説明

光学複合シート

【課題】 適切に光を伝播できる光学複合シートを提供することを目的とする。
【解決手段】 光学複合シート1は、第1光学層10及び第2光学層20と、第1光学層10と第2光学層20との間に介在され、第1光学層10及び第2光学層20よりも屈折率が低い低屈折率層30とを備える。低屈折率層30は、平均粒子径が5nm〜300nmとなる多数の粒子50を含み、低屈折率層30と接する第1光学層10及び第2光学層20の少なくとも一方の面には、凹部を有する三次元形状部70が形成され、当該粒子50が凹部を満たしている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、適切に光を伝播することができる光学複合シートに関するものである。
【背景技術】
【0002】
携帯電話やPDA(Personal Digital Assistant)に代表される小型電子機器や、据え置き型のテレビ等に液晶ディスプレイが用いられている。このような小型電子機器やテレビ等に用いられる液晶ディスプレイには、一般的にバックライト方式が採用されており、液晶ディスプレイの背面から光が照射される。このバックライトには、主にエッジライト型(サイドライト型ともいう)と直下型とがある。
【0003】
エッジライト型のバックライトは、導光シート、及び、光源を主な構成として備える。導光シートは、光を伝播可能に構成され、液晶部と対向する一方の主面が出射面とされ、この出射面と略垂直な一側面が入射面とされる。光源は、入射面に対向して配置される。そして、光源から出射する光は、導光シートの入射面から導光シート内に入射して、導光シート内を反射しながら伝播し、出射面に対してNA(Numerical Aperture:開口数)の比較的高い光が出射面から出射する。
【0004】
例えば、下記特許文献1には、このような導光シート(導光板)が記載されている。下記特許文献1に記載の導光シートは、出射面が平面状で無反射処理がなされ、出射面側と反対側の面にプリズムが形成され、出射面側のシートと出射面側と反対側のシートとが粘着剤により貼り合せられた構成とされている。それぞれのシートと粘着剤は、それぞれ透明であり、出射面側のシートの屈折率が1.490とされ、出射面側と反対側のシートの屈折率が1.585とされ、粘着剤の屈折率が1.481とされる。このような導光シートに側面から光を入射すると、面方向に沿って光が伝播して、伝播する光の一部がプリズム面で反射し、プリズム面で反射した光が出射面から出射するとされる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−4950号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1に記載の導光シートにおいては、低屈折率層としての粘着剤の屈折率が然程低くなく、低屈折率層の界面で光が反射しにくいため、出射面と反対側の面まで伝播した光の一部が、出射面と反対側の面において、出射面と反対側の面から出射し易い傾向にある。従って、このような導光シートにおいては、光が適切に導光シートを伝播せず、光の入射面と遠い場所での輝度が低くなるという問題がある。
【0007】
そこで、本発明は、適切に光を伝播することができる光学複合シートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の光学複合シートは、第1光学層及び第2光学層と、少なくとも前記第1光学層と前記第2光学層との間に介在され、前記第1光学層及び前記第2光学層よりも屈折率が低い低屈折率層とを備え、前記低屈折率層は、平均粒子径が5nm〜300nmとなる多数の粒子を含み、前記低屈折率層と接する前記第1光学層及び前記第2光学層の少なくとも一方の面には、凹部を有する三次元形状部が形成され、前記粒子が前記凹部を満たすことを特徴とするものである。
【0009】
このような光学複合シートの低屈折率層では多数の粒子間に空隙が形成されることになるため、低屈折率層全体としての屈折率を下げることができる。この粒子は、粒子径が5nm以上である場合には粒子自体の強度を保つことができ、粒子径が300nm以下である場合には光を十分に透過し、かつ有機溶媒に分散させることができるため、低屈折率層に含まれる平均粒子径が5nm〜300nmとなっていることで、低屈折率層での強度及び光透過性を良好なものとすることができる。また、第1光学層の低屈折率層側の一面には三次元形状部が形成されているため、その一面が平面である場合に比べて、第1光学層と低屈折率層との境界で全反射されるべき光の反射方向と強度とを制御できる。さらに、三次元形状部が有する凹部の空間に粒子が満たされているため、その空間に粒子がない場合に比べて、第1光学層と低屈折率層との層間の密着強度を上げることができる。このような光学複合シートの面方向に沿って第1光学層に光が入射すると、光は、主に第1光学層を伝播する。従って、第1光学層を伝播する光は、第1光学層と低屈折率層との境界において第1光学層側へ反射し、低屈折率層に入射することを低減することができ、また第1光学層側へ反射する光の反射方向と強度とを制御できる。こうして、適切に光を伝播する光学複合シートが実現できる。また、複合シートの面方向に垂直に光が入射する場合、この光を低屈折率層で適切に屈折することができる。
