説明

光学用粘着シート

【課題】低誘電率であり、加湿によって白濁化することのない光学用粘着シートを提供する。さらに、耐腐食性にも優れた光学用粘着シートを提供する。
【解決手段】本発明の光学用粘着シートは、周波数100kHzの比誘電率が4以下であり、且つ60℃、95%RHの環境下に120時間保存した後の水分率が0.65重量%以上である粘着剤層を有することを特徴とする。上記光学用粘着シートでは、全光線透過率が90%以上であり、ヘイズが3%以下であることが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学用粘着シートに関する。より詳しくは、光学部材の貼り合わせや光学製品の製造等に用いられている光学用粘着シートに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、様々な分野で、液晶ディスプレイ(LCD)などの表示装置や、上記表示装置と組み合わせて用いられるタッチパネルなどの入力装置が広く用いられている。これらの表示装置や入力装置の製造等においては、光学部材を貼り合わせる用途に透明な粘着シート(粘着テープ)が用いられている。例えば、タッチパネルと各種表示装置や他の光学部材(保護板等)の貼り合わせには、透明な粘着シートが用いられている(例えば、特許文献1〜3参照)。
【0003】
上記の表示装置や入力装置の用途拡大に伴い、粘着シートとしての特性を多用な環境下において十分に発揮することが要求されるようになってきている。例えば、防水機能付きの携帯電話のように、加湿条件下においても使用される製品で用いられる粘着シートでは、加湿により白濁化することなく、上記の表示装置や入力装置の外観を悪化させたり、上記の表示装置や入力装置の搭載される画像表示部の視認性を低下させないことが求められている。
【0004】
さらに、例えば、静電容量方式のタッチパネル(例えば、カバーガラス/粘着シート/ITO膜/PETフィルム/粘着シート/ITO膜/PETフィルムの層構成からなる静電容量方式のタッチパネルなど)のように、近年、薄型化が求められている製品で用いられる粘着シートでは、薄くても、一定の静電容量を有することができるように、低誘電率化の要求がある。
【0005】
さらに、上記の表示装置や入力装置で用いられる粘着シートでは、表示装置や入力装置の故障や誤作動を生じないようにするためや、表示装置や入力装置の外観を悪化させないようにするために、被着体に対して腐食を生じさせないことが求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2003−238915号公報
【特許文献2】特開2003−342542号公報
【特許文献3】特開2004−231723号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従って、本発明の目的は、低誘電率であり、加湿によって白濁化することのない光学用粘着シートを提供することにある。
さらに、本発明の他の目的は、耐腐食性にも優れた光学用粘着シートを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
そこで、本発明者らが、鋭意検討した結果、粘着シートの粘着剤層を、比誘電率が小さく、60℃、95%RHの環境下に120時間保存した後の水分率が特定の値以上である粘着剤層とすれば、低誘電率であり、加湿によって白濁化することのない粘着シートが得られることを見出した。本発明は、これらの知見に基づいて完成されたものである。
【0009】
すなわち、本発明は、周波数100kHzの比誘電率が4以下であり、且つ60℃、95%RHの環境下に120時間保存した後の水分率が0.65重量%以上である粘着剤層を少なくとも有することを特徴とする光学用粘着シートを提供する。
【0010】
さらに、上記光学用粘着シートでは、全光線透過率が90%以上であり、ヘイズが3%以下であることが好ましい。
【0011】
さらに、上記光学用粘着シートでは、上記粘着剤層が、炭素数6〜10の直鎖又は分岐鎖状のアルキル基を有するアクリル酸アルキルエステル、炭素数1〜10の直鎖又は分岐鎖状のアルキル基を有するメタクリル酸アルキルエステル、脂環式炭化水素基を有する(メタ)アクリル酸エステル及び窒素含有モノマーからなる群より選ばれる1以上のモノマー成分から構成されており、該モノマー成分の割合がアクリル系ポリマーを構成するモノマー成分全量(100重量%)に対して60重量%以上であるアクリル系ポリマーを含むアクリル系粘着剤層であることが好ましい。
【0012】
さらに、上記光学用粘着シートでは、上記脂環式炭化水素基を有する(メタ)アクリル酸エステルが、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸イソボルニルからなる群より選ばれる少なくとも1のモノマーであることが好ましい。
【0013】
さらに、上記光学用粘着シートでは、上記窒素含有モノマーが、(メタ)アクリロイルモルホリン、N−ビニルピロリドンからなる群より選ばれる少なくとも1のモノマーであることが好ましい。
【0014】
さらに、上記光学用粘着シートでは、イオンクロマトグラフ法で測定される、純水で100℃、45分の条件で抽出されたアクリル酸イオン及びメタクリル酸イオンの合計量が、上記粘着剤層の単位面積あたり300ng/cm2以下であることが好ましい。
【0015】
さらにまた、本発明は、周波数100kHzの比誘電率が4以下である粘着剤層を少なくとも有し、イオンクロマトグラフ法で測定される、純水で100℃、45分の条件で抽出されたアクリル酸イオン及びメタクリル酸イオンの合計量が、上記粘着剤層の単位面積あたり300ng/cm2以下であることを特徴とする光学用粘着シートを提供する。
【発明の効果】
【0016】
本発明の光学用粘着シートは、上記構成を有するので、低誘電率であり、加湿によって白濁化することがない。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】図1は、本発明の光学用粘着シートが用いられている静電容量方式タッチパネルの一例を示す概略図である。
【図2】図2は、耐腐食性の評価に用いた、抵抗値測定サンプルを示す概略図(平面図)である。
【図3】図3は、耐腐食性の評価に用いた、抵抗値測定サンプルを示す概略図(図2におけるA−A断面図)である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の光学用粘着シートは、周波数100kHzの比誘電率が4以下であり、且つ60℃、95%RHの環境下に120時間保存した後の水分率が0.65重量%以上である粘着剤層を、少なくとも有する。なお、以下、「周波数100kHzの比誘電率が4以下であり、且つ60℃、95%RHの環境下に120時間保存した後の水分率が0.65重量%以上である粘着剤層」を「本発明の粘着剤層」と称する場合がある。
【0019】
なお、本発明の光学用粘着シートにおいて、「粘着シート」という場合には、テープ状のもの、即ち、「粘着テープ」も含まれるものとする。また、本発明の光学用粘着シートにおける粘着剤層表面のことを、「粘着面」と称する場合がある。
【0020】
本発明の光学用粘着シートは、シートの両面が粘着面となっている両面粘着シートであってもよいし、シートの片面のみが粘着面となっている片面粘着シートであってもよい。中でも、本発明の光学用粘着シートは、2つの部材同士を貼り合わせる観点からは、両面粘着シートであることが好ましい。
【0021】
本発明の光学用粘着シートは、基材(基材層)を有しない、いわゆる「基材レスタイプ」の粘着シート(以下、「基材レス粘着シート」と称する場合がある)であってもよいし、基材を有するタイプの粘着シート(以下、「基材付き粘着シート」と称する場合がある)であってもよい。本発明の光学用粘着シートが基材レスタイプである場合、その具体的な構成としては、例えば、本発明の粘着剤層のみからなる両面粘着シート、本発明の粘着剤層及び本発明の粘着剤層以外の粘着剤層(以下、「その他の粘着剤層」と称する場合がある。)からなる両面粘着シートなどが挙げられる。また、本発明の光学用粘着シートが基材付きタイプである場合、その具体的な構成としては、例えば、基材の片面側に本発明の粘着剤層を有する片面粘着シート、基材の両面側に本発明の粘着剤層を有する両面粘着シート、基材の一方の面側に本発明の粘着剤層を有し、基材の他方の面側にその他の粘着剤層を有する両面粘着シートなどが挙げられる。中でも、本発明の光学用粘着シートは、薄膜化、透明性などの光学物性向上の観点からは、基材レス粘着タイプが好ましく、本発明の粘着剤層のみからなる両面粘着シートがより好ましい。
【0022】
[本発明の粘着剤層]
本発明の光学用粘着シートにおいて、本発明の粘着剤層は、必須の粘着剤層であり、光学部材への接着に好適に用いられる粘着剤層である。
【0023】
上記本発明の粘着剤層の周波数100kHzの比誘電率は、4以下であり、好ましくは3.8以下であり、より好ましくは3.5以下である。粘着剤層の比誘電率が4を超えると、薄くて、低誘電率の粘着剤層を得ることが困難になる。なお、比誘電率は、JIS K 6911に準じて求められる。
【0024】
上記本発明の粘着剤層の60℃、95%RHの環境下に120時間保存した後の水分率は、0.65重量%以上(例えば、0.65〜5.0重量%)であり、好ましくは0.65〜3.0重量%であり、より好ましくは0.75〜3.0重量%である。
【0025】
上記加湿による粘着剤層の白濁化は、粘着シートを高温高湿環境に置くことによって粘着剤層が吸湿し、この吸湿水分が結露することが原因で起こる現象であると考えられる。本発明の光学用粘着シートにおいては、本発明の粘着剤層の水分率(60℃、95%RHの環境下に120時間保存後の水分率)を0.65重量%以上に制御することにより、例えば、粘着シートが置かれた環境が大きく変化した場合(例えば、高温高湿環境から室温環境への変化など)であっても、粘着剤層の高い吸水性に起因して吸湿水分が結露しにくくなり、その結果、加湿による白濁化が抑止(抑制)されたものと推定される。
【0026】
なお、上記粘着剤層の水分率は、粘着剤層を60℃、95%RHの環境下に120時間保存した後、室温環境(23℃、50%RH)に取り出した直後(例えば、取り出し後0〜10分程度)に測定して得られた値である。60℃、95%RHの環境下に120時間保存した後の粘着剤層の水分率は、具体的には、例えば、下記の[水分率の測定方法]により測定することができる。
【0027】
[水分率の測定方法]
(試料の調製及び水分率の測定)
