説明

光互変性フィルム材料

この発明は、太陽光線から、近赤外線と、紫外線の十分な部分とを除去する一方で、約341±5nmの波長範囲の活性線を透過させる光互変性材料に向けられている。この光透過性の光互変性材料は、光及び熱安定性を与えて、より長い有用な寿命を達成する。この光互変性材料は、1以上の層の上に設けられるかその中に含まれた構成要素を有する多層構造内に組み込まれることが好ましい。これは、光疲労に対する抵抗を強化するためである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願との相互参照]
適用なし
[連邦補助研究または開発に関する表明]
適用なし
[発明の背景]
光互変性(ホトクロミック)材料は既知であって、太陽光のスペクトル内の活性線に対する露光に応答して、光透過又は色に変化を示す。入射放射の除去は、これらの材料を元の透過状態へ逆戻りさせる。
【0002】
そのような光互変性材料は、サングラス、グラフィックス、眼病用レンズ、ソーラー制御窓フィルム、保安及び認証ラベル、並びに多くの他のものに対する製品応用を持つ。しかしながら、光互変性材料の用途は、非常に制限されてきた。これは、紫外(UV)光線、特に短波長(<400ナノメータ(nm))、並びに赤外(IR)線放射(>780nm)に対する連続した露光による材料の光互変特性の劣化に起因する。この劣化は、“光疲労”として知られており、光互変性効果を生成する有機化合物の化学的分解によって引き起こされる。
【0003】
有機化合物の光劣化は、2つの明瞭に区別される化学的プロセスを含む。1つのプロセスは、UV光線の吸収、即ち光分解と、分子結合切断により生ずる遊離基の付随した形成である。第2のプロセスは、光分解中に形成された遊離基と酸素との相互作用がペルオキシラジカルを形成する自動酸化である。このラジカルは、水素引抜によって化合物の分子構造を攻撃して、もう1つの遊離基を発生する。この遊離基の酸素との更なる反応は、ヒドロペルオキシドの形成へと導く。このヒドロペルオキシドは、光分解を通してより多くの遊離基を発生する。
【0004】
この化学的分解は、漂白(不活性)−着色(活性化)変換率の漸次減衰によって示される。可逆的色変化の総合的な不在は、色形成に責任のある分子全体の完全な劣化又は不活性化を示している。多くの特許は、光安定剤を種々に組み合わせて使用し、光互変性品の耐久性を改良することについて記載している(例えば、米国特許4,440,762号、4,720,356号、5,000,878号、5,330,686号、5,391,327号、5,973,039号、6,083,427号及び6,262,155号)。しかしながら、それらは、太陽光への長期間の露光に関与する製品に使用するには不十分である。従って、改良された耐久性及び“光疲労”に対して強化された抵抗を有する光互変性材料に対する必要性がある。
【0005】
[発明の簡単な要約]
本発明は、太陽光線から、近赤外線と、紫外線の十分な部分とを除去する一方で、活性線放射を透過させて光互変性色素を活性化するための光互変性材料を提供する。この光透過性の光互変性材料は、光及び熱安定性を与えて、より長い有用な寿命を達成する。この光互変性材料は、1以上の層の上に設けられるかその中に含まれた構成要素を有する多層構造内に組み込まれることが好ましい。1つの形態において、この発明は、シート又はフィルム形体の多層構造を備える。この多層構造は、第1の透明高分子層を有する。この高分子層は、その表面上に設けられた金属化された被覆を有する。この被覆は、約750〜2100nmの波長範囲の赤外スペクトルを除去すると共に、約400〜750nmの可視スペクトルでは透過性である。赤外フィルタ材料の上に、1つの材料の層が設けられる。この材料の層は、光互変性色素と、約280〜400nmの紫外光波長範囲で吸収性の光安定化剤とからなる。この発明の材料は、UV範囲全体の十分な部分を除去する一方で、それは所定の活性線放射の透過を許容して、化学的変化が光互変性色素で起こるようにする。第2の透明高分子層は、第1の光互変性色素及び光安定化層上に設けられ、また第1の色素及び光安定化層と同じか同様の第2の光互変性色素及び光安定化層は、第2の高分子層上に設けられる。第1の高分子層と同じ材料である透明裏材層は、第2の色素及び光安定化層を覆う。
