説明

光ファイバ

【課題】過度な曲げ箇所を目視で容易に確認することが可能な光ファイバを得る。
【解決手段】 コア12aの外周にクラッド12bが設けられたガラスファイバ12と、ガラスファイバ12の外周を覆う被覆層13と、被覆層13の外周に設けられた屈曲履歴層21とを有し、屈曲履歴層21は、ガラスファイバ12が許容曲げ半径を超えて曲げられることにより破断する複数の履歴確認部22が長手方向に間隔をあけて形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コアとクラッドとを有するガラスファイバを外被によって被覆した光ファイバに関し、とりわけ、過度に曲げられた場合の痕跡(履歴)が残る光ファイバに関する。
【背景技術】
【0002】
光通信等に用いられる光ファイバは、コアとクラッドとを有するガラスファイバを外被によって被覆した構造を有している。この光ファイバを構成するガラスファイバは、外被によって保護されているが曲げに弱く、許容曲げ半径以上に曲げられると、信号伝送特性の低下を生じ、光信号が正確に伝送されなくなる虞がある。
【0003】
このため、曲げを極力抑える外被を備えた光ファイバが考えられているが(例えば、特許文献1,2参照)、このような光ファイバでは、ある程度の曲げを抑えることができるが、外被が樹脂で形成されているので、大きな曲げ力に対しては、やはりガラスファイバが過度に曲げられて損傷する。許容曲げ半径を超えて過度に曲げられた場合、その光ファイバにおける損傷箇所を特定する必要がある。
光ファイバの損傷箇所を検出する技術としては、光ファイバの損傷にともなって漏出するレーザ光を検知する技術が知られている(例えば、特許文献3参照)。また、光ファイバを構成する外被の表面にスリットを形成し、所定の曲げ半径で光ファイバが曲げられた際に、スリット内のマーキングが目視可能とされ、マーキングの目視により光ファイバの屈曲状態を確認するものもある(例えば、特許文献4参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11−223752号公報
【特許文献2】特開2006−65215号公報
【特許文献3】特開2003−279444号公報
【特許文献4】特開2006−293157号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献3の技術は、レーザ光による温度上昇から損傷を検知するので、例えば、敷設現場において作業者が目視で損傷箇所を確認し特定することができない。これに対し、特許文献4の技術では、例えば、敷設現場において作業者が屈曲箇所を目視により確認することができるが、曲げが戻された状態ではスリットが再び閉じてマーキングが隠れてしまうため、不良箇所を特定することが困難となった。
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、許容曲げ半径を超えた過度な曲げ箇所を容易に確認でき、曲げ状態が戻された状態でも特定が可能な光ファイバを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る上記目的は、下記構成により達成される。
(1) コアの外周にクラッドが設けられたガラスファイバと、前記ガラスファイバの外周を覆う被覆層と、前記被覆層の外周に設けられた屈曲履歴層とを有し、前記屈曲履歴層は、前記ガラスファイバが許容曲げ半径以上の曲率で曲げられることにより破断する複数の履歴確認部が長手方向に間隔をあけて形成されていることを特徴とする光ファイバ。
【0007】
この光ファイバによれば、過度に曲げられてガラスファイバが許容曲げ半径以上の曲率で曲げられると、屈曲履歴層の履歴確認部が破断する。したがって、作業者は、この履歴確認部の破断の有無及び破断箇所を目視で確認することにより、ガラスファイバが損傷しているか否か、また、損傷している場合は、その場所を容易に特定することができる。また、曲げ状態から元に戻されていても、作業者は、履歴確認部の破断の有無及び破断箇所を確認することにより、以前に曲げられて損傷しているか否か、その場所を容易に確認して特定することができる。
【0008】
(2) 上記(1)に記載の光ファイバにおいて、前記履歴確認部は、周方向に間隔をあけて形成された複数のスリットを有することを特徴とする光ファイバ。
【0009】
