説明

光学部品収納用パッケージ

【課題】 光学部品を収納するパッケージにおいて、光学部品のチップや金属キャップが大型化した場合においても、金属キャップをパッケージ本体にシームウェルド接合する際の金属キャップのフランジ部の平坦度を確保し、十分な気密性をもって光学部品を搭載可能にする。
【解決手段】 上面に光学部品(12)が搭載される部品搭載部を有する基板(10)と、部品搭載部の周囲にて基板上面に固定した金属枠(30)と、中央部にガラス窓(24)を気密に保持し、周囲に前記金属枠に熱圧着によって接合されるフランジ部(44)を有し、内部に前記光学部品を気密に収容する金属キャップ(40)とを具備して成る光学部品収納用パッケージにおいて、金属キャップ(40)のフランジ部(44)は金属枠(30)との接合部の内側に応力吸収部(46)を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は光学部品を収納するためのパッケージの構造、特にガラス窓を保持する金属キャップがフランジ部を有し、このフランジ部が光学部品を搭載したパッケージ本体にシームウェルドにより接合される光学部品収納用パッケージに関する。
【背景技術】
【0002】
光学素子収納用のパッケージは、内部の光学素子に入出射させる光を透過させるためのガラス窓を有するが、このガラス窓を金属キャップに接合する場合、或いは金属キャップをパッケージの本体に接合する場合には、高度な気密性が要求される。例えば、従来の量産されているDMD(デジタルマイクロミラーデバイス)パッケージの場合、光を透過させるためのガラス窓と、セラミックパッケージとの間を気密封止するために使用する部材として、金属キャップが構成されている。そして、この金属キャップには、高い封止気密性が要求されるために、ガラスと金属との封止面積を大きくする理由から、厚いガラスと厚い金属キャップを使用した構造として設計・製造が行われている。その上、セラミックパッケージと金属キャップを気密封止用として熱圧着(シームウェルド)するため、図1に示すように、金属キャップのフランジ部が薄い部分として構成されている。
【0003】
今後、光学部品における画素数の向上に伴い、チップの大型化が予想され、それに伴い大型のガラス窓用金属キャップが要求される。この場合、気密封止性を維持するためにフランジ部の平坦度を大きくしなければならず、シームウェルドする際にガラスと金属の接合部に歪みが発生し、クラックなどの発生する可能性が増すことから製品信頼性の観点から不利になることが予想される。
【0004】
関連する先行技術として、特許文献1では、電子部品用金属容器において、抵抗溶接時における金属屑の発生及び飛散を防止するため、いずれの外周にもフランジを有する、1対のリード線が貫通したベースとカバーからなり、ベースとカバーのフランジのいずれかに環状突起を有して両者を抵抗溶接により接合し、リード線と電気的に接続する電子素子を封入する電子部品用金属容器において、ベース又はカバーに設けたフランジの環状突起と嵌合する環状溝部を、カバー又はベースのフランジに設けた構成としている。これにより、カバーとベースの位置決めを確実にし、抵抗溶接時の金属屑の発生及び飛散を防止している。
【0005】
また、特許文献2では、電子部品収納用パッケージにおいて、絶縁基材に取着したフランジ部材に金属キャップを溶接で接合する際、フランジ部材が絶縁基体から剥がれたり絶縁基体にクラックが発生して、電子部品収納用パッケージの容器の気密が破れてしまうのを防止するために、フランジの外周部の外周側の厚みをその他の領域の厚みより厚くして、溶接時の熱応力を良好に緩和し機械的強度も確保できるようにしている。
【0006】
【特許文献1】特開平11−97964号公報
【特許文献2】特開平10−242318号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述したように、従来の光学部品収納用パッケージにおいては、搭載すべき光学部品のチップが大型化し金属キャップ自体も大型のものを使用する必要が生じた場合に、金属キャップのフランジ部の平坦度を確保することが困難となり、金属キャップをパッケージ本体にシームウェルドにより接合する際に、搭載した光学部品に対する気密性を十分確保できなくなる虞がある。
【0008】
そこで、本発明では、光学部品チップや金属キャップが大型化した場合においても、金属キャップをパッケージ本体にシームウェルド接合する際の金属キャップのフランジ部の平坦度を確保し、十分な気密性をもって光学部品を搭載可能にする光学部品収納用パッケージを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を達成するために、本発明によれば、上面に光学部品が搭載される部品搭載部を有する基板と、前記部品搭載部の周囲にて前記基板の上面に固定した金属枠と、中央部にガラス窓を気密に保持し、周囲に前記金属枠に熱圧着によって接合されるフランジ部を有し、内部に前記光学部品を気密に収容する金属キャップとを具備して成る光学部品収納用パッケージにおいて、前記金属キャップのフランジ部は前記金属枠との接合部の内側に応力吸収部を有することを特徴とする光学部品収納用パッケージが提供される。
【0010】
本発明によると、前記金属キャップのフランジ部は前記金属枠との接合部の内側に応力吸収部を有するので、金属キャップをパッケージ本体にシームウェルド接合する際に、金属キャップのフランジ部が熱変形したとしても、フランジ部に設けた応力吸収部により応力が吸収されてパッケージ本体側に接合する際の平坦度が確保され、金属キャップ内部の気密性を十分確保することができる。