【0006】
第1、第2及び裏材の高分子層は、市販のシート又はフィルム材料、例えばポリエステル又はポリカーボネートフィルムで構成され得る。例示的フィルムには、限定されるものではないが、二軸延伸ポリエチレンテレフタレート(PET)、Met.M−54、XIR−70及びTM−3Qが含まれる。1つの形態において、高分子材料は、意図された所望の可視色の度合いに依存して選択され得る。
赤外フィルタ層は、所望の化粧特性、即ち多層シートの所望の色合い及び透過率に依存して、銀、金、銅、アルミニウム又はそのような金属の種々の組み合わせ又は合金からなることができる。金属化された層は、光互変性色素の劣化の一因となる熱を除去するように動作する。この熱は、分離された赤外線によって表される。
【0007】
この発明によると、光安定化層は、約341±5nmの波長範囲の狭帯域の紫外線の十分な透過を許容して、光互変性色素を活性化する。第1及び第2の光互変性及び光安定化層の光安定化成分は、光互変性色素の劣化のもう1つの源となる約280〜約400nmの範囲の紫外光を除去する。しかしながら、この発明では、光安定剤は、約341±5nmの波長範囲にある活性線放射が通過することを許容する。この発明のもう1つの形態では、2つの色素及び光安定化層の使用が、その製品に対してより長い有効寿命を達成する。これは、あまり除去されていない入射光への露光に起因して第1の層が劣化した後でさえも、第2の層が意図された紫外線除去を与えるからである。2層内の色素及び安定剤の濃度は、特別な応用及び意図された寿命に適合するように、同じであっても、異なっていてもよい。
【0008】
代替実施形態では、多層シート又はフィルムは、単一の光互変性色素及び安定剤の層を有することができる。あるいは、色素及び安定剤はそれぞれの層であり得る。加えて、2より多い色素及び安定剤の層を設けることができる。色素及び安定剤の濃度は、意図された性能要件に適合するように変化され得る。
【0009】
紫外線吸収及び赤外線分離特性及び材料の独得な組み合わせを有したこの発明の光互変性の光透過性シートは、特別注文することができる。これは、透過に適度な変化を与える一方で、より長い有用な寿命と光互変性の安定性を、光疲労に対して強化された抵抗に与えるためである。適切に調製された光安定化層を備えたこの発明の多層光互変性材料の順序と方位は、除去される短波長UV光線に対する曲がりくねった経路を創生する。この経路は、化学的劣化を引き起こすことが知られており、かくして短波長UV光線の光互変性材料への貫通を最小化する。
この発明の他の特徴及び利点は、添付図面に関連してなされるその好ましい実施形態の以下の説明から、並びに請求の範囲から明らかになる。
【0010】
[発明の詳細な説明]
この発明の一実施形態では、光互変性材料は、入射太陽光線を受光するための第1のフィルタ材料であって、近赤外線を除去するように動作する第1のフィルタ材料と、前記入射太陽光線から紫外線を除去する第2のフィルタ材料と、残りの太陽光線を受光すると共にそれに反応するために設けられた光互変性色素とを備え、残りの太陽光線は、光互変性色素に対する活性化用の放射を含んでいる。
【0011】
第1のフィルタ材料は、シートに設けられる。このシートは、通常の可視スペクトル内で透過性であると共に、金属化された層を有する。この金属化された層は、厚さに依存して、50%より大きな可視光(400〜750nm)透過と、60%より大きな太陽近赤外線(750〜2100nm)反射率とを有する。これら透過/反射率の値は、100〜1000オングストローム(1Å=10nm)の金属厚さで達成される。金属の極薄被覆は、自立した高分子シート、例えばポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム上に分離して適用され、また通常は多層の金属によって製作されて、所望の色訂正、輝き低減及び化粧外観を達成する。金属化された被覆は、既知の技術、例えば物理的蒸着やスパッタリングによって、透明なポリマーの基板又はフィルム上になされる。透明なポリマーには、ポリカーボネート、ポリエステル、アクリル樹脂、ポリウレタン、ビニルコポリマー、塩化ビニリデン、セルロースポリマー、PEN又はPESがある。好ましくは、厚さ0.5〜5.0ミクロン(μm)で光学的に透明な二軸延伸ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムが使用される。