【0010】
また、前記粒子は、中空粒子であることが好ましい。このような中空粒子を含む低屈折率層では、粒子間に空隙が形成されることに加えて、粒子自体に空間が存在しているため、低屈折率層全体としての屈折率をより一段と下げることができる。
【0011】
また、前記三次元形状部は、互いに平行となる複数の溝、もしくは、二方向以上の互いに交差する複数の溝であってその断面形状が矩形状もしくは台形状の溝、あるいは、キューブコーナーであることが好ましい。このような三次元形状部であれば、第1光学層から入射した光が、第1光学層と低屈折率層との界面で全反射する際の光の出射方向と強度とをより一段と正確に制御できる。
【0012】
また、前記三次元形状部の前記凹部の深さは1〜10μmであることが好ましい。このような深さの凹部を有する三次元形状部であれば、三次元形状部を第1光学層又は第2光学層に転写する際の精度を向上できる、かつ、低屈折率層が低屈折率となる。
【0013】
前記粒子の粒度分布範囲は、前記平均粒子径の90〜110%の範囲であることが好ましい。このような範囲であれば、低屈折率層の強度をより一段と向上させることができる。
【0014】
また、前記第1光学層又は前記第2光学層のいずれか一方と前記低屈折率層との間に、当該一方の光学層よりも軟質の中間層を備えることが好ましい。
【0015】
このような中間層を備える光学複合シートによれば、その中間層が、外部から加わる力を低屈折率層に伝導することを抑制する。従って、低屈折率層に対してクラック等を生じさせることを抑制することができ、外力に対する耐性がより一段と向上される。
【0016】
また、前記第1光学層又は前記第2光学層のうち、前記低屈折率層と接する面と逆側の面にプリズムが形成され、前記中間層は、当該プリズムが形成される光学層よりも低く、前記低屈折率層よりも高い屈折率とされることが好ましい。
【0017】
低屈折率層に対してNAの大きな光は、第1光学層と低屈折率層を如何に最適に設計しても、第1光学層と低屈折率層との境界において第1光学層側へ反射することなく、低屈折率層に入射する場合がある。このような場合であっても、第2光学層にプリズムが形成されているため、低屈折率層から入射した光の一部を第1光学層に戻すことが可能となる。また、この光学複合シートでは、第2光学層から低屈折率層にかけて段階的に屈折率が高くなっているため、第1光学層に戻し易くできる。
【0018】
さらに、前記粒子の平均粒子径は30nm〜100nmであることが好ましい。
【0019】
このような粒子によれば、低屈折率層での強度及び光透過性をより一段と良好なものとすることができる。
【0020】
また、前記低屈折率層の屈折率が1.21〜1.37であることが好ましい。また、前記第1光学層及び前記第2光学層と、前記低屈折率層の比屈折率が0.71〜0.92であることが好ましい。
【0021】
このような低屈折率層であれば、その界面において良好に光を反射させることが可能となる。
【0022】
また、本発明の光学複合シートの表面および/または裏面にプリズムが形成されていることが好ましい。
【0023】
このような光学複合シートによれば、光学複合シートの面方向に沿って、光が伝播する場合、第1光学層の表面が平面である場合に第1光学層の表面で全反射されるべき光の少なくとも一部は、第1光学層にプリズムが形成されることにより、第1光学層から出射することができる。そして、プリズムの設計をコントロールすることにより、第1光学層から出射する光の量をコントロールすることができる。従って、このような光学複合シートを光拡散シートとして用いることにより、出射する光の量が適切にコントロールされた光拡散シートとすることができる。また、光学複合シートの面方向に垂直に光が入射する場合、プリズムの設計をコントロールすることにより、入射する光の屈折方向をコントロールすることができる。
【発明の効果】
【0024】
以上のように、本発明によれば、適切に光を伝播することができる光学複合シートが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の第1実施形態に係る光学複合シートの断面における構造の様子を示す図である。
【図2】図1の低屈折率層の第1光学層側を拡大して示す図である。
【図3】低屈折率層の粒子を示す図である。
【図4】本発明の第2実施形態に係る光学複合シートのうち低屈折率層の第1光学層側を拡大して示す図である。
【図5】本発明の第3実施形態に係る光学複合シートの断面における構造の様子を示す図である。
【図6】本発明の第4実施形態に係る光学複合シートのうち低屈折率層の中間側を拡大して示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明に係る光学複合シートの好適な実施形態について図面を参照しながら詳細に説明する。
