説明

光学式穀粒選別装置

【課題】しらた米と着色粒とを同時に選別・除去しようとする場合に、着色粒の選別精度を向上させ、かつ、信号処理が簡易化される光学式穀粒選別装置を提供する。
【解決手段】穀粒の一方の側から可視光域の赤色域、緑色域及び青色域からなる3波長の光を照射するとともに、穀粒の他方の側から可視光域の緑色域及び青色域からなる2波長の光を照射する照明手段と、該照明手段にて照明された穀粒を、一方の側と他方の側からそれぞれ赤色域、緑色域及び青色域の各波長別に同時に監視する光学検出手段と、該光学検出手段の一方の側と他方の側の赤色域の検出信号に基づき、しらた米であるか否かを判定するとともに、前記光学検出手段の一方の側と他方の側の緑色域及び青色域の検出信号に基づき、着色粒又は異物であるか否かを判定する不良品判別手段と、選別手段とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学式穀粒選別装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、着色粒、透明な異物及びしらた米(乳白色粒)の選別・除去を可能とする穀粒の光学式選別装置として、受光センサの出力信号と任意のしきい値との比較により除去信号を出力する制御回路に、可視光域の光源をしらた米選別用に点灯切換を行うしらた米設定回路を設けるとともに、特定の可視光域の光源に、前記バックグラウンドへの照射のみを許容し、前記流下軌跡を流下する穀粒への照射を遮蔽する遮蔽手段を設けたものがある(特許文献1参照)。
【0003】
また、米粒判別処理速度を高める米粒判別検査装置として、シュート下端から流下する米粒を光学的に検定する検査装置と、該検査装置からの検知信号に基づいて、落下する米粒の各々を、米粒の焼け、しらた、うるち、異物等を判別できるように、各々に対する複数のしきい値を設けて判別する判別装置とを備えたものがある(特許文献2参照)。
【0004】
【特許文献1】特許第3506312号公報
【特許文献2】特開2006−170750号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1記載の光学式選別装置にあっては、しらた米設定回路を作動させると、可視光域の光源がしらた米選別用へ点灯切換されるとともに、遮蔽手段により流下軌跡Lよりも上方の可視光域の光源が遮蔽される。この状態でしらた米と着色粒とを同時に選別・除去しようとすると、しらた米は乳白色であるために精白米よりも透過率が低く反射率が高いので、精白米と同じ光量に調節されたバックグラウンドでは、反射光量の差が明瞭となり、しらた米が良好に選別・除去することができる。一方で、着色粒では、流下軌跡Lよりも上方の光源と流下軌跡Lよりも下方の光源とで照明条件が異なるために、選別精度に問題が生じることがある。すなわち、流下軌跡L下方側からの検出には問題がなくても、流下軌跡L上方からの検出において、穀粒に部分着色粒(例えば、虫食い(カメムシ被害粒)など微小な着色粒)が存在していると、その側の検出精度が劣ってしまい、選別・除去信号が出力されない場合があった。
【0006】
一方、特許文献2記載の米粒判別検査装置にあっては、良品とされる米粒(うるち米)と一般的に不良品とされる米粒(欠け、焼け等の変色、しらた、虫食い等の生じた米粒)とを類別検査することができるものであるが、米粒一粒ずつに対する可視光カメラからの出力信号が、比較回路において4つのしきい値1〜4と比較されて各々比較器出力1〜4として出力され、比較器に続いて各別に設けられたカウンタにおいては比較回路出力が「1」信号である時間をカウントし、2つの大きさ判断基準値及び色の濃さが比較されて、良品とされるうるち米と、不良品とされる欠け、焼け等の変色、しらた、及び虫食いなどに種別される。すなわち、その判別アルゴリズムとしては、色濃度の基準となるしきい値を4個設定して、細かな濃度判定を行い、かつ、比較器の「1」信号である時間をカウントするカウンタを比較器ごと各別に設ける必要があり、判断回路においては、多数のカウンタから出力される信号処理を複数組み合わせて行っており、判断回路における信号処理が複雑化する問題があった。また、特許文献1と同様、流下軌跡Lよりも上方の光源と流下軌跡Lよりも下方の光源とで照明条件が異なると、着色粒の選別精度に問題が生じることがあった。
【0007】
