説明

光学フィルムの製造方法

【課題】スリキズなどの面故障の発生が抑制され、かつ平面性が向上した光学フィルムを得ることができる光学フィルムの製造方法を提供すること。
【解決手段】ポリマーフィルム1の第1表面10に対して、表面温度が、該フィルムのガラス転移温度をTgとしたとき、Tg−10℃以上、Tg+50℃以下の範囲にある平滑ローラ2を押し当てる表面矯正処理工程を有することを特徴とする光学フィルムの製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は光学フィルム、特に表面が平滑な平面フィルムの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、液晶表示装置は省スペース・省エネルギーによく対応することから、TV・パソコン・携帯電話などへの液晶ディスプレイとしての利用が増大している。特に、液晶TVは大画面化、高画質化が進み、その必要不可欠な部材である光学フィルムにおける視認機能のさらなる向上が求められている。
【0003】
液晶TVの大画面化、高画質化に伴い、要求されるフィルム平面性も高くなっている。しかしながら、光学フィルムの製造過程において、微小な振動による膜厚ムラを完全に無くすことは非常に困難であった。
【0004】
そこで、特許文献1では、流延膜を形成した後に1分以内に5m/s以上30m/s以下の乾燥風を送風する技術が開示されている。流延膜の幅方向よりも幅広に乾燥風を送風する。そのような技術により流延膜にレベリング効果を発現させ、厚みムラを抑制する。
【特許文献1】特開2006−159463号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記の技術では流延時の膜厚制御や平面性の確保は可能であるが、近年に要求されるフィルム平面性は高くなっており、十分な平面性は得られなかった。
【0006】
また一般的に、フィルムが搬送方向に伸びると、光学値が低下し、フィルム幅が減少する問題があった。
【0007】
本発明は、平面性が向上して膜厚ムラの発生が抑制された光学フィルムを得ることができる光学フィルムの製造方法を提供することを目的とする。
【0008】
本発明はまた、平面性が向上して膜厚ムラの発生が抑制され、しかも搬送方向の伸びが抑制されて光学値が低下やフィルム幅の減少が抑制された光学フィルムを得ることができる光学フィルムの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、ポリマーフィルムの第1表面に対して、表面温度が、該フィルムのガラス転移温度をTgとしたとき、Tg−10℃以上、Tg+50℃以下の範囲にある平滑ローラを押し当てる表面矯正処理工程を有することを特徴とする光学フィルムの製造方法に関する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、膜厚ムラが十分に抑制され、平面性に優れた光学フィルムを製造できる。
本発明において、表面矯正処理直後のフィルムにおける第1表面の温度と第2表面の温度との平均温度を所定範囲内に設定することにより、フィルム搬送方向の伸びを抑制できる。フィルム搬送方向の伸びを抑制することによって、フィルム幅手方向に発現している光学値の低下を抑制でき、さらには幅手方向の収縮を抑制できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
(光学フィルムの製造方法)
本発明に係る光学フィルムの製造方法は、ポリマーフィルムの表面に対して、表面温度が所定範囲内の平滑ローラを押し当てる表面矯正処理工程を有するものである。本明細書中、平滑ローラを押し当てられて矯正されるポリマーフィルムの表面を第1表面と呼び、その裏側の表面を第2表面と呼ぶものとする。
【0012】
表面矯正処理工程に使用されるポリマーフィルムは、光学フィルムの分野で従来より使用されている公知の樹脂からなるフィルムが使用可能であり、具体的には、セルロース樹脂、ポリエステル系樹脂、アクリル系樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリイミド、ノルボルネン、ポリオレフィン等が挙げられる。好ましくはセルロース樹脂からなるフィルムが使用される。
