説明

光学装置、バネ部材および光学装置の製造方法

【課題】撮影用のレンズを有する可動部とこの可動部を移動可能に保持する保持部とを繋ぐバネ部材を備える光学装置において、バネ部材のバネ定数の調整が可能であっても、その製造工程を簡素化することが可能な光学装置を提供する。
【解決手段】この光学装置は、撮影用のレンズを有する可動部と、可動部を移動可能に保持する保持部と、可動部と保持部とを繋ぐバネ部材28と、可動部を駆動する駆動機構とを備えている。バネ部材28は、可動部に固定される可動側固定部28aと、保持部に固定される保持側固定部28bと、可動側固定部28aと保持側固定部28bとを繋ぐ複数の腕部28cとを備えている。腕部28cには、腕部28cの幅方向へ突出する凸部28j、28kが形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、撮影用のレンズを有する可動部とこの可動部を移動可能に保持する保持部とを繋ぐバネ部材を備える光学装置、および、かかる光学装置の製造方法に関する。また、本発明は、可動部と保持部とを繋ぐためのバネ部材に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、携帯電話等に搭載されるカメラの撮影用のレンズを駆動するレンズ駆動装置として、複数のレンズを保持して光軸方向へ移動する可動体と、可動体を移動可能に保持する固定体と、可動体と固定体とを繋ぐ板バネとを備えるレンズ駆動装置が知られている(たとえば、特許文献1および2参照)。特許文献1および2に記載のレンズ駆動装置では、板バネは、可動体に固定される可動体固定部と、固定体に固定される固定体固定部と、可動体固定部と固定体固定部とを繋ぐ複数の腕部とを備えている。
【0003】
特許文献1および2に記載のレンズ駆動装置に用いられる板バネは、その形状が複雑であるため、一般に、エッチング加工によって製造される。しかしながら、エッチング加工で板バネを製造する場合、腕部の幅のばらつきが大きくなり、板バネのバネ定数のばらつきが大きくなるおそれがある。板バネのバネ定数のばらつきが大きくなると、可動体を目論み通りに動かすことが困難になる。
【0004】
そこで、特許文献1および2では、板バネのバネ定数を調整するための構成が提案されている。特許文献1に記載のレンズ駆動装置では、腕部の縁をレーザで切断して腕部の長さを調整することで、板バネのバネ定数が調整されている。また、特許文献2に記載のレンズ駆動装置では、固定体固定部と腕部との接続部分が複数個の連結部によって構成されており、複数個の連結部の何個かの連結部をレーザで切断することで、板バネのバネ定数が調整されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−122360号公報
【特許文献2】特開2010−217467号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1および2に記載のレンズ駆動装置では、板バネのバネ定数の調整が可能であるため、板バネのバネ定数のばらつきを抑制することが可能である。しかしながら、特許文献1および2で提案されているバネ定数の調整方法では、レーザによって、腕部の縁や連結部を切断するため、レーザ切断時に溶けた金属が異物として発生するおそれがある。そのため、この方法で、バネ定数の調整が行われる場合には、異物を除去するための洗浄工程が必要となる場合があり、レンズ駆動装置の製造工程が煩雑になるおそれがある。
【0007】
そこで、本発明の課題は、撮影用のレンズを有する可動部とこの可動部を移動可能に保持する保持部とを繋ぐバネ部材を備える光学装置において、バネ部材のバネ定数の調整が可能であっても、その製造工程を簡素化することが可能な光学装置を提供することにある。また、本発明の課題は、撮影用のレンズを有する可動部とこの可動部を移動可能に保持する保持部とを繋ぐバネ部材を備える光学装置の製造方法において、バネ部材のバネ定数の調整が可能であっても、製造工程を簡素化することが可能な光学装置を提供することにある。さらに、本発明の課題は、バネ定数の調整が可能であっても、取り付けられる装置の製造工程を簡素化することが可能なバネ部材を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するため、本発明の光学装置は、撮影用のレンズを有する可動部と、可動部を移動可能に保持する保持部と、可動部と保持部とを繋ぐバネ部材と、可動部を駆動する駆動機構とを備え、バネ部材は、可動部に固定される可動側固定部と、保持部に固定される保持側固定部と、可動側固定部と保持側固定部とを繋ぐ複数の腕部とを備え、腕部には、腕部の幅方向へ突出する凸部が形成されていることを特徴とする。
【0009】
本発明の光学装置では、腕部に、腕部の幅方向へ突出する凸部が形成されている。そのため、凸部を利用して、可動部や可動側固定部に腕部を溶接したり、保持部や保持側固定部に腕部を溶接することで、腕部の長さを調整して、バネ部材のバネ定数を調整することが可能になる。また、バネ定数を調整するための溶接時に凸部が溶けても、溶けた金属は溶接後にその場で再度固まるため、溶接時に溶けた金属が異物として発生するおそれを低減することが可能になる。したがって、本発明では、異物を除去するための洗浄工程を不要にすることが可能になる。このように本発明では、バネ部材のバネ定数を調整することが可能であっても、異物を除去するための洗浄工程を不要にすることが可能になり、その結果、光学装置の製造工程を簡素化することが可能になる。
【0010】
また、本発明では、凸部を利用して、可動部や可動側固定部に腕部を溶接したり、保持部や保持側固定部に腕部を溶接することが可能であるため、可動部や固定部へのバネ部材の固定と、バネ部材のバネ定数の調整とを同時に行うことが可能になる。
【0011】
本発明において、腕部には、複数の凸部が形成されていることが好ましい。このように構成すると、凸部を利用して腕部を溶接することで、腕部の長さを多段階で調整することが可能になる。したがって、バネ部材のバネ定数を多段階で調整することが可能になる。
【0012】
本発明において、バネ部材は、可動側固定部と腕部との接続部となる可動側接続部を備え、凸部は、たとえば、腕部の、可動側接続部の近傍に形成されている。
【0013】
本発明において、可動側固定部および保持側固定部は、略四角形の枠状に形成され、可動側固定部は、保持側固定部の内周側に配置され、腕部は、略L形状に形成されるとともに、可動側固定部の外周側かつ保持側固定部の内周側に配置され、凸部は、可動側固定部に向かって突出するように形成され、腕部が伸びていく方向であって、かつ、可動側接続部から離れていく方向を第1方向とすると、凸部の第1方向側の形状は、可動側接続部の腕部側の根元の第1方向側の形状と略等しくなっていることが好ましい。このように構成すると、凸部を利用して、可動部や可動側固定部に腕部を溶接したときに形成される溶接部の形状と、可動側接続部の形状との差を小さくすることが可能になる。したがって、腕部が溶接されているときと溶接されていないときとの、バネ定数以外のバネ部材の特性の変動を抑制することが可能になる。
