説明

光学素子、撮影光学系及びカメラモジュール

【課題】大きな角度で入射して撮影に用いられることがない有害光が入射してもゴーストやフレアが発生しないようにする。
【解決手段】第二レンズ21の外周面30を、撮影光軸Pを中心とする円柱面30aと、撮影光軸Pに対して傾斜した非平行面30bとから構成する。第二レンズ21の像面側の面の有効径エリア内の外周部に、物体に向かって凸になった曲面Sがあるとき、この曲面Sで内面反射した有害光Wは非平行面30bに入射する。非平行面30bは、入射した有害光Wが小さい角度で入射するように傾斜している。非平行面30bで正反射に近い角度で内面反射した有害光Wは、第二レンズ21の有効径エリアの曲面で内面全反射して撮像素子8には向かわなくなり、ゴーストやフレアの発生が抑えられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レンズやフィルタなどの光学素子、この光学素子を一部に用いた撮影光学系及び、この撮影光学系をレンズ鏡筒に組み込んだレンズユニットと固体撮像素子を保持した撮像ユニットとを一体的に組み合わせたカメラモジュールに関するものである。
【背景技術】
【0002】
デジタルカメラはCCD型やCMOS型の撮像素子とこの撮像素子の撮像面上に被写体の光学画像を結像する撮影光学系とを備えている。撮像素子はその駆動用あるいは撮像信号処理用のICチップなどとともに回路基板に実装した撮像ユニットとして構成され、また撮影光学系は撮影レンズを鏡筒に組み込んだレンズユニットとして構成されるのが通常で、一般のデジタルカメラでは撮像ユニットとレンズユニットとはカメラ筐体にそれぞれ組み付けられる。一方、デジタルカメラは携帯電話機やPDAなどの携帯機器にも広く内蔵され、このような内蔵型のデジタルカメラにはコンパクト化が要求される。そして、このような内蔵型のデジタルカメラにあっては、レンズユニットと撮像ユニットとを互いに連結してモジュール化し、このカメラモジュールを携帯機器の本体ケースの所要部に組み込むようにしている。
【0003】
最近では、上述したカメラモジュール型のデジタルカメラに対してさらなるコンパクト化、高画質化が要求されている。高画質化のためには、単に撮像素子の画素数を増やすだけでなく、これに応じて撮影光学系の光学性能を高めなくてはならず、同時にフレアやゴーストなどによる画質の低下を防ぐことも不可欠となっている。フレアやゴーストを低減させるには、撮影光学系を構成する一部のレンズの有効径外、あるいはレンズの外周面に有害光が入射したときに、そこでの内部反射を抑えて撮像素子の有効画面エリアに達することがないように、一般にはコバ面と称されるレンズの外周面に墨塗りして内面反射を抑えることが行われており、そのほかにも所要部に粗面や凹凸を形成し、さらには遮光板を設けるなどの手法が特許文献1、特許文献2で知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−175992号公報
【特許文献2】特開2005−309289号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、撮影光学系を構成しているレンズの有効径外あるいはコバ面に内面側から有害光が入射したとき、その入射面に墨塗りし、あるいは粗面化処理しておいたとしても、有害光の入射角が小さくしかも十分な強度をもっている場合には、その正反射光を実用上問題のない程度まで減衰させることは難しく、ある程度の強度を保ったまま反射して撮影光学系内に戻されることがある。
【0006】
図8はその一例を示すもので、破線で示す有害光Wは撮影に有効な撮影光Gよりも大きな入射角をもって開口絞り2を通って第一レンズ3に入射する。第一レンズ3に大きな入射角をもって入射した有害光Wは第二レンズ4の周辺に向かい、特にその部分で物体側に凸面を向けた第二レンズ4の像面側の面で内面全反射され、強度をほとんど減衰させることなく第二レンズ4の外周面4aに向けられる。なお、撮影光Gは第一レンズ3への入射角が有害光Wよりも小さく設定されているため、図示のように第一レンズ3の周辺部分から入射しても問題なく撮像素子8に入射することになる。
【0007】
