説明

光学シート及び反射偏光型光学デバイス

【課題】取り扱いが容易であるだけでなく、反射偏光子と組み合わせて用いられた際に、光学特性の劣化を引き起し難い光学シートを提供する。
【解決手段】反射偏光子16の少なくとも片面に積層され、一体化される光学シートであって、透明な樹脂シートからなり、前記反射偏光子16に積層される面とは反対側の面が、カットオフ値0.08mmとしてJIS B 0601:2001に基づいて測定された算術平均粗さRaが0.5μm以下であり、粗さ曲線要素の平均長さRSmが10〜200μmの範囲にあり、十点平均粗さRzJISが1〜20μmの範囲にあること光学シート17。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学ディスプレイなどに用いられる光学シートに関し、より詳細には、反射偏光子と組み合わせて用いられる光学シート及び該光学シートを用いた反射偏光型光学デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、パーソナルコンピューターのモニタやテレビジョン受像機に、様々な光学ディスプレイ装置が用いられている。このような光学ディスプレイ装置としては、液晶表示装置、プラズマディスプレイ装置などが存在する。光学ディスプレイ装置においては、表示品位を高めるために、解像度や輝度の向上が強く求められている。
【0003】
下記の特許文献1には、輝度を高める構造を備えた光学ディスプレイ装置が開示されている。すなわち、特許文献1には、液晶セルなどからなるディスプレイモジュールと、ライン照射式のバックライトとの間に、プリズムレンズシート及び反射偏光子を配置してなる反射偏光子ディスプレイ装置が開示されている。上記反射偏光子は、第1の偏光状態の光が、リサイクルするために、バックライトの方向へ反射され、第2の偏光状態の光が、反射偏光子を通過するように配置された複数の複屈折性材料層を積層してなる積層体からなる。
【0004】
上記反射偏光子を用いることにより、輝度を向上することができるとされている。
【0005】
特許文献1に記載のような反射偏光子を用いた液晶表示装置が市販されている。このような液晶表示装置の構造を図3の略図的分解図により示す。液晶表示装置101は、バックライト方式の液晶表示装置である。従って、光源としてのバックライト102を有する。バックライト102は、直下型のバックライトであり、複数本の蛍光放電管102aを有する。複数本の蛍光放電管102aは、図面の紙面−紙背方向に延ばされている。
【0006】
バックライト102上に拡散板103及び例えばビーズ付のビーズ付拡散シート104が積層される。拡散板103は、乳白色の合成樹脂シートからなり、下面から入射してきた光を拡散させる作用を有する。ビーズ付拡散シート104では、拡散性を有する樹脂フィルムの片面に多数のビーズ104aが固着されている。直下型バックライト102では、複数の蛍光放電管102aから光が上方に照射されるが、最終的に観察者が放電管の形状を認識しないように光を拡散させる必要がある。そのために、拡散板103及びビーズ付拡散シート104が積層されている。
【0007】
プリズムレンズシート105がビーズ付拡散シート104上に積層される。プリズムレンズシート105は、透明な樹脂もしくはガラス等からなり、上面には、複数本のプリズムレンズ部105aが形成されている。複数本のプリズムレンズ部105aは、紙面−紙背方向に延びる三角柱形状を有する。プリズムレンズ部105aの頂点の内角は90度程度とされ、該頂点は丸められていることもある。
【0008】
プリズムレンズシート105は、下方のバックライト102の蛍光放電管102aの形状を見えなくするだけでなく、入射してきた光の内より多くの光を液晶表示セル側正面に集光させるために設けられている。すなわち、拡散板103や拡散シート104からプリズムレンズシート105には、様々な方向に進む光が入射される。その内、プリズムレンズシート105を通過する光以外の光は、プリズムレンズシート105により反射され、バックライト102側において再度反射され、プリズムレンズシート105に再度入射されることになる。従って、多くの光を利用することができる。
【0009】
また、プリズムレンズシート105と、液晶表示セル106との間に、反射偏光子107が配置されている。ここでは、反射偏光子107の両面に、拡散シート108,109が積層されている。拡散シート108,109は、拡散板103及びビーズ付拡散シート104と同様に、下方の蛍光放電管102aの形状を見え難くし、かつプリズムレンズシート105のプリズムレンズ部105aの形状を見え難くするために配置されている。従って、光拡散性を有する透明な合成樹脂フィルムからなる。
