説明

光応答型アゾベンゼン化合物

【課題】可視光や赤外線二光子に応答する新規な水溶性アゾベンゼン誘導体を提供する。
【解決手段】
式(1):


で表されるアゾベンゼン化合物である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、可視光及び/又は赤外線二光子等の光照射によって、シス−トランス異性化する光応答型アゾベンゼン化合物に関する。
【背景技術】
【0002】
アゾベンゼンは、近紫外光(320nm付近)の照射を受けてトランス体からシス体へと幾何異性化し、可視光(440nm付近)の照射を受けてシス体からトランス体へと異性化することが知られている。このような光照射に応答して化学構造を異性化させるフォトスイッチング機能は、有機材料(液晶材料や記憶素子)等に応用できるフォトクロミック分子として注目されている。近年、アゾベンゼンのフォトスイッチング機能を生化学分野へと応用し、細胞内へのイオン内流出(例えば、非特許文献1及び2参照)や、DNAの転写反応を制御する研究が報告されている(例えば、非特許文献3参照)。
【0003】
しかしながら、アゾベンゼン骨格のトランス体をシス体へと異性化させるために照射される紫外光は、組織・細胞浸透性が低く、更に短時間で細胞に重篤な障害をもたらすという問題がある。そのため、可視光に応答するアゾベンゼン誘導体の開発が進められている。しかしながら、可視光応答性のアゾベンゼン誘導体の合成には、複雑な有機合成反応を介してアゾベンゼンに芳香族性置換基を導入し、π電子共役系を拡張する必要であった。このようなアゾベンゼン誘導体は、水にきわめて難溶であり、生体機能制御用研究ツールとして、ペプチド等に導入することができなかった。
【0004】
これまでに、アゾベンゼンのアゾ部位から芳香環を挟んでパラ位に窒素原子が導入されたアミノアゾベンゼンのトランス体の吸収極大波長は、無置換アゾベンゼンのトランス体に比べて約100〜150nm、長波長側の約400〜500nmに特徴的な吸収スペクトルを示すことが知られている。このような、可視光に吸収スペクトルを持つアミノアゾベンゼンは、その約2倍の波長光であり生体透過性に優れる近赤外領域(800〜1000nm)の同時二光子吸収を吸収することが報告されている(例えば、非特許文献4及び5参照)。
【0005】
しかしながら、非特許文献4や非特許文献5に開示されるアミノアゾベンゼンは、光照射によるシス異性化能が低いという問題があった。
【非特許文献1】“Allosteric control of an ionotropic glutamate receptor with an optical switch”, M. Volgraf et al., Nature Chemical Biology, (2006), Vol.2, No.1, 47-51.
【非特許文献2】“Mechanisms of photoswitch conjugation and light activation of an ionotropic glutamate receptor”, P. Gorostiza et al., PNAS, (2007), Vol.104, No.26, 10865-10870.
【非特許文献3】“Azobenzene-tethered T7 promoter for efficient photoregulation of transcription”, M Liu, et al., J. Am. Chem. Soc., (2006), 128, 1009-1015.
【非特許文献4】“Two-photon absorption in azoaromatic compounds”, L. D. Boni et al., Chem. Phys. Lett., (2002), 361, 209-213.
【非特許文献5】“Degenerate Two-photon absorption spectra in azoaromatic compounds”, L. D. Boni et al., Chem. Phys. Chem., (2005), 6, 1121-1125.
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、可視光や赤外線二光子に応答する新規な水溶性アゾベンゼン誘導体及びその製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題を解決すべく、鋭意研究を重ねた結果、可視光や赤外線二光子等の光照射に応答する新規なアゾベンゼン誘導体を見出した。本発明は、このような知見に基づき完成されたものである。
【0008】
すなわち、本発明は、下記の新規アゾベンゼン誘導体に係る。
【0009】
項1.式(1):
【0010】
【化1】

【0011】
(式(1)中、Rは、水素原子、ハロゲン原子、又は式(1a):
【0012】
【化2】

【0013】
(式(1a)中、mは1〜5の整数であり、Rは、アミノ基;カルボキシル基;低級アルコキシ基;低級アルコキシカルボニル基;ニトロ基;ペプチド核酸部位を有する基;蛍光部位又は消光部位を有するスペーサーを有する基;芳香族環上にカルボキシル基、低級アルコキシ基、ニトロ基、ペプチド核酸部位を有する基又は蛍光部位もしくは消光部位を有するスペーサーを有する基を有することのある芳香族環を有する低級アルキレン基、低級アルケニレン基又は低級アルキニレン基であって、mが2以上の場合、同じであっても異なっていてもよい)
で表される基であり、
Aは、低級アルキレン基、低級アルケニレン基、低級アルキニレン基、又は直接結合であり、
Xは、−O−R2a、−N−(R2b又は−S(O)−R2cであり、
2aは、低級アルキル基;ペプチド核酸部位を有する基;蛍光部位又は消光部位を有するスペーサーを有する基;アミノ基、カルボキシル基、低級アルコキシカルボニル基、ヒドロキシル基、ペプチド核酸部位を有する基、又は蛍光部位もしくは消光部位を有するスペーサーを有する基が置換されていてもよい低級アルキル基であり、
2bは、同じであっても異なっていてもよく、水素原子;低級アルキル基;ペプチド核酸部位を有する基;蛍光部位又は消光部位を有するスペーサーを有する基;アミノ基、カルボキシル基、低級アルコキシカルボニル基、ヒドロキシル基、ペプチド核酸部位を有する基、又は蛍光部位もしくは消光部位を有するスペーサーを有する基が置換されていてもよい低級アルキル基であり、
2cは、低級アルキル基;ペプチド核酸部位を有する基;蛍光部位又は消光部位を有するスペーサーを有する基;アミノ基、カルボキシル基、低級アルコキシカルボニル基、ヒドロキシル基、ペプチド核酸部位を有する基又は蛍光部位もしくは消光部位を有するスペーサーを有する基、が置換されていてもよい低級アルキル基であって、
kは0〜3の整数である)
で表されるアゾベンゼン化合物。
【0014】
項2.式(a1):
【0015】
【化3】

【0016】
(式(a1)中、A及びRは、前記式と同様である)
と、亜硝酸塩及び酸を添加して、ジアゾニウム塩を形成させ、さらに、前記ジアゾニウム塩と、式(a2):
【0017】
【化4】

【0018】
(式(a2)中、Xは、前記式と同様である)
を反応させることを特徴とする項1に記載のアゾベンゼン化合物の製造方法。
【0019】
項3.式(b1):
【0020】
【化5】

【0021】
(式(b1)中、A及びRは、前記式と同様である)
と、式(b2):
【0022】
【化6】

【0023】
(式(b2)中、Xは、前記式と同様である)
を酸性条件下で反応させることを特徴とする項1に記載のアゾベンゼン化合物の製造方法。
【0024】
項4.式(c1):
【0025】
【化7】

【0026】
(式(c1)中、Xは、前記式と同様であって、Yは、ハロゲン原子である)
と、トリメチルシリルアセチレンを反応させ、脱シリル化することによって、式(c2):
【0027】
【化8】

【0028】
を得、さらに、式(c3):
【0029】
【化9】

【0030】
(式(c3)中、Y、R及びmは、前記式と同様である)
を反応させることを特徴とする項1に記載のアゾベンゼン化合物の製造方法。
【0031】
項5.光スイッチング材料として用いられる項1に記載のアゾベンゼン化合物。
【0032】
項6.mRNA転写反応促進剤又はmRNA転写反応抑制剤として用いられる項1に記載のアゾベンゼン化合物。
【0033】
本発明は、式(1):
【0034】
【化10】