【0012】
そのような金属被覆を備えた赤外線フィルタ(又は高分子フィルム)材料には、限定されるものではないが、アルミニウム、銀、金、銅、又は銀/銅、銀/金、金/銅を含む合金、又はそれらの種々の組み合わせがある。これらの金属被覆は、精密に制御された厚さを有する多層スタックとして適用され、透明性及び中性色を与える(例えば、米国特許4,799,745号、5,071,206号、5,306,547号、5,510,173号及び6,007,901号に記載されている)。典型的な被覆厚さは、10〜50nm程度である。
【0013】
市販されている例示的な金属化された高分子フィルムには、Met.M−54、XIR及びTM−3Qがある。紫外(UV)−可視−近赤外(IR)領域から全ソーラースペクトルをカバーする測定されたスペクトルデータに基づいて、諸特性が以下に要約される。表Iは、リストされた材料の放射率を示している。この放射率は、表面で吸収された熱を表し、従って反射された熱の尺度を間接的に与える。Met.M−54、XIR−70及びTM−3Qは、全てPETフィルムであって、金属及び/又はそれらの合金の極薄層が真空被覆されて、可視光放射に対して光学的にほぼ透明である。Met.M−54は、50%程度の可視光透過を有するアルミニウムの薄層を有する。XIR−70は、60〜70%の光透過を有する銀合金の層を有する。TM−3Qは、50〜60%の光透過を有する金合金で被覆されている。
【0014】
表I. 12.5ミクロンのフィルムの熱流特性

【0015】
T=透過率; R=反射率
上記のソーラー特性値は、“シート材料のソーラーエネルギ透過率及び反射率”と称されるASTM E−424−71並びに“積分球を使用する材料のソーラー吸収率、透過率及び反射率に対する標準試験法”と称されるASTM E−903−82(1992年に再承認された)に従って決定された。
【0016】
使用された分光光度計は、パーキン−エルマーのUV−可視−近IR分光光度計ラムダ19型であった。
【0017】
第2のフィルタ材料は、選択的なUV光線を除去する一方で、約341±5nmの波長の活性線を透過させるように動作する光安定化層を備える。3つの主たる光安定剤、即ちUV吸収体(UVA)と、立体障害アミン光安定剤(HALS)と、ニッケル・クエンチャーとが利用可能である。UVAは、有害なUV光線を選択的に吸収し、それを、材料母体全体を通して無害な熱エネルギとして放散する。これらの材料は、光安定性であって、約280から400ナノメータ(nm)のUV範囲にわたって高い吸収性を有する。HALSは、光酸化プロセス中に形成された遊離基を“捕捉”することによって機能する。これらの遊離基は、光分解のより活性な副産物に対する前駆体であって、光互変特性のより迅速な劣化を促進する。ニッケルクエンチャーは、エネルギ遷移剤であって、ヒドロペルオキシドの分解を通して光酸化中に形成されたカルボニル基の励起状態を“クエンチ”することによって機能する。本発明の光安定化層は、これら安定化剤の組み合わせであって、以下で更に説明されるように、最適なフィルタリングを与える。
【0018】
特別な光互変性色素材料は、スピロインドリン・オキサジンと呼ばれる化学物質のカテゴリを包含する。この特別なタイプは、他の既知の光互変性色素よりも比較的良好な光疲労抵抗を有するものと考えられるが、依然として太陽光に対する長期の露光による劣化をこうむる。
【0019】
IRフィルタ材料、光安定剤及び光互変性色素は、随意的に多層構造内に独立した層として組み込まれるか、あるいは1以上の層の上に設けられるか、又はその中に含まれ得る。これらの層はまた、それらが連続的に積層され得る場合は、被覆又は接着剤として適用され得る。
