説明

光学素子成形用素材の製造方法、及び、光学素子成形用素材の製造装置

【課題】光学素子成形用素材の製造方法及び製造装置において、半球形状又は半楕円体形状の成形用素材を容易に製造方法及び製造装置を提供する。
【解決手段】光学素子成形用素材の製造方法は、母材溶融ガラスG1の少なくとも一部を半球形状又は半楕円体形状の溶融ガラス体G2となるように基材11の平面部11aに付着させる付着工程と、その後、平面部11aに付着した溶融ガラス体G2を、半球形状又は半楕円体形状の状態で固化させる固化工程と、を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、母材溶融ガラスから光学素子成形用素材を製造する光学素子成形用素材の製造方法及び製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えばガラス光学素子の成形に用いられる光学素子成形用素材は、球形状のものが最も一般的に用いられている。この球形状の光学素子成形用素材は、研削・研磨といった冷間加工以外にも、溶融ガラスから直接、熱間加工で近似球形状に低コストで加工される場合もある。
【0003】
球形状の光学素子成形用素材は、大抵の場合、光学素子等を成形する際に用いられる成形型とは点接触となり、熱伝導による熱交換は点接触部分のみを介して行われるため非常に効率が悪く、ガラスがなかなか所望の温度まで加熱されないといった問題がある。
【0004】
成形しようとする光学素子であるレンズが例えば平凸形状であると、半球形状又は半楕円体形状の光学素子成形用素材の方が球形状の光学素子成形用素材よりも成形型との接触面積が広くとれるため、熱交換が促進されガラスが加熱されやすい。また、光学素子が例えば、平凸形状やメニスカス形状の場合、半球形状又は半楕円体形状の光学素子成形用素材の方が球形状の光学素子成形用素材よりも成形時の変形量が少ないため、変形時間が短縮される。
【0005】
さらに、球形状又は半楕円体形状の光学素子成形用素材は、成形型と平面で接触することができるため、球形状の光学素子成形用素材よりも位置ズレを起こしにくく安定して保持できるメリットある。
【0006】
上述の半球形状の光学素子成形用素材は、研削・研磨といった冷間加工で製造されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平10−130027号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、半球形状又は半楕円体形状の光学素子成形用素材を上記特許文献1に記載されるように研削・研磨といった冷間加工で製造すると加工に手間がかかる。そのため、半球形状又は半楕円体形状の光学素子成形用素材は、なかなか使用されることがなかった。
【0009】
本発明の目的は、半球形状又は半楕円体形状の光学素子成形用素材を容易に製造することができる光学素子成形用素材の製造方法及び製造装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の光学素子成形用素材の製造方法は、母材溶融ガラスの少なくとも一部を半球形状又は半楕円体形状の溶融ガラス体となるように基材の平面部に付着させる付着工程と、その後、上記平面部に付着した上記溶融ガラス体を、半球形状又は半楕円体形状の状態で固化させる固化工程と、を含む。
【0011】
また、上記光学素子成形用素材の製造方法において、上記付着工程は、上記基材の上記平面部を上記母材溶融ガラスに対して接触させる接触工程と、その後、上記母材溶融ガラスから一部を上記基材と共に切り離し、半球形状又は半楕円体形状の上記溶融ガラス体を形成する切り離し工程と、を備えるようにしてもよい。
【0012】
また、上記光学素子成形用素材の製造方法において、上記固化工程では、上記溶融ガラス体を上記平面部の鉛直下方に付着させた状態で固化させるようにしてもよい。
また、上記光学素子成形用素材の製造方法において、上記固化工程では、上記溶融ガラス体を上記平面部の鉛直上方に付着させた状態で固化させるようにしてもよい。
【0013】
また、上記光学素子成形用素材の製造方法において、上記付着工程では、上記溶融ガラス体を上記基材の上記平面部の全面に付着させるようにしてもよい。