粘着剤層を約0.2g採取したものを試料として用いる。試料を60℃、95%RHの環境下に120時間保存した後、試料の秤量を行う。次いで、下記の加熱気化装置に入れ、150℃に加熱した時に発生したガスを下記の電量滴定式水分測定装置の滴定セル内に導入する。そして、上記電量滴定式水分測定装置により、下記の測定条件にて試料中の水分量(μg)を測定し、60℃、95%RHの環境下に120時間保存後の粘着剤層1gあたりの水分量を求め、粘着剤層の水分率(重量%)を算出する。なお、測定回数(n数)は、特に限定されないが、2回が好ましい。
(分析装置)
加熱気化装置:三菱化学(株)製、「VA−06型」
電量滴定式水分測定装置:三菱化学(株)製、「CA−06型」
(測定条件)
方法:加熱気化法/150℃加熱
陽極液:アクアミクロンAKX
陰極液:アクアミクロンCXU
【0028】
上記本発明の粘着剤層の可視光波長領域における全光線透過率(JIS K7136に準じる)は、特に限定されないが、本発明の光学用粘着シートの透明性向上の点から、90%以上が好ましく、より好ましくは91%以上である。また、上記本発明の粘着剤層のヘイズ(JIS K7136に準じる)は、特に限定されないが、本発明の光学用粘着シートの透明性向上の点から、3%以下が好ましく、より好ましくは1%以下である。
【0029】
本発明の粘着剤層は、周波数100kHzの比誘電率、及び60℃、95%RHの環境下に120時間保存した後の水分率が上記範囲内にある限り、特に限定されない。本発明の粘着剤層を構成する粘着剤としては、特に限定されないが、例えば、アクリル系粘着剤、ゴム系粘着剤、ビニルアルキルエーテル系粘着剤、シリコーン系粘着剤、ポリエステル系粘着剤、ポリアミド系粘着剤、ウレタン系粘着剤、フッ素系粘着剤、エポキシ系粘着剤などが挙げられる。これらの粘着剤は、単独で、又は2種以上を組み合わせて用いられる。
【0030】
上記本発明の粘着剤層を構成する粘着剤は、いずれの形態を有している粘着剤であってもよい。例えば、上記本発明の粘着剤層を構成する粘着剤は、エマルジョン型粘着剤、溶剤型(溶液型)粘着剤、活性エネルギー線硬化型粘着剤、熱溶融型粘着剤(ホットメルト型粘着剤)などであってもよい。中でも、上記本発明の粘着剤層を構成する粘着剤は、生産性の点から、溶剤型粘着剤や活性エネルギー線硬化型粘着剤であることが好ましい。
【0031】
中でも、上記本発明の粘着剤層を構成する粘着剤としては、耐候性、コスト、粘着剤の設計のしやすさの点で、アクリル系粘着剤が好ましい。つまり、上記本発明の粘着剤層は、アクリル系ポリマーを主成分として含むアクリル系粘着剤層であることが好ましい。上記本発明の粘着剤層におけるアクリル系ポリマーの含有量は、特に限定されないが、粘着剤層全量(100重量%)に対して、85重量%以上(例えば85〜100重量%)が好ましく、より好ましくは90重量%以上(例えば90〜100重量%)であり、さらにより好ましくは95重量%以上(例えば95〜100重量%)である。
【0032】
上記アクリル系粘着剤層(本発明の粘着剤層)は、アクリル系粘着剤組成物により形成される。上記アクリル系粘着剤組成物としては、特に限定されないが、例えば、アクリル系ポリマーを必須成分とするアクリル系粘着剤組成物、アクリル系ポリマーを構成する単量体(モノマー)の混合物(「モノマー混合物」と称する場合がある)又はその部分重合物を必須成分とするアクリル系粘着剤組成物などが挙げられる。なお、前者としては、例えば、いわゆる溶剤型の粘着剤組成物などが挙げられる。また、後者としては、例えば、いわゆる活性エネルギー線硬化型の粘着剤組成物などが挙げられる。なお、上記粘着剤組成物には、さらに必要に応じて、添加剤が含まれていてもよい。
【0033】
上記「粘着剤組成物」には「粘着剤を形成するための組成物」という意味も含むものとする。また、上記「モノマー混合物」とは、ポリマーを構成するモノマー成分のみからなる混合物を意味する。また、上記「部分重合物」とは、上記モノマー混合物の構成成分のうち1又は2以上の成分が部分的に重合している組成物を意味する。
【0034】
上記アクリル系ポリマーは、アクリル系モノマーを必須のモノマー成分(単量体成分)として構成(形成)された重合体である。上記アクリル系ポリマーは、特に限定されないが、直鎖又は分岐鎖状のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルおよび極性基含有モノマーを少なくともモノマー成分として構成された重合体であることが好ましい。さらに、上記アクリル系ポリマーを構成するモノマー成分としては、その他の共重合性モノマーを含んでいてもよい。上記「(メタ)アクリル」とは、「アクリル」及び/又は「メタクリル」(「アクリル」及び「メタクリル」のうち、いずれか一方又は両方)を表し、他も同様である。
【0035】
上記の直鎖又は分岐鎖状のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸s−ブチル、(メタ)アクリル酸t−ブチル、(メタ)アクリル酸ペンチル、(メタ)アクリル酸イソペンチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸ヘプチル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸ノニル、(メタ)アクリル酸イソノニル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸イソデシル、(メタ)アクリル酸ウンデシル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸トリデシル、(メタ)アクリル酸テトラデシル、(メタ)アクリル酸ペンタデシル、(メタ)アクリル酸ヘキサデシル、(メタ)アクリル酸ヘプタデシル、(メタ)アクリル酸オクタデシル、(メタ)アクリル酸ノナデシル、(メタ)アクリル酸エイコシルなどの炭素数が1〜20の直鎖又は分岐鎖状のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルが挙げられる。なお、上記(メタ)アクリル酸アルキルエステルは単独で、又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0036】
上記極性基含有モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸3−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸4−ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸6−ヒドロキシヘキシル、ビニルアルコール、アリルアルコールなどの水酸基(ヒドロキシル基)含有モノマー;窒素含有モノマー;(メタ)アクリル酸グリシジル、(メタ)アクリル酸メチルグリシジルなどのエポキシ基含有モノマー;ビニルスルホン酸ナトリウムなどのスルホン酸基含有モノマー;2−ヒドロキシエチルアクリロイルフォスフェートなどのリン酸基含有モノマーなどが挙げられる。なお、極性基含有モノマーは、単独で、又は2種以上を組み合わせて用いられる。
【0037】
上記窒素含有モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N−メトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−ブトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミドなどアミド基含有モノマー;窒素を含む複素環及びN−ビニル基を有するモノマー(含窒素複素環含有ビニル系モノマー)(例えば、N−ビニル−2−ピロリドン、N−ビニル−2−ピペリドン、N−ビニル−2−カプロラクタム、N−ビニルピペラジン、N−ビニルピロール、N−ビニルイミダゾールなど)や窒素を含む複素環及び(メタ)アクリロイル基を有するモノマー(含窒素複素環含有(メタ)アクリル系モノマー)(例えば、(メタ)アクリロイルモルホリンなど)の含窒素複素環含有モノマー;(メタ)アクリル酸アミノエチル、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸t−ブチルアミノエチルなどのアミノ基含有モノマー;アクリロニトリルやメタクリロニトリルなどのシアノ基含有モノマー;シクロヘキシルマレイミド、イソプロピルマレイミドなどのイミド基含有モノマー;2−メタクリロイルオキシエチルイソシアネートなどのイソシアネート基含有モノマーなどが挙げられる。
【0038】
上記その他の共重合性モノマーとしては、例えば、多官能性モノマーが挙げられる。上記多官能性モノマーとしては、例えば、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、(ポリ)エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、(ポリ)プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタントリ(メタ)アクリレート、アリル(メタ)アクリレート、ビニル(メタ)アクリレート、ジビニルベンゼン、エポキシアクリレート、ポリエステルアクリレート、ウレタンアクリレートなどが挙げられる。
【0039】
また、上記多官能性モノマー以外のその他の共重合性モノマーとしては、例えば、シクロペンチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート等の脂環式炭化水素基を有する(メタ)アクリル酸エステルやフェニル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート等の芳香族炭化水素基を有する(メタ)アクリル酸エステルなどの前述の(メタ)アクリル酸アルキルエステル、極性基含有モノマー、多官能性モノマー以外の(メタ)アクリル酸エステル;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニルなどのビニルエステル類;スチレン、ビニルトルエンなどの芳香族ビニル化合物;エチレン、ブタジエン、イソプレン、イソブチレンなどのオレフィン類又はジエン類;ビニルアルキルエーテルなどのビニルエーテル類;塩化ビニルなどが挙げられる。
【0040】
なお、多官能性モノマーや脂環式炭化水素基を有する(メタ)アクリル酸エステルなどの上記その他の共重合性モノマーは、単独で、又は2種以上を組み合わせて用いられる。
【0041】
上記アクリル系粘着剤層は、粘着剤層の比誘電率を小さくできる点、粘着剤層のTg(ガラス転移点)をコントロールして、粘着剤層のTgを下げることができ、粘着剤層を構成する全モノマー成分においてその割合を大きくすると粘着剤層の段差吸収性を向上できる点から、炭素数が6〜10の直鎖又は分岐鎖状のアルキル基を有するアクリル酸アルキルエステル、特にアクリル酸2−エチルヘキシル(2−EHA)、アクリル酸イソオクチル(IOA)を必須のモノマー成分として構成されたアクリル系ポリマーを含むことが好ましい。