【0010】
他方、反射偏光子107は、特許文献1に記載のように、複数の複屈折材料を積層した多層構造を有する積層体からなる。この反射偏光子107では、下方から入射してきた光の内、第2の偏光状態の光は通過し、第1の偏光状態の光はリサイクルされるように、バックライト102側に反射される。反射された第1の偏光状態の光は、拡散シート109とバックライト102との間のいずれかの部分で再度反射され、偏光状態が変換される。この偏光状態が変換された光が、再度反射偏光子107に入射する。偏光状態が変換された光の内、第2の偏光状態の光が、反射偏光子107を通過する。従って、より多くの光が液晶表示セル106に到達する。それによって、輝度が高められる。
【特許文献1】特許第3448626号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
液晶表示装置101では、プリズムレンズシート105と、反射偏光子107とを利用することにより、輝度の向上が図られている。しかしながら、組み立てに際し、バックライト102と液晶表示セル106との間に、拡散板103、ビーズ付拡散シート104、プリズムレンズシート105及び両面に拡散シート108,109が積層された反射偏光子107を積層しなければならず、部品点数が多く、組み立て工程が煩雑であった。
【0012】
そこで、プリズムレンズシートと反射偏光子とを積層し、一体化することが試みられている。すなわち、プリズムレンズシート105と、拡散シート108,109が積層された反射偏光子107とに代えて、プリズムレンズシートのプリズムレンズ部が形成されている側とは反対側の面すなわち下面に反射偏光子を直接貼り合わせ、該反射偏光子の下面に拡散シートを貼り合わせ、一体化した構造が検討されている。この構造によれば、バックライト102と、液晶表示セル106との間に、拡散板103及びビーズ付拡散シート104以外に、上記一体化された構造のみを積層すればよい。従って、部品点数の低減、組み立て工程の簡略化を図り、コストを低減することができる。
【0013】
しかしながら、このような構造では、プリズムレンズシート及び反射偏光子の双方を用いているにもかかわらず、図3に示した液晶表示装置101の場合に比べて、輝度が低下したり、十分な輝度を有する視野角範囲が狭くなることがあった。
【0014】
本発明の目的は上述した従来技術の現状に鑑み、反射偏光子に積層されて一体化される光学シートであって、反射偏光子を用いた液晶表示装置の製造工程の煩雑さを招くことなく、輝度や視野角などの光学特性の劣化を抑制することを可能とする、光学シート、並びに該光学シートを用いた反射偏光型光学デバイスを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明に係る光学シートは、反射偏光子の少なくとも片面に積層され、一体化される光学シートであって、透明な樹脂シートからなり、前記反射偏光子に積層される面とは反対側の面が、カットオフ値0.08mmとしてJIS B 0601:2001に基づいて測定された算術平均粗さRaが0.5μm以下であり、粗さ曲線要素の平均長さRSmが10〜200μmの範囲にあり、十点平均粗さRzJISが1〜20μmの範囲にあることを特徴とする。
【0016】
すなわち、本発明に係る光学シートでは、反射偏光子に積層される面と反対側の面が上記特定の範囲の表面粗さを有する粗面とされている。
【0017】
通常、上記反射偏光子に積層される拡散シートのような光学シートは薄い樹脂フィルムからなり、他のシートや他の部材の表面に容易に密着する傾向がある。そのため、製造に際しての取り扱いが容易でないため、表面がかなり粗くされているのが普通であった。
【0018】
これに対して、本発明に係る光学シートは、反射偏光子に積層される面と反対側の面の表面粗さが上記特定の範囲とされており、すなわち、かなり滑らかにされている。従って、取り扱い性を低下させることがない。しかも、輝度等の光学特性の劣化を抑制することが可能とされている。
【0019】
なお、上記光学シートが積層される反射偏光子としては、特に限定されるわけではないが、前述した特許文献1に記載の反射偏光子が好適に用いられる。すなわち、本発明に係る光学シートは、好ましくは、入射面と入射面とは反対側の面である出射面とを有し、入射面から入射された光の内、第1の偏光状態の光がリサイクルされるように反射され、第2の偏光状態の光が出射面から出射される、複数の複屈折材料を積層してなる積層体からなる反射偏光子に積層される用途に好適に用いられる。
