説明

光学活性なキノロンカルボン酸誘導体の製造中間体およびその製造法

【課題】 抗菌剤の重要な母核中間体の工業的に有利な製造方法、およびその製造中間体を提供する。 【解決手段】 下記式(IV):【化1】 で表される化合物を、溶媒の存在下で塩基で処理することにより、式(V):【化2】 で表される化合物を得;これを加水分解することを特徴とする、式(VI):【化3】 で表される化合物の製造方法;式(II):【化4】 で表される化合物;式(Ia):【化5】 で表される化合物;式(V):【化6】 で表される化合物;及び式(VI):【化7】 で表される化合物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、優れた医薬、農薬、動物用薬等として期待されるキノロンカルボン酸系合成抗菌剤の母核中間体である6−H(6位水素置換を意味する)キノロンカルボン酸誘導体の製造法、および新規なその製造中間体に関する。
【背景技術】
【0002】
キノロンカルボン酸誘導体は合成抗菌剤として医療に汎用されているが、MRSAに代表される耐性菌が出現し、治療上の大きな障害になっている。下記式(A):
【0003】

【0004】
で表されるキノロンカルボン酸誘導体は、MRSAに対して優れた効果を示すばかりでなく、耐性グラム陽性菌にも抗菌活性を示し、各種耐性菌の問題を解決できる化合物である。そして、この化合物を得る母核中間体の製法としては、次の反応式で示される製法が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0005】


【特許文献1】国際公開WO 02/040478号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、現在知られている製法は多工程を要し、かつ製造上多大な負担となる極低温(マイナス50℃)で有機リチウム試薬を用いる工程があり、工業的な大量合成法としては問題があった。
従って、本発明の目的は、抗菌剤の重要な母核中間体の工業的に有利な製造方法、およびその製造中間体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は種々検討した結果、例えば下記の反応工程に示すように、2,4−ジフルオロ−3−アルコキシ安息香酸を酸塩化物もしくは混合酸無水物に変換した後、N,N−ジアルキルアミノアクリル酸エチルを縮合させて得た3−ジアルキルアミノ−2−(2,4−ジフルオロ−3−アルコキシベンゾイル)アクリル酸誘導体を鍵中間体として、7−フルオロ−1−[(1R,2S)−2−フルオロシクロプロピルアミノ]−1,4−ジヒドロ−8−アルコキシ−4−オキソキノリン−3−カルボン酸を5工程で工業的に有利に製造できることを見出し、本発明を完成させた。
【0008】

【0009】
(式中、Xはハロゲン原子又はアシルオキシ基を示し、Rは低級アルキル基を示し、R及びRは同一または異なる低級アルキル基を示し、Aはニトリル基又はアルコキシカルボニル基を示す)。
【0010】
即ち、本発明によって、式(IV):
【0011】

【0012】
(式中、Rは低級アルキル基を示し、Aはニトリル基またはアルコキシカルボニル基を示す)で表される化合物を塩基で処理することにより、式(V):
【0013】

【0014】
(式中、R及びAは前記の通りである)で表される化合物を得、これを加水分解することを特徴とする、式(VI):
【0015】

【0016】
(式中、Rは前記の通りである)で表される化合物の製造方法が提供される。
【0017】
前記式(IV)で表される化合物は、式(II):
【0018】

【0019】
(式中、RおよびRは同一または異なる低級アルキル基を示し、R及びAは前記の通りである)で表される化合物と(1R,2S)−2−フルオロシクロプロピルアミンとを反応させて製造することができる。
【0020】
前記式(II)で表される化合物は、式(I):
【0021】

【0022】
(式中、Xはハロゲン原子又はアシルオキシ基を示し、Rは前記の通りである)で表される化合物と、式(III):
【0023】

【0024】
(式中、A、R及びRは前記の通りである)で表わされる化合物とを反応させて製造することができる。
【0025】
前記式(I)で表される化合物は、下記式:
【0026】

【0027】
(式中、Rは前記の通りである)で表される化合物をハロゲン化剤又は酸無水物と反応させて製造することができる。
【0028】
本発明はまた、前記式(VI)で表される、強力な抗菌活性を示す6−Hキノロンカルボン酸誘導体の母核中間体を合成するための有用な中間体である、式(II):
【0029】

【0030】
(式中、Rは低級アルキル基を示し、Aはニトリル基又はアルコキシカルボニル基を示し、RおよびRは同一または異なる低級アルキル基を示す)で表される化合物を提供するものである。
【0031】
本発明はまた、前記式(VI)で表される、強力な抗菌活性を示す6−Hキノロンカルボン酸誘導体の母核中間体を合成するための有用な中間体である、式(Ia):
【0032】