【0035】
で表される新規なアゾベンゼン化合物である。
【0036】
式(1)中、Rは、水素原子、ハロゲン原子、又は式(1a):
【0037】
【化11】

【0038】
で表される。
【0039】
式(1a)中、mは1〜5であり、好ましくは、1〜4である。
【0040】
は、mが2以上の場合、同じであっても異なっていてもよい。
【0041】
は、アミノ基、カルボキシル基;低級アルコキシ基;低級アルコキシカルボニル基;ニトロ基;ペプチド核酸部位を有する基;蛍光部位又は消光部位を有するスペーサーを有する基;芳香族環上にカルボキシル基、低級アルコキシ基、ニトロ基、ペプチド核酸部位を有する基又は蛍光部位もしくは消光部位を有するスペーサーを有する基を有することのある芳香族環を有する低級アルキレン基、低級アルケニレン基又は低級アルキニレン基である。
【0042】
における低級アルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、iso−プロポキシ基、n−ブトキシ基、iso−ブトキシ基、tert−ブトキシ基等の炭素数1〜4程度のアルコキシ基が好ましいが、これらの中で、Aがアセチレンの場合において園頭カップリング反応の化学収率が良好であるという点から、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、n−ブトキシ基等が好ましい。
【0043】
における低級アルコキシカルボニル基としては、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、n−プロポキシカルボニル基、iso−プロポキシカルボニル基、n−ブトキシカルボニル基、iso−ブトキシカルボニル基、tert−ブトキシカルボニル基等の炭素数1〜4程度のアルコキシカルボニル基が好ましいが、これらの中で、分子構造のリジディティーを保持するため、炭素鎖数が1〜2程度のメトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基が好ましい。
【0044】
における芳香族環を有する低級アルキレン基としては、例えば、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基等の炭素数1〜12のアルキレン基が挙げられ、Rにおける芳香族環を有する低級アルケニレン基としては、例えば、ビニレン基、プロペニレン基、ブテニレン基等の炭素数2〜6のアルケニレン基が挙げられ、Rにおける芳香族環を有する低級アルキニレン基としては、例えば、エチニレン基、プロピニレン基、ブチニレン基等の炭素数2〜10のアルキニレン基が挙げられる。これらのなかで、二重結合のシス−トランス幾何構造の制御、化学構造安定性という点から、低級アルキニレン基が好ましく、具体的には、エチニレン基、プロペニレン基、ブテニレンが好ましい。
【0045】
における芳香族環上に置換されてもよい低級アルコキシ基としては、前記のものが挙げられる。
【0046】
の位置としては、アゾベンゼンのシス−トランス異性化における構造の変化がより顕著に発現できるという観点から、メタ位に置換していることが好ましく、具体的には、
【0047】
【化12】

【0048】
【化13】

【0049】
(式中、R3a及びR3bは、Rと同様である)
で表される基であることが好ましく、より具体的には、
【0050】
【化14】

【0051】
【化15】

【0052】
(式中、R’は、水素原子又は低級アルキル基であり、低級アルキル基は前記と同様のものである)、
【0053】
【化16】

【0054】
(式中、R’は、前記と同様のものである)
であることが好ましい。
【0055】
Aは、低級アルキレン基、低級アルケニレン基、低級アルキニレン基、又は直接結合である。Aにおける低級アルキレン基、低級アルケニレン基及び低級アルキニレン基は、前記のものが挙げられる。
【0056】
Xは、アゾベンゼン化合物のトランス体が可視光領域において光を吸収できるという点から、−O−R2a、−N−(R2b又は−S(O)−R2cである。
【0057】
2aは、低級アルキル基;ペプチド核酸部位を有する基;蛍光部位又は消光部位を有するスペーサーを有する基;アミノ基、カルボキシル基、低級アルコキシカルボニル基、ヒドロキシル基、ペプチド核酸部位を有する基又は蛍光部位もしくは消光部位を有するスペーサーを有する基が置換されていてもよい低級アルキル基である。
【0058】
2bは、同じであっても異なっていてもよく、水素原子;低級アルキル基;ペプチド核酸部位を有する基;蛍光部位又は消光部位を有するスペーサーを有する基;アミノ基、カルボキシル基、低級アルコキシカルボニル基、ヒドロキシル基、ペプチド核酸部位を有する基、又は蛍光部位もしくは消光部位を有するスペーサーを有する基が置換されていてもよい低級アルキル基であるが、式(1)中、Aが直接結合であって、Rが水素原子又はハロゲン原子である場合には、低級アルキル基;ペプチド核酸部位を有する基;蛍光部位又は消光部位を有するスペーサーを有する基;カルボキシル基、低級アルコキシカルボニル基、ヒドロキシル基、ペプチド核酸部位を有する基又は蛍光部位もしくは消光部位を有するスペーサーを有する基が置換されていてもよい低級アルキル基である。
【0059】
2cは、低級アルキル基;ペプチド核酸部位を有する基;蛍光部位又は消光部位を有するスペーサーを有する基;アミノ基、カルボキシル基、低級アルコキシカルボニル基、ヒドロキシル基、ペプチド核酸部位を有する基、又は蛍光部位もしくは消光部位を有するスペーサーを有する基が置換されていてもよい低級アルキル基であって、kは0〜3の整数である)
2a、R2b及びR2cにおける低級アルキル基、低級アルコキシ基、低級アルコキシカルボニル基は、前記のものが挙げられる。
【0060】
これらの中で、トランス体とシス体の極大吸収波長の差が大きい、シス体への異性化における量子効率が高い、光照射によるシス−トランス異性化の効率が高い、シス異性体の熱安定性が高い、酸性条件下におけるアゾ部位のプロトン化の影響を受けにくいという観点から、−S(O)−R2cであることが好ましい。
【0061】
前記式(1)のより好ましい具体例としては、式(1-1):
【0062】
【化17】

【0063】
(式中、R及びR2aは、前記式と同様である)、
式(1-2):
【0064】
【化18】

【0065】
(式中、R及びR2bは、前記式と同様である)
式(1-3):
【0066】
【化19】

【0067】
(式中、R、R2c及びkは、前記式と同様である)
式(1-4):
【0068】
【化20】

【0069】
(式中、R3c、R3dは、前記式Rと同じであり、Xは、前記式と同様である)
式(1-5):
【0070】
【化21】

【0071】
(式中、R3c、R3eは、前記式Rと同じであり、Xは、前記式と同様である)
が挙げられる。
【0072】
本発明は、アゾベンゼン化合物における置換基としてペプチド核酸(以下、PNAともいう)部位を有する基を有することによって、PNA部位の塩基とDNA又はRNA中の特定の塩基と塩基対を形成させ、転写の発現や抑制を制御させることができる。
【0073】
PNA部位を有する置換基におけるPNA部位とは、式(2a):
【0074】
【化22】