【0027】
(第1実施形態)
図1は、本発明の第1実施形態に係る光学複合シートの断面における構造の様子を示す図である。
【0028】
図1に示すように、本実施形態の光学複合シート1は、第1光学層10及び第2光学層20と、第1光学層10と第2光学層20との間に積層される低屈折率層30と、を主な構成として備える。そして、本実施形態における光学複合シート1においては、第1光学層10の低屈折率層30側と反対側の面11が光の出射面とされ、光学複合シート1の一側面7が光の入射面とされる。つまり、本実施形態の光学複合シート1は、入射面から入射する光を面方向に沿って伝播し、更に面方向に沿って伝播する光の少なくとも一部を出射面から出射する光拡散シートとしての機能を備える。
【0029】
第1光学層10は、光学複合シート1の面方向全体をカバーするように設けられており、第1光学層10の一側面17は、入射面の一部とされる。また、第1光学層10においては、光の出射面とされる一方の面11側に多数のプリズム15が形成されており、出射面が凹凸形状のプリズム面とされている。このプリズム15の形状は、特に限定されるものではないが、それぞれのプリズム15により、少なくとも一側面11の長手方向と平行に溝が形成されていることが好ましい。上述のように一側面17は入射面の一部であるため、入射面から入射する光は、一側面17の長手方向に垂直に伝播する傾向がある。従って、このように溝が形成されることにより、それぞれのプリズム15により形成される溝の方向と、光の伝播方向とが略垂直になり、入射面から入射する光を出射面から出射し易くすることができる。
【0030】
また、第1光学層10は、光透過性の材料から構成されており、好ましくは、全光線透過率が30%以上である材料が好ましく、更に、全光線透過率が50%以上であることが好ましく、更に、全光線透過率が70%以上であることが好ましい。このように全光線透過率が高いことにより、入射する光の損失をより抑制して出射することができる。このような材料としては、光透過性の材料であれば、特に限定されるわけではないが、シリカ等の無機物、(メタ)アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、フッ素樹脂、ポリオレフィン樹脂、セルロースアセテート樹脂、シリコーン系樹脂、ポリアミド樹脂、エポキシ系樹脂、ポリアクリロニトリル樹脂、およびポリウレタン樹脂等の樹脂を挙げることができる。なお、全光線透過率は、JIS K7105に基づき、A光源を用いて測定する。A光源とは、CIE(国際照明委員会)が規定する標準光源の規格の一つであって、タングステン電球が発する光であり、色温度が2856ケルビンとされる。
【0031】
また、第1光学層10の屈折率は、特に限定されないが、例えば、1.5〜1.7とされる。なお、屈折率はエリプソメーターを用いて波長589nmで測定できる。
【0032】
第2光学層20は、光学複合シート1における第1光学層10と反対側において、面方向全体をカバーするように設けられており、第2光学層20の一側面27は、入射面の一部とされる。さらに、第2光学層20の低屈折率層30側と反対側の面21は、光の反射面とされている。第2光学層20における反射面側には、多数のプリズム25が形成されており、反射面は凹凸形状のプリズム面とされている。このプリズム25の形状は、特に限定されるものではないが、それぞれのプリズム25により、少なくとも一側面17の長手方向と平行に溝が形成されていることが好ましい。そして、このプリズム25は、光学複合シート1の反対面側のプリズム15と面対称の形状でもよく、異なる形状でもよい。
【0033】
前記プリズム25は、光を分散・屈折・全反射させることができる形状で、V字状リニアプリズム、U字状リニアプリズム、三角錐プリズム、四角錐プリズムが例示できる。
【0034】
また、第2光学層20は、第1光学層10と同様にして、光透過性の材料から構成されており、好ましくは、全光線透過率が30%以上である材料が好ましく、更に、全光線透過率が50%以上であることが好ましく、更に、全光線透率が70%以上であることが好ましい。このように全光線透過率が高いことにより、入射する光の損失をより抑制して出射することができる。このような第2光学層20の材料としては、第1光学層10と同様の材料を挙げることができる。
【0035】
また、第2光学層20の屈折率は、特に限定されないが、例えば、第1光学層10と同様とされる。
【0036】
図2は、図1の低屈折率層の第1光学層側を拡大して示す図である。図2に示すように、低屈折率層30は、多数の粒子50から構成されている。また、低屈折率層30に接する第1光学層10の一面には、凹部を有する三次元形状部70が形成され、この三次元形状部70の凹部には、低屈折率層30を構成する粒子50が満たされている。なお、低屈折率層30に対向する第2光学層20の一面には三次元形状部70が非形成とされる。
【0037】
