説明

光学記録媒体

【課題】 高速高密度記録が可能な、いわゆる青色レーザー用途に適する光学記録媒体を提供すること。
【解決手段】 基板上に記録層が形成される光学記録媒体の該記録層に含有する有機色素化合物を4‐ベンジリデン‐1‐フェニル‐1H‐ピラゾール‐5‐オンの誘導体とする。


【効果】 これら誘導体はいずれも300〜450nmにおいて極大吸収波長を示し、特に400nm付近において大きな吸収を示すものである。この吸収特性はいわゆる青色レーザーの波長に対応し、次世代の記録媒体であるblu−ray Discなどの光学記録媒体用の色素化合物として極めて有用である。なかでも(A)式中、Rを2−エチルヘキシルエステル基とした化合物であれば、実際の光学記録媒体への塗膜に関しても、アルコール、ケトンなどへの溶解性が良く、結晶化し難い特性があるため、物理的特性としても良好である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザーによって、情報をパターンとして記録するための記録層を有する光学記録媒体に関するものであり、詳しくは、いわゆる青色レーザーによる記録に適した記録層、より詳しくは、記録層に用いられる色素化合物に特徴があるものである。
【背景技術】
【0002】
現在、CD−R/RW、DVD−R/RW、MOなど記録または再生が非接触で行われる等の優れた特徴から、各種記録媒体は大容量のデータを記録することができ、同じように大容量を記録し、保存するテープストリーマなどと比較するとランダムアクセスが容易である点、メディアの単価が低コストであることなどからコンピューターのようなデータ処理装置における外部記録装置として近年、急速に普及している。
【0003】
とりわけCD−RやDVD−Rにおいてはメディアが非常に安価であり、かつコンピューターの機種を選ばず互換性に優れていること、各種のDV機器などでも使用できる点で末端の一般消費者から専門機関、学校、官庁に至るまで幅広く使用されており、今後、ますます優位性を有するものと考えられている。
【0004】
近年になって扱うデータがそれまで文字データや静止画データのような比較的データ量の小さなものから映画のようなデータ量の多い動画データを記録するようになり、DVD−Rをもってしても記録容量が小さく、さらに大容量のデータを記録する要求が高まってきている。そこで青色レーザー等の波長の短いレーザーを用いた高速高密度の記録再生可能な光学記録媒体が提唱され、関連各社において開発研究されている。
【0005】
このように高密度で記録再生可能な光学記録媒体を開発する上で青色レーザー等の発振波長の短いレーザー光を用い高速かつ高密度の光記録媒体に記録するための有機色素材料が必要であるが、390nm〜430nm、特に最も重要な波長域である405nm付近に充分な極大吸収を持つ有機色素材料が開発されていないのが現状である。
【0006】
このような波長領域に吸収を持つ化合物としては、例えば、特許文献1〜5に記載されているような有機色素の基本骨格としてピラン化合物の誘導体、ポリアセンジイミド系色素の誘導体、シアニン系有機色素の混合物、メチン基のパラ位に特定のアミノ基を導入したベンゼン誘導体を用いる方法などが提案されている。
【特許文献1】特開2004−322564号公報
【特許文献2】特開2004−090372号公報
【特許文献3】特開2003−266954号公報
【特許文献4】特開2003−246142号公報
【特許文献5】特開2003−103935号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、例えば、特許文献3記載の合成化合物の吸収曲線チャートで見られるように、λmaxは350〜380nmにあり、405nm付近での吸収強度が小さく、必ずしもいわゆる青色レーザー光に対して適応しているとは言えない。
【0008】
また、上記のような有機色素材料を光学記録媒体として用いるには、該光学記録媒体の片面または両面に記録層に該有機色素材料を含有させる必要がある。このような記録層を形成するには、なんらかの有機溶媒に有機色素を溶解させてからスピンコートするのが一般的である。しかし、上記有機色素材料をスピンコートするには、溶媒としてトルエン、キシレン、セロソルブ系の有機溶媒を用いざるを得なかったが、かかる有機溶媒は、光学記録媒体の材質を傷めたり、環境上の問題があるなどの理由で使用が敬遠されているものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明では、下記の一般式(A)で示される4‐ベンジリデン‐1‐フェニル‐1H‐ピラゾール‐5‐オン誘導体のうち、(1)式中のR〜Rがそれぞれ下記の官能基または原子のうちいずれかであるピラゾロン誘導体化合物が、光学記録媒体の記録層に含有されているものとすることを主要な解決手段とする。
【化1】