【0075】
又は、式(2b):
【0076】
【化23】

【0077】
等が挙げられ、アミド結合、アミン結合を介して置換される。
【0078】
式中、Qは、6〜23程度が好ましく、6〜17程度がより好ましく、8〜14程度がさらに好ましい。また、アゾベンゼン化合物に2つのPNAが置換された場合のQの数は、同じであってもよく、又は異なっていてよいが、フーグスティン水素結合の形成は、8塩基から効率的に起こるという点(Kaihatsu. K, et al., Extending recognition by Peptide Nucleic Acid: Binding to Duplex DNA and inhibitionof Transcription by Tail-Clamp PNA-Petide Conjugates, Biochemistry, 42, 13996-14003, 2003.参照)、ワトソン−クリック型水素結合がより強固であり、二重鎖DNA中の標的配列に対して5塩基程度で水素結合を形成できる点(Combined Triplex/Duplex Invasion of Double-Stranded DNA by “Tail-Clamp” Peptide Nucleic Acid, Bentin T, et al., Biochemistry, 42, 13987-13995, 2003参照)から、Qの一方が6〜17程度、好ましくは8〜14程度であって、もう一方が3〜8程度、好ましくは3〜6程度であって分子鎖長が異なることが合成の簡便上好ましい。
【0079】
なお、式(2a)及び(2b)中のBaseとは、塩基を表し、具体的にはシトシン(C)、アデニン(A)、グアニン(G)、チミン(T)等の天然型の塩基、及び2,6−ジアミノプリン(D)、2−チオウラシル(2-Us)等の非天然型の塩基が挙げられる。これらの塩基の組み合わせとしては、対象となるDNA又はRNA中の特定の塩基と塩基対を形成するような組み合わせであればよい。
【0080】
また、PNA部位の末端基(式(2a)におけるアミノ基、式(2b)におけるカルボキシ基)については、リシン、アルギニン、ヒスチジン等の塩基性アミノ酸、グリシン、アラニン等の中性アミノ酸の1〜16量体、好ましくは3〜9量体によって置換されていることが、化学合成の簡便性、PNAの水溶性と細胞内導入効率を高めるという観点から好ましい。
【0081】
PNA部位を有する基は、アゾベンゼン化合物の両末端に置換されていることが好ましく、具体的には、R2a、R2b又はR2cと、Rに置換されていることが好ましい。
【0082】
PNA部位を有する基を有するアゾベンゼン化合物の製造方法としては、特に限定されないが、例えば、Fmoc-固相合成法によって製造することができる。Fmoc-固相合成法で使用される、樹脂、カップリング試薬、脱保護試薬、洗浄操作、樹脂からの切り出し、HPLCによる精製等は公知の方法によって製造することができる。
【0083】
前記PNA部位を有する基を有するアゾベンゼン化合物の製造方法のほかにも、Boc(t-ブチルカルボニル)固相合成法によっても製造することができる。
【0084】
また本発明は、アゾベンゼン化合物における置換基として蛍光部位又は消光部位を有するスペーサーを有する基を有することによって、トランス型の場合、蛍光部位由来の蛍光発光が生じ、シス体に異性化すると蛍光部位と消光部位の距離が近くなるため、蛍光発光しなくなるというメカニズムから、分子内スイッチを形成することができる。そのため、アゾベンゼン化合物の方末端が蛍光部位を有するスペーサーを有する基で置換され、もう一方の末端が消光部位を有するスペーサーを有する基で置換されていることが好ましい。
【0085】
蛍光部位としては、例えば、フルオレセイン(以下、FAMともいう)、Cy3及びCy5等のシアニン誘導体、テトラメチルローダミン(TMRともいう)及びTexas Red等のローダミン誘導体等が挙げられ、これらの部位が、スペーサーを介して式(1a)にエステル結合、アミド結合、アミン結合を介して置換される。
【0086】
また、消光部位を有する置換基における消光部位とは、前記蛍光部位から発する蛍光を消光できるような部位をいい、例えば、QXLTM520, Black Hole Quencher-2(BHQ-2ともいう), QSY-7, Deep Dark Quencher (DDQ-IIともいう), Black Hole Quencher-3(BHQ-3ともいう)等が挙げられ、これらの部位が、スペーサーを介して式(1a)にエステル結合、アミド結合、アミン結合を介して置換される。
【0087】
前記スペーサーとしては、PNAのストランドインベージョンに最適な距離が11-33Åであることが報告されているが(Nulf CJ, et al., DNA assembly using bis-peptide nucleic acids (bisPNAs), Nucleic Acids Res. 30, 2782-2789, 2002)、シス型のアゾベンゼン化合物において、蛍光部位による蛍光発光が消光される距離(アゾベンゼン化合物の長さが0〜40Å程度、好ましくは0〜25Å程度)となるものであれば特に限定されない。前記スペーサーの具体例としては、例えば、6−アミノカプロン酸、リシン、及びこれらの組み合わせのものであって、アミド結合、エステル結合、エーテル結合、アミン結合されたものであることが好ましく、6−アミノカプロン酸とリシンがアミド結合したものが好ましい。
【0088】
本発明のアゾベンゼン誘導体のトランス体をシス体に異性化させる際の可視光の波長としては、365〜450nm程度が好ましく、380〜450nm程度がより好ましい。また、本発明のアゾベンゼン誘導体のトランス体をシス体に異性化させる際の赤外線二光子としては、700〜900nm程度が好ましく、780〜820nm程度がより好ましい。
【0089】
本発明のアゾベンゼン誘導体のシス体をトランス体に異性化させる際の可視光としては、470〜510nm程度が好ましく、490〜510nm程度がより好ましい。また、本発明のアゾベンゼン誘導体のシス体をトランス体に異性化させる際の赤外線二光子としては、900〜1040nm程度が好ましく、900〜940nm程度がより好ましい。
【0090】
蛍光部位又は消光部位を有するスペーサーを有する基を有するアゾベンゼン化合物の製造方法としては、特に限定されないが、例えば、Fmoc-固相合成法によって製造することができる。Fmoc-固相合成法で使用される、樹脂、カップリング試薬、脱保護試薬、洗浄操作、樹脂からの切り出し、HPLCによる精製等は公知の方法によって製造することができる。
【0091】
前記蛍光部位又は消光部位を有するスペーサーを有する基を有するアゾベンゼン化合物の製造方法のほかにも、Boc固相合成法によっても製造することができる。
【0092】
本発明の前記アゾベンゼン化合物は、例えば、式(a1):
【0093】
【化24】

【0094】
(式(a1)中、A及びRは、前記式と同様である)
と、亜硝酸塩及び酸を添加して、ジアゾニウム塩を形成させ、さらに、前記ジアゾニウム塩と、式(a2):
【0095】
【化25】

【0096】
(式中、Xは、前記式と同様である)
を反応させる方法である反応式(a):
【0097】
【化26】

【0098】
(反応式(a)中、A及びRは、前記式と同様である)
によって製造され、また、式(b1):
【0099】
【化27】

【0100】
(式(b1)中、A及びRは、前記式と同様である)
と、式(b2):
【0101】
【化28】

【0102】
(式(b2)中、Xは、前記式と同様である)
を酸性条件下で反応させる反応式(b):
【0103】
【化29】

【0104】
(反応式(b)中、A及びRは、前記式と同様である)
によって製造される。
【0105】
前記反応式(a)の反応試薬としては、亜硝酸ナトリウム、亜硝酸カリウム等の亜硝酸塩に塩酸等の酸を加えることで酸性条件とし、ジアゾニウム塩を形成させる。
【0106】
ジアゾニウム塩を形成させる際のpHとしては、2以下が好ましく、1〜2がより好ましい。ジアゾニウム塩を形成させるための反応温度としては、−3〜5℃が好ましく、−3〜0℃がより好ましい。反応時間としては、1〜10時間が好ましく、1〜5時間がより好ましい。
【0107】
前記式(a2)の添加量としては、前記式(a1)で表されるアニリン誘導体1モルに対して、1〜3モルが好ましく、1〜1.2モルがより好ましい。また、亜硝酸塩の添加量としては、前記アニリン誘導体1モルに対して、2〜5モルが好ましく、2〜3モルがより好ましい。
【0108】
反応溶媒としては、水、メタノール、エタノール等が挙げられる。
【0109】
前記得られるジアゾニウム塩を、リン酸バッファー(pH8.0)、酢酸ナトリウムと酢酸緩衝液(pH 3.6〜5.6)、炭酸水素ナトリウム緩衝液(pH9.0)を加えることによって、アゾベンゼン化合物を製造することができる。反応条件としては、塩基性条件下で行われることが好ましく、具体的にはpHが7.0〜9.0であることがより好ましい。
【0110】
反応温度としては、10〜35℃が好ましく、15〜25℃がより好ましい。反応時間としては、3〜24時間が好ましく、6〜15時間がより好ましい。
【0111】
また、前記反応式(a)における溶媒としては、水等が挙げられ、酸性条件とするために、酢酸等の酸を添加することが好ましい。酸性条件下としては、具体的にはpHが3〜4であることがより好ましい。
【0112】
前記反応式(a)における反応温度としては、10〜35℃が好ましく、15〜25℃がより好ましい。反応時間としては、3〜24時間が好ましく、6〜15時間がより好ましい。
【0113】
また、式(b2)で表されるアニリン誘導体の添加量としては、式(b1)で表されるニトロソベンゼン誘導体1モルに対して、1〜3モルが好ましく、1〜1.2モルがより好ましい。
【0114】
さらに、X及びRについては、公知の反応により、所望の官能基(例えば、アミノ基、カルボキシル基、低級アルコキシカルボニル基、ヒドロキシル基等)に変換することができる。
【0115】
また、式中Aにおいて、低級アルキレン基、低級アルケニレン基又は低級アルキニレン基を導入する場合や、式中、Rが式(1a)であって、式(1a)におけるRに芳香族環を有する低級アルキレン基、低級アルケニレン基又は低級アルキニレン基を導入する場合、例えば、園頭カップリング反応、鈴木カップリング反応、Heck反応、Stillアセチレンカップリング反応、Castro-Sthephensアセチレンカップリング反応等の既存の反応によって製造することができる。
【0116】
さらに、前記式(1-4)又は式(1-5)のような三重結合を有するアゾベンゼン化合物を製造する方法として、例えば、
式(c1):
【0117】
【化30】

