説明

光学機器および撮像装置

【課題】鏡筒の防滴性を維持する。
【解決手段】光学機器であって、光学部材を収容した鏡筒と、鏡筒の外周面を覆う環状の弾性部材と、弾性部材を径方向内側から支持する非弾性部材とを備えた光学機器であって、非弾性部材は、弾性部材の内面に液密に接する外周面、光学部材の光軸方向に位置する弾性部材の端面に対向する段差面、段差面から陥入する周溝、および、外周面に一端が開口して鏡筒の内部に連通する貫通部を有し、弾性部材は、端面から突出して周溝の内面に光軸方向に押し付けられて弾性変形しつつ非弾性部材に液密に接するリブを有し、弾性部材および非弾性部材が液密に接する領域で貫通部を包囲する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学機器および撮像装置に関する。
【背景技術】
【0002】
操作部材を覆う弾性部材により浸水を防止する防滴機構がある(特許文献1参照)。
[特許文献1] 特開平09−138453号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
操作部材の形状が入り組んでいる場合には上記の防滴機構が形成できない。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の第一態様として、光学部材を収容した鏡筒と、鏡筒の外周面を覆う環状の弾性部材と、弾性部材を径方向内側から支持する非弾性部材とを備えた光学機器であって、非弾性部材は、弾性部材の内面に液密に接する外周面、光学部材の光軸方向に位置する弾性部材の端面に対向する段差面、段差面から陥入する周溝、および、外周面に一端が開口して鏡筒の内部に連通する貫通部を有し、弾性部材は、端面から突出して周溝の内面に光軸方向に押し付けられて弾性変形しつつ非弾性部材に液密に接するリブを有し、弾性部材および非弾性部材が液密に接する領域で貫通部を包囲する光学機器が提供される。
【0005】
本発明の第二態様として、上記光学機器と、光学機器を通じて入射した像光を撮像する撮像部とを備える撮像装置が提供される。
【0006】
上記の発明の概要は、本発明の必要な特徴の全てを列挙したものではない。これらの特徴群のサブコンビネーションもまた発明となり得る。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】一眼レフカメラ100の模式的断面図である。
【図2】ズーム操作環208の分解斜視図である。
【図3】ズーム操作環208の分解斜視図である。
【図4】ズーム操作環208の組み立て過程を示す斜視図である。
【図5】ズーム操作環208の組み立て過程を示す斜視図である。
【図6】ズーム操作環208の斜視図である。
【図7】環状弾性部材283の部分断面図である。
【図8】前部非弾性部材281および後部非弾性部材284の部分断面図である。
【図9】ズーム操作環208の部分断面図である。
【図10】環状弾性部材283の密接状態を説明する模式図である。
【図11】ズーム操作環208の部分平面図である。模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、発明の実施の形態を通じて本発明を説明するが、以下の実施形態は特許請求の範囲にかかる発明を限定するものではない。また、実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
【0009】
図1は、一眼レフカメラ100の模式的断面図である。一眼レフカメラ100は、レンズ鏡筒200およびカメラボディ300を備える。レンズ鏡筒200は、光学機器の一例である。
【0010】
なお、記載を簡潔にする目的で、これからの説明においては、カメラボディ300に装着したレンズ鏡筒200に対して物体側を「前」または「先」と記載する。また、レンズ鏡筒200に対して物体から遠い側を「後」または「背面」と記載する。
【0011】
レンズ鏡筒200は、固定筒201と、固定筒201の内部に形成された光学系とを有する。固定筒201は、レンズ側マウント部202を後端に有し、カメラボディ300前面のボディ側マウント部360に結合される。
【0012】
レンズ側マウント部202およびボディ側マウント部360の結合は、予め定められた操作により解除できる。よって、カメラボディ300には、同じ規格のレンズ側マウント部202を有する他のレンズ鏡筒200を交換して装着できる。
