光学部品、撮像装置、光学部品の製造方法および光学フィルタ
【課題】撮像素子3の撮像面に入射する赤外線の光量を抑制することができるとともに、光学フィルタ8を安定的かつ安価に取り付けることができ、ひいては、ノイズの少ない高画質な撮像画像を得ることができるとともに、歩留まりおよび量産性を向上させることができ、あわせてコストを削減することができる光学部品、撮像装置、光学部品の製造方法および光学フィルタを提供する。
【解決手段】光学フィルタ8の端面10が、物体側から像面側に向かうにしたがって光学フィルタ8の中心側に傾くようなテーパ形状に形成されている。
【解決手段】光学フィルタ8の端面10が、物体側から像面側に向かうにしたがって光学フィルタ8の中心側に傾くようなテーパ形状に形成されている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学部品、撮像装置、光学部品の製造方法および光学フィルタに係り、特に、物体の像を撮像素子の撮像面に結像させる際に、撮像面に入射する赤外線の光量を抑制するのに好適な光学部品、撮像装置、光学部品の製造方法および光学フィルタに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、CCDやCMOS等の撮像素子を用いて物体を撮像する撮像装置が、家庭用ビデオカメラ、携帯電話用カメラおよびデジタルカメラ等の分野に幅広く普及しており、今後も著しい市場成長が見込まれている。
【0003】
このような撮像装置には、小型軽量である上に、物体の像を撮像素子の撮像面に高精度に結像させることが求められており、このような要求に応えるべく、これまでにも、例えば、特許文献1〜3に示すような撮像装置が提案されていた。
【0004】
ところで、このような撮像装置では、レンズを保持するホルダに、光学フィルタを取り付けることが行われていた。
【0005】
光学フィルタとしては、例えば、物体側から入射した光に含まれる赤外線をカットする赤外線(IR:Infra Red)カットフィルタや、物体側から入射した光をロスなく撮像素子に導く反射防止(AR:Anti Reflect)フィルタ等が知られていた。
【0006】
この種の光学フィルタは、通常は、ガラス等の材料によって形成された基板の表面に、TiO2やSiO2等の誘電体の薄膜を複数層積層させてなる誘電体多層膜を成膜することによって製造されていた。
【0007】
より具体的には、例えば、特許文献4に示すように、ガラス基板の両面に誘電体多層膜をそれぞれ成膜した後、このガラス基板を固い支持体に接着し、これを例えばダイシング等によってカッティングしてチップ化することにより、光学フィルタを製造するようになっていた。
【0008】
また、従来から、このような光学フィルタは、レンズのホルダに、紫外線硬化接着剤を用いて取り付けるようになっていた。より具体的には、光学フィルタ側の接着面(すなわち、光学フィルタの外周面および光学フィルタの物体側の表面における縁部)と、この光学フィルタ側の接着面に臨むホルダ側の接着面との間に、紫外線硬化接着剤を配置し、配置された紫外線硬化接着剤を、紫外線を照射して硬化させることによって、光学フィルタをホルダに接着するようになっていた。
【0009】
【特許文献1】特開2004−235834号公報(例えば、第0043段落、図3、6および7等参照)
【特許文献2】特開2003−298924号公報(例えば、第0024段落、図1等参照)
【特許文献3】特開2006−42212号公報(例えば、第0023段落、図1、2等参照)
【特許文献4】特開2005−301111号公報(例えば、第0002段落参照)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、特許文献1〜4に開示されている従来の光学フィルタでは、赤外線を有効にカットすることができず、撮像素子の撮像面に赤外線が入射してしまうことによって、撮像画像上に赤色のノイズが表われてしまうといった問題が生じていた。
【0011】
さらに、光学フィルタに形成されている誘電体多層膜は、紫外線の透過率が悪いため、紫外線硬化接着剤を用いて光学フィルタをホルダに接着する際には、紫外線の光量や照射時間を多くとらない限り、紫外線硬化接着剤を安定的に硬化させることができなかった。これにより、従来は、光学フィルタをホルダに安定的かつ安価に取り付けることができないといった問題も生じていた。
【0012】
そこで、本発明は、このような問題点に鑑みなされたものであり、撮像素子の撮像面に入射する赤外線の光量を抑制することができるとともに、光学フィルタを安定的かつ安価に取り付けることができ、ひいては、ノイズの少ない高画質な撮像画像を得ることができるとともに、歩留まりおよび量産性を向上させることができ、あわせてコストを削減することができる光学部品、撮像装置、光学部品の製造方法および光学フィルタを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
前述した目的を達成するため、本発明の請求項1に係る光学部品の特徴は、レンズと、前記レンズを保持するホルダと、前記ホルダに取り付けられ、物体側から入射した光に含まれる赤外線をカットする機能を有する光学フィルタとを備えた光学部品において、前記光学フィルタの外周面に、物体側から像面側に向かうにしたがって前記光学フィルタの中心側に傾くようなテーパが形成されている点にある。
【0014】
そして、この請求項1に係る発明によれば、光学フィルタの外周面に、物体側から像面側に向かうにしたがって光学フィルタの中心側に傾くようなテーパが形成されていることにより、撮像素子の撮像面に入射する赤外線の光量を抑制することが可能となるとともに、光学フィルタをホルダに安定的かつ安価に取り付けることが可能となる。
【0015】
また、請求項2に係る光学部品の特徴は、請求項1において、前記光学フィルタが、前記テーパによって、前記光学フィルタの外周面から像面側に向かって進行する赤外線の光量を抑制するように形成されている点にある。
【0016】
そして、この請求項2に係る発明によれば、撮像素子の撮像面に入射する赤外線の光量をさらに有効に抑制することが可能となる。
【0017】