【0014】
本発明において、可動部は、可動側固定部が溶接で固定されるバネ固定部材を備え、可動部には、レンズの光軸方向において、可動側固定部の凸部の近傍部分をバネ固定部材とともに挟み込む挟込部が形成されていることが好ましい。このように構成すると、たとえば、光学装置が落下したときに可動部とバネ部材との間に生じる衝撃負荷をバネ固定部材と挟込部とで受けることが可能になる。したがって、凸部を利用して、可動部や可動側固定部に腕部が溶接されていても、形成された溶接部に衝撃負荷がかかりにくくなり、溶接部の割れを防止することが可能になる。
【0015】
また、上記の課題を解決するため、本発明の光学装置は、撮影用のレンズを有する可動部と、可動部を移動可能に保持する保持部と、可動部と保持部とを繋ぐバネ部材と、可動部を駆動する駆動機構とを備え、バネ部材は、可動部に固定される可動側固定部と、保持部に固定される保持側固定部と、可動側固定部と保持側固定部とを繋ぐ複数の腕部とを備え、可動部、可動側固定部、保持部および/または保持側固定部に腕部が溶接されて形成された溶接部が形成されていることを特徴とする。
【0016】
本発明の光学装置では、可動部、可動側固定部、保持部および/または保持側固定部に腕部が溶接されて形成された溶接部が形成されている。そのため、溶接部の位置によって、腕部の長さを調整して、バネ部材のバネ定数を調整することが可能になる。また、溶接時に腕部の一部が溶けても、溶けた金属は溶接後にその場で再度固まるため、溶接時に溶けた金属が異物として発生するおそれを低減することが可能になる。したがって、本発明では、異物を除去するための洗浄工程を不要にすることが可能になる。このように本発明では、バネ部材のバネ定数を調整することが可能であっても、異物を除去するための洗浄工程を不要にすることが可能になり、その結果、光学装置の製造工程を簡素化することが可能になる。また、本発明では、腕部が溶接されて形成された溶接部が形成されているため、可動部や固定部へのバネ部材の固定と、バネ部材のバネ定数の調整とを同時に行うことが可能になる。
【0017】
本発明において、複数の溶接部が形成されていることが好ましい。この場合には、バネ部材のバネ定数を調整しつつ、可動部や固定部へのバネ部材の固定強度を高めることが可能になる。
【0018】
本発明において、バネ部材は、可動側固定部と腕部との接続部となる可動側接続部を備え、可動側接続部の近傍に、腕部が少なくとも可動部に溶接されて形成された溶接部が形成されていることが好ましい。このように構成すると、可動側固定部のみに腕部が溶接されている場合と比較して、腕部の固定強度を高めることが可能になる。
【0019】
本発明において、腕部が伸びていく方向であって、かつ、可動側接続部から離れていく方向を第1方向とすると、溶接部の第1方向側の形状は、可動側接続部の第1方向側の形状と略等しくなっていることが好ましい。このように構成すると、腕部が溶接されているときと溶接されていないときとの、バネ定数以外のバネ部材の特性の変動を抑制することが可能になる。
【0020】
本発明において、可動部は、可動側固定部が溶接で固定されるバネ固定部材を備え、可動部には、レンズの光軸方向において、可動側固定部の溶接部の近傍部分をバネ固定部材とともに挟み込む挟込部が形成されていることが好ましい。このように構成すると、たとえば、光学装置が落下したときに可動部とバネ部材との間に生じる衝撃負荷をバネ固定部材と挟込部とで受けることが可能になる。したがって、溶接部に衝撃負荷がかかりにくくなり、溶接部の割れを防止することが可能になる。
【0021】
本発明において、バネ固定部材は、バネ部材と同じ材質で形成されていることが好ましい。このように構成すると、バネ固定部材に溶接で固定されるバネ部材の固定強度を高めることが可能になる。
【0022】
さらに、上記の課題を解決するため、本発明のバネ部材は、内周側に配置される第1の固定部と、外周側に配置される第2の固定部と、第1の固定部と第2の固定部とを繋ぐ複数の腕部とを備え、腕部には、腕部の幅方向へ突出する凸部が形成されていることを特徴とする。
【0023】
本発明のバネ部材では、腕部に、腕部の幅方向へ突出する凸部が形成されている。そのため、凸部を利用して、第1の固定部が固定される部材や第1の固定部に腕部を溶接したり、第2の固定部が固定される部材や第2の固定部に腕部を溶接することで、腕部の長さを調整して、バネ部材のバネ定数を調整することが可能になる。また、バネ定数を調整するための溶接時に凸部が溶けても、溶けた金属は溶接後にその場で再度固まるため、溶接時に溶けた金属が異物として発生するおそれを低減することが可能になる。したがって、本発明では、バネ部材が取り付けられる装置を製造する際に異物を除去するための洗浄工程を不要にすることが可能になる。このように本発明では、バネ部材のバネ定数を調整することが可能であっても、バネ部材が取り付けられる装置を製造する際に異物を除去するための洗浄工程を不要にすることが可能になり、その結果、バネ部材が取り付けられる装置の製造工程を簡素化することが可能になる。
【0024】
また、上記の課題を解決するため、本発明の光学装置の製造方法は、撮影用のレンズを有する可動部と、可動部を移動可能に保持する保持部と、可動部を駆動する駆動機構とを備えるとともに、可動部に固定される可動側固定部と、保持部に固定される保持側固定部と、可動側固定部と保持側固定部とを繋ぐ複数の腕部とを有するバネ部材を備える光学装置の製造方法であって、可動部、可動側固定部、保持部および/または保持側固定部に腕部を溶接して、バネ部材のバネ定数を調整する溶接工程を備えることを特徴とする。
【0025】
本発明の光学装置の製造方法では、可動部、可動側固定部、保持部および/または保持側固定部に腕部を溶接して、バネ部材のバネ定数を調整する溶接工程を備えている。そのため、本発明では、バネ部材のバネ定数を調整することができる。また、溶接時に腕部の一部が溶けても、溶けた金属は溶接後にその場で再度固まるため、溶接時に溶けた金属が異物として発生するおそれを低減することが可能になる。したがって、本発明では、異物を除去するための洗浄工程を不要にすることが可能になる。このように本発明では、バネ部材のバネ定数を調整することが可能であっても、異物を除去するための洗浄工程を不要にすることが可能になり、その結果、光学装置の製造工程を簡素化することが可能になる。また、本発明では、溶接工程で可動部、可動側固定部、保持部および/または保持側固定部に腕部を溶接しているため、可動部や固定部へのバネ部材の固定と、バネ部材のバネ定数の調整とを同時に行うことが可能になる。
