説明

光学ユニット、駆動制御方法、ホログラム装置

【課題】AOD(音響光学偏向器)をAOM(音響光学変調器)のようにシャッタとしても使用できるようにする。
【解決手段】AODが備える音響光学媒体の印加電圧周波数に対する透過率変化特性は図6に示すようなものとなる。通常の偏向器としての使用にあたっては、印加電圧周波数を、透過率のほとんど変化しない第1の周波数帯域内(例えば−V1〜V1に対応する範囲内)で変化させるが、このとき、印加電圧周波数を上記第1の周波数帯域以外の、透過率の急激に低下する第2の周波数帯域内の周波数(例えば透過率が最小となる−V2やV2に対応した周波数)に変化させる。これによってAODをシャッタとしても機能させることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、音響光学偏向器(AOD)を用いた光学ユニットと上記AODの駆動制御方法、及び参照光と信号光との干渉縞によってデータが記録されるホログラム記録媒体に対する記録又は再生を行うホログラム装置に関する。
【背景技術】
【0002】
信号光と参照光との干渉縞によりデータ記録を行うホログラム記録再生方式が知られている。
図8は、ホログラム記録媒体に対する記録再生を行う、従来のホログラム記録再生装置50の内部構成を示した図である。この図では、主にホログラム記録再生装置50の光学系の構成について示している。
【0003】
先ず、図中のホログラム記録媒体HMは、例えば円盤状とされ、ホログラム記録再生装置50内の所定位置にセットされた状態で、図中のスピンドルモータ30によって回転駆動される。ホログラム記録再生装置50では、このように回転駆動されるホログラム記録媒体HMに対してデータの記録再生を行うようにされている。
【0004】
ここで、従来のCD−R(Compact Disc-Recordable)やDVD−R(Digital Versatile Disc-Recordable)などの記録可能ディスクでは、グルーブの形成によって、データが未記録の場合にも記録再生装置側がディスク上のレーザスポット位置の制御を行うことができるようにされているが、ホログラム記録媒体HMの場合としても、これと同様の主旨で、位置制御のためのグルーブを形成した層が設けられる。
【0005】
ホログラム記録媒体HMに対する記録再生手法の概要は、以下の通りである。
先ず、記録時には、記録データに応じた空間光変調(例えば光強度変調)を与えた信号光と、この信号光とは別の参照光とをホログラム記録媒体に対して照射し、それらの干渉縞(回折格子)をホログラム記録媒体HMに形成することでデータ記録を行う。
一方、再生時には、ホログラム記録媒体HMに対して参照光を照射する。このように参照光が照射されることで、上記のようにしてホログラム記録媒体HMに形成された干渉縞に応じた回折光が得られる。すなわち、これによって記録データに応じた再生像(再生信号光)が得られる。
このようにして得られた再生像を例えばCCD(Charge Coupled Device)センサやCMOS(Complementary Oxide Semiconductor)センサなどのイメージセンサで検出することで、記録データを再生するようにされる。
【0006】
図8に示すホログラム記録再生装置50は、上記のような記録再生手法を実現するようにして構成されたものとなる。
先ず、メインレーザ2は、ホログラム記録媒体HMに対してデータを記録再生するためのレーザ光の光源として設けられる。例えばメインレーザ2としては、波長=405nm程度のいわゆる青紫レーザとしてのレーザ光を出力するように構成される。
メインレーザ2から出射された記録再生用のレーザ光は、アイソレータ3を介して後述するイメージスタビライズ機能部53内に備えられるAOM(Acousto-Optic Modulator:音響光学変調器)51→AOD4を介した後、エキスパンダ7で所要のビーム径に調整され、ミラー8→ミラー9を介してSLM(空間光変調器)10に入射する。
【0007】
SLM10は、入射される記録再生用レーザ光に対し、上述した参照光と信号光を生成するための空間光変調を行う。このSLM10としては、例えば複数の微少ミラーを配列した回折型の空間光変調器や、液晶パネルを用いたものなど、画素単位で空間光変調を施す素子が選定される。このことで、先に説明したような記録データを反映した信号光や、所定の強度パターンを有する参照光を生成することができる。
SLM10における各画素の駆動制御は、記録変調部28によって行われる。
【0008】
上述のようにして、記録時には、記録データに応じたパターンを有する信号光と、参照光とが生成される。記録時において、SLM10にて生成されたこれら信号光と参照光とは、ビームスプリッタ11→リレーレンズ12→リレーレンズ13→ダイクロイックミラー14→ミラー15→対物レンズ16を介して、ホログラム記録媒体HMに対して照射される。これにより、ホログラム記録媒体HMでは、上記信号光と参照光とが干渉し、上記信号光のパターンに応じた回折格子(ホログラム)が形成されることになる。すなわち、これによってデータの記録を行うことができる。
なお、対物レンズ16は、フォーカスアクチュエータ17Aによってフォーカス方向(ホログラム記録媒体HMに接離する方向)に変位可能に保持され、対物レンズ16・フォーカスアクチュエータ17A・ミラー15は、トラッキングアクチュエータ17Bにより一体的にトラッキング方向(ホログラム記録媒体HMの半径方向)に変位可能とされている。
【0009】
また、再生時には、上記SLM10で参照光が生成され、該参照光が上記により示した光路によってホログラム記録媒体HMに照射される。このように参照光が照射されることで、上述したようにしてホログラム記録媒体HMからは干渉縞に応じた回折光(再生像)が得られる。該回折光は、ホログラム記録媒体HMからの戻り光として、対物レンズ16→ミラー15→ダイクロイックミラー14→リレーレンズ13→リレーレンズ12を介して、ビームスプリッタ11に入射する。ビームスプリッタ11では、ホログラム記録媒体HMからの戻り光が反射され、リレーレンズ18→リレーレンズ19を介して、例えばCCDセンサやCMOSセンサなどとされるイメージセンサ20に導かれる。
【0010】
イメージセンサ20では、上記戻り光(再生像)の有する光強度のパターンについての検出が行われる。すなわち、これによってホログラム記録媒体HMに記録されたデータについての読み出し信号が得られる。
データ再生部29は、このようなイメージセンサ20による読み出し信号を入力し、所定の復号処理を行って再生データを得る。
【0011】