また、上記光学素子成形用素材の製造方法において、上記付着工程では、上記溶融ガラス体を上記基材の上記平面部に複数個付着させるようにしてもよい。
【0014】
本発明の光学素子成形用素材の製造装置は、平面部を有する基材と、母材溶融ガラスの少なくとも一部を半球形状又は半楕円体形状の溶融ガラス体となるように上記平面部に付着させる付着手段と、を含む。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、半球形状又は半楕円体形状の光学素子成形用素材を容易に製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の第1実施形態に係る光学素子成形用素材の製造装置を模式的に示す説明図である。
【図2A】本発明の第1実施形態における溶融ガラス体の半球形状の一例を示す説明図である。
【図2B】本発明の第1実施形態における溶融ガラス体の半楕円体形状の一例を示す説明図(その1)である。
【図2C】本発明の第1実施形態における溶融ガラス体の半楕円体形状の一例を示す説明図(その2)である。
【図3】本発明の第2実施形態に係る光学素子成形用素材の製造装置を模式的に示す説明図である。
【図4】本発明の第3実施形態に係る光学素子成形用素材の製造装置を模式的に示す説明図である。
【図5】本発明の第4実施形態に係る光学素子成形用素材の製造装置を模式的に示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態に係る、光学素子成形用素材の製造方法及び製造装置について、図面を参照しながら説明する。
【0018】
<第1実施形態>
図1は、本発明の第1実施形態に係る光学素子成形用素材の製造装置10を模式的に示す説明図である。
【0019】
図1に示すように、光学素子成形用素材の製造装置10は、平面部11aを有する基材11と、母材溶融ガラスG1を貯留するガラス貯留槽12と、を含む。ガラス貯留槽12と、基材11を移動させる図示しない駆動部とは、付着手段の一例であり、母材溶融ガラスG1の少なくとも一部を半球形状又は半楕円体形状の溶融ガラス体G2となるように基材11の平面部11aに付着させる。
【0020】
基材11は、円柱形状を呈し、一端である下端に平面部11aが形成されている。詳しくは後述するが、平面部11aには母材溶融ガラスG1(溶融ガラス体G2)が全面に付着し、この付着した溶融ガラス体G2が固化することで半球形状又は半楕円体形状の光学素子成形用素材が製造される。そのため、平面部11aの形状は、製造される光学素子成形用素材の平面部分の形状と同一又は同程度に形成されている。
【0021】
基材11は、例えば、ガラスと反応しにくい貴金属からなる。この貴金属は、例えば、白金(Pt)や、白金(Pt)を主とした貴金属合金(例えば、白金−金(Pt-Au),白金−金−ロジウム(Pt-Au-Rh))である。
【0022】
また、基材11は、母材溶融ガラスG1に接触する際の移動方向である鉛直下方(矢印A)、母材溶融ガラスG1から溶融ガラス体G2を切り離す際の移動方向である鉛直上方(矢印B)などに図示しない駆動部によって移動する。なお、駆動部が基材11ではなく貯留槽12を移動させるようにしてもよい。
【0023】
ガラス貯留槽12は、上方に開口しており、母材溶融ガラスG1に対して上方から基材11が挿抜される。なお、ガラス貯留槽12には、母材溶融ガラスG1を加熱する加熱部等が配置されるようにしてもよい。
【0024】
以下、第1実施形態の光学素子成形用素材を製造する流れについて、上述の説明と重複する点については適宜省略しながら説明する。
まず、基材11が鉛直下方(矢印A)へ移動し、少なくとも平面部11aがガラス貯留槽12の母材溶融ガラスG1に挿入される。これにより、基材11の平面部11aが母材溶融ガラスG1に対して接触する(接触工程)。
【0025】
その後、基材11が鉛直上方(矢印B)へ移動し、ガラス貯留槽12の母材溶融ガラスG1から一部が基材11と共に切り離され、半球形状又は半楕円体形状に溶融ガラス体G2が形成される(切り離し工程)。