この三次元形状部70は、例えば、互いに平行となる複数の溝、もしくは、二方向以上の互いに交差する溝、または、複数の窪み等とされる。このような溝やくぼみの三次元形状部70断面(第1光学層10の一面に垂直となる断面)の形状は、矩形状とされる。ただし、この形状に限定されるものではなく、例えば、台形状、半円状、もしくは、三角形状、楕円形状、又は、左右非対称となる形状などのように、様々な形状が適用可能である。また、三次元形状部70はキューブコーナーとしても良い。キューブコーナーは、凸部と凹部の組み合わせにより例えば三角錐状とされ、列方向と行方向とのいずれか一方又は双方に配列される。
【0038】
三次元形状部70として、凹部の断面形状が矩形状、台形状もしくは三角形状の溝、または、キューブコーナーを適用した場合、第1光学層10から入射した光が、第1光学層10と低屈折率層30との界面で全反射する際の光の出射方向と強度を制御できるため好ましい。特に、凹部の断面形状が矩形状または台形状の溝を三次元形状部70として適用した場合、当該三次元形状部70が、第1光学層10と低屈折率層30との基準面と平行な界面をもつことになるため、出射面からの意図しない光の出射を抑制することができる観点から好ましい。
【0039】
また、凹部の断面の形状を台形状とする場合、凹部の側面が、第1光学層10と低屈折率層30との基準面に対して積層方向になす角度θは、0〜5度が好ましい。なお、前記角度θが0度の場合、断面の形状は矩形状となる。
【0040】
三次元形状部70が有する凹部の大きさは、粒子50を満たすことが可能である限り特に限定されないが、凹部の幅W1は、例えば1〜200μm、好ましくは5〜100μmとすることができる。凹部の幅W1が1μm以上の場合、後述する三次元形状部70の作製時における金型の転写を精度よく行うことができ、三次元形状部70の凹部内に粒子50を満たすことができる。凹部の幅W1が200μm以下の場合、光のムラを低減できる。また、凹部間の距離W2は、例えば1〜200μm、好ましくは5〜100μmとすることができる。凹部の幅W2が1μm以上の場合には転写を精度よく行うことができ、200μm以下の場合には光のムラを低減できる。また、凹部の深さh1は、例えば1〜100μm、好ましくは5〜50μmとすることができる。凹部の深さh1が1μm以上の場合には、粒子50と空隙36を十分に確保できるとともに転写を精度よく行うことができ、100μm以下の場合には金型の抜けがよいため転写を精度よく行うことができる。
【0041】
なお、低屈折率層30の厚さ(凹部底から、第2光学層20と低屈折率層30との界面までの距離)は、特に限定されないが、1〜1000μm、特に好ましくは1〜10μmである。
【0042】
図3は、粒子50を拡大した図である。図3に示すように、粒子50は、光透過性を有する中実又は中空のシェル51からなり、粒子50が中空粒子である場合には、シェル51により囲まれた空間52が形成される。
【0043】
シェル51の材料としては、第1光学層10と同様の材料を挙げることができる。このような粒子50は、たとえば日本触媒株式会社製 商品名エポスター、シーホスターおよびソリオスター、日産化学工業株式会社製 商品名オプトビーズ、根上工業株式会社製 商品名アートパール、大日精化株式会社製 商品名ダイミックビーズ、ガンツ化成株式会社製 商品名ガンツパール、積水化成品工業株式会社製 商品名テクポリマー、ならびに綜研化学株式会社製 商品名ケミスノーを挙げることができる。また、粒子50が中空粒子の場合、シェル51の材料はシリカが好ましい。このような中空粒子としては、日鉄鉱業株式会社製のシリナックス(登録商標)、および日揮触媒化成株式会社製のスルーリア(登録商標)を挙げることができる。なお、粒子50の形状は、低い屈折率を示す限り特に限定されないが、球状であっても不定形状であってもかまわない。
【0044】
また、粒子50の平均粒子径としては、特に限定されないが、光学複合シート1に入射する光、すなわち、第1光学層10を伝播する光の波長よりも小さいことが好ましい。粒子50の平均粒子径が、第1光学層10を伝播する光の波長よりも小さいことにより、低屈折率層30における光の乱反射を抑制することができ、出射面からの意図しない光の出射を抑制することができる。さらに、粒子50の平均粒子径は、光学複合シート1に入射する光の1/2波長よりも小さいことがより好ましく、1/4よりも小さいことが更に好ましい。例えば、光学複合シート1に420nm〜800nmの光が入射する場合、粒子50の平均粒子径としては、5nm〜300nm、より好ましくは30〜100nmであればよい。なお、粒子の粒度分布範囲が平均粒子径の90〜110%の範囲である場合には粒子の粒度がほぼ均一になるため、当該範囲であれば屈折率層30の強度を向上させる観点では好ましい。
【0045】
この粒子50の平均粒子径および粒度分布範囲を測定するには、動的光散乱法で測定すればよい。
【0046】
また、粒子50が中空粒子の場合、低屈折率層30の屈折率を低くする観点から、粒子50の平均空間52率は、より高いことが好ましいが、粒子50の強度を確保する観点から10%〜60%であること好ましい。