〜Rは、水素原子、ハロゲン、シアノ基、ニトロ基、ヒドロキシル基、アミノ基、カルボキシル基、カルボキシアルキル基、炭素数1〜20のアルコキシ基(1〜3位のいずれかで枝分かれしているものを含む)、炭素数1〜20のアルキルオキシカルボニル基のうち、いずれかの官能基または原子であり、
は、水素原子、炭素数1〜20のアルキル基(1〜3位のいずれかで枝分かれしているものを含む)、アミノ基、モノ置換アミノ基、ジ置換アミノ基のうち、いずれかの官能基または原子である。
【発明の効果】
【0010】
本発明の光学記録媒体は、記録層に上記化合物を含有させたため、記録層の吸収領域は、390〜430nmの範囲において大きな吸収を持ち、更に400nm付近の波長領域に極大吸収領域を持つため、405nm付近の波長を持ついわゆる青色レーザーの波長にちょうど対応する吸収帯を持つ媒体とすることができる。
【0011】
なかでも、下記(化6,化9,化10)の化合物(a),(b)及び(c)のような、Rが2−エチルヘキシルエステルである化合物は、イソプロピルアルコール他、種々の溶媒に対する溶解性に優れており、かつ基盤上に塗膜して乾燥させた後も、結晶化しにくいという優れた特性を持つため、下記の化合物(a)〜(c)では、基板上に容易に記録層を形成させることができる。
化合物(a)
【化6】

化合物(b)
【化9】

化合物(c)
【化10】

【0012】
また、上記化合物(a)〜(c)の他、本発明の化合物のうち、下記化合物(d)〜(h)については、青色レーザー用として適当な吸収帯を有する化合物であることが実験的にも明確となった。
化合物(d)
【化3】

化合物(e)
【化4】

化合物(f)
【化5】

化合物(g)
【化7】

化合物(h)
【化8】

【0013】
さらに、上記化合物は、湿式塗布法のみならず、蒸着法、スパッタリング法によっても基板上に成膜することができ、これらの方法によっても、良好な光学記録媒体を製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下に本発明につき詳細に説明する。本発明は、少なくとも片面に、レーザーによって記録可能な記録層を有する光学記録媒体についての発明であって、一般式(A)によって示される有機色素化合物を記録層に含有させたことを特徴とするものである。該記録層は、390〜430nmの青色光領域に吸収を有する。以下に前記一般式(A)において表される化合物について説明する。
【0015】
【化1】