このように溶融ガラス体G2が半球形状又は半楕円体形状に形成されるのは、表面張力によって平面部11aからドーム型に溶融ガラス体G2が鉛直下方へ盛り上がるためである。なお、このときの溶融ガラス体G2の体積及び形状は、母材溶融ガラスG1の粘度、平面部11aの表面積および粗さ等によって調整可能である。
【0026】
上記の接触工程及び切り離し工程によって、母材溶融ガラスG1(溶融ガラス体G2)の一部(少なくとも一部)が、半球形状又は半楕円体形状の溶融ガラス体G2となるように基材11の平面部11aの全面に付着する(付着工程)。この付着工程においては、溶融ガラス体G2が平面部11aの上方の基材11の外周より外側に付着しない(濡れ上がらない)ように、溶融ガラス体G2の体積及び形状が例えば上述のように母材溶融ガラスG1の粘度等によって調整されている。
ここで、半球形状の溶融ガラス体G2は、例えば、図2Aに示す溶融ガラス体G2−1のように、平面状の底面の半径R0と高さR1が一致するものである。
また、半楕円形状の溶融ガラスG2は、例えば、図2Bに示す溶融ガラス体G2−2のように平面状の底面の半径R0よりも高さR2が大きいもの、図2Cに示す溶融ガラス体G2−3のように平面状の底面の半径R0よりも高さR3が小さいものなどである。
【0027】
付着工程の後、平面部11aに付着した溶融ガラス体G2は、例えば常温等の温度で冷却されることにより、半球形状又は半楕円体形状の状態で固化する(固化工程)。このとき、溶融ガラス体G2は、平面部11aの鉛直下方に付着した状態で固化する。以上により、半球形状又は半楕円体形状の光学素子成形用素材が製造される。なお、溶融ガラス体G2が固化してなる光学素子成形用素材は、基材11との線膨張差によって、冷却過程で基材11から脱離する。
【0028】
ここで、光学素子成形用素材の「半球形状又は半楕円体形状」は、基材11の平面部11aが円形ではなく多角形であっても表面張力によって光学素子成形用素材(溶融ガラス体G2)がドーム型に盛り上がって略半球形状又は略半楕円体形状を呈するため、平面部分が円形でなく多角形や楕円形のものを含むものとする。
【0029】
以上説明した第1実施形態では、光学素子成形用素材の製造方法は、母材溶融ガラスG1の少なくとも一部を半球形状又は半楕円体形状の溶融ガラス体G2となるように基材11の平面部11aに付着させる付着工程と、その後、平面部11aに付着した溶融ガラス体G2を、半球形状又は半楕円体形状の状態で固化させる固化工程と、を含む。
【0030】
そのため、半球形状又は半楕円体形状の光学素子成形用素材が熱間加工で容易に製造される。よって、本実施形態によれば、半球形状又は半楕円体形状の光学素子成形用素材を容易に製造することができる。更には、本実施形態によれば、半球形状又は半楕円体形状の光学素子成形用素材を、早く且つ安価に製造することもできる。
【0031】
また、本実施形態では、付着工程は、基材11の平面部11aを母材溶融ガラスG1に対して接触させる接触工程と、その後、母材溶融ガラスG1から一部を基材11と共に切り離し、半球形状又は半楕円体形状の溶融ガラス体G2を形成する切り離し工程と、を備える。そのため、基材11の平面部11aに付着させる母材溶融ガラスG1(溶融ガラス体G2)ひいては光学素子成形用素材の体積及び形状を容易に調整することができる。
【0032】
また、本実施形態では、固化工程において、溶融ガラス体G2を平面部11aの鉛直下方に付着させた状態で固化させる。そのため、重力によって鉛直方向下方への溶融ガラス体G2の盛り上がりを増やすことができる。
【0033】
また、本実施形態では、付着工程において、溶融ガラス体G2を基材11の平面部11aの全面に付着させる。そのため、基材11の平面部11aの形状によって、基材11の平面部11aに付着させる溶融ガラス体G2ひいては光学素子成形用素材の体積及び形状を容易に調整することができる。
【0034】
<第2実施形態>
図3は、本発明の第1実施形態に係る光学素子成形用素材の製造装置20を模式的に示す説明図である。
【0035】
図3に示すように、光学素子成形用素材の製造装置20は、平面部21aを有する基材21と、母材溶融ガラスG1を吐出するノズル22と、を含む。ノズル22と、基材21を移動させる図示しない駆動部とは、付着手段の一例であり、母材溶融ガラスG1の少なくとも一部を半球形状又は半楕円体形状の溶融ガラスGとなるように基材21の平面部21aに付着させる。
