説明

光学用成形体

【課題】本発明の目的は、透明性・色相・耐衝撃性が良好で、吸湿による変形が少なく、かつ複屈折の小さい光学用成形体を提供するものである。
【解決手段】
以下に示す共重合体(A)90〜60質量部と共重合体(B)10〜40質量部からなる樹脂組成物を用いた光学用成形体。
共重合体(A):スチレン−(メタ)アクリル酸エステル系共重合体であって、構成する単量体の比率がスチレン系単量体単位80〜30質量%、(メタ)アクリル酸エステル系単量体単位20〜70質量%である共重合体。
共重合体(B):スチレン−ブタジエン系ブロック共重合体であって、構成する単量体の比率がスチレン系単量体単位70〜20質量%、ブタジエン系単量体単位30〜80質量%である共重合体。
但し、共重合体(A)と共重合体(B)の屈折率差の絶対値が0.005以下である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学用成形体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、光学用成形体にはメタクリル樹脂が広く使用されている。しかしながら、メタクリル樹脂は、透明性や低複屈折等の光学特性が良好な反面、耐衝撃性が低く、また吸湿性が高いことから、光学用成形体とした場合に吸湿による変形が課題となっていた。一方ポリスチレンは透明で成形加工性が良好で、吸湿性が低く変形が少ないが、耐衝撃性が低く、また複屈折(率)が高いため、この分野での使用には制限があった。
このような光学用成形体に関する刊行物としては以下のようなものが知られているが、複屈折や耐光性の問題は十分解決されているとは言いがたかった。
【特許文献1】特開2002−242679号公報
【特許文献2】特開2002−243917号公報
【特許文献3】特開2002−284946号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明の目的は、透明性・色相・耐衝撃性が良好で、吸湿による変形が少なく、かつ複屈折の小さい光学用成形体を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
即ち本発明は、
(1)以下に示す共重合体(A) 90〜60質量部と共重合体(B) 10〜40質量部からなる樹脂組成物を用いた光学用成形体。
共重合体(A):スチレン−(メタ)アクリル酸エステル系共重合体であって、構成する単量体の比率がスチレン系単量体単位80〜30質量%、(メタ)アクリル酸エステル系単量体単位20〜70質量%である共重合体。
共重合体(B):スチレン−ブタジエン系ブロック共重合体であって、構成する単量体の比率がスチレン系単量体単位70〜20質量%、ブタジエン系単量体単位30〜80質量%である共重合体。
但し、共重合体(A)と共重合体(B)の屈折率差の絶対値が0.005以下である。
(2)ヒンダードフェノール系化合物、ラクトン系化合物、リン系化合物、イオウ系化合物から選ばれた1種以上の耐熱性安定剤0.01〜2質量部(但し、共重合体(A)と共重合体(B)の合計を100質量部とする)を含有することを特徴とする(1)記載の光学用成形体。
(3)ヒンダードアミン系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物から選ばれた耐光安定剤1種以上の耐光安定剤0.01〜2質量部(但し、共重合体(A)と共重合体(B)の合計を100質量部とする)を含有することを特徴とする(1)または(2)に記載の光学用成形体。
(4)光学用成形体が、光ディスク基板であることを特徴とする(1)〜(3)のいずれか一項記載の光学用成形体。
(5)光学用成形体が、導光板であることを特徴とする(1)〜(3)のいずれか一項記載の光学用成形体。
(6)光学用成形体が、レンズであることを特徴とする(1)〜(3)のいずれか一項記載の光学用成形体。
(7)光学用成形体が、前面板であることを特徴とする(1)〜(3)のいずれか一項記載の光学用成形体。
(8)光学用成形体が、光学シート用ベースシートであることを特徴とする(1)〜(3)のいずれか一項記載の光学用成形体。
(9)光学用成形体が、光学フィルム用ベースフィルムであることを特徴とする(1)〜(3)のいずれか一項記載の光学用成形体。
である。
【発明の効果】
【0005】
