説明

光学用アクリル系粘着剤組成物および光学用アクリル系粘着シート、並びにこれを用いた光学部材の取り外し方法

【課題】光学特性および光学部材の固定性に優れるとともに、光学部材のリワーク性にも優れる光学用アクリル系粘着剤組成物および光学用アクリル系粘着シート、並びに光学部材の取り外し方法を提供することである。
【解決手段】炭素数16〜22の直鎖状アルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレート1〜10重量部と、炭素数1〜12のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレート70〜98重量部と、極性モノマー1〜20重量部と、を重合させて得られる共重合体、及び架橋剤を含む光学用アクリル系粘着剤組成物が提供される。前記架橋剤の添加量が、前記共重合体100重量部に対して0.5〜5重量部である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学用アクリル系粘着剤組成物および光学用アクリル系粘着シート、並びにこれを用いた光学部材の取り外し方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば画像表示装置やタッチパネルの製造では、各種の光学部材の固定部材として、アクリル系粘着剤からなる粘着剤層を備える粘着テープ等が使用されている(例えば、非特許文献1参照)。このような光学部材の固定部材には、透明性等の光学特性や、光学部材の固定性が要求される。
【0003】
また、光学部材は比較的高価であり、それゆえ画像表示装置等の製造中に異物混入や位置ズレ等の不具合が生じた場合には、光学部材を取り外して再利用、すなわちリワークする必要がある。したがって、光学部材の固定部材としては、上述した光学特性や固定性のみならず、光学部材のリワーク性にも優れるものが望ましい。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】“高透明性接着剤転写テープ”、[online]、3M、[平成23年9月15日検索]、インターネット<URL:http://www.mmm.co.jp/eas/oca/>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の課題は、光学特性および光学部材の固定性に優れるとともに、光学部材のリワーク性にも優れる光学用アクリル系粘着剤組成物を提供することである。
本発明の他の課題は、前記光学用アクリル系粘着剤組成物を用いて製造された光学用アクリル系粘着シートを提供することである。
本発明のさらに他の課題は、前記光学用アクリル系粘着シートを用いた光学部材の取り外し方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、以下の構成からなる解決手段を見出し、本発明を完成するに至った。
(1)炭素数16〜22の直鎖状アルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレート1〜10重量部と、炭素数1〜12のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレート70〜98重量部と、極性モノマー1〜20重量部と、を重合させて得られる共重合体、及び架橋剤を含む光学用アクリル系粘着剤組成物が提供され、前記架橋剤の添加量が、前記共重合体100重量部に対して0.5〜5重量部である。
(2)前記共重合体の重量平均分子量が、40万〜100万である、前記(1)に記載の光学用アクリル系粘着剤組成物。
(3)前記極性モノマーが、ヒドロキシル基を有するエチレン性不飽和モノマーであり、前記架橋剤が、イソシアネート化合物である、前記(1)に記載の光学用アクリル系粘着剤組成物。
(4)複数の粘着剤層を積層してなり、前記粘着剤層は架橋剤によって架橋結合された共重合体を含む光学用アクリル系粘着シートが提供され、前記共重合体は、炭素数16〜22の直鎖状アルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレート1〜10重量部と、炭素数1〜12のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレート70〜98重量部と、極性モノマー1〜20重量部と、を重合させて得られるものであり、 前記架橋剤の添加量が、前記共重合体100重量部に対して0.5〜5重量部である。
(5)前記共重合体の重量平均分子量が、40万〜100万である、前記(4)に記載の光学用アクリル系粘着シート。