【0118】
(式(c1)中、Xは、前記式と同様であって、Yは、ハロゲン原子である)
と、トリメチルシリルアセチレンとを反応させた後、脱シリル化することによって、式(c2):
【0119】
【化31】

【0120】
(式(c2)中、Xは、前記式と同様である)
を得、さらに、式(c3):
【0121】
【化32】

【0122】
(式(c3)中、Y、R及びmは、前記式と同様である)
を反応させることによって製造する方法が挙げられる。
【0123】
前記式(c2)を製造する際の反応温度としては、10〜65℃が好ましく、35〜65℃がより好ましい。また、反応時間としては、1〜48時間が好ましく、3〜24時間がより好ましい。トリメチルシリルアセチレンの添加量としては、前記式(c1)で表されるアゾベンゼン誘導体1モルに対して、1.5〜5モルが好ましく、1.5〜3モルがより好ましい。
【0124】
さらに、反応触媒として、CuI及びPd(PPh3)2Cl2(式中、Phは、フェニル基を示す)を触媒量添加することが好ましい。
【0125】
前記反応における反応溶媒としては、テトラヒドロフラン(THF)、ジエチルエーテル等が挙げられる。
【0126】
前記式(c1):で表されるアゾベンゼン誘導体とトリメチルシリルアセチレンを反応させた後、脱シリル化する際に用いられる脱シリル化剤としては、塩基が挙げられ、例えば、テトラブチルアンモニウムフルオリド(TBAF)、炭酸カリウム、炭酸カルシウム等が挙げられる。
【0127】
前記反応によって得られる式(c2)と前記式(c3)で表される化合物を反応させることによって、前記式(1-4)又は式(1-5)のような三重結合を有するアゾベンゼン化合物を製造することができる。なお、反応式(a)及び(b)における原料物質としては、公知の化合物として入手することができ、また、公知の製造方法によっても得ることが可能である。
【0128】
本発明のアゾベンゼン化合物は、シス−トランス異性化が可視光や赤外線二光子の光照射によって発現し、また、水に対して溶解性を示すため、従来の分子内にπ電子共役系を拡張した水溶性のアゾベンゼン誘導体に代わって、低疎水性の生体機能制御ツールとしての応用が期待できる。
【0129】
また、本発明のアゾベンゼン誘導体を皮下組織、細胞に導入すれば、赤外線二光子の照射部位において標的組織や細胞にピンポイントで作用し(空間選択性)、望むべきタイミングで生体機能発現を制御できる(時間選択性)、新しい生化学研究ツール又は治療技術への応用が可能になると期待される。
【0130】
さらに、例えばアゾベンゼン化合物の両末端に、PNAが置換されたものは、アゾベンゼン化合物がトランス体の場合、二重鎖DNAに対してフーズスティン水素結合により会合し、DNA/DNA/PNAの三重鎖を形成する。次にアゾベンゼン化合物に可視光を照射することで、アゾ骨格がシス体へと異性化され、DNAに対してワトソン−クリック塩基対を形成することで、二重鎖DNAにPNAがストランドインベージョンし、PNA/DNA/PNAの三重鎖形成とループアウトした一本鎖DNAを作り、人工的に転写バルブ構造を形成する。
【0131】
ここで、ストランドインベージョンとは、1990年にPeter E. Nielsenらにより報告されたPNAが二重鎖DNAに潜り込む現象(図7参照)をいう。PNAが二重鎖DNA中の相補核酸塩基配列にフーグスティン水素結合を形成した後、ワトソン−クリック水素結合によりPNA/DNA/DNAの三重鎖を形成し、ループアウトした一本鎖DNAを形成する現象をストランドインベージョンと呼ぶ。これにより人工的な一本鎖DNAのループアウト構造が形成されるが、ループアウト鎖にmRNAの鋳型配列がある場合は、そこにDNA転写因子(酵素等)の結合が起こりやすくなるため、mRNAへの転写反応を活性化することができるため、mRNAへの転写反応活性剤として用いることができる。また、PNAが二重鎖DNAに対してフーグスティン水素結合を形成する鎖でPNA/DNA/DNAの三重鎖を形成した場合は、mRNAへの転写反応抑制剤として用いることができる。
【0132】
また、前述した様に、蛍光部位又は消光部位を有するスペーサーを有する基で置換されたアゾベンゼン化合物は、シス−トランス異性化に伴い、蛍光を発光及び消光させることができるため、光スイッチング材料として用いることができる。
【0133】
さらに、本発明のアゾベンゼン誘導体にアミノ基やカルボキシル基を導入し、擬アミノ酸型のアゾベンゼンとし、ペプチド分子や核酸分子に導入すれば、蛋白機能、細胞内シグナル伝達、免疫応答、遺伝子発現、ヒト人工多能性幹(ips)細胞等の細胞分化の光照射技術による制御や、ドラッグデリバリー等幅広い生化学分野に応用が可能である。その他にも、有機材料としては、繊維、高分子樹脂、液晶素子、ブルーレイディスク等の記録媒体への用途にも応用が期待できる。
【発明の効果】
【0134】
本発明によると、アゾベンゼンにヘテロ原子を導入することによって、シス−トランス異性化に要する光源を可視領域に長波長シフトでき、さらに、水溶性においても優れる。
【0135】
また、本発明のアゾベンゼン骨格に化学装飾を施すことが可能であるため、多様な機能を持つ可視応答型アゾベンゼンが期待できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0136】
以下に実施例及び比較例を示して、本発明をさらに具体的に説明する。なお、本発明は、以下の実施形態に限定されるものではない。
【0137】
合成例1((E)−N1−メチル−N1−(4−(フェニルジアゼニル)フェニル)エタン−1,2−ジアミン((E)-N1-methyl-N1-(4-(phenyldiazenyl)phenyl)ethane-1,2-diamine)(以下、AZO1ともいう)の合成)
【0138】
【化33】

【0139】
アニリンと2 -(メチルフェニルアミノ)エタノールを用いてジアゾカップリング反応を行い、化合物(1)を9%の収率で合成した。この化合物(1)にp-トルエンスルホニルクロライド(TsCl)を用いて収率77%でトシル体を合成した後、アジ化ナトリウムによりアジド化し、トリフェニルフォスフィンと共に水中で反応させることによりAZO1を収率99%で合成した。
1H NMR (400 MHz, CDCl3): 7.87 (d, 2H,J=9.0 Hz), 7.48 (tm, 2H), 7.38 (tm, 1H, J=7.3 Hz), 6.79 (d, 2H, J=9.1 Hz), 3.51 (t, 2H, J=6.6 Hz), 3.10 (s, 3H), 2.98 (t, 2H, J=6.6 Hz), 1.40(brs, 2H);
13C NMR (100 MHz, CDCl3): 153.1, 151.6, 143.7, 129.4, 128.9, 125.0, 122.2, 111.4, 55.5, 39.6, 39.0
【0140】
合成例2((E)−N1−(4−((4−ブロモフェニル)ジアゼニル)フェニル)N1−メチルエタン−1,2−ジアミン((E)-N1-(4-((4-bromophenyl)diazenyl)phenyl)-N1-methylethane-1,2-diamine)(以下、AZO2ともいう)の合成)
【0141】
【化34】