【0011】
前記金属キャップの本体部は、中央部に前記ガラス窓を保持する開口部を有する枠状の肉厚部分からなり、前記フランジ部は該本体部の外側周囲に一体的に薄肉部分として構成され、前記応力吸収部は断面が湾曲部として構成されていることを特徴とする。
【0012】
この場合、ガラス窓を保持する金属キャップの本体部は肉厚部として構成されているので、肉厚のあるガラス窓材と金属キャップの開口部内周との間の接合面積を大きくとることができ、ガラス窓を気密に保持するのに好適であり、一方で、本体部の外側周囲に一体的に構成されたフランジ部は薄肉部分であり、このフランジ部に応力吸収部として湾曲断面部が形成されているので、応力吸収部の外側のフランジ周囲部をパッケージ本体の金属枠にシームウェルドにより接合する際の応力が湾曲部により吸収され、金属キャップのフランジ部とパッケージ本体の金属枠との間の密着性が向上し、金属キャップ内部の気密封止性が向上する。
【0013】
前記金属キャップ及び金属枠の材質はコバールであり、中央部にガラス窓を保持するための開口を有する厚肉の本体部とその周囲の薄肉のフランジ部とが一体的に切削加工され、断面が湾曲部からなる応力吸収部は、プレス加工等によって成形される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、添付図面を参照して従来例と比較しながら本発明の実施形態を詳細に説明する。
【0015】
図1は従来の光学部品収納用パッケージ、一例としてDMD(デジタルマイクロミラーデバイス)パッケージの構造を示す断面図である。
【0016】
セラミック等の絶縁基板10の上面には、光学素子12、例えばマイクロミラーを搭載するための部品搭載領域14を有する。絶縁基板10の上面の部品搭載領域14の周囲には多数のボンディングパッド16を有し、各パッド16は絶縁基板10の内部配線18を経由し、絶縁基板10の下面の外部接続パッド20に接続されている。
【0017】
光学素子12は絶縁基板10の部品搭載領域14に搭載された後、光学素子12の電極端子と絶縁基板10上のボンディングパッド16との間が、周知のワイヤボンディング工程により、ワイヤ22により相互に接続される。
【0018】
中央部にガラス窓24を保持するための開口部28を有する金属キャップ26は、ガラス窓24の周囲側面と開口部28の内周部との間の気密性を保持するために互いの接触領域を十分確保する必要性から、ガラス窓24自体及び開口部28を有する本体部26aは、厚肉に形成されている。
【0019】
これに対し、金属キャップ26の本体部26aの周囲に外側へ突出するように設けられているフランジ部26bは、光学部品12の周囲にて絶縁基板10に固定した金属枠30にシームウェルド(熱圧着)により気密に接合する必要性から、シームウェルド時の応力をできるかぎり吸収しうるように、薄肉に形成されている。なお、金属枠30はボンディングパッド16の外側領域にて絶縁基板10の上面に固定されており、金属キャップ26のフランジ部26bに対応する枠状に形成されている。
【0020】
このように厚肉の本体部26aと薄肉のフランジ部26bとを有する金属キャップ26は、適当な金属、例えばコバールを切削加工することりにより一体的に形成される。絶縁基板10の上面に固定される金属枠30も、同様に、適当な金属、例えばコバールを切削加工することにより形成される。
【0021】
そして、図1のAの部分を示した図2のように、シームウェルドにより互いに接合される金属キャップ26のフランジ部26bと金属枠30のコバールの表面には、ニッケルめっき32及び金めっき34が施されている。しかし、フランジ部26bと金属枠30の接合部である外周側領域36では、金めっき34は、シームウェルド時の加熱によって熱拡散してしまうので、金めっき層とはならず、ニッケルめっき層32のみが残る。
【0022】
前述のように、図1に示すような従来の光学部品収納用パッケージにおいては、搭載すべき光学部品12が大型化するのに伴って、金属キャップ26自体も大型のものを使用する必要があるが、大型になればなるほど金属キャップ26のフランジ部26bの平坦度を確保することが困難となる。
【0023】
図3は本発明の光学部品収納用パッケージ、一例としてDMD(デジタルマイクロミラーデバイス)パッケージの構造を示す断面図である。
【0024】
図3において、本発明では、金属キャップ40の本体部42は、ガラス窓24の周囲側面と開口部28の内周部との間の気密性を保持するために互いの接触領域を十分確保する必要性から、ガラス窓24自体及び開口部28を有する本体部42は、厚肉に形成されている点、並びに、金属キャップ40の本体部42の周囲に外側へ突出するように設けられているフランジ部44は、光学部品12の周囲にて絶縁基板10に固定した金属枠30にシームウェルド(熱圧着)により気密に接合する必要性から、シームウェルド時の応力をできるかぎり吸収しうるように、薄肉に形成されている点は、図1に示した従来例と同様であるが、本発明では、金属キャップ40を絶縁基板10上の金属枠30にシームウェルドにより接合する際に、これらの間の気密性を確保して、搭載される光学部品12に対する気密封止を達成するために、金属キャップ40のフランジ部44の金属枠30との接合部の内側に応力吸収部46を設けた。
【0025】