さらに、請求項3に係る光学部品の特徴は、請求項1または2において、前記光学フィルタが、平面円形状の基板と、前記基板の一方の表面に形成された反射防止用の誘電体多層膜と、前記基板の他方の表面に形成された赤外線カット用の誘電体多層膜とを有する点にある。
【0018】
そして、この請求項3に係る発明によれば、基板の形状を平面円形状に形成したことにより、基板の母材から取得される基板の枚数を多くすることが可能となる。
【0019】
さらにまた、請求項4に係る光学部品の特徴は、請求項1〜3のいずれか1項において、前記レンズが、前記ホルダに複数枚保持され、物体側から像面側に向かって順に、前記レンズおよび前記光学フィルタが配置されている点にある。
【0020】
そして、この請求項4に係る発明によれば、複数枚のレンズが保持されたホルダの像面側に、物体側から像面側に向かうにしたがって光学フィルタの中心側に傾くようなテーパが形成された光学フィルタを取り付けることが可能となる。
【0021】
また、請求項5に係る撮像装置の特徴は、請求項1〜4のいずれか1項に記載の光学部品と、光を電気信号に変換する撮像素子とを備えた点にある。
【0022】
そして、この請求項5に係る発明によれば、光学フィルタの外周面に物体側から像面側に向かうにしたがって光学フィルタの中心側に傾くようなテーパが形成された光学部品を備えたことによって、撮像素子の撮像面に入射する赤外線の光量を抑制することが可能となるとともに、光学フィルタをホルダに安定的かつ安価に取り付けることが可能となる。
【0023】
さらに、請求項6に係る光学部品の製造方法の特徴は、レンズと、前記レンズを保持するホルダと、前記ホルダに取り付けられ、物体側から入射した光に含まれる赤外線をカットする機能を有する光学フィルタとを備えた光学部品を製造する光学部品の製造方法において、前記光学フィルタの外周面に、前記光学フィルタの厚み方向における一方の表面から他方の表面に向かうにしたがって前記光学フィルタの中心側に傾くようなテーパを形成し、前記ホルダに、前記光学フィルタを前記他方の表面が像面側に向くように取り付ける点にある。
【0024】
そして、この請求項6に係る発明によれば、光学フィルタの外周面に、物体側から像面側に向かうにしたがって光学フィルタの中心側に傾くようなテーパを形成することにより、撮像素子の撮像面に入射する赤外線の光量を抑制することが可能となるとともに、光学フィルタをホルダに安定的かつ安価に取り付けることが可能となる。
【0025】
さらにまた、請求項7に係る光学フィルタの特徴は、赤外線カット用の誘電体多層膜と、反射防止用の誘電体多層膜とを備えた所定の厚みを有する光学フィルタであって、外周面に、厚み方向における一方の表面から他方の表面に向かうにしたがって中心側に傾くようなテーパが形成されている点にある。
【0026】
そして、この請求項7に係る発明によれば、光学フィルタの外周面に、厚み方向における一方の表面から他方の表面に向かうにしたがって中心側に傾くようなテーパを形成したことにより、この光学フィルタを、他方の表面が像面側を向くようにホルダに取り付けることによって、撮像素子の撮像面に入射する赤外線の光量を抑制することが可能となるとともに、光学フィルタをホルダに安定的かつ安価に取り付けることが可能となる。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、撮像素子の撮像面に入射する赤外線の光量を抑制することができるとともに、光学フィルタを安定的かつ安価に取り付けることができ、ひいては、ノイズの少ない高画質な撮像画像を得ることができるとともに、歩留まりおよび量産性を向上させることができ、あわせてコストを削減することができる。
【0028】
また、本発明によれば、基板の母材から取得される基板の個数を多くすることができ、コストをさらに削減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
以下、本発明の実施形態について図1〜10を参照して説明する。
【0030】
図1は、本発明に係る光学部品および光学部品を備えた撮像装置の実施形態を示したものである。本実施形態における撮像装置1は、大別して、光学部品2と、この光学部品2の像面側に配置された撮像素子としてのCMOS等の固体撮像素子3とによって構成されている。
【0031】
光学部品2は、物体側から像面側に向かって順に、第1レンズ5と、絞り6と、第2レンズ7と、本発明に係る光学フィルタ8とを有しており、これらの光学素子5,6,7,8は、筒状のホルダ9に保持されている。
【0032】
図1〜6に示すように、本実施形態における光学フィルタ8は、所定の厚みを有する平面円形状のガラス製の基板11を有しており、この基板11の像面側の表面(図1〜3における右側面)には、赤外線カット用の誘電体多層膜としての赤外線カット膜14が、物体側の表面(図1〜3における左側面)には、反射防止用の誘電体多層膜としての反射防止膜15が、それぞれ形成されている。したがって、光学フィルタ8は、第1レンズ5、絞り6および第2レンズ7を経て物体側から反射防止膜15に入射した光を、この反射防止膜15によってロスなく像面側に向かって進行させることができる。また、反射防止膜15に入射した後に像面側に向かって進行して赤外線カット膜14に到達した光から、赤外線カット膜14によって赤外線のみを反射させてカットすることができる。
【0033】
なお、赤外線カット膜14および反射防止膜15は、例えば、TiO2の薄膜とSiO2の薄膜とを交互に繰り返し積層することによって形成することができる。また、赤外線カット膜14および反射防止膜15は、例えば、真空蒸着法等を用いて成膜するようにしてもよい。
【0034】
そして、本実施形態において、光学フィルタ8の外周面には、物体側から像面側に向かうにしたがって光学フィルタ8の中心側に傾くようなテーパ10が、全周にわたって形成されている。このテーパ10によって、光学フィルタ8は、全体形状が円錐台形状に形成されている。
【0035】
このように、光学フィルタ8の外周面にテーパ10を形成することにより、固体撮像素子3の撮像面に入射する赤外線の光量を抑制することが可能となる。より具体的には、光学フィルタ8の外周面から固体撮像素子3側に向かって進行する赤外線の光量を抑制することが可能となる。これは、図7に示すように、基板11内を進行してテーパ10に到達した赤外線の多くが、テーパ10に対して臨界角に近い角度で入射するため、このテーパ10によって赤外線を全反射させて像面側に向かわせないようにすることができることによるものと推測される。