この光ファイバによれば、過度に曲げられてガラスファイバが許容曲げ半径以上の曲率で曲げられると、履歴確認部では、スリット間が破断してスリットが繋がり、屈曲履歴層が裂けた状態となる。これにより、作業者は、この屈曲履歴層の裂けた箇所を目視にて確認することにより、ガラスファイバが曲げられて損傷しているか否か、また、損傷している場合は、その場所を容易に確認することができる。
【0010】
(3) 上記(2)に記載の光ファイバにおいて、前記履歴確認部は、前記ガラスファイバの許容曲げ半径に応じて前記スリットの周方向の間隔が調整されていることを特徴とする光ファイバ。
【0011】
この光ファイバによれば、スリットの周方向の間隔を調整することにより、光ファイバの許容曲げ半径に応じて履歴確認部の破断のタイミングを容易に調整することができる。
【0012】
(4) 上記(1)〜(3)のいずれかに記載の光ファイバにおいて、前記屈曲履歴層は、前記被覆層と異なる色を有することを特徴とする光ファイバ。
【0013】
この光ファイバによれば、屈曲履歴層が被覆層と異なる色を有するので、屈曲履歴層の履歴確認部が裂けて色の異なる被覆層が露出された際に、作業者は、履歴確認部の裂け目から露出された被覆層を目視して、過度の曲げが生じたことを容易に確認することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、過度の曲げ箇所を目視により容易に確認して特定することが可能な光ファイバを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明に係る光ファイバの構造を説明する斜視図である。
【図2】光ファイバの屈曲履歴層に設けられた履歴確認部付近の側面図である。
【図3】(a)は屈曲された光ファイバの斜視図、(b)は屈曲が戻された光ファイバの斜視図である。
【図4】スリット間の連結部の破断のタイミングについて説明する図で、(a)は光ファイバの一部分の側面図、(b)は屈曲された光ファイバの一部分の側面図である。
【図5】スリット間の連結部の破断のタイミングについて説明する図で、(a)は光ファイバの一部分の側面図、(b)は屈曲された光ファイバの一部分の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明に係る光ファイバの実施の形態を、図面を参照して説明する。
図1は本発明に係る光ファイバの構造を説明する斜視図、図2は光ファイバの屈曲履歴層に設けられた履歴確認部付近の側面図、図3(a)は屈曲された光ファイバの斜視図、(b)は屈曲が戻された光ファイバの斜視図である。
【0017】
図1に示すように、光ファイバ11は、ガラスファイバ12を有している。このガラスファイバ12は、コア12aとこのコア12aの周囲に設けられたクラッド12bとから構成されており、コア12a内を光信号が伝搬する。
【0018】
ガラスファイバ12の外周には、樹脂からなる被覆層13が設けられ、この被覆層13によってガラスファイバ12が覆われて保護されている。
【0019】
また、上記構成の光ファイバ11は、その被覆層13の外周に、屈曲履歴層21が設けられている。この屈曲履歴層21は、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレンあるいはポリエステルなどの樹脂材料から形成されている。この屈曲履歴層21は、被覆層13と異なる色に着色されている。
【0020】
また、この屈曲履歴層21は、複数の履歴確認部22が長手方向に間隔をあけて設けられている。また、これらの履歴確認部22は、図2に示すように、周方向に間隔をあけて形成されたスリット23を有しており、これらのスリット23間は、長さ寸法がスリット間隔Tである連結部24とされている。
【0021】
上記の光ファイバ11は、ガラスファイバ12が損傷することのない許容曲げ半径以上の曲率で曲げられると、図3(a)に示すように、曲げ箇所における履歴確認部22のスリット23間の連結部24を引き伸ばして破断することでスリット23が繋がって拡がり、色の異なる被覆層13が履歴確認部22において露出される。
【0022】
例えば、車載用光ファイバでは、その製品仕様で、曲げ半径がR25以下となる曲率以上で曲げられると、ガラスファイバ12における光伝送特性が劣化し、光信号を正確に伝送できなくなる。そこで、曲げ半径がR25となる曲率を許容曲げ半径とし、この許容曲げ半径を超えて曲げられた場合、スリット23間の連結部24が破断するようにスリット間隔Tを調整する。
【0023】