【0020】
この発明の一実施形態では、図1に示されているように、発明の基本構造的構成は、2枚の高分子シート10a及び10bを、各々光互変性接着層30aの逆の面上に備えて、光互変性接着層30aを封じ込めると共に2層サンドイッチ構造を形成する。高分子シート10a及び10bは、通常の可視スペクトルにおいて透過性である。光互変性接着層30aは、約280〜400nmの範囲のUV光線を除去するが、約341±5nmの波長範囲にある活性線の通過を許容する。光互変性接着層30aは、積層用接着剤の薄層中に形成された光互変性色素及び光安定化材料の透明で同質の固溶体を備える。この乾燥接着フィルムは、通常5〜10マイクロメータの厚さである。高分子シート10a、即ち第1のフィルタ材料は、ごくわずかしか熱を除去できない。この積層用接着剤機能に好適なポリマータイプは、例えば、ポリエステルと、“PLAM”即ち脂肪族ポリウレタンと、“ULAM”とである。
【0021】
この発明のもう1つの実施形態では、図1Aに示されるように、高分子層10aは、一方の面上に、薄い透明な光互変性被覆層20を有することができる。この光互変性被覆層20は、光互変性接着層30a内と同じか少ない濃度の光互変性色素及び選択性UV安定剤を含み、光互変性接着層30aを活性化して色形成を起こすに必要な波長における入射UV光線の透過を可能にする。これは、開放窓を持つ第1の選択性UV吸収層であり、光互変性色素を活性化するUV光線の透過を許容する一方で、光互変性色素の化学的劣化を起こす有害なUV光線(340nm未満)を実質的に阻止する。
【0022】
光互変性接着層30a及び光互変性被覆層20の安定化材料内のUV吸収成分は、ポリマー樹脂を基準として5〜10重量%の濃度レベルで波長340nm以上のUV透過>50%を許容するタイプである。UV光線を吸収しない立体障害アミン成分は、この母体中のUV吸収体に比例した濃度のレベルにある。立体障害アミンに対するUV吸収体の重量比は、3:1〜1:3、好ましくは1:1の範囲である。この発明によれば、UV吸収体の新規な選択は、所望の狭波長範囲における最大吸収特性に基づくものであるが、好ましいUV透過勾配を創生し、更に有害な波長を最小化すると共に有用な(活性線の)UV光線放射を最大化して光互変性色形成を起こす。
【0023】
図2に示されるように、この発明の更にもう1つの実施形態では、高分子層10aは、透明/反射性金属層21の薄い堆積物を有する。この真空蒸着された透明な金属被覆は、2つの機能、即ち赤外線(約280〜約400nmの範囲)を選択的に除去すると共に、色形成を妨げる積層された層内での熱蓄積を最小化する機能と、有用なUV光線を選択的に透過させて、光互変性活性(約341±5nmの範囲)を起こすと同時に、その後方の光色素を含んだ層の化学的劣化を引き起こす短波長UV光線を反射する機能とを有する。層21上にある薄い赤外フィルタ金属被覆は、層30a内の光互変性色素/光安定剤成分の接着キャリアによって、腐食及び機械的摩耗から保護されている。図2において、高分子層10bは、光互変性接着層30aを囲む裏材層として示されている。
【0024】
この発明の異なる実施形態では、追加的なフィルタリングと光疲労の低減を与えるために、図3に示されるように、光安定化材料及び光互変性色素を含む1より多い光互変性層が設けられる。層20及び30aに含まれた光互変性材料は上述したように同じであるが、この実施形態はまた、第3の高分子層10cと第2の光互変性接着層30bを有して、3層の高分子フィルム構造を与える。第3の高分子層10cは、第2の光互変性接着層30b及び適当な量の光安定剤と共に積層されて、光互変性活性を維持する。これは、この発明の光互変性材料の光互変性活性の使用期間を更に増加するように設計されている。
【0025】