本発明は上記問題点にかんがみ、しらた米と着色粒とを同時に選別・除去しようとする場合に、着色粒の選別精度を向上させ、かつ、信号処理が簡易化される光学式穀粒選別装置を提供することを技術的課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため請求項1記載の発明は、良品となる穀粒から不良品となる着色粒、しらた米及び異物を選別・除去する光学式穀粒選別装置であって、被選別物となる穀粒を搬送する搬送手段と、該搬送手段から放出される穀粒の一方の側から可視光域の赤色域、緑色域及び青色域からなる3波長の光を照射するとともに、穀粒の他方の側から可視光域の緑色域及び青色域からなる2波長の光を照射する照明手段と、該照明手段にて照明された穀粒を、一方の側と他方の側からそれぞれ赤色域、緑色域及び青色域の各波長別に同時に監視する光学検出手段と、該光学検出手段の一方の側と他方の側の赤色域の検出信号に基づき、しらた米であるか否かを判定するとともに、前記光学検出手段の一方の側と他方の側の緑色域及び青色域の検出信号に基づき、着色粒又は異物であるか否かを判定する不良品判別手段と、該不良品判別手段によって不良品と判別された着色粒、しらた米及び異物を、良品が落下する落下軌跡とは異なる軌跡に落下させて排除する選別手段とを有する、という技術的手段を講じた。
【0009】
請求項2記載の発明は、良品となる穀粒から不良品となる着色粒、しらた米及び異物を選別・除去する光学式穀粒選別装置であって、被選別物となる穀粒を搬送する搬送手段と、該搬送手段から放出される穀粒の一方の側から可視光域の赤色域、緑色域及び青色域からなる3波長の光を照射するとともに、穀粒の他方の側から可視光域の緑色域及び青色域からなる2波長の光を照射する照明手段と、該照明手段にて照明された穀粒を、一方の側と他方の側からそれぞれ赤色域、緑色域及び青色域の各波長別に同時に監視する光学検出手段と、 該光学検出手段の一方の側と他方の側の赤色域検出信号と緑色域検出信号との比を算出して、被選別物が玄米である場合に、良品である整粒と良品である青未熟粒とに判別する整粒・青未熟粒判別手段と、前記整粒・青未熟判別手段によって青未熟と判別された粒を、整粒が落下する落下軌跡とは異なる軌跡に落下させて区分する玄米選別手段と、該玄米選別手段により青未熟に区分された粒を、前記光学検出手段の一方の側と他方の側の赤色域の検出信号に基づき、しらた米であるか否かを判定するとともに、前記光学検出手段の一方の側と他方の側の緑色域及び青色域の検出信号に基づき、着色粒又は異物であるか否かを判定する第1不良品判別手段と、該第1不良品判別手段によって不良品と判別された着色粒、しらた米及び異物を、良品が落下する落下軌跡とは異なる軌跡に落下させて排除する第1選別手段と、前記玄米選別手段により整粒に区分された粒を、前記光学検出手段の一方の側と他方の側の赤色域の検出信号に基づき、しらた米であるか否かを判定するとともに、前記光学検出手段の一方の側と他方の側の緑色域及び青色域の検出信号に基づき、着色粒又は異物であるか否かを判定する第2不良品判別手段と、該第2不良品判別手段によって不良品と判別された着色粒、しらた米及び異物を、良品が落下する落下軌跡とは異なる軌跡に落下させて排除する第2選別手段とを有することを特徴とする。
【0010】
請求項3記載の発明は、前記光学検出手段の青色域の検出信号を、被選別物が精白米である場合に不良品となる着色粒又は異物の判定に利用することを特徴とする。
【0011】
請求項4記載の発明は、前記光学検出手段が、穀粒を透過した透過光と穀粒の表面からの反射光とを監視することができるようにされていることを特徴とする。
【0012】
請求項5記載の発明は、前記光学検出手段が、監視領域を赤色域、緑色域及び青色域の各波長別に独立して検知することが可能なCCDカメラと、該CCDカメラに対向して配置されるバックグラウンドとから構成されていることを特徴とする。
【0013】
請求項6記載の発明は、前記CCDカメラが、入射される光を赤色域、緑色域及び青色域に分光し、それぞれの光の波長に高い感度を有するセンサが列状に配設される3CCD方式としたことを特徴とする。
【0014】
請求項7記載の発明は、前記CCDカメラが、赤色域、緑色域、青色域の各センサの3ラインが一つのパッケージに内蔵され、各センサの1ラインに数千個のフォトダイオードが直線状に配設されるカラーラインセンサ方式としたことを特徴とする。
【0015】