【0033】
(式中、Rは低級アルキル基を示し、Xはアシルオキシ基を示す)で表される化合物を提供するものである。
【0034】
本発明はまた、前記式(VI)で表される、強力な抗菌活性を示す6−Hキノロンカルボン酸誘導体の母核中間体を合成するための有用な中間体である、式(V):
【0035】

【0036】
(式中、Rは低級アルキル基を示し、Aはニトリル基又はアルコキシカルボニル基を示す)で表される化合物を提供するものである。
【0037】
更に本発明は、前記式(VI)で表される、強力な抗菌活性を示す6−Hキノロンカルボン酸誘導体の母核中間体を合成するための有用な中間体である、式(VI):
【0038】

【0039】
(式中、Rは低級アルキル基を示す)で表される化合物を提供するものである。
【発明の効果】
【0040】
本発明の製法は、工程の短縮のみならず低温反応や操作が困難な試薬が一切含まれておらず工業的に極めて有用な方法である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0041】
式(I)、(II)及び(IV)〜(VI)中のRとしては、例えばメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピルのような炭素数1乃至3個を有する直鎖状若しくは分枝鎖状の低級アルキル基が好ましい。Rとして特に好ましいのはメチル基である。
【0042】
式(II)及び(III)中のR及びRとしては、例えばメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、sec−ブチル、のような炭素数1乃至4個を有する直鎖状若しくは分枝鎖状の低級アルキル基が好ましい。R及びRとして更に好ましいのはメチル基又はエチル基、特にメチル基である。
【0043】
式(II)〜(V)中のAは、ニトリル基、または例えばメトキシカルボニル、エトキシカルボニル、n−プロポキシカルボニル、イソプロポキシカルボニル、n−ブトキシカルボニル、イソブトキシカルボニルのような炭素数2乃至5個を有するアルコキシカルボニル基が好ましい。特に好ましいAは、メトキシカルボニル及びエトキシカルボニルである。
【0044】
式(I)中のXは、塩素若しくは臭素のようなハロゲン原子、またはアセトキシ、プロピオニルオキシ基等の炭素数2〜6のアルカノイルオキシ基、トリフルオロアセトキシ基等の炭素数2〜6のハロゲン化アルカノイルオキシ基、ベンゾイルオキシ基、2−メチル−6−ニトロベンゾイルオキシ基等の置換又は非置換の炭素数7〜11のアロイルオキシ基が好ましい。特に好ましくはハロゲン原子及び2−メチル−6−ニトロベンゾイルオキシ基である。
【0045】
式(II)の化合物は新規化合物である。式(II)における特に好適な化合物としては、Rがメチル基を示し、式:
【0046】