(6)前記極性モノマーが、ヒドロキシル基を有するエチレン性不飽和モノマーであり、前記架橋剤が、イソシアネート化合物である、前記(4)に記載の光学用アクリル系粘着シート。
(7)前記複数の粘着剤層の各層は、同一な種類及び含量の前記共重合体が、同一な種類及び含量の前記架橋剤と架橋結合して形成された層である、前記(4)に記載の光学用アクリル系粘着シート。
(8)前記複数の粘着剤層のうち互いに隣接している粘着剤層間における180°剥離強度が、23℃の雰囲気温度において5N/25mm以上であるとともに、90℃の雰囲気温度において0.5N/25mm以下である、前記(4)に記載の光学用アクリル系粘着シート。
(9)片面または両面に離型フィルムが積層されており、前記複数の粘着剤層は2〜6層である、前記(4)に記載の光学用アクリル系粘着シート。
(10)前記(4)〜(9)のいずれかに記載の光学用アクリル系粘着シートの両面に光学部材を固定させる段階、及び、加熱手段によって雰囲気温度を70℃以上にして前記光学用アクリル系粘着シートの粘着力を低下させるとともに、前記光学用アクリル系粘着シートに含まれた前記複数の粘着剤層のうち互いに隣接している粘着剤層間で剥離することによって前記光学部材を取り外す段階、を含む、光学部材の取り外し方法。
(11)雰囲気温度を70℃以上にして前記光学用アクリル系粘着シートの粘着力を低下させるとともに、前記光学用アクリル系粘着シートに含まれた複数の粘着剤層の間に剥離起点を形成した後、粘着剤層間で剥離することによって前記光学部材を取り外す、前記(10)記載の光学部材の取り外し方法。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、加熱によって粘着力を十分に低下させ、光学部材を取り外す際に光学部材に加わる負荷を小さくし、光学部材の破損を抑制しながらリワークできるという効果がある。また、互いに隣接している粘着剤層間で剥離し、剥離後の光学部材の表面に粘着剤層を残すことによって光学部材の表面を保護し、光学部材の損傷を抑制しながらリワークできる。しかも、正常な場合には、粘着力が高く、高い信頼性で光学部材を固定し続けることができ、それゆえ固定信頼性とリワーク性とを両立することができる。さらに、透明性等の光学特性にも優れるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の一実施形態に係る光学用アクリル系粘着シートを示す概略断面図である。
【図2】(a),(b)は、本発明の一実施形態に係る光学部材の取り外し方法を示す概略説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
<光学用アクリル系粘着剤組成物>
以下、本発明の一実施形態では、光学用アクリル系粘着剤組成物(以下、「粘着剤」と言うことがある。)が提供される。本実施形態の粘着剤組成物は、光学部材を被固定部材とする。光学部材としては、例えば液晶表示装置、有機エレクトロルミネッセンス装置、プラズマディスプレイ等の画像表示装置に用いられる偏光フィルム(偏光板)、位相差フィルム等の光学フィルム;液晶セルのガラス板;タッチパネル等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。すなわち、本実施形態の粘着剤は、正常な場合には継続して固定する必要があり、かつ不具合が確認された場合にはリワークのために取り外しが要求される光学部材に対して好適に用いることができる。前記光学用アクリル系粘着剤組成物は、常温では固定信頼性に優れているが、高温では粘着力を低くすることができるので、リワークが可能である。また、前記光学用アクリル系粘着剤組成物は、透明性などの光学特性に優れている。
【0010】
このような本実施形態の粘着剤組成物は、炭素数16〜22の直鎖状アルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレート約1〜10重量部と、炭素数1〜12のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレート約70〜98重量部と、極性モノマー約1〜20重量部と、を重合させて得られる共重合体、及び架橋剤を含む。
【0011】
炭素数16〜22の直鎖状アルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレートとしては、例えばセチル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、エイコシル(メタ)アクリレート、ベヘニル(メタ)アクリレート等が挙げられ、これらは1種または2種以上を混合して用いてもよい。
【0012】