【0013】
固定筒201の内部においては、物体側から順に光軸Xに沿って配された第一レンズ群210、第二レンズ群220、第三レンズ群230、第四レンズ群240および第五レンズ群250が光学系を形成する。第一レンズ群210、第二レンズ群220、第三レンズ群230、第四レンズ群240および第五レンズ群250は、それぞれ、個別のレンズ保持枠212、222、232、242、252に保持される。
【0014】
固定筒201の外周には、物体側から順にズーム操作環208、前カバー204、合焦操作環205および後カバー203が順次配される。前カバー204および後カバー203は、固定筒201に対して固定される。ズーム操作環208および合焦操作環205は、光学系の光軸Xを回転中心として、固定筒201に対してそれぞれ個別に回転できる。
【0015】
レンズ鏡筒200において、第一レンズ群210を保持するレンズ保持枠212は、外筒214の先端に支持される。外筒214は、固定筒201に対して光軸Xと平行な方向に進退して、レンズ鏡筒200の全長を変化させつつ第一レンズ群210を光軸X方向に移動させる。
【0016】
外筒214の外側には、外筒214に対して進退するカバー筒216が、外筒214と同軸に配される。カバー筒216は、後端付近の外周面にカムピン211を有する。カムピン211はズーム操作環208の回転により駆動される。これにより、カバー筒216は、外筒214に連れ従って光軸X方向に進退する。
【0017】
よって、外筒214が前方に移動した場合に固定筒201と外筒214との間に形成される間隙はカバー筒216により覆われる。これにより、固定筒201と外筒214の間隙から塵芥等がレンズ鏡筒200の内部に進入することが防止される。
【0018】
レンズ鏡筒200において、第二レンズ群220を保持するレンズ保持枠222は、図示の断面には現れない一対のガイドバーに、光軸X方向に移動可能に支持される。ガイドバーは、光軸Xと平行に配置される。また、第二レンズ群220を保持するレンズ保持枠222は、外周面から外側に突出するカムピン221を有する。
【0019】
カムピン221の先端は、固定筒201の外側に配されたカム環260のカム溝に係合する。よって、カム環260が光軸Xを回転中心として回転した場合、第二レンズ群220は光軸X方向に移動する。これにより、レンズ保持枠222がガイドバーに沿って移動する場合、第二レンズ群220は、内筒前部234に対して光軸X方向に相対移動する。
【0020】
なお、上記一対のガイドバーは、内筒前部234および内筒後部254に対して固定されている。内筒前部234および内筒後部254が固定筒201に対して光軸X方向に相対移動する場合、第二レンズ群220は、内筒前部234と共に固定筒201に対して光軸X方向に移動する。
【0021】
レンズ鏡筒200において、第三レンズ群230を保持するレンズ保持枠232は、内筒後部254の前端付近に固定される。また、第五レンズ群250を保持するレンズ保持枠252は、同じ内筒後部254の後端付近に固定される。内筒後部254は、第二レンズ群220を案内するガイドバーとは別の一対のガイドバーを内側に保持する。
【0022】
更に、内筒後部254は、外周面に複数のカムピン231を有する。カムピン231は、固定筒201の内側に配されたカム筒270のカム溝と係合する。よって、カム筒270が駆動力を受けて光軸Xを回転中心として回転した場合には、カムピン231に駆動力が伝達され、内筒後部254は光軸Xと平行な方向に移動する。
【0023】
これにより、内筒後部254に支持された第三レンズ群230および第五レンズ群250も、内筒後部254と共に移動する。更に、内筒後部254と一体的に連結された内筒前部234も、内筒後部254と共に光軸X方向に移動する。このように、第三レンズ群230および第五レンズ群250は、内筒後部254により互いに連結されるので、第三レンズ群230および第五レンズ群250の間隔が変化することはない。
【0024】
ズーム操作環208は、固定筒201の内側まで延在する連動キー209を有する。連動キー209は、ズーム操作環208が回転した場合に、ズーム操作環208と共に回転して、回転駆動力をカム筒270に伝達する。よって、ズーム操作環208が回転した場合は、カム筒270も回転する。
【0025】