【0142】
4-ブロモアニリンと2-(メチルフェニルアミノ)エタノールを用いてジアゾカップリングを行い、化合物(4)を52%の収率で合成した。この化合物(4)にTsClを用いて収率77%でトシル体(5)を合成した後、アジ化ナトリウムによりアジド化し、トリフェニルフォスフィンと共に水中で反応させることにより(AZO2)を収率99%で合成した。
1H NMR (400 MHz, CDCl3): 7.87 (d, 2H, J=9.3Hz), 7.72 (d, 2H, J=8.8 Hz), 7.59 (d, 1H, J=8.8 Hz), 6.79 (d, 2H, J=9.3 Hz), 3.53 (t, 2H, J=6.8Hz), 3.11 (s, 3H), 2.99 (t, 2H, J=6.8 Hz), 1.40(br, 2H);
13C NMR (100 MHz, CDCl3): 1152.1, 143.7, 132.2, 125.4, 123.9, 123.5, 111.6, 70.7, 55.7, 39.8, 39.2
【0143】
合成例3((E)−メチル−4−((4−((4−((2−アミノエチル)(メチル)アミノ)フェニル)ジアゼニル)フェニル)エチニル)−2−メトキシベンゾエート ((E)-methyl-4-((4-((4-((2-aminoethyl)(methyl)amino)phenyl)diazenyl)phenyl)ethynyl)-2-methoxybenzoate)(以下、AZO3ともいう)の合成)
【0144】
【化35】

【0145】
化合物(4)とトリメチルシリルアセチレンを用いて薗頭カップリング反応を行い、化合物(7)を収率60%で合成し、この化合物(7)を炭酸カルシウムにて脱シリル化し、2-メトキシ-4-ブロモ安息香酸メチルとの薗頭カップリング反応により、化合物(9)を2 step 収率54% (2 steps)で合成した。さらに、この化合物(9)をAZO1のときと同様の方法を用いて末端の水酸基をトシル化して化合物(10)を収率87%で変換し、続いてアジド化により化合物(11)を収率79%で、トリフェニルフォスフィンによりアミン体に変換することでAZO3を93%で合成した。
1H NMR (400 MHz, CDCl3): 7.87 (d, 2H, J=9.1 Hz), 7.84 (d, 2H, J=8.4 Hz), 7.80 (d, 1H, J=7.9 Hz), 7.16 (dd, 1H, J=7.9 Hz, 1.3 Hz), 7.14 (br,1H), 3.94 (s, 3H), 3.89 (s, 3H), 3.51 (t, 2H, J=6.6 Hz), 3.09 (s, 3H), 2.98 (t, 2H, J=6.6 Hz), 1.37(br, 2H);
13C NMR (100 MHz, CDCl3):166.1, 158.9, 152.8, 151.9, 143.7, 132.5, 131.8, 128.4, 125.3, 123.4, 123.12, 122.3, 119.6, 114.8, 111.4, 91.9, 90.1, 56.1, 55.5, 39.6, 39.0
【0146】
合成例4((E)−tert−ブチル−4−((3−((4−((4−((2−アミノエチル)(メチル)アミノ)フェニル)ジアゼニル)フェニル)エチニル)フェニル)エチニル)ベンゾエート((E)-tert-butyl-4-((3-((4-((4-((2-aminoethyl)(methyl)amino)phenyl)diazenyl)phenyl)ethynyl) phenyl)ethynyl)benzoate )(以下、AZO4ともいう)の合成)
【0147】
【化36】

【0148】
化合物(7)のトリメチルシリル基を脱保護し、3−ブロモヨードベンゼンとの園頭カップリング反応により化合物(13)を2段階の収率54%で合成し、続いてテトラメチルシラン(以下、TMSともいう)保護したアセチレンを薗頭カップリング反応により結合させ化合物(14)を収率63%で合成した。この化合物(14)のTMS基をテトラブチルアンモニウムフルオライド(以下、TBAFともいう)にて脱保護し、化合物(12)を園頭カップリング反応にて結合することで化合物(15)を2段階収率76%で合成した。その後、水酸基をトシル化して化合物(16)を収率98%で合成し、続いてアジド化により化合物(17)を収率79%で、トリフェニルフォスフィンによりアミン体に変換することでAZO4を96%で合成した。
1H NMR (400 MHz, CDCl3): 7.98 (d, 2H, J=8.1 Hz), 7.88 (d, 2H, J=9.0 Hz), 7.83 (d, 2H, J=8.3 Hz), 7.75 (br, 1H), 7.62 (d, 2H, J=8.3 Hz), 7.57 (d, 2H, J=8.1 Hz), 7.52 (tm, 2H, J=7.5 Hz), 7.36 (tm, 1H, J=7.5 Hz), 6.8 (d, 2H, J=9.0 Hz), 3.55 (t, 2H, J=6.4 Hz), 3.11 (s, 3H), 3.01 (t, 2H, J=6.4 Hz), 2.89 (br, 2H), 1.61 (s, 9H);
13C NMR(100 MHz, CDCl3): 165.1, 152.6, 151.8, 143.7, 134.7, 132.4, 131.7, 131.5, 131.4, 131.3, 129.3, 128.6, 127.1, 125.3, 123.6, 123.6, 123.1, 122.3, 111.4, 91.0, 90.3, 90.0, 89.4, 81.3, 55.3, 39.5, 39.0, 28.1
【0149】
合成例5((E)−tert−ブチル−4−((5−((4−((4−((2−アミノエチル)(メチル)アミノ)フェニル)ジアゼニル)フェニル)エチニル)−2−ニトロフェニル)エチニル)ベンゾエート((E)-tert-butyl 4-((5-((4-((4-((2-aminoethyl)(methyl)amino)phenyl)diazenyl)phenyl)ethynyl)-2-nitrophenyl)ethynyl)benzoate)(以下、AZO5ともいう)の合成)
【0150】
【化37】

【0151】
1-ブロモ-4-ニトロベンゼンをアミノ化して収率59%で化合物(18)を、続いてアミノ基をヨウ素化して収率59%で化合物を合成した。一方で、4-ブロモ安息香酸のターシャリーブチルエステルに園頭カップリング反応によりトリメチルシリルアセチレンを反応させて収率63%で化合物(20)を合成し、化合物(20)のトリメチルシリル基を脱保護し、化合物(19)との園頭カップリング反応により化合物(20)を2段階収率55%で合成した。化合物(20)に対して化合物(8)を薗頭カップリング反応により結合させ化合物(22)を収率55%で合成した。その後、水酸基をトシル化して化合物(23)を収率52%で合成し、続いてアジド化により化合物(24)を収率72%で、トリフェニルフォスフィンによりアミン体に変換することでAZO5を96%で合成し、1H NMR及び13C NMRを測定することによって、AZO5の構造を同定した。
【0152】
試験例1〜5(アミノアゾベンゼン(AZO1〜5)の光吸収特性)
合成例1〜5で合成したアミノアゾベンゼン(AZO1〜5)10nmolをジクロロメタン1mlにそれぞれ添加し、濃度10μmol/lのAZO1〜5溶液をそれぞれ調製した。調製した各アミノアゾベンゼン水溶液を可視・紫外分光光度計により、300〜700nmの波長領域で25℃にて測定した。
【0153】
なお、紫外領域光によるトランス体からシス体への異性化については、キセノンランプ光源(朝日分光(株)製のMAX-302)を用い、450 nmの可視光を光照射時間: 20, 60, 100, 140, 260, 500秒間光照射することによって行った。
【0154】
また、一般にアミノアゾベンゼンは、酸性溶媒中においてプロトンの付加を受けてアゾニウム、またはアンモニウム体を形成することが報告されている(下式参照)。特に、CH2Cl2にUVを照射するとプロトンが発生し、溶液中では局所的に強酸となる。そのため、プロトンのトラップ試薬としてトリエチルアミンを触媒量添加した。
【0155】
トランス型及びシス型の極大吸収波長を表1に示す。
【0156】
【化38】

