説明

光学部品および光源装置

【課題】容易に製造することができる光学部品および光源装置を提供する。
【解決手段】光源装置1では、光源10から出力されるレーザ光は、レンズ21,22によりビーム径が調整されて、光学部品30の一端30Aに入力される。光学部品30は複数の光導波路が束ねられて構成されたものである。複数の光導波路それぞれは、実効屈折率が異なり、長さが等しく、一端30Aから他端30Bまで延在している。複数の光導波路それぞれは、光源10から出力されるレーザ光のコヒーレンス長より小さい程度で長さが等しければよく、例えば長さの差が1mm以下であればよい。光学部品30に含まれる複数の光導波路それぞれの光路長のうち最大光路長と最小光路長との差は、光源10から出力されるレーザ光のコヒーレンス長以上である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学部品および光源装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
レーザ光を出力する光源を備える光源装置は、レーザ顕微鏡、半導体やプリント基板等の製造に用いられる露光装置、レーザマーキング装置、レーザ加工機、各種計測・検査装置、等に用いられる。これらの光源装置から出力されるレーザ光のコヒーレンスが高いことから、そのレーザ光には干渉によるスペックルノイズが常に発生する。スペックルノイズは画像の質を著しく劣化させるので、レーザ光のスペックルノイズは除去されなければならない。
【0003】
そこで、レーザ光のスペックルノイズを除去するための光学部品が用いられる。特許文献1に開示された光源装置は、長さが異なる複数の光ファイバから構成される光学部品を用い、光源から出力されるレーザ光を該光学部品に通すことでスペックルノイズを除去する。ここで、光学部品に含まれる複数の光ファイバの長さの差は、光源から出力されるレーザ光のコヒーレンス長より大きいものとされる。
【特許文献1】特開平6−167640号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示された光源装置に含まれる光学部品は、複数の光ファイバそれぞれの長さを管理して製造する必要があることから、製造に手間がかかり製造コストが高くなる。
【0005】
本発明は、上記問題点を解消する為になされたものであり、容易に製造することができる光学部品および光源装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る光学部品は、実効屈折率が異なり長さが等しい複数の光導波路が束ねられて構成されることを特徴とする。複数の光導波路が溶融一体化されているのが好適である。複数の光導波路それぞれのコアまたはクラッドの残留応力のばらつきが0.003GPa〜0.3GPaの範囲にあるのが好適である。また、複数の光導波路の周囲にパイプが設けられ、そのパイプの屈折率が複数の光導波路のクラッドの屈折率より小さいのが好適である。
【0007】
本発明に係る光源装置は、レーザ光を出力する光源と、この光源から出力されるレーザ光が一端に入力される上記の本発明に係る光学部品と、を備えることを特徴とする。光学部品に含まれる複数の光導波路それぞれの光路長のうち最大光路長と最小光路長との差が、光源から出力されるレーザ光のコヒーレンス長以上であるのが好適である。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係る光学部品および光源装置は、容易に製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、添付図面を参照して、本発明を実施するための最良の形態を詳細に説明する。なお、図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0010】
図1は、本実施形態に係る光源装置1の構成図である。この図に示される光源装置1は、光源10,レンズ21、レンズ22および光学部品30を備える。この光源装置1では、光源10から出力されるレーザ光は、レンズ21,22によりビーム径が調整されて、光学部品30の一端30Aに入力される。
【0011】
光学部品30は複数の光導波路が束ねられて構成されたものである。複数の光導波路それぞれは、実効屈折率が異なり、長さが等しく、一端30Aから他端30Bまで延在している。複数の光導波路それぞれは、光源10から出力されるレーザ光のコヒーレンス長より小さい程度で長さが等しければよく、例えば長さの差が1mm以下であればよい。光学部品30に含まれる複数の光導波路それぞれの光路長のうち最大光路長と最小光路長との差は、光源10から出力されるレーザ光のコヒーレンス長以上である。
【0012】
光学部品30の一端30Aに入力されたレーザ光は、光学部品30に含まれる複数の光導波路により導波された他端30Bまで達し、他端30Bから外部へ出力される。このとき、光学部品30に含まれる複数の光導波路それぞれは実効屈折率が異なり長さが等しいことから、光学部品30の他端30Bから出力される際のレーザ光は、そのビーム断面の位置によって位相が異なるものとなって、コヒーレンシが低減され、スペックルノイズが低減される。
【0013】