【0047】
このような多数の粒子50から構成される低屈折率層30は、第1光学層10及び第2光学層20よりも低い屈折率とされる。例えば、低屈折率層30の屈折率が、1.21〜1.37とされ、第1光学層10及び第2光学層20との比屈折率が、0.71〜0.92とされる。第1光学層10及び第2光学層20と、低屈折率層30との比屈折率が、このような比屈折率であることにより、適切に第1光学層10と低屈折率層30との境界において光を反射することができる。たとえば、第1光学層10及び第2光学層20が屈折率1.58のポリカーボネートで、低屈折率層30の屈折率が1.21〜1.37である場合、第1光学層10及び第2光学層20と低屈折率層30との比屈折率は0.766〜0.867となる。
【0048】
このような第1光学層10、第2光学層20、低屈折率層30からなる光学複合シート1は、上述のように光拡散シートとしての機能を有する。具体的には、入射面と対向するように、LED等から成る図示しない光源が配置される。光源から出射する光は、入射面から入射する。そのうち、第1光学層10に入射する光は、主に第1光学層10を伝播する。具体的には、第1光学層10と低屈折率層30との境界と、出射面とを反射しながら、第1光学層10を伝播し、出射面に対して、NAの大きな光が、出射面から出射する。
【0049】
また、第1光学層10と低屈折率層30との境界に対して、NAの大きな光は、第1光学層10から低屈折率層30に入射して、更に、低屈折率層30から第2光学層20に入射する。第2光学層20に入射した光の少なくとも一部は、反射面において反射する。つまり、第2光学層20の反射面に対してNAの小さな光は、反射面で反射し、再び、低屈折率層30から第1光学層10に入射する。一方、反射面に対して、NAの大きな光は、反射面を透過して、光学複合シート1から出射する。第1光学層10に入射した光は、再び、第1光学層10を伝播する。
【0050】
上記のような光学複合シート1は、次のように製造することができる。
【0051】
まず、プリズム15が形成されていない、第1光学層10となる樹脂シート、及び、プリズム25が形成されていない、第2光学層20となる樹脂シートを準備し、第1光学層10となる樹脂シートの一方の広面に対して三次元形状部70を形成する。具体的には、例えば、矩形状の凸部を形成した金型を用いて樹脂シートの一面に対して溝でなる三次元形状部70を転写させる。
【0052】
次に、粒子50が分散された、分散液を準備する。具体的には、粒子50をメチルイソブチルケトンまたはイソプロパノール等の有機溶媒を準備して、有機溶媒に対して、例えば、粒子50を20重量%で分散させ分散液とする。
【0053】
次に、第1光学層10となる樹脂シートとなる樹脂シートの三次元形状部70が形成されている面に、粒子50が分散された分散液を塗布する。塗布は、スピンコート法、グラビアコート法、コンマダイレクトコート法、コンマリバースコート法、リップコート法およびダイコート法等により行えばよい。そして、塗布した分散液を乾燥することにより、低屈折率層30を得る。
【0054】
次に、低屈折率層30が、第1光学層10となる樹脂シートと、第2光学層20となる樹脂シートとの間になるようにして、第1光学層10となる樹脂シートと、低屈折率層30と、第2光学層20となる樹脂シートとを積層する。
【0055】
次に、積層した第1光学層10となる樹脂シートと、低屈折率層30と、第2光学層20となる樹脂シートとを、各樹脂シートの界面近傍にある粒子50の一部分がそれぞれの樹脂シートに埋め込まれるまで熱プレスする。また、このときの熱により、第1光学層10となる樹脂シートにプリズム15を形成するとともに、第2光学層20となる樹脂シートにプリズム25を形成する。こうして、それぞれの樹脂シートが、第1光学層10及び第2光学層20として低屈折率層30と一体化され、図1に示す光学複合シート1を得る。
【0056】
以上説明したように、本実施形態の光学複合シート1によれば、低屈折率層30は、多数の粒子50間に空隙36を含むため、粒子50全体として、屈折率を下げることができる。さらに、粒子50が中空粒子の場合、粒子50内の空間により、全体として、屈折率をより下げることができる。また、第1光学層10の低屈折率層側の一面には、凹部を有する三次元形状部70が形成されているため、その一面が平面である場合に比べて、第1光学層10と低屈折率層30との境界で全反射されるべき光の出射方向及び強度の制御を容易に行える。さらに、三次元形状部70の凹部の空間に粒子50が満たされているため、その空間に粒子50が満たされていない場合に比べて、第1光学層10と低屈折率層30との層間の密着強度を上げることができる。したがって、第1光学層10と低屈折率層30との層間の剥離(デラミネーション)を有効に防止することができる。
【0057】