【0013】
セルロース樹脂は、セルロースエステルの構造を有するものであり、具体例として、例えば、セルロースアセテート、セルロースプロピオネート、セルロースブチレート、セルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレート、セルロースアセテートフタレート、及びセルロースフタレート等が挙げられる。これらの中で特に好ましいセルロース樹脂として、セルロースアセテート、セルロースプロピオネート、セルロースブチレート、セルロースアセテートプロピオネートやセルロースアセテートブチレートが挙げられる。セルロース樹脂は1種を単独で使用してもよいし、または2種以上組み合わせて使用してもよい。
【0014】
ポリマーフィルムには紫外線吸収剤、可塑剤、無機金属酸化物等の添加剤が含有されていてもよい。
【0015】
ポリマーフィルムの厚みは本発明の目的が達成される限り特に制限されず、通常は20〜200μm、好ましくは20〜100μmである。
【0016】
ポリマーフィルムの幅手方向の長さは好ましくは1000〜3000mmであり、1500〜2500mmがより好ましい。
【0017】
ポリマーフィルムのガラス転移温度(以下、「Tg」という)は通常、100〜180℃であり、好ましくは130〜150℃である。
ポリマーフィルムのTgはポリマーフィルムに対してDSC8230(Rigaku社製)を適用することによって測定された値を用いている。
【0018】
ポリマーフィルムは公知のいかなる方法によって製造されてよく、例えば、いわゆる溶液流延法や溶融流延法等によって製造可能である。
【0019】
ポリマーフィルムは延伸処理されていてよく、例えば、搬送方向および幅手方向それぞれの方向で1.05〜1.5倍に延伸させたものを使用してもよい。
【0020】
ポリマーフィルムは上記樹脂からなる単層構造を有していてもよいし、または上記樹脂からなる表面層を基材層上に有してなる多層構造を有していてもよい。ポリマーフィルムが多層構造を有する場合、表面層のガラス転移温度をポリマーフィルムのTgとして用いるものとする。
【0021】
本発明において表面矯正処理工程に使用されるポリマーフィルムは、いわゆる溶液流延法や溶融流延法等の従来から既知の光学フィルムの製造方法における製造途中のものであってもよいし、または従来から既知の光学フィルムの製造方法における最終製品としてのフィルムであってもよい。
【0022】
ポリマーフィルムが従来から既知の光学フィルムの製造方法における製造途中のものである場合、本発明で実施される表面矯正処理工程は、対象としてのポリマーフィルムがフィルム形態を有する限り、従来から既知の光学フィルムの製造方法において、いかなる工程間において実施されてもよい。
【0023】
例えば、いわゆる流延工程、乾燥工程、剥離工程、延伸工程および巻き取り工程を含む溶液流延法が採用される場合、表面矯正処理工程は、剥離工程−延伸工程間で実施されてもよいし、または延伸工程−巻き取り工程間で実施されてもよい。この場合、本発明の光学フィルムの製造方法は、以下の順序で実施される各工程を有し得る。
順序(x1);流延工程−乾燥工程−剥離工程−表面矯正処理工程−延伸工程−巻き取り工程;
順序(x2);流延工程−乾燥工程−剥離工程−延伸工程−表面矯正処理工程−巻き取り工程。
上記の場合、乾燥工程がさらに、剥離工程−表面矯正処理工程間、表面矯正処理工程−延伸工程間、延伸工程−巻き取り工程間、剥離工程−延伸工程間、延伸工程−表面矯正処理工程間、または表面矯正処理工程−巻き取り工程間において実施されてもよい。
【0024】
また例えば、いわゆる流延工程、冷却工程、剥離工程、延伸工程および巻き取り工程を含む溶融流延法が採用される場合、表面矯正処理工程は、剥離工程−延伸工程間で実施されてもよいし、または延伸工程−巻き取り工程間で実施されてもよい。この場合、本発明の光学フィルムの製造方法は、以下の順序で実施される各工程を有し得る。
順序(y1);流延工程−冷却工程−剥離工程−表面矯正処理工程−延伸工程−巻き取り工程;
順序(y2);流延工程−冷却工程−剥離工程−延伸工程−表面矯正処理工程−巻き取り工程。