請求項8記載の発明は、前記光学検出手段には、前記バックグラウンドへの照射を専用とする専用光源を配設し、前記バックグラウンドの明るさが被選別物に応じて変更されるように構成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
請求項1記載の発明によれば、穀粒の一方の側から可視光域の赤色域、緑色域及び青色域からなる3波長の光を照射する一方、穀粒の他方の側から可視光域の緑色域及び青色域からなる2波長の光が照射されるので、2方向からの照明によって穀粒への照明ムラが生じることがなく、また、着色粒又は異物が検査領域を通過したときは、光学検出手段によって、一方の側と他方の側の2方向、かつ、緑色域及び青色域の合計4つの検出信号に基づいて、着色粒又は異物であるか否かが判定されるので、常に着色粒又は異物の表裏両面を監視しており、穀粒に部分着色粒(カメムシ被害粒など微小な着色粒)が存在していた場合であっても、高精度で選別・除去信号を出力し、複雑な信号処理回路を設けることなく、選別精度を向上させることができる。そして、しらた米が検査領域を通過したときも、2方向の赤色域の検出信号に基づき、しらた米であるか否かが判定されるので、見逃しがなく、しらた米の選別精度も向上する。
【0017】
請求項2記載の発明によれば、被選別物が玄米である場合は、あらかじめ整粒と青未熟粒とを区別し、青未熟粒を精査して不良品判別を行うため、青未熟粒を良品として回収する回収率が向上するようになる。
【0018】
請求項3記載の発明によれば、被選別物が精白米である場合、波長が約400〜500nmの青色域の光を検出することによって、精白米の反射光量(又は透過光量)と、不良品となる着色粒又は異物の反射光量(又は透過光量)との差を大きくすることができ、良品である精白米と、不良品となる着色粒又は異物とを確実に選別・除去することができる。
【0019】
請求項4記載の発明によれば、光学検出手段が、穀粒を透過した透過光と穀粒の表面からの反射光とを監視することができるようにされているため、穀粒を透過した透過光量の差により、良品と不良品となる着色粒、しらた米及び異物とを識別する機能と、穀粒表面の反射光量の差により、良品と不良品となる着色粒、しらた米及び異物とを識別する機能とを兼ね備えており、不良品となる着色粒、しらた米及び異物を確実に選別除去することができる。
【0020】
請求項5、6及び7記載の発明によれば、光学検出手段としてCCDカメラを採用し、例えば、CCDカメラが3CCD方式であれば、入射される光を赤色域、緑色域及び青色域に分光して色ごとに信号が取り出され、高画質・高感度の要求性能が満たされる。また、CCDカメラがカラーラインセンサ方式であれば、CCD転送効率が向上しているので、撮像スピードが高速であり、画像ボケを意識することなく、均一な画像を得ることができる。
【0021】
請求項8記載の発明によれば、前記光学検出手段には、前記バックグラウンドへの照射を専用とする専用光源を配設し、前記バックグラウンドの明るさが被選別物に応じて変更されるように構成されているので、バックグラウンドの明るさが選別原料に応じて適切な調節ができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
本発明を実施するための最良の形態を図面を参照して説明する。図1は本発明による穀粒選別装置の概略側断面図であり、図2は光学検出部をより詳細に示した拡大断面図である。
【0023】
図1に示すように、選別装置1は、穀粒を傾斜下方に流下移動させるために、約60度の角度で傾斜して配置したシュート2と、穀粒を貯留するための貯留タンク3と、貯留タンク3からの穀粒をシュート2に搬送する手段としての振動フィーダ4と、前記シュート2の下端から流下する穀粒の一方の側と他方の側となる流下軌跡Lの上下を挟んで設けられる一対の光学検出部5a,5b(流下軌跡の上側をフロント側5aとし、流下軌跡の下側をリア側5bとする。)と、さらに下方に設けた選別手段としてのエジェクターノズル6と、エジェクターノズル6下方で前記シュート2と同傾斜線上にあり、エジェクターノズル6からの噴風を受けずにそのまま流下軌跡Lの穀粒を受ける良品排出樋7と、該良品排出樋7の周囲を囲むようなホッパー状に形成され、エジェクターノズル6からの噴風を受けて正常な穀粒から不良品を回収するための不良品排出樋8と、が備えられている。
【0024】