したがって、作業者は、光ファイバ11の敷設時など光ファイバ11の使用時に、屈曲履歴層21のスリット23が繋がった履歴確認部22を目視で確認することにより、この履歴確認部22の付近において過度の曲げが作用して、ガラスファイバ12が損傷した虞があるか否かを容易に判断することができる。
【0024】
また、屈曲した光ファイバ11が、図3(b)に示すように、元の直線の状態に戻されたとしても、連結部24が破断してスリット23が繋がった履歴確認部22では、屈曲履歴層21が裂けた状態のままとして残り、しかも、色の異なる被覆層13が露出されたままとなる。
よって、一度過度に曲げられた光ファイバ11が元に戻されても、作業者は、連結部24が破断してスリット23が繋がった履歴確認部22を目視で確認することにより、この履歴確認部22の付近において過度の曲げが作用して、ガラスファイバ12が損傷している虞があることを容易に認識することができる。
【0025】
ここで、上記光ファイバ11において、屈曲履歴層21の連結部24の長さであるスリット間隔Tを調整することにより、光ファイバ11の許容曲げ半径に対応させて連結部24の破断のタイミングを調整することができる。
例えば、図4(a)に示すように、スリット間隔Tを小さな間隔T1とすると、図4(b)に示すように、比較的大きな曲率の曲げでもスリット23間を破断させることができる。これとは逆に、図5(a)に示すように、スリット間隔Tを大きな間隔T2(T2>T1)とすると、図5(b)に示すように、比較的大きな曲率の曲げではスリット23間を破断させないようにすることができる。
【0026】
このように、上記実施の形態に係る光ファイバによれば、過度に曲げられてガラスファイバ12が許容曲げ半径以上の曲率で曲げられると、屈曲履歴層21の履歴確認部22ではスリット23間の連結部24が破断してスリット23が繋がる。したがって、作業者は、この履歴確認部22が裂けるように破断した部分の有無及び破断箇所を目視で確認することにより、ガラスファイバ12が曲げられて損傷した否か、また、損傷している場合は、その場所を容易に確認して特定することができる。また、曲げられた状態から元の状態に戻されたとしても、作業者は、履歴確認部22の破断の有無及び破断箇所を確認することにより、以前にガラスファイバ12が損傷したか否か、また、損傷した場合に、その損傷箇所を容易に特定することができる。
【0027】
また、スリット23同士の周方向の間隔Tを調整することにより、ガラスファイバ12の許容曲げ半径に応じて履歴確認部22の破断のタイミングを容易に調整することができる。
さらに、屈曲履歴層21が被覆層13と異なる色を有することで、作業者は、履歴確認部22の裂け目から露出した被覆層13を目視により容易に確認することができる。
【0028】
尚、本発明は、上述した実施の形態に限定されるものではなく、適宜、変形、改良、等が可能である。その他、上述した実施の形態における各構成要素の材質、形状、寸法、数、配置箇所、等は本発明を達成できるものであれば任意であり、限定されない。
【符号の説明】
【0029】
12 ガラスファイバ
12a コア
12b クラッド
13 被覆層
21 屈曲履歴層
22 履歴確認部
23 スリット
T 間隔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コアの外周にクラッドが設けられたガラスファイバと、
前記ガラスファイバの外周を覆う被覆層と、
前記被覆層の外周に設けられた屈曲履歴層とを有し、
前記屈曲履歴層は、前記ガラスファイバが許容曲げ半径以上の曲率で曲げられることにより破断する複数の履歴確認部が長手方向に間隔をあけて形成されていることを特徴とする光ファイバ。
【請求項2】
前記履歴確認部は、周方向に間隔をあけて形成された複数のスリットを有することを特徴とする請求項1に記載の光ファイバ。
【請求項3】
前記履歴確認部は、前記ガラスファイバの許容曲げ半径に応じて前記スリットの周方向の間隔が調整されていることを特徴とする請求項2に記載の光ファイバ。
【請求項4】
前記屈曲履歴層は、前記被覆層と異なる色を有することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の光ファイバ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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