また、ホログラム記録再生装置50には、回転駆動されるホログラム記録媒体HM上の記録再生位置(レーザスポット位置)の制御を可能とするための、位置制御用の光学系が備えられる。具体的には、図中のサブレーザ21、レンズ22、コリメータレンズ23,ビームスプリッタ24、集光レンズ25、レンズ26、フォトディテクタ27を含む光学系である。
【0012】
ここで、例えばCDやDVDなどの従来の光ディスクに対応する記録再生装置では、トラッキングサーボなどの記録再生位置の制御を行うにあたっては、記録再生用のレーザ光を兼用するようにされているが、従来の光ディスクについて、このように共通のレーザを用いて記録再生と位置制御とを行うことが可能とされるのは、その記録層に記録パワーについての明確な閾値が存在するからである。
【0013】
しかしながら、ホログラム記録媒体の場合は、従来の光ディスクとは事情が異なる。すなわち、ホログラム記録媒体HMの記録材料としては、現状ではフォトポリマーが有力視されているが、このフォトポリマーには記録パワーについての明確な閾値は存在しないものとなってる。従って、従来の光ディスクのように低パワーによるレーザ光照射を行ったとしても、モノマーがポリマーに変化してしまう虞があり、その部分の記録特性を悪化させてしまう可能性が少なからずある。
このため、ホログラム記録再生方式において、従来の光ディスクのようなトラッキングサーボなどの位置制御を行うにあたっては、ポリマーの反応を強固に防止すべく、記録再生用のレーザ光とは波長の異なる別途のレーザ光を用いるようにされている。
【0014】
図8において、サブレーザ21としては、このように記録再生用のレーザ光とは波長の異なるレーザ光として、例えばDVDなどと同様の波長650nm程度の赤色レーザ光を照射するように構成されている。
サブレーザ21からの出射光は、レンズ22→コリメータレンズ23を介した後、ビームスプリッタ24を透過してダイクロイックミラー14に入射する。
ダイクロイックミラー14は、メインレーザ2からの記録再生用レーザ光(波長405nm程度)は透過し、サブレーザ21からの位置制御用レーザ光(波長650nm程度)は反射するように、波長選択性を有して構成されている。従って、上記のように入射した位置制御用レーザ光は、ダイクロイックミラー14にて反射され、その後は、先に記録再生用レーザ光について説明したものと同様の光路を辿り、対物レンズ16を介してホログラム記録媒体HMに照射される。
【0015】
ここで、ホログラム記録媒体HMには、ホログラムが記録される記録層の下層において、記録再生用レーザ光は反射し、位置制御用レーザ光は透過する波長選択性を有する第1の反射膜が備えられている。そして、該第1の反射膜の下層に、位置制御用のグルーブが形成されており、さらにその下層において、第2の反射膜が備えられている。
従って、上記のようにホログラム記録媒体HMに照射された位置制御用レーザ光は、上記第1の反射膜を透過し、その下層のグルーブ層に到達する。そして、当該グルーブ層に到達した光は、さらに下層の第2の反射膜にて反射され、その反射光が位置制御用の戻り光として、先に説明した経路によってダイクロイックミラー14に導かれる。
【0016】
ダイクロイックミラー14では、このようにホログラム記録媒体HMから得られた位置制御用の戻り光が反射され、該戻り光はビームスプリッタ24に導かれる。ビームスプリッタ24では、このようにして導かれた戻り光を反射するようにされ、結果、戻り光は集光レンズ25→レンズ26を介して、フォトディテクタ27に入射する。
このようにしてフォトディテクタ27にて戻り光の検出を行うことができ、これによって、図示されないサーボ回路などが当該フォトディテクタ27からの検出信号に基づいて、各種サーボ制御や指定アドレスへのアクセス制御などの位置制御を行うことができる。
【0017】
ところで、ホログラム記録再生方式として、この図8の場合のように回転駆動されるホログラム記録媒体HMに対して記録再生を行うとした場合には、レーザ光が媒体上の同じ位置に対して所定時間照射され続けるようにするために、レーザ光を一定間隔ごとにスキャンするといったことが行われる。すなわち、このようなレーザ光のスキャンを行うことで、例えば記録時には干渉縞の形成がより確実に行われるように図ることができ、また再生時には検出光量を増大してより確実な読み出しが行われるように図ることができる。このようにして、所定時間だけレーザ光が媒体上の同じ位置に対して照射されるようにして、レーザ光を一定間隔ごとにスキャンする機能は、イメージスタビライズ機能として知られている。
【0018】
図8において、従来のホログラム記録再生装置50には、このようなイメージスタビライズ機能の実現のための、イメージスタビライズ機能部53が備えられている。
この従来のイメージスタビライズ機能部53には、図のようにAOM(音響光学変調器)51とAOD(音響光学偏向器)4、及びこれらを駆動制御するための制御部52とが設けられる。
AOM51は、例えば百数十MHz程度の高周波信号により駆動され、当該高周波信号の振幅の変化に応じ透過率が変化するように構成された素子(音響光学媒体)を備えて構成される。すなわち、このような透過率の変化により、シャッタとしての機能を実現する。
【0019】
また、AOD4は、AOM51と同様に高周波信号により駆動されるが、高周波信号の周波数の変化に応じて、光の偏向角度を変化させるように構成された音響光学媒体を備えて構成される。AOD4は、このような偏向角度の制御により、レーザ光を走査させる部位として機能する。
【0020】
ここで、イメージスタビライズ機能としてレーザ光を順次各位置に一定時間照射するためには、レーザスポットを或る位置から次の位置に移動させる間の、ブランキング期間が必要となる。そして、このブランキング期間において、レーザ光が照射され続けてしまうと、少なからず記録材料が反応してしまうため、特に記録時には、記録済みのホログラム(回折格子)にレーザスポットの移動に伴う残像が付加されるなどして、ノイズの原因となってしまう。
このために、イメージスタビライズ機能の実現にあたっては、レーザ光を走査させるための手段と共に、上記ブランキング期間においてレーザ光の透過率を著しく低下させて記録材料の反応を防止するための手段(シャッタ)とが必要となるものである。具体的に、従来のイメージスタビライズ機能部53では、このようなシャッタとしての機能を担う手段として、AOM51が用いられている。
【0021】