【0042】
また、上記アクリル系粘着剤層は、粘着剤層の比誘電率を小さくできる点、粘着剤層の耐久力を向上できる点から、炭素数が1〜10の直鎖又は分岐鎖状のアルキル基を有するメタクリル酸アルキルエステル、特にメタクリル酸メチル(MMA)を必須のモノマー成分として構成されたアクリル系ポリマーを含むことが好ましい。なお、上記アクリル系粘着剤層がメタクリル酸メチル(MMA)を必須のモノマー成分として構成されたアクリル系ポリマーを含んでいると、ポリメタクリル酸メチル樹脂(PMMA)対する密着性をより向上できる。
【0043】
さらに、上記アクリル系粘着剤層は、粘着剤層の比誘電率を小さくする点から、上記の炭素数が6〜10の直鎖又は分岐鎖状のアルキル基を有するアクリル酸アルキルエステル及び上記の炭素数が1〜10の直鎖又は分岐鎖状のアルキル基を有するメタクリル酸アルキルエステルを必須のモノマー成分として構成されたアクリル系ポリマーを含むことがより好ましい。
【0044】
上記アクリル系粘着剤層は、粘着剤層の比誘電率を小さくでき、粘着剤層の凝集力を向上させて粘着剤層の被着体に対する接着性を強くでき、さらに加湿による粘着剤層の白濁化をより抑制できる点から、上記窒素含有モノマー(好ましくは上記含窒素複素環含有モノマー、より好ましくは(メタ)アクリロイルモルホリン、N−ビニルピロリドンからなる群より選ばれる少なくとも1のモノマー)を必須のモノマー成分として構成されたアクリル系ポリマーを含むことが好ましい。
【0045】
上記アクリル系粘着剤層は、粘着剤層の比誘電率を小さくでき、粘着剤層のTgを大きくして、粘着剤層の耐久力を向上できる点から、脂環式炭化水素基を有する(メタ)アクリル酸エステル(特に(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸イソボルニルからなる群より選ばれる少なくとも1のモノマーを必須のモノマー成分として構成されたアクリル系ポリマーを含むことが好ましい。
【0046】
特に、上記アクリル系粘着剤層は、低誘電率の粘着剤層を得る点から、窒素含有モノマー及び脂環式炭化水素基を有する(メタ)アクリル酸エステルからなる群より選ばれる少なくとも1のモノマーを必須のモノマー成分として構成されたアクリル系ポリマーを含むことが好ましい。
【0047】
さらに、上記アクリル系粘着剤層は、粘着剤層の比誘電率を小さくする点から、上記炭素数6〜10の直鎖又は分岐鎖状のアルキル基を有するアクリル酸アルキルエステル、上記炭素数1〜10の直鎖又は分岐鎖状のアルキル基を有するメタクリル酸アルキルエステル、上記脂環式炭化水素基を有する(メタ)アクリル酸エステル及び上記窒素含有モノマーからなる群より選ばれる1以上のモノマー成分から構成されており、該モノマー成分の割合がポリマーを構成するモノマー成分全量(100重量%)に対して60重量%以上(好ましくは70重量%以上)であるアクリル系ポリマーを含むことが好ましい。
【0048】
さらに、上記アクリル系粘着剤層は、粘着剤層の水分率を向上させて、加湿による粘着剤層の白濁化をより抑制する点から、水酸基含有モノマー(特に水酸基含有(メタ)アクリル酸エステル)を含むことが好ましい。
【0049】
上記水酸基含有モノマー(特に、水酸基含有(メタ)アクリル酸エステル)の割合は、特に限定されないが、例えば、アクリル系ポリマーを構成するモノマー成分全量(100重量%)に対して、10〜25重量%が好ましく、より好ましくは10〜22重量%、さらに好ましくは12〜22重量%である。割合を10重量%以上とすることにより、粘着剤層の水分率が高くなり、白濁化が抑制される。一方、割合を25重量%以下とすることにより、高湿下での水分率が大きくなり過ぎず、常態下と高湿下とにおける誘電率の変化が大きくなり過ぎてしまうことを防止できる。常態下と高湿下とにおける誘電率の変化が大きくなり過ぎた場合には、例えば、タッチパネルの動作不良が生じやすくなる場合がある。
【0050】
なお、上記アクリル系粘着剤層に含まれるアクリル系ポリマーでは、構成するモノマー成分として、カルボキシル基含有モノマー(特に(メタ)アクリル酸)がごく少量用いられたり、あるいは用いられないことが好ましい。腐食を引き起こす原因となる未反応のカルボキシル基含有モノマー(特に未反応の(メタ)アクリル酸)が、形成される粘着剤層において、残留することを抑制するためである。具体的には、例えば、上記アクリル系ポリマーを構成する全モノマー成分(100重量%)におけるカルボキシル基含有モノマーの割合を、5重量%未満(例えば、0〜5重量%)とすること、より好ましくは2重量%以下(例えば、0〜2重量%)とすること、さらに好ましくは0.5重量%以下(例えば、0〜0.5重量%)とすることが挙げられる。上記割合を5重量%未満とすることによって、金属薄膜や金属酸化物薄膜に対する耐腐食性が向上する。
【0051】
上記カルボキシル基含有モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、クロトン酸、イソクロトン酸などが挙げられる。また、これらカルボキシル基含有モノマーの酸無水物(例えば、無水マレイン酸、無水イタコン酸などの酸無水物含有モノマー)も、上記カルボキシル基含有モノマーとして含まれるものとする。なお、上記カルボキシル基含有モノマーは、単独で、又は、2種以上組み合わせて用いられる。
【0052】
粘着シートの粘着剤層として、比誘電率が小さく且つ水分率が大きいアクリル系粘着剤層を得る点から、上記アクリル系ポリマーを構成するモノマー成分の好適な態様としては、例えば、下記の態様が挙げられる。
(a) モノマー成分として炭素数が6〜10の直鎖又は分岐鎖状のアルキル基を有するアクリル酸アルキルエステル、窒素含有モノマー及び脂環式炭化水素基を有する(メタ)アクリル酸エステルからなる群より選ばれる少なくとも1のモノマー、炭素数が1〜10の直鎖又は分岐鎖状のアルキル基を有するメタクリル酸アルキルエステル及び水酸基含有モノマーが少なくとも含まれており、アクリル系ポリマーを構成する全モノマー成分(100重量%)に対して、炭素数が6〜10の直鎖又は分岐鎖状のアルキル基を有するアクリル酸アルキルエステルの割合が45〜55重量%、窒素含有モノマー及び脂環式炭化水素基を有する(メタ)アクリル酸エステルからなる群より選ばれる少なくとも1のモノマーの合計の割合が10〜25重量%、炭素数が1〜10の直鎖又は分岐鎖状のアルキル基を有するメタクリル酸アルキルエステルの割合が15〜25重量%、水酸基含有モノマーの割合が10〜25重量%である態様
(b) モノマー成分として炭素数が6〜10の直鎖又は分岐鎖状のアルキル基を有するアクリル酸アルキルエステル、窒素含有モノマー及び脂環式炭化水素基を有する(メタ)アクリル酸エステルからなる群より選ばれる少なくとも1のモノマーが少なくとも含まれており、アクリル系ポリマーを構成する全モノマー成分(100重量%)に対して、炭素数が6〜10の直鎖又は分岐鎖状のアルキル基を有するアクリル酸アルキルエステルの割合が45〜55重量%、窒素含有モノマー及び脂環式炭化水素基を有する(メタ)アクリル酸エステルからなる群より選ばれる少なくとも1のモノマーの割合が20〜45重量%、水酸基含有モノマーの割合が5〜10重量部である態様
【0053】
上記(a)の態様には、下記の(a1)の態様及び(a2)の態様が含まれる。
(a1) モノマー成分として炭素数が6〜10の直鎖又は分岐鎖状のアルキル基を有するアクリル酸アルキルエステル、脂環式炭化水素基を有する(メタ)アクリル酸エステル、炭素数が1〜10の直鎖又は分岐鎖状のアルキル基を有するメタクリル酸アルキルエステル及び水酸基含有モノマーが少なくとも含まれており、アクリル系ポリマーを構成する全モノマー成分(100重量%)に対して、炭素数が6〜10の直鎖又は分岐鎖状のアルキル基を有するアクリル酸アルキルエステルの割合が45〜55重量%、脂環式炭化水素基を有する(メタ)アクリル酸エステルの割合が10〜25重量%、炭素数が1〜10の直鎖又は分岐鎖状のアルキル基を有するメタクリル酸アルキルエステルの割合が15〜25重量%、水酸基含有モノマーの割合が10〜25重量%である態様
なお、(a1)の態様には、モノマー成分として、窒素含有モノマーは含まれない。
(a2) モノマー成分として炭素数が6〜10の直鎖又は分岐鎖状のアルキル基を有するアクリル酸アルキルエステル、窒素含有モノマー、炭素数が1〜10の直鎖又は分岐鎖状のアルキル基を有するメタクリル酸アルキルエステル及び水酸基含有モノマーが少なくとも含まれており、アクリル系ポリマーを構成する全モノマー成分(100重量%)に対して、炭素数が6〜10の直鎖又は分岐鎖状のアルキル基を有するアクリル酸アルキルエステルの割合が45〜55重量%、窒素含有モノマーの割合が10〜25重量%、炭素数が1〜10の直鎖又は分岐鎖状のアルキル基を有するメタクリル酸アルキルエステルの割合が15〜25重量%、水酸基含有モノマーの割合が10〜25重量%である態様
なお、(a2)の態様には、モノマー成分として、脂環式炭化水素基を有する(メタ)アクリル酸エステルは含まれない。
【0054】
上記(b)の態様は、アクリル系ポリマー得る際に下記の活性エネルギー線重合方法を用いる場合に好適である。
【0055】
また、上記態様は、何れも、アクリル系ポリマーを構成するモノマー成分として、(メタ)アクリル酸が用いられておらず、形成された粘着剤層中に未反応の(メタ)アクリル酸が実質的に存在することはない。従って、上記態様は、金属薄膜や金属電極、CNT(カーボンナノチューブ)膜に対する耐腐食性に優れる態様でもある。
【0056】
上記アクリル系ポリマーは、上記モノマー成分を公知慣用の重合方法により重合することにより得られる。上記アクリル系ポリマーの重合方法としては、例えば、溶液重合方法、乳化重合方法、塊状重合方法や活性エネルギー線照射による重合方法(活性エネルギー線重合方法)などが挙げられる。中でも、生産性の点で、溶液重合方法、活性エネルギー線重合方法が好ましい。
【0057】
上記の活性エネルギー線重合(光重合)に際して照射される活性エネルギー線としては、特に限定されないが、例えば、α線、β線、γ線、中性子線、電子線などの電離性放射線や紫外線などが挙げられる。中でも、紫外線が好適である。また、活性エネルギー線の照射エネルギー、照射時間、照射方法などは特に限定されず、光重合開始剤を活性化させて、モノマー成分の反応を生じさせることができればよい。
【0058】