【0157】
【表1】

【0158】
表1より、一般にアゾベンゼンがシス体へ異性化するとトランス体よりも長波長側に新たなスペクトルが生成するが、アミノアゾベンゼンであるAZO1〜5は、短波長側に等吸収点およびシス体由来のスペクトルが現れることがわかった。なお、AZO5に関してはシス体に由来する吸収極大を確認することができなかった。
【0159】
試験例6(AZO4の可視光(450nm)照射後のUVスペクトル測定)
合成例4で合成したAZO4を10nmol、ジクロロメタン1ml、プロトンのトラップ試薬としてトリエチルアミンを触媒量添加し、濃度10μmol/lのAZO4溶液のサンプルを調製した。調製したAZO4溶液に450nmの可視光をキセノンランプ光源(朝日分光(株)製のMAX-302)を用いて、光照射時間として、0,20, 60, 100, 140, 260, 500 秒間照射し、照射後のUVスペクトルを測定した。UVスペクトルを図1に示す。
試験例7(AZO4の赤外線二光子(800nm)照射後のUVスペクトル測定)
試験例6で調製した濃度10μmol/lのAZO4溶液のサンプルにTi-spphire レーザー (Ti:S レーザー)により、160 fs のパルスレーザーから800 nm の光を照射し、集光レンズから焦点までの距離を15 cm に設定し、集光レンズより12 cm の位置で照射することによって、800nmの赤外線二光子を光照射時間として、0, 200, 440 秒間照射し、照射後のUVスペクトルを測定した。UVスペクトルを図2に示す。
【0160】
図1及び図2より、光照射後のスペクトル変化は波長によって波長シフトは生じず、アゾ骨格のシス異性化に伴い、400nm過ぎに等級終点が出現することがわかった。
【0161】
合成例6(Fmoc-固相合成法によるFRET(Fluorescence Resonance Energy Transfer)ペプチドの合成)
(AZO搭載FRETペプチドの分子設計)
FRETペプチド分子の設計には、光エネルギーのDonorであるFAM(5'-fluorescein:490nmを吸収して520nmの蛍光を発光する)とAcceptorである(QXLTM520 :520nmの蛍光を吸収して消光する)の距離を、アゾベンゼンがトランス体のときにはFAMの蛍光強度が約50%となる約50Åに、アゾベンゼンがシスの時にはFAMの蛍光が約100%消光される30Åになるように設計した。
【0162】
実際のペプチド配列はN末端から、FAM-Lys-Cap-AZO4-Cap-Lys(QXLTM520)-OHとした。Capはスペーサーとして6-アミノカプロン酸、アゾベンゼンとしては、合成例4で合成したAZO4を用いた。このアゾベンゼン搭載ペプチドに対して、AZO4が異性化する450nmの可視光を照射した前後のFAMの蛍光強度を観察した。
【0163】
ここで、FAM(5'-fluorescein)−は、
【0164】
【化39】

【0165】
-Lys-(天然型のl−リシン) は、
【0166】
【化40】

【0167】
Cap(6−アミノカプロン酸)は、−OC−(CH2−NH−
を表す。
【0168】
以下に、FAM-Lys-Cap-AZO4-Cap-Lys(QXLTM520)-OHの合成方法を示す。
【0169】
合成例7−1(Dde-Lys (Fmoc)-XAL-PEG-PS 樹脂の合成)
Fmoc-XAL-PEG-PS 樹脂 (2 μmol: PE Biosystems)(ここで、Ddeとは、4,4 - dimethyl - 2,6 - dioxocyclohex - 1 - ylidine]ethylを示し、Fmocとは、9-fluorenylmethylを示し、XALとは、Xanthenylamideを示し、PEGとは、ポリエチレングリコールを示す。) をDMF中に10分ほど放置して湿らせ, Fmoc-保護基をDeblock solution (20% piperidine in DMF : 500 μL)中で5 分間、振トウ反応させることで脱保護し、DMF (500μL)にて5回洗浄した。その後、樹脂をBase solution (2,6-lutidine (0.3 M)及び Diisopropyl ethylamine(0.2 M)/DMF) (500μL) 中で5分インキュベートすることでN末端のアミンの求核性を高めた。一方で、Dde-Lys(Fmoc)-OH (5.3 mg, 10 μmol)にアクティベーター(0.02M HATU/ DMF: 500μL)を加え、5分間インキュベートすることでカルボン酸の反応性を高め、これをBase solution溶液中の樹脂に加えて15分間反応させた。反応後、樹脂をDMF (500μL)にて5回洗浄した。
【0170】
合成例7−2(Dde-Lys (QXL TM520)-XAL-PEG-PS 樹脂の合成)
Dde-Lys (Fmoc)-XAL-PEG-PS 樹脂に対して上記と同様の操作で、リシンのε-アミノ基にあるFmoc-基を脱保護し、先と同様にBase solutionにてアミンの求核性を高めた。これにQXLTM520 520 acid SE, (6.5 mg, 10 μmol, SE:スクシンイミドエステル) を加え、15分インキュベートした。反応後、樹脂をDMF (500μL)にて5回洗浄した。
【0171】
合成例7−3(Fmoc-CAP-Lys (QXL TM520)-XAL-PEG-PS 樹脂の合成)
Dde-Lys (QXL TM520)-XAL-PEG-PS樹脂のDde-基を2%のヒドラジン(hydrazine)と10% のアリルアルコール(allylalcohol)のDMF溶液中(500 μL)で10分間 インキュベートすることで脱保護し、その後 DMF (500 μL)で5回洗浄した。続いて上記と同様の操作でリシンのN-末端アミノ基をbase solution で活性化し, Fmoc-6-aminocaproic acid (3.5 mg, 10 μmol)のカルボン酸をアクティベーター添加により活性化させた。反応後、樹脂をDMF (500μL)にて5回洗浄した。
【0172】
合成例7−4(Fmoc-AZO4-CAP-Lys (QXLTM520)-XAL-PEG-PS 樹脂)
Fmoc-CAP-Lys (QXL TM520)-XAL-PEG-PS 樹脂に対して上記と同様にFmoc-基の脱保護、Base solutionによるアミノ基の活性化、アクティベーターによるFmoc-AZO4-OH (5.3 mg, 7.5 μmol) のカルボン酸を活性化させたものを調製し、それぞれを反応させた。反応後、樹脂をDMF (500μL)にて5回洗浄した。
【0173】
合成例7−5(Fmoc-CAP-AZO4-CAP-Lys (QXL TM520)-XAL-PEG-PS 樹脂の合成)
Fmoc-AZO4-CAP-Lys (QXL TM520)-XAL-PEG-PS 樹脂に対して、上記と同様の操作を用いてFmoc-6-aminocaproic acid (3.5 mg, 10μmol) を伸長した。反応後、樹脂をDMF (500μL)にて5回洗浄した。
【0174】
合成例7−6(Fmoc-Lys (Boc)-CAP-AZO4-CAP-Lys (QXL TM520)-XAL-PEG-PS 樹脂の合成)
Fmoc-CAP-AZO4-CAP-Lys (QXLTM520)-XAL-PEG-PS 樹脂に対して、上記と同様の操作を用いてFmoc-Lys (Boc)-OH (5.3 mg, 10 μmol) を伸長した。反応後、樹脂をDMF (500μL)にて5回洗浄した。
【0175】
合成例7−7(NH2-Lys -CAP-AZO4-CAP-Lys (QXL TM520)-OHの合成)
Fmoc-Lys (Boc)-CAP-AZO4-CAP-Lys (QXL TM520)-XAL-PEG-PS 樹脂に対して、上記と同様の操作でFmoc-基を脱保護した。
【0176】
その後、樹脂を DMF(500 μL)にて5回洗浄し、イソプロパノール(500 μL)で5回洗浄、続いて窒素ガスにより樹脂を乾燥させた。続いて、樹脂に対してm-cresol/TFA (0.25:10, v/v) (200 μL) を添加し、60分室温で反応させることにより、Boc-基の脱保護とペプチドの樹脂からの切り離しを行った。1時間後、反応液に氷冷したジエチルエーテルを500μL加え、ボルテックスにて撹拌することで、赤褐色のペプチド成分を得た。これをチューブに加え、小型卓上遠心装置により3,000 rpmにて遠心分離すること赤褐色を回収し、窒素ガスにて乾燥後、MALDI-TOFMS にて分子量を解析し、分子量1,515の目的物を確認した。
【0177】
合成例7−8(FAM-Lys (NH2)-CAP-AZO4-CAP-Lys (QXL TM520)-OHの合成)
Fmoc-Lys (Boc)-CAP-AZO4-CAP-Lys (QXL TM520)-XAL-PEG-PS 樹脂に対して、上記と同様の操作で、FAM (5.3 mg, 10 μmol)を伸長した。
【0178】
その後、樹脂を DMF(500 μL)にて5回洗浄し、イソプロパノール(500 μL)で5回洗浄、続いて窒素ガスにより樹脂を乾燥させた。続いて、樹脂に対してm-cresol/TFA (0.25:10, v/v) (200 μL) を添加し、60分室温で反応させることにより、Boc-基の脱保護とペプチドの樹脂からの切り離しを行った。1時間後、反応液に氷冷したジエチルエーテルを500μL加え、ボルテックスにて撹拌することで、赤褐色のペプチド成分を得た。これをチューブに加え、小型卓上遠心装置により3,000 rpmにて遠心分離すること赤褐色を回収し、窒素ガスにて乾燥後、MALDI-TOFMS にて分子量を解析し、分子量1,874の目的物を確認した。
【0179】
試験例8(FAM-Lys (NH2)-CAP-AZO4-CAP-Lys (QXL TM520)(以下、FAM-AZO4-QXL TM520ともいう)のシス−トランス異性化による消光−蛍光観察)
合成例6で合成したFAM-AZO4-QXL TM520(FAM-Lys (NH2)-CAP-AZO4-CAP-Lys (QXL TM520))を10nmol、トリエチルアミン(ペプチドに対して過剰)、ジクロロメタン1mlに添加し、濃度10μmol/lのFAM-AZO4-QXL TM520溶液のサンプルを調製した。調製したFAM-AZO4-QXL TM520溶液にキセノンランプ光源から450nmの可視光を60秒間し、AZO4部位におけるアゾ部位の幾何構造をトランス体からシス体へと異性化させた。そののち、このサンプルを蛍光分析装置に入れ、490nmの励起光によりFAM由来の蛍光発光(520nm)を測定した。図3に光照射前後における蛍光スペクトル変化を示す。
【0180】
図3より、AZO搭載ペプチドに対して可視光を照射し、アゾ骨格をトランス体からシス体へと異性化させた場合、FAMによる蛍光発光が消光されることが明らかになった。このことは、アゾ骨格の幾何異性化によってペプチド構造が変化し、FAM部位とQXLTM520部位の距離が短くなることでFAMの蛍光がQXL TM520によって消光されたことを示す。
【0181】
また、450nmの可視光の照射後のシス異性体を加熱すると、トランス異性体へ変化し、蛍光発光が戻ることも明らかとなった。
【0182】
合成例8(ペプチド核酸部位を有するアゾベンゼン(K’K’K’-CTTCTTCT-AZO4-TCTTC-K’K’K’(以下、PNA−AZOともいう))の合成)
K’K’K’-CTTCTTCT-AZO4-TCTTC-K’K’K’:
【0183】
【化41】