上記の場合、冷却工程がさらに、剥離工程−表面矯正処理工程間、表面矯正処理工程−延伸工程間、延伸工程−巻き取り工程間、剥離工程−延伸工程間、延伸工程−表面矯正処理工程間、または表面矯正処理工程−巻き取り工程間において実施されてもよい。
【0025】
上記した溶液流延法または溶融流延法のいずれの方法を採用する場合においても、表面矯正処理工程は、最終工程として実施される巻き取り工程の直前に実施されることが好ましい。表面矯正処理工程をできるだけ後で実施することによって、それまでの工程で発生したスリキズなどの面故障や膜厚ムラを有効に解消できるためである。
【0026】
(表面矯正処理工程)
以下、図1〜図4を用いて、表面矯正処理工程について詳しく説明する。図1〜図4はいずれも、本発明における表面矯正処理工程の一実施形態を示す概略構成図である。
【0027】
表面矯正処理工程において、ポリマーフィルムの表面に対して、表面温度が所定範囲内の平滑ローラを押し当てる。
平滑ローラをポリマーフィルムに押し当てる方法としては、ポリマーフィルムと平滑ローラとの間において平滑ローラ軸方向で連続してそれらの接触が達成される限り特に制限されず、例えば、ポリマーフィルムを平滑ローラに掛架させる掛架法、ポリマーフィルムに、平滑ローラを含む一対のローラ間を通過させるローラ間通過法等が挙げられる。
【0028】
具体的には、掛架法では、図1に示すように、ポリマーフィルム1を平滑ローラ2に掛架させる。このときポリマーフィルム1において平滑ローラ2と接触する面が第1表面10であり、その裏側の面が第2表面11である。
ローラ間通過法では、図2に示すように、ポリマーフィルム1に、平滑ローラ2を含む一対のローラ(2,4)間を通過させる。このときポリマーフィルム1において平滑ローラ2と接触する面が第1表面10であり、その裏側の面が第2表面11である。
【0029】
ポリマーフィルム1に押し当てられる平滑ローラ2は、ポリマーフィルム1のガラス転移温度をTg(℃)としたとき、表面温度がTg−10℃以上、Tg+50℃以下の範囲、好ましくはTg以上、Tg+50℃以下の範囲内である。平滑ローラの表面温度が低すぎると、平面性が変わらず、面故障や膜厚ムラを十分に解消できない。平滑ローラの表面温度が高すぎると、フィルムがローラに融着し、フィルム表面があれる。
本明細書中、表面温度は非接触温度計によって測定できる。
【0030】
平滑ローラ2とポリマーフィルム1との接触圧は、本発明の目的が達成される限り特に制限されるものではなく、例えば、掛架法の場合は好ましくは300〜3000N/m、より好ましくは500〜2000N/mである。
【0031】
掛架法において接触圧は、P=T/R(Pは圧力(N/m)であり、Tは張力(N/m)であり、Rはローラ半径(m)である)で表される値である。
【0032】
平滑ローラ2とポリマーフィルム1との接触時間は、平滑ローラ2とポリマーフィルム1との接触圧に依存して決定され、接触圧が大きいほど、接触時間は短くてよい。
例えば、接触圧が比較的小さい上記範囲の掛架法では、通常は1〜10秒間、特に2〜5秒間が好適である。
【0033】
平滑ローラ2は、上記表面温度を達成できるものであれば特に制限されず、例えば、アルミニウム、ステンレス、鉄等の金属、セラミックス、合成樹脂などからなるローラが使用できる。平滑ローラには、表面を硬化する目的で、焼き入れ処理を施したり、ハードクロムなどのメッキ処理の他、カナック処理などの窒化表面処理等を施しても良い。最終的に表面を研磨し、鏡面加工を行うことが好ましい。
【0034】
平滑ローラ2の表面温度制御方法としては、ローラ内部にオイル等の熱媒体が通る配管を配備し、当該配管に熱媒体を循環させ、当該熱媒体の温度を調整する方法が挙げられる。
【0035】
平滑ローラ2の表面粗さ(Ry)は、平面性のさらなる向上の観点から、0.5μm以下、特に0.3μm以下が好ましい。
表面粗さ(Ry)は、基準長さ毎の最低谷底から最大山頂までの高さであり、JIS B0601−1994に従って測定できる。
【0036】
図1中のポリマーフィルムの搬送方向を変換するためのローラ6,7、ならびに図2中の対向ローラ4は、表面温度の制御機能を有さなくてもよいこと以外、平滑ローラと同じ構成を有してよい。ローラ6,7,4は、表面粗さ(Ry)が0.5μm以下、特に0.3〜0.4μmのものが使用される。
【0037】