応力吸収部46は、例えばプレス加工等により、フランジ部44の周囲にわたって断面が湾曲部となるように形成される。即ち、厚肉の本体部42と薄肉のフランジ部44とを有する金属キャップ40は、適当な金属、例えばコバールを切削加工することりにより一体的に形成されるが、切削加工の後、金属キャップ40をプレス機(図示せず)にかけてフランジ部44の内側領域を周囲にわたって湾曲させる。これにより、所定の薄肉厚に形成されたフランジ部44の内側領域が上側方向に湾曲させて、この湾曲部を応力吸収部46とする。
【0026】
金属キャップ40のフランジ部44の外側領域は、シームウェルドにより金属枠30に接合するために接合領域として平坦部のままに残しておく。シームウェルドにより互いに接合される金属キャップ40のフランジ部44と金属枠30は、適当な金属、例えばコバールからなり、従来例と同様、表面にニッケルめっき32及び金めっき34が施されている。また、フランジ部44と金属枠30の接合部である外周側領域36(図2)では、金めっき34は、シームウェルド時の加熱によって熱拡散してしまうので、金めっき層とはならず、ニッケルめっき層32のみが残る点は、従来例と同様である。したがって、図2は、図3のAで示す領域にも相当する。
【0027】
本発明によれば、図3に示すように、金属キャップ40のフランジ部44に断面が湾曲部からなる応力吸収部46を設けたので、光学部品12を搭載したパッケージ基板10の金属枠30に金属キャップ40を熱圧着ローラ(図示せず)を用いた周知の方法でシームウェルド接合する際に生ずる歪み応力が、応力吸収部46により吸収されるので、金属キャップ40のフランジ部44の接合領域においては、金属枠30との間の熱圧着による密着度が高まり、十分な気密封止を達成することができる。また、この際ガラス窓24と金属の界面に発生する歪み応力も開放され、製品の信頼性の向上が期待される。
【0028】
なお、パッケージ上に搭載される光学部品12は、例えばDMD(デジタルマイクロミラーデバイス)であるが、DMDは、外部の光源(図示せず)より光をパッケージのガラス窓24を通して内部の光学部品12であるマイクロミラーに投影し、マイクロミラーからの反射光を投影レンズ(図示せず)を通してスクリーン等の上に投影するのに使用され、マイクロミラーを電気的に駆動することにより光のON/OFF等の制御を行う。
【0029】
本発明の光学部品収納用パッケージをこのようなDMDとして使用する場合は、内部に収容するマイクロミラーに対して高度の気密性が要求されるので、本発明を好適に使用することができる。
【0030】
以上添付図面を参照して本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、本発明の精神ないし範囲内において種々の形態、変形、修正等が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0031】
以上説明したように、本発明によれば、金属キャップのフランジ部に応力吸収部を設けたので、金属キャップをパッケージ本体にシームウェルド接合する際の金属キャップのフランジ部とパッケージ側の金属枠との間の平坦度及び密着度を向上させることができ、十分な気密性をもってパッケージに搭載した光学部品を封止することができる。したがって、今後画素数の増加などに伴ってパッケージに搭載する光学部品が大型化するのに伴って金属キャップ自体も大型になったとしても、DMD(デジタルマイクロミラーデバイス)のように高度の気密性が要求される部品においても、好適に適用でき、製品の信頼性を向上させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】従来の光学部品収納用パッケージの構造を示す断面図である。
【図2】図1及び図3におけるAの部分の拡大断面図である。
【図3】本発明の光学部品収納用パッケージの構造を示す断面図である。
【符号の説明】
【0033】
10 絶縁基板
12 光学部品
14 部品搭載部
24 ガラス窓
28 開口部
30 金属枠
40 金属キャップ
42 金属キャップ本体
44 フランジ部
46 応力吸収部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上面に光学部品が搭載される部品搭載部を有する基板と、前記部品搭載部の周囲にて前記基板上面に固定した金属枠と、中央部にガラス窓を気密に保持し、周囲に前記金属枠に熱圧着によって接合されるフランジ部を有し、内部に前記光学部品を気密に収容する金属キャップとを具備して成る光学部品収納用パッケージにおいて、
前記金属キャップのフランジ部は前記金属枠との接合部の内側に応力吸収部を有することを特徴とする光学部品収納用パッケージ。
【請求項2】
前記金属キャップの本体部は、中央部に前記ガラス窓を保持する開口部を有する枠状の肉厚部分からなり、前記フランジ部は該本体部の外側周囲に一体的に薄肉部分として構成され、前記応力吸収部は断面が湾曲部として構成されていることを特徴とする請求項1に記載の光学部品収納用パッケージ。
【請求項3】
前記金属キャップ及び金属枠はコバールからなり、表面にニッケルめっき及び金めっきが施されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の光学部品収納用パッケージ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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