また、カム筒270は、固定筒201の内側に配され、カムピン231と係合するカム溝と、周面から径方向外側に突出したカムピン271とを有する。カムピン271の先端は、固定筒201に形成されたカム溝を貫通して、固定筒201の外側に配されたカム環260のカム溝に係合する。これにより、カム環260が光軸Xを回転中心として回転した場合、カム筒270自体も固定筒201に対して光軸X方向に進退する。
【0026】
レンズ鏡筒200において、第四レンズ群240を保持したレンズ保持枠242は、一対のガイドバーにより、光軸X方向に移動可能に支持される。よって、内筒後部254が光軸X方向に移動した場合は、第四レンズ群240も光軸X方向に移動する。また、レンズ保持枠242が駆動力を受けた場合、第四レンズ群240は、第三レンズ群230および第五レンズ群250に対して光軸X方向に相対的に移動する。
【0027】
なお、レンズ鏡筒200において、第四レンズ群240は手振れ補正レンズを含む。手振れ補正レンズは、光軸Xに対して交差する方向に変位して、光学系の光軸Xのぶれを補償する。
【0028】
また、レンズ鏡筒200は、固定筒201に対して固定された駆動部206を有する。駆動部206は、レンズ鏡筒200がオートフォーカス動作をする場合に、合焦操作環205を回転駆動する。
【0029】
更に、レンズ鏡筒200は、ズーム操作環208に対して固定され、ズーム操作環208の回転に伴って、固定筒201の外周面に沿って周方向に移動するエンコーダブラシ207を備える。エンコーダブラシ207は、ユーザに操作されたズーム操作環208の回転量を検出する。
【0030】
上記のようなレンズ鏡筒200において、ズーム操作環208を回転させた場合、第一レンズ群210、第二レンズ群220、第三レンズ群230、第四レンズ群240および第五レンズ群250が光軸X方向に移動して、レンズ鏡筒200の光学系が変倍する。また、合焦操作環205を回転させた場合、若しくは、カメラボディ300の制御部322の指示により駆動部206が動作した場合は、第一レンズ群210、第二レンズ群220、第三レンズ群230、第四レンズ群240および第五レンズ群250の一部、例えば第四レンズ群240が光軸X方向に移動して、レンズ鏡筒200の光学系の焦点位置を変化させる。
【0031】
カメラボディ300は、レンズ側マウント部202に結合されるボディ側マウント部360の後方にミラーユニット370を備える。ミラーユニット370には、レンズ鏡筒200を通じて像光が入射する。
【0032】
ミラーユニット370は、メインミラー371およびサブミラー374を有する。メインミラー371は、メインミラー回動軸373により軸支されたメインミラー保持枠372に支持される。
【0033】
サブミラー374は、サブミラー回動軸376によりメインミラー保持枠372から軸支されたサブミラー保持枠375に支持される。よって、サブミラー保持枠375は、メインミラー保持枠372に対して回動する。また、メインミラー保持枠372が回動した場合、サブミラー保持枠375もメインミラー保持枠372と共に変位する。
【0034】
メインミラー保持枠372の前端が降下した場合、メインミラー371は、レンズ鏡筒200から入射した入射光束を斜めに横切る観察位置に停止する。メインミラー保持枠372が上昇した場合、メインミラー371は略水平になり、入射光束を避けた撮影位置に停止する。
【0035】
カメラボディ300において、ミラーユニット370の上方にはピント板352が、ミラーユニット370の下方には合焦光学系380が、それぞれ配される。ピント板352の更に上方にはペンタプリズム354が配され、ペンタプリズム354の後方にはファインダ光学系356が配される。ファインダ光学系356の後端は、ファインダ350としてカメラボディ300の背面に露出する。
【0036】
メインミラー371が観察位置にある場合、レンズ鏡筒200を通じて入射した入射光束の多くはメインミラー371に反射されてピント板352に導かれる。ピント板352は、撮像素子330の撮像面と共役な位置に配されて、レンズ鏡筒200の光学系が形成した像を可視化する。ピント板352に形成された像は、ペンタプリズム354およびファインダ光学系356を通じてファインダ350から観察される。
【0037】
ペンタプリズム354を通してファインダ350から観察される像は、正立正像として観察される。これにより、一眼レフカメラ100のユーザは、一眼レフカメラ100による撮影範囲を決定できる。
【0038】