【発明の効果】
【0026】
以上のように、本発明の光学装置では、バネ部材のバネ定数の調整が可能であっても、その製造工程を簡素化することが可能になる。また、本発明の板バネでは、バネ定数の調整が可能であっても、取り付けられる装置の製造工程を簡素化することが可能になる。さらに、本発明の光学装置の製造方法によれば、バネ部材のバネ定数の調整が可能であっても、光学装置の製造工程を簡素化することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の実施の形態にかかる光学装置の斜視図である。
【図2】図1のE−E断面の断面図である。
【図3】図1に示す光学装置の分解斜視図である。
【図4】図3に示すベース部材、板バネおよびストッパ部材の分解斜視図である。
【図5】図3に示すベース部材、板バネおよびストッパ部材の組立状態の底面図である。
【図6】図3に示す板バネおよびストッパ部材の組立状態の底面図である。
【図7】図6のF部の拡大図であり、(A)は腕部が溶接されていない状態を示す図、(B)は腕部が1箇所で溶接されている状態を示す図、(C)は腕部が2箇所で溶接されている状態を示す図である。
【図8】本発明の他の実施の形態にかかる凸部を説明するための拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施の形態を説明する。
【0029】
(光学装置の概略構成)
図1は、本発明の実施の形態にかかる光学装置1の斜視図である。図2は、図1のE−E断面の断面図である。なお、以下の説明では、図1に示すように、互いに直交する3方向のそれぞれをX方向、Y方向およびZ方向とし、X方向を左右方向、Y方向を前後方向、Z方向を上下方向とする。また、Z1方向側を「上」側、Z2方向側を「下」側とする。
【0030】
本形態の光学装置1は、携帯電話等の携帯機器、ドライブレコーダあるいは監視カメラシステム等に搭載される小型かつ薄型のカメラであり、オートフォーカス機能と振れ補正機能とを備えている。この光学装置1は、全体として略四角柱状に形成されている。本形態では、光学装置1は、撮影用のレンズの光軸Lの方向(光軸方向)から見たときの形状が略正方形状となるように形成されており、光学装置1の4つの側面は、左右方向または前後方向と略平行になっている。
【0031】
光学装置1は、レンズおよび撮像素子2を有するとともに揺動可能な可動部としてのカメラモジュール3と、レンズによって撮像素子2上に結像される光学像の振れを補正するための振れ補正装置4とを備えている。本形態では、上下方向は、カメラモジュール3が揺動していないときのカメラモジュール3の光軸方向とほぼ一致する。また、本形態では、カメラモジュール3の下端側に撮像素子2が搭載されており、上側に配置される被写体が撮影される。すなわち、本形態では、上側(Z1方向側)は被写体側(物体側)であり、下側(Z2方向側)は反被写体側(撮像素子側、像側)である。
【0032】
(カメラモジュールの構成)
図3は、図1に示す光学装置1の分解斜視図である。
【0033】
カメラモジュール3は、全体として略四角柱状に形成されている。本形態では、カメラモジュール3は、光軸方向から見たときの形状が略正方形状となるように形成されており、カメラモジュール3の4つの側面は、左右方向または前後方向と略平行になっている。
【0034】
カメラモジュール3は、レンズおよび撮像素子2に加え、レンズを保持し光軸方向へ移動可能な可動体5と、可動体5を光軸方向へ移動可能に保持する保持体6と、保持体6に対して可動体5を光軸方向へ駆動するためのレンズ駆動機構7とを備えている。可動体5は、可動体5の上端側に配置される板バネ9と、可動体5の下端側に配置される板バネ10とを介して保持体6に移動可能に保持されている。
【0035】
可動体5は、複数のレンズが固定されたレンズホルダ12と、レンズホルダ12を保持するスリーブ13とを備えている。保持体6は、カメラモジュール3の4つの側面を構成するカバー部材14と、カメラモジュール3の反被写体側部分を構成するベース部材15とを備えている。
【0036】
レンズホルダ12は、略円筒状に形成されている。レンズホルダ12の内周側には、複数のレンズが固定されている。スリーブ13は、略筒状に形成されている。スリーブ13の内周面には、レンズホルダ12の外周面が固定されており、スリーブ13は、その内周側でレンズホルダ12を保持している。
【0037】
カバー部材14は、底部14aと筒部14bとを有する底付きの略四角筒状に形成されている。底部14aは、上側に配置されており、カメラモジュール3の被写体側の端面を構成している。底部14aの中心には、貫通孔14cが形成されている。カバー部材14は、可動体5およびレンズ駆動機構7の外周側を囲むように配置されている。
【0038】
ベース部材15は、樹脂材料で形成されている。また、ベース部材15は、扁平な略直方体状に形成されている。ベース部材15の中心には、貫通孔15aが形成されており、本形態のベース部材15は、光軸方向から見たときの形状が略正方形の枠状となるように形成されている。ベース部材15は、カバー部材14の筒部14bの下端に固定されている。
【0039】
レンズ駆動機構7は、可動体5の外周面に沿って巻回される2個のレンズ駆動用コイル18と、レンズ駆動用コイル18に対向配置される4個のレンズ駆動用磁石19とを備えている。2個のレンズ駆動用コイル18は、上下方向に所定の間隔をあけた状態でスリーブ13の外周面に固定されている。レンズ駆動用磁石19は、光軸方向から見たときの形状が略等脚台形状となる略四角柱状に形成されている。4個のレンズ駆動用磁石19は、カバー部材14の筒部14bの内周面の四隅に固定されている。
【0040】
撮像素子2は、基板22に実装されている。基板22は、ベース部材15の下面に固定されている。基板22には、FPC(フレキシブルプリント基板)23が接続されており、FPC23は、光学装置1の下端側で引き回されて、光学装置1の側面から引き出されている。また、基板22の下面には、後述の支点突起部35aが当接する当接板24が固定されている。
【0041】
なお、カメラモジュール3は、カバー部材14の筒部14bに取り付けられる後述の磁石保持フレーム43、44およびストッパ部材45も備えている。
【0042】
(振れ補正装置の構成)