図8において、制御部52は、上述したイメージスタビライズ機能を実現するためのレーザ光の偏向角度・透過率の変化が与えられるようにして、AOM51、AOD4を駆動制御する。具体的に、AOD4に対しては、上述した一定間隔ごとのスキャン動作が得られるようにするための鋸歯状波形による駆動信号を供給し、一方、AOM51に対しては、AOD4によるスキャン期間にはレーザ光が透過され、該スキャン期間の合間のブランキング期間にはレーザ光が遮断されるようにするための矩形波形による駆動信号を供給する。
【0022】
なお、関連する従来技術については下記特許文献を挙げることができる。
【特許文献1】特開2002−341732号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0023】
上記のようにして、従来のホログラム記録再生装置50では、イメージスタビライズ機能を実現するにあたって必要とされるシャッタとして、AOM51を設けるようにされているが、このようにAOM51をシャッタとして用いる場合には、以下のような問題があった。
すなわち、先にも述べたようにAOM51は、高周波信号の振幅の制御によってシャッタ機能を実現するようにされるが、このとき、高周波信号の振幅が切り替えられることによっては、AOM51内部の音響光学媒体において、印加電圧レベルの変化に伴う熱変化が生じてしまい、この熱変化が、上記音響光学媒体を通過するレーザ光にぶれを生じさせていた。そして、このようにレーザ光に生じるぶれが、ホログラムの記録/再生性能の悪化の要因となっていた。
【0024】
ここで、このようにAOM51をシャッタとして用いた場合のレーザ光軸ぶれの防止を図るにあたっては、これに代わるシャッタとして、例えばメカシャッタ(例えば物理的に膜の開閉などを行う)を備えることも考えられる。
しかしながら、メカシャッタを用いる場合は、応答速度の点が問題となり、AOM51を用いる場合との比較では記録/再生速度を著しく低下させなくてはならないといった問題が生じてしまう。
【課題を解決するための手段】
【0025】
そこで、本発明では光学ユニットとして以下のように構成することとした。
つまり、音響光学偏向器と、上記音響光学偏向器における音響光学媒体に対する印加電圧周波数を、偏向制御期間としての第1の期間においては第1の周波数帯域内の周波数に変化させ、透過率制御期間としての第2の期間においては、上記第1の周波数帯域とは異なる第2の周波数帯域内の周波数に変化させるようにして、上記音響光学偏向器に対する駆動制御を行う駆動制御手段とを備えるものである。
【0026】
また、本発明では、参照光と信号光との干渉縞によってデータが記録されるホログラム記録媒体に対する記録又は再生を行うホログラム装置として、以下のように構成することとした。
すなわち、光源から発せられた光を上記ホログラム記録媒体に対して導くように構成された光学系を備える。
また、上記光学系の光路中に挿入され、上記光源から発せられた光が入力される音響光学媒体を備えた音響光学偏向器を備える。
さらに、上記音響光学偏向器における上記音響光学媒体に対する印加電圧周波数を、偏向制御期間としての第1の期間においては第1の周波数帯域内の周波数に変化させ、透過率制御期間としての第2の期間においては、上記第1の周波数帯域とは異なる第2の周波数帯域内の周波数に変化させるようにして、上記音響光学偏向器に対する駆動制御を行う駆動制御手段を備えるものである。
【0027】
ここで、音響光学偏向器(AOD:Acousto-Optic Deflector)は、光学弾性効果(物質に超音波が印加されることで屈折率の変化が誘起される効果)を有する音響光学媒体を備えて構成されるが、このような音響光学媒体の、印加電圧周波数に対する透過率の変化特性は、例えば概ね図6に示すような特性となる。すなわち、或る印加電圧周波数では透過率が最大となり、その周波数を中心とした所要の周波数帯域内では透過率は殆ど変化せず、この周波数帯域から外れると透過率が急激に低下していくような特性である。
ここで、従来通り音響光学偏向器を偏向器として使用することを考えた場合、透過率がなるべく低下しない周波数帯域を使用することが第1に考えられる。従って、従来の偏向器としてのAODについては、このように偏向制御のために使用する周波数帯域内(第1の周波数帯域内)において印加電圧周波数の制御が行われていたものである。
本発明では、音響光学媒体への印加電圧周波数を、このように偏向制御のために使用される周波数帯域内で変化させるだけでなく、上記のように透過率が急激に低下するような周波数帯域内(第2の周波数帯域内)の周波数にも変化させるように、AODを駆動制御するものである。このように音響光学媒体に対する印加電圧周波数を第2の周波数帯域内の周波数に変化させれば、偏向制御が行われる場合よりも透過率を大幅に低下させることができる。すなわち、このような第2の周波数帯域内となる周波数として、音響光学媒体の特性に応じて透過率が最低となるような周波数を選定すれば、透過光量を最低(例えばゼロ)となるようにすることができ、これによってAODをシャッタとしても機能させることができる。
【発明の効果】
【0028】
上記のようにして本発明によれば、光学弾性特性を有する音響光学媒体に対する印加電圧の周波数の制御によってシャッタ機能を実現することができる。すなわち、これにより、AOM(Acousto-Optic Modulator:音響光学変調器)のように印加電圧の振幅を変化させてシャッタ機能を実現する必要はなくなり、印加電圧レベルは一定のままとすることができる。
この結果、本発明によれば、音響光学媒体に温度変化を与えずにシャッタ機能を実現することができ、これにより、AOMを用いる場合に生じていた光軸ぶれの防止を図ることができる。
なお且つ、音響光学媒体の光学弾性効果を利用したシャッタであるので、メカシャッタと比較すれば格段に高速な応答性を有するシャッタを実現することができる。
【0029】
そして、特に、上記本発明の光学ユニットを適用した本発明のホログラム装置によれば、イメージスタビライズ動作として、回転駆動されるホログラム記録媒体と光スポットとの相対速度差が逐次ゼロとなるように照射光を一定間隔でスキャンさせる場合において、これに必要となる偏向角制御機能とシャッタ機能の双方をAODによって担わせることができるので、従来のようにAOMやメカシャッタなどの別途の構成を設ける必要はないものとできる。これにより、イメージスタビライズ機能を実現するにあたっての構成部品点数の削減が図られ、装置小型化や装置製造コストの削減を図ることができる。
【0030】
また、シャッタ機能を担う手段としてAOMを用いる必要がなくなれば、上述のように温度変化に伴う光軸ぶれの防止が図られることで、記録/再生位置のずれの問題も解消することができる。すなわち、記録/再生位置ずれの防止が図られることで、より安定した記録/再生動作の実現を図ることができる。