この発明の更に異なる実施形態では、図4に示されているように、3層積層体が、更に第4の高分子層10dと第3の光互変性接着層30cとを有する4層構造に拡張されている。この後続層の積み重ねは、光互変性層の貯蔵所を与えるためである。その度合いは、この発明の光互変性材料の使用期間中の先行層内における光互変性色素成分の進行性消耗が、それらの後方に構築された後続光互変性接着層によって再び満たされるようにするものである。この代替実施形態では、真空蒸着金属被覆層21は、IR放射を除去すると共に、依然として約341±5nmの波長範囲の活性線の透過を許容するものとして示されている。
この出願全体を通して引用された全ての参照文献、継続中の特許出願及び公開された特許出願の内容は、参照によりここに組み入れられる。
【実施例】
【0026】
以下の実施例は、本発明の利点を説明するために、また当業者がそれを作り且つ使用することを助けるために提供されている。これらの実施例は、この開示の範囲を如何なる仕方においても制限することを意図したものではない。
以下の実施例は、この発明に係る例示的光互変性フィルタを提供する。接着剤処方の全ての部は、そうでないと注記されていなければ、重量である。以下で参照されるシート番号は、図5のシート番号に対応する。
【0027】
[実施例I]
透明なポリエチレンテレフタレート(PET)の25マイクロメータ箔は、一方の面に、重量比1:1:1のエタノール/トルエン/メチルエチルケトン混合物を溶媒とする脂肪族ウレタン積層用接着剤の20%溶液が被覆された。この積層用接着剤は、30グラムの接着性樹脂溶液と、0.5グラムのジエポキシド硬化剤と、0.30グラムのスピロインドリン・オキサジン・色素(PPGケミカルズ社から市販されている材料であって、“フォトゾル・ブルー02−65”としても知られている)とからなる。積層用接着剤溶液は、光安定剤でないことを意味する“LAM−0”として示された。
【0028】
積層用接着剤被覆溶液は、メイヤーバーを使用して基板表面に塗布され、溶媒は、強制ホットエアーガンで、2〜8ミクロンの乾燥被覆厚さに乾燥された。これは、表面積の平方メータ当たり約2〜8グラムと等価である。
【0029】
光互変性接着剤溶液の流動学的特性は、乾燥被覆の容認できない平滑さを、10ミクロンを超える厚さで生ずる傾向がある。この光学的欠陥は、光互変性シート複合体の不活性状態では、容易に認識できるものではなかった。UV光線による活性化時に、着色状態の品質は、被覆の厚さ、平滑さ及び均一性を示すものであった。2ミクロン未満の被覆厚さは、容認できる色彩度を生じない。
この接着剤被覆されたPET上に同一のPETシートが重ねられ、ホットニッピングによる2層構造が2つのホットローラ間に表面温度100°+/−5°C程度で形成された。この被覆技術は、全ての後続積層用接着剤処方についても
使用され、多層光互変性シート製品を順次積み上げた。
[PC - Sheet #01] → PET / LAM-0 / PET / LAM-0 / PET
【0030】
[実施例II]
LAM−0の変形例が作られた。これは、BASF社によって製造された“Uvinul3088”とも呼ばれるUV吸収体である2−エチルヘキシルp−メトキシシナメートの等量(色素に関して)と、チバガイギー・スペシャルティ・ケミカルズ社から入手可能な“Tinuvin5050” と呼ばれる立体障害アミン光安定剤とを、混合物中に組み込むことによって行われた。この光安定化接着剤混合物は、“LAM−1”として示され、もう1つの3層積層体を作ることに使用された。
[PC - Sheet #02] → PET / LAM-1 / PET / LAM-0 / PET
【0031】
[実施例III]
真空被覆されたIRRSil反射体(銀合金)と呼ばれるポリエチレンテレフタレートの25マイクロメータ箔(この場合、透明金属被覆は、合計約75nmの薄い金属層のスタックで構成される)は、その金属被覆面に、接着剤混合物“LAM−0”が被覆され、そしてPETに積層されて、2相構造を形成した。同じ被覆技術は、3層積層体を作ることに使用された。
[PC - Sheet #03] → IRRSil / LAM-0 / PET / LAM-0 / PET
3層積層体のもう1つのバージョンが次のように作られた。
[PC - Sheet #04] → IRRSil / LAM-1 / PET / LAM-0 / PET
【0032】
[実施例IV]