炭素数1〜12のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレートとしては、例えばメチル(メタ)アクリレート、エチルへキシル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート等が挙げられ、これらは1種または2種以上を混合して用いてもよい。
【0013】
極性モノマーは架橋成分であり、具体例としてはアクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸等のカルボキシル基を有するエチレン不飽和単量体;2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート等のヒドロキシル基を有するエチレン不飽和単量体等が挙げられ、これらは1種または2種以上を混合して用いてもよい。
【0014】
上述した各モノマーの重合割合としては、炭素数16〜22の直鎖状アルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレートが1〜10重量部、炭素数1〜12のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレートが70〜98重量部、極性モノマーが1〜20重量部である。特に、炭素数16〜22の直鎖状アルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレートの割合を前記範囲にすることにより、90℃の雰囲気温度におけるリワーク性に適合な粘着力を与え、23℃の雰囲気温度における適切な粘着力を与えながら、透明性などの光学特性を維持することができる。
【0015】
重合方法としては、特に限定されるものではなく、例えば溶液重合法、塊状重合法、懸濁重合法、乳化重合法等が採用可能である。例えば溶液重合法を採用する場合には、上述した各モノマーを溶剤に加えて攪拌すればよい。重合温度としては、40〜90℃程度、重合時間としては、4〜8時間程度が適当である。
【0016】
共重合体の重量平均分子量としては、40万〜100万であるのが好ましく、50万〜90万であるのがより好ましく、55万〜90万であるのがさらに好ましい。前記範囲の重量平均分子量を有する共重合体を使用するとき、雰囲気温度が80〜90℃程度、湿度が80〜90%RH程度の高温高湿雰囲気下に曝されたときに、粘着剤と光学部材との界面等における気泡発生を低下し、固定信頼性を向上させることができる。また、前記範囲の重量平均分子量を有する共重合体を使用するとき、適切な粘度を有するようになって取り扱い性が確保でき、それに伴って適切な生産性が確保できる。重量平均分子量は、共重合体をゲルパーミエーションクロマトグラフィー(以下、「GPC」と言う。)で測定し、得られた測定値をポリスチレン換算して得られる値である。
【0017】
上述した共重合体を架橋する架橋剤としては、例えばイソシアネート化合物、アジリジン化合物、エポキシ化合物、金属キレート化合物等が挙げられ、これらは1種または2種以上を混合して用いてもよい。光学部材が腐食され易いものである場合には、架橋剤にイソシアネート化合物を採用し、上述した極性モノマーにヒドロキシル基を有するエチレン性不飽和モノマーを採用するのが好ましい。これにより、光学部材の腐食を抑制することができる。
【0018】
架橋剤の添加量としては、共重合体100重量部に対して固形分換算で0.5〜5重量部であり、1〜4重量部であるのが好ましく、1〜3重量部であるのがより好ましい。架橋剤の含量が前記範囲であるとき、90℃の雰囲気温度におけるリワーク性に適切な粘着力を与えながら、23℃の雰囲気温度においても適切な粘着力を与えることができ、また、上述した高温高湿雰囲気下における適切な固定信頼性を与えることができる。
上述した光学用アクリル系粘着組成物において、前記架橋剤によって前記共重合体を架橋して粘着剤層を形成する。
【0019】
架橋剤による共重合体の架橋は、例えば次のようにして行うことができる。まず、上述した各モノマーを重合させて共重合体を得、この共重合体に溶剤を加えて共重合体溶液を得る。次いで、この共重合体溶液に架橋剤を添加した後、加熱乾燥して共重合体を架橋する。加熱乾燥の条件としては、温度が80〜150℃程度であり、時間が1分〜20分程度である。
【0020】