また、ピント板352二入射した入射光束の一部は、ファインダ光学系356の近傍に配された測光センサ390に入射する。測光センサ390は、受光した光束から被写体輝度を検出して制御部322に参照させる。これにより、制御部322は、撮影する場合の露出条件を算出する。
【0039】
更に、メインミラー371は、入射光束の一部を透過するハーフミラー領域を有する。よって、観察位置にあるメインミラー371に入射した入射光束の一部は、ハーフミラー領域を透過してサブミラー374に入射する。サブミラー374は、ハーフミラー領域から入射した入射光束の一部を、合焦光学系380に向かって反射する。
【0040】
合焦光学系380は、入射した入射光束の一部を焦点検出センサ382に導く。これにより、制御部322は、レンズ鏡筒200の光学系を合焦させる場合に移動するレンズの目標位置を決定する。
【0041】
カメラボディ300において、ミラーユニット370の後方には、シャッタユニット310、光学フィルタ332、撮像素子330、ボディ基板320および背面表示部340が順次配される。液晶表示板等により形成される背面表示部340は、カメラボディ300の背面に現れる。ボディ基板320には、制御部322、画像処理部324等の電子回路が実装される。
【0042】
上記のような一眼レフカメラ100においてレリーズボタンが半押しされると、焦点検出センサ382および測光センサ390が有効になり、被写体像を適切な撮影条件で撮影できる状態になる。次いで、レリーズボタンが全押しされると、メインミラー371およびサブミラー374が退避位置に移動して、シャッタユニット310が開く。これにより、レンズ鏡筒200から入射した入射光束は、光学フィルタ332を通過して、撮像素子330に撮影される。
【0043】
図2および図3は、ズーム操作環208の分解斜視図である。両図で共通の要素には同じ参照番号を付す。
【0044】
図2は、ズーム操作環208をレンズ鏡筒200に取り付けた場合の向きについて斜め前方から見下ろした様子を示す。図3は、ズーム操作環208をレンズ鏡筒200に取り付けた場合の向きについて斜め後方から見下ろした様子を示す。また、図3には、カム筒270も併せて示す。カム筒270は、光軸Xと平行に形成された直線状のキー溝279を周面上部に有する。
【0045】
ズーム操作環208は、前部非弾性部材281、環状弾性部材283、後部非弾性部材284、連動キー209およびエンコーダブラシ207を有する。前部非弾性部材281は、円筒状の形状を有し、内外を連通する貫通穴292を周面に有する。
【0046】
また、前部非弾性部材281は、周面の前端近傍に段差面298を有する。段差面298は、前部非弾性部材281の周面から径方向に立ち上がり、ズーム操作環208がレンズ鏡筒200に取り付けられた場合に後方を向く。
【0047】
更に、前部非弾性部材281の後端付近は外径が小さく、後部非弾性部材284の内面と相補的な外周面形状を有する。これにより、後部非弾性部材284は、前部非弾性部材281と嵌合してズーム操作環208の骨格を形成する。よって、前部非弾性部材281および後部非弾性部材284は、それぞれ、機械的強度を有する硬質な材料、例えば、樹脂材料、金属材料等により形成される。
【0048】
後部非弾性部材284は、前部非弾性部材281よりも短い円筒状の形状を有する。後部非弾性部材284の内面は、前部非弾性部材281後部の外周面と相補的な形状を有する。これにより、後部非弾性部材284は、前部非弾性部材281と嵌合させることができる。
【0049】
なお、後部非弾性部材284は、前端が開放された切欠き部295を周面に有する。切欠き部295は、後部非弾性部材284を前部非弾性部材281に嵌合させた場合に、前部非弾性部材281の貫通穴292と重なる位置に形成される。これにより、後部非弾性部材284および前部非弾性部材281を嵌合させた場合に、貫通穴292が後部非弾性部材284に塞がれることが防止される。
【0050】
また、後部非弾性部材284は、周面の後端近傍に段差面294を有する。段差面294は、後部非弾性部材284の周面から径方向に立ち上がり、ズーム操作環208がレンズ鏡筒200に取り付けられた場合に前方を向く。
【0051】
環状弾性部材283は、エラストマ等の弾性を有する材料により形成され、相互に嵌合した前部非弾性部材281および後部非弾性部材284の外周面と相補的な形状の内面形状を有する。また、環状弾性部材283は、ズーム操作環208を回転させる場合の滑り止めになる起伏を外周面に有する。