本発明の光学用成形体は、透明性・色相・耐衝撃性が良好で、吸湿による変形が少なく、かつ複屈折の小さことから、例えば、光ディスク基板、導光板、レンズ、前面板、位相差フィルムや反射防止フィルム等の光学フィルムのベースフィルムや、レンチキュラーレンズやフレネルレンズ等の光学シートのベースシートに適しており有用である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
共重合体(A)は、スチレン−(メタ)アクリル酸エステル系共重合体であって、スチレン系単量体単位と(メタ)アクリル酸エステル系単量体単位で構成される。また、共重合体(B)は、スチレン−ブタジエン系ブロック共重合体であって、スチレン系単量体単位とブタジエン系単量体単位で構成される。
【0007】
スチレン系単量体単位としては、スチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、エチルスチレン、p−t−ブチルスチレン等の単位を挙げることができるが、好ましくはスチレンである。これらのスチレン系単量体単位は、単独でもよいが二種以上であってもよい。
【0008】
(メタ)アクリル酸エステル系単量体単位としては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレートのメタクリル酸エステル、メチルアクリレート、エチルアクリレート、n−ブチルアクリレート、2−メチルヘキシルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、デシルアクリレート等のアクリル酸エステル等の単位を挙げることができるが、好ましくはメチルメタクリレートである。これらの(メタ)アクリル酸エステル系単量体単位は単独で用いてもよいが二種以上であってもよい。
【0009】
ブタジエン系単量体単位としては、1,3−ブタジエン、2−メチル−1,3−ブタジエン(イソプレン)、2,3−ジメチル−1,3ブタジエン、1,3−ペンタジエン、1,3−ヘキサジエン等の単位を挙げることができるが、好ましくは1,3−ブタジエンである。これらのブタジエン系単量体単位は、単独でもよいが二種以上であってもよい。
【0010】
さらに、必要に応じてこれらの単量体と共重合可能なビニル系単量体の単位、例えばアクリル酸、メタクリル酸、アクリロニトリル、メタアクリロニトリル、N−フェニルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミドを共重合体100質量部に対して10質量部未満であれば含んでもよい。
【0011】
共重合体(A)は、スチレン系単量体と(メタ)アクリル酸エステル系単量体を重合して得られた共重合体である。重合の方法は特に制限はないが、有機過酸化物を使用したラジカル共重合が好ましく、また共重合体(A)の製造プロセスとしては、少量の溶剤を使用した塊状連続重合プロセスが好ましい。懸濁重合や乳化重合のプロセスで得る方法は十分な透明性が得られず、得られた光学用成形体に濁りが出やすく、特に光路の長い導光板等に使用すると光の減衰が大きく問題となる場合がある。
重合時添加する有機過酸化物としては、t−ブチルパーオキシベンゾエート、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)−シクロヘキサン、2,2−ビス(4,4−ジ−ブチルパーオキシシクロヘキシル)プロパン、t−ブチルパーオキシイソプロピルモノカーボネート、ジ−t−ブチルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、エチル−3,3−ジ−(t−ブチルパーオキシ)ブチレート等の公知のものが使用できる。有機過酸化物の添加量はスチレン系単量体、(メタ)アクリル酸エステル系単量体の合計100質量部に対し、0.001〜5質量部が好ましい。
溶剤としてはブタン、ペンタン、ヘキサン、イソペンタン、ヘプタン、オクタン、イソオクタン等の脂肪族炭化水素、シクロペンタン、メチルシクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン等の脂環式炭化水素、あるいは、ベンゼン、トルエン、エチルベンゼン、キシレン等の芳香族炭化水素などが使用でき、溶剤の添加量はスチレン系単量体、(メタ)アクリル酸エステル系単量体の合計100質量部に対し、5〜20質量部が好ましい。