【0020】
また、本発明に係る光学シートは好ましくは拡散シートであり、それによって、例えば直下型バックライト式の液晶表示装置に用いられた場合、下方の光源の形をより一層見え難くすることができる。
【0021】
本発明に係る反射偏光型光学デバイスは、反射偏光子の少なくとも片面に、本発明に係る光学シートが積層され、一体化されている構造を有する。反射偏光子と光学シートとが予め積層され一体化されているので、液晶表示装置などの光学ディスプレイ装置の組み立てに際しての部品点数の低減及び組み立て工程の簡略化を図ることができる。
【0022】
上記反射偏光型光学デバイスにおいては、本発明の光学シートは、反射偏光子の両面に積層されていてもよい。
【0023】
好ましくは、本発明に係る反射偏光型光学デバイスでは、上記反射偏光子の片面に本発明の光学シートが積層され一体化されており、反対側の面にプリズムレンズシートが積層され一体化されている。この場合には、プリズムレンズシート及び反射偏光子が予め一体化されているので、光学ディスプレイ装置の製造に際しての部品点数のより一層の低減及び組み立て工程のより一層の簡略化を図ることができる。
【発明の効果】
【0024】
本発明に係る光学シートでは、反射偏光子に積層される面とは反対側の面が完全な平坦ではなく、上記特定の表面粗さを有しているため、該光学シートを反射偏光子に積層する作業や反射偏光子に光学シートが積層された積層体を用いてディスプレイ装置等を組み立てる作業に際しての取り扱い性が低下しない。
【0025】
加えて、上記特定の表面粗さを有するため、後述する実施例からも明らかなように、液晶表示装置などの光学ディスプレイ装置に適用した際の光学特性の劣化も生じ難い。
【0026】
よって、液晶表示装置をはじめとする光学ディスプレイ装置の製造に際し、反射偏光子を用いる場合、本発明の光学シートを反射偏光子に積層することにより、組み立て工程の煩雑さを招くことなく、良好な表示性能を得ることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
以下、図面を参照しつつ、本発明の具体的な実施形態を説明することにより、本発明を明らかにする。
【0028】
(反射偏光子)
本発明に係る光学シートは、反射偏光子の少なくとも片面に積層される。反射偏光子とは、入射してきた光の内、特定の偏光状態の光を通過させ、残りの偏光状態の光を反射する偏光子を広く含むものとする。このような反射偏光子としては、特許文献1に記載の反射偏光子を好適に用いることができる。特許文献1に記載の反射偏光子を図2を参照して説明する。
【0029】
図2は、特許文献1に記載の反射偏光子を示す略図的斜視図である。反射偏光子1では、複数の複屈折材料層A,Bが積層されている。ここで、複屈折材料層A,Bを積層することにより、反射偏光子1の下面1aから入射してきた光の内、ある偏光状態の光はそのまま上面1b、すなわち出射面から出射される。他方、他の偏光状態の光は、反射され、入射面である1aから入射側に戻されることになる。すなわち、反射される偏光状態の光を第1の偏光状態の光とし、通過する偏光状態の光を第2の偏光状態の光とした場合、第1の偏光状態の光がリサイクルされるように、下面1aから入射側に戻されることになる。
【0030】
このような反射偏光子1を用いた場合、第1の偏光状態の光が入射側において再度反射された際に、偏光状態が変換され、一部が第2の偏光状態の光となる。従って、入射側で反射された光により、あるいは他の偏光変換手段により、第2の偏光変換の光とされた光が、再度反射偏光子1に入射すると、反射偏光子1を通過し、出射面から出射されることになる。よって、反射偏光子1を用いることにより、より多くの光を利用することができ、例えば輝度を高めることができる。
【0031】
反射偏光子1は、前述したように、複屈折材料層A,Bを積層することにより得られる。複屈折材料層Aは、図示のx方向の屈折率が複屈折材料層Bと同じであり、y方向の屈折率が異なる材料により構成される。このような材料の例としては、複屈折材料層Aとして、結晶質もしくは半結晶質の有機ポリマーを用い、複屈折材料層Bとして有機ポリマーを適宜選択することなどにより行い得る。
【0032】
上記のような結晶質もしくは半結晶質の有機ポリマーとしては、特に限定されないが、例えばポリエチレンナフタレート(PEN)とその異性体(例えば、2,6−、1,4−、1,5−、2,7−及び2,3−PEN)、ポリエチレンテレフタレートなどのポリアルキレンテレフタレート、ポリイミド、ポリエーテルイミド、ポリカーボネート、ポリ(メタ)アクリレートなどを挙げることができる。