振れ補正装置4は、カメラモジュール3を揺動可能に支持する支持体27と、カメラモジュール3と支持体27とを繋ぐ板バネ28と、手振れ等の振れを補正するために支持体27に対してカメラモジュール3を揺動させる揺動駆動機構29とを備えている。本形態では、支持体27は、可動部であるカメラモジュール3を移動可能に保持する保持部であり、板バネ28は、可動部であるカメラモジュール3と保持部である支持体27とを繋ぐバネ部材であり、揺動駆動機構29は、可動部であるカメラモジュール3を駆動する駆動機構である。
【0043】
支持体27は、光学装置1の前後左右の4つの側面を構成するケース体31と、光学装置1の下面側を構成する下ケース体32とを備えている。ケース体31は、略四角筒状に形成されており、カメラモジュール3を外周側から囲むように配置されている。下ケース体32は、図3に示すように、略正方形状の底部32aと3個の側面部32bとから構成されている。下ケース体32の側面の、側面部32bが形成されていない部分には、側板33が固定されている。
【0044】
下ケース体32の底部32aは、下側に配置されており、光学装置1の下面を構成している。図2に示すように、底部32aの中心部は、上側に向かって窪んでいる。また、底部32aの中心には、貫通孔32cが形成されている。底部32aの窪みの中には、カメラモジュール3の揺動の支点となる支点突起部35aが形成された支点部材35が配置されている。支点突起部35aは、略半球状に形成されている。また、支点突起部35aは、貫通孔32cを通過して底部32aの上面から突出するように配置されており、当接板24に当接している。底部32aの下面には、底部32aの窪みを塞ぐように固定板36が固定されており、支点部材35は、固定板36によって、底部32aの窪みの中に保持されている。
【0045】
板バネ28は、カメラモジュール3に固定される可動側固定部28aと、支持体27に固定される保持側固定部28bと、可動側固定部28aと保持側固定部28bとを繋ぐ4本の腕部28cとを備えている。本形態では、保持側固定部28bに対して腕部28cが撓むことで、可動側固定部28aに固定されたカメラモジュール3の揺動動作が可能となっている。板バネ28の詳細な構成については後述する。
【0046】
揺動駆動機構29は、4個の振れ補正用コイル38と、4個の振れ補正用コイル38のそれぞれに対向配置される4個の振れ補正用磁石39とを備えている。
【0047】
4個の振れ補正用コイル38は、図3に示すように、FPC40に実装されて形成されている。また、振れ補正用コイル38は、図3に示すように、略長方形状に巻回されて形成されている。FPC40は、4個の振れ補正用コイル38のそれぞれが、ケース体31の内周面を構成する4つの内側面のそれぞれに配置されるように、ケース体31の内周面に沿って配置されている。また、FPC40は、中継用のFPC41を介して、FPC23に接続されている。なお、振れ補正用コイル38は、空芯状に巻回された空芯コイルであっても良い。
【0048】
振れ補正用磁石39は、略長方形の平板状に形成されている。4個の振れ補正用磁石39の上端面は、磁石保持フレーム43に固定され、4個の振れ補正用磁石39の下端面は、磁石保持フレーム44に固定されている。磁石保持フレーム43、44は、平板状に形成されるとともに、略正方形の枠状に形成されている。磁石保持フレーム43、44は、4個の振れ補正用磁石39のそれぞれがカバー部材14の筒部14bの外周面を構成する4つの外側面のそれぞれに配置されるように、筒部14bの外周面に固定されている。
【0049】
磁石保持フレーム44の下面には、落下等の衝撃が光学装置1に加わったときに、前後左右方向におけるカメラモジュール3の可動範囲を規制するためのストッパ部材45が固定されている。ストッパ部材45は、平板状に形成されるとともに、略正方形の枠状に形成されている。また、ストッパ部材45は、金属材料によって形成されている。たとえば、ストッパ部材45は、ステンレスの薄鋼板や銅合金によって形成されている。
【0050】
(撮影用光学装置の概略動作)
以上のように構成された光学装置1では、レンズ駆動用コイル18に電流が供給されると、可動体5とともにレンズが光軸方向へ移動する。また、光学装置1では、図示を省略するジャイロスコープでカメラモジュール3の傾きの変化が検出されると、ジャイロスコープでの検出結果に基づいて、振れ補正用コイル38に電流が供給される。振れ補正用コイル38に電流が供給されると、支点突起部35aを中心に、左右方向および/または前後方向を軸方向として、カメラモジュール3が光軸Lを傾けるように揺動して、振れが補正される。
【0051】
なお、ジャイロスコープは、光学装置1の内部に配置されても良いし、光学装置1の外部に配置されても良い。ジャイロスコープが光学装置1の外部に配置される場合には、光学装置1の内部に、たとえば、ホール素子やフォトリフレクタ等のカメラモジュール3の位置を検出するためのセンサが配置される。
【0052】
(板バネおよびその周辺部分の構成)
図4は、図3に示すベース部材15、板バネ28およびストッパ部材45の分解斜視図である。図5は、図3に示すベース部材15、板バネ28およびストッパ部材45の組立状態の底面図である。図6は、図3に示す板バネ28およびストッパ部材45の組立状態の底面図である。図7は、図6のF部の拡大図であり、(A)は腕部28cが溶接されていない状態を示す図、(B)は腕部28cが1箇所で溶接されている状態を示す図、(C)は腕部28cが2箇所で溶接されている状態を示す図である。
【0053】
板バネ28は、上述のように、可動側固定部28aと、保持側固定部28bと、4本の腕部28cとを備えている。可動側固定部28aと腕部28cとは、可動側接続部28dによって接続され、保持側固定部28bと腕部28cとは、保持側接続部28eによって接続されている。また、板バネ28は、ストッパ部材45と同じ金属材料によって形成されている。たとえば、板バネ28は、ステンレスの薄鋼板や銅合金によって形成されている。また、板バネ28は、エッチング加工によって製造されている。
【0054】
可動側固定部28aおよび保持側固定部28bは、略四角形の枠状に形成されている。本形態では、可動側固定部28aおよび保持側固定部28bは、略正方形状の枠状に形成されている。可動側固定部28aは、保持側固定部28bよりも小さく形成されており、保持側固定部28bの内周側に配置されている。本形態の可動側固定部28aは、内周側に配置される第1の固定部であり、保持側固定部28bは、外周側に配置される第2の固定部である。
【0055】
腕部28cは、略L形状に形成されている。具体的には、腕部28cは、図6に示すように、可動側接続部28dに繋がる略直線状の内側バネ部28fと、保持側接続部28eに繋がる略直線状の外側バネ部28gとによって構成される略L形状に形成されている。また、腕部28cは、略正方形状の枠状に形成される可動側固定部28aおよび保持側固定部28bに沿うように、可動側固定部28aと保持側固定部28bとの間に配置されている。すなわち、腕部28cは、可動側固定部28aおよび保持側固定部28bに沿うように、可動側固定部28aの外周側かつ保持側固定部28bの内周側に配置されている。