前記シュート2は穀粒を広幅で滑走させるため溝部のない平板形状であり、その表面には、シュート2の底面9から所定間隔をあけてシュートカバー10が設けられる。該シュートカバー10は、硬質なプラスチック板状からなり、選別対象の穀粒がシュート2を滑走中に底面9から浮き上がるのを防止するとともに、シュートカバー10の上端に設けた垂直な立ち上がり部11により、振動フィーダ4から飛び跳ねる穀粒を抑制して円滑にシュート2に供給する役目を果たすものである。
【0025】
振動フィーダ4は、コイルバネ12を介して機枠Fを構成する横枠F1上に設置され、支持部4Aを斜め上下に振動駆動するための電磁駆動コイル13等が備えられている。
【0026】
光学検出部5a,5bは、それぞれ共通の箱体14a,14b内に形成され、フロント側の箱体14aには、可視光用のCCDカメラ15aと、可視光用の光源16a,16b,16cと、光学検出部5bの対向用バックグラウンド17aが装設されている。一方、リア側の箱体14bには、可視光用のCCDカメラ15bと、可視光用の光源18a,18b,18cと、光学検出部5aの対向用バックグラウンド17bが装設されている。
そして、穀粒の流下軌跡Lを挟んで対向する側に、透明ガラスからなる窓部材19a,19bが嵌め込まれている。また、箱体14a,14bには、エアシリンダにより開閉可能な点検扉20a,20bが設けられており、光学検出部5a,5bのメンテナンスを容易に行うことができる設計となっている。
【0027】
エジェクターノズル6には、図外のエアコンプレッサからの空気がサブタンク21、エア管22、エジェクターバルブ23を介してチューブ24から供給される。前記サブタンク21はエアコンプレッサからの空気を一時貯留するものであり、該サブタンク21を設けることでエジェクターノズル6から噴出されるエア量の消費が多い場合であっても、エア不足に陥るおそれがない。
【0028】
符号25は横枠F2に支持される制御ボックスであり、該制御ボックス25内には、電源系統の基板26と選別に関する制御系統の基板27が並設されている。前記横枠F2は、図示しないエアシリンダにより下方に回動可能に設けられ、制御ボックス25の底面が開放される構成となっている。これにより、電源系統の基板26や選別に関する制御系統の基板27の点検・交換時のメンテナンス性が向上し、機種変更も容易に行えるようになっている。
【0029】
機枠Fの前方側に設けられる傾斜壁には、エアシリンダ28によって上方側に回動可能な前面ドア29が設けられるとともに、該前面ドア29下方には操作盤30が埋設されている。一方、機枠Fの後方側の垂直状の後面壁には、上段後面壁31、中段後面壁32及び下段後面壁33が機枠Fから取り外し可能に設けられ、メンテナンス性を向上させる設計となっている。
【0030】
次に、光学検出部5a,5bの詳細構造について図3を参照しながら説明する。図3に示す光学検出部5a内に配置されるCCDカメラ15a、及び光学検出部5b内に配置されるCCDカメラ15bは、受光素子からの出力を電荷結合素子 (CCD: Charge Coupled Device)を用いて時系列信号として取り出す周知のライン(一次元)センサ、エリア(二次元)イメージセンサなどを用いることができる。
【0031】
CCDカメラ15a,15bのセンサとして、好ましくは、図3に示すように色の識別能力に優れた3CCD方式のイメージセンサを採用するのがよい。3CCD方式では、カメラ15aのレンズ34に入射される光が、第1のハーフミラー35、第2のハーフミラー36を介して赤色(R),緑色(G),青色(B)に分光され、それぞれの光(R,G,B)の波長にそれぞれ高い感度を有し、かつ、列状に配設された第1赤色センサ37,第1緑色センサ38,第1青色センサ39にそれぞれ受光されるように構成される。カメラ15bも同様に、レンズ40、第1のハーフミラー41,第2のハーフミラー42、及び第2赤色センサ43,第2緑色センサ44,第2青色センサ45を備え、カメラ15bのレンズ40に入射される光が、ハーフミラー41,42を介して赤色(R),緑色(G),青色(B)に分光され、それぞれの光の波長が各センサ43,44,45に受光されるように構成されている。この3CCD方式にあっては、入射される光を赤色域、緑色域及び青色域に分光して色ごとに信号が取り出され、高画質・高感度の要求性能が満たされる。
【0032】