【0052】
連動キー209は、光軸Xに対して平行に延在する部分と、レンズ鏡筒200の径方向に延在する部分とが一体的に連結されて形成される。連動キー209は、光軸Xに平行な部分の前端近傍に、ビス287を挿通するねじ穴を有する。連動キー209は、細長い形状を有するにも関わらず、ズーム操作環208の回転駆動力をレンズ鏡筒200の内部に伝達する。よって、金属等の、機械的強度を有する材料により形成される。
【0053】
エンコーダブラシ207は、複数の接触片を有する。接触片は、固定筒201の外周面に配されたスケール端子に接して電気的な接続を形成する。エンコーダブラシ207も、ビス287を挿通するねじ穴を有する。エンコーダブラシ207は、それ自体が電気信号を伝達するので、金属等の導電性を有する材料により形成される。
【0054】
ズーム操作環208は、上記一連の部品の他に、補強部材285、粘着テープ282、286を有する。補強部材285および粘着テープ282、286は、前部非弾性部材281および後部非弾性部材284の外周面に貼り付けて、両者を結合すると共に、外周面を平坦にする。
【0055】
図4は、上記部品を有するズーム操作環208の組み立て過程を示す斜視図である。図2および図3と共通の要素には同じ参照番号を付して重複する説明を省く。
【0056】
ズーム操作環208において、連動キー209は、後端を貫通穴292に挿通された上で、ビス287により前部非弾性部材281に対して固定される。これにより、連動キー209の後端は、前部非弾性部材281の内側に径方向に突出して、カム筒270のキー溝279と係合する。
【0057】
このように、連動キー209は、固定筒201の外側に配されるズーム操作環208と、固定筒201の内側に配されるカム筒270とを連結する。よって、ズーム操作環208が光軸Xを回転中心として回転した場合は、カム筒270が連動して、光軸Xを回転中心として回転する。ただし、キー溝279は、光軸Xと平行な方向に細長い長穴状の形状を有する。よって、カム筒270は、連動キー209との係合を維持したまま、光軸Xと平行な方向に移動できる。
【0058】
更に、図示の状態では、連動キー209を固定した前部非弾性部材281の後端近傍が、後部非弾性部材284の内側に挿通されている。これにより、前部非弾性部材281および後部非弾性部材284の周面がつながって、光軸X方向に広くて平坦な外周面が形成される。また、前部非弾性部材281の段差面と、後部非弾性部材284の段差面294とが互いに対向する。
【0059】
なお、後部非弾性部材284の切欠き部295は、固定された連動キー209に合わせて位置決めされている。これにより、後部非弾性部材284を前部非弾性部材281に嵌め込む場合に、連動キー209、ビス287の頭部等が後部非弾性部材284と干渉することを防止できる。
【0060】
図5は、ズーム操作環208の、図4に示した状態に続く組み立て過程を示す斜視図である。図4までと共通の要素には同じ参照番号を付して重複する説明を省く。
【0061】
互いに嵌合した前部非弾性部材281および後部非弾性部材284の外周面には、粘着テープ282、286が貼り付けられる。長い粘着テープ282は、前部非弾性部材281および後部非弾性部材284のつなぎ目をまたいで貼り付けられ、前部非弾性部材281および後部非弾性部材284の嵌合を固定する。短い粘着テープ286は、エンコーダブラシ207を覆い隠すと共に、エンコーダブラシ207の外側に補強部材285を固定する。
【0062】
これにより、前部非弾性部材281および後部非弾性部材284の外周面は略平坦になると共に、つなぎ目等が粘着テープにより封止される。ただし、連動キー209および貫通穴292の一部が、段差面294に隣接して後部非弾性部材284の外周面に露出している。
【0063】
図6は、ズーム操作環208の斜視図である。連動キー209に係合するカム筒270も合わせて示す。図5までと共通の要素には同じ参照番号を付して重複する説明を省く。
【0064】
一体化した前部非弾性部材281および後部非弾性部材284の外周面には、環状弾性部材283が装着される。環状弾性部材283は、弾性を利用して延ばすことにより内径を拡げて装着される。これにより、環状弾性部材283は、前部非弾性部材281および後部非弾性部材284に内側から支持されて円筒状の形状を維持する。