また、メカシャッタを用いる場合との対比では、はるかに高速なシャッタ制御が可能となるため、これによってホログラムの記録/再生をより高速に行うことができるようになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
以下、発明を実施するための最良の形態(以下実施の形態とする)について説明していく。
図1は、実施の形態のホログラム装置としての、ホログラム記録再生装置1の内部構成を示したブロック図である。なお、図1では主にホログラム記録再生装置1の光学系の構成を抽出しており、他の部分については省略している。
【0032】
先ず、本実施の形態では、ホログラム記録再生方式として、いわゆるコアキシャル方式が採用される。すなわち、信号光と参照光とを同一軸上に配置し、それらを共にホログラム記録媒体HMに照射して干渉縞によるデータ記録を行い、また再生時には参照光をホログラム記録媒体HMに対して照射することで干渉縞により記録されたデータの再生を行うものである。
【0033】
図1において、ホログラム記録媒体HMは、ディスク状(円盤状)とされ、ホログラムの記録が行われる記録層と、それよりも下層において、位置制御用の情報を記録するためのグルーブ(溝)が形成されたグルーブ層とが形成される。
この図1からも理解されるように、本実施の形態において、ホログラム記録媒体HMは反射型のものが用いられる。このような反射型のホログラム記録媒体HMでは、上記記録層とグルーブ層の双方に対して、反射膜が設けられることになる。具体的に、上記記録層の下層には第1の反射膜が設けられ、該第1の反射膜の下層に位置する上記グルーブ層の下層には、第2の反射膜が設けられる。
ここで、上記記録層の下層に設けられる第1の反射膜としては、波長選択性を有するように構成される。このことにより、後述するメインレーザ2を光源とするホログラムの記録再生用のレーザ光は該第1の反射膜にて反射され、サブレーザ21を光源とする位置制御用のレーザ光は該第1の反射膜を透過して、その下層のグルーブ層に到達できるようになっている。
【0034】
ホログラム記録再生装置1において、上記ホログラム記録媒体HMは、所定位置にセットされた状態でスピンドルモータ30によって回転駆動され、このように回転駆動されるホログラム記録媒体HMに対して照射される、メインレーザ2を光源とする記録再生用レーザ光に基づき、データの記録/再生が行われる。
【0035】
メインレーザ2は、例えば外部共振器付きレーザダイオードが採用され、レーザ光の波長は例えば405nmである。
このメインレーザ2からの出射光は、アイソレータ3を介した後、後述するイメージスタビライズ機能部6内のAOD4を介してビームエキスパンダ7に入射する。ビームエキスパンダ7は、入射したレーザ光の径を調整するために設けられる。
【0036】
ビームエキスパンダ7からの出射光は、図のようにミラー8→ミラー9を介した後、SLM(空間光変調器)10に入射する。
SLM10は、入射光に対する空間光変調として、例えば空間光強度変調を施す。この場合、SLM10としては反射型とされ、例えば反射型液晶パネルや、DMD(Digital Micromirror Device:登録商標)などの回折型の空間光変調器を備えて構成される。
SLM10は、入射光に対する空間光強度変調を行うことで、記録時には、信号光と参照光、再生時には参照光を生成するようにされる。
【0037】
ここで、このSLM10においては、上記信号光と参照光とを生成するために、予め次の図2に示されるような参照光エリアA1と信号光エリアA2、及びギャップエリアA3が設定されている。つまり、SLM10の全有効画素について、予めこれらのエリアが設定されている。
この場合はコアキシャル方式に対応する例として、中心部に円形による信号光エリアA2が形成され、その外周部分には輪状のギャップエリアA3を介して、同じく輪状による参照光エリアA1が形成される。なお、ギャップエリアA3は、参照光エリアA1と信号光エリアA2を介した光が互いに干渉してノイズとなってしまうことを防止するための、緩衝領域として設定されるものである。
【0038】
図1に戻り、SLM10は、記録変調部28から供給される各画素ごとの駆動信号に基づき各画素が駆動制御されることで、記録時には上記信号光と参照光、再生時には参照光を生成するようにされる。
上記記録変調部28は、記録時には、SLM10における信号光エリアA2内の画素パターン(例えば各画素ごとのON/OFFパターン)が、入力される記録データに応じたパターンとなるようにして画素ごとの駆動信号値を設定する。また、これと共に、参照光エリアA1内の画素パターンは予め定められた所定のパターンとなるようにし、さらにギャップエリアA3を含むそれ以外のエリアは全てOFFとするような画素ごとの駆動信号値を設定する。そして、このようにして設定した値による駆動信号を、SLM10に供給する。これにより、記録時においてSLM10からは、記録データに応じた光強度パターンを有する信号光と、所定の光強度パターンを有する参照光とが生成される。
また、再生時には、参照光エリアA1内の画素パターンのみが予め定められた所定のパターンとなるようにし、それ以外のエリアは全てOFFとするような駆動信号値を設定してSLM10の各画素を駆動することで、SLM10から参照光のみが出力されるようにする。
【0039】
上記SLM10にて空間光変調が施された光は、図示するようにしてビームスプリッタ11に入射する。ビームスプリッタ11は、このようにSLM10からの入射光については透過するように構成されている。
ビームスプリッタ11を透過したレーザ光は、リレーレンズ12→リレーレンズ13を介した後、ダイクロイックミラー14に入射する。
【0040】
ダイクロイックミラー14は、波長選択性を有し、上記リレーレンズ13を介して入力されることになるメインレーザ2を光源とする記録再生用レーザ光は透過し、後述するサブレーザ21を光源とする位置制御用レーザ光は反射するようにして構成される。
従って上記リレーレンズ13を介したレーザ光は、当該ダイクロイックミラー14を透過し、その後ミラー15にて反射され、対物レンズ16を介してホログラム記録媒体HMに照射される。
【0041】
対物レンズ16は、フォーカスアクチュエータ17Aによってフォーカス方向(ホログラム記録媒体HMに接離する方向)に変位可能に保持される。また、対物レンズ16・フォーカスアクチュエータ17A・ミラー15は、トラッキングアクチュエータ17Bにより一体的にトラッキング方向(ホログラム記録媒体HMの半径方向)に変位可能とされている。