上記のように外周面4aに向かう有害光Wは、外周面4aに小さな角度で入射することになるため、外周面4aが粗面化処理や墨塗り処理によってその反射率が十分に低く抑えられていたとしても、正反射に近い角度範囲の有害光はある程度の強度をもって再び第二レンズ4へと内面反射される。また、第二レンズ4にプラスチック製の成形レンズを用いたり、加熱したガラス製のプリフォームをプレス成形した成形レンズを用いたりする際には、ローコスト化のために外周面4aへの粗面化処理や墨塗り処理を省略することも少なくない。こうした場合、外周面4aに入射した有害光の多くは透過してレンズ鏡筒で吸収されるものの、外周面4aで正反射され第二レンズ4の内部に向かう有害光は未だ十分な強度をもっている。こうした有害光Wが第二レンズ4の物体側の面に入射すると、その面が特に物体側に凹面を向けているときには、図示のように像面側に向けて全反射され第三レンズ5に小さな角度で入射する。そして、そのまま第四レンズ6、赤外光カット用のフィルタ7を通って撮像素子8に向かい、ゴーストやフレアを生じさせる原因になる。
【0008】
本発明は以上のような弊害を考慮してなされたもので、特に、レンズの外周面に入射したときの有害光の強度が大きく、その正反射に近い角度で反射された有害光が十分に減衰せずに撮影光学系内に再入射した場合であっても、こうした有害光が有効光束とともに撮像素子まで達することがないようにした光学素子、撮影光学系及びカメラモジュールを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は上記目的を達成するにあたり、撮影光学系中で用いられるレンズあるいはフィルタなどの光学素子に、物体側の面から入射して像面側の面の前記有効径エリアで反射して外周面に向かい、その外周面で反射した有害光が像面に入射しないように、前記外周面の厚み方向の少なくとも一部、または周方向の少なくとも一部に撮影光軸に対して傾斜した非平行面を形成したものである。
【0010】
前記非平行面は前記外周面の厚み方向の全域にわたって形成することも可能であるが、レンズ鏡筒への組み込みを考慮するなら、厚み方向の2/3以下の幅で形成して残りの部分は撮影光軸を中心とする円柱面にしておくことが好ましい。また、周方向については、太陽光や照明光などの有害光が入射しやすい部分に選択的に形成することも可能であるが、光学素子の全周にわたって非平行面を設けてもよい。非平行面は、撮影光軸に対して一定の角度で傾いた傾斜面のみならず、撮影光軸を含む縦断面に関して連続的に傾きが変化する曲線で表される曲面形状であってもよい。さらに、光学素子を例えばプラスチックの二色成形品あるいは多色成形品で構成する場合では、異色成形の境界面が有効径外エリアに収めるように成形することにより、この境界面を撮影光軸に対して傾斜した非平行面として用いることが可能となり、外周面については撮影光軸を中心とする円柱面にしておくこともできる。
【0011】
本発明の光学素子は、物体側から大きな角度で入射してくる有害光に対して効果的であり、したがって結像面近くで用いるよりも物体側に近い二枚目または三枚目のレンズとして利用するのが有利である。さらに、像面側の面の有効径エリア内の少なくとも一部に物体側に凸面となる形状をもつレンズ面を有する光学素子に本発明はより効果的に用いることができる。なお、携帯電話機のような携帯機器に内蔵されるカメラモジュールとしては、そのコンパクト化や薄型化のためにレンズの枚数をあまり多くすることは難しいので、フィルタなどの光学素子を含めた全体のレンズ枚数としては多くても6〜7枚程度に抑えておくのが好ましい。
【0012】
本発明はまた、上記光学素子を含む撮影光学系としても適用可能で、物体側から順に配置された絞り、第一レンズ、第二レンズ、第三レンズを含む撮影光学系にあっては、第二レンズまたは第三レンズとして上記光学素子を好適に用いることができる。さらに、この撮影光学系が組み込まれたレンズ鏡筒の後端に、固体撮像素子を保持した撮像ユニットを一体化したカメラモジュールの形態でも本発明は適用可能である。
【発明の効果】
【0013】
本発明の適用により、撮影に寄与する光線よりも大きな角度で入射してくる有害光が外周面に入射してそこで内面反射されるときに、反射される有害光の反射の方向が非平行面によって変えられるため、撮像素子に向かうことがなくなる。この結果、たとえ外周面に粗面化処理や墨塗り処理のような低反射処理を施さない場合であっても、外周面で内面反射された有害光によるゴーストやフレアを、実用上問題にならない程度にまで低減させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の一実施形態を示す要部断面図である。
