部材13を固定クランプ部材12へとスライド接近させて、光ファイバ2を軸芯方向と直交する方向から固定クランプ部材12と可動クランプ部材13とで挟み込んでクランプする。その後、前記レバー14を跳ね上げて該光ファイバ2の軸芯を回転中心としてクランプ手段全体を回転させることにより、該光ファイバ2を捻る。クランク手段全体の回転は、クランプ手段を取り付ける本体部15に設けたレール42を挟んで回転自在なガイドローラ44で支持することでクランプ手段全体を回転させる。捻った光ファイバ2は、光ファイバ切断機構部3で切断する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光ファイバを斜めに切断する光ファイバ斜め切断装置及び光ファイバ斜め切断方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、例えば光ファイバを利用した家庭用の高速データ通信サービス(FTTH)が進められ、各種伝送装置には発光素子や受光素子が使われている。発光素子や受光素子の接続部には、光ファイバが用いられている。そして、光ファイバの端面は、光の反射光が発生しないように斜めにする必要がある。従来は、光ファイバの端面を斜めにするために、研磨等をしていた。
【0003】
更に従来は、光ファイバの斜め切断を再現性良く行うために、光ファイバを押し具で押し上げて斜めに傾いた光ファイバに刃を入れることにより切断する技術がある(例えば、特許文献1に記載)。
【0004】
この他、図22及び図23に示すように、基台101に固定したリング102の中心に回転体103を回転自在に設け、その回転体103に設けた固定クランプ部材104と可動クランプ部材105で光ファイバ106をクランプした後、回転体103に取り付けられたレバー107を握って該回転体103を回転させて、前記光ファイバ106をその軸芯を回転中心として捻った後、切断刃で光ファイバ106を切断する斜め切断装置が知られている。なお、この斜め切断装置では、光ファイバ106を切断する前に、バネ108で基台101を付勢して光ファイバ106に張力を与えて弛みを無くしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−300597号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
この斜め切断装置では、光ファイバ106をクランプするクランプ機構と、光ファイバ106を捻る捻り機構がそれぞれ独立しているため、操作が面倒であり、作業効率が良くない。また、この斜め切断装置では、光ファイバ106の先端部が回転体103の同軸上にそのケーブル長手方向を一致させて配置されているため、光ファイバ106の余長が制限され、それ以上先端部位置を回転体103側へ伸ばすことができない。そのため、切断後の光ファイバ屑をピンセット等の工具を用いて取り除かなければならない。
【0007】
そこで、本発明は、光ファイバをクランプした後、捻るまでの一連の作業を向上させると共に光ファイバの余長に制限されずに切断することのできる光ファイバ斜め切断装置及び光ファイバ斜め切断方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に記載の発明は、クランプした光ファイバを、該光ファイバの軸芯を回転中心として捻った後に切断する光ファイバ斜め切断装置であって、レバーを操作して前記光ファイバを軸芯方向と直交する方向から挟み込んでクランプするクランプ手段と、前記クランプ手段を操作する前記レバーを跳ね上げて、前記光ファイバの軸芯を回転中心として前記クランプ手段全体を回転させて該光ファイバを捻る捻り手段と、前記捻り手段で捻られた前記光ファイバを切断してその切断面を、該光ファイバの長手方向と直角な面に対して傾斜させる切断手段とを備えたことを特徴としている。
【0009】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の光ファイバ斜め切断装置であって、前記クランプ手段は、前記光ファイバをクランプする一方の固定クランプ部材と、前記固定クランプ部材に対して接近離反する方向にスライド自在とされ、前記光ファイバをクランプする他方の可動クランプ部材と、前記可動クランプ部材を前記固定クランプ部材に接近する方向へスライドさせて、該可動クランプ部材によって前記光ファイバを前記固定クランプ部材に押し当ててクランプさせる回動可能なレバーと、前記レバーを起立状態から水平状態に倒すことで前記光ファイバをアンクランプ状態からクランプ状態とした時に、該レバーの回動を阻止して水平状態を保ち前記光ファイバのクランプ状態を維持するレバー固定手段とからなることを特徴としている。