このような光学複合シート1を上述の様な一側面7から光が入射して、第1光学層10の低屈折率層30側と反対側の面11から光が出射する光拡散シートとして用いる場合、第1光学層10に光が入射すると、光は、主に第1光学層10を伝播する。そして、低屈折率層30は、多数の粒子50間に空隙36を含むため、全体として、屈折率を下げることができる。さらに、粒子50が中空粒子の場合、粒子50内の空間により、全体として、屈折率をより下げることができる。従って、第1光学層10を伝播する光は、第1光学層10と低屈折率層30との境界において反射して、光が低屈折率層30に入射することを低減することができる。また、第1光学層10の低屈折率層側の一面に三次元形状部70が形成されているため、その一面が平面である場合に比べて、第1光学層10と低屈折率層30との境界で全反射されるべき光の出射方向と強度とを制御できる。こうして、この光学複合シート1では適切に光が伝播される。
【0058】
また、上記実施形態の光学複合シート1を光拡散シートとして用いる場合、第1光学層10の低屈折率層30側と反対側にプリズム15が形成されているため、第1光学層10の表面が平面である場合に第1光学層10の表面で全反射されるべき光の少なくとも一部は、第1光学層10から出射することができる。そして、プリズム15の設計をコントロールすることにより、第1光学層10から出射する光の量をコントロールすることができる。従って、このような光学複合シート1を光拡散シートとして用いることにより、出射する光の量が適切にコントロールされた光拡散シートとすることができる。
【0059】
なお、上記実施形態の光学複合シート1を光拡散シートとして用いる場合、第1光学層10と低屈折率層30を如何に最適に設計しても、低屈折率層30に対してNAの大きな光は、第1光学層10から低屈折率層30を介して第2光学層20に伝播する。しかし、上記実施形態においては、第2光学層20の低屈折率層30側と反対側にプリズム25が形成されているため、第2光学層20に形成されるプリズム25をコントロールすることにより、第2光学層20に伝播する光が第2光学層20の反射面で反射する量や第2光学層20の反射面から出射する量を適切にコントロールすることができる。
【0060】
更に上記実施形態においては、光複合シート1を光拡散シートとして用いる場合について説明したが、光複合シート1は、光拡散シートに限定されるわけではなく、その用途は特に限定されない。例えば、光学複合シート1は、第1光学層10の低屈折率層30側と反対側の面11から光が入射して、第2光学層20の低屈折率層30側と反対側の面21から光が出射する光学シートとされても良い。この場合、プリズム15、25により、入射光の光学複合シート1内における方向をコントロールでき、更にプリズム25により、出射光の方向をコントロールすることができる。あるいは、光学複合シート1は、プリズム15及びプリズム25の設計をコントロールすることにより、第1光学層10の低屈折率層30側と反対側の面11から光が入射して、第2光学層20の低屈折率層30側と反対側の面21で光を全反射する全反射シートとされても良い。また、プリズム15、25の設計を最適化することにより、一側面7から入射した光を、一側面7と反対側の側面まで伝播する導光シートとすることもできる。
【0061】
なお、本実施形態では、第1光学層10に三次元形状部70が設けられたが、この三次元形状部70と同様の三次元形状部を第2光学層20にも形成し、その三次元形状部の凹部に粒子50を満たすようにしても良い。
【0062】
また、本実施形態では、第1光学層10と第2光学層20との間に低屈折率層30が積層されたが、三次元形状部70の凹部内のみに低屈折率層30が介在する形態であっても良い。このような形態の場合、三次元形状部70の凹部内に粒子50が存在するのみであり、低屈折率層30の厚みは図2におけるh1となる。
【0063】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態について図4を参照して詳細に説明する。なお、第1実施形態と同一又は同等の構成要素については、特に説明する場合を除き、同一の参照符号を付して重複する説明は省略する。図4は、本発明の第2実施形態に係る光学複合シートの断面における構造の様子を示す図である。
【0064】
図4に示すように、本実施形態の光学複合シート2は、第2光学層20と低屈折率層30との間に中間層40を備える点において、第1実施形態の光学複合シート1と異なる。
【0065】
中間層40は、第2光学層20と低屈折率層30との間全体に設けられており、第2光学層20よりも軟質な材料から成る。具体的に軟質な材料である中間層40の貯蔵弾性率は、5×10^6Pa〜5×10^7Paの範囲が好ましく、1×10^7Pa〜3×10^7Paがさらに好ましく、1.6×10^7Pa〜1.8×10^7Paがより好ましい。例えば、中間層40は第2光学層20よりも軟質であることが好ましい。
【0066】
中間層40の貯蔵弾性率が5×10^6Pa以上であるため、屈折率を小さくすることができるため好ましく、5×10^7Pa以下であるため、第2光学層20と中間層40との密着強度を得られやすいため好ましい。