【0016】
(A)式中、R〜Rは、それぞれ独立に水素原子または任意の置換基を表し、任意の置換基はさらに置換されていても良い。該任意の置換基の例としてR〜Rはフッ素、塩素、臭素等のハロゲン;メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ヘキシル基、n−オクチル基、2−エチルヘキシル基等の置換されても良い炭素数1〜20の直鎖または分岐のアルキル基;ヒドロキシ基、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基、イソブトキシ基、sec−ブトキシ基、tert−ブトキシ基、n−ヘキシルオキシ基、n−オクチルオキシ基、2−エチルヘキシルオキシ基などの置換されても良い炭素数1〜20の直鎖または分岐のアルキルオキシ基;アミノ基、モノメチルアミノ基、ジメチルアミノ基、モノエチルアミノ基、ジエチルアミノ基、モノn-プロピルアミノ基、ジn-プロピルアミノ基、モノイソプロピルアミノ基、ジイソプロピルアミノ基等の置換されても良い炭素数1〜4の直鎖または分岐のアミノ基;カルボキシル基、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、イソプロポキシカルボニル基、n−ブトキシカルボニル基、イソブトキシカルボニル基、sec−ブトキシカルボニル基、tert−ブトキシカルボニル基、n−ヘキシルオキシカルボニル基、n−オクチルオキシカルボニル基、2−エチルヘキシルオキシカルボニル基等の置換されても良い炭素数1〜20の直鎖または分岐のカルボン酸エステル基;シアノ基;ニトロ基等が挙げられる。
【0017】
該任意の置換基の例としてRはメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、n-ヘキシル基、n-オクチル基、2−エチルヘキシル基等の置換されても良い炭素数1〜20の直鎖または分岐のアルキル基;アミノ基、モノメチルアミノ基、ジメチルアミノ基、モノエチルアミノ基、ジエチルアミノ基。モノn-プロピルアミノ基、ジn-プロピルアミノ基、モノイソプロピルアミノ基、ジイソプロピルアミノ基、の置換されても良い炭素数1〜4の直鎖または分岐のアルキルアミノ基、モノアセチルアミノ基、ジアセチルアミノ基;シアノ基;ニトロ基等が挙げられる。
【0018】
なかでもRが2−エチルヘキシルエステル基である化合物は、種々の溶媒に対する溶解性に優れており、かつ基盤上に塗膜して乾燥させた後も結晶化しにくいという優れた特性を持つことが分かった。これは置換基として、嵩高い2−エチルヘキシルエステル基を導入した効果と思われる。このような特に良好な特性を有する化合物の具体例としては、上記の化合物(a),(b)及び(c)が挙げられる。
【0019】
本発明の光学記録媒体を作製するため、上記化合物が含有された記録層を作成する方法としては真空蒸着法、スパッタリング法、ドクターブレード法、キャスト法、スピンコート法、浸漬法などが一般的であるが、コスト面ではスピンコート法が望ましい。
【0020】
ドクターブレード法、キャスト法、スピンコート法、浸漬法等により塗布する場合の塗布溶媒としては、基盤を侵さない溶媒であればよく、特に限定されない。一般的にはメタノール、エタノール、イソプロピルアルコール等の低級アルコールが良い。その他の塗布溶媒としては、例えばジアセトンアルコール、3−ヒドロキシ−3−メチル−2−ブタノン等のケトンアルコール系溶媒;メチルセロソルブ、エチルセロソルブ等のセロソルブ系溶媒;n−ヘキサン、n−ヘプタン等の鎖状炭化水素系溶媒;シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン等の環状炭化水素系溶媒;テトラフルオロプロパノール、オクタフルオロペンタノール等のフルオロアルキルアルコール系溶媒;乳酸メチル、乳酸エチル、2−ヒドロキシイソ酪酸メチル等のヒドロキシカルボン酸エステル系溶媒等が挙げられる。
【0021】
しかし、最近になって毒性のある溶媒や地球環境に影響を及ぼすおそれのあるこれらの溶媒は敬遠される傾向にあって、より安全性の高い低級アルコールなどに溶解しやすい化合物が求められるようになってきた。低級アルコールの例としては、メタノール、エタノール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、1−ブタノール、2−ブタノール等が挙げられる。この中でメタノールは毒性が比較的強く、1−ブタノール、2−ブタノールは、沸点が高くて揮発性が悪い等の問題がある。またエタノールはコスト的に不利があるので、最も望ましい低級アルコールとしては低コストであり、毒性が低く、揮発性の良い、イソプロピルアルコール(IPA)が挙げられる。
【0022】
特に、化合物(a),(b)及び(c)はイソプロピルアルコールに対して比較的溶解性が良く、かつ前述のように基盤上に塗布して乾燥させた後も結晶化しにくいという優れた性質を持つ。
【0023】
また、上記有機色素化合物の塗布に際しては、前記溶媒中に結合剤、退色防止剤など公知の有用な物質も併せて含有させることができる。また前記記録層の他、光反射層や保護層など、記録媒体として好ましい層を適宜設けることもできる。
【実施例】
【0024】
以下に、本発明に用いる色素化合物の合成法と該色素化合物を用いた光学記録媒体の製造例を示す。ただし化合物の合成方法、記録媒体の製造方法はこれに限定されるものではない。
【0025】
(実施例1)
〔化合物(d);4‐(4‐ヒドロキシ-3-メトキシベンジリデン)‐3‐メチル‐1‐フェニル‐1H‐ピラゾール‐5‐オンの合成〕
【化3】