また、重合時、4−メチル−2,4−ジフェニルペンテン−1、t−ドデシルメルカプタン、n−ドデシルメルカプタン等の公知の分子量調整剤を添加しても差し支えない。
重合温度は、好ましくは80〜170℃、さらに好ましくは100〜160℃である。
【0012】
共重合体(A)を構成する単量体単位の比率は、スチレン系単量体単位80〜30質量%、(メタ)アクリル酸エステル系単量体単位20〜70質量%である。好ましくはスチレン系単量体単位60〜35質量%、(メタ)アクリル酸エステル系単量体単位40〜65質量%、より好ましくはスチレン系単量体単位55〜38質量%、(メタ)アクリル酸エステル系単量体単位45〜62質量%である。
共重合体(A)を構成する単量体単位の比率が、スチレン系単量体単位80質量%を越え、(メタ)アクリル酸エステル系単量体単位20質量%未満であると、耐衝撃性が低下し、複屈折が増加するため好ましくない。またスチレン系単量体単位30質量%未満、(メタ)アクリル酸エステル系単量体単位70質量%を越えると、色相が低下し、複屈折が増加するため好ましくない。
【0013】
共重合体(B)は、スチレン系単量体とブタジエン系単量体を重合して得られたブロック共重合体である。重合の方法は特に制限はないが、有機リチウム化合物を使用したアニオン重合が好ましく、また共重合体(B)の製造プロセスとしては、溶剤を使用した溶液重合プロセスが好ましい。
有機リチウム化合物は、分子中に1個以上のリチウム原子が結合した化合物であり、例えばエチルリチウム、n−プロピルリチウム、イソプロピルリチウム、n−ブチルリチウム、sec−ブチルリチウム、tert−ブチルリチウムのような単官能有機リチウム化合物や多官能有機リチウム化合物等が使用できる。有機リチウム化合物の添加量としてはスチレン系単量体とブタジエン系単量体の合計100質量部に対し、0.001〜5質量部が好ましい。
溶剤としてはブタン、ペンタン、ヘキサン、イソペンタン、ヘプタン、オクタン、イソオクタン等の脂肪族炭化水素、シクロペンタン、メチルシクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン等の脂環式炭化水素、あるいは、ベンゼン、トルエン、エチルベンゼン、キシレン等の芳香族炭化水素などが使用できるが、溶剤の添加量はスチレン系単量体、ブタジエン系単量体の合計100質量部に対し、50〜200質量部が好ましい。
また、重合時、テトラヒドロフラン(THF)等の公知のランダム化剤を添加しても差し支えない。
重合温度は、好ましくは40〜120℃、さらに好ましくは50〜100℃である。
【0014】
共重合体(B)は少なくとも1個以上のスチレン系単量体からなる重合体ブロックと少なくともブタジエン系単量体を主体とする重合体ブロックとを有するブロック共重合体である。ここでブタジエン系単量体を主体とする重合体ブロックとは、ブタジエン系単量体の含有量が50質量%以上、好ましくは70質量%以上の重合体ブロックである。ブタジエン系単量体を主体とする重合体ブロック中に共重合されているスチレン系単量体は重合体ブロック中に均一に分布していても、又テーパー状に分布していても良い。
【0015】
共重合体(B)を構成する単量体単位の比率は、スチレン系単量体単位70〜20質量%、ブタジエン系単量体単位30〜80質量%である。好ましくは、スチレン系単量体単位60〜22質量%、ブタジエン系単量体単位40〜78質量%、より好ましくはスチレン系単量体単位45〜24質量%、ブタジエン系単量体単位55〜76質量%である。
共重合体(B)を構成する単量体単位の比率が、スチレン系単量体単位70質量%を越え、ブタジエン系単量体単位30質量%未満であると、耐衝撃性が低下し、複屈折が増加するため好ましくない。またスチレン系単量体単位20質量%未満、ブタジエン系単量体単位80質量%を越えると、色相が低下し、複屈折が増加するため好ましくない。
【0016】
共重合体(A)の重量平均分子量(以後Mwと表す。)は、特に制限はないが5万〜20万、より好ましいのは7万〜17万である。共重合体(B)のMwは、特に制限はないが8万〜25万、より好ましいのは9万〜20万である。なお、本発明のMwはGPCにて測定されるポリスチレン換算のMwであり、下記記載の測定条件で測定した。