【0047】
の基がジメチルアミノ基又はジエチルアミノ基を示し、Aがニトリル基、メトキシカルボニル基またはエトキシカルボニル基を示す化合物を挙げることができる。
【0048】
式(I)において、Xがアシルオキシ基である化合物は新規化合物である。該アシルオキシ基は、炭素数が2〜6のアルカノイルオキシ基、炭素数が2〜6のハロゲン化アルカノイルオキシ基、又は置換又は非置換の炭素数7〜11のアロイルオキシ基が好ましい。
【0049】
置換安息香酸から、キノロンカルボン酸系抗菌剤の母核中間体である式(VI)の化合物を得るまでの反応工程を以下に詳述する。
【0050】
置換安息香酸→ 化合物(I)
式(I)の置換ベンゾイルハライド化合物(X=ハロゲン)を製造するには、置換安息香酸と塩化チオニルやオギザリルクロリドのようなハロゲン化剤とを、好ましくは約1:1の化学量論量(モル比)で反応させる。溶媒としては、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、ジオキサン、ジメトキシエタン等のエーテル系化合物;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族化合物;塩化メチレン、クロロホルム等の塩素系化合物;酢酸メチル、酢酸エチル等のエステル化合物;及びアセトニトリル等のニトリル化合物が使用できる。反応温度は0〜170℃、好ましくは室温〜110℃の範囲である。反応は通常、室温付近ですみやかに進行する。反応時間は選択した溶媒や反応温度にも依るが、1〜15時間の範囲である。
【0051】
式(I)の置換ベンゾイル酸無水物を製造するには、置換安息香酸と無水酢酸、トリフルオロ酢酸無水物、安息香酸無水物類などの酸無水物、好ましくは2−メチル−6−ニトロ安息香酸無水物とを、好ましくは約1:1の化学量論量(モル比)で反応させる。溶媒としては置換ベンゾイルハライド化合物の製造に用いる溶媒が使用できるが、好ましくは塩化メチレン、クロロホルム等の塩素系化合物である。反応温度は−20℃〜100℃、好ましくは20℃〜80℃の範囲である。反応時間は選択した溶媒や反応温度にも依るが、2〜10時間の範囲である。
【0052】
化合物(I)→ 化合物(II)
式(II)の化合物を製造するには、式(I)の化合物と式(III)の化合物とを約1:1の化学量論量(モル比)で反応させるのが好ましく、塩基を酸ハライド又は酸無水物(I)に対して0.8〜3.0当量、好ましくは1.0〜1.5当量用いるのがよい。使用できる塩基としては、ピリジン、トリエチルアミン、N−メチルピペリジン、N,N−ジメチルアミノピリジン等の3級アミンが挙げられるが、トリエチルアミンが好ましい。溶媒は、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、ジオキサン、ジメトキシエタン等のエーテル系化合物;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族化合物;塩化メチレン、クロロホルム等の塩素系化合物;酢酸メチル、酢酸エチル等のエステル化合物;又はアセトニトリル等のニトリル化合物が使用できる。反応温度は0〜170℃、好ましくは室温〜110℃の範囲で行われる。
【0053】
反応終了後、生成物を得る方法としては、反応後に析出する塩をろ過し、濃縮する。もしくは反応混合物を濃縮後、又は濃縮せずに水に加え、生成した塩を除いた後、非水溶性有機溶媒で抽出するという一般的方法が用いられる。抽出液から溶媒を除くことにより目的物は高い純度で得られるが、さらに精製する場合には、カラムクロマトグラフィーにより純品として単離できる。
【0054】
化合物(II)→ 化合物(IV)
化合物(IV)を得るには、化合物(II)とフルオロシクロプロピルアミン又はその塩、例えばトシル酸塩を、好ましくはトリエチルアミンのような塩基の存在下で、好ましくは約1:1の化学量論量(モル比)で反応させる。本反応において使用できる溶媒は、反応を阻害しなければ特に制限はなく、例えばジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル系化合物;ヘキサン、シクロヘキサン等の脂肪族化合物;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族化合物;塩化メチレン、クロロホルム、四塩化炭素等の塩素系化合物;又は酢酸メチル、酢酸エチル等のエステル化合物である。反応温度は−20〜100℃、好ましくは0〜50℃の範囲である。反応時間は反応温度によっても異なるが、数分〜10時間、通常2時間以内である。
【0055】
化合物(IV)→ 化合物(V)
化合物(V)は化合物(IV)を塩基で処理して得ることができる。本反応において使用できる溶媒は、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル系化合物;又はN,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、ヘキサメチルリン酸トリアミド、スルホラン、N−メチルピロリドン等の非プロトン性極性溶媒であるが、N,N−ジメチルホルムアミドが好ましい。使用できる塩基としては、水素化ナトリウム、ブチルリチウム、ナトリウムメトキシド、カリウムt−ブトキシド、金属ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム又はフツ化カリウム等が挙げられるが、炭酸カリウムが好ましい。塩基は、化合物(IV)に対して1〜20当量、好ましくは1〜5当量用いるのがよい。反応温度は使用される塩基の種類によっても異なるが、室温〜300℃、好ましくは室温〜100℃の範囲である。反応時間は反応温度によっても異なるが、1〜48時間、通常6〜24時間である。
【0056】
化合物(V)→ 化合物(VI)
化合物(VI)は、化合物(V)を加水分解して得られる。本反応においてはキノロン骨格が分解しなければ酸性条件、アルカリ条件のいずれの条件で加水分解を行ってもよい。酸性条件の加水分解で用いられる酸は、塩酸、硫酸、硝酸等の無機酸、ギ酸、酢酸等のカルボン酸が挙げられ、室温〜300℃、好ましくは室温〜100℃の範囲で行なわれる。酸は、化合物(VI)に対して1〜50当量、好ましくは1〜10当量用いるのがよい。反応時間は反応温度によっても異なるが、1〜48時間、通常1〜24時間である。アルカリ条件の加水分解で用いられる塩基としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等の無機塩基が挙げられ、室温〜300℃、好ましくは室温〜100℃の範囲で行なわれる。塩基は、化合物(VI)に対して1〜50当量、好ましくは1〜10当量用いるのがよい。反応時間は反応温度によっても異なるが、1〜48時間、通常1〜24時間である。
【0057】
このようにして得られた化合物(VI)に、アミノ基が保護された3−(R)−(1−アミノシクロプロピル)ピロリジンを反応させ、次いで当該アミノ基の保護基を脱離させれば、前記式(A)で表される抗菌剤として有用なキノロンカルボン酸誘導体が得られる(下記反応式参照)。ここで、アミノ基の保護基としては、アルコキシカルボニル基、アラルキルオキシカルボニル基、アシル基、アラルキル基、アルキル基、置換シリル基等が挙げられる。反応条件はWO02/40478に記載の条件で行えばよい。例えば、トリエチルアミンのような塩基の存在下に反応を行い、次いで塩酸等を用いて加水分解することにより、保護基を脱離すればよい。なお、この化合物(A)は酸付加塩又はその水和物として単離することもできる。
【0058】