【0036】
なお、テーパ10の表面粗さ(算術平均高さ)は、0.8385〜1.1959μmとされていることが好ましい。
【0037】
また、図1および図2に示すように、本実施形態において、光学フィルタ8の外周面(すなわちテーパ10)と、光学フィルタ8の物体側の表面における縁部、すなわち、反射防止膜15の物体側の表面における縁部15aとは、光学フィルタ8側の接着面とされている。
【0038】
さらに、ホルダ9の内周面における光学フィルタ8の外周面に臨む部位9aと、反射防止膜15の物体側の表面における縁部15aに臨むホルダ9の端面9bとは、ホルダ9側の接着面とされている。
【0039】
そして、本実施形態において、光学フィルタ8は、光学フィルタ8側の接着面10、15aとホルダ9側の接着面9a、9bとの間に配置されて硬化された紫外線硬化接着剤18を介してホルダ9に接着・保持されている。
【0040】
ここで、本実施形態においては、光学フィルタ8の外周面に、物体側から像面側に向かうにしたがって光学フィルタ8の中心側に傾くようなテーパ10が形成されていることによって、紫外線を紫外線硬化接着剤18に有効に照射することができる。
【0041】
具体的には、光学フィルタ8の外周面と、これに臨むホルダ9の内周面の部位9aとの間に配置された紫外線硬化接着剤18には、紫外線を直接照射することができる。さらに、反射防止膜15の物体側の表面における縁部15aと、これに臨むホルダ9の端面9bとの間に配置された紫外線硬化接着剤18に対しても、誘電体多層膜である赤外線カット膜14が形成されていない光学フィルタ8の外周面を介して紫外線を有効に照射することができる。
【0042】
なお、反射防止膜15は、赤外線カット膜14と同様に、紫外線の照射を妨げる誘電体多層膜である。しかし、本実施形態においては、光学フィルタの外周面にテーパが形成されていなかった従来に比べれば、紫外線が透過すべき誘電体多層膜が1つ(反射防止膜15のみ)で済むため、紫外線を紫外線硬化接着剤18に有効に照射することができる。
【0043】
したがって、本実施形態によれば、紫外線硬化接着剤18に照射する紫外線の光量や照射時間(換言すれば、消費電力)を特に多くすることなく、光学フィルタ8をホルダ9に安定的に取り付けることが可能となる。
【0044】
また、本実施形態において、光学フィルタ8は、基板11の母材の厚み方向における一方の表面に、赤外線カット膜14用の大判の誘電体多層膜を成膜し、また、基板11の母材の他方の表面に、反射防止膜15用の大判の誘電体多層膜を成膜し、これらの大判の誘電体多層膜が成膜された母材から、サンドブラスト、エッチングや打ち抜き等の方法によって個々の光学フィルタ8を切り分けることによって製造することができる。
【0045】
この際に、光学フィルタ8の形状が平面円形状であることにより、1枚の母材から取得することができる光学フィルタ8の枚数を、光学フィルタの形状が平面矩形状の場合よりも多くすることが可能となる。
【実施例】
【0046】
次に、本発明の実施例について説明する。
【0047】
本実施例における光学フィルタ8は、厚さ0.3mm、像面側の表面の直径が3.34mm、物体側の表面の直径が3.50mm、外周面に形成されたテーパ10の頂角が75°とされた円錐台形状の高透過ガラス(白板ガラス)からなる基板11を有している。この基板11の像面側の表面には、低屈折率材料からなる薄膜と、高屈折率材料からなる薄膜とをプラズマアシスト蒸着によって交互に積層させることによって、合計60層の多層構造の赤外線カット膜14が形成されている。また、基板11の物体側の表面には、低屈折率材料からなる薄膜と、高屈折率材料からなる薄膜とを電子ビーム(EB)蒸着によって交互に積層させることによって、合計4層の多層構造の反射防止膜15が形成されている。
【0048】
一方、従来の光学フィルタとしての比較例における光学フィルタは、外周面にテーパは形成されておらず、外周面の形状は、厚み方向に平行な形状(円筒形状)とされている。なお、比較例における光学フィルタは、外周面以外の構成は本実施例における光学フィルタ8と同様とされている。
【0049】
このような本実施例における光学フィルタ8と、比較例における光学フィルタとをそれぞれ紫外線硬化接着剤18を介してホルダ9に接着することによって光学部品をそれぞれ形成し、さらに、各光学部品をそれぞれ固体撮像素子3と組み合わせることによって撮像装置をそれぞれ形成した。
【0050】
そして、このようにして形成された各撮像装置によって、図8に示すような光源20を被写体とした撮像を行った。
【0051】
各撮像装置によって撮像された撮像画像は、図8の矢印に示された範囲に相当する撮像画像上の範囲におけるRGB成分(それぞれの成分の最大値が255)が、図9に示すような特性を有している。
【0052】
なお、図9における横軸は、図8の矢印に沿った撮像画像上の測定位置であり、横軸の原点が、図8の矢印に示された範囲における最も光源側の端点に対応する撮像画像上の位置とされている。また、図9における縦軸は、RGB値である。
【0053】
図9に示すように、本実施例における光学フィルタ8を搭載した撮像装置によって撮像された撮像画像(図9における実施例)の方が、比較例における光学フィルタを搭載した撮像装置によって撮像された撮像画像(図9における比較例)よりもR成分の値、すなわち、赤色のノイズが低減されていることが分かる。
【0054】
次に、図10は、実施例および比較例のそれぞれについて、図9のRGB成分におけるR成分と他の色成分との差を、撮像画像上の前述した測定位置ごとに算出してプロットしたグラフである。
【0055】
図10に示すように、本実施例おける光学フィルタ8を搭載した撮像装置によって撮像された撮像画像(図10における実施例)の方が、比較例における光学フィルタを搭載した撮像装置によって撮像された撮像画像(図10における比較例)よりもR成分の値が低減されていることがさらによく分かる。
【0056】