本発明においては平滑ローラ2をポリマーフィルム1の第1表面10に押し当てながら、ポリマーフィルム1における平滑ローラ2との接触部を第2表面11側から冷却することが好ましい。すなわち、第1表面10における平滑ローラ2が押し当てられる領域を、その裏面側から冷却することが好ましい。これによって、表面矯正処理直後のフィルムにおける第1表面10の温度と第2表面11の温度との平均温度を所定範囲内に設定することができ、結果としてフィルム搬送方向の伸びを抑制できる。
【0038】
冷却方法としては、ポリマーフィルム1における平滑ローラ2との接触部の少なくとも一部を、第2表面11側から冷却できれば特に制限されない。例えば、図1に示すように冷風3を吹き付ける方法、図2に示すように、平滑ローラ2とともに一対のローラを構成する対向ローラ4を、表面温度を制御した冷却ローラとして用いる方法等が挙げられる。
【0039】
冷却温度としては、表面矯正処理直後のフィルムにおける第1表面10の温度と第2表面11の温度との平均温度を後述する範囲内に制御できれば特に制限されない。具体的には、図1に示す冷風3の温度は通常、−20〜20℃であり、好ましくは0〜10℃である。
【0040】
冷却ローラ4は、フロン、イソブタン、二酸化炭素等の冷却媒体を用いること以外、平滑ローラ2と同じ構成を有しするものが使用できる。
冷却ローラ4の表面温度制御方法としては、ローラに冷却媒体を循環させ、当該冷却媒体の温度を調整する方法が挙げられる。
【0041】
表面矯正処理直後のポリマーフィルム1における第1表面10の温度と第2表面11の温度との平均温度は、フィルムのTg−50℃以上、Tg−10℃以下、特にTg−20℃以上、Tg−10℃以下に設定される。そのような平均温度は、平滑ローラ2の表面温度、ならびに冷風温度または冷却ローラ4の表面温度を調整することにより制御できる。
【0042】
表面矯正処理直後のポリマーフィルム1における第1表面10の温度および第2表面11の温度はそれぞれ、平滑ローラとの接触が終了したところから、フィルム搬送方向において100mmだけ下流であって、フィルム幅手方向において中央部における温度を用いている。
【0043】
表面矯正処理工程は2段階以上で実施してもよい。表面矯正処理工程を2段階以上で実施する場合、第1表面は最初に平滑ローラを押し当てられて矯正されるポリマーフィルムの表面である。
【0044】
表面矯正処理工程を2段階以上で実施する場合、例えば、第1表面に対して表面矯正処理を行った後、第2表面に対して表面矯正処理を行ってもよいし、第1表面に対して表面矯正処理を行った後、さらに第1表面に対して表面矯正処理を行ってもよい。両面の平面性が向上した光学フィルムを得る観点からは、第1表面に対して表面矯正処理を行った後、第2表面に対して表面矯正処理を行うことが好ましい。
【0045】
第1表面に対して表面矯正処理を行った後、第2表面に対して表面矯正処理を行う場合、例えば、図3に示すように、第1回目の表面矯正処理工程Aおよび第2回目の表面矯正処理工程Bのいずれの工程においても前記掛架法を採用してもよいし、図4に示すように、第1回目の表面矯正処理工程Aおよび第2回目の表面矯正処理工程Bのいずれの工程においても前記ローラ間通過法を採用してもよいし、または第1回目の表面矯正処理工程Aまたは第2回目の表面矯正処理工程Bの一方の工程において前記掛架法を採用し、他方の工程において前記ローラ間通過法を採用してもよい。
【0046】
表面矯正処理工程を2段階以上で実施する場合、各段階の表面矯正処理工程はそれぞれ独立して前記した表面矯正処理工程と同様の範囲内で実施されればよい。
【0047】
例えば、図3に示す方法で表面矯正処理工程を実施する場合、表面矯正処理工程Aにおける処理方法は、前記した表面矯正処理方法において図1に示す掛架法と同様であってよい。表面矯正処理工程Bにおける処理方法は、第2表面11が表面矯正処理されること以外、前記した表面矯正処理方法において図1に示す掛架法と同様であってよい。図3における平滑ローラ2a,2bはそれぞれ独立して、前記平滑ローラ2と同様のものが使用できる。図3におけるローラ6,7はそれぞれ独立して、前記ローラ6,7と同様のものが使用できる。
【0048】