【0026】
100mLの4つ口フラスコに水分定量受器、その上部に玉付きコンデンサー、温度計、撹拌機を取り付け、3‐メチル‐1‐フェニル‐5‐ピラゾロン8.7g(0.05mol)、バニリン7.6g(0.05mol)、酢酸アンモニウム1.0g(0.013mol)、酢酸7mL(7.3g,0.12mol)、トルエン75mL(64.5g,0.7mol)を混合し100〜120℃にて水分を分離しながら3〜4時間撹拌した。冷却後固体を濾過し取り、トルエンで洗浄して、よく水洗し、60℃の乾燥機にて一晩乾燥して、橙色の目的の固体を13.1g得た。得られた化合物の収率は、85%、融点は、171〜172℃であった。
【0027】
この化合物を高感度C,H,Nにて定量した。
<測定装置>
酸素循環燃焼・TCD検出方式 NCH定量装置
スミグラフ NCH−21型(住化分析センター製)
<測定結果>
C18H16N2O3としての計算値
C(%)70.12;H(%)5.23;N(%)9.09
実測値 C(%)70.9 ;H(%)4.99;N(%)9.15
なお、実施例2以降のC,H,Nの測定も同じ測定装置を用いて行った。
【0028】
また、HPLC分析により、純度を測定した。
<測定条件>
装置:LC−6A((株)島津製作所製)
使用カラム:SUMIPAX ODSA−212 5μm 6mm×15cm
カラム温度:40℃
移動層:メタノ−ル:水=9:1
流速:0.7mL/min
<測定結果>
HPLC面百純度99.4%
【0029】
〔記録媒体の作製〕
このようにして得られた化合物(d)をメチルセロソルブに溶解し、2.0wt%に調製した。これを濾過した後の溶解液を回転数500〜600rpmで回転している透明なポリカーボネート円盤(直径12cm厚さ約1.2mm)上に滴下し、スピナー法により塗布した。塗布後、ドライヤーで乾燥させ、化合物(d)が記録層に含有されている光学記録媒体を得た。この記録層の紫外〜可視スペクトルを測定し、最大吸収波長を求めたところ、λmaxは、390nmであった。
<測定条件>
装置:UV−2450((株)島津製作所製)
測定波長:250〜500nm
なお、実施例2以降の紫外〜可視スペクトル測定においても、化合物を変更した上で、同様の方法で、記録媒体を作製し、同じ測定条件で紫外〜可視スペクトルの測定を行った。
【0030】
(実施例2)
〔化合物(e);4‐(2,4‐ジヒドロキシベンジリデン)‐3‐メチル‐1‐フェニル-1H‐ピラゾール‐5‐オンの合成〕
【化4】

【0031】
100mLの4つ口フラスコに玉付きコンデンサー、温度計、撹拌機を取り付け、3‐メチル‐1‐フェニル-5-ピラゾロン8.7g(0.05mol)、2,4‐ジヒドロキシベンズアルデヒド6.9g(0.05mol)、酢酸アンモニウム1.0g(0.013mol)、酢酸5mL(5.2g,0.09mol)、2-プロパノール50mL(39.3g,0.65mol)を混合して70〜90℃にて2〜3時間撹拌した。冷却後固体を濾過し取り、2‐プロパノールで洗浄して、よく水洗し、60℃の乾燥機にて、明橙色の目的の固体を4.6g得た。得られた化合物の収率は、31%、融点は、181〜182℃、HPLC面百純度99.3%であった。なお、HPLC分析の測定条件は、実施例1と同じである。
【0032】
この化合物を実施例1と同じ装置で高感度C,H,Nにて定量した。
<測定結果>
C17H14N2O3としての計算値
C(%)69.38;H(%)4.79;N(%)9.52
実測値 C(%)66.9 ;H(%)4.70;N(%)9.68
【0033】
〔記録媒体の作製〕
このようにして得られた化合物(e)を、実施例1と同様の方法で、光学記録媒体の記録層に含有させた。この記録層の紫外〜可視スペクトルを測定し、最大吸収波長を求めたところ、λmaxは、400nmであった。
【0034】
(実施例3)
〔化合物(f);4‐カルボメトキシベンジリデン‐3‐メチル‐1‐フェニル‐1H‐ピラゾール‐5‐オンの合成〕
【化5】