LAM−0の別の変形例が作られた。これは、“TinuvinP”としても知られるUV吸収体である2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−メチルフェノールの等量(色素に関して)と、“Tinuvin326”としても知られる2−(5−クロロ−2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−6−(1,1−ジメチルエチル)−4−メチルフェノール(共にチバガイギー・スペシャルティ・ケミカルズ社から入手可能である)とを、混合物中に組み込むことによって行われた。この光安定化接着剤混合物は、“LAM−2”として示され、3層積層体のもう1つのシリーズを作ることに使用された。
[PC - Sheet #05] → IRRSil / LAM-1 / PET / LAM-2 / PET
【0033】
[実施例V]
他の2タイプの真空被覆されたポリエチレンテレフタレートが、熱反射フィルムとして、先に使用されたIRRSilに加えて使用された。それらは、IRRGoとIRRAlであって、金合金と純アルミニウムの極めて薄い層がそれぞれ熱反射率特性を与える。
[PC - Sheet #06] → IRRGo / LAM-1 / PET / LAM-0 / PET
[PC - Sheet #07] → IRRGo / LAM-1 / PET / LAM-2 / PET
[PC - Sheet #08] → IRRAl / LAM-1 / PET / LAM-0 / PET
[PC - Sheet #09] → IRRAl / LAM-1 / PET / LAM-2 / PET
【0034】
[実施例VI]
先の実施例と同じ順次積層技術を使用して、4層光互変性シートのサンプルが種々の積層用接着剤処方によって製作された。これらの多層構成は、次の通りである。
[PC - Sheet #10] → PET / LAM-1 / PET / LAM-2 / PET / LAM-0 / PET
[PC - Sheet #11] → IRRSil / LAM-1 / PET / LAM-2 / PET / LAM-0 / PET
[PC - Sheet #12] → IRRAl / LAM-1 / PET / LAM-2 / PET / LAM-0 / PET
加速されたソーラー放射露光下での耐用性試験で、2.5×5.0インチのシートサンプルが、キセノンアーク・ウエザーOメータCi400型内に配置された。露光時間は、50〜100時間間隔であった。試験パラメータは、以下の通りであった:340nmでの強UV出力=0.35W/m/nm;ランプ電力=3〜4Kw;空気室温度=50°+/−5°C;相対湿度=50%。
【0035】
全ての試験サンプルシートは、回転式トレー上に搭載されたフレーム内に配置され、位置決めされて、それらのIRR反射体フィルム前面がキセノンアークランプ源に面するようにした。光互変性活性は、キセノンアーク・ウエザーOメータからシートサンプルを取り出すことによって決定され、室温で平衡させることを可能にし、それから可搬型UV照射ランプ源によって30秒間“活性化”され、直ちにマクベス濃度計TD904型を使用して光学濃度を測定した。可搬型UVランプは、UVプロダクツ社によって製造され、短及び長波UV光線の双方を発生する。
【0036】
図5に示されているように、それらの結果は、特異なUV吸収体及びHALSの混合物によって特徴付けられる所定の光安定剤システムが、光抵抗及び耐久性を光互変性シートに与えることを示している。これらの添加物がないと、色可逆性の特性は、シミュレートされた太陽光露光中に100時間以下で全くなくなる(シート#1)。透明な赤外線反射フィルムを光互変性シート品の前方に使用すると、耐久性が増加され、それを最大300時間まで延長する(シート#2)。光互変性積層用接着剤処方に組み込まれて多層構造を作る赤外線反射フィルムとスペクトル選択性UV吸収体/立体障害アミン光安定剤混合物との組み合わせは、連続シミュレートされた太陽光露光の最大1000時間まで、光互変性安定化に最適なシステムを提供する。