フォーカスアクチュエータ17A、トラッキングアクチュエータ17Bに対しては、図示されないサーボ回路からのフォーカスドライブ信号、トラッキングドライブ信号がそれぞれ供給され、このドライブ信号に応じて対物レンズ16がそれぞれフォーカス方向、トラッキング方向に変位されることで、フォーカス・トラッキングの各サーボ動作やトラックジャンプなどの動作が実現されるようになっている。例えばこの場合のトラッキングアクチュエータ17Bによっては、対物レンズ16をトラッキング方向に0.5mm程度まで移動させることが可能とされている。
なお、図示は省略しているが、実際には、上記対物レンズ16を含む光学ピックアップとホログラム記録媒体HMとのトラッキング方向における位置関係を変化させるためのスライド機構も設けられるものとなる。
【0042】
ここで、先に説明したSLM10による記録時の空間光変調によっては、メインレーザ2を光源とする記録再生用レーザ光に基づき信号光と参照光とが生成されることになる。すなわち、記録時において、上記により説明した光路によってレーザ光の照射が行われることで、ホログラム記録媒体HMに対しては、信号光と参照光とが照射される。このように信号光と参照光とがホログラム記録媒体HMに対して照射されることで、先に述べた記録層にこれらの光の干渉縞によってデータを記録することができる。
【0043】
また、再生時には、SLM10によって参照光のみが生成され、これが上記の光路によってホログラム記録媒体HMに対して照射されることになる。このようにホログラム記録媒体HMに対して参照光が照射されることに応じては、上記干渉縞に応じた回折光(再生像)が得られる。このようにして得られた再生像は、ホログラム記録媒体HMに形成された第1の反射膜からの反射光として装置側に戻るようにされる。
この戻り光は、対物レンズ16を介して平行光となるようにされた後、ミラー15で反射され、ダイクロイックプリズム14→リレーレンズ13→リレーレンズ12の順で透過された後、ビームスプリッタ11に入射する。
ビームスプリッタ11は、ホログラム記録媒体HMからの戻り光は反射するように構成される。従って、上記戻り光は、図示するようにしてリレーレンズ18→リレーレンズ19を介してイメージセンサ20に入射する。
【0044】
イメージセンサ20は、例えばCCD(Charge Coupled Device)センサやCMOS(Complementary Oxide Semiconductor)センサなどとされ、上記のようにして入射されるホログラム記録媒体HMからの戻り光(再生像)を受光し、これを電気信号に変換して画像信号を得る。このようにして得られた画像信号は、記録時に信号光に対して与えた光強度パターン(つまり「0」「1」パターン)を反映したものとなる。すなわち、このようにしてイメージセンサ20で検出される画像信号が、ホログラム記録媒体HMに対して記録されたデータの読み出し信号となる。
【0045】
データ再生部29は、このようにしてイメージセンサ20にて得られる読み出し信号を入力し、所定の信号処理(デコード処理)を行うことで、「0」「1」の2値の組み合わせから成る記録データの再生を行う。
なお、このような「0」「1」による記録データを再生するにあたっては、イメージセンサ20による読み出し信号について、SLM10のデータピクセル単位で「0」「1」のデータ識別を行うための信号処理が行われる。このようにイメージセンサ20の出力から「0」「1」の記録データを再生するための再生信号処理の手法としては各種が存在し、ここで特に限定されるべきものではない。
【0046】
また、この図1に示すホログラム装置においては、記録再生用レーザ光による記録/再生位置の制御を行うための光学系として、図示するサブレーザ21、レンズ22、コリメータレンズ23,ビームスプリッタ24、集光レンズ25、レンズ26、フォトディテクタ27が設けられている。
【0047】
サブレーザ21は、メインレーザ2を光源とする記録再生用レーザ光とは波長の異なるレーザ光を照射するように構成される。例えば、DVD(Digital Versatile Disc)などと同様の波長650nm程度の赤色レーザ光を照射するように構成されている。
【0048】
サブレーザ21からの出射光は、レンズ22→コリメータレンズ23を介した後、ビームスプリッタ24を透過してダイクロイックミラー14に入射する。
先にも述べたように、ダイクロイックミラー14は、サブレーザ21からの位置制御用レーザ光は反射するように構成されている。従って、このように入射した位置制御用レーザ光は、ダイクロイックミラー14にて反射され、その後は、ミラー15→対物レンズ16を介してホログラム記録媒体HMに照射される。
【0049】
このようにしてホログラム記録媒体HMに対して照射された位置制御用レーザ光は、先に説明した第1の反射膜が波長選択性を有することで、その下層のグルーブ層に到達する。そして、当該グルーブ層に到達した光は、さらに下層の第2の反射膜にて反射され、この反射光が位置制御用の戻り光として、対物レンズ16を介して装置側に入力される。
【0050】
対物レンズ16を介して入力された位置制御用の戻り光は、ミラー15を介してダイクロイックミラー14に導かれる。ダイクロイックミラー14では、位置制御用の戻り光が反射され、該戻り光はビームスプリッタ24に導かれる。ビームスプリッタ24では、このようにして導かれた戻り光を反射するようにされ、結果、戻り光は集光レンズ25→レンズ26を介してフォトディテクタ27に入射する。
【0051】
フォトディテクタ27は、ホログラム記録媒体HMからの戻り光に基づき、メインレーザ2を光源とする記録再生用レーザ光による記録/再生位置を制御するための検出信号を得る。このフォトディテクタ27による検出信号に基づいては、例えばトラッキングサーボ制御を行うためのトラッキングエラー信号や、フォーカスサーボ制御を行うためのフォーカスエラー信号などが生成される。
なお、図1では、上記フォトディテクタ27の検出信号に基づき行われる記録/再生位置制御(フォーカスに関する制御や指定アドレスへのアクセス制御も含む)のための構成については図示を省略しているが、サブレーザ21を光源とするレーザ光の照射に基づき行われる記録/再生位置制御を行うための構成は、例えばCD(Compact Disc)、DVD、BD(Blu-ray Disc:登録商標)など現状の光ディスクの分野で採用されるものと同様の構成が採用されればよい。このような記録/再生位置制御のための構成については、本発明におけるイメージスタビライズ機能の実現のための動作と直接的に関係するものではなく、ここで特に限定されるべきものではない。
【0052】
[イメージスタビライズ機能]