【0035】
100mLの4つ口フラスコに水分定量受器、その上部に玉付きコンデンサー、温度計、撹拌機を取り付け、3‐メチル‐1‐フェニル‐5‐ピラゾロン8.7g(0.05mol)、4‐ホルミル安息香酸メチル8.2g(0.05mol)、酢酸アンモニウム1.0g(0.013mol)、酢酸5mL(5.2g,0.09mol)、トルエン50mL(43g,0.47mol)を混合し混合し100〜120℃にて水分を分離しながら3〜4時間撹拌した。冷却後固体を濾過し取り、トルエンで洗浄して、よく水洗し、60℃の乾燥機にて一晩乾燥して、暗赤色の目的の固体を16.0g得た。得られた化合物の収率は、収率80%、融点は、149〜150℃であった。
【0036】
この化合物を実施例1と同じ装置で高感度C,H,Nにて定量した。
<測定結果>
C19H16N2O3としての計算値
C(%)71.24;H(%)5.03;N(%)8.74
実測値 C(%)72.8 ;H(%)4.98;N(%)8.98
【0037】
また、HPLC分析により、純度を測定した。
<測定条件>
装置:LC−6A((株)島津製作所製)
使用カラム:Develosil ph‐7 4mmφ×25cm
カラム温度:40℃
移動層:アセトニトリル:水:0.3%リン酸水溶液=6:3:1
流速:0.5mm/min
<測定結果>
HPLC面百純度99.7%
【0038】
〔記録媒体の作製〕
このようにして得られた化合物(f)を、実施例1と同様の方法で、光学記録媒体の記録層に含有させた。この記録層の紫外〜可視スペクトルを測定し、最大吸収波長を求めたところ、λmaxは、320nmであった。
【0039】
(実施例4)
〔化合物(a);4‐(4‐(2‐エチルヘキシルオキシ)‐3‐メトキシベンジリデン)‐3‐メチル‐1‐フェニル‐1H‐ピラゾール‐5‐オンの合成〕
【化6】

【0040】
(a) 4‐(2‐エチルヘキシル)オキシ‐3‐メトキシベンズアルデヒドの合成
100mLの4つ口フラスコに水分定量受器、その上部に玉付きコンデンサー、温度計、撹拌機を取り付け、バニリン7.6g(0.05mol)、2‐エチルヘキシルブロマイド14.5g(0.075mol)、炭酸ナトリウム5.3g(0.05mol)、DMF2.0g、ヨウ化カリウム1.5g(0.009mol)、4‐メチル‐2‐ペンタノン10mL(7.9g,0.079mol)を混合し120〜140℃にて水分を分離しながら5〜6時間撹拌した。濾過後、油層を水洗して、溶剤を蒸留して、20mmHg150℃にて4‐(2‐エチルヘキシル)オキシ‐3‐メトキシベンズアルデヒドを蒸留して、淡黄色透明オイルを収率66%で8.7g得た。HPLC面百純は96%であった。
【0041】
(b) 4‐(4‐(2-エチルヘキシルオキシ)‐3‐メトキシベンジリデン)‐3‐メチル‐1‐フェニル‐1H‐ピラゾール‐5‐オンの合成
100mLの4つ口フラスコに水分定量受器、その上部に玉付きコンデンサー、温度計、撹拌機を取り付け、3‐メチル‐1‐フェニル‐5‐ピラゾロン3.5g(0.02mol)、4‐(2‐エチルヘキシル)オキシ‐3‐メトキシベンズアルデヒド5.3g(0.02mol)、酢酸アンモニウム0.4g(0.005mol)、酢酸3mL(3.1g,0.05mol)、トルエン30mL(25.8g,0.28mol)を混合し混合し100〜120℃にて水分を分離しながら4〜5時間撹拌した。油層を水洗して、溶剤を蒸留した後2‐プロパノール50mL(39.3g,0.65mol)で再結晶化させた。冷却後固体を濾過し取り目的の橙色の固体を7.3g得た。得られた化合物の収率は、87%、融点は、69-70℃、HPLC面百純度は98.9%であった。なお、HPLC分析の測定条件は、実施例1と同じである。
【0042】
この化合物を実施例1と同じ装置で高感度C,H,Nにて定量した。
<測定結果>
C26H32N2O3しての計算値
C(%)74.26;H(%)7.67;N(%)6.66
実測値 C(%)75.8 ;H(%)7.53;N(%)6.77
【0043】
〔記録媒体の作製〕
このようにして得られた化合物(a)を、実施例1と同様の方法で、光学記録媒体の記録層に含有させた。この記録層の紫外〜可視スペクトルを測定し、最大吸収波長を求めたところ、λmaxは、385nmであった。また図1には、測定した紫外〜可視スペクトルを示す。
【0044】
(実施例5)
〔化合物(g);4‐(4‐ヒドロキシ‐3‐メトキシベンジリデン)‐3‐アセチルアミノ‐1‐フェニル‐1H‐ピラゾール‐5‐オンの合成〕
【化7】