次に、本実施例における光学フィルタ8および比較例における光学フィルタのそれぞれに対して、紫外線硬化接着剤を介したホルダとの接着力として、光学フィルタのホルダからの抜去力を測定した。
【0057】
なお、前提として、本実施例における光学フィルタ8および比較例における光学フィルタは、それぞれ、紫外線硬化接着剤が0.15秒の塗布時間で塗布されたホルダ側の接着面上に載置されて2分間放置され後に、照度約80mW/cm2、積算光量約3500mJ/cm2の紫外線を照射されることによってホルダに接着されたものである。
【0058】
そして、このようにしてホルダに接着された本実施例および比較例における各光学フィルタに対して、ディスペンサによって、物体側から像面側に向かって空気圧力を作用させ、光学フィルタのホルダからの抜去力(N)を測定した。なお、この抜去力の測定は、実施例における光学フィルタ、比較例における光学フィルタのそれぞれについて3回ずつ行った。この測定結果を以下の表1に示す。
【0059】
【表1】
【0060】
表1に示すように、本実施例における光学フィルタ8の方が、比較例における光学フィルタよりも抜去力が大きく接着性に優れていることが分かる。
【0061】
以上述べたように、本実施形態によれば、光学フィルタ8の外周面に、物体側から像面側に向かうにしたがって光学フィルタ8の中心側に傾くようなテーパ10が形成されていることにより、撮像素子3の撮像面に入射する赤外線の光量を抑制することが可能となるとともに、光学フィルタ8をホルダ9に安定的かつ安価に取り付けることが可能となる。
【0062】
この結果、撮像素子3の撮像面に入射する赤外線の光量を抑制することができるとともに、光学フィルタ8を安定的かつ安価に取り付けることができ、ひいては、ノイズの少ない高画質な撮像画像を得ることができるとともに、歩留まりおよび量産性を向上させることができ、あわせてコストを削減することができる。
【0063】
なお、本発明は、前述した実施の形態に限定されるものではなく、必要に応じて種々の変更が可能である。
【0064】
例えば、光学フィルタ8を取り付ける位置は、図1に示したホルダ9に限る必要はなく、図1に示したホルダ9に連結される図示しない他のホルダ(例えば、図1においてホルダ9に右方から嵌合されるホルダ)における図1に相当する位置に取り付けるようにしてもよい。このような他のホルダについても、図1のホルダ9と同様にレンズ7を保持するホルダであることに変りはない。この場合には、他のホルダも含めて光学部品が構成されることになる。
【0065】
また、光学フィルタは、必ずしも反射防止膜15を有する必要はなく、基板11における物体側および像面側の双方の表面に、赤外線カット膜14を有していてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】本発明に係る光学部品および撮像装置の実施形態を示す概略縦断面図
【図2】本発明に係る光学部品および撮像装置の実施形態において、光学フィルタとホルダとの接着状態を示す部分拡大図
【図3】本発明に係る光学フィルタの実施形態を示す図
【図4】図3の右側面図
【図5】図3の左側面図
【図6】本発明に係る光学フィルタの実施形態を示す斜視図
【図7】本発明に係る光学フィルタにおける赤外線の推測される挙動を示す説明図
【図8】本発明に係る撮像装置の実施形態において、被写体を模式的に示す図
【図9】本発明に係る撮像装置の実施形態において、撮像画像のRGB特性を示すグラフ
【図10】本発明に係る撮像装置の実施形態において、撮像画像のRGB特性を示す図9と異なるグラフ
【符号の説明】
【0067】
1 光学装置
2 光学部品
3 固体撮像素子
5 第1レンズ
7 第2レンズ
8 光学フィルタ
9 ホルダ
10 端面
11 基板
14 赤外線カット膜
15 反射防止膜
18 紫外線硬化接着剤
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学部品、撮像装置、光学部品の製造方法および光学フィルタに係り、特に、物体の像を撮像素子の撮像面に結像させる際に、撮像面に入射する赤外線の光量を抑制するのに好適な光学部品、撮像装置、光学部品の製造方法および光学フィルタに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、CCDやCMOS等の撮像素子を用いて物体を撮像する撮像装置が、家庭用ビデオカメラ、携帯電話用カメラおよびデジタルカメラ等の分野に幅広く普及しており、今後も著しい市場成長が見込まれている。
【0003】
このような撮像装置には、小型軽量である上に、物体の像を撮像素子の撮像面に高精度に結像させることが求められており、このような要求に応えるべく、これまでにも、例えば、特許文献1〜3に示すような撮像装置が提案されていた。
【0004】
ところで、このような撮像装置では、レンズを保持するホルダに、光学フィルタを取り付けることが行われていた。
【0005】
光学フィルタとしては、例えば、物体側から入射した光に含まれる赤外線をカットする赤外線(IR:Infra Red)カットフィルタや、物体側から入射した光をロスなく撮像素子に導く反射防止(AR:Anti Reflect)フィルタ等が知られていた。
【0006】
この種の光学フィルタは、通常は、ガラス等の材料によって形成された基板の表面に、TiO2やSiO2等の誘電体の薄膜を複数層積層させてなる誘電体多層膜を成膜することによって製造されていた。
【0007】
より具体的には、例えば、特許文献4に示すように、ガラス基板の両面に誘電体多層膜をそれぞれ成膜した後、このガラス基板を固い支持体に接着し、これを例えばダイシング等によってカッティングしてチップ化することにより、光学フィルタを製造するようになっていた。
【0008】
また、従来から、このような光学フィルタは、レンズのホルダに、紫外線硬化接着剤を用いて取り付けるようになっていた。より具体的には、光学フィルタ側の接着面(すなわち、光学フィルタの外周面および光学フィルタの物体側の表面における縁部)と、この光学フィルタ側の接着面に臨むホルダ側の接着面との間に、紫外線硬化接着剤を配置し、配置された紫外線硬化接着剤を、紫外線を照射して硬化させることによって、光学フィルタをホルダに接着するようになっていた。