この光学部品30は、複数の光導波路が溶融一体化されているのが好適である。また、光学部品30は、複数の光導波路がパイプ内に挿入されて、これら複数の光導波路およびパイプが溶融一体化されているのが好適である。パイプの屈折率は複数の光導波路のクラッドの屈折率より小さいのが好適である。また、複数の光導波路およびパイプは、溶融一体化する上では、石英ガラスを主成分とするものであるのが好適である。また、複数の光導波路それぞれのコアまたはクラッドの残留応力のばらつきが0.003GPa〜0.3GPaの範囲にあるのが好適である。
【0014】
複数の光導波路が溶融一体化されて光学部品30が構成される場合、光導波路の本数が多くても、光学部品30の取り扱いが容易であり、光学部品30の径を任意に設計することができ、また、レーザ光のパワー密度を大きくすることができる。また、パイプの屈折率が複数の光導波路のクラッドの屈折率より小さい場合には、一端30Aで光導波路のクラッドに入射した光も、パイプに閉じ込められて他端30Bまで低損失で導かれ得る。
【0015】
図2〜図4は、本実施形態に係る光学部品30の断面構造例を示す図である。図2に示される光学部品30は、各々のコアの屈折率が異なる複数の光導波路(光ファイバ)32がパイプ31の内部に密に挿入されて溶融一体化されたものである。図3に示される光学部品30は、各々のコアの径が異なる複数の光導波路(光ファイバ)33がパイプ31の内部に密に挿入されて溶融一体化されたものである。また、図4に示される光学部品30は、各々の組成が異なる複数の光導波路(光ファイバ)34がパイプ31の内部に密に挿入されて溶融一体化されたものである。これら何れの構成例においても、実効屈折率が異なり長さが等しい複数の光導波路が束ねられて構成される光学部品30が製造され得る。
【0016】
例えば、光源10は青紫レーザ光を出力するレーザダイオードであるとする。青紫レーザダイオードは、典型的には、中心波長λが400nmであり、スペクトル幅Δλが1nmであって、コヒーレンス長Lc(=λ/Δλ)が160μmである。スペックルノイズを抑圧するのに必要な光路長差がコヒーレンス長Lcの数倍の1mmであるとする。各光導波路の長さが10mであれば、各光導波路の実効屈折率を0.01%ばらつかせればよい。したがって、各光導波路の長さが1m〜100mであれば、各光導波路の実効屈折率を0.001〜0.1%程度ばらつかせればよい。
【0017】
また、各光導波路のコアに添加される不純物の濃度を異ならせてもよいし、各光導波路(光ファイバ)を線引製造する際の線引張力を異ならせて残留応力を異ならせてもよい。例えば、コアが純石英ガラスでクラッドがF添加石英ガラスである光ファイバの場合、線引張力を異ならせることで、残留応力を0.2%程度異ならせることができる。したがって、複数の光導波路それぞれのコアまたはクラッドの残留応力のばらつきが0.003GPa〜0.3GPaの範囲にあるのが好適である。なお、残留応力σバラツキは、(実効屈折率Δのバラツキ)/(光弾性定数C/屈折率n)で表される。光弾性定数Cは4.2/GPaであり、屈折率nは1.34であり、実効屈折率Δのバラツキは0.001%〜0.1%であるとした。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本実施形態に係る光源装置1の構成図である。
【図2】本実施形態に係る光学部品30の断面構造例を示す図である。
【図3】本実施形態に係る光学部品30の断面構造例を示す図である。
【図4】本実施形態に係る光学部品30の断面構造例を示す図である。
【符号の説明】
【0019】
1…光源装置、10…光源、21,22…レンズ、30…光学部品、31…パイプ、32〜34…光導波路(光ファイバ)。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
実効屈折率が異なり長さが等しい複数の光導波路が束ねられて構成されることを特徴とする光学部品。
【請求項2】
前記複数の光導波路が溶融一体化されていることを特徴とする請求項1に記載の光学部品。
【請求項3】
前記複数の光導波路それぞれのコアまたはクラッドの残留応力のばらつきが0.003GPa〜0.3GPaの範囲にあることを特徴とする請求項1に記載の光学部品。
【請求項4】
前記複数の光導波路の周囲にパイプが設けられ、そのパイプの屈折率が前記複数の光導波路のクラッドの屈折率より小さい、ことを特徴とする請求項1に記載の光学部品。
【請求項5】
レーザ光を出力する光源と、この光源から出力されるレーザ光が一端に入力される請求項1〜4の何れか1項に記載の光学部品と、を備えることを特徴とする光源装置。
【請求項6】
前記光学部品に含まれる前記複数の光導波路それぞれの光路長のうち最大光路長と最小光路長との差が、前記光源から出力されるレーザ光のコヒーレンス長以上である、ことを特徴とする請求項5に記載の光源装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−156786(P2010−156786A)
【公開日】平成22年7月15日(2010.7.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−334232(P2008−334232)
【出願日】平成20年12月26日(2008.12.26)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】