【0010】
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の光ファイバ斜め切断装置であって、前記レバー固定手段による前記レバーの水平状態維持を解除するレバー固定解除手段を有したことを特徴としている。
【0011】
請求項4に記載の発明は、請求項2または請求項3に記載の光ファイバ斜め切断装置であって、前記捻り手段は、前記光ファイバの軸芯を中心とする円弧形状のレールを有した、前記クランプ手段を取り付けるための本体部と、前記本体部を支持する支持台と、前記レールを挟んで回転自在に前記支持台に取り付けられ、水平状態を維持した前記レバーを跳ね上げることにより前記クランプ手段全体を前記光ファイバの軸芯を回転中心として回転支持するガイドローラとからなることを特徴としている。
【0012】
請求項5に記載の発明は、請求項4に記載の光ファイバ斜め切断装置であって、前記ガイドローラは、前記レールの一面側と他面側にそれぞれ回転自在に配置され、前記レールを両側からガイドすることを特徴としている。
【0013】
請求項6に記載の発明は、請求項1から請求項5の何れか1項に記載の光ファイバ斜め切断装置であって、前記レバーを跳ね上げて前記クランプ手段全体を回転させた時に、前記光ファイバを軸芯方向へ引っ張って張力を与える光ファイバ引張り手段を有したことを特徴としている。
【0014】
請求項7に記載の発明は、請求項1から請求項6の何れか1項に記載の光ファイバ斜め切断装置であって、前記クランプ手段全体を回転させた時に、その回転位置を規制する回転位置規制手段を有したことを特徴としている。
【0015】
請求項8に記載の発明は、光ファイバを斜めに切断する光ファイバ斜め切断方法において、前記光ファイバを該光ファイバの軸芯と直交する方向から挟んでクランプした後、該光ファイバをその軸芯を回転中心として捻った後に、切断手段で光ファイバを切断して切断面を斜めとすることを特徴としている。
【発明の効果】
【0016】
本発明の光ファイバ斜め切断装置によれば、レバーの操作によりクランプ手段で光ファイバを軸芯方向と直交する方向から挟み込んでクランプした後、同じレバーの操作により捻り手段によって光ファイバの軸芯を回転中心としてクランプ手段全体を回転させて該光ファイバを捻るため、同一のレバー操作で簡単に光ファイバをクランプした後、捻るまでの一連の作業を効率良く行うことができる。また、光ファイバを軸芯方向と直交する方向から挟み込んでクランプしているので、光ファイバの先端部を長手方向に伸ばすことができ、光ファイバの余長に制限されずに切断することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】図1は本実施形態の光ファイバ斜め切断装置の全体を示し、レバーを起立させて光ファイバをアンクランプ状態とした斜視図である。
【図2】図2は本実施形態の光ファイバ斜め切断装置の全体を示し、レバーを水平として光ファイバをクランプ状態とした斜視図である。
【図3】図3は本実施形態の光ファイバ斜め切断装置の全体を示し、レバーを跳ね上げて光ファイバを捻った状態とした斜視図である。
【図4】図4は本実施形態の光ファイバ斜め切断装置の全体を示し、光ファイバを捻った後に切断手段で光ファイバを切断する時の斜視図である。
【図5】図5は図1の光ファイバ斜め切断装置のうちクランプ手段及び捻り手段を取り出して示した斜視図である。
【図6】図6は図2の光ファイバ斜め切断装置のうちクランプ手段及び捻り手段を取り出して示した斜視図である。
【図7】図7は図3の光ファイバ斜め切断装置のうちクランプ手段及び捻り手段を取り出して示した斜視図である。
【図8】図8は図5から支持台を省略した斜視図である。
【図9】図9は図6から支持台を省略した斜視図である。
【図10】図10は図7から支持台を省略した斜視図である。
【図11】図11は図5を矢印X方向から見た時の側面図である。
【図12】図12は図6を矢印X方向から見た時の側面図である。
【図13】図13は図7を矢印X方向から見た時の側面図である。
【図14】図14は図8を矢印X方向から見た時の側面図である。
【図15】図15は図9を矢印X方向から見た時の側面図である。
【図16】図16は図10を矢印X方向から見た時の側面図である。
【図17】図17は図5からクランプ手段を取り外した時の支持台及びベース基盤を示す平面図である。
【図18】図18はレバー固定手段及びレバー固定解除手段を示し、レバーが固定される前の状態を示す要部拡大断面図である。
【図19】図19はレバー固定手段及びレバー固定解除手段を示し、レバーが固定された状態を示す要部拡大断面図である。