共重合体を架橋してなる本実施形態の粘着剤組成物の使用形態は、特に限定されるものではない。例えば、架橋剤が添加されている上述の共重合体溶液を、光学部材に直接塗布して加熱乾燥してもよい。また、本実施形態の粘着剤組成物は、後述する粘着シートの形態に加え、粘着テープの形態でも使用することができる。粘着テープの形態で使用する場合には、架橋剤が添加されている上述の共重合体溶液を、基材フィルムの片面または両面に塗布して加熱乾燥すればよい。これにより、本実施形態の粘着剤組成物からなる粘着剤層を基材フィルムの片面または両面に備える粘着テープが得られる。基材フィルムとしては、光学特性に優れるものが好ましい。
【0021】
<光学用アクリル系粘着シート>
本発明の他の一実施形態では、前記粘着剤層が複数積層して形成された光学用アクリル系粘着シートが提供される。前記粘着剤層は上述したとおり、架橋剤によって架橋結合された共重合体を含む。
前記シートは、シート状のみに限定されるものではなく、本発明の効果を損なわない限りにおいて、シート状ないしフィルム状をも含む概念である。
前記光学用アクリル系粘着シートについて図面を参照して本発明が属する技術分野における通常の知識を有する者が容易に実施できるように詳細に説明する。本発明は多様な異なる形態で実現でき、ここで説明する実施形態に限定されない。
本発明を明確に説明するために説明と関係ない部分は省略し、明細書全体にわたって同一または類似した構成要素については同一な符号を付けた。
また、図面で示した各構成の大きさ及び厚さは、説明の便宜のために任意に示しているため、本発明が必ずしも図示されたところに限定されるのではない。
図面では、多くの層及び領域を明確に表示するため、厚さを拡大して示した。また、説明の便宜のため、一部の層及び領域の厚さを誇張して示した。層、膜、領域、板などの部分が他の部分の「上に」または「上部に」あるとするとき、これはある部分の「直ぐ上に」ある場合だけでなく、その間にまた他の部分がある場合も含む。逆に、ある部分が他の部分の「直ぐ上に」あるとするとき、これはその中間に他の部分がないことを意味する。
図1に示すように、本実施形態の粘着シート1は、粘着剤層2a,2b,2c,2dがこの順に積層されている4層構造からなる。
【0022】
粘着剤層2a〜2dはいずれも、上述した一実施形態に係る粘着剤組成物によって形成されている。また、粘着シート1は、架橋されている粘着剤層2a〜2dを積層することによって形成されている。
【0023】
具体的に説明すると、粘着剤層2a〜2dはいずれも、上述した一実施形態に係る粘着剤組成物を塗工した後に架橋することによって形成されている。そして、架橋して形成された各粘着剤層2a〜2dをこの順に積層することによって、粘着シート1が形成されている。粘着剤組成物の塗工は、例えばナイフコーター、ロールコーター、カレンダーコーター、コンマコーター等によって行うことができる。また、塗工厚み等によっては、例えばグラビアコーター、ロッドコーター等によって行うこともできる。
【0024】
粘着剤層2a〜2dを形成している粘着剤組成物はいずれも、共重合体の組成と重量平均分子量、および架橋剤の組成と添加量が、同じであるのが好ましい。すなわち、粘着剤層2aを形成している粘着剤組成物と、粘着剤層2bを形成している粘着剤組成物と、粘着剤層2cを形成している粘着剤組成物と、粘着剤層2dを形成している粘着剤組成物は、共重合体の組成と重量平均分子量、および架橋剤の組成と添加量が、同じであるのが好ましい。このように各粘着剤層の成分及び含量を全て同じくすることにより、光学特性をより向上させることができる。なお、本明細書において「同じ」とは、実質同じであることをいう。
【0025】
粘着シート1の一般的な厚さとしては、20〜240μmであるのが好ましい。特に、光学部材表面に凹凸形状がある場合には、粘着シート1の厚さとしては、80〜200μmであるのが好ましい。これにより、光学部材表面の凹凸形状に追従することができ、高い信頼性で光学部材を固定することができる。また、光学部材表面に凹凸形状がある場合、粘着剤層2a〜2dの各々の厚さとしては、20〜100μmであるのが好ましく、30〜50μmであるのがより好ましい。
【0026】
一方、光学部材表面に凹凸形状がない場合には、粘着シート1の厚さとしては、20〜50μmであるのが好ましい。これにより、より高い光学特性を保持しながら光学部材を固定することができる。また、光学部材表面に凹凸形状がない場合、粘着剤層2a〜2dの各々の厚さとしては、5〜25μmであるのが好ましく、10〜25μmであるのがより好ましい。
【0027】
粘着剤層2a〜2dはいずれも、同じ厚さであるのが好ましい。この場合、粘着シート1は、単層の粘着シートから、各粘着剤層となるシートを切り出した後、各粘着剤層同士を貼り合わせて積層することによって製造することができる。また、このように製造できることによって、製造の効率アップを図り易く、製造コストも削減できる。さらに、同じ単層から製造された粘着剤層を積層した粘着シートを使うことによって、各粘着剤層間での厚みのバラツキや、架橋度合いのバラツキを抑制することも容易となる。