【0036】
基材21は、母材溶融ガラスG1が付着する平面部21aが一端である上端に形成されている点を除いて上述の第1実施形態の基材11と同様である。
【0037】
ノズル22は、下端である吐出口22aから母材溶融ガラスG1を吐出する。但し、ノズル22は、吐出口22aから母材溶融ガラスG1が液滴として落下しない程度の量のみを吐出する。なお、ノズル22には、母材溶融ガラスG1を加熱する加熱部等が配置されるようにしてもよい。
【0038】
基材21は、ノズル22が吐出する母材溶融ガラスG1に接触する際の移動方向である鉛直上方(矢印C)、母材溶融ガラスG1から溶融ガラス体G2を切り離す際の移動方向である鉛直下方(矢印D)などに図示しない駆動部によって移動する。なお、駆動部が基材21ではなくノズル22を移動させるようにしてもよい。
【0039】
以下、第2実施形態の光学素子成形用素材を製造する流れについて、上述の説明と重複する点については適宜省略しながら説明する。
まず、基材21が鉛直上方(矢印C)へ移動し、平面部21aが、ノズル22の吐出口22aから吐出された母材溶融ガラスG1に対して接触する(接触工程)。
【0040】
その後、基材21が鉛直下方(矢印D)へ移動し、吐出口22aの母材溶融ガラスG1から一部を基材21と共に切り離し、半球形状又は半楕円体形状の溶融ガラス体G2が形成される(切り離し工程)。
【0041】
このように溶融ガラス体G2が半球形状又は半楕円体形状に形成されるのは、表面張力によって平面部21aからドーム型に溶融ガラス体G2が鉛直上方へ盛り上がるためである。なお、このときの溶融ガラス体G2の体積及び形状は、母材溶融ガラスG1の粘度、平面部21aの表面積および粗さ等によって調整可能である。
【0042】
上記の接触工程及び切り離し工程によって、母材溶融ガラスG1(溶融ガラス体G2)の一部(少なくとも一部)が基材21の平面部21aの全面に半球形状又は半楕円体形状に付着する(付着工程)。この付着工程においては、溶融ガラス体G2が平面部21aの下方の基材21の外周より外側に付着しないように、溶融ガラス体G2の体積及び形状が例えば上述のように母材溶融ガラスG1の粘度等によって調整されている。
【0043】
付着工程の後、平面部21aに付着した溶融ガラス体G2は、例えば常温等の温度で冷却されることにより、半球形状又は半楕円体形状の状態で固化する(固化工程)。このとき、溶融ガラス体G2は、平面部21aの鉛直上方に付着した状態で固化する。以上により、半球形状又は半楕円体形状の光学素子成形用素材が製造される。なお、溶融ガラス体G2が固化してなる光学素子成形用素材は、基材21との線膨張差によって、冷却過程で基材21から脱離する。
【0044】
以上説明した第2実施形態においても、上述の第1実施形態と同様に、光学素子成形用素材の製造方法は、母材溶融ガラスG1の少なくとも一部を半球形状又は半楕円体形状の溶融ガラス体G2となるように基材21の平面部21aに付着させる付着工程と、その後、平面部21aに付着した溶融ガラス体G2を、半球形状又は半楕円体形状の状態で固化させる固化工程と、を含む。
【0045】
そのため、半球形状又は半楕円体形状の光学素子成形用素材が熱間加工で容易に製造される。よって、本実施形態によっても、上述の第1実施形態と同様に、半球形状又は半楕円体形状の光学素子成形用素材を容易に製造することができる。更には、本実施形態によっても、半球形状又は半楕円体形状の光学素子成形用素材を、早く且つ安価に製造することもできる。
【0046】
また、本実施形態においても、上述の第1実施形態と同様に、付着工程は、基材21の平面部21aを母材溶融ガラスG1に対して接触させる接触工程と、その後、母材溶融ガラスG1から一部を基材21と共に切り離し、半球形状又は半楕円体形状の溶融ガラス体G2を形成する切り離し工程と、を備える。そのため、上述の第1実施形態と同様に、基材21の平面部21aに付着させる母材溶融ガラスG1(溶融ガラス体G2)ひいては光学素子成形用素材の体積及び形状を容易に調整することができる。
【0047】