上記の溶液重合に際して用いられる溶剤としては、特に限定されず、各種の一般的な溶剤が挙げられる。例えば、酢酸エチル、酢酸n−ブチル等のエステル類;トルエン、ベンゼン等の芳香族炭化水素類;n−ヘキサン、n−ヘプタン等の脂肪族炭化水素類;シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン等の脂環式炭化水素類;メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類などの有機溶剤が挙げられる。溶剤は、単独で、又は2種以上を組み合わせて用いられる。
【0059】
さらに、上記アクリル系ポリマーを得る際のモノマー成分の重合に際しては、重合反応の種類に応じて、光重合開始剤(光開始剤)や熱重合開始剤などの重合開始剤が用いられることが好ましい。なお、重合開始剤は、単独で、又は2種以上を組み合わせて用いられる。
【0060】
上記光重合開始剤としては、特に限定されず、例えば、ベンゾインエーテル系光重合開始剤、アセトフェノン系光重合開始剤、α−ケトール系光重合開始剤、芳香族スルホニルクロリド系光重合開始剤、光活性オキシム系光重合開始剤、ベンゾイン系光重合開始剤、ベンジル系光重合開始剤、ベンゾフェノン系光重合開始剤、ケタール系光重合開始剤、チオキサントン系光重合開始剤等が挙げられる。光重合開始剤の使用量としては、特に限定されないが、例えば、アクリル系ポリマーを構成するモノマー成分全量100重量部に対して0.01〜0.2重量部が好ましく、より好ましくは0.05〜0.15重量部である。
【0061】
上記ベンゾインエーテル系光重合開始剤としては、例えば、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインプロピルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン、アニソールメチルエーテルなどが挙げられる。上記アセトフェノン系光重合開始剤としては、例えば、2,2−ジエトキシアセトフェノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、4−フェノキシジクロロアセトフェノン、4−(t−ブチル)ジクロロアセトフェノンなどが挙げられる。上記α−ケトール系光重合開始剤としては、例えば、2−メチル−2−ヒドロキシプロピオフェノン、1−[4−(2−ヒドロキシエチル)フェニル]−2−メチルプロパン−1−オンなどが挙げられる。上記芳香族スルホニルクロリド系光重合開始剤としては、例えば、2−ナフタレンスルホニルクロライドなどが挙げられる。上記光活性オキシム系光重合開始剤としては、例えば、1−フェニル−1,1−プロパンジオン−2−(o−エトキシカルボニル)−オキシムなどが挙げられる。上記ベンゾイン系光重合開始剤としては、例えば、ベンゾインなどが挙げられる。上記ベンジル系光重合開始剤としては、例えば、ベンジルなどが挙げられる。上記ベンゾフェノン系光重合開始剤としては、例えば、ベンゾフェノン、ベンゾイル安息香酸、3,3′−ジメチル−4−メトキシベンゾフェノン、ポリビニルベンゾフェノン、α−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトンなどが挙げられる。上記ケタール系光重合開始剤としては、例えば、ベンジルジメチルケタールなどが挙げられる。上記チオキサントン系光重合開始剤としては、例えば、チオキサントン、2−クロロチオキサントン、2−メチルチオキサントン、2,4−ジメチルチオキサントン、イソプロピルチオキサントン、2,4−ジイソプロピルチオキサントン、ドデシルチオキサントンなどが挙げられる。
【0062】
また、上記アクリル系ポリマーを溶液重合により重合させる際に用いられる重合開始剤(熱重合開始剤)としては、例えばアゾ系開始剤、過酸化物系重合開始剤(例えば、ジベンゾイルペルオキシド、tert−ブチルペルマレエートなど)、レドックス系重合開始剤などが挙げられる。中でも、特開2002−69411号公報に開示されたアゾ系開始剤が特に好ましい。
【0063】
上記アゾ系開始剤としては、例えば、2,2'−アゾビスイソブチロニトリル(以下、AIBNと称する場合がある)、2,2'−アゾビス−2−メチルブチロニトリル(以下、AMBNと称する場合がある)、2,2'−アゾビス(2−メチルプロピオン酸)ジメチル、4,4'−アゾビス−4−シアノバレリアン酸などが挙げられる。
【0064】
上記熱重合開始剤の使用量は、特に限定されない。例えば、上記アゾ系開始剤の使用量は、アクリル系ポリマーを構成するモノマー成分全量100重量部に対して、0.05〜0.5重量部が好ましく、より好ましくは0.1〜0.3重量部である。
【0065】
上記本発明の粘着剤層を形成するための組成物(粘着剤組成物)、特に上記アクリル系粘着剤組成物には、必要に応じて、架橋剤、架橋促進剤、シランカップリング剤、粘着付与樹脂(ロジン誘導体、ポリテルペン樹脂、石油樹脂、油溶性フェノールなど)、老化防止剤、充填剤、着色剤(顔料や染料など)、紫外線吸収剤、酸化防止剤、連鎖移動剤、可塑剤、軟化剤、界面活性剤、帯電防止剤などの添加剤が、本発明の特性を損なわない範囲で含まれていてもよい。また、上記本発明の粘着剤層を形成する際には、各種の一般的な溶剤が用いられていてもよい。溶剤としては、特に限定されず、前述の溶液重合に際して用いられる溶剤として例示されたものなどが挙げられる。なお、添加剤は、単独で、又は2種以上組み合わせて用いられる。
【0066】
上記粘着剤組成物に架橋剤が含まれていると、形成される粘着剤層中のベースポリマーで架橋構造が得られ、粘着剤層のゲル分率をコントロールできる。例えば、上記アクリル系粘着剤層は、上記アクリル系粘着剤組成物に架橋剤が含まれていると、形成されるアクリル系粘着剤層中のアクリル系ポリマーの架橋により、ゲル分率が調整される。例えば、粘着剤層のゲル分率(溶剤不溶分)が40〜95重量%の範囲になるように調整されていると、粘着剤層の耐久性が向上する。
【0067】
このような架橋剤としては、特に限定されないが、例えば、イソシアネート系架橋剤、エポキシ系架橋剤、メラミン系架橋剤、過酸化物系架橋剤、尿素系架橋剤、金属アルコキシド系架橋剤、金属キレート系架橋剤、金属塩系架橋剤、カルボジイミド系架橋剤、オキサゾリン系架橋剤、アジリジン系架橋剤、アミン系架橋剤などが挙げられる。なお、上記架橋剤は、単独で、又は2種以上を組み合わせて用いられる。中でも、上記架橋剤は、耐久性向上の観点で、イソシアネート系架橋剤、エポキシ系架橋剤が好ましく、より好ましくはイソシアネート系架橋剤である。
【0068】
上記イソシアネート系架橋剤(多官能イソシアネート化合物)としては、例えば、1,2−エチレンジイソシアネート、1,4−ブチレンジイソシアネート、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネートなどの低級脂肪族ポリイソシアネート類;シクロペンチレンジイソシアネート、シクロヘキシレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、水素添加トリレンジイソシアネート、水素添加キシレンジイソシアネートなどの脂環族ポリイソシアネート類;2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、4,4'−ジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネートなどの芳香族ポリイソシアネート類などが挙げられる。上記イソシアネート系架橋剤としては、例えば、トリメチロールプロパン/トリレンジイソシアネート付加物[日本ポリウレタン工業(株)製、商品名「コロネートL」]、トリメチロールプロパン/ヘキサメチレンジイソシアネート付加物[日本ポリウレタン工業(株)製、商品名「コロネートHL」]、トリメチロールプロパン/キシリレンジイソシアネート付加物[三井化学(株)製、商品名「タケネートD110N」]などの市販品も挙げられる。
【0069】
また、上記エポキシ系架橋剤(多官能エポキシ化合物)としては、例えば、N,N,N′,N′−テトラグリシジル−m−キシレンジアミン、ジグリシジルアニリン、1,3−ビス(N,N−ジグリシジルアミノメチル)シクロヘキサン、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、エチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ソルビトールポリグリシジルエーテル、グリセロールポリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールポリグリシジルエーテル、ポリグリセロールポリグリシジルエーテル、ソルビタンポリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンポリグリシジルエーテル、アジピン酸ジグリシジルエステル、o−フタル酸ジグリシジルエステル、トリグリシジル−トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレート、レゾルシンジグリシジルエーテル、ビスフェノール−S−ジグリシジルエーテルの他、分子内にエポキシ基を2つ以上有するエポキシ系樹脂などが挙げられる。上記エポキシ系架橋剤としては、例えば、三菱ガス化学(株)製、商品名「テトラッドC」などの市販品も挙げられる。
【0070】
上記粘着剤組成物における上記架橋剤の含有量としては、特に限定されないが、アクリル系ポリマーを構成するモノマー成分全量100重量部に対して0.001〜10重量部が好ましく、より好ましくは0.01〜5重量部である。なお、含有量を0.001重量部以上とすることにより、耐久性が向上する。また、含有量を10重量部以下とすることにより、段差吸収性が向上する。
【0071】
また、上記粘着剤組成物には、架橋反応を速めることを目的として、架橋促進剤(架橋助剤)が含まれていてもよい。上記架橋促進剤としては、特に限定されないが、複数のヒドロキシル基を含有するアミン系化合物が好ましく挙げられる。上記複数のヒドロキシル基を含有するアミン系化合物としては、分子内にヒドロキシル基(アルコール性ヒドロキシル基)を少なくとも2個有しているアミン系化合物であれば、特に限定されないが、例えば、特開2009−079203号公報に開示された複数のヒドロキシル基を含有するアミン系化合物が特に好ましく挙げられる。上記複数のヒドロキシル基を有するアミン系化合物を使用すると、架橋速度が速くなるため生産性が向上する。このようなアミン系化合物としては、例えば、商品名「EDP−300」、「EDP−450」、「EDP−1100」、「プルロニック」(以上、(株)ADEKA製)などの市販品が挙げられる。
【0072】