【0009】
【特許文献1】特開2004−235834号公報(例えば、第0043段落、図3、6および7等参照)
【特許文献2】特開2003−298924号公報(例えば、第0024段落、図1等参照)
【特許文献3】特開2006−42212号公報(例えば、第0023段落、図1、2等参照)
【特許文献4】特開2005−301111号公報(例えば、第0002段落参照)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、特許文献1〜4に開示されている従来の光学フィルタでは、赤外線を有効にカットすることができず、撮像素子の撮像面に赤外線が入射してしまうことによって、撮像画像上に赤色のノイズが表われてしまうといった問題が生じていた。
【0011】
さらに、光学フィルタに形成されている誘電体多層膜は、紫外線の透過率が悪いため、紫外線硬化接着剤を用いて光学フィルタをホルダに接着する際には、紫外線の光量や照射時間を多くとらない限り、紫外線硬化接着剤を安定的に硬化させることができなかった。これにより、従来は、光学フィルタをホルダに安定的かつ安価に取り付けることができないといった問題も生じていた。
【0012】
そこで、本発明は、このような問題点に鑑みなされたものであり、撮像素子の撮像面に入射する赤外線の光量を抑制することができるとともに、光学フィルタを安定的かつ安価に取り付けることができ、ひいては、ノイズの少ない高画質な撮像画像を得ることができるとともに、歩留まりおよび量産性を向上させることができ、あわせてコストを削減することができる光学部品、撮像装置、光学部品の製造方法および光学フィルタを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
前述した目的を達成するため、本発明の請求項1に係る光学部品の特徴は、レンズと、前記レンズを保持するホルダと、前記ホルダに取り付けられ、物体側から入射した光に含まれる赤外線をカットする機能を有する光学フィルタとを備えた光学部品において、前記光学フィルタの外周面に、物体側から像面側に向かうにしたがって前記光学フィルタの中心側に傾くようなテーパが形成されている点にある。
【0014】
そして、この請求項1に係る発明によれば、光学フィルタの外周面に、物体側から像面側に向かうにしたがって光学フィルタの中心側に傾くようなテーパが形成されていることにより、撮像素子の撮像面に入射する赤外線の光量を抑制することが可能となるとともに、光学フィルタをホルダに安定的かつ安価に取り付けることが可能となる。
【0015】
また、請求項2に係る光学部品の特徴は、請求項1において、前記光学フィルタが、前記テーパによって、前記光学フィルタの外周面から像面側に向かって進行する赤外線の光量を抑制するように形成されている点にある。
【0016】
そして、この請求項2に係る発明によれば、撮像素子の撮像面に入射する赤外線の光量をさらに有効に抑制することが可能となる。
【0017】
さらに、請求項3に係る光学部品の特徴は、請求項1または2において、前記光学フィルタが、平面円形状の基板と、前記基板の一方の表面に形成された反射防止用の誘電体多層膜と、前記基板の他方の表面に形成された赤外線カット用の誘電体多層膜とを有する点にある。
【0018】
そして、この請求項3に係る発明によれば、基板の形状を平面円形状に形成したことにより、基板の母材から取得される基板の枚数を多くすることが可能となる。
【0019】
さらにまた、請求項4に係る光学部品の特徴は、請求項1〜3のいずれか1項において、前記レンズが、前記ホルダに複数枚保持され、物体側から像面側に向かって順に、前記レンズおよび前記光学フィルタが配置されている点にある。
【0020】
そして、この請求項4に係る発明によれば、複数枚のレンズが保持されたホルダの像面側に、物体側から像面側に向かうにしたがって光学フィルタの中心側に傾くようなテーパが形成された光学フィルタを取り付けることが可能となる。
【0021】
また、請求項5に係る撮像装置の特徴は、請求項1〜4のいずれか1項に記載の光学部品と、光を電気信号に変換する撮像素子とを備えた点にある。
【0022】
そして、この請求項5に係る発明によれば、光学フィルタの外周面に物体側から像面側に向かうにしたがって光学フィルタの中心側に傾くようなテーパが形成された光学部品を備えたことによって、撮像素子の撮像面に入射する赤外線の光量を抑制することが可能となるとともに、光学フィルタをホルダに安定的かつ安価に取り付けることが可能となる。
【0023】
さらに、請求項6に係る光学部品の製造方法の特徴は、レンズと、前記レンズを保持するホルダと、前記ホルダに取り付けられ、物体側から入射した光に含まれる赤外線をカットする機能を有する光学フィルタとを備えた光学部品を製造する光学部品の製造方法において、前記光学フィルタの外周面に、前記光学フィルタの厚み方向における一方の表面から他方の表面に向かうにしたがって前記光学フィルタの中心側に傾くようなテーパを形成し、前記ホルダに、前記光学フィルタを前記他方の表面が像面側に向くように取り付ける点にある。
【0024】
そして、この請求項6に係る発明によれば、光学フィルタの外周面に、物体側から像面側に向かうにしたがって光学フィルタの中心側に傾くようなテーパを形成することにより、撮像素子の撮像面に入射する赤外線の光量を抑制することが可能となるとともに、光学フィルタをホルダに安定的かつ安価に取り付けることが可能となる。
【0025】
さらにまた、請求項7に係る光学フィルタの特徴は、赤外線カット用の誘電体多層膜と、反射防止用の誘電体多層膜とを備えた所定の厚みを有する光学フィルタであって、外周面に、厚み方向における一方の表面から他方の表面に向かうにしたがって中心側に傾くようなテーパが形成されている点にある。
【0026】