また、本実施形態では、固化工程において、溶融ガラス体G2を平面部21aの鉛直上方に付着させた状態で固化させる。そのため、重力によって鉛直方向上方への溶融ガラス体G2の盛り上がりを抑えることができる。
【0048】
また、本実施形態においても、付着工程では、溶融ガラス体G2を基材21の平面部21aの全面に付着させる。そのため、上述の第1実施形態と同様に、基材21の平面部21aの形状によって、基材21の平面部21aに付着させる溶融ガラス体G2ひいては光学素子成形用素材の体積及び形状を容易に調整することができる。
【0049】
<第3実施形態>
図4は、本発明の第3実施形態に係る光学素子成形用素材の製造装置30を模式的に示す説明図である。
【0050】
図4に示すように、光学素子成形用素材の製造装置30は、平面部31aを有する基材31と、母材溶融ガラスG1を吐出するノズル32と、を含む。ノズル32と、基材31を移動させる図示しない駆動部とは、付着手段の一例であり、母材溶融ガラスG1の少なくとも一部を半球形状又は半楕円体形状の溶融ガラス体G2となるように基材31の平面部31aに付着させる。
【0051】
ノズル32は、上述の第2実施形態のノズル22と同様である。
基材31は、上面に平面部31aが形成された例えば板形状を呈する。詳しくは後述するが、平面部31aには母材溶融ガラスG1(溶融ガラス体G2)が複数個付着し、この付着した溶融ガラス体G2が固化することで半球形状又は半楕円体形状の光学素子成形用素材Gが製造される。基材31の材質は、上述の第1実施形態及び第2実施形態と同様に、例えば、ガラスと反応しにくい貴金属からなる。
【0052】
また、基材31は、母材溶融ガラスG1に接触する際の移動方向である鉛直上方(矢印E)、母材溶融ガラスG1から溶融ガラス体G2を切り離す際の移動方向である鉛直下方(矢印F)などに図示しない駆動部によって移動する。このとき、基材31は、平面部31aが水平状態で移動する。なお、駆動部が基材31ではなくノズル32を移動させるようにしてもよい。
【0053】
以下、第3実施形態の光学素子成形用素材G3を製造する流れについて、上述の説明と重複する点については適宜省略しながら説明する。
まず、基材31が鉛直上方(矢印E)へ移動し、平面部31aが、ノズル32の吐出口32aから吐出された母材溶融ガラスG1に対して接触する(接触工程)。
【0054】
その後、基材31が鉛直下方(矢印F)へ移動し、吐出口32aの母材溶融ガラスG1から一部が基材31と共に切り離され、半球形状又は半楕円体形状の溶融ガラス体G2が形成される(切り離し工程)。
【0055】
このように溶融ガラス体G2が半球形状又は半楕円体形状に形成されるのは、表面張力によって平面部21aからドーム型に溶融ガラス体G2が鉛直上方へ盛り上がるためである。なお、このときの溶融ガラス体G2の体積及び形状は、母材溶融ガラスG1の粘度、平面部21aの表面積および粗さ等によって調整可能である。
【0056】
上記の接触工程及び切り離し工程を、基材31を水平方向に移動させながら繰り返すことによって、母材溶融ガラスG1(溶融ガラス体G2)の一部(少なくとも一部)が基材31の平面部31aに半球形状又は半楕円体形状に複数個付着する(付着工程)。
【0057】
付着工程の後、平面部31aに付着した溶融ガラス体G2は、例えば常温等の温度で冷却されることにより、半球形状又は半楕円体形状の状態で固化する(固化工程)。このとき、溶融ガラス体G2は、平面部31aの鉛直上方に付着した状態で固化する。以上により、半球形状又は半楕円体形状の光学素子成形用素材G3が製造される。なお、溶融ガラス体G2が固化してなる光学素子成形用素材G3は、基材31との線膨張差によって、冷却過程で基材31から脱離する。
【0058】
以上説明した第3実施形態においても、上述の第1実施形態及び第2実施形態と同様に、光学素子成形用素材の製造方法は、母材溶融ガラスG1の少なくとも一部を半球形状又は半楕円体形状の溶融ガラス体G2となるように基材31の平面部31aに付着させる付着工程と、その後、平面部31aに付着した溶融ガラス体G2を、半球形状又は半楕円体形状の状態で固化させる固化工程と、を含む。
【0059】