装置名:SYSTEM−21 Shodex(昭和電工社製)
カラム:PL gel MIXED−Bを3本直列
温度:40℃
検出:示差屈折率
溶媒:テトラハイドロフラン
濃度:2質量%
検量線:標準ポリスチレン(PS)(PL社製)を用いて作製し、重量平均分子量はPS換算値で表した。
【0017】
共重合体(A)と共重合体(B)の屈折率差の絶対値は、0.005以下であり、好ましくは、0.04以下、さらに好ましくは、0.003以下である。
共重合体(A)と共重合体(B)の屈折率差の絶対値が、0.005を越えると、透明性が低下し好ましくない。
【0018】
本発明の樹脂組成物は、共重合体(A)90〜60質量部と共重合体(B)10〜40質量部、好ましくは共重合体(A)85〜62質量部と共重合体(B)15〜38質量部、特に好ましくは、共重合体(A)80〜64質量部と共重合体(B)20〜36質量部である。共重合樹脂の組成がこのより好ましい範囲のある場合、得られる樹脂組成物は軟質な光学成形体用として特に優れている。
共重合体(A)が90質量部を越え、共重合体(B)が10質量部未満であると、耐衝撃性が低下し、かつ複屈折が増加し好ましくない。
共重合体(B)が60質量部未満で、共重合体(B)が40質量部を越えると、透明性、色相が低下し、かつ複屈折が増加し好ましくない。
【0019】
樹脂組成物は、耐熱安定剤を含むと好ましい場合ある。
耐熱安定剤としては、その効果を有するものであれば特に限定されるものではないが、例えば、ヒンダードフェノール系化合物、ラクトン系化合物、リン系化合物、イオウ系化合物などの耐熱安定剤が挙げられる。これらは一種のみ用いてもよく、2種以上組み合わせて用いても良い。その配合量は、共重合樹脂100質量部に対して0.01〜2質量部が好ましく、より好ましいくは0.01〜1質量部である。
【0020】
樹脂組成物は、耐光安定剤を含むと好ましい場合ある。
耐光安定剤は、その効果を有するものであれば特に限定されるものではないが、例えば、ヒンダードアミン系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物が挙げられる。これらは一種のみ用いてもよく、2種以上組み合わせて用いても良い。その配合量は、共重合樹脂100質量部に対して0.01〜2質量部が好ましく、より好ましいのは0.01〜1質量部である。
【0021】
樹脂組成物にはこれ以外に滑剤や可塑剤、着色剤、帯電防止剤、鉱油等の添加剤を含んでも差し支えないが、透明性を阻害する可能性もあり、その添加量は少ないかあるいは添加しないのが好ましい。
【0022】
共重合体の配合や造粒方法は特に制限はされず、公知の方法を採用することができる。例えば、共重合体、耐熱安定剤、耐光安定剤および必要に応じて使用する添加剤をあらかじめタンブラーやヘンシェルミキサー等で均一に混合して、単軸押出機または二軸押出機等に供給して溶融混練する方法や、塊状連続重合の最終段階で耐熱安定剤、耐光安定剤および必要に応じて使用する添加剤を系内に添加・混合後に造粒する方法がある。

【実施例】
【0023】
以下、詳細な内容について実施例を用いて説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。

【0024】
[参考例1]
撹拌機を付した容積約15リットルの完全混合型反応器、容積約40リットルの塔式プラグフロー型反応器、予熱器を付した脱揮槽を直列に接続して構成した。スチレン52質量部、メタクリル酸メチル(以下MMA)48質量部、エチルベンゼン12質量部で構成される混合溶液に溶解し、さらに1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)−シクロヘキサン(日本油脂社製パーヘキサC)0.03質量部、オクタデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ社製IRGANOX1076)を0.1質量部を混合し原料溶液とした。この原料溶液を毎時6kgで温度130℃に制御した完全混合型反応器に導入した。第1完全混合型反応器より反応液を連続的に抜き出し、この反応液にn−ドデシルメルカプタン(花王社製チオカルコール20)を毎時2.0g加えた後、温度130℃に制御した完全混合型反応器に導入した。なお、完全混合型反応器の撹拌数は180rpmで実施した。次いで完全混合型反応器より反応液を連続的に抜き出し、流れの方向に向かって温度130℃から150℃の勾配がつくように調整した塔式プラグフロー型反応器に導入した。この反応液を予熱器で加温しながら、温度240℃で圧力1.0kPaに制御した脱揮槽に導入し、未反応単量体等の揮発分を除去した。この樹脂液をギアポンプで抜き出し、ストランド状に押出し切断することによりペレット形状の共重合体(A)−1を得た。Mw=15万であった。