【0065】
また、環状弾性部材283における光軸X方向の端部は、竹箆等により一対の段差面294の内側に押し込まれる。これにより、環状弾性部材283の内面は、粘着テープ282で連結された前部非弾性部材281および後部非弾性部材284の外周面に密着する。よって、ズーム操作環208の表面に付着した水等の液体が環状弾性部材283の内側に浸入することは阻止される。
【0066】
連動キー209を挿通された貫通穴292の一部は、光軸X方向について外周面の縁まで延在する。このため、段差面294に隣接して、前部非弾性部材281または後部非弾性部材284の外周面と環状弾性部材283の内面とが密着しない部分が残る。
【0067】
図7は、環状弾性部材283の部分断面図である。図7は、レンズ鏡筒200の光軸Xを含む面で環状弾性部材283を切った場合の、環状弾性部材283後端付近の一部の断面形状を示す。また、レンズ鏡筒200に取り付けた状態の光軸Xの方向を矢印により図中に併せて示す。
【0068】
環状弾性部材283は、光軸X方向後端側の端面291から、光軸X方向に突出したリブ293を有する。即ち、図中左側方に位置する端面291から、図中で更に左方に、端面291から長さLまで水平に突出するリブ293を有する。
【0069】
リブ293は、環状弾性部材283の全周にわたって形成されていてもよい。また、リブ293は、環状弾性部材283の、光軸X方向前端側にも設けてもよい。
【0070】
図8は、ズーム操作環208の部分断面図である。図8は、ズーム操作環208から環状弾性部材283を除いた状態で、レンズ鏡筒200の光軸Xを含む面でズーム操作環208を切った場合の、ズーム操作環208後端付近の一部の断面形状を示す。
【0071】
図6までと共通の要素には同じ参照番号を付して重複する説明を省く。また、レンズ鏡筒200に取り付けた状態の光軸Xの方向を矢印により図中に併せて示す。
【0072】
後部非弾性部材284は、段差面294から、光軸X方向後方に陥入した周溝296を有する。即ち、図中右方に向いた端面291から、図中で左方に窪む深さLの周溝296を有する。深さLは、リブ293の長さLよりも短い。また、周溝296の下端の位置は、後部非弾性部材284の外周面と略同じ高さに位置する。周溝296は、後部非弾性部材284の全周にわたって形成されていてもよい。
【0073】
周溝296は、前部非弾性部材281の段差面298にも設けてもよい。ただし、段差面298に周溝296を設ける場合は、装着される環状弾性部材283の端面291にリブ293が設けられていることを前提とする。
【0074】
図9は、レンズ鏡筒200に組み付けたズーム操作環208の部分断面図である。図9は、環状弾性部材283を取り付けた状態で、レンズ鏡筒200の光軸Xを含む面でズーム操作環208を切った場合の、ズーム操作環208後端付近の一部の断面を示す。
【0075】
図6までと共通の要素には同じ参照番号を付して重複する説明を省く。また、レンズ鏡筒200に取り付けた状態の光軸Xの方向を矢印により図中に併せて示す。
【0076】
前部非弾性部材281および後部非弾性部材284の外周面に内面に密着するように環状弾性部材283を装着した場合、環状弾性部材283の端面291は、段差面294と対向する。また、環状弾性部材283のリブ293の下面は、周溝296の下端同じ高さまで下がる。
【0077】
よって、環状弾性部材283の内面が後部非弾性部材284の外周面に接するまで、段差面294の間に環状弾性部材283を押し込んだ場合、リブ293は、周溝296の内部に入り込む。
【0078】
環状弾性部材283の端面291から突出したリブ293の長さLは、周溝296が後部非弾性部材284の段差面294から陥入する深さLより長い。よって、リブ293の先端が周溝296の内面に押し付けられたことにより、リブ293は周溝296の内部で屈曲変形する。このように、周溝296の内面に、屈曲変形するほど強くリブ293を押し付けることにより、リブ293および周溝296の間からズーム操作環208の内側に液体が浸入することを確実に阻止できる。
【0079】
更に、リブ293は、環状弾性部材283の本体と比較すると薄いので、周溝296の内部で容易に変形して、周溝296の内面形状に倣った形状に変形する。これにより、リブ293の図中下面と、周溝296の内面とは広い幅で接触して、液体の浸入を阻止する。ズーム操作環208において、環状弾性部材283と後部非弾性部材284とは共に回転する部材なので、リブ293と周溝296とが密着しても、ズーム操作環208の操作力量が増加することはない。