例えば、図4に示す方法で表面矯正処理工程を実施する場合、表面矯正処理工程Aにおける処理方法は、前記した表面矯正処理方法において図2に示すローラ間通過法と同様であってよい。表面矯正処理工程Bにおける処理方法は、平滑ローラと冷却ローラとを置き換えて使用することによって第2表面11が表面矯正処理されること以外、前記した表面矯正処理方法において図2に示すローラ間通過法と同様であってよい。図4における平滑ローラ2a,2bはそれぞれ独立して、前記平滑ローラ2と同様のものが使用できる。図4における冷却ローラ4a,4bはそれぞれ独立して、前記冷却ローラ4と同様のものが使用できる。
【0049】
表面矯正処理工程を実施した後、フィルムは所望の工程に提供されてよいが、好ましくは巻き取りローラによって巻き取られる。
【0050】
(用途)
以上の方法で製造された光学フィルム、例えば、視野角拡大フィルム、偏光板保護フィルム等としての使用に特に適している。
【実施例】
【0051】
(実施例1A)
[ドープの調製]
各種成分を以下のような割合で配合し、ドープの調製を行った。
セルロースアセテートプロピオネート 100重量部
トリフェニルフォスフェート 5.5重量部
エチルフタリルエチルグリコレート 5.5重量部
メチレンクロライド 400重量部
エタノール 45重量部
詳しくは上記配合物を混合し、80℃まで昇温した後、3時間攪拌を行って完全に溶解した。その後、攪拌を停止し、液温を43℃まで下げ、濾過精度0.005mmの濾紙を用いて濾過を行った。これを一晩静置することで気泡を脱泡させ、ドープを得た。
【0052】
[光学フィルムの作製]
前記ドープをダイから、鏡面処理されたステンレス製支持体ベルトに流延した。ドープ温度は35℃、支持体温度は25℃であった。ウェブを支持体から剥離し、テンターを用いてウェブの両端をクリップで把持しながらフィルムの幅手方向へ30%延伸することによりポリマーフィルムを作製した。このとき、延伸温度は140℃であった。作製したフィルムは120℃の乾燥風にて乾燥させた。ポリマーフィルムのTgは130℃であった。
【0053】
次いで、ポリマーフィルムの所定の表面に対して以下に示す表面矯正処理を行った後、ポリマーフィルムを巻き取り、光学フィルムを得た。
表面矯正処理工程において詳しくは、図1に示すように、ポリマーフィルム1の搬送中において、厚み80μmのポリマーフィルム1の第1表面10に、表面温度130℃の平滑ローラ2(表面粗さ0.3μm)を押し当てながら、第2表面11を20℃の冷風3によって冷却した。表面矯正処理直前のフィルムの第1表面10の温度は115℃であった。表面矯正処理直後のフィルムにおける第1表面10の温度と第2表面11の温度との平均温度は120℃であった。第1表面10と平滑ローラ2との接触時間は約5秒間であった。平滑ローラ2とポリマーフィルム1との接触圧は1000N/mであった。フィルムおよびローラの表面温度は非接触型温度計IT2−50(KEYENCE社製)によって測定した。
【0054】
[平滑ローラ2]
平滑ローラ2は、内部にオイルが通る配管を配備したアルミニウム製ローラを、所定の温度に加熱したオイルを循環させながら用いた。
[ローラ6,7]
ローラ6,7は、オイル用配管を有しないこと以外、平滑ローラ2と同様のローラを用いた。
【0055】
(実施例2A〜8A/比較例1A〜2A)
各種温度を表1に示すように変更したこと、搬送張力を表1に示すように調整したこと以外、実施例1Aと同様の方法により、光学フィルムを得た。
【0056】
(実施例1B)
表面矯正処理を以下に示す2段階方法で行ったこと以外、実施例1Aと同様の方法により、光学フィルムを得た。
表面矯正処理工程において詳しくは、ポリマーフィルム1の搬送中において、ポリマーフィルム1の第1表面10に、表面温度130℃の平滑ローラ2a(表面粗さ0.3μm)を押し当てながら、図3に示すように、第2表面11を20℃の冷風3aによって冷却した(表面矯正処理工程A)。表面矯正処理工程Aの直前のフィルムの第1表面10の温度は115℃であった。表面矯正処理工程Aの直後のフィルムにおける第1表面10の温度と第2表面11の温度との平均温度は120℃であった。表面矯正処理工程Aにおける第1表面10と平滑ローラ2aとの接触時間は約5秒間であった。平滑ローラ2aとポリマーフィルム1との接触圧は1000N/mであった。