【0025】
[参考例2]
スチレン40質量部、MMA60質量部とした以外は参考例1と同様に行い、共重合体(A)−2を得た。Mw=14万であった。
【0026】
[参考例3]
スチレン22質量部、MMA78質量部とした以外は参考例1と同様に行い、共重合体(A)−3を得た。Mw=13万であった。
【0027】
[参考例4]
スチレン78質量部、MMA22質量部とした以外は参考例1と同様に行い、共重合体(A)−4を得た。Mw=16万であった。
【0028】
[参考例5]
オクタデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネートを添加しなかった以外は参考例1と同様に行い、共重合体(A)−5を得た。Mw=15万であった。
【0029】
[参考例6]
内容積200リットルの重合缶に65リットルのシクロヘキサンと7.0gのテトラヒドロフラン(ランダム化剤)及び3.3kgのスチレンを仕込み撹拌を行いながら30℃にて125mlのn−ブチルリチウム(10%シクロヘキサン溶液)(開始剤)を添加後、昇温を行い、80℃で40分間重合させた。次にスチレン5.1kgとブタジエン12.6kgを添加し、80℃で40分間重合させた。その後、重合液に過剰のメタノールを添加し重合を停止させ、溶媒除去、乾燥させて共重合体(B)−1を得た。Mw=11万であった。
【0030】
[参考例7]
初期のスチレン3.3kgを2.1kgとし、次に添加したスチレン5.1kgを3.2kgとブタジエン12.6kgを15.8kgとした以外は参考例6と同様に行い、共重合体(B)−2を得た。Mw=11万であった。
【0031】
[参考例8]
初期のスチレン3.3kgを0kgとし、次に添加したスチレン5.1kgを0kgとブタジエン12.6kgを21.0kgとした以外は参考例6と同様に行い、共重合体(B)−3を得た。Mw=11万であった。
【0032】
[参考例9]
初期のスチレン3.3kgを6.2kgとし、次に添加したスチレン5.1kgを9.8kgとブタジエン12.6kgを5.3kgとした以外は参考例6と同様に行い、共重合体(B)−4を得た。Mw=11万であった。
【0033】
[実施例及び比較例]
参考例1〜9で製造した共重合体(A)と共重合体(B)を表1で示した割合(質量部)で配合してヘンシェルミキサーで混合した後、二軸押出機(東芝機械(株)社製 TEM−35B)にて、シリンダー温度230℃で溶融混練してペレット化した。なお、実施例5では、共重合体(A)と共重合体(B)の合計100質量部に対し、ヒンダードアミン系化合物としてビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、ベンゾトリアゾール系化合物として2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4,6−ジ−t−ペンチルフェノールを各0.1質量部をヘンシェルミキサーで混合して押出を行った。
得られた共重合樹脂組成物を名機社製射出成形機MDM−Iにて成形温度250℃、金型温度60℃で射出成形することにより、直径180mm、センターホール15mm、厚み1.2mmの光ディスク基板を得た。次に得られた光ディスク基板の特性評価を行った。その評価結果を表1に示した。
【0034】
【表1】

【0035】
なお、評価は下記の方法によった。
(1)透明性
ASTM D1003に基づき、ヘーズメーター(日本電色工業社製NDH−1001DP型)を用いてヘーズを測定し、成形品内のヘーズ(単位:%)の最大値で示した。1%以下を合格とした。
(2)色相
色差計(日本電色工業社製Σ―80)を用いてb値を測定し、成形品内のb値の最大値で示した。2以下を合格とした。
(3)耐衝撃性
JIS K7211に準拠して、錘先端5R、錘径14mmφ、質量200gfの錘を用い、成形品のセンターホールと外側の中間部に錘を落とすことで、50%破壊高さ(単位:cm)を測定した。20cm以上を合格とした。