【図20】図20はレバー固定手段及びレバー固定解除手段を示し、固定されたレバーの固定を解除する途中の状態を示す要部拡大断面図である。
【図21】図21(A)は本実施形態の光ファイバ斜め切断装置で光ファイバを切断した時の斜め切断面の角度分布を示す図、図21(B)は従来装置で光ファイバを切断した時の斜め切断面の角度分布を示す図である。
【図22】図22は従来の光ファイバ斜め切断装置を示し、光ファイバをクランプした状態を示す図である。
【図23】図23は従来の光ファイバ斜め切断装置を示し、光ファイバを捻った状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明を適用した具体的な実施形態について図面を参照しながら詳細に説明する。
【0019】
[光ファイバ斜め切断装置]
先ず、光ファイバ斜め切断装置の構成について説明する。本実施形態の光ファイバ斜め切断装置1は、図1ないし図5に示すように、光ファイバ2を切断する切断手段を有した光ファイバ切断機構部3と、光ファイバ2をクランプするクランプ手段及び光ファイバ2を捻る捻り手段を有した光ファイバクランプ捻り機構部4とから構成されている。なお、ここで定義する光ファイバ2は、外被を除くベアファイバを指すものとする。
【0020】
光ファイバ切断機構部3は、ベース5と、ベース5に固定される2つの下クランプ6と、刃ホルダ7に取り付けられた切断刃8と、ベース5に対して回動軸9を中心として回動自在に取り付けられた切断レバー10と、切断レバー10に取り付けられた2つの上クランプ11と、同じく切断レバー10に取り付けられた光ファイバ押付部材(図示は省略する通称マクラ)とからなる。
【0021】
2つの下クランプ6は、光ファイバ2の長手方向に所定間隔を置いて固定されている。切断刃8は、これら2つの下クランプ6間に配置された刃ホルダ7に取り付けられている。
【0022】
切断レバー10は、ベース5の手前から奥側に設けられた回動軸9を中心として回動自在に取り付けられている。そして、この切断レバー10は、上クランプ11を取り付けた先端側部を、前記ベース5に対して接近離反する方向(図1の矢印Aで示す方向)に開閉自在とされている。
【0023】
2つの上クランプ11は、切断レバー10に設けられたアーム(図示は省略する)にそれぞれ取り付けられている。2つの上クランプ11は、前記した2つの下クランプ6とそれぞれ対応する位置に配置されている。そして、これら上クランプ11は、前記アームの先端側と切断レバー10との間に配置されたバネ等の弾性部材によって前記光ファイバ2を下クランプ6とで挟み込んでクランプするようになっている。
【0024】
光ファイバ押付部材は、2つの上クランプ11間に配置されている。この光ファイバ押付部材は、切断レバー10に対して固定され、前記切断刃8に対して光ファイバ2を上から押し当てることにより該光ファイバ2を切断する機能をする。つまり、光ファイバ押付部材は、いわば枕として機能するため、通称マクラと称される。
【0025】
前記光ファイバ切断機構部3では、図1に示すファイバフォルダFHにセットした光ファイバ2を2つの下クランプ6の上に配置した後、切断レバー10を押して上クランプ11により光ファイバ2を下クランプ6との間に挟み込んでクランプした後、切断レバー10を更に押し込んで、前記光ファイバ押付部材を光ファイバ2に押し当てることにより、前記切断刃8で光ファイバ2を切断する構成となっている。なお、ファイバフォルダFHで把持する部位は、ベアファイバである光ファイバ2を被覆した外被部分2Gである。
【0026】
光ファイバクランプ捻り機構部4は、前記光ファイバ切断機構部3の隣に設けられている。この光ファイバクランプ捻り機構部4は、光ファイバ2をクランプするクランプ手段と、光ファイバ2を捻る捻り手段とから構成されている。
【0027】
クランプ手段は、図5ないし図16に示すように、光ファイバ2をクランプする一方の固定クランプ部材12と、固定クランプ部材12に対して接近離反する方向にスライド自在とされて光ファイバ2をクランプする他方の可動クランプ部材13と、可動クランプ部材13を固定クランプ部材12に接近する方向へスライドさせて、該可動クランプ部材13によって光ファイバ2を固定クランプ部材12に押し当ててクランプさせる回動可能なレバー14と、レバー14を起立状態から水平状態に倒すことで光ファイバ2をアンクランプ状態からクランプ状態とした時に、該レバー14の回動を阻止して水平状態を保ち前記光ファイバ2のクランプ状態を維持するレバー固定手段とからなる。
【0028】