次いで、ポリマーフィルム1の第2表面11に、表面温度130℃の平滑ローラ2b(表面粗さ0.3μm)を押し当てながら、図3に示すように、第1表面10を20℃の冷風3bによって冷却した(表面矯正処理工程B)。表面矯正処理工程Bの直前のフィルムの第2表面11の温度は115℃であった。表面矯正処理工程Bの直後のフィルムにおける第1表面10の温度と第2表面11の温度との平均温度は120℃であった。表面矯正処理工程Bにおける第2表面11と平滑ローラ2bとの接触時間は約5秒間であった。平滑ローラ2bとポリマーフィルム1との接触圧は1000N/mであった。
【0057】
[平滑ローラ2a、2b]
平滑ローラ2a、2bは前記平滑ローラ2と同様のものを用いた。
[ローラ6,7の作製]
ローラ6,7は前記ローラ6,7と同様のものを用いた。
【0058】
(実施例2B〜3B)
各種温度を表2に示すように変更したこと、および搬送張力を表3に示すように調整したこと以外、実施例1Aと同様の方法により、光学フィルムを得た。
【0059】
(評価)
<平面性>
巻き取った光学フィルムの所定表面における任意の10ヶ所を、全赤外線方式厚み測定機(EGS(株)製)により膜厚測定し、最大値と最小値との差に基づいて以下のランク付けに従って、評価した。
A:膜厚差が2μm未満であった:
B:膜厚差が2μm以上5μm未満であり、実用上問題なかった:
C:膜厚差が5μm以上10μm未満であり、実用上問題あった:
D:膜厚差が10μm以上であった。
【0060】
<伸び>
搬送方向の伸びを測定した。詳しくは、表面矯正処理工程を実施しなかった場合のフィルム搬送方向長さx、表面矯正処理工程を実施した場合のフィルム方向長さyを測定し、搬送方向の伸び((y−x)/x×100(%))を求めた。
A:フィルム搬送方向の伸びが無かった:
B:フィルム搬送方向の伸びが10%以下であり、実用上問題なかった:
C:フィルム搬送方向の伸びが10%を超え、実用上問題があった。
【0061】
<搬送張力>
搬送張力(N)は、荷重測定が可能なロール軸受けにより、ロールにかかる荷重(kg)を測定し、当該測定値に9.8を乗じ、さらにロール幅(m)で除することによって算出できる。
【0062】
【表1】

【0063】
【表2】

【0064】
【表3】

【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】本発明における表面矯正処理工程の一実施形態を示す概略構成図である。
【図2】本発明における表面矯正処理工程の一実施形態を示す概略構成図である。
【図3】本発明における表面矯正処理工程の一実施形態を示す概略構成図である。
【図4】本発明における表面矯正処理工程の一実施形態を示す概略構成図である。
【符号の説明】
【0066】
1:ポリマーフィルム、2:2a:2b:平滑ローラ、3:3a:3b:冷風、4:4a:4b:冷却ローラ、10:第1表面、11:第2表面。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリマーフィルムの第1表面に対して、表面温度が、該フィルムのガラス転移温度をTgとしたとき、Tg−10℃以上、Tg+50℃以下の範囲にある平滑ローラを押し当てる表面矯正処理工程を有することを特徴とする光学フィルムの製造方法。
【請求項2】
ポリマーフィルムの第1表面に平滑ローラを押し当てながら、ポリマーフィルムにおける平滑ローラとの接触部を第2表面側から冷却し、表面矯正処理直後のフィルムにおける第1表面の温度と第2表面の温度との平均温度をTg−50℃以上、Tg−10℃以下に設定する請求項1に記載の光学フィルムの製造方法。
【請求項3】
平滑ローラの表面粗さ(Ry)が0.5μm以下である請求項1または2に記載の光学フィルムの製造方法。
【請求項4】
ポリマーフィルムの膜厚が20〜100μmである請求項1〜3のいずれかに記載の光学フィルムの製造方法。
【請求項5】
ポリマーフィルムの幅手方向の長さが1000〜3000mmである請求項1〜4のいずれかに記載の光学フィルムの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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