ところで、先にも触れたように、ホログラム記録再生方式として本例のように回転駆動されるホログラム記録媒体HMに対して記録再生を行うとした場合には、レーザ光がホログラム記録媒体HM上の同一位置に対して所定時間照射され続けるようにするために、レーザ光を一定間隔ごとにスキャンするといったことが行われる(イメージスタビライズ機能)。つまり、このようなイメージスタビライズを行うことで、例えば記録時には干渉縞の形成がより確実に行われるように図ることができ、また再生時には検出光量を増大してより確実な読み出しが行われるように図ることができる。
【0053】
このようなイメージスタビライズ機能の実現にあたり、本実施の形態のホログラム記録再生装置1では、図示するようなイメージスタビライズ機能部6を備えるものとしている。
図1において、本実施の形態のイメージスタビライズ機能部6としては、AOD(音響光学偏向器)4、及びこれを駆動制御するための制御部5のみが備えられたものとなっている。すなわち、先の図8におけるイメージスタビライズ機能部53の構成からAOM(音響光学変調器)51が省略されたものとなっている。
本実施の形態のイメージスタビライズ機能部6では、制御部5によって、AOD4を偏向器と共にシャッタとしての機能も果たすようにして駆動制御することで、イメージスタビライズ機能の実現を図る。
【0054】
以下、このような本実施の形態としてのAOD4の駆動制御方法について、図3〜図7を参照して説明する。
先ず、図3は、AOD4の内部構成を示している。
この図3に示されるように、AOD4は、図1に示す制御部5からの入力電圧Vdが供給されるドライバ4aと、該ドライバ4aによる印加電圧Vcによって駆動される音響光学媒体4bとが備えられる。
【0055】
ここで、周知のように、AOD4における音響光学媒体4bは、光学弾性効果を有し、比較的高周波による印加電圧Vcの周波数が変化されることで、内部物質の屈折率が変化し、該屈折率の変化によって光の偏向角度を変化させるように構成されている。
AOD4においては、ドライバ4aが、入力電圧Vdとしての周波数指示信号に応じて、一定振幅による印加電圧Vcの周波数を変化させることで、入射光の偏向角度θを変化させる。
【0056】
ここで、確認のために、AOD4(ドライバ4a)に対する入力電圧Vdと、AOD4(音響光学媒体4b)の偏向角度θとの関係について、図4、図5を参照して説明しておく。
先ず、図4は、AOD4の周波数変調特性として、横軸にAOD4への入力電圧Vd、縦軸に音響光学媒体4bへの印加電圧周波数をとり、両者の関係を示している。この図4より、音響光学媒体4bへの印加電圧Vcの周波数は、ドライバ4aへの入力電圧Vdのレベルに比例して変化していることがわかる。すなわち、ドライバ4aは、入力電圧Vdのレベルに比例した周波数による印加電圧Vcを、音響光学媒体4bに対して印加するようにされている。
【0057】
また、図5は、AOD4の偏向特性として、横軸に印加電圧周波数、縦軸に偏向角度θをとり両者の関係を表している。この図に示されるように、音響光学媒体4bへの印加電圧Vcの周波数が基準周波数F0のとき、偏向角度θは0となる。そして、該基準周波数F0を境に、印加電圧Vcの周波数が高くなるにつれて偏向角度θが順方向に比例して大きくなり、逆に基準周波数F0よりも低くなるにつれ偏向角度θが逆方向に比例して大きくなる。
【0058】
続いて、図6に、AOD4の入力電圧Vdに対する透過率の変化特性を示す。
なお、図6において、縦軸に示す透過率は、先の図3に示した音響光学媒体4bへの入射光のパワーをA、音響光学媒体4bからの出射光のパワーをBとしたとき、B/Aで表される値であるとする。また、横軸の入力電圧Vdは、先の図4、図5の説明より、音響光学媒体4bへの印加電圧周波数と置き換えることができる。
【0059】
この図6より、AOD4の透過率は、或る入力電圧Vd(Vd=0)において最大となる。そして、該Vd=0を中心として、入力電圧Vdが−V1〜V1の範囲内では、透過率は殆ど変化しないものとなるが、この−V1〜V1の範囲を外れると、透過率は急激に低下していくものとなる。
すなわち、これを印加電圧周波数に置き換えてみれば、上記入力電圧Vd=0に対応する或る基準周波数にて透過率は最大となり、該基準周波数を中心とした所要の周波数帯域内では透過率は殆ど変化せず、この周波数帯域から外れると透過率は急激に低下していくものとなる。
なお、本実施の形態で用いるAOD4において、上記透過率が最大となる基準周波数はおよそ150MHz程度とされている。
【0060】
ここで、従来通りAOD4を偏向器として使用することを考えた場合、透過率がなるべく低下しない周波数帯域を使用することが第1に考えられる。従って、イメージスタビライズ機能として、レーザ光をスキャン(走査)させる期間においては、偏向制御のために使用する印加電圧周波数帯域として、入力電圧Vd=−V1〜V1の範囲に対応した周波数帯域(第1の周波数帯域)が設定されることになる。すなわち、レーザ光の走査期間(偏向制御期間)においては、当該第1の周波数帯域内において、印加電圧Vcの周波数が変化されるように入力電圧Vdのレベルを制御することになる。
【0061】
そして、本実施の形態の場合、イメージスタビライズ機能の実現にあたって必要な、上記走査期間の合間のブランキング期間(シャッタ期間:透過率制御期間)では、印加電圧Vcの周波数を、上記第1の周波数帯域とは異なる第2の周波数帯域内の周波数に変化させる。すなわち、このような第2の周波数帯域として、図6におけるVd<−V1、Vd>V1に対応する、透過率が急激に低下する周波数帯域内の周波数に変化させる。具体的には、透過率を最低とする(この場合は0となる)、Vd=−V2またはVd=V2に対応する印加電圧周波数に変化させるものとしている。
【0062】
図7は、実際の制御部5による入力電圧Vdの制御例について示している。
この図7では、制御部5からドライバ4aに供給される入力電圧Vdの波形と共に、音響光学媒体4bの透過光量(シャッタ特性)も併せて示している。また、図中、期間Tonは、イメージスタビライズ機能として、レーザ光がホログラム記録媒体HM上の同一位置に所定時間照射され続けるようにするにあたってレーザ光をスキャンさせるための走査期間を表し、期間Toffは、次の照射位置にレーザスポットを移動させる間に記録材料の反応の防止を図るべく透過率を著しく低下させるためのシャッタ制御が行われるべきシャッタ期間を表す。イメージスタビライズ機能を実現するにあたっては、これら走査期間とシャッタ期間とを交互に繰り返すようにされる。
【0063】
先ず、図7(a)は、偏向&シャッタ動作例1として、シャッタ期間において入力電圧Vd=−V2とする場合の例を示している。