固定クランプ部材12は、後述する捻り手段を構成する本体部15に一体的に設けられている。固定クランプ部材12には、円形断面状とされた光ファイバ2のクランプを確実なものとするためのV溝16が形成されている(図11参照)。この固定クランプ部材12は、2つのクランプ接点部17を有し(図5参照)、光ファイバ2を2箇所で接触させてクランプするようになっている。前記V溝16は、各クランプ接点部17の先端にそれぞれ形成されている。
【0029】
可動クランプ部材13は、前記本体部15に形成されたガイドレール18にスライド自在に設けられている。この可動クランプ部材13には、固定クランプ部材12に設けられた各クランプ接点部17に光ファイバ2をそれぞれ押し当てる光ファイバ押当て部19がそれぞれ設けられている。この可動クランプ部材13は、前記ガイドレール18に沿ってスライド自在とされ、前記固定クランプ部材12に対して接近する方向に移動すると共に離反する方向に移動する。
【0030】
前記可動クランプ部材13には、レバー14を図11に示す起立状態から図12に示す水平状態に倒すことで可動クランプ部材13を固定クランプ部材12に接近させると共に該可動クランプ部材13を固定クランプ部材12に押し付けるスライド押付機構部と、水平状態から起立状態にレバー14を戻した時に可動クランプ部材13を元の位置に押し戻す押戻し機構部とが設けられている。
【0031】
スライド押付機構部は、可動クランプ部材13及びレール18を共に貫通する貫通孔20に挿入されるシャフト21及びシャフト21の一端に設けられたレバー接触部22と、シャフト21の周囲に装着されると共にレバー接触部22と可動クランプ部材13の背面13aとの間に設けられた圧縮コイルバネである押付バネ23とからなる。
【0032】
押戻し機構部は、光ファイバ2をクランプした状態(図12の状態)から可動クランプ部材13を元の位置(図11の位置)に押し戻すための圧縮コイルバネである押戻しバネ24からなる。押戻しバネ24は、可動クランプ部材13を常に固定クランプ部材12から遠ざけるように付勢している。
【0033】
レバー14は、前記本体部15の後方に設けられた軸25を中心として回動自在に取り付けられている。かかるレバー14は、略Y字状をなし、本体部15の両側面から突出する軸25にそれぞれのアーム部26に形成した軸受け部27を嵌合させることにより、該本体部15に対して回動自在とされている。前記各アーム部26の先端部には、シャフト21に設けられたレバー接触部22との接触をスムーズにするための円弧面28が形成されている。
【0034】
前記レバー14を図11の起立状態から図12の水平状態へと倒して行くと、アーム部26の表面26aに押し付けられているレバー接触部22に対して、該アーム部26の円弧面28が接触し始める。すると、アーム部26に押されてシャフト21全体が固定クランプ部材12側へ押される。シャフト21全体が固定クランプ部材12側へ押されると、押付バネ23が縮み、その反力で可動クランプ部材13がガイドレール18に沿って固定クランプ部材12側へスライドする。
【0035】
前記可動クランプ部材13が固定クランプ部材12側へスライドし始めると、押戻しバネ24が縮んで反力が生じ、該可動クランプ部材13を押し戻そうとする。しかし、レバー14の回動によって与えられた押付バネ23の力が押戻しバネ24の圧縮反力よりも勝るため、可動クランプ部材13は固定クランプ部材12に押し当てられることになる。その結果、可動クランプ部材13は、光ファイバ2を固定クランプ部材12に押し当ててクランプ状態となる。
【0036】
逆に、前記レバー14を図12の水平状態から図11の起立状態に起こして行くと、圧縮状態にある押付バネ23が元の状態に復帰して行くことでシャフト21全体が固定クランプ部材12から離れる方向へ移動する。この押付バネ23の圧縮力が弱まるに連れて、同じく圧縮状態にある押戻しバネ24が元の状態に復帰して行く。その結果、この押戻しバネ24の弾性復元力により前記可動クランプ部材13が固定クランプ部材12から離れる方向へスライドする。そして、レバー14が最終的に起立状態となることで、可動クランプ部材13は図11のアンクランプ位置に戻る。
【0037】
レバー固定手段は、図18ないし図20に示すように、一方のアーム部16に設けられたガイド穴29に収納されるストッパ部材30と、このストッパ部材30をガイド穴29から出没させる弾性部材であるバネ31と、前記本体部15の側面に開口された前記ストッパ部材30の先端部を挿入させる孔部32とから構成されている。
【0038】
前記ストッパ部材30は、前記孔部32に挿入し易いように先端部を略円錐状とした弾丸形状をなしている。ガイド孔29の奥には、圧縮コイルバネであるバネ31が配置されている。かかるバネ31は、一端をガイド孔29の底面29aに接し、他端をバネ31に固定している。そして、このバネ31は、前記ストッパ部材30を常時ガイド孔29からその先端部を突出させるように付勢している。