上記粘着剤組成物における上記架橋促進剤の含有量としては、特に限定されないが、例えば、上記アクリル系粘着剤組成物における上記複数のヒドロキシル基を含有するアミン系化合物の含有量は、架橋速度を促進してエージング時間を短縮し、生産性を向上させる観点から、アクリル系ポリマーを構成するモノマー成分全量100重量部に対して、0.01〜5.0重量部が好ましく、より好ましくは0.05〜1.0重量部である。
【0073】
さらに、上記粘着剤組成物(特に上記アクリル系粘着剤組成物)には、ガラスに対する接着性(特に、高温高湿環境でのガラスに対する接着信頼性)向上を目的として、シランカップリング剤が含まれていてもよい。上記シランカップリング剤としては、特に限定されないが、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−フェニル−アミノプロピルトリメトキシシランなどが挙げられる。中でも、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシランが好ましい。また、上記シランカップリング剤としては、例えば、商品名「KBM−403」(信越化学(株)製)などの市販品も挙げられる。なお、上記シランカップリング剤は、単独で、又は2種以上を組み合わせて用いられる。
【0074】
上記粘着剤組成物における上記シランカップリング剤の含有量は、特に限定されないが、例えば、上記アクリル系粘着剤組成物では、ガラスに対する接着信頼性向上の観点から、アクリル系ポリマーを構成するモノマー成分全量100重量部に対し、0.01〜1重量部が好ましく、より好ましくは0.03〜0.5重量部である。
【0075】
上記本発明の粘着剤層の形成方法としては、特に限定されないが、公知乃至慣用の粘着剤層の形成方法が挙げられる。例えば、以下の(1)〜(3)などの方法が挙げられる。
(1)モノマー混合物又はその部分重合物と、必要に応じて添加される光重合開始剤などの添加剤とを含む粘着剤組成物を、基材又はセパレーター上に塗布(塗工)し、活性エネルギー線(特に、紫外線)を照射して、粘着剤層を形成する方法。
(2)ポリマー(ベースポリマー)、溶剤、必要に応じて添加される添加剤を含む粘着剤組成物(溶液)を、基材又はセパレーター上に塗布(塗工)し、乾燥及び/又は硬化させて粘着剤層を形成する方法。
(3)上記(1)で形成した粘着剤層をさらに乾燥させる。
なお、上記方法では、必要に応じて、加熱・乾燥工程が設けられていてもよい。
【0076】
なお、上記本発明の粘着剤層の形成方法における塗布(塗工)には、公知のコーティング法が用いられてもよい。例えば、例えば、グラビヤロールコーター、リバースロールコーター、キスロールコーター、ディップロールコーター、バーコーター、ナイフコーター、スプレーコーター、コンマコーター、ダイレクトコーターなどの慣用のコーターが用いられてもよい。
【0077】
上記本発明の粘着剤層の厚さは、特に限定されないが、10〜500μmが好ましく、より好ましくは10〜350μmである。なお、粘着剤層は、単層構造であってもよいし、積層構造であってもよい。
【0078】
[その他の粘着剤層]
上記より、本発明の光学用粘着シートでは、上記本発明の粘着剤層以外に、本発明の粘着剤層以外の粘着剤層(その他の粘着剤層)を有していてもよいが、該その他の粘着剤層としては、特に限定されないが、例えば、ウレタン系粘着剤、アクリル系粘着剤、ゴム系粘着剤、シリコーン系粘着剤、ポリエステル系粘着剤、ポリアミド系粘着剤、エポキシ系粘着剤、ビニルアルキルエーテル系粘着剤、フッ素系粘着剤などの公知の粘着剤から形成された公知慣用の粘着剤層が挙げられる。なお、その他の粘着剤層は、上記公知の粘着剤のうち、2種以上の粘着剤が組み合わされた粘着剤により形成されていてもよい。
【0079】
[基材]
上記より、本発明の光学用粘着シートは基材付き粘着シートであってもよいが、該基材としては、特に限定されないが、例えば、プラスチックフィルム、反射防止(AR)フィルム、偏光板、位相差板などの各種フィルム(例えば、後述の光学フィルム)が挙げられる。上記プラスチックフィルムなどの素材としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)等のポリエステル系樹脂、ポリメチルメタクリレート(PMMA)等のアクリル系樹脂、ポリカーボネート、トリアセチルセルロース(TAC)、ポリサルフォン、ポリアリレート、ポリイミド、ポリ塩化ビニル、ポリ酢酸ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合体、商品名「アートン(環状オレフィン系ポリマー;JSR製)」、商品名「ゼオノア(環状オレフィン系ポリマー;日本ゼオン製)」等の環状オレフィン系ポリマーなどのプラスチック材料が挙げられる。なお、これらのプラスチック材料は、単独で、又は2種以上を組み合わせて用いられる。また、上記の「基材」とは、粘着シートを被着体(光学部材等)に使用(貼付)する際には、粘着剤層とともに被着体に貼付される部分である。粘着シートの使用時(貼付時)に剥離されるセパレーター(剥離ライナー)は「基材」には含まない。
【0080】
中でも、上記基材としては、透明基材が好ましい。上記基材の可視光波長領域における全光線透過率(JIS K7361に準じる)は、特に限定されないが、85%以上が好ましく、より好ましくは88%以上である。また、上記基材のヘイズ(JIS K7361に準じる)は、特に限定されないが、1.5%以下が好ましく、より好ましくは1.0%以下である。上記透明基材としては、PETフィルムや、商品名「アートン」、商品名「ゼオノア」などの無配向フィルムなどが挙げられる。
【0081】
上記基材の厚さは、特に限定されないが、例えば、12〜75μmが好ましい。なお、上記基材は単層および複層のいずれの形態を有していてもよい。また、基材表面には、例えば、コロナ放電処理、プラズマ処理等の物理的処理、下塗り処理等の化学的処理などの公知慣用の表面処理が施されていてもよい。
【0082】
[光学用粘着シート]
本発明の光学用粘着シートは、上記本発明の粘着剤層を少なくとも1層有する。また、本発明の光学用粘着シートは、上記本発明の粘着剤層のみから構成される基材レスタイプであることが好ましい。
【0083】
本発明の光学用粘着シートの、イオンクロマトグラフ法で測定される、本発明の光学用粘着シートより純水で100℃、45分の条件で抽出されたアクリル酸イオンおよびメタクリル酸イオンの合計量[抽出(メタ)アクリル酸イオン量]は、特に限定されないが、本発明の光学用粘着シートの厚さが150μm以上の場合、本発明の粘着剤層の単位面積あたり、300ng/cm2以下(例えば、0〜300ng/cm2)が好ましく、より好ましくは0〜150ng/cm2であり、さらにより好ましくは0〜100ng/cm2である。また、本発明の光学用粘着シートの厚さが100μm以上150μm未満の場合、本発明の粘着剤層の単位面積あたり、100ng/cm2以下(例えば、0〜100ng/cm2)が好ましく、より好ましくは0〜80ng/cm2である。さらに、本発明の光学用粘着シートの厚さが75μm以上100μm未満の場合、本発明の粘着剤層の単位面積あたり、80ng/cm2以下(例えば、0〜80ng/cm2)が好ましく、より好ましくは0〜50ng/cm2である。さらに、本発明の光学用粘着シートの厚さが75μm未満の場合、本発明の粘着剤層の単位面積あたり、20ng/cm2以下(例えば、0〜20ng/cm2)が好ましく、より好ましくは0〜17ng/cm2であり、さらにより好ましくは0〜15ng/cm2である。
【0084】
上記の抽出(メタ)アクリル酸イオン量は、粘着シートを加湿環境下などに置いた場合の粘着剤層からのアクリル酸イオン及びメタクリル酸イオンの水分での遊離しやすさの度合いを表す。上記抽出(メタ)アクリル酸イオン量を20ng/cm2以下とすることにより、金属薄膜等に貼付した状態で加湿環境下などの水分の存在下で保存した場合であっても、上記金属薄膜等に対して腐食を生じにくく、耐腐食性が向上する。なお、本発明の光学用粘着シートにおいて、被着体に対する腐食が生じにくい特性を、「耐腐食性」又は「腐食防止性」と称する場合がある。
【0085】
上記の「イオンクロマトグラフ法で測定される、本発明の粘着シートより純水で100℃、45分の条件で抽出されたアクリル酸イオンおよびメタクリル酸イオンの合計量」は、以下の方法で測定される。
まず、粘着シートを適切な大きさに切り出し、セパレーターが設けられている場合にはセパレーターを剥離して、粘着面を露出させ試験片とする。両面粘着シートの場合には、一方の粘着面上にはPETフィルム(厚さ25〜50μm)を貼付して、片方の粘着面のみを露出させた形態とする。なお、この際、金属薄膜に貼付する側の粘着面(本発明の粘着シートであれば、本発明の粘着剤層側の表面)を露出させる。試験片の大きさ(粘着面の露出面積)は100cm2が好ましい。
次いで、上記試験片を、温度100℃の純水中に入れ、45分間煮沸し、アクリル酸イオン及びメタクリル酸イオンの煮沸抽出を行う。
次いで、イオンクロマトグラフ法(イオンクロマトグラフィー)により、上記で得られた抽出液中のアクリル酸イオンおよびメタクリル酸イオンの合計量(単位:ng)を測定し、試験片の粘着面(露出した粘着面)の単位面積あたりのアクリル酸イオンおよびメタクリル酸イオンの合計量(単位:ng/cm2)を算出する。イオンクロマトグラフ法(イオンクロマトグラフィー)の測定条件は、特に限定されないが、例えば、下記の条件が挙げられる。
[イオンクロマトグラフ法の測定条件]
分析装置 : DIONEX社製、DX−320
分離カラム : Ion Pac AS15(4mm×250mm)
ガードカラム : Ion Pac AG15(4mm×50mm)
除去システム : ASRS−ULTRA(エクスターナルモード、100mA)
検出器 : 電気伝導度検出器
溶離液 : 7mM KOH(0〜20分)
45mM KOH(20〜30分)
(溶離液ジェネレーターEG40を使用)
溶離液流量 : 1.0ml/分
試料注入量 : 250μl
【0086】
粘着シートから水分によって遊離してくる(メタ)アクリル酸イオンは、一般的に、粘着剤層中に存在する(メタ)アクリル酸に起因する。上記(メタ)アクリル酸イオンは、高温高湿環境下で水分により金属薄膜に浸入して導通を妨げるためと推定されるが、金属薄膜の抵抗値上昇(金属薄膜の腐食)を引き起こす。一般的に、粘着シートの接着性を向上させることを目的として、アクリル系ポリマーを構成するモノマー成分として(メタ)アクリル酸(特に、アクリル酸)を多量(例えば、10重量%以上)に使用した場合には、粘着剤層中に未反応の(メタ)アクリル酸が残留しやすくなり、粘着シートから水分によって遊離してくる(メタ)アクリル酸イオンも増加する傾向にある。これに対して、本発明においては、粘着剤層形成時の乾燥を十分に行うか、アクリル系ポリマーの重合時間を長くするか、モノマー成分として用いる(メタ)アクリル酸の量を低減することによって、粘着剤層中に残留する(メタ)アクリル酸を低減させた場合には、粘着シートから水分によって遊離してくる(メタ)アクリル酸イオンが少なく、これに起因する、被着体である金属薄膜の腐食や抵抗値の上昇が抑制される。