(4)吸湿変形性
成形品を温度70℃で湿度90%の環境下に5日間放置したときの直径の寸法変化率(単位:%)を測定した。変化率0.3%以下を合格とした。
(5)複屈折
位相差測定装置(王子計測社製KOBRA−WR)を用いてリタデーション(Re)を測定し、成形品内のRe(単位:nm)の最大値で示した。50nm以下を合格とした。
(6)メルトマスフローレイト(MFR)
JIS K7210に基づき、温度200℃、荷重49Nで樹脂ペレットを用いて測定した。なお、測定機は東洋精機製作所社製メルトインデックサ(F−F01)を使用した。
(7)屈折率測定
プレス成形機(230℃、20MPs)により試験片(0.5mm厚み)を作製して、デジタル屈折計RX−2000(ATAGO社製)を用いて、温度25℃で測定した。なお、接触液はヨウ化水銀カリウム飽和水溶液を使用した。
【0036】
本出願に係わる実施例は、良好な結果である。
また、スチレン系単量体とブタジエン単量体の比率は常に前者が後者より高いとReの値が小さく、特に前者が後者の1.7倍から2.3倍であると特に好ましい。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下に示す共重合体(A)90〜60質量部と共重合体(B)10〜40質量部からなる樹脂組成物を用いた光学用成形体。
共重合体(A):スチレン−(メタ)アクリル酸エステル系共重合体であって、構成する単量体の比率がスチレン系単量体単位80〜30質量%、(メタ)アクリル酸エステル系単量体単位20〜70質量%である共重合体。
共重合体(B):スチレン−ブタジエン系ブロック共重合体であって、構成する単量体の比率がスチレン系単量体単位70〜20質量%、ブタジエン系単量体単位30〜80質量%である共重合体。
但し、共重合体(A)と共重合体(B)の屈折率差の絶対値が0.005以下である。
【請求項2】
ヒンダードフェノール系化合物、ラクトン系化合物、リン系化合物、イオウ系化合物から選ばれた1種以上の耐熱性安定剤0.01〜2質量部(但し、共重合体(A)と共重合体(B)の合計を100質量部とする)を含有することを特徴とする請求項1記載の光学用成形体。
【請求項3】
ヒンダードアミン系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物から選ばれた耐光安定剤1種以上の耐光安定剤0.01〜2質量部(但し、共重合体(A)と共重合体(B)の合計を100質量部とする)を含有することを特徴とする請求項1または2に記載の光学用成形体。
【請求項4】
光学用成形体が、光ディスク基板であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項記載の光学用成形体。
【請求項5】
光学用成形体が、導光板であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項記載の光学用成形体。
【請求項6】
光学用成形体が、レンズであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項記載の光学用成形体。
【請求項7】
光学用成形体が、前面板であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項記載の光学用成形体。
【請求項8】
光学用成形体が、光学シート用ベースシートであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項記載の光学用成形体。
【請求項9】
光学用成形体が、光学フィルム用ベースフィルムであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項記載の光学用成形体。


【公開番号】特開2007−224221(P2007−224221A)
【公開日】平成19年9月6日(2007.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−49467(P2006−49467)
【出願日】平成18年2月27日(2006.2.27)
【出願人】(000003296)電気化学工業株式会社 (1,539)
【Fターム(参考)】