そのため、半球形状又は半楕円体形状の光学素子成形用素材G3が熱間加工で容易に製造される。よって、本実施形態によっても、上述の第1実施形態及び第2実施形態と同様に、半球形状又は半楕円体形状の光学素子成形用素材G3を容易に製造することができる。更には、本実施形態によっても、半球形状又は半楕円体形状の光学素子成形用素材G3を、早く且つ安価に製造することもできる。
【0060】
また、本実施形態においても、上述の第1実施形態および第2実施形態と同様に、付着工程は、基材31の平面部31aを母材溶融ガラスG1に対して接触させる接触工程と、その後、母材溶融ガラスG1から一部を基材31と共に切り離し、半球形状又は半楕円体形状の溶融ガラス体G2を形成する切り離し工程と、を備える。そのため、上述の第1実施形態と同様に、基材31の平面部31aに付着させる母材溶融ガラスG1(溶融ガラス体G2)の体積及び形状を容易に調整することができる。
【0061】
また、本実施形態では、上述の第2実施形態と同様に、固化工程では、溶融ガラス体G2を平面部31aの鉛直上方に付着した状態で固化させる。そのため、重力によって鉛直方向上方への溶融ガラス体G2盛り上がりを抑えることができる。
【0062】
また、本実施形態では、付着工程において、溶融ガラス体G2を基材31の平面部31aに複数個付着させる。そのため、光学素子成形用素材G3を容易に量産することができる。
【0063】
<第4実施形態>
図5は、本発明の第4実施形態に係る光学素子成形用素材の製造装置40を模式的に示す説明図である。
【0064】
図5に示すように、光学素子成形用素材の製造装置40は、平面部41aを有する基材41と、母材溶融ガラスG1を液滴として吐出するノズル42と、を含む。ノズル42は、付着手段の一例であり、母材溶融ガラスG1の少なくとも一部を半球形状又は半楕円体形状の溶融ガラス体G2となるように平面部41aに付着させる。
【0065】
基材41は、上述の第2実施形態の基材31と同様である。
ノズル42は、下端である吐出口42aから母材溶融ガラスG1を吐出する。本実施形態のノズル42は、上述の第2実施形態及び第3実施形態のノズル22,32とは異なり、吐出口42aから母材溶融ガラスG1を液滴として落下(滴下)させる。
【0066】
以下、第4実施形態の光学素子成形用素材G3を製造する流れについて、上述の説明と重複する点については適宜省略しながら説明する。
本実施形態では、上述の第1実施形態〜第3実施形態とは異なり、付着工程が接触工程及び切り離し工程を備えるものではなく、ノズル42が吐出口42aから母材溶融ガラスG1を液滴として基材41の平面部41aに落下(滴下)させる。このように母材溶融ガラスG1(溶融ガラス体G2)を、基材41を水平方向に移動させながら繰り返し落下させることによって、基材41の平面部41aに半球形状又は半楕円体形状の母材溶融ガラスG1(溶融ガラス体G2)が複数個付着する(付着工程)。
【0067】
なお、このときの溶融ガラス体G2の平面部41aとの接触面積は、落下させる母材溶融ガラスG1のほか、基材41の材質、温度、粗さ、雰囲気ガス等によって調整可能である。
付着工程の後、平面部41aに付着した溶融ガラス体G2は、例えば常温等の温度で冷却されることにより、半球形状又は半楕円体形状の状態で固化する(固化工程)。このとき、溶融ガラス体G2は、平面部41aの鉛直上方に付着した状態で固化する。以上により、半球形状又は半楕円体形状の光学素子成形用素材G3が製造される。なお、溶融ガラス体G2が固化してなる光学素子成形用素材G3は、基材41との線膨張差によって、冷却過程で基材41から脱離する。
【0068】
以上説明した第4実施形態においても、上述の第1実施形態〜第3実施形態と同様に、光学素子成形用素材の製造方法は、母材溶融ガラスG1の少なくとも一部を半球形状又は半楕円体形状の溶融ガラス体G2となるように基材41の平面部41aに付着させる付着工程と、その後、平面部41aに付着した溶融ガラス体G2を、半球形状又は半楕円体形状の状態で固化させる固化工程と、を含む。
【0069】
そのため、半球形状又は半楕円体形状の光学素子成形用素材G3が熱間加工で容易に製造される。よって、本実施形態によっても、上述の第1実施形態〜第3実施形態と同様に、半球形状又は半楕円体形状の光学素子成形用素材G3を容易に製造することができる。更には、本実施形態によっても、半球形状又は半楕円体形状の光学素子成形用素材G3を、早く且つ安価に製造することもできる。