そして、この請求項7に係る発明によれば、光学フィルタの外周面に、厚み方向における一方の表面から他方の表面に向かうにしたがって中心側に傾くようなテーパを形成したことにより、この光学フィルタを、他方の表面が像面側を向くようにホルダに取り付けることによって、撮像素子の撮像面に入射する赤外線の光量を抑制することが可能となるとともに、光学フィルタをホルダに安定的かつ安価に取り付けることが可能となる。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、撮像素子の撮像面に入射する赤外線の光量を抑制することができるとともに、光学フィルタを安定的かつ安価に取り付けることができ、ひいては、ノイズの少ない高画質な撮像画像を得ることができるとともに、歩留まりおよび量産性を向上させることができ、あわせてコストを削減することができる。
【0028】
また、本発明によれば、基板の母材から取得される基板の個数を多くすることができ、コストをさらに削減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
以下、本発明の実施形態について図1〜10を参照して説明する。
【0030】
図1は、本発明に係る光学部品および光学部品を備えた撮像装置の実施形態を示したものである。本実施形態における撮像装置1は、大別して、光学部品2と、この光学部品2の像面側に配置された撮像素子としてのCMOS等の固体撮像素子3とによって構成されている。
【0031】
光学部品2は、物体側から像面側に向かって順に、第1レンズ5と、絞り6と、第2レンズ7と、本発明に係る光学フィルタ8とを有しており、これらの光学素子5,6,7,8は、筒状のホルダ9に保持されている。
【0032】
図1〜6に示すように、本実施形態における光学フィルタ8は、所定の厚みを有する平面円形状のガラス製の基板11を有しており、この基板11の像面側の表面(図1〜3における右側面)には、赤外線カット用の誘電体多層膜としての赤外線カット膜14が、物体側の表面(図1〜3における左側面)には、反射防止用の誘電体多層膜としての反射防止膜15が、それぞれ形成されている。したがって、光学フィルタ8は、第1レンズ5、絞り6および第2レンズ7を経て物体側から反射防止膜15に入射した光を、この反射防止膜15によってロスなく像面側に向かって進行させることができる。また、反射防止膜15に入射した後に像面側に向かって進行して赤外線カット膜14に到達した光から、赤外線カット膜14によって赤外線のみを反射させてカットすることができる。
【0033】
なお、赤外線カット膜14および反射防止膜15は、例えば、TiO2の薄膜とSiO2の薄膜とを交互に繰り返し積層することによって形成することができる。また、赤外線カット膜14および反射防止膜15は、例えば、真空蒸着法等を用いて成膜するようにしてもよい。
【0034】
そして、本実施形態において、光学フィルタ8の外周面には、物体側から像面側に向かうにしたがって光学フィルタ8の中心側に傾くようなテーパ10が、全周にわたって形成されている。このテーパ10によって、光学フィルタ8は、全体形状が円錐台形状に形成されている。
【0035】
このように、光学フィルタ8の外周面にテーパ10を形成することにより、固体撮像素子3の撮像面に入射する赤外線の光量を抑制することが可能となる。より具体的には、光学フィルタ8の外周面から固体撮像素子3側に向かって進行する赤外線の光量を抑制することが可能となる。これは、図7に示すように、基板11内を進行してテーパ10に到達した赤外線の多くが、テーパ10に対して臨界角に近い角度で入射するため、このテーパ10によって赤外線を全反射させて像面側に向かわせないようにすることができることによるものと推測される。
【0036】
なお、テーパ10の表面粗さ(算術平均高さ)は、0.8385〜1.1959μmとされていることが好ましい。
【0037】
また、図1および図2に示すように、本実施形態において、光学フィルタ8の外周面(すなわちテーパ10)と、光学フィルタ8の物体側の表面における縁部、すなわち、反射防止膜15の物体側の表面における縁部15aとは、光学フィルタ8側の接着面とされている。
【0038】
さらに、ホルダ9の内周面における光学フィルタ8の外周面に臨む部位9aと、反射防止膜15の物体側の表面における縁部15aに臨むホルダ9の端面9bとは、ホルダ9側の接着面とされている。
【0039】
そして、本実施形態において、光学フィルタ8は、光学フィルタ8側の接着面10、15aとホルダ9側の接着面9a、9bとの間に配置されて硬化された紫外線硬化接着剤18を介してホルダ9に接着・保持されている。
【0040】
ここで、本実施形態においては、光学フィルタ8の外周面に、物体側から像面側に向かうにしたがって光学フィルタ8の中心側に傾くようなテーパ10が形成されていることによって、紫外線を紫外線硬化接着剤18に有効に照射することができる。
【0041】
具体的には、光学フィルタ8の外周面と、これに臨むホルダ9の内周面の部位9aとの間に配置された紫外線硬化接着剤18には、紫外線を直接照射することができる。さらに、反射防止膜15の物体側の表面における縁部15aと、これに臨むホルダ9の端面9bとの間に配置された紫外線硬化接着剤18に対しても、誘電体多層膜である赤外線カット膜14が形成されていない光学フィルタ8の外周面を介して紫外線を有効に照射することができる。
【0042】
なお、反射防止膜15は、赤外線カット膜14と同様に、紫外線の照射を妨げる誘電体多層膜である。しかし、本実施形態においては、光学フィルタの外周面にテーパが形成されていなかった従来に比べれば、紫外線が透過すべき誘電体多層膜が1つ(反射防止膜15のみ)で済むため、紫外線を紫外線硬化接着剤18に有効に照射することができる。
【0043】
したがって、本実施形態によれば、紫外線硬化接着剤18に照射する紫外線の光量や照射時間(換言すれば、消費電力)を特に多くすることなく、光学フィルタ8をホルダ9に安定的に取り付けることが可能となる。
【0044】
また、本実施形態において、光学フィルタ8は、基板11の母材の厚み方向における一方の表面に、赤外線カット膜14用の大判の誘電体多層膜を成膜し、また、基板11の母材の他方の表面に、反射防止膜15用の大判の誘電体多層膜を成膜し、これらの大判の誘電体多層膜が成膜された母材から、サンドブラスト、エッチングや打ち抜き等の方法によって個々の光学フィルタ8を切り分けることによって製造することができる。
【0045】
この際に、光学フィルタ8の形状が平面円形状であることにより、1枚の母材から取得することができる光学フィルタ8の枚数を、光学フィルタの形状が平面矩形状の場合よりも多くすることが可能となる。
