説明

光反応促進用チタン酸化物触媒の製造方法

【目的】 光反応促進用チタン酸化物触媒の製造方法に関する。
【構成】 チタンのアルコキシド化合物を加水分解することよりなる光反応促進用チタン酸化物触媒の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は光反応促進用チタン酸化物触媒の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】従来のチタン酸化物の製造方法としては、下記の硫酸法と塩素法がある。
【0003】(1)硫酸法チタン鉱石(Fe2 3 ・TiO2 )を濃硫酸に作用させてFe2 SO4 を溶解し、チタンは硫酸チタニル(固相)としてろ別し、この硫酸チタニルの加水分解や中和沈澱法にて製造され、一般には顔料(チタンホワイト)やNOx分解触媒用担体として利用されている。
【0004】(2)塩素法他の方法としてチタン鉱石に塩素を作用させ塩化チタン(TiCl4 :液状)として回収し、塩化チタンを加水分解することによってもTiO2は製造されている。
【0005】従来のTiO2 は下記のような光化学反応系に利用されている。
【0006】
(1)2H2 O+hμ → 2H2 +O2 ・・・・・(1)
TiO2 の存在下で紫外線を照射することによって光エネルギー(hμ)をH2 Oに与えると、H2 OをTiO2の触媒作用により励起されて分解反応を起こし、H2 とO2に分解する。
【0007】
(2)2NO+hμ → N2 +O2 ・・・・・(2)
TiO2 の存在下で光エネルギー(hμ)を窒素酸化物(NO)に与えると、NOはTiO2 の触媒作用により励起されて反応し、N2 とO2 に分解される。
【0008】またTiO2 は、例えば五酸化バナジウム(V2 5 )からなる触媒の存在下で、下記の反応により、NOをNH3 と反応させN2 とH2 Oに転化する触媒としても用いられている。
(3)4NO+4NH3 → 4N2 +6H2 O・・・・・(3)
【0009】
【発明が解決しようとする課題】従来のTiO2 の製造方法には下記のような問題点がある。
【0010】(1)従来法で得られたTiO2 は粘結性が全くない粉体で、使用目的に応じた形状、例えば触媒では粒状とかハニカム状又はバグフィルターとしては布状等に形成する場合は粘結材が必要であり、純TiO2 への成形が不可能。
【0011】(2)純TiO2 の成形品が得られないので、触媒として利用するときは性能の発揮が不充分。
【0012】(3)塩素法の場合は加水分解反応(TiCl4 +2H2 O→TiO2 +4HCl)時に生成するTiO2 は細心の制御をしないと触媒活性のあるアナターゼ結晶が得られず顔料としてのルチル結晶のTiO2 となる。
【0013】上述したように、いずれのTiO2 の製造方法にしても、得られるTiO2 はアナターゼかルチル結晶であって、高活性な無定形(無定形ならば全て活性であるとは言えないが)のTiO2 は得られず、前記(3)式の反応以外には実用化に到っていない。
【0014】しかも、(3)式の反応もNH3 が必要でコスト高になること、反応を促進するためには200℃以上の温度が必要であるため、常温のNOx分解には応用されていない。
【0015】本発明は上記技術水準に鑑み、任意の形状に成形可能で、しかも光反応用触媒として高活性はチタン酸化物を製造する方法を提供しようとするものである。
【0016】
【課題を解決するための手段】本発明はチタンのアルコキシド化合物を加水分解することを特徴とする光反応促進用チタン酸化物の製造方法である。
【0017】
【作用】本発明のチタンのアルコキシドを加水分解して得られるチタン酸化物は、従来法で得られる酸化チタンと異なり、それ自体で用途目的に応じた成形が可能なものであるため、粘結剤なしで任意の形状(繊維状、ペレット状など)に成形することができ、又紫外線照射の下に高活性な触媒作用を奏する効果を有する。
【0018】
【実施例】先ず比較のために、TiO2 (アナターゼ結晶)として和光純薬工業(株)コードNo.207−11121、ルチル結晶として関東化学(株)コードNo.40167を検討した。これらは粉体のため、触媒として使用するには目的に適応する形状、例えば粒状、ハニカム状等への成形が必要となる。そのため、円筒形表面への貼付による薄膜化が好ましいが、これらのTiO2 粉体は極めて安定であるため単独組成では成形し難く粘結剤の使用を余儀なくされ、粘結剤のAl2 3 として5%含有のアルミナゾルを適用した。