また、CCDカメラ15a,15bのセンサの別の実施形態としては、図4に示すように、赤色,緑色,青色の各センサの3ラインが一つのパッケージに内蔵され、各センサの1ラインに数千個のフォトダイオード49,50,51が直線状に配設されたカラーラインセンサを採用することもできる。このカラーラインセンサにあっては、例えば、フォトダイオード49,50,51の走査速度が1個当たり20〜50MHzであって、CCD転送効率が向上しており、撮像スピードが高速であり、画像ボケを意識することなく、均一な画像を得ることができるという利点がある。
【0033】
さらに、CCDカメラ15a,15bのセンサの形態としては、赤色(R)センサ,緑色(G)センサ,及び青色(B)センサが順次繰り返して一列に配列されるリニアラインセンサ(図示せず)としてもよく、センサの形態として赤色(R),緑色(G),青色(B)の各受光データを高速で取り出せる形態であればいずれのものでもよい。
【0034】
次に、図3を参照して光学検出部5aの可視光用の光源16a,16b,16c、及び光学検出部15bの可視光用の光源18a,18b,18cについて説明する。光学検出部5aの可視光用の光源16a,16c、及び光学検出部5bの可視光用の光源18a,18cは、各光源が検査位置Pを囲むよう検査位置Pからの距離がほぼ等間隔となるように配置してある。一方で、光学検出部5aの可視光用の光源16bはバックグラウンド17aへの照射を専用とするためにバックグラウンド17a近傍に配置してあり、同様に光学検出部5bの可視光用の光源18bについても、バックグラウンド17bへの照射を専用とするためにバックグラウンド17b近傍に配置してある。
【0035】
さらに、落下軌跡Lの上方側(フロント側)から穀粒に向けて照射する光源16は、赤色域、緑色域及び青色域からなる3色の光、すなわち、赤色域の約600〜700nmの第1波長域、緑色域の約450〜600nmの第2波長域、及び青色域の約400〜500nmの第3波長域の3波長域を含んでおり、落下軌跡Lの下方側(リア側)から穀粒に向けて照射する光源18が、緑色域の450〜600nmの第2波長域及び青色域の400〜500nmの第3波長域の2波長域を含んでいる。これに限らず、フロント側に2波長域を含む光源を設置し、リア側に3波長域を含む光源を設置することもできる。
3波長域を含む光源16としては、例えば、蛍光灯、白色LED、又はフルカラーLEDなどを採用可能とする一方、2波長域を含む光源18としては、例えば、2波長型の蛍光灯、2波長型のLEDなどが採用可能である。
【0036】
次に、制御構成について図5を参照して説明する。図5は穀粒選別装置の制御ブロック図であり、制御装置52は内部に光量調節回路53と選別・除去判別回路54とを備えている。光量調節回路53には、入力側に入力インターフェース55を介してタッチ操作で操作可能な品種設定手段56が連絡され、出力側に出力インターフェース57を介してバックグラウンド17aの照明用光源16b及びバックグラウンド17bの照明用光源18bを連絡している。また、選別・除去判別回路54には、入力側にA/D変換器58を介してCCDカメラ15a,15bが連絡されており、出力側にエジェクター駆動回路59を介してエジェクターバルブ23に連絡している。さらに、選別・除去判別回路54には任意のしきい値などを格納した記憶手段60を連絡している。
【0037】
上記光量調節回路53の構成により、オペレータが品種設定手段56を操作し、玄米、精白米(うるち米)又はもち米などの被選別物となる選別原料を選択すると、被選別物の選別原料ごとに対応する選別基準値となるデータが記憶手段60から読み出され、このデータに従ってバックグラウンド17aの照明用光源16b及びバックグラウンド17bの照明用光源18bの明るさが調節される。これにより、バックグラウンド17a,17bの明るさが選別原料に応じて自動的な調節が行われるようになる。
【0038】
次に、上記実施形態における作用について説明する。まず、被選別物となる選別原料として玄米を用いた場合を説明する。玄米の場合、オペレータが品種設定手段56を操作し、バックグラウンド17a,17bの明るさを、良品の玄米と同じ明るさに設定しておく。そして、玄米を貯留タンク3に投入し、振動フィーダ4を作動させてシュート2に順次供給していくと、玄米はシュート2上を滑走し、該シュート2下端からは落下軌跡Lに沿って落下する。検査位置Pでは、光源16a,16c、光源18a,18cから可視光域の光が照射されており、CCDカメラ15a,15bが着色粒、しらた米又は異物が混入しているか否かを監視している。
【0039】