(a) 3‐アセチルアミノ‐1‐フェニル‐5‐ピラゾロンの合成
100mLの4つ口フラスコに玉付きコンデンサー、温度計、攪拌機を取り付け、3-アミノ-1-フェニル-5-ピラゾロン5.3g(0.03mol)、無水酢酸30.6g(0.3mol)を混合して60〜80℃にて2〜3時間撹拌すると溶解した。その後50℃程度に冷却した。300mLの四つ口フラスコに同様の装置を取り付け、水を200mL入れて撹拌しながら冷却し、前述の無水酢酸溶液をゆっくり混合した。1〜2時間撹拌して固体を濾過し取り、よく水洗して60℃の乾燥機にて一晩乾燥して、3‐アセチルアミノ‐1‐フェニル‐5‐ピラゾロンを6.2g得た。収率は95%、HPLC面百純度99%であった。なお、HPLC分析の測定条件は、下記に示す。
(b) 4‐(4−ヒドロキシ‐3‐メトキシベンジリデン)‐3‐アセチルアミノ‐1‐フェニル‐1H‐ピラゾール‐5‐オンの合成
100mLの4つ口フラスコに玉付きコンデンサー、温度計、攪拌機を取り付け、3‐アセチルアミノ‐1‐フェニル‐5‐ピラゾロン4.3g(0.02mol)、バニリン3.3g(0.022mol)、酢酸アンモニウム0.7g(0.01mol)、酢酸3mL(3.1g,0.05mol)、2‐プロパノール30mL(23.6g,0.39mol)を混合して70〜90℃にて2時間撹拌し、その後1時間毎に酢酸アンモニウムを0.4g(0.005mol)を2回追加した。冷却後固体を濾過し取り、2‐プロパノールで洗浄して、よく水洗し、60℃の乾燥機にて一晩乾燥して、暗赤色の目的の固体を収率5.3g得た。得られた化合物の収率は、75%、融点は、223〜224℃、HPLC面百純度99%であった。
【0045】
HPLC分析の条件は次のとおりである。
<測定条件>
装置:LC−6A((株)島津製作所製)
使用カラム:Develosil ph‐7 4mmφ×25cm
カラム温度:40℃
移動層:アセトニトリル:水:0.3%リン酸水溶液=5:4:1
流速:1.0mm/min
【0046】
この化合物を実施例1と同じ装置で高感度C,H,Nにて定量した。
<測定結果>
C19H17N3O4としての計算値
C(%)64.95;H(%)4.88;N(%)11.96
実測値 C(%)64.2 ;H(%)4.85;N(%)11.9
【0047】
また、実施例1と同様のHPLC分析により、純度を測定した。
<測定条件>
移動層:メタノ−ル:水=95:5
<測定結果>
HPLC面百純度98.2%
【0048】
〔記録媒体の作製〕
このようにして得られた化合物(g)を、実施例1と同様の方法で、光学記録媒体の記録層に含有させた。この記録層の紫外〜可視スペクトルを測定し、最大吸収波長を求めたところ、λmaxは、402nmであった。
【0049】
(実施例6)
〔化合物(h);4‐(4‐ヒドロキシ-3-メトキシベンジリデン)‐3‐アミノ‐1‐フェニル‐1H‐ピラゾール‐5‐オンの合成〕
【化8】