【0028】
粘着剤層2a〜2dのうち互いに隣接している粘着剤層間の180°剥離強度は、23℃および90℃の各々の雰囲気温度において、次の値を有するのが好ましい。すなわち、23℃の雰囲気温度における粘着剤層間の180°剥離強度は、5N/25mm以上であるのが好ましく、5.5N/25mm〜56N/25mmであるのがより好ましい。23℃の雰囲気温度における粘着剤層間の180°剥離強度があまり小さいと、粘着力が不足し、光学部材を固定し難くなるおそれがある。
【0029】
また、90℃の雰囲気温度における粘着剤層間の180°剥離強度は、0.5N/25mm以下であるのが好ましく、0.4N/25mm以下であるのがより好ましく、0.3N/25mm〜0.1N/25mmであるのがさらに好ましい。90℃の雰囲気温度における粘着剤層間の180°剥離強度があまり大きいと、光学部材のリワーク性が低下するおそれがある。
【0030】
粘着シート1は、両面に離型フィルム3が剥離可能に積層されている。これにより、粘着シート1の両面を保護することができる。離型フィルム3としては、例えばポリエチレンテレフタレート等からなるフィルムの表面に、シリコーンやフッ素等の離型剤を塗布したものが挙げられる。なお、離型フィルム3は、粘着シート1の片面にのみ積層してもよい。
【0031】
<光学部材の取り外し方法>
本発明のまた他の実施形態では、前記光学用アクリル系粘着シートを用いて光学部材を取り外す方法が提供される。光学部材の取り外し方法について、図2を参照して詳細に説明する。本実施形態の光学部材の取り外し方法は、図2(a)に示すように、粘着シート1を介して互いに固定されている第1光学部材10,第2光学部材20を取り外す方法である。前記光学部材の取り外し方法によれば、加熱によって粘着シート1の粘着力を十分に低下させた後で取り外すので、光学部材10、20を取り外す際に光学部材10、20に加わる負荷を減少させることができ、光学部材10、20の破損を抑制しながらリワークすることができる。
【0032】
まず、加熱手段によって雰囲気温度を70℃以上、好ましくは70〜90℃にして粘着シート1の粘着力を低下させる。加熱手段としては、例えばヒータ等が挙げられる。
【0033】
次いで、粘着剤層2a〜2dのうち互いに隣接している粘着剤層2b,2c間で剥離し、第1光学部材10,第2光学部材20をそれぞれ取り外す。具体的に説明すると、まず、粘着剤層2b,2c間の界面のうち一端側に位置している界面を上下方向に若干剥離し、剥離起点Aを形成する。粘着剤層2b,2cはいずれも、上述した通り、架橋後に積層して形成されるので、粘着剤層2b,2cはいずれも適度な硬さを有している。また、粘着剤層2b,2cはいずれも、加熱によって粘着力が十分に低下している。それゆえ、剥離起点Aの形成に伴って、粘着剤層2b,2c間が界面剥離し易い状態になる。その結果、図2(b)に示すように、矢印B方向に示す90°剥離(90°角度で力を加えて剥離)に近い状態で第1光学部材10,第2光学部材20をそれぞれ取り外すことができる。このような状態で第1光学部材10,第2光学部材20をそれぞれ取り外すと、第1光学部材10,第2光学部材20に加わる負荷が小さくなり、第1光学部材10,第2光学部材20の破損を抑制しながらリワークできる。
【0034】
さらに、第1光学部材10,第2光学部材20の各表面を粘着剤層で覆いながら剥離することによって、第1光学部材10,第2光学部材20の損傷を抑制しながらリワークできる。特に、剥離の際には、第1光学部材10,第2光学部材20の表面を覆う粘着剤層が架橋されていて適度な硬さを有していることから、さらに効率よく第1光学部材10,第2光学部材20を損傷から保護できる。なお剥離の後、第1光学部材10の片面に貼着している粘着剤層2a,2bと、第2光学部材20の片面に貼着している2c,2dは、いずれも、手で摘むか、手で掻き取ることによって簡単に剥離除去ができ、第1光学部材10,第2光学部材20を単品として取り出し、リワークすることが可能となる。
【0035】
なお、剥離起点Aは、粘着剤層2b,2cの層間へ、薄いヘラのような治具を差し入れ、外力を加えることによって形成することができる。図2では、粘着剤層2b,2cの層間に剥離起点Aを形成したが、粘着シート1の粘着剤層は4層(2a,2b,2c,2d)積層されていることから、剥離起点Aを形成する位置を異なるようにしてもよい。すなわち、剥離起点Aは、粘着剤層2a,2bの層間であってもよいし、粘着剤層2c,2dの層間であってもよい。複数の粘着剤層を積層(図2では4層)して粘着シート1が構成されていることによって、剥離起点Aとなる粘着剤層の層間は複数存在することになる。粘着シート1の断面において、剥離起点Aが1つしか存在しない粘着シート(すなわち粘着剤層が2層の粘着シート)よりも、複数の剥離起点Aが存在する粘着シート1(すなわち粘着剤層が3層以上の粘着シート)の方が、上述した治具の差し入れを容易に行うことができ、剥離起点Aの形成が容易になり、それゆえ第1光学部材10,第2光学部材20を治具(外力)によって損傷するおそれが少なくなる。