この動作例1においては、走査期間には入力電圧Vdのレベルを−V1〜V1の範囲内で連続的に変化させ、シャッタ期間では、入力電圧Vdのレベルを−V2で一定とするように変化させている。
【0064】
一方、図7(b)では、偏向&シャッタ動作例2として、シャッタ期間において入力電圧Vd=V2とする場合の例を示している。この動作例2においては、走査期間は動作例1と同様に入力電圧Vdのレベルを−V1〜V1の範囲内で連続的に変化させることになるが、シャッタ期間では、入力電圧VdのレベルをV2で一定とするように変化させることになる。
【0065】
なお、確認のために述べておくと、期間Tonとしての走査期間における入力電圧Vdの波形の傾きは、レーザ光の走査速度を決定するものとなる。すなわち、この傾きが大きければ、その分印加電圧周波数の単位時間あたりの変化率も大きくなり、レーザ光の走査速度はより高速となる。逆に、傾きが小さければ印加電圧周波数の単位時間あたりの変化率も小さくなってレーザ光の走査速度はより低速となる。
制御部5では、回転駆動されるホログラム記録媒体HM上の同一位置にレーザ光が追従するレーザ走査速度が得られるようにして、入力電圧Vdの上記期間Tonにおける傾きを設定する。さらには、この期間Tonとしての走査期間の時間長を、予め定められた時間長に設定する。これにより制御部5は、ホログラム記録媒体HM上の同一位置に対してレーザ光が所定時間にわたって照射されるようにAOD4を駆動制御するようにされている。
【0066】
なお、制御部5は、上記期間Tonにおける入力電圧Vdについて、具体的には例えば以下のような手法によりその傾きを設定する。
例えば、ホログラム記録媒体HMが線速度一定で回転駆動される場合には、制御部5にはスピンドルモータ30の回転速度情報が入力され、レーザ走査速度を該回転速度情報が示す速度に一致させるようにして入力電圧Vdの傾きを設定する。
或いは、線速度が一定とされない場合は、制御部5にはスピンドルモータ30の回転速度情報と現在の記録/再生位置(又はその半径位置)の情報が入力され、これらの情報に基づき、レーザ光がホログラム記録媒体HM上の同一位置に対して追従できるレーザ走査速度が得られるようにして、入力電圧Vdの傾きを設定する。
【0067】
ところで、図7の動作例では、走査期間において入力電圧Vdを連続的に変化させるにあたり、入力電圧Vdのレベルを−V1→V1に変化させる例を示したが、もちろん、実際のホログラム記録媒体HMの回転方向などに応じて、入力電圧Vdを逆にV1→−V1に変化させることも可能である。
【0068】
なお、本実施の形態で用いるAOD4においては、入力電圧Vd=−V2、入力電圧Vd=V2に対応する印加電圧周波数としては、先に説明した透過率最大となる基準周波数=150MHzに対し、±70MHzの周波数となる。
【0069】
ここで、確認のために述べておくと、シャッタ期間において設定されるべき印加電圧周波数は、シャッタ期間を設ける目的がホログラム記録媒体HMにおける記録材料の反応の防止を図る点にあることを考慮すれば、音響光学媒体4bの透過率を最低とする周波数とするのが好ましいものとなる。但し、上記目的からすれば、シャッタ期間において設定されるべき印加電圧周波数は、少なくとも記録材料が反応しないレーザパワーに抑えることのできる透過率が得られる周波数であればよく、必ずしも透過率を最低とする周波数に限定されるべきものではない。
【0070】
以上で説明したようにして、本実施の形態のホログラム記録再生装置1によれば、AOD4内の音響光学媒体4bに対する印加電圧周波数について、走査期間においては第1の周波数帯域内の周波数に変化させ、シャッタ期間においては第2の周波数帯域内の周波数、具体的には透過率を最低とする周波数に変化させることで、AOD4を偏向器と共にシャッタとしても機能させることができる。
この場合、シャッタ機能は、従来で用いていたAOM(Acousto-Optic Modulator:音響光学変調器)のように印加電圧の振幅を変化させて実現するものではなく、印加電圧レベルは一定としたままで、周波数のみを変化させることで実現することができる。これにより、音響光学媒体4bに温度変化を与えずにシャッタ機能を実現することができ、この結果、AOMを用いる場合に生じていた光軸ぶれの防止を図ることができる。
また、このようなAOD4を用いたシャッタ機能は、音響光学媒体4bの光学弾性効果を利用して実現されるものであるので、メカシャッタを用いる場合と比較すれば、格段に高速な応答性を有するシャッタを実現することができる。
これらのことから、本実施の形態のホログラム記録再生装置1によれば、AOMを用いる場合に生じていた記録/再生位置ずれの防止を図ることによる、記録/再生動作の安定化と共に、高速なシャッタ制御によるホログラム記録/再生の高速化の両立を図ることができる。
【0071】
また、本実施の形態のホログラム記録再生装置1によれば、イメージスタビライズ機能の実現にあたって必要となる偏向制御機能とシャッタ機能の双方をAOD4単体に担わせることができるので、従来のようにシャッタ機能の実現のためのAOMやメカシャッタなどの別途の構成を設ける必要はないものとでき、イメージスタビライズ機能を実現するにあたっての構成部品点数の削減が図られ、装置小型化や装置製造コストの削減を図ることができる。
【0072】
<変形例>
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明としてはこれまでに説明した例に限定されるべきものではない。
例えば、図1に示した光学系の構成はあくまで一例に過ぎず、これに限定されるべきではない。例えば実施の形態では、信号光、参照光を生成するためのSLMとして反射型のSLMを用いる場合を例示したが、これに代えて、透過型のSLMを用いることもできる。その場合、SLMは、例えば透過型の液晶パネルを備えて構成されればよい。
【0073】
また、実施の形態では、反射型のホログラム記録媒体HMに対応した構成を例示したが、透過型のホログラム記録媒体に対応する構成とすることもできる。
その場合、再生系においては、再生光をイメージセンサ側に導くためのビームスプリッタ(11)は省略することができる。代わりにこの場合は、参照光の照射に応じて得られる再生像がホログラム記録媒体自体を透過することになるので、レーザ光の出射点側から見てホログラム記録媒体の反対側にさらに対物レンズ(集光レンズ)を設けておき、透過光としての再生像を当該集光レンズを介してイメージセンサ側に導くように構成すればよい。