【実施例】
【0059】
実施例および参考例を挙げて、本発明をさらに具体的に説明する。
実施例1:3−ジメチルアミノ−2−(2,4−ジフルオロ−3−メトキシベンゾイル)アクリル酸エチルの製造
2,4−ジフルオロ−3−メトキシ安息香酸10.0gにテトラヒドロフラン40mLを加えた。この溶液にN,N−ジメチルホルムアミド0.4mLを添加後、室温攪拌下で塩化チオニル8mLを滴下した。滴下終了後、ジムロート冷却管を装着して2時間加熱還流した。反応液を放冷後、溶媒を減圧留去した。得られた酸塩化物をテトラヒドロフラン40mLに溶解し、トリエチルアミン12mlを加え攪拌した。30分後N,N−ジメチルアミノアクリル酸エチル8.37gを滴下し、滴下終了後、2時間加熱還流した。反応終了後析出した固体分を吸引濾去し、ろ液を減圧濃縮して、暗褐色油状化合物として所望の標記化合物23.3gを得た。
H−NMR(400MHz,CDCl)d0.94(t,J=6.8Hz,3H),3.97(s,3H),3.98(q,J=6.8Hz,2H),6.91(t,J=8.8,Hz,1H),7.20−7.30(m,1H),7.77(s,1H).
【0060】
実施例2:(E,Z)−2−(2,4−ジフルオロ−3−メトキシベンゾイル)−3−[(1R,2S)−フルオロシクロプロピルアミノ]アクリル酸エチルの製造3−ジメチルアミノ−2−(2,4−ジフルオロ−3−メトキシベンゾイル)アクリル酸エチル22.3gに酢酸エチル110mLを加えた。室温攪拌下、(1R,2S)−2−フルオロシクロプロピルアミン・トシル酸塩20.4gを加えた後、トリエチルアミン1.5gを滴下した。2時間後反応液に水30mLを加え、酢酸エチル25mLにて抽出し、無水硫酸ナトリウムにて乾燥した。硫酸ナトリウムをろ去後、ろ液を減圧濃縮して暗褐色油状物の標記化合物20.5gを得た。
【0061】
実施例3:7−フルオロ−1−[(1R,2S)−2−フルオロシクロプロピルアミノ]−1,4−ジヒドロ−8−メトキシ−4−オキソキノリン−3−カルボン酸エチルの製造
(E,Z)−2−(2,4−ジフルオロ−3−メトキシベンゾイル)−3−[(1R,2S)−フルオロシクロプロピルアミノ]アクリル酸エチル20.5gにN,N−ジメチルホルムアミド40mLを加えて室温下溶解した。粉末状の炭酸カリウム12.5gを加え、添加終了後室温にて16.5時間攪拌した。反応終了後反応液を氷冷し、水200mLをゆっくり滴下し、滴下終了析出結晶を吸引濾過した。粗結晶を水40mLでスラリー洗浄し、ろ過後、イソプロピルエーテル120mLでスラリー洗浄しろ過した。得られた黄褐色の粗結晶をシャーレに移し、風乾し、標記化合物12.5gを得た。
H−NMR(270MHz,CDCl)d1.41(t,J=7.3Hz,3H),1.52−1.65(m,2H),3.78−3.92(m,1H),4.04(d,J=2.0Hz,3H),4.39(q,J=7.3Hz,2H),4.86(ddt,J=62.4,3.5,5.4Hz,1H),7.21(dd,J=9.1,10.4Hz,1H),8.24(dd,J=5.9,9.1Hz,1H),8.57(d,J=1.4Hz,1H).
【0062】
実施例4:7−フルオロ−1−[(1R,2S)−2−フルオロシクロプロピルアミノ]−1,4−ジヒドロ−8−メトキシ−4−オキソキノリン−3−カルボン酸の製造
7−フルオロ−1−[(1R,2S)−2−フルオロシクロプロピルアミノ]−1,4−ジヒドロ−8−メトキシ−4−オキソキノリン−3−カルボン酸エチル32.4gに室温下、2規定水酸化ナトリウム水溶液(180mL)を滴下し、50℃にて0.5時間攪拌した。原料消失を確認後、反応液を放冷後にトルエン160mLを滴下し、10分間攪拌した。分液し、水層を氷冷した3規定塩酸180mLに滴下した。析出した結晶を吸引濾過し、水160mLを加えて室温下スラリーを攪拌した。15分後に再度ろ過し、黄色粗結晶を得た。得られた粗結晶にアセトニトリル320mLを添加後、加熱還流して結晶を全溶させた。溶液を攪拌下内温0℃まで冷却し、結晶を析出させた。析出した結晶を濾取し、標記化合物を白黄色結晶(22.14g)として得た。
H−NMR(270MHz,CDCl)d1.55−1.73(m,2H),4.01(m,1H),4.10(d,J=2.0Hz,3H),4.80−4.84(md,J=62.7Hz,1H),4.96−5.00(md,J=62.7Hz,1H),7.35(dd,J=9.0,10.3Hz,1H),8.27(dd,J=5.9,9.0Hz,1H),8.85(s,1H),14.52(brs,1H).
白黄色晶;分析
1411NOの計算値:C,56.95;H,3.76;N,4.74;F,12.87.
実測値:C,56.80;H,3.73;N,4.76;F,12.83.
【0063】
実施例5:3−ジメチルアミノ−2−(2,4−ジフルオロ−3−メトキシベンゾイル)アクリル酸エチルの製造(混合酸無水物法)
2,4−ジフルオロ−3−メトキシ安息香酸376mgにテトラヒドロフラン40mLを加えた。この溶液にトリエチルアミン0.75ml、N,N−ジメチルアミノピリジン20mg、2−メチル−6−ニトロ安息香酸無水物689mgを添加後、室温攪拌下で攪拌した。2時間後、混合酸無水物をTLCにて確認後、N,N−ジメチルアミノアクリル酸エチル430mgを滴下し、滴下終了後、24時間攪拌した。反応終了後水を加え分液、酢酸エチルエステルにて抽出し、無水硫酸ナトリウムにて乾燥した。硫酸ナトリウムをろ去後、ろ液を減圧濃縮して暗褐色油状物511mgを得た。得られた残留物をシリカゲルカラムクロマトグラフィーに付し、標記の化合物を得た。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(IV):