100mLの4つ口フラスコに玉付きコンデンサー、温度計、攪拌機を取り付け、実施例5で合成した化合物(g),4‐(4‐ヒドロキシ‐3‐メトキシベンジリデン)‐3‐アセチルアミノ‐1‐フェニル‐1H‐ピラゾール‐5‐オン4.7g(0.013mol)、試薬特級塩酸13.6g(0.13mol)、水60mLを混合して、80〜100℃で6時間撹拌した。冷却後固体を濾過し取り、よく水洗して60℃の乾燥機にて一晩乾燥して、橙色の目的の固体を3.8g得た。得られた化合物の収率は、95%、融点は、225〜226℃、HPLC面百純度99%であった。なお、HPLC分析の測定条件は、実施例1と同じである。
【0050】
この化合物を実施例1と同じ装置で高感度C,H,Nにて定量した。
<測定結果>
C17H15N3O3としての計算値
C(%)66.01;H(%)4.89;N(%)13.58
実測値 C(%)72.0 ;H(%)4.73;N(%)16.0
【0051】
〔記録媒体の作製〕
このようにして得られた化合物(h)を、実施例1と同様の方法で、光学記録媒体の記録層に含有させた。この記録層の紫外〜可視スペクトルを測定し、最大吸収波長を求めたところ、λmaxは、428nmであった。
【0052】
(実施例7)
〔化合物(b);4‐(4‐(2‐エチルヘキシルオキシ)‐3‐メトキシベンジリデン)‐3‐アセチルアミノ-1-フェニル‐1H‐ピラゾール‐5‐オンの合成〕
【化9】


100mLの4つ口フラスコに玉付きコンデンサー、温度計、攪拌機を取り付け、3‐アセチルアミノ‐1‐フェニル‐5‐ピラゾロン4.3g(0.02mol)、4‐(2‐エチルヘキシル)オキシ‐3‐メトキシベンズアルデヒド4.9g(0.02mol)、酢酸アンモニウム0.7g(0.01mol)、酢酸3mL(3.1g,0.05mol)、2‐プロパノール30mL(23.6g,0.39mol)を混合して70〜90℃にて2時間撹拌し、その後酢酸アンモニウムを0.7g(0.01mol)を追加して、1時間撹拌した。冷却後固体を濾過し取り、2‐プロパノールで洗浄して、よく水洗し、60℃の乾燥機にて一晩乾燥して、暗赤色の目的の固体5.3gを得た。得られた化合物の3‐アセチルアミノ‐1‐フェニル-5-ピラゾロンを基準とした収率は、70%、融点は、188.6〜189.0℃、HPLC面百純度99.2%であった。なお、HPLC分析の測定条件は、実施例6と同じである。
【0053】
〔記録媒体の作製〕
このようにして得られた化合物(b)を、実施例1と同様の方法で、光学記録媒体の記録層に含有させた。この記録層の紫外〜可視スペクトルを測定し、最大吸収波長を求めたところ、λmaxは、376nmであった。
【0054】
(実施例8)
〔化合物(c);4‐(4‐(2‐エチルヘキシルオキシ)‐3‐メトキシベンジリデン)‐3‐アミノ‐1‐フェニル‐1H‐ピラゾール‐5‐オンの合成〕
【化10】