【0039】
前記孔部32は、前記レバー14が水平状態となった時のストッパ部材30が設けられる部位と対向する位置に形成されている。この孔部32にストッパ部材30の先端部が入り込むことで、前記レバー14の回動が阻止される。その結果、レバー14の水平状態が保たれ、前記光ファイバ2のクランプ状態が維持される。
【0040】
また、前記レバー固定手段による前記レバー14の水平状態維持を解除するためのレバー固定解除手段が設けられている。レバー固定解除手段は、本体部15に上下動自在に設けられた解除ピン33と、この解除ピン33の下端部に設けられたバネ34とからなる。
【0041】
解除ピン33は、本体部15に縦穴として形成されたピン挿入穴35に挿入されて摺動するガイド部36と、ピン挿入穴35の外に飛び出るフランジ状の操作部37とからなる。ガイド部36の先端側には、前記解除ピン33の上昇位置を規制するためのリング形状の位置規制部材38が取り付けられている。この位置規制部材38は、前記ピン挿入穴35の奥側に形成された段差面39に接触することで、前記解除ピン33の上昇位置を規制する。また、このガイド部36には、前記孔部32に嵌入したストッパ部材30の先端部に接触して該ストッパ部材30を該孔32から押し出すための傾斜した押出し面40が形成されている。
【0042】
前記バネ34は、ピン挿入穴35の底面41と位置規制部材38との間に配置されている。かかるバネ34は、圧縮コイルバネからなり、前記解除ピン33を常に上方へ押し上げるように付勢している。
【0043】
前記解除ピン33は、図19に示すように、前記レバー固定手段によってレバー14が水平状態を維持している時は、前記バネ34によって最も上昇した位置に押し上げられている。この状態から操作部37を下方へ押し込むと、図20に示すように、ガイド部36に形成された押出し面40が孔部32に嵌入したストッパ部材30の先端部に接触し、該ストッパ部材30を該孔32から押し出す。その結果、ストッパ部材30が孔32から押し出されて、前記レバー14の水平状態維持(レバー固定状態)が解除される。
【0044】
捻り手段は、図5ないし図16に示すように、光ファイバ2の軸芯を中心とする円弧形状のレール42を有した本体部15と、該本体部15を支持する支持台43と、前記レール42を挟んで回転自在に前記支持台43に取り付けられ、水平状態を維持した前記レバー14を跳ね上げることにより前記クランプ手段全体を前記光ファイバ2の軸芯を回転中心として回転支持するガイドローラ44とからなる。
【0045】
前記レール42は、前記本体部15の両側面にそれぞれ設けられている。このレール42は、前記固定クランプ部材12と前記可動クランプ部材13でクランプした光ファイバ2の軸芯を中心とする円弧形状とされている。レール42の一面42aと他面42bには、後述するガイドローラ44がそれぞれ回転して転がるようになっている。
【0046】
支持台43は、平面視略コ字状(図17参照)をなす台として形成されている。この支持台43には、各レール42に対してそれぞれ3つのガイドローラ44が配置されるように全部で6つのガイドローラ44が回転自在に取り付けられている。支持台43には、ガイドローラ44を回転自在に支持するためのローラ回転支持軸45が取り付けられている。
【0047】
各レール42にそれぞれ3つづつ配置されたガイドローラ44のうち、一つはレール42の一面42a側に設けられ、残りの2つは該レール42を挟んで裏側の他面42b側に配置されている。そして、これら3つのガイドローラ44は、クランプ手段全体を光ファイバ2の軸芯を回転中心として回転支持するため、略三角形をなす位置に配置されている。
【0048】
前記レバー14がレバー固定手段によって水平状態を維持した後に(図9又は図15に示す状態の後に)、レバー14を上方へ跳ね上げると、ガイドローラ44に挟み込まれたレール42に沿ってクランプ手段全体が光ファイバ2の軸芯を回転中心として回転する(図10又は図16に示す状態)。クランプ手段全体が回転した時の回転位置は、回転位置規制手段にて位置規制される。
【0049】
回転位置規制手段は、図14ないし図16に示すように、本体部15の底部に突設された位置決め突起46と、前記支持台43を載せるベース基盤47に形成された突当て部材48とからなる。位置決め突起46は、前記本体部15の底部から下方へ突出する円柱状をなす突起として前記本体部の両レール42の間に設けられている。突当て部材48は、前記位置決め突起46を突き当てることにより、クランプ手段全体の回転位置を規制する。