【0067】
このような中間層40の材料としては、軟質な材料である限りにおいて、特に限定されないが、例えば、アクリル樹脂、ビニルエーテル樹脂等を挙げることができる。例えば、第2光学層20が、ポリカーボネートである場合に、中間層としては、アクリル樹脂であれば良い。
【0068】
また、中間層40の屈折率としては、低屈折率層30の屈折率以上とされ、更に、中間層40の屈折率が、第2光学層20の屈折率と低屈折率層30の屈折率との間とされることが好ましい。中間層40の屈折率が、第2光学層20の屈折率と低屈折率層30の屈折率との間にされることで、第2光学層20から低屈折率層30にかけて、段階的に屈折率が高くなる。従って、光が第2光学層20から低屈折率層30に伝播するときに、光が第2光学層20から中間層40に伝播し易く、更に、中間層40から低屈折率層30に伝播し易い。このため、第1光学層10から低屈折率層30を介して、第2光学層20に伝播した光を第1光学層10に戻し易くすることができる。
【0069】
このような光学複合シート2を製造するには、第1実施形態において、光学複合シート1を製造する際、第1光学層10と第2光学層20とを低屈折率層30を介して積層する前において、第2光学層20となる樹脂シート上に、中間層40となる樹脂を塗布する。そして、中間層40が低屈折率層30側となるようにして、第1光学層10と第2光学層20とを積層し、第1実施形態と同様にして、それぞれの樹脂シートを一体化すれば良い。
【0070】
本実施形態による光学複合シート2によれば、低屈折率層30の屈折率を適切に低くすることができ、更に、軟質である中間層40を有することにより、外部から応力が加わるときに、この中間層40が、応力が低屈折率層30に伝導することを抑制する。従って、低屈折率層30にクラック等が入ることを抑制することができる。
【0071】
本実施形態による光学複合シート2は、第1実施形態と同様に、一側面7から光が入射し、第1光学層10の低屈折率層と反対側の面11から光が出射する光拡散シートとすることができる。また、プリズム15、25の設計を最適化することにより、一側面7から入射した光を、一側面7と反対側の側面まで伝播する導光シートとすることもできる。さらに、第1実施形態と同様に、光学複合シート1は、第1光学層10の低屈折率層30側と反対側の面11から光が入射して、第2光学層20の低屈折率層30側と反対側の面21から光が出射する光学シートとされても良い。この場合、プリズム15、25により、入射光の光学複合シート1内における方向をコントロールでき、更にプリズム25により、出射光の方向をコントロールすることができる。あるいは、光学複合シート1は、プリズム15及びプリズム25の設計をコントロールすることにより、第1光学層10の低屈折率層30側と反対側の面11から光が入射して、第2光学層20の低屈折率層30側と反対側の面21で光を全反射する全反射シートとされても良い。
【0072】
(第3実施形態)
次に、本発明の第5実施形態について図5を参照して詳細に説明する。なお、第1実施形態と同一又は同等の構成要素については、特に説明する場合を除き、同一の参照符号を付して重複する説明は省略する。図5は、本発明の第3実施形態に係る光学複合シートの断面における構造の様子を示す図である。
【0073】
図5に示すように、光学複合シート3は、第1光学層10の低屈折率層30と反対側の面11が平面状に形成され、更に、第2光学層20の低屈折率層30と反対側の面21が平面状に形成されている点において、第1実施形態の光学複合シート1と異なる。
【0074】
このような光学複合シート3によれば、第1実施形態の光学複合シート1と同様に、低屈折率層30の屈折率を適切に低くすることができる。更に、光学複合シート3においては、一側面7から光を入射することにより、一側面7から入射した光を、一側面7と反対側の側面まで伝播する導光シートとすることができる。この場合、低屈折率層30の屈折率を適切に低くできるため、第1光学層10と低屈折率層30との境界において、光を適切に反射することができ、適切に光を伝播することができる。また、光学複合シート3は、第1光学層10の低屈折率層30側と反対側の面11から光が入射して、第2光学層20の低屈折率層30側と反対側の面21から光が出射する光学シートとされても良い。
【0075】
(第4実施形態)
次に、本発明の第4実施形態について図6を参照して詳細に説明する。なお、第2実施形態と同一又は同等の構成要素については、特に説明する場合を除き、同一の参照符号を付して重複する説明は省略する。図8は、本発明の第4実施形態に係る光学複合シートの断面における構造の様子を示す図である。
【0076】
図8に示すように、光学複合シート4は、第1光学層10の低屈折率層30と反対側の面11が平面状に形成され、更に、第2光学層20の低屈折率層30と反対側の面21が平面状に形成されている点において、第2実施形態の光学複合シート2と異なる。
【0077】