【0056】
本形態では、内側バネ部28fは、外側バネ部28gよりも長くなっている。また、可動側接続部28dと保持側接続部28eとが隣接して配置されるように、腕部28cの長さが設定されている。また、腕部28cの幅は、非常に狭くなっている。たとえば、腕部28cの幅は、0.1mm程度となっている。
【0057】
可動側接続部28dは、腕部28cから可動側固定部28aに向かうにしたがって、その幅が広がるように形成されている。図7(A)に示すように、可動側接続部28dの、内側バネ部28fが伸びている側の端面は、可動側固定部28aの外周端面に滑らかに繋がる円弧状の曲面と、内側バネ部28fの内側端面に滑らかに繋がる円弧状の曲面とによって構成されている。この2個の円弧状の曲面は、滑らかに繋がっている。また、可動側接続部28dの、内側バネ部28fが伸びていない側の端面は、可動側固定部28aの外周端面に滑らかに繋がる円弧状の曲面と、内側バネ部28fの外側端面に滑らかに繋がる円弧状の曲面とによって構成されている。この2個の円弧状の曲面は、滑らかに繋がっている。
【0058】
保持側接続部28eは、腕部28cから保持側固定部28bに向かうにしたがって、その幅が広がるように形成されている。図7(A)に示すように、保持側接続部28eの、外側バネ部28gが伸びている側の端面は、保持側固定部28bの内周端面に滑らかに繋がる円弧状の曲面と、外側バネ部28gの外側端面に滑らかに繋がる円弧状の曲面とによって構成されている。この2個の円弧状の曲面は、滑らかに繋がっている。また、保持側接続部28eの、外側バネ部28gが伸びていない側の端面は、保持側固定部28bの内周端面に滑らかに繋がる円弧状の曲面と、外側バネ部28gの内側端面に滑らかに繋がる円弧状の曲面とによって構成されている。この2個の円弧状の曲面は、滑らかに繋がっている。
【0059】
可動側固定部28aは、ストッパ部材45の下面に固定されている。また、可動側固定部28aは、レーザ溶接によって固定されている。本形態では、可動側固定部28aの、可動側接続部28dの近傍にレーザが照射されて、可動側固定部28aの上面がストッパ部材45の下面に固定されており、図7(A)に示すように、可動側固定部28aの、可動側接続部28dの近傍には、可動側固定部28aがストッパ部材45に溶接されて形成された溶接部47が形成されている。具体的には、可動側固定部28aの、可動側接続部28dの近傍であって、かつ、内側バネ部28fが伸びていない側に、レーザが照射されており、可動側固定部28aの、可動側接続部28dの近傍であって、かつ、内側バネ部28fが伸びていない側に溶接部47が形成されている。
【0060】
なお、可動側固定部28aの、可動側接続部28dの近傍であって、かつ、内側バネ部28fが伸びていない側には、図6に示すように、レーザを照射する際の目印となる切欠部28hが形成されている。また、本形態のストッパ部材45は、可動側固定部28aが溶接されて固定されるバネ固定部材である。
【0061】
保持側固定部28bは、図2に示すように、下ケース体32の側面部32bの上端および側板33の上端とケース体31の下端との間に挟まれた状態で、ケース体31の下端に固定されている。また、保持側固定部28bは、レーザ溶接によって固定されている。本形態では、略正方形の枠状に形成される保持側固定部28bの四辺の略中心にレーザが照射されて、保持側固定部28bの上面がケース体31の下端に固定されている。
【0062】
なお、板バネ28は、支点突起部35aと当接板24とを確実に当接させるための与圧が発生するように(すなわち、カメラモジュール3を下方向へ付勢する付勢力が発生するように)、撓んだ状態で固定されている。
【0063】
上述のように、板バネ28は、エッチング加工によって製造されている。そのため、腕部28cの幅のばらつきが大きくなり、板バネ28のバネ定数のばらつきが大きくなりやすい。そこで、本形態の板バネ28の腕部28cには、腕部28cの長さを調整して、板バネ28のバネ定数を調整するための2個の凸部28j、28kが形成されている。
【0064】
凸部28j、28kは、腕部28cの、可動側接続部28dの近傍に形成されている。すなわち、凸部28j、28kは、内側バネ部28fの、可動側接続部28dの近傍に形成されている。具体的には、凸部28j、28kは、内側バネ部28fの長さ方向における中心位置よりも可動側接続部28dに近い側に形成されている。また、凸部28j、28kは、板バネ28の前後方向または左右方向の略中心位置に形成されている。また、凸部28j、28kは、内側バネ部28fの幅方向へ突出するように形成されている。具体的には、凸部28j、28kは、可動側固定部28aに向かって突出するように形成されている。
【0065】
凸部28j、28kは、可動側接続部28dからこの順番に所定の間隔で形成されている。図7(A)に示すように、可動側接続部28dと凸部28jの距離L1は、凸部28jと凸部28kとの距離L2よりも若干長くなっているが、距離L1と距離L2とは略等しくなっている。凸部28jと凸部28kとは同じ形状に形成されている。
【0066】
また、凸部28j、28kは、略等脚台形状に形成されているとともに、内側バネ部28fの長さ方向における凸部28j、28kの両端面は、内側バネ部28fの内側端面に滑らかに繋がる略1/4円弧状の曲面となっている。上述のように、可動側接続部28dの、内側バネ部28fが伸びている側の端面は、可動側固定部28aの外周端面に滑らかに繋がる円弧状の曲面と、内側バネ部28fの内側端面に滑らかに繋がる円弧状の曲面とによって構成されており、内側バネ部28fが伸びていく方向であって、かつ、可動側接続部28dから離れていく方向(図7(A)では、右方向)を第1方向とすると、凸部28j、28kの第1方向側の形状は、可動側接続部28dの腕部28c側の根元の第1方向側の形状と略等しくなっている。
【0067】
図2、図5に示すように、略正方形の枠状に形成される可動側固定部28aの各辺の略中心部分は、上下方向において、ベース部材15に形成される突出部15bとストッパ部材45とによって挟まれている。上述のように、凸部28j、28kは、板バネ28の前後方向または左右方向の略中心位置に形成されており、本形態では、可動側固定部28aの、凸部28j、28kの近傍部分が突出部15bとストッパ部材45とによって挟まれている。突出部15bは、ベース部材15の側面から前後方向または左右方向へ突出するように形成されている。本形態の突出部15bは、可動側固定部28aの凸部28j、28kの近傍部分をバネ固定部材であるストッパ部材45とともに挟み込む挟込部である。