【0050】
前記突当て部材48は、図17に示すように、ベース基盤47に設けられた送りネジ49に取り付けられている。かかる突当て部材48は、ベース基盤47の前面に設けられた摘み50を回して送りネジ49を回転させることにより、該送りネジ49によってその位置が移動せしめられる。したがって、光ファイバ2をどの程度捻るかは、前記位置決め突起46と突当て部材48との突き当て位置で決まる。
【0051】
光ファイバクランプ捻り機構部4には、前記レバー14を跳ね上げてクランプ手段全体を回転させた時に、光ファイバ2を軸芯方向へ引っ張って張力を与える光ファイバ引張り手段が設けられている。光ファイバ引張り手段は、図17に示すように、ベース基盤47に対して矢印Bで示す方向にスライド自在とされた支持台43と、該ベース基盤47から上方へ突設するバネ支持部52との間に配置された付勢バネ53とからなる。
【0052】
前記支持台43は、ベース基盤47に設けられたガイドレール54(図11参照)にスライド自在に取り付けられている。この支持台43は、前記ベース基盤47に設けられたストッパ55に突き当ってそのスライド位置が決められる。付勢バネ53は、一端側をバネ支持部52に設けられた円柱状突起56に装着させる共に、他端側を支持台43の内側に当接させている。したがって、支持台43は、前記付勢バネ53によって常にストッパ55側へスライドするように付勢されている。
【0053】
また、支持台43は、レバー14が図14の起立状態及び図15の水平状態にある時は、前記位置決め突起46がベース基盤47に形成された位置決め孔57(図17参照)に挿入係合された状態とされ、前記付勢バネ53の抗力に反して前記ストッパ55から離れた位置に保持される。この位置では、固定クランプ部材12と可動クランプ部材13でクランプした光ファイバ2には、張力が掛からないようになっている。図15の水平状態にあるレバー14を図16に示すように跳ね上げると、前記位置決め突起46が位置決め孔57から抜け出し、圧縮状態にあった付勢バネ53が弾性復帰して前記支持台43をストッパ55が設けられる位置へとスライドさせる。その結果、クランプされた光ファイバ2は、その長手方向へ引っ張れて弛みが無くなる。
【0054】
次に、上述のように構成された光ファイバ斜め切断装置を使用して光ファイバ2を斜めに切断する光ファイバ斜め切断方法について説明する。
【0055】
[光ファイバ斜め切断方法]
先ず、図1に示すように、光ファイバ切断機構部3の切断レバー10を開いた状態とし且つ光ファイバクランプ捻り機構部4のレバー14を起立状態とする。次に、ファイバフォルダFHにセットした光ファイバ2を光ファイバ切断機構部3の所定位置にセットする。すると、光ファイバ2は、図5に示すように、光ファイバクランプ捻り機構部4の固定クランプ部材12と可動クランプ部材13との間に配置される。
【0056】
次に、図5の起立状態にあるレバー14を図6に示すように水平状態に倒す。すると、可動クランプ部材13は、このレバー14に押されて図11から図12に示すように固定クランプ部材12側に向かってスライドし、前記光ファイバ2を固定クランプ部材12に押し付ける。この時、レバー14に設けられたストッパ部材30が本体部15に形成されたガイド穴29に嵌入して、該レバー14が水平状態を維持した状態で回動不可能に固定される。その結果、光ファイバ2は、固定クランプ部材12と可動クランプ部材13によってその軸芯方向と直交する方向から挟み込まれてクランプされることになる。
【0057】
次に、水平状態を維持したレバー14を図6から図7に示すように跳ね上げると、クランプ手段全体が光ファイバ2の軸芯を回転中心として回転する。その結果、光ファイバ2は、その軸芯を回転中心として捻られることになる。クランプ手段の跳ね上げ状態は、本体部15に設けられた位置決め突起46がベース基盤47に形成された突当て部材48に突き当たることで保持される。このため、光ファイバ2の捻り量が一定となる。また、レバー14が跳ね上げられると、前記支持台43が付勢バネ53によってスライドせしめられ、前記光ファイバ2を軸芯方向へ引っ張って弛みを無くす。
【0058】
次に、弛みが取り除かれてピンと張った光ファイバ2に対して、切断レバー10を図4に示すように押す。これにより、光ファイバ2は、下クランプ6と上クランプ11で切断部両側が挟み込まれた状態でクランプされて、前記切断刃8に光ファイバ押付部材(マクラ)で押し付けられて切断される。その結果、捻られた状態で切断された光ファイバ2は、その断面が、その光ファイバ2の長手方向と直角な面に対して所定角度の傾斜面となる。
【0059】
[実験例]