このような光学複合シート3によれば、第2実施形態の光学複合シート2と同様に、低屈折率層30の屈折率を適切に低くすることができ、さらに、第2実施形態と同様にして、中間層40により、応力が低屈折率層30に係ることを抑制することができる。また、光学複合シート4においては、一側面7から光を入射することにより、一側面7から入射した光を、一側面7と反対側の側面まで伝播する導光シートとすることができる。この場合、低屈折率層30の屈折率を適切に低くできるため、第1光学層10と低屈折率層30との境界において、光を適切に反射することができ、適切に光を伝播することができる。また、光学複合シート3は、第1光学層10の低屈折率層30側と反対側の面11から光が入射して、第2光学層20の低屈折率層30側と反対側の面21から光が出射する光学シートとされても良い。
【0078】
以上、本発明について、第1〜第4実施形態を例に説明したが、本発明はこれらに限定されるものではない。また、上記実施形態における光学複合シート1〜4は、上述の製造方法以外で製造されても良い。
【産業上の利用可能性】
【0079】
以上説明したように、本発明によれば、低屈折率層の屈折率を適切低くすることができる光学複合シートが提供される。
【符号の説明】
【0080】
1、2、3、4・・・光学複合シート
10・・・第1光学層
15・・・プリズム
20・・・第2光学層
25・・・プリズム
30・・・低屈折率層
36・・・空隙
40・・・中間層
50・・・粒子
51・・・シェル
52・・・空間
70・・・三次元形状部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1光学層及び第2光学層と、
少なくとも前記第1光学層と前記第2光学層との間に介在され、前記第1光学層及び前記第2光学層よりも屈折率が低い低屈折率層と
を備え、
前記低屈折率層は、平均粒子径が5nm〜300nmとなる多数の粒子を含み、
前記低屈折率層と接する前記第1光学層及び前記第2光学層の少なくとも一方の面には、凹部を有する三次元形状部が形成され、前記粒子が前記凹部を満たす
ことを特徴とする光学複合シート。
【請求項2】
前記粒子は中空粒子である
ことを特徴とする請求項1に記載の光学複合シート。
【請求項3】
前記三次元形状部は、互いに平行となる複数の溝、もしくは、二方向以上の互いに交差する複数の溝であってその断面形状が矩形状もしくは台形状の溝、あるいは、キューブコーナーである
ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の光学複合シート。
【請求項4】
前記三次元形状部の前記凹部の深さは1〜10μmである
ことを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の光学複合シート。
【請求項5】
前記粒子の粒度分布範囲は、前記平均粒子径の90〜110%の範囲である
ことを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の光学複合シート。
【請求項6】
前記第1光学層又は前記第2光学層のいずれか一方と前記低屈折率層との間に、当該一方の光学層よりも軟質の中間層をさらに備える
ことを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の光学複合シート。
【請求項7】
前記第1光学層又は前記第2光学層のうち、前記低屈折率層と接する面と逆側の面にプリズムが形成され、前記中間層は、当該プリズムが形成される光学層よりも低く、前記低屈折率層よりも高い屈折率とされる
ことを特徴とする請求項6に記載の光学複合シート。
【請求項8】
前記粒子の前記平均粒子径が30nm〜100nmである
ことを特徴とする請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の光学複合シート。
【請求項9】
前記低屈折率層の屈折率が1.21〜1.37である
ことを特徴とする請求項1から請求項8のいずれか1項に記載の光学複合シート。
【請求項10】
前記第1光学層及び前記第2光学層と、前記低屈折率層の比屈折率が0.71〜0.92である
ことを特徴とする請求項1から請求項9のいずれか1項に記載の光学複合シート。
【請求項11】
前記光学複合シートの表面および/または裏面にプリズムが形成されている
ことを特徴とする請求項1から請求項6、請求項8から請求項10のいずれか1項に記載の光学複合シート。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−45762(P2013−45762A)
【公開日】平成25年3月4日(2013.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−185350(P2011−185350)
【出願日】平成23年8月26日(2011.8.26)
【出願人】(000004592)日本カーバイド工業株式会社 (165)
【Fターム(参考)】