【0068】
(板バネのバネ定数の調整方法)
光学装置1の組立時には、支持体27に対するカメラモジュール3の付勢力(すなわち、板バネ28の付勢力)が測定され、付勢力の測定結果に基づいて、板バネ28のバネ定数が調整される。具体的には、測定された板バネ28の付勢力が所定設計値の範囲内にある場合には、図7(B)に示すように、可動側固定部28aの、可動側接続部28dの近傍をストッパ部材45に溶接するとともに、凸部28jを利用して、腕部28c(具体的には、内側バネ部28f)をストッパ部材45に溶接する。
【0069】
本形態では、可動側固定部28aの、凸部28jの先端に近い箇所にレーザを照射する。この部分にレーザを照射すると、可動側固定部28aの、凸部28jの先端の近い部分および凸部28jが溶けて、腕部28cの、凸部28jが形成されていた部分がストッパ部材45に溶接されて固定される。このときには、腕部28cの、凸部28jが形成されていた部分は、可動側固定部28aにも溶接されて固定され、また、可動側固定部28aの、凸部28jの先端に近い部分は、ストッパ部材45に溶接されて固定される。このように、可動側固定部28aの、凸部28jの先端に近い箇所にレーザが照射されると、ストッパ部材45および可動側固定部28aに腕部28cが溶接されて形成された溶接部48が形成される。すなわち、可動側接続部28dの近傍に、溶接部48が形成される。
【0070】
また、測定された板バネ28の付勢力が所定設計値の範囲よりも小さい場合には、図7(C)に示すように、可動側固定部28aの、可動側接続部28dの近傍をストッパ部材45に溶接するとともに、凸部28j、28kを利用して、腕部28cをストッパ部材45に溶接する。すなわち、可動側固定部28aの、凸部28jの先端に近い箇所、および、凸部28kの先端に近い箇所にレーザを照射する。この部分にレーザを照射すると、上述のように、腕部28cの、凸部28jが形成されていた部分、および、凸部28kが形成されていた部分がストッパ部材45に溶接されて固定される。このときには、腕部28cの、凸部28jが形成されていた部分、および、凸部28kが形成されていた部分は、可動側固定部28aにも溶接されて固定され、また、可動側固定部28aの、凸部28jの先端に近い部分、および、凸部28kの先端に近い部分は、ストッパ部材45に溶接されて固定される。また、可動側接続部28dの近傍には、ストッパ部材45および可動側固定部28aに腕部28cが溶接されて形成された溶接部48、49が形成される。
【0071】
また、測定された板バネ28の付勢力が所定設計値の範囲よりも大きい場合には、図7(A)に示すように、可動側固定部28aの、可動側接続部28dの近傍のみをストッパ部材45に溶接する。
【0072】
このように、本形態では、測定された板バネ28の付勢力が所定設計値の範囲内にある場合、および、測定された板バネ28の付勢力が所定設計値の範囲よりも小さい場合には、ストッパ部材45および可動側固定部28aに腕部28cを溶接して、板バネ28のバネ定数を調整する溶接工程が行われる。この溶接工程において、凸部28j、28kは、ストッパ部材45および可動側固定部28aに腕部28cを溶接する際の目印となる。
【0073】
なお、凸部28j、28kを利用して、腕部28cがストッパ部材45に溶接される場合には、凸部28j、28kは、溶接時に溶けるとともに溶接終了後に固まって、溶接部48、49の一部になる。また、上述のように、凸部28j、28kの第1方向側の形状は、可動側接続部28dの腕部28c側の根元の第1方向側の形状と略等しくなっているため、溶接部48、49の第1方向側の形状は、図7(B)、(C)に示すように、可動側接続部28dの第1方向側の形状と略等しくなっている。
【0074】
(本形態の主な効果)
以上説明したように、本形態では、腕部28cに凸部28j、28kが形成されている。そのため、上述のように、凸部28j、28kを利用して、ストッパ部材45および可動側固定部28aに腕部28cを溶接することで、腕部28cの長さを調整して、板バネ28のバネ定数を調整することができる。また、板バネ28のバネ定数を調整するための溶接時に、可動側固定部28aの、凸部28j、28kの先端に近い部分や凸部28j、28kが溶けても、溶けた金属は溶接後にその場で再度固まるため、溶接時に溶けた金属が異物として発生するおそれを低減することが可能になる。したがって、本形態では、異物を除去するための洗浄工程を不要にすることが可能になる。このように本形態では、板バネ28のバネ定数を調整することが可能であっても、異物を除去するための洗浄工程を不要にすることが可能になり、その結果、光学装置1の製造工程を簡素化することが可能になる。また、本形態では、板バネ28のバネ定数を調整して、そのばらつきを抑制することができるため、光学装置1の振れ補正の動作感度を安定させることが可能になる。
【0075】
本形態では、測定された板バネ28の付勢力が所定設計値の範囲内にある場合、および、測定された板バネ28の付勢力が所定設計値の範囲よりも小さい場合に、ストッパ部材45および可動側固定部28aに腕部28cが溶接されている。そのため、この場合には、カメラモジュール3への板バネ28の固定と、板バネ28のバネ定数の調整とを同時に行うことが可能になる。
【0076】
本形態では、腕部28cに2個の凸部28j、28kが形成されている。そのため、2個の凸部28j、28kを利用して、腕部28cの長さを3段階で調整することができる。したがって、本形態では、板バネ28のバネ定数を3段階で調整することができる。なお、本形態では、腕部28cに2個の凸部28j、28kが形成されているため、溶接部47に加え、2個の溶接部48、49を形成することが可能である。溶接部47に加え、2個の溶接部48、49が形成される場合には、カメラモジュール3への板バネ28の固定強度を高めることが可能になる。
【0077】
本形態では、凸部28j、28kの第1方向側の形状は、可動側接続部28dの腕部28c側の根元の第1方向側の形状と略等しくなっており、溶接部48、49の第1方向側の形状は、可動側接続部28dの第1方向側の形状と略等しくなっている。そのため、腕部28cが溶接されているときと溶接されていないときとの、バネ定数以外の板バネ28の特性の変動を抑制することが可能になる。
【0078】
本形態では、可動側固定部28aの、凸部28j、28kの近傍部分がベース部材15の突出部15bとストッパ部材45とによって挟まれている。そのため、腕部28cが溶接されるときには、可動側固定部28aの、溶接部48、49の近傍部分が突出部15bとストッパ部材45とによって挟まれる。したがって、本形態では、たとえば、光学装置1が落下したときにカメラモジュール3と板バネ28との間に生じる衝撃負荷をベース部材15の突出部15bとストッパ部材45とで受けることが可能になり、カメラモジュール3と板バネ28との間に生じる衝撃負荷が溶接部48、49にかかりにくくなる。その結果、本形態では、溶接部48、49の割れを防止することが可能になる。