【0037】
本発明は、好ましい実施形態に関連して説明されてきたが、当業者は、前記の明細書を読んだ後に、種々の変化、均等物の置換、及び他の変更を、ここで言及された組成及び方法にもたらすことが可能になる。それ故、特許によってここに与えられる保護は、添付された請求の範囲及びその均等物によってのみ制限されることが意図されている。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】この発明の一実施形態の図式表現である。
【図1A】この発明の一実施形態の図式表現である。
【図2】この発明の第2の実施形態の図式表現である。
【図3】この発明の異なる実施形態の図式表現である。
【図4】この発明のもう1つの実施形態を描いている。
【図5】露光された“活性化”サンプルの測定された光学濃度からのパーセント可視光透過対露光時間を実施例で説明されたように示す表IIである。
【符号の説明】
【0039】
10a、10b、10c、10d 高分子層
21 真空蒸着金属被覆層
30a、30b、30c 光互変性接着層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
入射太陽光線を受光するためのものであって、約750〜2100nmの波長範囲の赤外線を除去するように動作する第1のフィルタと、
前記入射太陽光線から約280〜400nmの波長範囲の紫外線を除去する一方で、約341±5nmの活性線を透過させる第2のフィルタと、
前記活性線を受光すると共にそれに反応するために設けられた光互変性色素と
を備えることを特徴とする光互変性材料。
【請求項2】
前記第2のフィルタは、光安定化材料である請求項1に記載の光互変性シート。
【請求項3】
前記シートは、前記光互変性色素及び前記光安定化材料の2以上の層を更に備える請求項2に記載の光互変性シート。
【請求項4】
入射太陽光線を受光すると共に前記太陽光線からの熱を低減するように動作する第1の高分子層と、
光互変性接着層と、
前記光互変性接着層を覆う第2の高分子層とを備え、
前記光互変性接着層は、光安定化材料と、光互変性色素とを備え、前記光互変性接着層は、前記入射太陽光線から約280〜400nmの波長範囲の紫外線を除去する一方で、約341±5nmの活性線放射を透過させると共にそれに反応するものであることを特徴とする透明光互変性シート。
【請求項5】
前記光互変性シートは、前記第1の高分子層の一方の面上に適用された光互変性被覆層を更に備え、前記光互変性被覆層は、光安定化材料と、光互変性色素とを備える請求項4に記載の光互変性シート。
【請求項6】
前記光互変性被覆層は、前記光互変性接着層でのように、等しい濃度の光安定化材料及び光互変性色素を有する請求項5に記載の光互変性シート。
【請求項7】
前記光互変性被覆層は、前記光互変性接着層でのように、少ない濃度の光安定化材料及び光互変性色素を有する請求項5に記載の光互変性シート。
【請求項8】
前記第1の高分子層は、金属である請求項4に記載の光互変性シート。
【請求項9】
前記光互変性シートは、金属被覆層を更に備え、前記金属被覆層は、前記第1の高分子層の一方の面上に真空蒸着されている請求項4に記載の光互変性シート。
【請求項10】
前記金属は、アルミニウム、銀、金、銅、それらの合金及びそれらの組み合わせからなる群から選択されたものである請求項8に記載の光互変性シート。
【請求項11】
前記第1の高分子層は、Met.M−54、XIR−70及びTM−3Qからなる群から選択されたものである請求項4に記載の光互変性シート。
【請求項12】
前記光互変性色素は、スピロインドリン・オキサジン又はその類似体である請求項4に記載の光互変性シート。
【請求項13】
前記光互変性色素は、フォトゾル・ブルー02−65である請求項4に記載の光互変性シート。
【請求項14】
前記光安定化材料は、紫外線吸収体、立体障害アミン光安定剤、光クエンチャー及びそれらの組み合わせからなる群から選択されたものである請求項4に記載の光互変性シート。
【請求項15】