【0033】
また、上記複屈折材料層Bを形成する材料としては、例えば、PENの共重合体(例えば、2,6−、1,4−、1,5−、2,7−及び/または2,3−ナフタレンジカルボン酸−ナフタレンジカルボン酸またはそのエステルと、(a)テレフタル酸またはそのエステル、(b)イソフタル酸またはそのエステル、(c)フタル酸またはそのエステルなどとの共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体などのスチレン系共重合体などが挙げられる。
【0034】
上記反射偏光子1を構成する複屈折材料層A,Bの積層数及び積層態様は特に限定されるものではないが、通常交互に数十〜数百層積層される。
【0035】
(本発明の光学シート)
本発明に係る光学シートは、上記反射偏光子の少なくとも片面に積層され、一体化される。この積層・一体化は、例えば接着剤により貼り合わせることにより行われるが、光学シートは直接融着等により反射偏光子に貼り合わされ、一体化されてもよい。
【0036】
本発明の光学シートは、透明な樹脂フィルムからなる。透明性を有する限り、使用する樹脂材料は特に限定されない。
【0037】
本発明の光学シートに用いられる樹脂材料としては、透明性が良好で且つ着色が無く、実用に耐えうる強度や耐久性を有するものであれば良く、例えば、ポリカーボネート、ポリメチルメタクリレート、ポリエステル、ポリオレフィンなどを挙げることができる。
【0038】
上記光学シートは、上記反射偏光子に積層される面とは反対側の面が平坦でないことが必要である。すなわち、光学シートの反射偏光子に積層される面とは反対側の面は、カットオフ値を0.08mmとして測定されたJIS B 0601:2001による算術平均粗さRaが0.5μm以下の範囲にあり、粗さ曲線要素の平均長さRSmが10〜200μmの範囲にあり、十点平均粗さRzJISが1〜20μmの範囲にあることが必要である。
【0039】
算術平均粗さRaが上記範囲よりも粗い場合には、後述する実験例から明らかなように、表面輝度や積算光量などの光学特性の劣化が大きくなる。また、粗さ曲線要素の平均長さRSmが10μmよりも小さい場合には表面輝度や積算光量が劣化し、200μmを超えると他のシート部材との光学干渉によるニュートンリングの発生や取り扱い性の低下が生じる。さらに、算術平均粗さRa及び粗さ曲線要素の平均長さRSmが上記の範囲を満足していても、十点平均粗さRzJISが1μmを下回るとニュートンリングの発生や取り扱い性の低下が生じ、20μm以上とした場合には表面輝度や積算光量の劣化が生じる。
【0040】
好ましくは、上記算術平均粗さRaは0.2μm以下が望ましい。また、粗さ曲線要素の平均長さRSmは20〜100μmの範囲であり、十点平均粗さRzJISは、より好ましくは2〜10μmの範囲であることが望ましい。
【0041】
なお、上記表面粗さは、後述の実施例の項から明らかなように、触針式表面粗さ測定装置を用いて測定した値である。
【0042】
上記のような表面粗さを実現し得る手段は特に限定されない。樹脂フィルムの成膜にあたり、成膜条件を調整することにより上記表面粗さを実現してもよい。例えば、金型により矩形合成樹脂シートを得る場合には、金型表面の粗さを調整することにより、光学シート表面に上記特定の表面粗さを与えることができる。
【0043】
あるいは、合成樹脂シートを成膜した後に、表面に樹脂ビーズ等を固着する処理を行うことにより、上記表面粗さを実現してもよい。
【0044】
好ましくは、熱可塑性樹脂を用いた溶融押出成膜であって、上記特定の表面粗さ形状を賦型することが可能なロール状金型により連続的に賦型することで上記特定の表面粗さを有する本発明のシートを容易に得ることができる。
【0045】
光学シートの厚みについては特に限定されず、反射偏光子に積層されるものであるため、通常50〜500μm程度とされる。この範囲内とすることにより、輝度の低下を招くことなく、十分な光学特性を得ることができる。
【0046】
(反射偏光型光学デバイス)
本発明に係る反射偏光型光学デバイスは、反射偏光子の少なくとも片面に本発明の光学シートが積層された構造を有する限り、特に限定されるものではない。反射偏光子の両面に本発明の光学シートが積層されて一体化されていてもよい。すなわち、図3に示した反射偏光子107の両面に拡散シート108,109が積層されている積層体において、拡散シート108,109の代わりに本発明の光学シートを積層してなる積層体も、本発明の反射偏光型光学デバイスに含まれるものである。