【0087】
本発明の光学用粘着シートの可視光波長領域における全光線透過率(JIS K7136に準じる)は、特に限定されないが、粘着シートが用いられている光学製品や光学部材の透明性や外観に悪影響を及ぼすことを防ぐ点から、90%以上が好ましく、より好ましくは91%以上である。なお、粘着シートの全光線透過率は、例えば、スライドガラス(例えば、全光線透過率91.8%、ヘイズ0.4%のもの)に粘着シートを貼り合わせ、ヘイズメータ((株)村上色彩技術研究所製、商品名「HM−150」)を用いて測定することができる。
【0088】
本発明の光学用粘着シートのヘイズ(JIS K7136に準じる)は、特に限定されないが、粘着シートが用いられている光学製品や光学部材の透明性や外観に悪影響を及ぼすことを防ぐ点から、3%以下が好ましく、より好ましくは1%以下である。なお、粘着シートの全光線透過率は、例えば、スライドガラス(例えば、全光線透過率91.8%、ヘイズ0.4%のもの)に粘着シートを貼り合わせ、ヘイズメータ((株)村上色彩技術研究所製、商品名「HM−150」)を用いて測定することができる。
【0089】
本発明の光学用粘着シートの厚さは、特に限定されないが、10〜500μmが好ましく、より好ましくは10〜350μmである。
【0090】
なお、本発明の光学用粘着シートの粘着面は、使用時まではセパレーター(剥離ライナー)により保護されていてもよい。なお、本発明の光学用粘着シートが両面粘着シートである場合、各粘着面は2枚のセパレーターによりそれぞれ保護されていてもよいし、両面が剥離面となっているセパレーター1枚によりロール状に巻回される形態で保護されていてもよい。セパレーターは粘着剤層の保護材として用いられており、被着体に貼付する際に剥がされる。また、本発明の光学用粘着シートが基材レス粘着シートの場合には、セパレーターは粘着剤層の支持体の役割も担う。なお、本発明の光学用粘着シートにおいて、セパレーターは、必ずしも設けられていなくてもよい。
【0091】
上記セパレーターとしては、特に限定されないが、慣用の剥離紙などが挙げられる。また、剥離処理層を有するセパレーター、フッ素ポリマーからなる低接着性基材や無極性ポリマーからなる低接着性基材なども挙げられる。上記剥離処理層を有するセパレーターとしては、例えば、シリコーン系、長鎖アルキル系、フッ素系、硫化モリブデン等の剥離処理剤により表面処理されたプラスチックフィルムや紙等が挙げられる。上記フッ素ポリマーからなる低接着性基材におけるフッ素系ポリマーとしては、例えば、ポリテトラフルオロエチレン、ポリクロロトリフルオロエチレン、ポリフッ化ビニル、ポリフッ化ビニリデン、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体、クロロフルオロエチレン−フッ化ビニリデン共重合体等が挙げられる。また、上記無極性ポリマーとしては、例えば、オレフィン系樹脂(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレンなど)等が挙げられる。なお、セパレーターは公知乃至慣用の方法により形成することができる。また、セパレーターの厚さ等も特に限定されない。
【0092】
本発明の光学用粘着シートの作製方法としては、特に限定されないが、公知・慣用の方法が挙げられる。例えば、本発明の粘着剤層のみから構成される基材レスタイプの粘着シートは、上記セパレーター上に本発明の粘着剤層を形成することにより作製される。また、基材の少なくとも基材の一方の面側に本発明の粘着剤層を有する基材付きタイプの粘着シートは、上記基材上に本発明の粘着剤層を形成することや上記基材上に別途作製した本発明の粘着剤層を転写することにより作製される。
【0093】
本発明の光学用粘着シートは、上記本発明の粘着剤層を有するので、低誘電率である。このため、下記式(1)より、所望の静電容量を維持しつつ、全体の厚さを小さくすることができる。ゆえに、本発明の光学用粘着シートは、静電容量方式タッチパネルのような薄型化が求められている光学製品に好適に用いられる。
C=ε0・εs・S/L (1)
C:静電容量
ε0:真空の誘電率
εs:比誘電率
S:面積
L:厚さ
【0094】
また、本発明の光学用粘着シートは、上記本発明の粘着剤層を有するので、加湿によって白濁化することがない。このため、本発明の光学用粘着シートは、粘着シートを用いた製品の表示部の視認性や外観の悪化を抑制することができる。
【0095】
さらに、本発明の光学用粘着シートは、耐腐食性に優れる。さらにまた、被着体に対する接着性や、発泡や剥がれを生じない性質(耐発泡剥がれ性)に優れ、接着信頼性に優れる。
【0096】
本発明の光学用粘着シートは、光学部材を貼り合わせる用途や、光学製品の製造用途に使用される。このような用途に本発明の光学用粘着シートを用いると、製品の視認性や外観の妨げとなり得る上記の気泡や浮きの発生、白濁化等の現象が抑制されるため、美しい仕上がりの製品が得られる。
【0097】
本発明の光学用粘着シートは、光学製品に用いられる光学部材を貼り合わせる用途等に好ましく使用される。上記光学部材とは、光学的特性(例えば、偏光性、光屈折性、光散乱性、光反射性、光透過性、光吸収性、光回折性、旋光性、視認性など)を有する部材をいう。上記光学部材としては、光学的特性を有する部材であれば特に限定されないが、例えば、偏光板、波長板、位相差板、光学補償フィルム、輝度向上フィルム、導光板、反射フィルム、反射防止フィルム、透明導電フィルム(ITOフィルム)、意匠フィルム、装飾フィルム、表面保護板、プリズム、レンズ、カラーフィルター、透明基板や、さらにはこれらが積層されている部材(これらを総称して「光学フィルム」と称する場合がある)などが挙げられる。なお、上記の「板」及び「フィルム」は、それぞれ板状、フィルム状、シート状等の形態を含むものとし、例えば、「偏光フィルム」は、「偏光板」、「偏光シート」を含むものとする。例えば、本発明の光学用粘着シートを用いて上記光学フィルムを貼り合わせることによって、あるいは、基材レスタイプの本発明の光学用粘着シートを上記光学フィルムの少なくとも片面に貼付すること等によって、本発明の光学用粘着シートを有する光学フィルムを得ることができる。
【0098】
特に、本発明の光学用粘着シートが両面粘着シートの場合、本発明の光学用粘着シートを各種の光学フィルムの少なくとも片面に貼付、積層することにより、光学フィルムの少なくとも片面に本発明の粘着剤層を有する粘着型光学フィルム(本発明の光学用粘着シートを有する光学フィルム)を得ることができる。上記粘着型光学フィルムに用いられる本発明の光学用粘着シート(両面粘着シート)は、基材レス粘着シートであってもよいし、基材付きの粘着シートであってもよい。
【0099】
上記光学部材を構成する素材としては、特に限定されないが、例えば、アクリル樹脂(特にポリメタクリル酸メチル樹脂(PMMA))、ポリカーボネート樹脂、ポリエチレンテレフタレートなどのプラスチック材料、ガラス、金属(金属酸化物を含む)などが挙げられる。
【0100】
本発明の光学用粘着シートは、液晶表示装置、有機EL(エレクトロルミネッセンス)表示装置、PDP(プラズマディスプレイパネル)、電子ペーパーなどの表示装置(画像表示装置)の製造用途に好ましく使用される。また、本発明の光学用粘着シートは、タッチパネルなどの入力装置の製造用途にも好ましく使用される。例えば、本発明の光学用粘着シートを有する光学部材(例えば、光学フィルム)を用いて上記表示装置を製造することにより、あるいは、本発明の光学用粘着シートを用いて上記表示装置を製造すること等によって、本発明の光学用粘着シートを有する表示装置が得られる。
【0101】
本発明の光学用粘着シートは、上記の抽出(メタ)アクリル酸イオン量を特定範囲に制御した場合には、優れた耐腐食性を発揮することができ、特に金属薄膜や金属電極、CNT(カーボンナノチューブ)膜に対して貼り付ける用途に好ましく使用される。金属薄膜としては、金属、金属酸化物やこれらの混合物からなる薄膜であればよく、特に限定されないが、例えば、ITO(酸化インジウムスズ)、ZnO、SnO、CTO(酸化カドミウムスズ)の薄膜が挙げられる。金属薄膜の厚みとしては、特に限定されないが、100〜2000Åが好ましい。ITOなどの金属薄膜は、例えば、PETフィルム上に設けられ、透明導電フィルムとして使用される。上記の本発明の粘着シートを金属薄膜に対して貼り付ける際には、本発明の粘着剤層側の表面を金属薄膜に貼り付けられる側の粘着面となるようにして使用されることが好ましい。
【0102】
また、上記金属電極としては、金属、金属酸化物やこれらの混合物からなる電極であればよく、特に限定されないが、例えば、ITO、銀、銅の電極が挙げられる。
【0103】
本発明の光学用粘着シートの具体的な用途の一例として、タッチパネルの製造用途に用いる、タッチパネル用粘着シートを挙げることができる。例えば、静電容量方式のタッチパネルの製造においては、ITOなどの金属薄膜が設けられた透明導電フィルムと、ポリメタクリル酸メチル樹脂(PMMA)板、ハードコートフィルム、ガラスレンズ等とを本発明の光学用粘着シートを介して貼り合わせる等の用途に用いることができる。上記タッチパネルは、特に限定されないが、例えば、携帯電話、タブレットコンピューター、携帯情報端末などに用いられる。
【0104】
より具体的な例として、本発明の光学用粘着シートが用いられている静電容量方式タッチパネルの一例を図1に示す。図1において、1は静電容量方式タッチパネルであり、11は装飾パネルであり、12は光学用粘着シートであり、13はITOフィルムであり、14はハードコートフィルムである。装飾パネル11は、ガラス板や透明アクリル板(PMMA板)であることが好ましい。また、ITOフィルム13は、ガラス板や透明プラスチックフィルム(特にPETフィルム)にITO膜が設けられているものが好ましい。ハードコートフィルム14は、PETフィルムなどの透明プラスチックフィルムにハードコート処理が施されたものが好ましい。
【0105】
上記静電容量方式タッチパネル1は、本発明の光学用粘着シートが用いられているので、厚さを薄くすることができ、動作の安定性に優れる。また、外観や視認性が良好であり、高温環境下や高温高湿環境下であっても、白濁が生じることはない。
【実施例】