すなわち、良品が検査位置Pを通過するときは、バックグラウンド17a,17bの明るさと同じであり、受光量が変化しないために、CCDカメラ15a,15b内の各センサの電圧レベルは変化しない。
【0040】
しらた米が検査位置Pを通過したときは、CCDカメラ15a内の第1赤色センサ37が穀粒表面の反射光量を検知し、電圧レベルに変化が生じる(このとき、良品の玄米の反射光量よりも明るい「しらた米」であると検知される。)。または、CCDカメラ15bの第2赤色センサ43が、光源16a,16cによって照明された赤色光による穀粒の透過光量を検知し、電圧レベルに変化を生じる(このとき、良品の玄米よりも透過光が暗い「しらた米」であると検知される。)。
【0041】
また、着色粒又は異物が検査位置Pを通過したときは、CCDカメラ15aの第1緑色センサ38が流下軌跡Lの一方側(上方側)で反射光量又は透過光量を検知する一方、CCDカメラ15bの第2緑色センサ44が流下軌跡Lの他方側(下方側)で反射光量又は透過光量を検知し、電圧レベルに変化が生じる(このとき、粒の表裏両面について反射光量及び透過光量を検知し、「着色粒」又は「異物」を検査する。)。
【0042】
上記しらた米、着色粒又は異物が検査位置Pを通過し、各受光センサの電圧レベルに変化が生じたときは、選別・除去判別回路54において任意のしきい値と比較され、エジェクター駆動回路59に排除信号を出力する。エジェクター駆動回路59からは、任意の遅延時間をおいてエジェクターバルブ23への駆動信号が送信され、これにより、エジェクターノズル6からの高圧の噴風を受けて流下軌跡Lからしらた米、着色粒又は異物が排除されることになる。流下軌跡Lから排除されたしらた米、着色粒又は異物は、不良品排出樋8に収容され、エジェクターノズル6からの噴風を受けない良品は、そのまま流下軌跡Lから良品排出樋7に受け入れられる。
【0043】
次に、被選別物となる選別原料として精白米を用いた場合は、着色粒又は異物の検査の際に、青色センサを使用するほかは、玄米とほぼ同様の操作内容となる。
【0044】
すなわち、着色粒又は異物が検査位置Pを通過したときは、CCDカメラ15aの第1青色センサ39が流下軌跡Lの一方側(上方側)で反射光量又は透過光量を検知する一方、CCDカメラ15bの第2青色センサ45が流下軌跡Lの他方側(下方側)で反射光量又は透過光量を検知し、電圧レベルに変化を生じるのである(このとき、粒の表裏両面について反射光量及び透過光量を検知し、「着色粒」又は「異物」を検査する。)。
【0045】
以上のように、本実施形態によれば、検査位置Pにおいて光源16a,16c及び光源18a,18cから可視光域の光が照射されており、流下軌跡Lに対して2方向から照明することによって穀粒への照明ムラが生じることがなく、また、着色粒又は異物が検査位置Pを通過したときは、CCDカメラ15aの第1緑色センサ38又は第1青色センサ39が流下軌跡Lの一方側(上方側)で反射光量又は透過光量を検知する一方、CCDカメラ15bの第2緑色センサ44又は第2青色センサ45が流下軌跡Lの他方側(下方側)で反射光量又は透過光量を検知して、一方の側と他方の側の2方向、かつ、緑色域及び青色域の合計4つの検出信号に基づいて、着色粒又は異物であるか否かが判定されるので、常に着色粒又は異物の表裏両面を監視しており、穀粒に部分着色粒(カメムシ被害粒など微小な着色粒)が存在していた場合であっても、複雑な信号処理回路を設けることなく、高精度で選別・除去信号を出力し、選別精度を向上させることができる。そして、しらた米が検査領域を通過したときも、2方向の赤色域の検出信号に基づき、しらた米であるか否かが判定されるので、見逃しがなく、しらた米の選別精度も向上する。
【0046】
図6は被選別物が玄米である場合に、良品である整粒と良品である青未熟粒とに判別する整粒・青未熟粒判別手段を加えた制御ブロック図である。図5に示すブロック図の選別・除去判別回路54によれば、着色粒又は異物が検査位置Pを通過したときに、各受光センサの電圧レベルに変化が生じるので、任意のしきい値と比較して除去信号を出力するものであるが、着色粒のしきい値を上げると(感度を上げると)、青系統の色である青未熟粒が着色粒と判別され、玄米のうち良品とされる青未熟粒であっても着色不良として不良品排出樋8に回収されてしまう。そこで、本実施形態では、着色粒又は異物であるか否かを判定する不良品判別手段(選別・除去判別回路54)の前工程に、良品である整粒と良品である青未熟粒とに判別する整粒・青未熟粒判別手段(整粒・青未熟判別回路61)を設け、整粒と青未熟粒とを区分し、青未熟粒を精査して不良品判別を行うので、青未熟粒を良品として回収する回収率が向上するようになる。