【0070】
また、本実施形態では、付着工程において、ノズル42が吐出口42aから母材溶融ガラスG1を液滴として基材41の平面部41aに落下(滴下)させることで、母材溶融ガラスG1を基材41の平面部41aに半球形状又は半楕円体形状に付着させる。そのため、基材41或いはノズル42を移動させる構成を要さず、簡素な構成で付着工程を容易に行うことができる。
【0071】
また、本実施形態では、上述の第2実施形態及び第3実施形態と同様に、固化工程では、溶融ガラス体G2を平面部41aの鉛直上方に付着させた状態で固化させる。そのため、重力によって鉛直方向上方への溶融ガラス体G2の盛り上がりを抑えることができる。
【0072】
また、本実施形態では、上述の第3実施形態と同様に、付着工程において、溶融ガラス体G2を基材41の平面部41aに複数個付着させる。そのため、光学素子成形用素材G3を容易に量産することができる。
【符号の説明】
【0073】
10 光学素子成形用素材の製造装置
11 基材
11a 平面部
12 ガラス貯留槽
20 光学素子成形用素材の製造装置
21 基材
21a 平面部
22 ノズル
22a 吐出口
30 光学素子成形用素材の製造装置
31 基材
31a 平面部
32 ノズル
32a 吐出口
40 光学素子成形用素材の製造装置
41 基材
41a 平面部
42 ノズル
42a 吐出口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
母材溶融ガラスの少なくとも一部を半球形状又は半楕円体形状の溶融ガラス体となるように基材の平面部に付着させる付着工程と、
その後、前記平面部に付着した前記溶融ガラス体を、半球形状又は半楕円体形状の状態で固化させる固化工程と、を含む、光学素子成形用素材の製造方法。
【請求項2】
請求項1記載の光学素子成形用素材の製造方法において、
前記付着工程は、
前記基材の前記平面部を前記母材溶融ガラスに対して接触させる接触工程と、
その後、前記母材溶融ガラスから一部を前記基材と共に切り離し、半球形状又は半楕円体形状の前記溶融ガラス体を形成する切り離し工程と、を備える、光学素子成形用素材の製造方法。
【請求項3】
請求項1又は請求項2記載の光学素子成形用素材の製造方法において、
前記固化工程では、前記溶融ガラス体を前記平面部の鉛直下方に付着させた状態で固化させる、光学素子成形用素材の製造方法。
【請求項4】
請求項1又は請求項2記載の光学素子成形用素材の製造方法において、
前記固化工程では、前記溶融ガラス体を前記平面部の鉛直上方に付着させた状態で固化させる、光学素子成形用素材の製造方法。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれか1項記載の光学素子成形用素材の製造方法において、
前記付着工程では、前記溶融ガラス体を前記基材の前記平面部の全面に付着させる、光学素子成形用素材の製造方法。
【請求項6】
請求項1から請求項4のいずれか1項記載の光学素子成形用素材の製造方法において、
前記付着工程では、前記溶融ガラス体を前記基材の前記平面部に複数個付着させる、光学素子成形用素材の製造方法。
【請求項7】
平面部を有する基材と、
母材溶融ガラスの少なくとも一部を半球形状又は半楕円体形状の溶融ガラス体となるように前記平面部に付着させる付着手段と、を含む、光学素子成形用素材の製造装置。

【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【図2C】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−131676(P2012−131676A)
【公開日】平成24年7月12日(2012.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−286960(P2010−286960)
【出願日】平成22年12月24日(2010.12.24)
【出願人】(000000376)オリンパス株式会社 (11,466)