本実施形態の光ファイバ斜め切断装置で光ファイバを斜め切断した場合と、図22及び図23の従来装置で斜め切断した場合の斜め切断面の角度ばらつきを調べた。本実施形態の光ファイバ斜め切断装置でのサンプル数は100本とし、従来装置でのサンプル数は200本として、それぞれ切断された光ファイバの切断面傾斜角度を測定した結果を図21に示す。図21(A)は、本実施形態の光ファイバ斜め切断装置で切断した時の実験データを示し、図21(B)は、従来装置で切断した時の実験データを示す。なお、傾斜面(端面角)のねらい角度は8度とした。
【0060】
本実施形態の光ファイバ斜め切断装置で光ファイバを切断した場合は、光ファイバ切断面の端面角のバラツキが少ない(平均端面角度が7.91度、バラツキ2σ値が0.88)。これに比べて、従来装置で光ファイバを切断した場合は、光ファイバ切断面の端面角のバラツキが多い(平均端面角度7.73、バラツキ2σ値が1.77)。この実験結果から判るように、本実施形態の光ファイバ斜め切断装置によれば、従来装置に比べて光ファイバの斜め切断面の端面角のバラツキを抑え、その端面角度の再現性を高めることができる。
【0061】
[本実施形態の効果]
本実施形態の光ファイバ斜め切断装置では、レバー14の操作によりクランプ手段で光ファイバ2を軸芯方向と直交する方向から挟み込んでクランプした後、同じレバー14の操作により捻り手段によって光ファイバ2の軸芯を回転中心としてクランプ手段全体を回転させて該光ファイバ2を捻るため、同一のレバー14操作で簡単に光ファイバ2をクランプした後、捻るまでの一連の作業を効率良く行うことができる。また、光ファイバ2を軸芯方向と直交する方向から挟み込んでクランプしているので、光ファイバ2の先端部を長手方向に伸ばすことができ、光ファイバ2の余長に制限されずに切断することが可能となる。
【0062】
また、本実施形態の光ファイバ斜め切断装置では、レバー14を起立状態から水平状態に倒してスライド自在な可動クランプ部材13を固定クランプ部材12に接近する方向へスライドさせて、該可動クランプ部材13によって光ファイバ2を固定クランプ部材12に押し当ててクランプさせるので、レバー14による操作で光ファイバ2を簡単にクランプすることができる。また、本実施形態の光ファイバ斜め切断装置では、レバー固定手段によってレバー14の回動を阻止して該レバー14を水平状態のまま保つことができると共に、光ファイバ2のクランプ状態を維持することができる。
【0063】
また、本実施形態の光ファイバ斜め切断装置では、レバー14の水平状態維持を解除するレバー固定解除手段を備えるので、このレバー固定解除手段を操作することにより、簡単にレバー14の水平状態維持を解除して固定クランプ部材12から可動クランプ部材13を引き離すことができる。これにより、光ファイバ2のクランプ状態をワンタッチで解除することができる。
【0064】
また、本実施形態の光ファイバ斜め切断装置では、クランプ手段を取り付けた本体部15に光ファイバ2の軸芯を中心とする円弧形状のレール42を設ける一方で、本体部15を支持する支持台43にガイドローラ44を取り付け、前記レール42を挟んでガイドローラ44でガイドすることで、クランプ手段全体を光ファイバ2の軸芯を回転中心として回転支持することができる。
【0065】
また、本実施形態の光ファイバ斜め切断装置では、レール42の一面42a側と他面42b側にそれぞれ回転自在にガイドローラ44を配置し、該レール42を両側からガイドしているので、がたつくことなくクランプ手段全体を回動させることができる。
【0066】
また、本実施形態の光ファイバ斜め切断装置では、レバー14を跳ね上げてクランプ手段全体を回転させた時に、光ファイバ2を軸芯方向へ引っ張って張力を与える光ファイバ引張り手段を有しているので、光ファイバ2の切断時に弛みを無くすことができ、精度良く光ファイバ2を切断することができる。
【0067】
また、本実施形態の光ファイバ斜め切断装置では、クランプ手段全体を回転させた時に、その回転位置を規制する回転位置規制手段を有しているので、光ファイバ2の捻り量を常に一定とすることができる。
【0068】
本実施形態の光ファイバ斜め切断方法によれば、光ファイバ2を該光ファイバ2の軸芯と直交する方向から挟んでクランプしているので、ファイバ先端がぶつかる等して邪魔になることがなく、余長分をファイバ長手方向に伸ばすことができる。また、本実施形態の光ファイバ斜め切断方法によれば、光ファイバ2をクランプした後、該光ファイバ2をその軸芯を回転中心に捻って切断するので、該光ファイバ2の切断面を斜めにすることができる。
【産業上の利用可能性】
【0069】
本発明は、光ファイバをクランプした後に捻って切断するための装置に利用することができる。