【0047】
図7を参照すれば、玄米の整粒と玄米の青未熟粒とに光を照射し、その反射光を比較すると、約550nmの緑色域(G)の波長では反射光量差が小さいが、約660nmの赤色域(R)の波長では青未熟粒の反射光量が小さく窪んだ状態となり、整粒と青未熟粒との反射光量差が大きくなっていることが分かる。この約550nmの緑色域(G)の波長と、約660nmの赤色域(R)の波長とを、青未熟粒が混入する玄米に照射して、その反射光の強さの比を算出し、その値が所定のしきい値を超えたとき、青未熟粒であると判別することが可能である。
【0048】
再度、図6を参照すれば、制御装置52には整粒・青未熟判別回路61と選別・除去判別回路54とを備えている。そして、入力側にCCDカメラ15aのセンサ35,36,37、及びCCDカメラ15bのセンサ43,44,45が連絡されており、出力側には、整粒が落下する落下軌跡とは異なる軌跡に青未熟粒を落下させて区分する玄米選別手段62、青未熟に区分された粒から着色粒、しらた米及び異物を排除する第1選別手段63、及び整粒に区分された粒から着色粒、しらた米及び異物を排除する第2選別手段64が連絡されている。符号65は青未熟粒の流れから除去された死米等の着色粒、しらた米及び異物を回収する不良品回収箱であり、符号66は青未熟粒回収箱であり、符号67は整粒回収箱であり、符号68は整粒の流れから除去された死米等の着色粒、しらた米及び異物を回収する不良品回収箱である。
【0049】
以上のように、被選別物が玄米である場合は、あらかじめ整粒と青未熟粒とを区別し、青未熟粒を精査して不良品判別を行うので、青未熟粒を良品として回収する回収率が向上するようになる。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】本発明による穀粒選別装置の概略側断面図である。
【図2】光学検出部をより詳細に示した拡大断面図である。
【図3】光学検出部の詳細構造図である。
【図4】光学検出部の別実施形態を示す詳細構造図である。
【図5】穀粒選別装置の制御ブロック図である。
【図6】玄米の整粒と玄米の青未熟粒とに判別する整粒・青未熟粒判別手段を加えた制御ブロック図である。
【図7】玄米の整粒と玄米の青未熟粒とに光を照射したときの明るさとその波長との関係を示す図である。
【符号の説明】
【0051】
1 選別装置
2 シュート
3 貯留タンク
4 振動フィーダ
5 光学検出部
6 エジェクターノズル
7 良品排出樋
8 不良品排出樋
9 底面
10 シュートカバー
11 立ち上がり部
12 コイルバネ
13 電磁駆動コイル
14 箱体
15 CCDカメラ
16 光源
17 バックグラウンド
18 光源
19 窓部材
20 点検扉
21 サブタンク
22 エア管
23 エジェクターバルブ
24 チューブ
25 制御ボックス
26 基板
27 基板
28 エアシリンダ
29 前面ドア
30 操作盤
31 上段後面壁
32 中段後面壁
33 下段後面壁
34 レンズ
35 第1ハーフミラー
36 第2ハーフミラー
37 第1赤色センサ
38 第1緑色センサ
39 第1青色センサ
40 レンズ
41 第1ハーフミラー
42 第2ハーフミラー
43 第2赤色センサ
44 第2緑色センサ
45 第2青色センサ
49 フォトダイオード
50 フォトダイオード
51 フォトダイオード
52 制御装置
53 光量調節回路
54 選別・除去判別回路
55 入力インターフェース
56 品種設定手段
57 出力インターフェース
58 A/D変換器
59 エジェクター駆動回路
60 記憶手段
61 整粒・青未熟判別回路
62 玄米選別手段
63 第1選別手段
64 第2選別手段
65 不良品回収箱
66 青未熟粒回収箱
67 整粒回収箱
68 不良品回収箱

【特許請求の範囲】
【請求項1】
良品となる穀粒から不良品となる着色粒、しらた米及び異物を選別・除去する光学式穀粒選別装置であって、
被選別物となる穀粒を搬送する搬送手段と、
該搬送手段から放出される穀粒の一方の側から可視光域の赤色域、緑色域及び青色域からなる3波長の光を照射するとともに、穀粒の他方の側から可視光域の緑色域及び青色域からなる2波長の光を照射する照明手段と、