(式中、Rは低級アルキル基を示し、Aはニトリル基又はアルコキシカルボニル基を示す)で表される化合物を塩基で処理することにより、式(V):

(式中、R及びAは前記の通りである)で表される化合物を得;これを加水分解することを特徴とする、式(VI):

(式中、Rは前記の通りである)で表される化合物の製造方法。
【請求項2】
前記式(IV)で表される化合物が、式(II):

(式中、R及びRは同一または異なる低級アルキル基を示し、R及びAは前記の通りである)で表される化合物と(1R,2S)−2−フルオロシクロプロピルアミンとを反応させて製造されるものである、請求項1記載の製造方法。
【請求項3】
前記式(II)で表される化合物が、式(I):

(式中、Rは低級アルキル基を示し、Xはハロゲン原子又はアシルオキシ基を示す)で表される化合物と、式(III):

(式中、A、R及びRは前記の通りである)で表わされる化合物とを反応させて製造されるものである、請求項2記載の製造方法。
【請求項4】
前記式(I)で表される化合物が、下記式:

(R及びXは前記の通りである)で表される化合物をハロゲン化剤又は酸無水物と反応させて製造されるものである、請求項3記載の製造方法。
【請求項5】
式(II):


(式中、Rは低級アルキル基を示し、R及びRは同一または異なる低級アルキル基を示し、Aはニトリル基又はアルコキシカルボニル基を示す)で表される化合物。
【請求項6】
式(Ia):

(式中、Rは低級アルキル基を示し、Xはアシルオキシ基を示す)で表される化合物。
【請求項7】
式(V):

(式中、Rは低級アルキル基を示し、Aはニトリル基又はアルコキシカルボニル基を示す)で表される化合物。
【請求項8】
式(VI):

(式中、Rは低級アルキル基を示す)で表される化合物。

【国際公開番号】WO2004/108680
【国際公開日】平成16年12月16日(2004.12.16)
【発行日】平成18年7月20日(2006.7.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−506791(P2005−506791)
【国際出願番号】PCT/JP2004/007813
【国際出願日】平成16年6月4日(2004.6.4)
【出願人】(000002831)第一製薬株式会社 (129)
【Fターム(参考)】