【0036】
以上、本発明に係る好ましい実施形態について説明したが、本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない限り任意のものとすることができることは言うまでもない。
【0037】
例えば、上述した一実施形態に係る粘着シート1は、粘着剤層2a〜2dが積層されている4層構造で構成されているが、これに代えて、2層以上の粘着剤層を積層することによって粘着シートを構成してもよい。粘着剤層の積層数としては、光学部材に応じて所望の値を採用すればよく、特に限定されないが、通常、2〜6層程度が適当である。
【0038】
以下、合成例および実施例を挙げて本発明を詳細に説明するが、本発明は以下の合成例および実施例のみに限定されるものではない。なお、以下の説明で「部」は重量部を意味する。
【0039】
(合成例1)
ベヘニルメタクリレートを5部、エチルヘキシルアクリレートを35部、メチルアクリレートを50部、2−ヒドロキシエチルアクリレートを10部、およびラジカル開始剤として過酸化物質であるt−ブチルペルオキシネオデカノアート(日油社製の「パーブチルND」)を0.2部の割合で、それぞれ酢酸エチル230部に加えて混合し、55℃で6時間撹拌して各モノマーを重合させた。得られた共重合体の重量平均分子量は65万であった。
【0040】
(合成例2)
ベヘニルメタクリレート5部に代えて、セチルメタクリレート5部を用いた以外は、合成例1と同様にして各モノマーを重合させた。得られた共重合体の重量平均分子量は70万であった。
【0041】
(合成例3)
ベヘニルメタクリレートを5部に代えて8部にし、エチルヘキシルアクリレートを35部に代えて40部にし、2−ヒドロキシエチルアクリレートを10部に代えて2部にした以外は、合成例1と同様にして各モノマーを重合させた。得られた共重合体の重量平均分子量は55万であった。
【0042】
(合成例4)
重合温度を55℃に代えて65℃にした以外は、合成例1と同様にして各モノマーを重合させた。得られた共重合体の重量平均分子量は30万であった。
【0043】
(比較合成例1)
ベヘニルメタクリレートを添加せず、エチルヘキシルアクリレートを35部に代えて40部にした以外は、合成例1と同様にして各モノマーを重合させた。得られた共重合体の重量平均分子量は55万であった。
【0044】
(比較合成例2)
ベヘニルメタクリレートを5部に代えて15部にし、エチルヘキシルアクリレートを35部に代えて25部にした以外は、合成例1と同様にして各モノマーを重合させた。得られた共重合体の重量平均分子量は70万であった。
【0045】
合成例1〜4および比較合成例1,2の各共重合体を表1に示す。なお、重量平均分子量は、共重合体をGPCで測定し、得られた測定値をポリスチレン換算して得た値である。
【0046】
【表1】

【0047】
[実施例1〜4および比較例1〜4]
<粘着シートの作製>
下記の表2に記載の組成を有する光学用アクリル系粘着剤組成物から粘着シートを製造した。まず、合成例1〜4および比較合成例1,2で得た各共重合体を、酢酸エチルを用いて固形分が30重量%になるよう調整して共重合体溶液を得た。次いで、この共重合体溶液100部に対して固形分換算で架橋剤を表2に示す割合で添加し、粘着剤組成物の塗布液を得た。架橋剤には、日本ポリウレタン工業社製のイソシアネート化合物「コロネートL−45E」を用いた。
【0048】
得られた粘着剤組成物塗布液を用いて、2層構造の粘着シートと、4層構造の粘着シートをそれぞれ作製した。具体的に説明すると、2層構造の粘着シートは、まず、得られた粘着剤組成物の塗布液を厚さ50μmのポリエチレンテレフタレートフィルム上に塗布し、100℃で10分間加熱して架橋反応させ、厚さ40μmの粘着剤層を有する単層の粘着シートを得た。次いで、この単層の粘着シートから各粘着剤層となるシートを2つ切り出した後、各粘着剤層同士を互いに貼り合わせて積層することによって、両面にポリエチレンテレフタレートフィルムが積層され、かつ2層構造からなる厚さ80μmの粘着シートを得た。
【0049】