【0080】
なお、リブ293と周溝296とが幅広く接すべきことを考慮すると、図示の断面における周溝296の断面形状は、円滑に連続する形状であることが好ましい。また、周溝296は、変形したリブ293が収まり切る容量を有することが好ましい。これにより、周溝296の内部におけるリブ293の変形が、周溝296の外側に位置する環状弾性部材283の形状に影響することが防止できる。よって、環状弾性部材283の一部であるリブ293の変形がズーム操作環208全体の外見に影響することが避けられる。
【0081】
また、上記の例ではズーム操作環208の後端側について専ら説明したが、周溝296およびリブ293を密接させる構造をズーム操作環208の前端側に設けてもよいことはもちろんである。更に、上記構造を、ズーム操作環208の前端側および後端側の両方に設けてもよい。そのような場合に、ズーム操作環208の前後で、リブ293および周溝296の形状が相互に異なっていてもよい。
【0082】
図10は、環状弾性部材283と前部非弾性部材281および後部非弾性部材284との接触状態を示す模式図である。図9までと共通の要素には同じ参照番号を付して重複する説明を省く。
【0083】
既に説明したように、ズーム操作環208において、環状弾性部材283の内面は前部非弾性部材281および後部非弾性部材284の外周面に密接する。ただし、図中に斜線で示す密接領域は、密接の対象となる外周面が存在しない貫通穴292および切欠き部295が位置する領域で途切れている。
【0084】
しかしながら、ズーム操作環208においては、環状弾性部材283の端面291に形成されたリブ293が、後部非弾性部材284の段差面294に形成された周溝296の内面に密接する。よって、環状弾性部材283が後部非弾性部材284に密接する領域は、周溝296の内部で連結され、貫通穴292および切欠き部295の領域を包囲して閉じる。これにより、外部への連通が絶たれた貫通穴292および切欠き部295からの液体の浸入が阻止される。
【0085】
図11は、ズーム操作環208の部分平面図である。図10までと共通の要素には同じ参照番号を付して重複する説明を省く。
【0086】
ズーム操作環208を径方向外側から見た場合、環状弾性部材283の端面291は、後部非弾性部材284の段差面294に隣接している。よって、環状弾性部材283は、ズーム操作環208の外観上は後部非弾性部材284に単純に接している。
【0087】
しかしながら、図中に点線で示すように、環状弾性部材283のリブ293は、後部非弾性部材284の内部に入り込んでいる。よって、リブ293は、環状弾性部材283の外観に影響することなく、周溝296の内部で後部非弾性部材284に密接する。
【0088】
更に、環状弾性部材283と後部非弾性部材284の密接領域は、ズーム操作環208の周囲で連続した環状に形成される。これにより、環状弾性部材283の表面側から、後部非弾性部材284に連動キー209が挿通された領域に液体が浸入することが防止される。
【0089】
上記のように、周溝296の内面と環状弾性部材283のリブ293とを密接させることにより、環状弾性部材283が密接した領域により貫通穴292を包囲して、貫通穴292からズーム操作環208の内側に液体が浸入することを効果的に阻止する防滴構造が形成される。このような防滴構造は、ズーム操作環208の他にも、合焦操作環205、絞り操作環、前カバー204、後カバー203等、環状の形状を有する他の部材にも適用できる。
【0090】
また、光学機器として一眼レフカメラ100のレンズ鏡筒200を例にあげて説明したが、レンズ鏡筒200とカメラボディ300とが一体のカメラにも上記の構造を適用できる。さらに、メインミラー371を備えていないミラーレスカメラのレンズ鏡筒200にも同様の構造を適用できる。また更に、レンズ等の光学部材を光軸X方向に移動させる機能を有する望遠鏡、測量器、顕微鏡等の他の光学機器においても、上記の構造を適用できる。
【0091】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲に限定されない。上記実施の形態に、多様な変更または改良を加え得ることが当業者に明らかである。その様な変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることは特許請求の範囲の記載から明らかである。