前記光安定化材料は、紫外線吸収体と立体障害アミン光安定剤の3:1〜1:3の比の組み合わせである請求項4に記載の光互変性シート。
【請求項16】
前記光安定化材料は、紫外線吸収体と立体障害アミン光安定剤の1:1の比の組み合わせである請求項4に記載の光互変性シート。
【請求項17】
前記第1及び第2の高分子層は、ポリエステルフィルム又はポリカーボネートフィルムであり得る請求項4に記載の光互変性シート。
【請求項18】
前記第1及び第2の高分子層は、ポリエチレンテレフタレートである請求項4に記載の光互変性シート。
【請求項19】
前記シートは、第2の光互変性接着層と、この第2の光互変性接着層を覆う裏材の高分子層とを更に備える請求項4に記載の光互変性シート。
【請求項20】
前記第2の光互変性接着層は、前記第1の光互変性接着層のように、等しい濃度の前記光安定化材料及び前記光互変性色素を有する請求項19に記載の光互変性シート。
【請求項21】
前記第2の光互変性接着層は、前記第1の光互変性接着層のように、増加された濃度の前記光安定化材料及び前記光互変性色素を有する請求項19に記載の光互変性シート。
【請求項22】
第1の透明高分子層と、
前記第1の高分子層上に設けられて約341±5nの活性線の通過を許容する光互変性被覆層であって、光安定化材料と光互変性色素とを備える光互変性被覆層と、
第1の光互変性接着層であって、前記光互変性被覆層に設けられたように、等しいか大きい濃度の光安定化材料と光互変性色素とを備えた第1の光互変性接着層と、
前記光互変性被覆層及び前記光互変性接着層を包囲する第2の透明高分子層と、
前記第1の光互変性接着層のように等しいか大きい濃度を有する第2の光互変性接着層と、
前記第2の光互変性接着層上に設けられた裏材の透明高分子層と
を備えることを特徴とする光互変性シート。
【請求項23】
前記第1の透明高分子層は、金属を有する請求項22に記載の光互変性シート。
【請求項24】
前記金属は、アルミニウム、銀、金、銅、それらの合金及びそれらの組み合わせからなる群から選択されたものである請求項23に記載の光互変性シート。
【請求項25】
前記第1の透明高分子層は、Met.M−54、XIR−70及びTM−3Qからなる群から選択されたものである請求項22に記載の光互変性シート。
【請求項26】
前記第2、第3及び裏材の透明高分子層は、ポリエチレンテレフタレートである請求項22に記載の光互変性シート。
【請求項27】
第1の透明高分子層と、
前記第1の透明高分子層上に真空蒸着された金属被覆層と、
前記金属被覆層上に適用されて約341±5nの波長の活性線の通過を許容する第1の光互変性接着層であって、光安定化材料と光互変性色素とを備えた第1の光互変性接着層と、
前記金属被覆層及び前記光互変性接着層を一方の面で包囲する第2の透明高分子層と、
前記第2の透明高分子層の他方の面上に設けられた第2の光互変性接着層と、
前記第2の光互変性接着層上に設けられた第3の透明高分子層と、
前記第3の透明高分子層上に設けられた第3の光互変性接着層と、
前記第3の光互変性接着層上に設けられた裏材の透明高分子層と
を備えることを特徴とする光互変性シート。
【請求項28】
前記第1、第2、第3及び裏材の透明高分子層は、ポリエチレンテレフタレートである請求項27に記載の光互変性シート。

【図1】
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【図1A】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2007−519939(P2007−519939A)
【公表日】平成19年7月19日(2007.7.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−520548(P2006−520548)
【出願日】平成16年12月17日(2004.12.17)
【国際出願番号】PCT/IB2004/004427
【国際公開番号】WO2005/059644
【国際公開日】平成17年6月30日(2005.6.30)
【出願人】(000102980)リンテック株式会社 (1,750)
【Fターム(参考)】