【図2】本発明を用いたレンズの部分破断斜視図である。
【図3】本発明の別の実施形態を示す正面図及び断面図である。
【図4】本発明のさらに別の実施形態を示す要部断面図である。
【図5】本発明の他の実施形態を示す要部断面図である。
【図6】第三レンズに本発明を用いた場合の第一実施形態を示す要部断面図である。
【図7】第三レンズに本発明を用いた場合の別の実施形態を示す要部断面図である。
【図8】従来のカメラモジュールの要部断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1に示すように、本発明を用いた携帯電話機用のカメラモジュール10は、レンズユニット12と撮像ユニット14とを組み合わせて構成され、両者は精密な位置決めの後に光硬化性の接着剤などを用いて一体に連結されている。撮像ユニット14は、ホルダ15にフィルタ7及び、撮像素子8を実装した回路基板16を組み込んで構成され、フィルタ7には紫外線や赤外線をカットする波長選択性フィルタや、オプティカルローパスフィルタなどが用いられる。回路基板16には撮像素子8の駆動用ICや画像信号処理用のICなどを実装することも可能で、回路基板16はさらにコネクタやフレキシブル配線板などを介して適宜の処理回路に接続される。
【0016】
レンズユニット12は、レンズ鏡筒18に物体側から順に第一レンズ20、第二レンズ21、第三レンズ22、第四レンズ23を組み込むとともに、第一レンズ20の前面側に開口絞り24を設けたもので、この開口絞り24はレンズ鏡筒18に組み付けられたアクチュエータ25を作動させることにより開口径を変えることができるようにしてある。アクチュエータ25は、撮像素子8から得られる撮像信号の輝度レベルに応じてフィードバック制御され、これによりAE制御ができるようにしてある。なお、開口絞り24を固定絞りとし、撮像信号をその輝度レベルに応じてゲイン調節し、あるいは撮像素子8の電荷蓄積時間を制御する方式でAE制御を行うことも可能である。
【0017】
また、図示の例ではレンズユニット12の小型化及びローコスト化のために、第一〜第四レンズ20〜23は全てレンズ鏡筒18に固定され、パンフォーカス型の撮影光学系を構成している。これらのレンズは、第一レンズ20から順にレンズ鏡筒18の後端側から組み込まれ、最後に押え環27を嵌めることによりこれらのレンズはレンズ鏡筒18に固定される。なお、撮像信号から画素ごとに得られるコントラスト情報を監視しながら一部のレンズをボイスコイルモータなどで移動させることにより、インナーフォーカス方式やリアフォーカス方式のオートフォーカス機能をもたせることも可能である。
【0018】
第二レンズ21は透明なプラスチック材を用いて一体成形した成形レンズで構成され、図2に示すように、物体側の面に、物体側に凹面を向けた有効径エリア21aと、その周囲を囲む有効径外エリア21bとを有し、同様に像面側の面に非球面で形成された有効径エリア21cと、その周囲を囲む有効径外エリア21dとが形成されている。有効径エリア21a,21cは、それぞれ撮影に寄与する有効光束を通過させる。また、有効径外エリア21b,21dの表面は金型の転写面によって撮影光軸Pに直交する鏡面に成形されているが、撮影に寄与する有効光束は通過しない。
【0019】
第二レンズ21の外周面30は、撮影光軸Pを中心とする円柱面30aと、像面側に外径が大きくなるように傾斜して撮影光軸Pに対して傾きをもった非平行面30bとからなり、第二レンズ21の厚み方向に関して円柱面30aは物体側に、非平行面30bは像面側に形成されている。これらの円柱面30aと非平行面30bからなる外周面30も金型の転写により形成された面であり、製造コストを抑えるためにこの外周面30への粗面化処理や墨処理は省略されている。この実施形態では、外周面30の撮影光軸P方向(厚み方向)の幅Dに対し、非平行面30bの幅tは略1/2にしている。これにより幅Dの1/2が撮影光軸Pと平行な円柱面30aとなるから、図1に示すように、レンズ鏡筒18の内壁に非平行面30bに対応した傾斜面を設けることなく、通常の円筒状の内壁に円柱面30aを摺接させながら第二レンズ21の組み込み及び芯出しをすることができる。
【0020】