【符号の説明】
【0092】
100 一眼レフカメラ、200 レンズ鏡筒、201 固定筒、202 レンズ側マウント部、203 後カバー、204 前カバー、205 合焦操作環、206 駆動部、207 エンコーダブラシ、208 ズーム操作環、209 連動キー、210 第一レンズ群、212、222、232、242、252 レンズ保持枠、214 外筒、216 カバー筒、220 第二レンズ群、211、221、231、271 カムピン、230 第三レンズ群、234 内筒前部、240 第四レンズ群、250 第五レンズ群、254 内筒後部、260 カム環、270 カム筒、279 キー溝、281 前部非弾性部材、282、286 粘着テープ、285 補強部材、287 ビス、283 環状弾性部材、284 後部非弾性部材、291 端面、292 貫通穴、293 リブ、294、298 段差面、295 切欠き部、296 周溝、300 カメラボディ、310 シャッタユニット、320 ボディ基板、322 制御部、324 画像処理部、330 撮像素子、332 光学フィルタ、340 背面表示部、350 ファインダ、352 ピント板、354 ペンタプリズム、356 ファインダ光学系、360 ボディ側マウント部、370 ミラーユニット、371 メインミラー、372 メインミラー保持枠、373 メインミラー回動軸、374 サブミラー、375 サブミラー保持枠、376 サブミラー回動軸、380 合焦光学系、382 焦点検出センサ、390 測光センサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光学部材を収容した鏡筒と、前記鏡筒の外周面を覆う環状の弾性部材と、前記弾性部材を径方向内側から支持する非弾性部材とを備えた光学機器であって、
前記非弾性部材は、前記弾性部材の内面に液密に接する外周面、前記光学部材の光軸方向に位置する前記弾性部材の端面に対向する段差面、前記段差面から陥入する周溝、および、前記外周面に一端が開口して前記鏡筒の内部に連通する貫通部を有し、
前記弾性部材は、前記端面から突出して前記周溝の内面に前記光軸方向に押し付けられて弾性変形しつつ前記非弾性部材に液密に接するリブを有し、
前記弾性部材および前記非弾性部材が液密に接する領域で前記貫通部を包囲する光学機器。
【請求項2】
前記リブは、前記周溝の内面形状に倣って弾性変形する請求項1に記載の光学機器。
【請求項3】
前記リブは、前記周溝の高さ方向に屈曲変形する請求項1または請求項2に記載の光学機器。
【請求項4】
前記光軸を含む断面において、前記周溝は、弾性変形した前記リブを収容する大きさを有する請求項1から請求項3までのいずれか一項に記載の光学機器。
【請求項5】
前記弾性部材は、前記光軸の方向について互いに対向する一対の端面を有し、
前記非弾性部材は、前記一対の端面の一方に対向する段差面を有する第一部材と、前記一対の端面の他方に対向する段差面を有して前記第一部材と結合される第二部材とを含む請求項1から請求項4までのいずれか一項に記載の光学機器。
【請求項6】
前記弾性部材は、前記光軸の方向について対向する一対の端面と、前記一対の端面から前記光軸方向に突出する互いに形状が異なる一対のリブを有し、
前記非弾性部材は、前記一対の端面に対向する一対の段差面と、前記一対の段差面の各々から陥入する一対の周溝とを有し、
前記一対のリブは、前記一対の周溝に入り込み、前記周溝の内面に前記光軸方向に押し付けられて弾性変形する請求項1から請求項5までのいずれか一項に記載の光学機器。
【請求項7】
請求項1から請求項6までのいずれか一項に記載の光学機器と、
前記光学機器を通じて入射した像光を撮像する撮像部と
を備える撮像装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate


【公開番号】特開2013−105093(P2013−105093A)
【公開日】平成25年5月30日(2013.5.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−249906(P2011−249906)
【出願日】平成23年11月15日(2011.11.15)
【出願人】(000004112)株式会社ニコン (12,601)
【Fターム(参考)】