【0106】
以下に、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。なお、以下の記載及び表2中の「タケネートD110N」(固形分75重量%)の配合量は、「タケネートD110N」の固形分換算の配合量(重量部)で表した。
【0107】
(実施例1)
モノマー成分として、アクリル酸2−エチルヘキシル(2EHA)46重量部、N−ビニル−2−ピロリドン(NVP)15重量部、メタクリル酸メチル(MMA)18重量部、アクリル酸2−ヒドロキシエチル(HEA)21重量部、重合開始剤として2,2'−アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)0.2重量部、及び重合溶媒として酢酸エチル122重量部とトルエン40.7重量部を、セパラブルフラスコに投入し、窒素ガスを導入しながら1時間撹拌した。このようにして重合系内の酸素を除去した後、65℃に昇温し、10時間反応させ、その後、酢酸エチルを加えて固形分濃度36重量%のアクリル系ポリマー溶液を得た。
上記アクリル系ポリマー溶液中のアクリル系ポリマー100重量部に対して、架橋剤としてイソシアネート系架橋剤(三井化学(株)製、商品名「タケネートD110N」)0.3重量部を加え、混合し、粘着剤組成物(溶液)を調製した。
次に、上記粘着剤組成物(溶液)を、厚さ50μmのPETセパレーター(帝人デュポンフィルム(株)製、商品名「ピューレックス A43」)の剥離処理面上に、乾燥後の厚さが50μmとなるように塗布し、130℃で3分間加熱乾燥して粘着剤層を形し、粘着シート(基材レス両面粘着シート)を得た。
【0108】
(実施例2)
モノマー成分として、アクリル酸2−エチルヘキシル(2EHA)46重量部、N−ビニル−2−ピロリドン(NVP)15重量部、メタクリル酸メチル(MMA)24重量部、アクリル酸2−ヒドロキシエチル(HEA)21重量部、重合開始剤として2,2'−アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)0.2重量部、及び重合溶媒として酢酸エチル163重量部を、セパラブルフラスコに投入し、窒素ガスを導入しながら1時間撹拌した。このようにして重合系内の酸素を除去した後、65℃に昇温し、7時間反応させ、その後、酢酸エチルを加えて固形分濃度36重量%のアクリル系ポリマー溶液を得た。
上記アクリル系ポリマー溶液中のアクリル系ポリマー100重量部に対して、架橋剤としてイソシアネート系架橋剤(三井化学(株)製、商品名「タケネートD110N」)0.3重量部を加え、混合し、粘着剤組成物(溶液)を調製した。
次に、上記粘着剤組成物(溶液)より、実施例1と同様にして、粘着シート(基材レス両面粘着シート)を得た。
【0109】
(実施例3)
モノマー成分として、アクリル酸2−エチルヘキシル(2EHA)55重量部、N−ビニル−2−ピロリドン(NVP)20重量部、メタクリル酸メチル(MMA)12重量部、アクリル酸2−ヒドロキシエチル(HEA)13重量部、重合開始剤として2,2'−アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)0.2重量部、及び重合溶媒として酢酸エチル122重量部とトルエン40.7重量部を、セパラブルフラスコに投入し、窒素ガスを導入しながら1時間撹拌した。このようにして重合系内の酸素を除去した後、65℃に昇温し、10時間反応させ、その後、酢酸エチルを加えて固形分濃度36重量%のアクリル系ポリマー溶液を得た。
上記アクリル系ポリマー溶液中のアクリル系ポリマー100重量部に対して、架橋剤としてイソシアネート系架橋剤(三井化学(株)製、商品名「タケネートD110N」)0.3重量部を加え、混合し、粘着剤組成物(溶液)を調製した。
次に、上記粘着剤組成物(溶液)より、実施例1と同様にして、粘着シート(基材レス両面粘着シート)を得た。
【0110】
(実施例4)
モノマー成分として、アクリル酸2−エチルヘキシル(2EHA)52重量部、N−ビニル−2−ピロリドン(NVP)20重量部、メタクリル酸メチル(MMA)15重量部、アクリル酸2−ヒドロキシエチル(HEA)13重量部、重合開始剤として2,2'−アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)0.2重量部、及び重合溶媒として酢酸エチル122重量部とトルエン40.7重量部を、セパラブルフラスコに投入し、窒素ガスを導入しながら1時間撹拌した。このようにして重合系内の酸素を除去した後、65℃に昇温し、10時間反応させ、その後、酢酸エチルを加えて固形分濃度36重量%のアクリル系ポリマー溶液を得た。
上記アクリル系ポリマー溶液中のアクリル系ポリマー100重量部に対して、架橋剤としてイソシアネート系架橋剤(三井化学(株)製、商品名「タケネートD110N」)0.3重量部を加え、混合し、粘着剤組成物(溶液)を調製した。
次に、上記粘着剤組成物(溶液)より、実施例1と同様にして、粘着シート(基材レス両面粘着シート)を得た。
【0111】
(比較例1)
モノマー成分として、アクリル酸ブチル(BA)42重量部、アクリル酸エチル(EA)13重量部、メタクリル酸メチル(MMA)15重量部、アクリル酸4−ヒドロキシブチル(4HBA)30重量部、重合開始剤として2,2'−アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)0.2重量部、及び重合溶媒として酢酸エチル70重量部とトルエン75重量部を、セパラブルフラスコに投入し、窒素ガスを導入しながら1時間撹拌した。このようにして重合系内の酸素を除去した後、65℃に昇温し、10時間反応させ、その後、酢酸エチルを加えて固形分濃度36重量%のアクリル系ポリマー溶液を得た。
上記アクリル系ポリマー溶液中のアクリル系ポリマー100重量部に対して、架橋剤としてイソシアネート系架橋剤(三井化学(株)製、商品名「タケネートD110N」)0.3重量部を加え、混合し、粘着剤組成物(溶液)を調製した。
次に、上記粘着剤組成物(溶液)より、実施例1と同様にして、粘着シート(基材レス両面粘着シート)を得た。
【0112】
(比較例2)
モノマー成分として、アクリル酸2−エチルヘキシル(2EHA)27重量部、アクリル酸エチル(EA)23重量部、メタクリル酸メチル(MMA)15重量部、アクリル酸4−ヒドロキシブチル(4HBA)35重量部、重合開始剤として2,2'−アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)0.2重量部、及び重合溶媒として酢酸エチル70重量部とトルエン75重量部を、セパラブルフラスコに投入し、窒素ガスを導入しながら1時間撹拌した。このようにして重合系内の酸素を除去した後、65℃に昇温し、10時間反応させ、その後、酢酸エチルを加えて固形分濃度36重量%のアクリル系ポリマー溶液を得た。
上記アクリル系ポリマー溶液中のアクリル系ポリマー100重量部に対して、架橋剤としてイソシアネート系架橋剤(三井化学(株)製、商品名「タケネートD110N」)0.3重量部を加え、混合し、粘着剤組成物(溶液)を調製した。
次に、上記粘着剤組成物(溶液)より、実施例1と同様にして、粘着シート(基材レス両面粘着シート)を得た。
【0113】
(比較例3)
モノマー成分として、アクリル酸ブチル(BA)45重量部、アクリル酸エチル(EA)15重量部、メタクリル酸メチル(MMA)15重量部、アクリル酸4−ヒドロキシブチル(4HBA)25重量部、重合開始剤として2,2'−アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)0.2重量部、及び重合溶媒として酢酸エチル95重量部とトルエン50重量部を、セパラブルフラスコに投入し、窒素ガスを導入しながら1時間撹拌した。このようにして重合系内の酸素を除去した後、65℃に昇温し、10時間反応させ、その後、酢酸エチルを加えて固形分濃度36重量%のアクリル系ポリマー溶液を得た。
上記アクリル系ポリマー溶液中のアクリル系ポリマー100重量部に対して、架橋剤としてイソシアネート系架橋剤(三井化学(株)製、商品名「タケネートD110N」)0.3重量部を加え、混合し、粘着剤組成物(溶液)を調製した。
次に、上記粘着剤組成物(溶液)より、実施例1と同様にして、粘着シート(基材レス両面粘着シート)を得た。
【0114】
(比較例4)
アクリル酸ブチル(BA)67重量部、アクリル酸シクロヘキシル(CHA)14重量部、アクリル酸4−ヒドロキシブチル(4HBA)27重量部、アクリル酸2−ヒドロキシエチル(HEA)9重量部、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニル−1−オン(商品名「イルガキュア651」、BASFジャパン社製)0.05重量部及び1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン(商品名「イルガキュア184」、BASFジャパン社製)0.05重量部を4つ口フラスコに投入し、窒素雰囲気下で紫外線に曝露して部分的に光重合することによって、重合率10%の部分重合物(モノマーシロップ)を得た。
この部分重合物100重量部に、イソシアネート化合物(商品名「コロネートL」、日本ポリウレタン工業社製、固形分75重量%)を固形分換算で0.1重量部添加した後、これらを均一に混合して光重合性組成物を得た。
この光重合性組成物を、剥離ライナー(セパレーター)(商品名「MRF38」、三菱樹脂社製、ポリエチレンテレフタレートフィルムの片面に剥離処理が施されているタイプ、厚さ:38μm)の剥離処理面上に塗布して塗布層を形成してから、該塗布層上にも同様の剥離ライナーを設けた。
次に、ブラックライトにより強度が5mW/cm2の紫外線を照射して、光量で3600mJ/cm2照射されるまで重合を行い、粘着シート(基材レス両面粘着シート、粘着剤層の厚さ:175μm)を作製した。
【0115】
実施例及び比較例で得られた粘着シートについて、下記の測定又は評価を行った。その結果を表1に示した。
【0116】
(1)比誘電率
粘着剤層の周波数100kHzでの比誘電率を、JIS K 6911に準じて、下記条件で測定した。
測定方法:容量法(装置:Agilent Technologies 4294A Precision Impedance Analyzer使用)
電極構成:12.1mmΦ、0.5mm厚みのアルミ板
対向電極:3oz 銅板
測定環境:23±1℃、52±1%RH
【0117】
(2)水分率