該照明手段にて照明された穀粒を、一方の側と他方の側からそれぞれ赤色域、緑色域及び青色域の各波長別に同時に監視する光学検出手段と、
該光学検出手段の一方の側と他方の側の赤色域の検出信号に基づき、しらた米であるか否かを判定するとともに、前記光学検出手段の一方の側と他方の側の緑色域及び青色域の検出信号に基づき、着色粒又は異物であるか否かを判定する不良品判別手段と、
該不良品判別手段によって不良品と判別された着色粒、しらた米及び異物を、良品が落下する落下軌跡とは異なる軌跡に落下させて排除する選別手段とを有することを特徴とする光学式穀粒選別装置。
【請求項2】
良品となる穀粒から不良品となる着色粒、しらた米及び異物を選別・除去する光学式穀粒選別装置であって、
被選別物となる穀粒を搬送する搬送手段と、
該搬送手段から放出される穀粒の一方の側から可視光域の赤色域、緑色域及び青色域からなる3波長の光を照射するとともに、穀粒の他方の側から可視光域の緑色域及び青色域からなる2波長の光を照射する照明手段と、
該照明手段にて照明された穀粒を、一方の側と他方の側からそれぞれ赤色域、緑色域及び青色域の各波長別に同時に監視する光学検出手段と、
該光学検出手段の一方の側と他方の側の赤色域検出信号と緑色域検出信号との比を算出して、被選別物が玄米である場合に、良品である整粒と良品である青未熟粒とに判別する整粒・青未熟粒判別手段と、
前記整粒・青未熟判別手段によって青未熟と判別された粒を、整粒が落下する落下軌跡とは異なる軌跡に落下させて区分する玄米選別手段と、
該玄米選別手段により青未熟に区分された粒を、前記光学検出手段の一方の側と他方の側の赤色域の検出信号に基づき、しらた米であるか否かを判定するとともに、前記光学検出手段の一方の側と他方の側の緑色域及び青色域の検出信号に基づき、着色粒又は異物であるか否かを判定する第1不良品判別手段と、
該第1不良品判別手段によって不良品と判別された着色粒、しらた米及び異物を、良品が落下する落下軌跡とは異なる軌跡に落下させて排除する第1選別手段と、
前記玄米選別手段により整粒に区分された粒を、前記光学検出手段の一方の側と他方の側の赤色域の検出信号に基づき、しらた米であるか否かを判定するとともに、前記光学検出手段の一方の側と他方の側の緑色域及び青色域の検出信号に基づき、着色粒又は異物であるか否かを判定する第2不良品判別手段と、
該第2不良品判別手段によって不良品と判別された着色粒、しらた米及び異物を、良品が落下する落下軌跡とは異なる軌跡に落下させて排除する第2選別手段とを有することを特徴とする光学式穀粒選別装置。
【請求項3】
前記光学検出手段の青色域の検出信号は、被選別物が精白米である場合に不良品となる着色粒又は異物の判定に利用される請求項1記載の光学式穀粒選別装置。
【請求項4】
前記光学検出手段は、穀粒を透過した透過光と穀粒の表面からの反射光とを監視することができるようにされている請求項1乃至3のいずれかに記載の光学式穀粒選別装置。
【請求項5】
前記光学検出手段は、監視領域を赤色域、緑色域及び青色域の各波長別に独立して検知することが可能なCCDカメラと、該CCDカメラに対向して配置されるバックグラウンドとから構成されている請求項1乃至4のいずれかに記載の光学式穀粒選別装置。
【請求項6】
前記CCDカメラは、入射される光を赤色域、緑色域及び青色域に分光し、それぞれの光の波長に高い感度を有するセンサが列状に配設される3CCD方式とされている請求項5記載の光学式穀粒選別装置。
【請求項7】
前記CCDカメラは、赤色域、緑色域、青色域の各センサの3ラインが一つのパッケージに内蔵され、各センサの1ラインに数千個のフォトダイオードが直線状に配設されるカラーラインセンサ方式とされている請求項5記載の光学式穀粒選別装置。
【請求項8】
前記光学検出手段には、前記バックグラウンドへの照射を専用とする専用光源を配設し、前記バックグラウンドの明るさが被選別物に応じて変更されるように構成されている請求項5乃至7のいずれかに記載の光学式穀粒選別装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−42326(P2010−42326A)
【公開日】平成22年2月25日(2010.2.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−206278(P2008−206278)
【出願日】平成20年8月8日(2008.8.8)
【出願人】(000001812)株式会社サタケ (223)
【Fターム(参考)】