確認のために述べておくと、このような透過型の場合としても記録再生の基本動作自体は反射型の場合と同様であり、記録時は信号光と共に参照光を照射してホログラム記録媒体上にそれらの干渉縞によってデータを記録し、再生時はホログラム記録媒体に対し参照光を照射してそれにより得られる再生像をイメージセンサで検出してデータ再生することに変わりはない。
【0074】
また、これまでの説明では、本発明が参照光と信号光との干渉縞によってデータが記録されるホログラム記録媒体に対する記録・再生の双方が可能な記録再生装置に適用される場合を例示したが、本発明としては記録のみが可能な記録専用装置、または再生のみが可能な再生専用装置に対しても好適に適用することができる。
【0075】
また、これまでの説明では、本発明の光学ユニットが、ホログラム記録媒体に対する記録または再生を行うホログラム装置に適用される場合を例示したが、本発明の光学ユニットとしては、AODを用いて偏向角度の制御と透過率の制御とを時間軸上の異なる期間でそれぞれ行う場合に好適に適用することができ、その用途については特に限定されるべきものではない。
【0076】
また、実施の形態では、AODに偏向制御機能とシャッタ機能の2つの機能を担わせる場合のみを例示したが、シャッタ機能のみを担うものとして駆動制御することもできる。その場合、光を透過させるべき第1の期間では音響光学媒体に対する印加電圧周波数を例えば透過率が最大となる基準周波数(或いは偏向角度θ=0となる基準周波数F0)で一定となるようにし、光を遮断すべき第2の期間では印加電圧周波数を透過率が最小となる周波数(入力電圧Vd=−V2またはV2に対応する周波数)で一定となるように変化させるなど、上記第1の期間では透過率がほとんど変化しない第1の周波数帯域内の周波数に、また上記第2の期間では透過率を最低とする周波数を含む透過率の急激に低下する第2の周波数帯域内の周波数に変化させるように駆動制御すればよい。
【図面の簡単な説明】
【0077】
【図1】本発明の実施の形態としてのホログラム装置の内部構成を示すブロック図である。
【図2】空間光変調器に設定される各エリアについて説明するための図である。
【図3】AODの内部構成を示した図である。
【図4】AODにおける入力電圧に対する印加電圧周波数の変調特性について示した図である。
【図5】AODにおける印加電圧周波数に対する偏向角度の変化特性について示した図である。
【図6】AODにおける入力電圧(印加電圧周波数)に対する透過率の変化特性について示した図である。
【図7】実施の形態としてのAODの駆動制御例について説明するための図である。
【図8】従来のホログラム装置の内部構成を示した図である。
【符号の説明】
【0078】
1 ホログラム記録再生装置、2 メインレーザ(記録再生用レーザ)、4 AOD、4a ドライバ、4b 音響光学媒体、5 制御部、6 イメージスタビライズ機能部、10 SLM、11 ビームスプリッタ、14 ダイクロイックミラー、16 対物レンズ、17A フォーカスアクチュエータ、17B トラッキングアクチュエータ、20 イメージセンサ、21 サブレーザ(位置制御用レーザ)、27 フォトディテクタ、28 記録変調部、29 データ再生部、30 スピンドルモータ、HM ホログラム記録媒体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
音響光学偏向器と、
上記音響光学偏向器における音響光学媒体に対する印加電圧周波数を、偏向制御期間としての第1の期間においては第1の周波数帯域内の周波数に変化させ、透過率制御期間としての第2の期間においては、上記第1の周波数帯域とは異なる第2の周波数帯域内の周波数に変化させるようにして、上記音響光学偏向器に対する駆動制御を行う駆動制御手段と、
を備えることを特徴とする光学ユニット。
【請求項2】
音響光学偏向器に対する駆動制御方法であって、
上記音響光学偏向器における音響光学媒体に対する印加電圧周波数を、偏向制御期間としての第1の期間においては第1の周波数帯域内の周波数に変化させ、透過率制御期間としての第2の期間においては、上記第1の周波数帯域とは異なる第2の周波数帯域内の周波数に変化させるようにして、上記音響光学偏向器に対する駆動制御を行う、
ことを特徴とする駆動制御方法。
【請求項3】
参照光と信号光との干渉縞によってデータが記録されるホログラム記録媒体に対する記録又は再生を行うホログラム装置であって、
光源から発せられた光を上記ホログラム記録媒体に対して導くように構成された光学系と、
上記光学系の光路中に挿入され、上記光源から発せられた光が入力される音響光学媒体を備えた音響光学偏向器と、
上記音響光学偏向器における上記音響光学媒体に対する印加電圧周波数を、偏向制御期間としての第1の期間においては第1の周波数帯域内の周波数に変化させ、透過率制御期間としての第2の期間においては、上記第1の周波数帯域とは異なる第2の周波数帯域内の周波数に変化させるようにして、上記音響光学偏向器に対する駆動制御を行う駆動制御手段と、
を備えることを特徴とするホログラム装置。
【請求項4】
上記駆動制御手段は、
上記第1の期間においては、上記印加電圧周波数を上記第1の周波数帯域内において連続的に変化させ、上記第2の期間においては、上記印加電圧周波数を所定周波数で一定とするようにして上記音響光学偏向器に対する駆動制御を行う、
ことを特徴とする請求項3に記載のホログラム装置。
【請求項5】
上記駆動制御手段は、
上記第1の期間における上記印可電圧周波数を、上記光学系を介した光が回転駆動される上記ホログラム記録媒体の同一位置に対して所定時間にわたって照射され続けるようにして連続的に変化させる、
ことを特徴とする請求項3に記載のホログラム装置。
【請求項6】
上記駆動制御手段は、
上記第2の期間において、上記印加電圧周波数を上記音響光学媒体の透過率が最低となる周波数に変化させるようにして上記音響光学偏向器に対する駆動制御を行う、
ことを特徴とする請求項3に記載のホログラム装置。
【請求項7】
上記第1の期間と上記第2の期間は、時間軸上で交互に繰り返される、
ことを特徴とする請求項3に記載のホログラム装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−116087(P2009−116087A)
【公開日】平成21年5月28日(2009.5.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−289692(P2007−289692)
【出願日】平成19年11月7日(2007.11.7)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】