【0079】
本形態では、板バネ28は、ストッパ部材45と同じ金属材料によって形成されている。そのため、本形態では、ストッパ部材45に溶接で固定される板バネ28の固定強度を高めることが可能になる。
【0080】
なお、本形態の腕部28cの幅は、非常に狭くなっているため、腕部28cをストッパ部材45に溶接する際に、凸部28j、28kにレーザが照射されると、腕部28cがレーザで切断されたり、腕部28cがレーザで損傷するおそれがある。しかしながら、本形態では、腕部28cをストッパ部材45に溶接する際に、可動側固定部28aの、凸部28j、28kの先端に近い箇所にレーザを照射しているため、腕部28cがレーザで切断されたり、腕部28cがレーザで損傷するおそれがない。
【0081】
(他の実施の形態)
上述した形態は、本発明の好適な形態の一例ではあるが、これに限定されるものではなく本発明の要旨を変更しない範囲において種々変形実施が可能である。
【0082】
上述した形態では、板バネ28の腕部28cに2個の凸部28j、28kが形成されている。この他にもたとえば、腕部28cに3個以上の凸部が形成されても良いし、腕部28cに1個の凸部が形成されても良い。腕部28cに3個以上の凸部が形成される場合には、板バネ28のバネ定数をより多段階で調整することが可能になり、その結果、板バネ28のバネ定数をより精度良く調整することが可能になる。また、腕部28cに1個の凸部が形成される場合には、凸部28j、28kと同じ形状の凸部が腕部28cに形成されても良いし、図8に示すように、腕部28cの長さ方向における幅が凸部28j、28kよりも広い凸部28mが腕部28cに形成されても良い。この場合には、図8に示すように、溶接部50の位置を連続的に変えることが可能になるため、腕部28cの長さを連続的に調整することが可能になる。すなわち、板バネ28のバネ定数を連続的に調整することが可能になる。
【0083】
上述した形態では、可動側固定部28aの、凸部28j、28kの先端に近い箇所にレーザを照射して、ストッパ部材45および可動側固定部28aに腕部28cを溶接して固定している。この他にもたとえば、凸部28j、28kにレーザを照射して、ストッパ部材45および可動側固定部28aに腕部28cを溶接して固定しても良い。また、上述した形態では、測定された板バネ28の付勢力が所定設計値の範囲内にある場合、および、測定された板バネ28の付勢力が所定設計値の範囲よりも小さい場合に、ストッパ部材45および可動側固定部28aに腕部28cを溶接して固定しているが、測定された板バネ28の付勢力が所定設計値の範囲内にある場合、および、測定された板バネ28の付勢力が所定設計値の範囲よりも小さい場合に、可動側固定部28aのみに腕部28cを溶接して固定しても良いし、ストッパ部材45のみに腕部28cを溶接して固定しても良い。なお、ストッパ部材45に腕部28cが溶接されている場合には、可動側固定部28aのみに腕部28cが溶接されている場合と比較して、腕部28cの固定強度を高めることが可能になる。
【0084】
上述した形態では、測定された板バネ28の付勢力が所定設計値の範囲内にある場合に、可動側固定部28aの、可動側接続部28dの近傍をストッパ部材45に溶接するとともに、腕部28cの、凸部28jが形成されていた部分をストッパ部材45および可動側固定部28aに溶接し、かつ、可動側固定部28aの、凸部28jの先端に近い部分をストッパ部材45に溶接している。この他にもたとえば、測定された板バネ28の付勢力が所定設計値の範囲内にある場合に、可動側固定部28aの、可動側接続部28dの近傍をストッパ部材45に溶接せずに、腕部28cの、凸部28jが形成されていた部分をストッパ部材45および可動側固定部28aに溶接し、かつ、可動側固定部28aの、凸部28jの先端に近い部分をストッパ部材45に溶接しても良い。
【0085】
また、上述した形態では、測定された板バネ28の付勢力が所定設計値の範囲よりも小さい場合に、可動側固定部28aの、可動側接続部28dの近傍をストッパ部材45に溶接するとともに、腕部28cの、凸部28j、28kが形成されていた部分をストッパ部材45および可動側固定部28aに溶接し、かつ、可動側固定部28aの、凸部28j、28kの先端に近い部分をストッパ部材45に溶接しているが、可動側固定部28aの、可動側接続部28dの近傍をストッパ部材45に溶接せずに、腕部28cの、凸部28j、28kが形成されていた部分をストッパ部材45および可動側固定部28aに溶接し、かつ、可動側固定部28aの、凸部28j、28kの先端に近い部分をストッパ部材45に溶接しても良い。また、可動側固定部28aの、可動側接続部28dの近傍をストッパ部材45に溶接せずに、腕部28cの、凸部28kが形成されていた部分のみをストッパ部材45および可動側固定部28aに溶接し、かつ、可動側固定部28aの、凸部28kの先端に近い部分のみをストッパ部材45に溶接しても良い。
【0086】
上述した形態では、凸部28j、28kは、腕部28cの、可動側接続部28dの近傍に形成され、溶接部48、49は、可動側接続部28dの近傍に形成されている。この他にもたとえば、保持側固定部28bに向かって外側バネ部28gの幅方向へ突出する凸部が、腕部28c(具体的には、外側バネ部28g)の、保持側接続部28eの近傍に形成され、ストッパ部材45および/または保持側固定部28bに腕部28cが溶接されて形成された溶接部が保持側接続部28eの近傍に形成されても良い。
【0087】
上述した形態では、腕部28cに凸部28j、28kが形成されている。この他にもたとえば、腕部28cの幅が広い場合には、腕部28cに凸部28j、28kが形成されてなくても良い。この場合、腕部28cをストッパ部材45に固定するときには、腕部28cにレーザが照射される。
【0088】
上述した形態では、可動側固定部28aは、ストッパ部材45に固定されている。この他にもたとえば、磁石保持フレーム44の下面にストッパ部材45が固定されていない場合には、可動側固定部28aは、磁石保持フレーム44に固定されても良い。この場合、腕部28cが溶接されるときには、腕部28cは、磁石保持フレーム44に溶接される。また、可動側固定部28aは、カバー部材14に固定されても良い。この場合、腕部28cが溶接されるときには、腕部28cは、カバー部材14に溶接される。
【0089】