【0184】
(ただし、K’はアミノ酸のリシンを一文字表記したものである。ここで、5’末端はPNAのN末端、3’末端はPNAのC末端に相当し、5’は、DNAまたはRNAのデオキシリボースまたはリボース糖の5位の方向に伸長したヌクレオチド末端のことを意味し、3’は、DNAまたはRNAのデオキシリボースまたはリボース糖の3位の方向に伸長したヌクレオチド末端のことを意味する)
K’K’K’−CTTCTTCT−は、
【0185】
【化42】

【0186】
−TCTTC-K’K’K’は、
【0187】
【化43】

【0188】
であって、
式中、−Cは、シトシン:
【0189】
【化44】

【0190】
を表し、
−Tは、チミン:
【0191】
【化45】

【0192】
を表す)
“AZO4”搭載型ペプチド核酸は、Fmoc-固相合成法により調製した。合成に使用した、樹脂、カップリング試薬、脱保護試薬、洗浄操作、樹脂からの切り出し、HPLCによる精製は定法に従った。PNAの分子量は、MALDI-TOFMSにより解析し、計算分子量が5375.0であるのに対して、検出された分子量は5371.0であった。
試験例9(PNA−AZOの可視光(450nm)照射後のUVスペクトル測定)
合成例8で合成したPNA−AZOを10mMのリン酸ナトリウム緩衝液(pH 6.9)に溶解して、濃度300nMのPNA−AZO溶液のサンプルを調製した。調製したPNA−AZO溶液におけるアゾ骨格の幾何構造を完全にトランス体にするために、95℃で5分加温し、その後サンプルを室温にまで戻した後、キセノンランプ光源により450nmの可視光を10分間、20分間及び30分間それぞれ照射し、光照射後のUVスペクトルを測定した。UVスペクトルを図4に示す。なお、図4における曲線は上から順に0分間、10分間、20分間、30分間光照射した後のUVスペクトルを示す。
【0193】
図4より、PNA−AZOに450nmの可視光を照射すると、経時変化に伴い、極大吸収波長である450nmを中心に400-500nmのピークが減少した。その結果より、アゾベンゼン骨格のトランス体からシス体への異性化に伴う構造変化が認められた。
【0194】
試験例10(PNA−AZOとdsDNAの会合様式のアガロースゲルシフトアッセイによる解析)
PNA(5’-CTTCTTCT-AZO4-TCTTC-3’)の標的配列を含む、DNA(a)鎖:3’- CATCCTCGAAGAAGATGGTGCGCTCCTGGA-5’、およびそれに対して核酸塩基相補的なDNA(b)鎖:5’- TCCAGGAGCGCACCATCTTCTTCGAGGATG-3’(Sigma-Genosis製)を10mM リン酸ナトリウム溶液(pH6.9)に溶解し、95℃に5分間加熱後、0.5℃/minの割合で冷却(アニーリング)することで二重鎖DNA(a,b)を形成させた。そして、PNAと二重鎖DNA(a,b)の終濃度がそれぞれ750nM, 250nMになるように混合して、2時間、25℃でインキュベートした。
【0195】
緑色蛍光タンパク(GFP: Green Fluorescent Protein)の遺伝子をコードするプラスミドDNAの転写開始領域上流にはポリプリン配列(アデニンとグアニンからなる)が存在する。このポリプリン配列に相補配列をもつPNA-AZOを調整し、アゾ骨格をトランス型、およびシス型にした場合の標的配列に対する結合能をポリアクリルアミドゲル電気泳動により調べた。なお、プラスミドDNAおよびDNA/PNA会合体の可視化は核酸インターカレーターのエチジウムブロマイドを用いた。図5にPNA−AZOのトランス体及びシス体を作用させたプラスミドDNAのポリアクリル電気泳動を示す。図5より、PNA-AZOの構造がシス型の場合には二重鎖DNAとの会合が効率的に起こることがわかった。しかし、過剰にPNA-AZOを入れた場合はPNA-AZO/dsDNAのコンプレックスが分子間で形成され、凝集することでゲル上にsmearとなって現れることがわかった。
【0196】
試験例11(PNA-AZOのトランス体とシス体を用いたGFP遺伝子の細胞内発現の制御)
蛍光顕微鏡観察用のグラスチャンバーにイヌ腎臓(MDCK)細胞を播種し、接着するまで約6時間インキュベートした。次に、1.6μg のGFP発現プラスミドDNA(clontech社製のpAcGFP-C1)を含む10mM リン酸ナトリウム溶液(pH6.9)に溶解させた試料を調製し、ここに予め可視光450nmを照射したPNA-AZO(アゾ骨格がシス型)と非照射のPNA-AZO(アゾ骨格がトランス型)を核酸塩基の数にして100倍等量になるように加えた。このPNA-AZO/GFP発現プラスミドDNAの会合体に対して、Fugene 6(ロシュ・ダイアグノスティック社製)を加え、30分インキュベートし、MDCK細胞に対してトランスフェクションした。蛍光顕微鏡により8時間後のGFP蛋白発現を観測した。図6にPNA-AZOのトランス体及びシス体を作用させたプラスミドDNAの蛍光顕微鏡写真を示す。
【0197】
PNA-AZOと二重鎖DNAの会合実験(ゲルシフトアッセイ)を行った際に使用したPNA-AZOの標的DNA配列はGFP発現プラスミドの中にも含まれている。PNA-AZOがシス異性化するとGFPプラスミドに人工的に転写バルブが形成され、GFPをコードしDNA鎖に転写因子が結合しやすくなるため、GFP発現量が向上したと予想される(図6右上)。実際、GFPプラスミドに対してPNA-AZO(cis体)を作用させた場合に、GFPの発現効率が向上することが明らかになった。また、GFPプラスミドのみの場合と比べてPNA-AZO(トランス体)を添加した場合にGFP発現活性が高いのは、PNA-AZOにリシンが6個修飾されており、GFPプラスミドにカチオン性のPNA-AZOが結合することで、GFPプラスミドの細胞内導入効率が高くなるからと予想される。
【0198】
試験例10及び11におけるPNA-AZOとdsDNAの結合様式は、以下のメカニズムにより形成されるものと考えられる。PNA-AZOとdsDNAの結合様式のイメージ図を図7に示す。二重鎖DNAに対してPNA-AZOの5’側のストランドがフーグスティン水素結合により会合し、DNA/DNA/PNAの三重鎖を形成する。次にPNA-AZOに可視光を照射することで、AZO骨格をシス体へと異性化し、3’側のストランドがDNAに対してワトソン−クリック塩基対を形成することで、二重鎖DNAにPNAがストランドインベージョンし、PNA/DNA/PNAの三重鎖形成とループアウトした一本鎖DNAを作り、人工的に転写バルブ構造を形成していることがわかる。
合成例9(2−(4−((4−ブロモフェニル)ジアゼニル)フェニルアミノ)エタノール(2-(4-((4-bromophenyl)diazenyl)phenylamino)ethanol)(以下、N-type,-OHともいう)の合成)
【0199】
【化46】