【実施例】
【0046】
次に、本発明の実施例について説明する。
【0047】
本実施例における光学フィルタ8は、厚さ0.3mm、像面側の表面の直径が3.34mm、物体側の表面の直径が3.50mm、外周面に形成されたテーパ10の頂角が75°とされた円錐台形状の高透過ガラス(白板ガラス)からなる基板11を有している。この基板11の像面側の表面には、低屈折率材料からなる薄膜と、高屈折率材料からなる薄膜とをプラズマアシスト蒸着によって交互に積層させることによって、合計60層の多層構造の赤外線カット膜14が形成されている。また、基板11の物体側の表面には、低屈折率材料からなる薄膜と、高屈折率材料からなる薄膜とを電子ビーム(EB)蒸着によって交互に積層させることによって、合計4層の多層構造の反射防止膜15が形成されている。
【0048】
一方、従来の光学フィルタとしての比較例における光学フィルタは、外周面にテーパは形成されておらず、外周面の形状は、厚み方向に平行な形状(円筒形状)とされている。なお、比較例における光学フィルタは、外周面以外の構成は本実施例における光学フィルタ8と同様とされている。
【0049】
このような本実施例における光学フィルタ8と、比較例における光学フィルタとをそれぞれ紫外線硬化接着剤18を介してホルダ9に接着することによって光学部品をそれぞれ形成し、さらに、各光学部品をそれぞれ固体撮像素子3と組み合わせることによって撮像装置をそれぞれ形成した。
【0050】
そして、このようにして形成された各撮像装置によって、図8に示すような光源20を被写体とした撮像を行った。
【0051】
各撮像装置によって撮像された撮像画像は、図8の矢印に示された範囲に相当する撮像画像上の範囲におけるRGB成分(それぞれの成分の最大値が255)が、図9に示すような特性を有している。
【0052】
なお、図9における横軸は、図8の矢印に沿った撮像画像上の測定位置であり、横軸の原点が、図8の矢印に示された範囲における最も光源側の端点に対応する撮像画像上の位置とされている。また、図9における縦軸は、RGB値である。
【0053】
図9に示すように、本実施例における光学フィルタ8を搭載した撮像装置によって撮像された撮像画像(図9における実施例)の方が、比較例における光学フィルタを搭載した撮像装置によって撮像された撮像画像(図9における比較例)よりもR成分の値、すなわち、赤色のノイズが低減されていることが分かる。
【0054】
次に、図10は、実施例および比較例のそれぞれについて、図9のRGB成分におけるR成分と他の色成分との差を、撮像画像上の前述した測定位置ごとに算出してプロットしたグラフである。
【0055】
図10に示すように、本実施例おける光学フィルタ8を搭載した撮像装置によって撮像された撮像画像(図10における実施例)の方が、比較例における光学フィルタを搭載した撮像装置によって撮像された撮像画像(図10における比較例)よりもR成分の値が低減されていることがさらによく分かる。
【0056】
次に、本実施例における光学フィルタ8および比較例における光学フィルタのそれぞれに対して、紫外線硬化接着剤を介したホルダとの接着力として、光学フィルタのホルダからの抜去力を測定した。
【0057】
なお、前提として、本実施例における光学フィルタ8および比較例における光学フィルタは、それぞれ、紫外線硬化接着剤が0.15秒の塗布時間で塗布されたホルダ側の接着面上に載置されて2分間放置され後に、照度約80mW/cm2、積算光量約3500mJ/cm2の紫外線を照射されることによってホルダに接着されたものである。
【0058】
そして、このようにしてホルダに接着された本実施例および比較例における各光学フィルタに対して、ディスペンサによって、物体側から像面側に向かって空気圧力を作用させ、光学フィルタのホルダからの抜去力(N)を測定した。なお、この抜去力の測定は、実施例における光学フィルタ、比較例における光学フィルタのそれぞれについて3回ずつ行った。この測定結果を以下の表1に示す。
【0059】
【表1】
【0060】
表1に示すように、本実施例における光学フィルタ8の方が、比較例における光学フィルタよりも抜去力が大きく接着性に優れていることが分かる。
【0061】
以上述べたように、本実施形態によれば、光学フィルタ8の外周面に、物体側から像面側に向かうにしたがって光学フィルタ8の中心側に傾くようなテーパ10が形成されていることにより、撮像素子3の撮像面に入射する赤外線の光量を抑制することが可能となるとともに、光学フィルタ8をホルダ9に安定的かつ安価に取り付けることが可能となる。
【0062】
この結果、撮像素子3の撮像面に入射する赤外線の光量を抑制することができるとともに、光学フィルタ8を安定的かつ安価に取り付けることができ、ひいては、ノイズの少ない高画質な撮像画像を得ることができるとともに、歩留まりおよび量産性を向上させることができ、あわせてコストを削減することができる。
【0063】
なお、本発明は、前述した実施の形態に限定されるものではなく、必要に応じて種々の変更が可能である。
【0064】
例えば、光学フィルタ8を取り付ける位置は、図1に示したホルダ9に限る必要はなく、図1に示したホルダ9に連結される図示しない他のホルダ(例えば、図1においてホルダ9に右方から嵌合されるホルダ)における図1に相当する位置に取り付けるようにしてもよい。このような他のホルダについても、図1のホルダ9と同様にレンズ7を保持するホルダであることに変りはない。この場合には、他のホルダも含めて光学部品が構成されることになる。
【0065】
また、光学フィルタは、必ずしも反射防止膜15を有する必要はなく、基板11における物体側および像面側の双方の表面に、赤外線カット膜14を有していてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】本発明に係る光学部品および撮像装置の実施形態を示す概略縦断面図
【図2】本発明に係る光学部品および撮像装置の実施形態において、光学フィルタとホルダとの接着状態を示す部分拡大図
【図3】本発明に係る光学フィルタの実施形態を示す図
【図4】図3の右側面図
【図5】図3の左側面図
【図6】本発明に係る光学フィルタの実施形態を示す斜視図