300mLの4つ口フラスコに玉付きコンデンサー、温度計、攪拌機を取り付け、実施例7で合成した化合物(b),4‐(4‐(2‐エチルヘキシルオキシ)‐3‐メトキシベンジリデン)‐3‐アセチルアミノ‐1‐フェニル‐1H‐ピラゾール‐5‐オン4.0g(0.0086mol)、試薬特級塩酸8.7g(0.086mol)、水150mLを混合して、80〜100℃で10時間撹拌した。冷却後固体を濾過し取り、よく水洗して60℃の乾燥機にて一晩乾燥して、橙色の目的の固体を3.4g得た。得られた化合物の収率は、収率93%、融点242.4℃(融け終わり)、HPLC面百純度85.9%であった。なお、HPLC分析の測定条件は、実施例1と同じである。
【0055】
〔記録媒体の作製〕
このようにして得られた化合物(c)を、実施例1と同様の方法で、光学記録媒体の記録層に含有させた。
【0056】
〔その他の評価〕
実施例1〜8で得られた化合物(a)〜(h)につき、赤外線吸収スペクトルを測定した。また化合物(a)〜(h)化合物を溶媒(クロロホルムまたはメタノール)に溶解させたときの溶液中の可視〜紫外線領域の最大吸収波長λmaxを測定し、これを記録層とした場合との最大吸収波長の異同を調べた。なお測定装置には、記録媒体としたときの記録層の可視〜紫外吸収測定と同じく、装置:UV−2450((株)島津製作所製)を用いた。さらにイソプロピルアルコール(IPA)への溶解度を測定した。この際、化合物(a)〜(h)を光学記録媒体の記録層に含有させた場合の結晶性も目視で判断した。以上の評価をまとめて表1に示す。また赤外吸収スペクトルを図2〜9に示す。なお、赤外吸収スペクトルの測定条件は次のとおりである。
装置:FTIR−8400S((株)島津製作所製)
検体:1/200(KBr)
【0057】
【表1】



【産業上の利用可能性】
【0058】
本発明の光学記録用媒体は、その記録層に最大吸収の波長が、いわゆる青色レーザーの波長である410nm程度に存在する化合物を含有するので、該青色レーザー用の記録媒体として産業上利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】化合物(a)を含有する記録層(実施例4)の紫外吸収スペクトルである。
【図2】化合物(d)(実施例1)の赤外吸収スペクトルである。
【図3】化合物(e)(実施例2)の赤外吸収スペクトルである。
【図4】化合物(f)(実施例3)の赤外吸収スペクトルである。
【図5】化合物(a)(実施例4)の赤外吸収スペクトルである。
【図6】化合物(g)(実施例5)の赤外吸収スペクトルである。
【図7】化合物(h)(実施例6)の赤外吸収スペクトルである。
【図8】化合物(b)(実施例7)の赤外吸収スペクトルである。
【図9】化合物(c)(実施例8)の赤外吸収スペクトルである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも片面に、レーザーによって記録可能な記録層を有する光学記録媒体であって、
下記の一般式(A)で示される4‐ベンジリデン‐1‐フェニル‐1H‐ピラゾール‐5‐オン誘導体のうち、(1)式中のR〜Rがそれぞれ下記の官能基または原子のうちいずれかであるピラゾロン誘導体化合物が、該記録層に含有されていることを特徴とする光学記録媒体。
【化1】


〜R=水素原子、ハロゲン、シアノ基、ニトロ基、ヒドロキシル基、アミノ基、カルボキシル基、カルボキシアルキル基、炭素数1〜20のアルコキシ基(1〜3位のいずれかで枝分かれしているものを含む)、炭素数1〜20のアルキルオキシカルボニル基
=水素原子、炭素数1〜20のアルキル基(1〜3位のいずれかで枝分かれしているものを含む)、アミノ基、モノ置換アミノ基、ジ置換アミノ基
【請求項2】
前記一般式(A)におけるR〜Rが、下記(a)〜(c)の記載の組み合わせのうち、いずれかの組み合わせである請求項1記載の光学記録媒体。
(a) R=H、 R=OCH、 R=CH
【化2】

(b) R=H、 R=OCH、 R=NHCOCH
【化2】

(c) R=H、 R=OCH、 R=NH
【化2】

【請求項3】
前記一般式(A)におけるR〜Rが、下記(d)〜(h)の記載の組み合わせうち、いずれかの組み合わせである請求項1記載の光学記録媒体。
(d) R=H、 R=OCH、 R=OH、 R=CH
(e) R,R=OH、 R=H、 R=CH
(f) R,R=H R=COOCH、 R=CH
(g) R=H、 R=OCH、 R=OH、 R=NHCOCH
(h) R=H、 R=OCH、 R=OH、 R=NH

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2007−69421(P2007−69421A)
【公開日】平成19年3月22日(2007.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−257682(P2005−257682)
【出願日】平成17年9月6日(2005.9.6)
【出願人】(301000675)シプロ化成株式会社 (33)
【出願人】(000003067)TDK株式会社 (7,238)
【Fターム(参考)】