4層構造の粘着シートは、まず、得られた粘着剤組成物塗布液を離型フィルム上に塗布した。離型フィルムには、ポリエチレンテレフタレートフィルムの表面にシリコーンを塗布した厚さ50μmのものを用いた。次いで、100℃で10分間加熱して架橋反応させ、厚さ40μmの粘着剤層を有する単層の粘着シートを得た。そして、この単層の粘着シートから各粘着剤層となるシートを4つ切り出した後、各粘着剤層同士を互いに貼り合わせて順次積層することによって、4層構造からなる厚さ160μmの粘着シートを得た。
【0050】
得られた2層構造および4層構造の各粘着シートにおいて、複数の粘着剤層を形成している粘着剤層はいずれも、共重合体の組成と重量平均分子量、および架橋剤の組成と添加量が、互いに同じである。また、複数の粘着剤層はいずれも、同じ厚さである。
【0051】
<評価>
得られた粘着シートについて、180°剥離強度、リワーク性、固定信頼性および光学特性を評価した。各評価方法を以下に示すとともに、その結果を表2に示す。
【0052】
(180°剥離強度)
2層構造の粘着シートを用いて、互いに隣接している粘着剤層間における180°剥離強度を測定した。具体的に説明すると、雰囲気温度を23℃および90℃に調整し、各雰囲気温度において20分間保持した後の180°剥離強度をJIS Z0237に準拠して測定した。180°剥離は、粘着シートの両面に位置しているポリエチレンテレフタレートフィルムを、ロードセルを用いて300mm/分の速度で引っ張ることによって行った。
【0053】
(リワーク性)
上述した90℃の雰囲気温度における180°剥離強度の値から、リワーク性を評価した。評価基準は以下のものを用いた。
○:90℃の雰囲気温度における180°剥離強度が0.5N/25mm以下である。
△:90℃の雰囲気温度における180°剥離強度が0.5N/25mmよりも大きく、かつ1N/25mm以下である。
×:90℃の雰囲気温度における180°剥離強度が1N/25mmよりも大きい。
【0054】
(固定信頼性)
4層構造の粘着シートを用いて、固定信頼性を評価した。具体的に説明すると、まず、ガラス板上に厚さ100μmのポリエチレンテレフタレートフィルムを載置した。次いで、このポリエチレンテレフタレートフィルム上に、厚さ100μmの偏光フィルムを4層構造の粘着シートを介して23℃の雰囲気温度で固定し、試験片を作製した。
【0055】
この試験片を、雰囲気温度85℃、湿度85%RHの高温高湿雰囲気下に256時間曝した。そして、256時間経過した後の試験片を偏光フィルム方向から目視観察することによって、固定信頼性を評価した。評価基準は以下のものを用いた。
○:試験片に気泡が発生しなかった。
△:試験片に気泡が若干発生した。
×:試験片に気泡が多く発生した。
【0056】
(光学特性)
2層構造および4層構造の各粘着シートを目視観察することによって、光学特性を評価した。評価基準は以下のものを用いた。
○:2層構造および4層構造の各粘着シートがいずれも、透明である。
×:2層構造および4層構造の各粘着シートのうち少なくとも一方が、不透明である。
【0057】
【表2】

【0058】
表2から明らかなように、実施例1〜4は、23℃の雰囲気温度における粘着剤層間の180°剥離強度が5N/25mm以上であることから粘着力が高く、90℃の雰囲気温度における粘着剤層間の180°剥離強度が0.5N/25mm以下であることからリワーク性に優れ、光学特性にも優れているのがわかる。特に、共重合体の重量平均分子量が40万〜100万である実施例1〜3は、固定信頼性に優れる結果を示した。
【0059】
一方、炭素数16〜22の直鎖状アルキル基を有する(メタ)アクリレートが重合されていない比較例1は、90℃の雰囲気温度における粘着剤層間の180°剥離強度が0.5N/25mmよりも高く、リワーク性に劣る結果を示した。また、炭素数16〜22の直鎖状アルキル基を有する(メタ)アクリレートの重合割合が10部よりも多い比較例2は、23℃の雰囲気温度における粘着剤層間の180°剥離強度が5N/25mmよりも低く、粘着力に劣り、光学特性にも劣る結果を示した。
【0060】
架橋剤の添加量が0.5部よりも少ない比較例3は、90℃の雰囲気温度における粘着剤層間の180°剥離強度が0.5N/25mmよりも高く、リワーク性に劣り、さらに固定信頼性にも劣る結果を示した。架橋剤の添加量が5部よりも多い比較例4は、23℃の雰囲気温度における粘着剤層間の180°剥離強度が5N/25mmよりも低く、粘着力に劣る結果を示した。
上述したとおり、本発明を好ましい実施形態を通じて説明したが、本発明はこれに限定されるのではなく、次に記載する特許請求の範囲の概念と範囲を外れない限り、多様な修正及び変形が可能であることは、本発明が属する技術分野に携わる者であれば、容易に理解できる。
【符号の説明】