【0047】
また、本発明に係る反射偏光型光学デバイスは、反射偏光子の片面に光学シートが積層されており、反対側の面にプリズムレンズシートが積層されている構造を有するものであってもよい。このような反射偏光型光学デバイスを用いたディスプレイ装置を図1(a)に略図的分解斜視図で示す。この光学ディスプレイ装置は、バックライト式の液晶表示装置である。液晶表示装置11は、バックライト12を有する。バックライト12は、複数の蛍光放電管12aを有する。複数の蛍光放電管12aの上面は、拡散板13が積層されている。拡散板13の上方には、ビーズ付拡散シート14が積層されている。このようなバックライト12、拡散板13及びビーズ付拡散シート14は、図3に示した従来のバックライト102、拡散板103及びビーズ付拡散シート104と同様である。従って、これらの説明は省略することとする。
【0048】
上記ビーズ付拡散シート14上に、本発明の一実施形態としての反射偏光型光学デバイス15が積層される。
【0049】
反射偏光型光学デバイス15は、反射偏光子16の片面に本発明に係る光学シート17が積層された構造を有する。反射偏光子16の反対側の面にはプリズムレンズシート18が積層され、一体化されている。すなわち、反射偏光型光学デバイス15では、反射偏光子16に、光学シート17及びプリズムレンズシート18が貼り合わされ、一体化されている。従って、部品点数の低減を図ることができ、組み立て工程の簡略化を図ることができる。
【0050】
なお、上記プリズムレンズシート18の上方には、偏光板19、液晶表示セル20及び偏光板21がこの順序で積層される。この偏光板19,21が両面に貼り合わされる液晶表示セル20は、従来より周知の液晶表示装置の製造方法に従って用意される。
【0051】
液晶表示装置11のように、反射偏光型光学デバイス15を用いることにより、製造工程の簡略化を図ることができる。しかも、光学シート17の反射偏光子16に積層されている面と反対側の面、すなわち下面が上記特定の表面粗さとされている。従って、表面輝度などの光学特性の劣化を招くことなく、製造工程の簡略化を図ることができる。
【0052】
なお、図1(b)に示されているように、上記プリズムレンズシート18の複数本のプリズムレンズ部18aの稜線は丸められていてもよい。もっとも、プリズムレンズ部18aの頂点すなわち稜線は、丸められておらずともよい。
【0053】
次に、具体的な実施例及び比較例を挙げることにより本発明の効果を明らかにする。
【0054】
(実施例1)
以下の要領で図1(a)に示した液晶表示装置11を組み立てた。バックライト12として、シャープ社製の液晶テレビAQUOS LC−20S1のバックライトを取り出し、拡散板13として旭化成ケミカルズ社製の拡散板(グレードMS、厚さ2mm)、ビーズ付拡散シート14としてきもと社製、品番:100DX2(ポリエチレンテレフタレート(PET)基材にスチレンビーズをアクリル系バインダーに分散させたものを塗布したものからなり、厚みは100μm)を用意した。
【0055】
また、反射偏光型光学デバイス15として、ミネソタマイニングアンドマニュファクチュアリングカンパニー製の反射偏光子16(品名:DBEF、厚さ132μm)の片面に110μmの厚みのポリカーボネート(PC)からなる光学シート17をポリエステル系接着剤により貼り合わせ、他面にPCからなるプリズムレンズシート18をポリエステル系接着剤により貼り合わせたものを用意した。プリズムレンズシート18としては、プリズムレンズ部の斜面のなす角度が93度、プリズムレンズ部18aからのピッチが50μm、プリズムレンズ部18aの頂部から谷底までの高さが19μmであるもの(プリズムシートの厚み100μm)を用意した。
【0056】
液晶表示セル20及び偏光板19,21としては、上記の液晶テレビに搭載されていたものを用いた。
【0057】
上記光学シート17を反射偏光子16に積層するに先立ち、表面粗さ測定装置を用いて以下の要領で測定した。
【0058】
表面粗さの測定:東京精密社製、サーフコム120A装置を用い、光学シートの表面粗さJIS B 0601:2001に準拠して測定した。なお、カットオフ値は0.08mmとした。表面粗さパラメータの数値化に際しては、上記表面粗さ測定装置に内蔵された計算プログラムにより、算術平均粗さRa、粗さ曲線要素の平均粗さRSm及び十点平均粗さRzJISを求めた。
【0059】
また、上記のようにして作製した液晶表示装置の正面輝度及び積算光量をELDIM社製のEZContrast80で測定した。結果を下記の表1に示す。