なお、このような組み込みのためには、円柱面30aの幅は1/3以上あれば問題がないので、非平行面30bの幅tは(2/3)D以下にしておくことが望ましい。もちろん、レンズ鏡筒18の内壁に精度よく傾斜面を形成するのであれば、幅D全体を非平行面にすることも可能である。また、撮影光軸Pに対する非平行面30bの傾斜角θは、5°〜40°程度であることが好ましく、さらには5°〜20°程度であることが好ましい。傾斜角θが5°未満になると、内面反射した有害光の向きを変えるには不十分になりやすく、傾斜角θが40°を越えると非平行面30bの幅tをD/3〜D/2程度確保しようとしたとき、像面側の非有効径エリア21dが広がって第二レンズ21の全体の外径が大きくなる難点がある。そして、非平行面30bの幅tを実用的に好ましいD/2程度に設定し、同時に像面側の非有効径エリア21dを広げ過ぎないためには、傾斜角θを20°以下に抑えることが望ましい。
【0021】
第二レンズ21の像面側の有効径エリア21cには、特にその周辺部に物体側に凸状曲面Sを向けた非球面となっている。光学設計上、この非球面は中央部で物体側に凹面を向けた形状にしてあるが、第二レンズ21に大きな角度で入射して周辺部で内面全反射した光線が外周面30側に向かう形状であれば、全体的に物体側に凸面を向けた形状であっても本実施形態は適用が可能である。なお、第一レンズ20〜第四レンズ23の各々の物体側,像面側の結像性能上あるいは収差補正上の面形状については、光学設計により適宜に決めればよい。
【0022】
上記構成による作用について説明する。第一レンズ20には物体側から様々な角度で光線が入射するが、図1に示すように、ゴーストやフレアの原因となる有害光Wのほとんどは撮影に寄与する光線よりも大きな角度で第一レンズ20に入射する。こうした有害光Wは第一レンズ20を経て第二レンズ21の有効径エリア内の周辺部に向かい、そこに形成された凸状曲面Sに大きな角度で入射する。このため、有害光Wはこの凸状曲面Sで内面全反射して外周面30に形成された非平行面30bに入射する。
【0023】
非平行面30bは物体側に向かって外径が小さくなる方向に傾斜しているため、凸状曲面Sで反射された有害光Sは相対的に小さな入射角で非平行面30bに入射する。有害光Wの多くは非平行面30bを透過してレンズ鏡筒18の内壁に達するが、反射率が低く抑えられているレンズ鏡筒18の内壁でほとんどが吸収される。
【0024】
また、非平行面30bに入射した有害光Wの一部はほぼ正反射に近い角度で内面反射されるが、非平行面30bは像面側で撮影光軸Pから遠ざかる方向に傾斜がつけられていることから、非平行面30bに対する入射角は相対的に小さくなり、有害光Wは第二レンズ21の反対側の外周面30に向けられ、像面(撮像素子8の光電面と等価)に入射することはない。また、ここで内面反射した有害光が第二レンズ21の物体側あるいは像面側の有効径エリアに入射したとしても、その入射角が大きいため内面全反射してやはり第二レンズ21の反対側の外周面30に向かい、撮像素子8に入射することはない。こうして外周面30に2度入射した時点で有害光はその強度が問題のない程度まで減衰され、外周面30に粗面化処理や墨塗り処理を施さなくてもゴーストやフレアを大幅に低減することができる。
【0025】
また、図示した有害光Wとは多少異なった角度で入射した有害光も、凸状曲面Sで内面全反射すると非平行面30bには小さな角度で入射することに変わりがないため、非平行面30bから正反射に近い角度で反射される有害光は第二レンズ21の反対側の外周面30に向けられ、像面に入射することはない。したがって、物体側あるいは像面側における有効径エリアまたは有効径外エリアのいずれかに有害光が入射しても、その入射角は大きくなるからそこで内面全反射して反対側の外周面に向けられ、像面に向かうことはない。
【0026】
図1に示す実施形態では、第二レンズ21の全周にわたって非平行面30bを設けてあるが、特に強度のある有害光は太陽光や照明光であることが多く、これらの光源は撮影光学系に対して上方から入射するのがほとんどである。したがって、図3に示すように、第二レンズ21の下方の一部に非平行面33を形成しておいてもよい。この非平行面33は、撮影光軸Pを中心とする円柱面として作られた外周面34について、その下側だけを部分的に斜めに切除した形となっているが、これは第二レンズ21をプラスチック成形するときに用いる金型の形状だけで対応することももちろん可能である。
【0027】