【0061】
1 光学用アクリル系粘着シート
2a,2b,2c,2d 粘着剤層
3 離型フィルム
10 第1光学部材
20 第2光学部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭素数16〜22の直鎖状アルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレート1〜10重量部と、
炭素数1〜12のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレート70〜98重量部と、
極性モノマー1〜20重量部と、
を重合させて得られる共重合体、及び架橋剤を含み、
前記架橋剤の添加量が、前記共重合体100重量部に対して0.5〜5重量部である、光学用アクリル系粘着剤組成物。
【請求項2】
前記共重合体の重量平均分子量が、40万〜100万である、請求項1に記載の光学用アクリル系粘着剤組成物。
【請求項3】
前記極性モノマーが、ヒドロキシル基を有するエチレン性不飽和モノマーである、請求項1に記載の光学用アクリル系粘着剤組成物。
【請求項4】
前記架橋剤が、イソシアネート化合物である、請求項1に記載の光学用アクリル系粘着剤組成物。
【請求項5】
複数の粘着剤層を積層してなり、
前記粘着剤層は、架橋剤によって架橋結合された共重合体を含み、
前記共重合体は、
炭素数16〜22の直鎖状アルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレート1〜10重量部と、
炭素数1〜12のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレート70〜98重量部と、
極性モノマー1〜20重量部と、
を重合させて得られるものであり、
前記架橋剤の添加量が、前記共重合体100重量部に対して0.5〜5重量部である、光学用アクリル系粘着シート。
【請求項6】
前記共重合体の重量平均分子量が、40万〜100万である、請求項5に記載の光学用アクリル系粘着シート。
【請求項7】
前記極性モノマーが、ヒドロキシル基を有するエチレン性不飽和モノマーである、請求項5に記載の光学用アクリル系粘着シート。
【請求項8】
前記架橋剤が、イソシアネート化合物である、請求項5に記載の光学用アクリル系粘着シート。
【請求項9】
前記複数の粘着剤層の各層は、同一な種類及び含量の前記共重合体が、同一な種類及び含量の前記架橋剤と架橋結合して形成された層である、請求項5に記載の光学用アクリル系粘着シート。
【請求項10】
前記複数の粘着剤層のうち互いに隣接している粘着剤層間における180°剥離強度が、
23℃の雰囲気温度において5N/25mm以上であるとともに、
90℃の雰囲気温度において0.5N/25mm以下である、請求項5に記載の光学用アクリル系粘着シート。
【請求項11】
片面または両面に離型フィルムがさらに積層されている、請求項5に記載の光学用アクリル系粘着シート。
【請求項12】
前記複数の粘着剤層は2〜6層である、請求項5に記載の光学用アクリル系粘着シート。
【請求項13】
請求項5〜12のいずれかに記載の光学用アクリル系粘着シートの両面に光学部材を固定させる段階、及び
加熱手段によって雰囲気温度を70℃以上にして前記光学用アクリル系粘着シートの粘着力を低下させるとともに、前記光学用アクリル系粘着シートに含まれた複数の粘着剤層のうち互いに隣接している粘着剤層間で剥離することによって前記光学部材を取り外す段階、を含む、光学部材の取り外し方法。
【請求項14】
雰囲気温度を70℃以上にして前記光学用アクリル系粘着シートの粘着力を低下させるとともに、前記光学用アクリル系粘着シートに含まれた複数の粘着剤層の間に剥離起点を形成した後、粘着剤層間で剥離することによって前記光学部材を取り外す、請求項13に記載の光学部材の取り外し方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2013−108049(P2013−108049A)
【公開日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−281022(P2011−281022)
【出願日】平成23年12月22日(2011.12.22)
【出願人】(000111085)ニッタ株式会社 (588)
【出願人】(512187343)三星ディスプレイ株式會社 (73)
【氏名又は名称原語表記】Samsung Display Co.,Ltd.
【住所又は居所原語表記】95,Samsung 2 Ro,Giheung−Gu,Yongin−City,Gyeonggi−Do,Korea
【Fターム(参考)】