【0060】
(実施例2)
使用した光学シートの表面粗さを下記の表1に示すように、変更したことを除いては、実施例1と同様にして実施例2の液晶表示装置を作製し、同様にして評価した。結果を下記の表1に併せて示す。
【0061】
(比較例1及び2)
使用した光学シートの表面粗さを下記の表1に示すように、変更したことを除いては、実施例1と同様にして液晶表示装置11を作製し、評価した。結果を下記の表1に示す。
【0062】
(実施例B)
図3に示した液晶表示装置101と同様の液晶表示装置を製造した。ここでは、バックライト102は、拡散板103及びビーズ付拡散シート104並びに液晶表示セルと偏光板については実施例1と同様とした。すなわち、実施例1における反射偏光型光学デバイス15に代えて、図3に示されているプリズムレンズ105を排除し、反射偏光子107の両面に拡散シート108,109が積層された積層体を用いた。また、反射偏光子107についても、実施例1で用いた反射偏光子16と同じものを用いた。但し、拡散シート108,109として、下記の表1に示す材料及び厚みの光学シートを用いた。この光学シートの表面粗さを、下記の表1に併せて示す。
【0063】
上記のようにして得た液晶表示装置101についても、表面輝度及び積算光量を測定した。結果を下記の表1に示す。
【0064】
(比較例B)
使用した光学シートの表面粗さを下記の表1中に示すように変更したことを除いては、実施例Bと同様にして液晶表示装置を作製し、評価した。結果を下記の表1に示す。
【0065】
【表1】

【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】(a)は、本発明の一実施形態に係る反射偏光型光学デバイスが用いられた液晶表示装置の分解斜視図であり、(b)は、反射偏光型光学デバイスの正面図である。
【図2】本発明の光学シートが積層される反射偏光子の一例を示す斜視図。
【図3】従来の液晶表示装置の一例を示す分解図。
【符号の説明】
【0067】
1…反射偏光子
1a…入射面
1b…出射面
11…液晶表示装置
12…バックライト
13…拡散板
14…ビーズ付拡散シート
15…反射偏光型光学デバイス
16…反射偏光子
17…光学シート
18…プリズムレンズシート
18a…プリズムレンズ部
19…偏光板
20…液晶表示セル
21…偏光板
A…複屈折材料層
B…複屈折材料層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
反射偏光子の少なくとも片面に積層され、一体化される光学シートであって、
透明な樹脂シートからなり、前記反射偏光子に積層される面とは反対側の面が、カットオフ値0.08mmとしてJIS B 0601:2001に基づいて測定された算術平均粗さRaが0.5μm以下であり、粗さ曲線要素の平均長さRSmが10〜200μmの範囲にあり、十点平均粗さRzJISが1〜20μmの範囲にあることを特徴とする、光学シート
【請求項2】
前記反射偏光子が、入射面と入射面とは反対側の面である出射面とを有し、入射面から入射された光の内、第1の偏光状態の光がリサイクルされるように反射されて入射面から戻され、第2の偏光状態の光が出射面から出射される反射偏光子である、請求項1に記載の光学シート。
【請求項3】
入射されてきた光を拡散させる光拡散作用を有する、請求項1または2に記載の光学シート。
【請求項4】
反射偏光子の少なくとも片面に、請求項1〜3のいずれか1項に記載の光学シートが積層されかつ一体化されていることを特徴とする、反射偏光型光学デバイス。
【請求項5】
前記反射偏光子の両面に、前記光学シートが積層され、一体化されている、請求項4に記載の反射偏光型光学デバイス。
【請求項6】
前記反射偏光子の片面に前記光学シートが積層されており、前記反射偏光子の光学シートが積層されている面とは反対側の面にプリズムレンズシートが積層されている、請求項4に記載の反射偏光型光学デバイス。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2008−176129(P2008−176129A)
【公開日】平成20年7月31日(2008.7.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−10436(P2007−10436)
【出願日】平成19年1月19日(2007.1.19)
【出願人】(596111276)積水フイルム株式会社 (133)
【Fターム(参考)】