実施例および比較例で得られた両面粘着シートを、幅1cm×長さ2cm(面積:2cm2)のサイズに切り出した。次に、剥離ライナーを剥離し、一方の粘着面にアルミホイルを貼付し、他方の粘着面は開放状態として試験片(「粘着剤層/アルミニウム箔」の構成を有する)を作製した。なお、上記試験片に貼り付けたアルミニウム箔の重量は、粘着シートに貼付する前にあらかじめ測定しておいた。
庫内の条件を60℃、95%RHに調節した恒温恒湿機に上記試験片を入れ、120時間保存した。その後、恒温恒湿機から試験片を取り出し、試験片の重量を測定した。次いで、上記試験片を下記の加熱気化装置に入れ、150℃で10分間加熱した時に発生したガスを下記の電量滴定式水分測定装置の滴定セル内に導入し、上記ガス中の水分量(μg)を測定して、60℃、95%RHの環境下に120時間保存後の粘着剤層中の水分量(μg)を測定した。そして、下記式により60℃、95%RHの環境下で120時間保存した後の粘着剤層の水分率(重量%)を算出した。なお、測定回数(n数)は2回とし、平均値を算出した。
「粘着剤層の水分率(重量%)」=「60℃、95%RHの環境下に120時間保存後の粘着剤層中の水分量(μg)」/(「60℃、95%RHの環境下に120時間保存後の試験片の重量(μg)」−「アルミニウム箔の重量(μg)」)×100
(分析装置)
電量滴定式水分測定装置:三菱化学(株)製、「CA−06型」
加熱気化装置:三菱化学(株)製、「VA−06型」
(測定条件)
方法:加熱気化法/150℃加熱
陽極液:アクアミクロンAKX
陰極液:アクアミクロンCXU
【0118】
(3)全光線透過率、ヘイズ
実施例および比較例で得られた両面粘着シートの剥離ライナーを剥離し、一方の粘着面にガラス板(スライドグラス、品番「S−1111」、松浪硝子工業社、厚さ1.3mm、ヘイズ0.1%、水縁磨)を貼付し、他方の粘着面は開放状態として試験片(「粘着剤層/ガラス板」の構成を有する)を作製した。
上記試験片について、ヘイズメータ(装置名「HM−150」、村上色彩技術研究所製)により、全光線透過率及びヘイズを測定した。なお、ヘイズ(%)は、「拡散透過率/全光線透過率×100」の式により求めた。
【0119】
(4)抽出(メタ)アクリル酸イオン量
実施例及び比較例で得られた両面粘着シートの一方の粘着面にPETフィルム(東レ(株)製、「ルミラー S10」、厚さ25μm)を貼付した後、サイズ:幅10cm×長さ10cmのシート片を切り出した。その後、剥離ライナーを剥離し、片面の粘着面だけを露出させた試験片を作製した(粘着面の露出面積:100cm2)。
次いで、上記試験片を、温度100℃の純水(50ml)中に入れ、45分間煮沸し、煮沸抽出を行い、抽出液を得た。
次いで、イオンクロマトグラフ法(イオンクロマトグラフィー)により、上記で得られた抽出液中のアクリル酸イオン及びメタクリル酸イオンの合計量(単位:ng)を測定し、試料の粘着面(露出した粘着面)の単位面積あたりのアクリル酸イオン及びメタクリル酸イオンの合計量(抽出(メタ)アクリル酸イオン量、単位:ng/cm2)を算出した。なお、抽出(メタ)アクリル酸イオンが検出限界未満(検出限界:2.5ng)であった場合には、表1において「ND」と記載した。
[イオンクロマトグラフ法の測定条件]
分析装置 : DIONEX社製、DX−320
分離カラム : Ion Pac AS15(4mm×250mm)
ガードカラム : Ion Pac AG15(4mm×50mm)
除去システム : ASRS−ULTRA(エクスターナルモード、100mA)
検出器 : 電気伝導度検出器
溶離液 : 7mM KOH(0〜20分)
45mM KOH(20〜30分)
(溶離液ジェネレーターEG40を使用)
溶離液流量 : 1.0ml/分
試料注入量 : 250μl
【0120】
(5)加湿濁り性(加湿による白濁化の有無)
実施例、比較例で得られた両面粘着シートから剥離ライナーを剥離し、該両面粘着シートの一方の粘着面をガラス板(スライドグラス、品番「S−1111」、松浪硝子工業社、厚さ1.3mm、ヘイズ0.1%、水縁磨)に貼り付け、他方の粘着面を導電性PETフィルム(日東電工(株)製、商品名「エレクリスタ V270L−THMP」)のITO膜形成面に貼り付けて、「スライドガラス/両面粘着シート(粘着剤層)/導電性PETフィルム」の構成を有する試験片を作製した。上記試験片のヘイズを、23℃、50%RHの環境下において、ヘイズメータ((株)村上色彩技術研究所製、商品名「HM−150」)を用いて測定し、これを「初期のヘイズ」とした。
次いで、上記試験片を60℃、95%RHの環境下(湿熱環境下)に120時間保存した。その後、上記試験片を23℃、50%RHの環境下に取り出し、取り出した直後のヘイズ(「ヘイズ(直後)」と称する)、23℃、50%RHの環境下に取り出してから30分後のヘイズ(「ヘイズ(30分後)」と称する)、23℃、50%RHの環境下に取り出してから1時間後のヘイズ(「ヘイズ(1時間後)」と称する)、及び23℃、50%RHの環境下に取り出してから2時間後のヘイズ(「ヘイズ(2時間後)」と称する)を測定した。そして、「初期のヘイズ」に対する「ヘイズ(直後)」の上昇幅[=(ヘイズ(直後))−(初期のヘイズ)]、「初期のヘイズ」に対する「ヘイズ(30分後)」の上昇幅[=(ヘイズ(30分後))−(初期のヘイズ)]、「初期のヘイズ」に対する「ヘイズ(1時間後)」の上昇幅[=(ヘイズ(1時間後))−(初期のヘイズ)]、及び「初期のヘイズ」に対する「ヘイズ(2時間後)」の上昇幅[=(ヘイズ(2時間後))−(初期のヘイズ)]をそれぞれ算出し、いずれも5.0%(%ポイント)未満であった場合を○(加湿による白濁化なし)、いずれかが5.0%(%ポイント)以上であった場合を×(加湿による白濁化あり)として判定した。結果は表1の「加湿濁り性」の欄に示した。
【0121】
(6)耐腐食性(ITO抵抗値変化)
実施例、比較例で得られた両面粘着シートの一方の粘着面に、PETフィルム(東レ(株)製、商品名「ルミラー S−10 #25」、厚さ25μm)を貼り合わせ、幅20mm×長さ50mmのサイズに切り出し、試験片とした。
図2及び図3に示すように、導電性PETフィルム22(日東電工(株)製、商品名「エレクリスタ P−400L TNMP」)(サイズ:長さ70mm×幅25mm)の両端部に15mm幅で銀ペーストを塗布し、その導電面(ITO膜形成面22a側)に剥離ライナーを剥離した上記試験片21の粘着面を貼り合わせ、積層体(試験片21と導電性PETフィルム22との積層体)(抵抗値測定サンプル)を作製した。これを、23℃の環境下で24時間放置した後、60℃、95%RHと80℃のそれぞれの環境下で250時間放置し、「貼付直後の抵抗値」に対する「60℃95%RH、250時間放置後の抵抗値」の割合(%)[=(60℃95%RH、250時間放置後の抵抗値)/(貼付直後の抵抗値)×100(%)]、及び、「貼付直後の抵抗値」に対する「80℃、250時間放置後の抵抗値」の割合(%)[=(80℃、250時間放置後の抵抗値)/(貼付直後の抵抗値)×100(%)]をそれぞれ測定した。なお、上記の抵抗値は、日置電気(株)製「3540 ミリオームハイテスタ」を用いて、上記積層体の両端の銀ペースト部分22bに電極をつけて測定した。
「貼付直後の抵抗値」に対する「60℃95%RH、250時間放置後の抵抗値」の割合、及び、「貼付直後の抵抗値」に対する「80℃、250時間放置後の抵抗値」の割合が共に120%未満であれば耐腐食性「良好」、いずれか一方でも120%以上であれば耐腐食性「不良」と判断した。結果は表1における「耐腐食性」の欄に示した。
なお、ブランクとして粘着シートを貼付しない導電性PETフィルムのみで同様の試験を行った結果、「250時間放置前の抵抗値」に対する「250時間放置後の抵抗値」の割合は、80℃の条件では110%、60℃、95%RHの条件では120%であった。
【0122】
【表1】

【符号の説明】
【0123】
1 静電容量方式タッチパネル
11 装飾パネル
12 光学用粘着シート
13 ITOフィルム
14 ハードコートフィルム
21 試験片
21a PETフィルム
21b 粘着シート(両面粘着シート)
22 導電性PETフィルム
22a 導電性PETフィルムのITO膜形成面
22b 導電性PETフィルムの銀ペースト塗布部分

【特許請求の範囲】
【請求項1】
周波数100kHzの比誘電率が4以下であり、且つ60℃、95%RHの環境下に120時間保存した後の水分率が0.65重量%以上である粘着剤層を少なくとも有することを特徴とする光学用粘着シート。
【請求項2】
全光線透過率が90%以上であり、ヘイズが3%以下である請求項1記載の光学用粘着シート。
【請求項3】
前記粘着剤層が、炭素数6〜10の直鎖又は分岐鎖状のアルキル基を有するアクリル酸アルキルエステル、炭素数1〜10の直鎖又は分岐鎖状のアルキル基を有するメタクリル酸アルキルエステル、脂環式炭化水素基を有する(メタ)アクリル酸エステル及び窒素含有モノマーからなる群より選ばれる1以上のモノマー成分から構成されており、該モノマー成分の割合がアクリル系ポリマーを構成するモノマー成分全量(100重量%)に対して60重量%以上であるアクリル系ポリマーを含むアクリル系粘着剤層である請求項1又は2記載の光学用粘着シート。
【請求項4】
前記脂環式炭化水素基を有する(メタ)アクリル酸エステルが、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸イソボルニルからなる群より選ばれる少なくとも1のモノマーである請求項3記載の光学用粘着シート。
【請求項5】
前記窒素含有モノマーが、(メタ)アクリロイルモルホリン、N−ビニルピロリドンからなる群より選ばれる少なくとも1のモノマーである請求項3又は4記載の光学用粘着シート。
【請求項6】
イオンクロマトグラフ法で測定される、純水で100℃、45分の条件で抽出されたアクリル酸イオン及びメタクリル酸イオンの合計量が、前記粘着剤層の単位面積あたり300ng/cm2以下である請求項1〜5の何れかの項に記載の光学用粘着シート。
【請求項7】
周波数100kHzの比誘電率が4以下である粘着剤層を少なくとも有し、イオンクロマトグラフ法で測定される、純水で100℃、45分の条件で抽出されたアクリル酸イオン及びメタクリル酸イオンの合計量が、前記粘着剤層の単位面積あたり300ng/cm2以下であることを特徴とする光学用粘着シート。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−173354(P2012−173354A)
【公開日】平成24年9月10日(2012.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−32493(P2011−32493)
【出願日】平成23年2月17日(2011.2.17)
【出願人】(000003964)日東電工株式会社 (5,557)
【Fターム(参考)】