先の実施形態では、非平行面30bを第二レンズ21の像面側の面から物体側の面に向かって厚み方向の1/2の幅で形成しているが、図4に示す実施形態では、第二レンズ21の物体側の面から像面側の面に向かって厚みの2/3程度の幅で形成している。なお、撮像素子8については×印を付して結像面のみを示す。この実施形態は、先の実施形態と比較して有害光Wの入射角が小さく、第二レンズ21の像面側の面で内面全反射する有害光Wが、第二レンズ21の物体側の面に寄った位置で外周面に達する場合に有効である。この実施形態においても、外周面に円柱面30aを残しておくことによって、先の実施形態と同様に、レンズ鏡筒の内壁に傾斜面を設けなくても従来のように円柱面30aを利用して第二レンズ21の芯出しを行うことができる。
【0028】
図5は第二レンズ21をプラスチックの二色成形品あるいはインサート成形品で製造するときに有効な実施形態を示すものである。第二レンズ21は、有効径エリアとその外周を囲む有効径外エリアの一部までを含むメインレンズ部21aと、このメインレンズ部21aの外周を取り囲む円環部21bとから構成され、例えば円環部21bはメインレンズ部21aとは異なるプラスチック材料で成形される。メインレンズ部21aと円環部21bとの境界面Kは図示のように撮影光軸Pに対して傾けられ、この境界面Kがこれまでの実施形態にいう非平行面30bとして作用する。円環部21bの外周面(円柱面)がそのまま第二レンズ21の外周面となるから、レンズ鏡筒18への組み込みはこれまでと同様に簡便に行うことができる。この実施形態は、必要に応じて第二レンズ21を二色以上の多色成形で作るときに等しく適用可能である。
【0029】
図6及び図7に示す実施形態では、第三レンズ22の外周面に非平行面30bが設けられている。第三レンズ22の像面側の面における有効エリアの外周部には、やはり物体側に凸面を向けた曲面Sが設けられている。したがって、いずれの実施形態にあっても、大きな角度をもって入射してきた有害光Wは曲面Sに大きな角度で入射しやすくなり、第三レンズ22の外周面に向かって内面全反射しやすくなる。そこで、図6に示すように第三レンズ22の外周面全体を撮影光軸Pに対して傾けた非平行面30bにしておけばよい。また、非平行面30bは必ずしも光軸と平行な断面に関して直線になるものだけでなく、図7に示すように曲面にすることも可能である。この非平行面30bは、撮影光軸Pを含む縦断面に関して傾きが連続的に変化する曲線で表される面として捉えることができ、その曲面の向きとしては、有害光を拡散させることを考慮すれば撮影光軸Pに凹面を向けた形状であることが好ましい。図6あるいは図7に示す非平行面30bは第三レンズ23の周方向全体に形成されているが、図3に示すように、周方向については部分的に形成することももちろん可能である。
【0030】
以上、図示した実施形態について説明してきたが、本発明は撮影光学系の光学設計上のレンズ構成や諸元によらず実施可能である。これまでの実施形態からわかるように、大きな角度をもって第一レンズに入射する有害光は、物体側に近い第二レンズや第三レンズの像面側に、特にその有効径エリアの周辺部分に物体側に凸面を向けた曲面Sがある場合にその曲面Sに入射することが多くなる。曲面Sは物体側に凸面を向けているため、この部分に入射した有害光の多くは内面全反射してそのレンズの外周面に向かい、その多くは透過してレンズ鏡筒の内壁で吸収されるものの、一部は外周面で内面反射する。
【0031】
外周面に粗面化処理や墨塗り処理を施した場合には、外周面に入射した有害光を大きく減衰させることができるが、金型を用いて製造される成形レンズでは、粗面化処理のためには成形金型のコストアップが伴い、また墨塗り処理のためには後加工に伴うコストアップが避けられない。この点、本発明では外周面に撮影光軸に対して傾斜させた非平行面を設け、この非平行面で有害光が像面に入射しない方向に向けて反射させるようにしてあるから、成形金型や後加工のためのコストアップを招くことなくゴーストやフレアを大幅に低減させることが可能となる。なお、外周面に粗面化処理や墨塗り処理を施した場合であっても、外周面で正反射に近い角度範囲で内面反射した有害光の強度は十分に減衰しているとは言い難いから、さらに本発明を併用すればゴーストやフレアをより低減させることができる。また、本発明はレンズだけでなくフィルタなどの一般の光学素子にも本発明は適用可能である。
【0032】