【図7】本発明に係る光学フィルタにおける赤外線の推測される挙動を示す説明図
【図8】本発明に係る撮像装置の実施形態において、被写体を模式的に示す図
【図9】本発明に係る撮像装置の実施形態において、撮像画像のRGB特性を示すグラフ
【図10】本発明に係る撮像装置の実施形態において、撮像画像のRGB特性を示す図9と異なるグラフ
【符号の説明】
【0067】
1 光学装置
2 光学部品
3 固体撮像素子
5 第1レンズ
7 第2レンズ
8 光学フィルタ
9 ホルダ
10 端面
11 基板
14 赤外線カット膜
15 反射防止膜
18 紫外線硬化接着剤
【特許請求の範囲】
【請求項1】
レンズと、前記レンズを保持するホルダと、前記ホルダに取り付けられ、物体側から入射した光に含まれる赤外線をカットする機能を有する光学フィルタとを備えた光学部品において、
前記光学フィルタの外周面に、物体側から像面側に向かうにしたがって前記光学フィルタの中心側に傾くようなテーパが形成されていること
を特徴とする光学部品。
【請求項2】
前記光学フィルタが、前記テーパによって、前記光学フィルタの外周面から像面側に向かって進行する赤外線の光量を抑制するように形成されていること
を特徴とする請求項1に記載の光学部品。
【請求項3】
前記光学フィルタが、平面円形状の基板と、前記基板の一方の表面に形成された反射防止用の誘電体多層膜と、前記基板の他方の表面に形成された赤外線カット用の誘電体多層膜とを有すること
を特徴とする請求項1または2に記載の光学部品。
【請求項4】
前記レンズが、前記ホルダに複数枚保持され、物体側から像面側に向かって順に、前記レンズおよび前記光学フィルタが配置されていること
を特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の光学部品。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の光学部品と、光を電気信号に変換する撮像素子とを備えたこと
を特徴とする撮像装置。
【請求項6】
レンズと、前記レンズを保持するホルダと、前記ホルダに取り付けられ、物体側から入射した光に含まれる赤外線をカットする機能を有する光学フィルタとを備えた光学部品を製造する光学部品の製造方法において、
前記光学フィルタの外周面に、前記光学フィルタの厚み方向における一方の表面から他方の表面に向かうにしたがって前記光学フィルタの中心側に傾くようなテーパを形成し、
前記ホルダに、前記光学フィルタを前記他方の表面が像面側に向くように取り付けること
を特徴とする光学部品の製造方法。
【請求項7】
赤外線カット用の誘電体多層膜と、反射防止用の誘電体多層膜とを備えた所定の厚みを有する光学フィルタであって、
外周面に、厚み方向における一方の表面から他方の表面に向かうにしたがって中心側に傾くようなテーパが形成されていること
を特徴とする光学フィルタ。
【請求項1】
レンズと、前記レンズを保持するホルダと、前記ホルダに取り付けられ、物体側から入射した光に含まれる赤外線をカットする機能を有する光学フィルタとを備えた光学部品において、
前記光学フィルタの外周面に、物体側から像面側に向かうにしたがって前記光学フィルタの中心側に傾くようなテーパが形成されていること
を特徴とする光学部品。
【請求項2】
前記光学フィルタが、前記テーパによって、前記光学フィルタの外周面から像面側に向かって進行する赤外線の光量を抑制するように形成されていること
を特徴とする請求項1に記載の光学部品。
【請求項3】
前記光学フィルタが、平面円形状の基板と、前記基板の一方の表面に形成された反射防止用の誘電体多層膜と、前記基板の他方の表面に形成された赤外線カット用の誘電体多層膜とを有すること
を特徴とする請求項1または2に記載の光学部品。
【請求項4】
前記レンズが、前記ホルダに複数枚保持され、物体側から像面側に向かって順に、前記レンズおよび前記光学フィルタが配置されていること
を特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の光学部品。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の光学部品と、光を電気信号に変換する撮像素子とを備えたこと
を特徴とする撮像装置。
【請求項6】
レンズと、前記レンズを保持するホルダと、前記ホルダに取り付けられ、物体側から入射した光に含まれる赤外線をカットする機能を有する光学フィルタとを備えた光学部品を製造する光学部品の製造方法において、
前記光学フィルタの外周面に、前記光学フィルタの厚み方向における一方の表面から他方の表面に向かうにしたがって前記光学フィルタの中心側に傾くようなテーパを形成し、
前記ホルダに、前記光学フィルタを前記他方の表面が像面側に向くように取り付けること
を特徴とする光学部品の製造方法。
【請求項7】
赤外線カット用の誘電体多層膜と、反射防止用の誘電体多層膜とを備えた所定の厚みを有する光学フィルタであって、
外周面に、厚み方向における一方の表面から他方の表面に向かうにしたがって中心側に傾くようなテーパが形成されていること
を特徴とする光学フィルタ。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【公開番号】特開2007−316498(P2007−316498A)
【公開日】平成19年12月6日(2007.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−148123(P2006−148123)
【出願日】平成18年5月29日(2006.5.29)
【出願人】(000208765)株式会社エンプラス (403)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年12月6日(2007.12.6)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年5月29日(2006.5.29)
【出願人】(000208765)株式会社エンプラス (403)
【Fターム(参考)】
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