上述した形態では、板バネ28は、ストッパ部材45と同じ金属材料によって形成されているが、板バネ28は、ストッパ部材45と異なる金属材料によって形成されても良い。また、上述した形態では、板バネ28は、4本の腕部28cを備えているが、板バネ28は、3本の腕部28cを備えていても良いし、5本以上の腕部28cを備えていても良い。
【0090】
上述した形態では、レンズ駆動機構7は、レンズ駆動用コイル18とレンズ駆動用磁石19とを備えるいわゆるボイスコイルモータである。この他にもたとえば、レンズ駆動機構7は、レンズ駆動用コイル18およびレンズ駆動用磁石19に代えて、レンズを光軸方向へ移動させるための圧電素子を備えていても良いし、形状記憶合金を備えていても良い。また、上述した形態では、光学装置1は、オートフォーカス機能を備えているが、光学装置1は、オートフォーカス機能を備えていなくても良い。すなわち、カメラモジュール3は、レンズ駆動機構7を備えていなくても良い。この場合には、たとえば、スリーブ13が保持体6に固定される。
【0091】
上述した形態では、カメラモジュール3を可動部とし、支持体27を保持部とする光学装置1を例に本発明の実施の形態を説明したが、本発明の構成は、光学装置1以外の光学装置にも適用可能である。たとえば、本発明の構成は、特許文献1に記載のレンズ駆動装置にも適用可能である。すなわち、本発明が適用される光学装置は、レンズ駆動装置であっても良い。この場合には、特許文献1に記載の可動体が本発明における可動部となり、特許文献1に記載の固定体が本発明における保持部となり、特許文献1に記載の板バネが本発明におけるバネ部材となる。
【符号の説明】
【0092】
1 光学装置
3 カメラモジュール(可動部)
15b 突出部(挟込部)
27 支持体(保持部)
28 板バネ(バネ部材)
28a 可動側固定部(第1の固定部)
28b 保持側固定部(第2の固定部)
28c 腕部
28d 可動側接続部
28j、28k、28m 凸部
29 揺動駆動機構(駆動機構)
45 ストッパ部材(バネ固定部材)
48、49、50 溶接部
L 光軸
Z 光軸方向

【特許請求の範囲】
【請求項1】
撮影用のレンズを有する可動部と、前記可動部を移動可能に保持する保持部と、前記可動部と前記保持部とを繋ぐバネ部材と、前記可動部を駆動する駆動機構とを備え、
前記バネ部材は、前記可動部に固定される可動側固定部と、前記保持部に固定される保持側固定部と、前記可動側固定部と前記保持側固定部とを繋ぐ複数の腕部とを備え、
前記腕部には、前記腕部の幅方向へ突出する凸部が形成されていることを特徴とする光学装置。
【請求項2】
前記腕部には、複数の前記凸部が形成されていることを特徴とする請求項1記載の光学装置。
【請求項3】
前記バネ部材は、前記可動側固定部と前記腕部との接続部となる可動側接続部を備え、
前記凸部は、前記腕部の、前記可動側接続部の近傍に形成されていることを特徴とする請求項1または2記載の光学装置。
【請求項4】
前記可動側固定部および前記保持側固定部は、略四角形の枠状に形成され、
前記可動側固定部は、前記保持側固定部の内周側に配置され、
前記腕部は、略L形状に形成されるとともに、前記可動側固定部の外周側かつ前記保持側固定部の内周側に配置され、
前記凸部は、前記可動側固定部に向かって突出するように形成され、
前記腕部が伸びていく方向であって、かつ、前記可動側接続部から離れていく方向を第1方向とすると、
前記凸部の前記第1方向側の形状は、前記可動側接続部の前記腕部側の根元の前記第1方向側の形状と略等しくなっていることを特徴とする請求項3記載の光学装置。
【請求項5】
前記可動部は、前記可動側固定部が溶接で固定されるバネ固定部材を備え、
前記可動部には、前記レンズの光軸方向において、前記可動側固定部の前記凸部の近傍部分を前記バネ固定部材とともに挟み込む挟込部が形成されていることを特徴とする請求項3または4記載の光学装置。
【請求項6】
撮影用のレンズを有する可動部と、前記可動部を移動可能に保持する保持部と、前記可動部と前記保持部とを繋ぐバネ部材と、前記可動部を駆動する駆動機構とを備え、
前記バネ部材は、前記可動部に固定される可動側固定部と、前記保持部に固定される保持側固定部と、前記可動側固定部と前記保持側固定部とを繋ぐ複数の腕部とを備え、
前記可動部、前記可動側固定部、前記保持部および/または前記保持側固定部に前記腕部が溶接されて形成された溶接部が形成されていることを特徴とする光学装置。
【請求項7】
複数の前記溶接部が形成されていることを特徴とする請求項6記載の光学装置。
【請求項8】
前記バネ部材は、前記可動側固定部と前記腕部との接続部となる可動側接続部を備え、
前記可動側接続部の近傍に、前記腕部が少なくとも前記可動部に溶接されて形成された前記溶接部が形成されていることを特徴とする請求項6または7記載の光学装置。
【請求項9】
前記腕部が伸びていく方向であって、かつ、前記可動側接続部から離れていく方向を第1方向とすると、
前記溶接部の前記第1方向側の形状は、前記可動側接続部の前記第1方向側の形状と略等しくなっていることを特徴とする請求項8記載の光学装置。
【請求項10】
前記可動部は、前記可動側固定部が溶接で固定されるバネ固定部材を備え、
前記可動部には、前記レンズの光軸方向において、前記可動側固定部の前記溶接部の近傍部分を前記バネ固定部材とともに挟み込む挟込部が形成されていることを特徴とする請求項8または9記載の光学装置。
【請求項11】
前記バネ固定部材は、前記バネ部材と同じ材質で形成されていることを特徴とする請求項5または10記載の光学装置。
【請求項12】
内周側に配置される第1の固定部と、外周側に配置される第2の固定部と、前記第1の固定部と前記第2の固定部とを繋ぐ複数の腕部とを備え、
前記腕部には、前記腕部の幅方向へ突出する凸部が形成されていることを特徴とするバネ部材。
【請求項13】
撮影用のレンズを有する可動部と、前記可動部を移動可能に保持する保持部と、前記可動部を駆動する駆動機構とを備えるとともに、前記可動部に固定される可動側固定部と、前記保持部に固定される保持側固定部と、前記可動側固定部と前記保持側固定部とを繋ぐ複数の腕部とを有するバネ部材を備える光学装置の製造方法であって、
前記可動部、前記可動側固定部、前記保持部および/または前記保持側固定部に前記腕部を溶接して、前記バネ部材のバネ定数を調整する溶接工程を備えることを特徴とする光学装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−247460(P2012−247460A)
【公開日】平成24年12月13日(2012.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−116471(P2011−116471)
【出願日】平成23年5月25日(2011.5.25)
【出願人】(000002233)日本電産サンキョー株式会社 (1,337)
【Fターム(参考)】