なお、撮影光学系の内部に開口絞りが設けられる場合には、その開口絞りが有害光を遮る作用も有するので必ずしも本発明の非平行面を設けなくても済む場合が多いが、上述した実施形態のように、第一レンズの前面にのみ開口絞りを設けた撮影光学系で本発明はより効果的に用いることができる。また、本発明が適用し得るレンズにしても、ガラス製,プラスチック製のいずれであってもよく、非平行面も成形だけでなく切削などの手法で形成することも可能である。
【符号の説明】
【0033】
8 撮像素子
10 カメラモジュール
12 レンズユニット
14 撮像ユニット
15 ホルダ
16 回路基板
18 レンズ鏡筒
21 第二レンズ
23 第三レンズ
24 開口絞り
30 外周面
30a 円柱面
30b 非平行面
P 撮影光軸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
撮影光学系に組み込まれ、撮影光軸を中心として撮影に寄与する有効光束を通過させる有効径エリアと、この有効径エリアを囲む有効径外エリアと、この有効径外エリアを囲む外周面とを備えた光学素子において、
物体側の面から入射し、像面側の面で反射して前記外周面に入射し、その外周面で反射した光線が像面に入射しないように、前記外周面の厚み方向の少なくとも一部、または周方向の少なくとも一部を、撮影光軸に対して傾きをもつ非平行面にしたことを特徴とする光学素子。
【請求項2】
前記非平行面は外周面の厚み方向の2/3以下の幅で形成され、残りの外周面の全部、または一部が撮影光軸を中心とする円柱状の形状をもつことを特徴とする請求項1記載の光学素子。
【請求項3】
前記非平行面が、撮影光軸を含む縦断面に関して傾きが連続的に変化する曲線で表される曲面であることを特徴とする請求項1記載の光学素子。
【請求項4】
前記有効径エリアと前記外周面を含む有効径外エリアとを一体成形した成形品であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか記載の光学素子。
【請求項5】
撮影光学系に組み込まれ、撮影光軸を中心として撮影に寄与する有効光束を通過させる有効径エリアと、この有効径エリアを囲む有効径外エリアと、この有効径外エリアを囲む外周面とを備えた光学素子において、
前記光学素子が前記有効径外エリアに円環状の境界面をもつ多色成形品で構成され、物体側の面の前記有効径エリアから入射し、像面側の面の前記有効径エリアで内面反射して前記境界面に向かい、その境界面で内面正反射した有害光が前記物体側または像面側の面で内面全反射する入射角となるように、前記境界面の厚み方向の少なくとも一部、かつ周方向の少なくとも一部を撮影光軸に対して傾きをもつ非平行面にするとともに、前記外周面の少なくとも一部を撮影光軸を中心とする円柱面にしたことを特徴とする光学素子。
【請求項6】
前記光学素子は、少なくとも二枚のレンズから構成される撮影光学系の中で、物体側から二枚目以降に用いられるレンズであり、物体側の前記有効径エリア内に凹面の形状を含むことを特徴とする請求項1〜5のいずれか記載の光学素子。
【請求項7】
像面側の面に、前記有効径エリア内に像側に凹面となる形状を含むことを特徴とする請求項6記載の光学素子。
【請求項8】
絞りよりも像面側に配置され、物体側の有効径エリアよりも像面側の有効エリアが広いことを特徴とする請求項6または7記載の光学素子。
【請求項9】
物体側から順に配置された絞り、第一レンズ、第二レンズ、第三レンズを含み、前記第二レンズまたは第三レンズのいずれかが請求項6〜8のいずれか記載の光学素子であることを特徴とする撮影光学系。
【請求項10】
請求項9記載の撮影光学系をレンズ鏡筒に組み込んだレンズユニットと、前記レンズ鏡筒の後端に固定され、前記像面に撮像面が一致するように固体撮像素子を保持した撮像ユニットとからなることを特徴とするカメラモジュール。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−164755(P2010−164755A)
【公開日】平成22年7月29日(2010.7.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−6588(P2009−6588)
【出願日】平成21年1月15日(2009.1.15)
【出願人】(000005430)フジノン株式会社 (2,231)
【Fターム(参考)】