【0019】準備したTiO2 各々(アナターゼ結晶及びルチル結晶)にアルミナゾルをTiO2 :Al2 3 が重量にて100:1の比となるように混合し、さらにTiO2 に対して水を20%添加してスラリー状とし、図2に示すように内径55mm(肉厚3mm)のガラス管内部に200mmの長さに塗布した。105℃乾燥後、空気雰囲気の電気炉内にて500℃×5時間焼成した。この時成形したTiO2 は0.3mmの厚さであった。
【0020】図3に示すように、このガラス管の内部に6Wの水銀灯を挿入し、ガラス管の両端を閉栓して反応器とした。
【0021】この反応器の一端から、空気中にNOを100ppm に混合した反応ガス1リットル/min を送入し、水銀灯電源より給電して水銀灯を点灯した。
【0022】反応器の反対側から出てくるガス組成を分析すると、NO2 と未反応のNOが検出され、これをアナターゼ型TiO2 については図1の■に、またルチル型については図1の■に示した。なお、空気の代わりにHe−O2 (He/O2 =79/21)の反応ガスでのテストでNOとNO2 の差分は生成するN2 の量に等しいから、NOは下記(4),(5)式に示す通り一部NO2 を経由してTiO2 上でN2 とO2 分解する反応機構である。
2NO+O2 → 2NO2 ・・・・・(4)
2NO2 → N2 +2O2 ・・・・・(5)
【0023】次に、本発明の実施例をあげ、本発明の効果を立証する。テトライソプロポオキシチタネート(以下、TITと略称する)1mol を等モルのエタノールに溶解させ、塩酸0.5mol を含有する3mol の水を加えて加水分解した。40℃に加温し32時間攪拌すると高粘性物となる。この高粘性物質を上記比較例と同様に内径55mmのガラス管内壁に塗布して105℃に一定量を保つまで乾燥させた。その後、500℃にて空気雰囲気の電気炉内で5時間焼成した。この時ガラス管内壁に付着しているTiO2 は0.15mmの厚さで比較例と異なり強固であった。このTiO2 はX線回折を示さない非晶質であった。TiO2 以外の物質は気散するため、純粋なTiO2 が得られ、かつガラス内壁に強固に塗布ができた。また、この製造方法で得られたTiO2 は球状や繊維状TiO2 に容易に成形することも可能であった。
【0024】次に比較例と同一の条件で、水銀灯によりNOの分解を行い、図1の■に示す結果を得た。比較例のルチル型やアナターゼ型のTiO2 はNOの約80%は反応するも、そのほとんどはNO2 でとどまっている。これに対し、本発明の無定型のTiO2 は数%はNO2 として残留するも、供給したNOはほとんど反応しかつN2 とO2 に分解することがわかる。
【0025】以上の実施例ではチタンのアルコキシド化合物としてTITを代表例としてあげたが、他のアルコキシド化合物も使用することができ、また製造されたTiO2 はNOxの光分解触媒としてのみではなくH2 OのH2 ,O2 への光分解触媒、O3 のO2 への光分解触媒、NOxのNH3 の存在下における光分解触媒としても有効に使用することができる。
【0026】
【発明の効果】本発明によれば、使用目的に応じた形状に成形しやすく、かつ光反応促進効果の優れたTiO2 を製造することができる。特に繊維状TiO2 を製造できるので、これを織布とすればダスト捕集作用を有する光触媒とすることも可能で、その工業的効果は顕著なものがある。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明方法で得られた光反応促進用チタン酸化物触媒の効果を示す図表。
【図2】光反応を行うための装置の製作法の説明図。
【図3】光反応を行うための装置の使用態様の説明図。

【特許請求の範囲】
【請求項1】 チタンのアルコキシド化合物を加水分解することを特徴とする光反応促進用チタン酸化物の製造方法

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開平5−17153
【公開日】平成5年(1993)1月26日
【国際特許分類】
【出願番号】特願平3−168003
【出願日】平成3年(1991)7月9日
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)