【符号の説明】
【0070】
1…光ファイバ斜め切断装置
2…光ファイバ
3…光ファイバ切断機構部(切断手段)
4…光ファイバクランプ捻り機構部
12…固定クランプ部材(クランプ手段)
13…可動クランプ部材(クランプ手段)
14…レバー(クランプ手段)
15…本体部(捻り手段)
30…ストッパ部材(レバー固定手段)
32…孔部(レバー固定手段)
33…解除ピン(レバー固定解除手段)
42…レール(捻り手段)
44…ガイドローラ(捻り手段)
46…位置決め突起(回転位置規制手段)
47…支持台(捻り手段)
48…突当て部材(回転位置規制手段)
53…付勢バネ(光ファイバ引張り手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
クランプした光ファイバを、該光ファイバの軸芯を回転中心として捻った後に切断する光ファイバ斜め切断装置であって、
レバーを操作して前記光ファイバを軸芯方向と直交する方向から挟み込んでクランプするクランプ手段と、
前記クランプ手段を操作する前記レバーを跳ね上げて、前記光ファイバの軸芯を回転中心として前記クランプ手段全体を回転させて該光ファイバを捻る捻り手段と、
前記捻り手段で捻られた前記光ファイバを切断してその切断面を、該光ファイバの長手方向と直角な面に対して傾斜させる切断手段とを備えた
ことを特徴とする光ファイバ斜め切断装置。
【請求項2】
請求項1に記載の光ファイバ斜め切断装置であって、
前記クランプ手段は、
前記光ファイバをクランプする一方の固定クランプ部材と、
前記固定クランプ部材に対して接近離反する方向にスライド自在とされ、前記光ファイバをクランプする他方の可動クランプ部材と、
前記可動クランプ部材を前記固定クランプ部材に接近する方向へスライドさせて、該可動クランプ部材によって前記光ファイバを前記固定クランプ部材に押し当ててクランプさせる回動可能なレバーと、
前記レバーを起立状態から水平状態に倒すことで前記光ファイバをアンクランプ状態からクランプ状態とした時に、該レバーの回動を阻止して水平状態を保ち前記光ファイバのクランプ状態を維持するレバー固定手段とからなる
ことを特徴とする光ファイバ斜め切断装置。
【請求項3】
請求項2に記載の光ファイバ斜め切断装置であって、
前記レバー固定手段による前記レバーの水平状態維持を解除するレバー固定解除手段を有した
ことを特徴とする光ファイバ斜め切断装置。
【請求項4】
請求項2または請求項3に記載の光ファイバ斜め切断装置であって、
前記捻り手段は、
前記光ファイバの軸芯を中心とする円弧形状のレールを有した、前記クランプ手段を取り付けるための本体部と、
前記本体部を支持する支持台と、
前記レールを挟んで回転自在に前記支持台に取り付けられ、水平状態を維持した前記レバーを跳ね上げることにより前記クランプ手段全体を前記光ファイバの軸芯を回転中心として回転支持するガイドローラとからなる
ことを特徴とする光ファイバ斜め切断装置。
【請求項5】
請求項4に記載の光ファイバ斜め切断装置であって、
前記ガイドローラは、前記レールの一面側と他面側にそれぞれ回転自在に配置され、前記レールを両側からガイドする
ことを特徴とする光ファイバ斜め切断装置。
【請求項6】
請求項1から請求項5の何れか1項に記載の光ファイバ斜め切断装置であって、
前記レバーを跳ね上げて前記クランプ手段全体を回転させた時に、前記光ファイバを軸芯方向へ引っ張って張力を与える光ファイバ引張り手段を有した
ことを特徴とする光ファイバ斜め切断装置。
【請求項7】
請求項1から請求項6の何れか1項に記載の光ファイバ斜め切断装置であって、
前記クランプ手段全体を回転させた時に、その回転位置を規制する回転位置規制手段を有した
ことを特徴とする光ファイバ斜め切断装置。
【請求項8】
光ファイバを斜めに切断する光ファイバ斜め切断方法において、
前記光ファイバを該光ファイバの軸芯と直交する方向から挟んでクランプした後、該光ファイバをその軸芯を回転中心として捻った後に、切断手段で光ファイバを切断して切断面を斜めとする
ことを特徴とする光ファイバ斜め切断方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【公開番号】特開2011−133787(P2011−133787A)
【公開日】平成23年7月7日(2011.7.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−294936(P2009−294936)
【出願日】平成21年12月25日(2009.12.25)
【出願人】(000005186)株式会社フジクラ (4,463)
【Fターム(参考)】