【0200】
反応容器にp−ブロモアニリン(p-bromoaniline)(1.63g, 9.48 mmol)、NaNO2(502 mg, 7.28 mmol)、水20 ml及び1N-HCl(350 mg, 9.60 mmol)を加えて0℃で30分攪拌した。炭酸ナトリウム緩衝液(pH=9):エタノール=4:1(体積比)の混合溶液(20ml)に加えて滴下し、12時間室温で攪拌した。結晶を濾過し、エタノールと水で再結晶を行い、収率66 %で目的物を得た。
1H-NMR(400 MHz, CDCl3): 7.82(d, 2H, J=8.9), 7.71(d, 2H, J=8.6), 7.59(d, 2H, J=8.6), 6.69(d, 2H, J=8.9), 3.89(brs, 2H), 3.41(t, 2H, J=5.2)
【0201】
合成例10(2−(4−(( 4−ブロモフェニル)ジアゼニル)フェノキシ)エタノール(2-(4-((4-bromophenyl)diazenyl)phenoxy)ethanol)(以下、O-type,-OHともいう)の合成)
合成例10−1
【0202】
【化47】

【0203】
OXONE(KHSO5 /0.5 KHSO4/0.5 K2SO4, 9.00g, 29mmol)をH2O:CH2Cl2=1.2(体積比)の混合液に溶かし、p−ブロモアニリン(p-bromoaniline)(500 mg, 2.91 mmol)を加え、室温で6時間攪拌した。CH2Cl2で抽出し、NH4Cl水溶液、食塩水(Brine)で洗浄したのち、MgSO4で乾燥し、溶媒を留去し、目的物(4−ブロモ−ニトロソベンゼン(4-bromo-nitrosobenzene))を得、次のステップに使用した。
合成例10−2
【0204】
【化48】

【0205】
前記、(4−ブロモ−ニトロソベンゼン(4-bromo-nitrosobenzene)) (107mg, 0.58mmol)を酢酸5mlに溶解させ、2−(4−アミノ−フェノキシ)エタノール((2-(4-amino-phenoxy)ethanol)(80mg, 0.58mmol)を加えて、室温で24時間攪拌した。酢酸を減圧留去し、カラムクロマトグラフィー(Hexane:AcOEt=2:1(体積比))で精製(収率75 % )した。
1H-NMR(400MHz, CDCl3):7.91(d, 2H, J=9.0), 7.76(d, 2H,J=8.7), 7.63(d, 2H, J=8.7), 7.04(d, 2H, J=9.0), 4.18(t, 2H, J=4.2), 4.02(brs, 2H)
【0206】
合成例11(3−(4−((4−ブロモフェニル)ジアゼニル)フェニル)プロピオン酸(3-(4-((4-bromophenyl)diazenyl)phenyl)propanoic acid)(以下、C-type,-COOHともいう)の合成)
【0207】
【化49】

【0208】
p−ブロモ−ニトロソ−ベンゼン(p-bromo-nitroso-benzene)(450mg, 2.41 mmol)を酢酸15mlに溶かし、3−フェニルプロピオン酸(3-phenylpropanoic acid)(350 mg, 2.12 mmol)を加えて室温で24時間攪拌した。その後、結晶をろ取し、エタノールおよび水で再結晶を二度行い、収率84 %で目的物を得た。
1H-NMR(400 MHz, CDCl3): 7.86(d, 2H, J=8.3), 7.78(d, 2H, J=8.5), 7.64(d, 2H, J=8.5), 7.36(d, 2H, J=8.3), 3.05(t, 2H, J=7.7), 2.74(t, 2H, J=7.7)
【0209】
合成例12(3−(4−((4−ブロモフェニル)ジアゼニル)フェニル)プロパン−1−オール(3-(4-((4-bromophenyl)diazenyl)phenyl)propan-1-ol)(以下、C-type,-OHともいう)の合成)
【0210】
【化50】

【0211】
水素雰囲気下、テトラヒドロフランにパラジウム−活性炭素(Pd 5重量%, 和光純薬工業(株)製)を加え攪拌したのち、合成例10で合成したC-type,-COOHを加え室温で5分攪拌した。反応物をろ過し、ろ液を濃縮し、カラムクロマトグラフィー(Hexane:AcOEt=2:1(体積比))で定量的に目的物を得た。
1H-NMR(400 MHz, CDCl3): 7.90 (d, 2H, J=7.0), 7.86 (d, 2H, J=8.3), 7.50(d, 2H, J=7.7), 7.35 (d, 2H, J=8.3), 3.71 (t, 2H, J=6.3), 2.80 (t, 2H, J=7.0), 1.94 (m, 2H)
【0212】
合成例13(2−(4−((4−ブロモフェニル)ジアゼニル)フェニルチオ)酢酸(2-(4-((4-bromophenyl)diazenyl)phenylthio)acetic acid)(以下S-type,-COOHともいう)の合成)
【0213】
【化51】

【0214】
p−ブロモ−ニトロソ−ベンゼン(p-bromo-nitroso-benzene)(450mg, 2.41 mmol)を酢酸15mlに溶かし、2−(4−アミノフェニル)チオ酢酸(2-(4-aminophenyl)thioacetic acid)(443mg, 2.41 mmol)を加えて室温で24時間攪拌した。その後、結晶をろ過し、エタノールと水で再結晶を二度行い、収率78 %で目的物を得た。
1H-NMR(400 MHz, CDCl3): 7.87(d ,2H, J=8.6), 7.78(d, 2H, J=8.7), 7.64(d, 2H, J=8.7), 7.49 (d, 2H, J=8.6), 3.79 ( s, 2H)
【0215】
合成例14(2−(4−((4−ブロモフェニル)ジアゼニル)フェニルチオ)エタノール(2-(4-((4-bromophenyl)diazenyl)phenylthio)ethanol)(以下、S-type,-OHともいう)の合成)
【0216】
【化52】

【0217】
水素雰囲気下、テトラヒドロフランにパラジウム−活性炭素(Pd 5重量%)を加え攪拌したのち、(2−(4−((4−ブロモフェニル)ジアゼニル)フェニルチオ)酢酸(2-(4-((4-bromophenyl)diazenyl)phenylthio)acetic acid)を加え室温で5分攪拌した。反応物をろ過し、ろ液を濃縮し、カラムクロマトグラフィー(Hexane:AcOEt=2:1(体積比))で定量的に目的物を得た。
1H-NMR(400 MHz, CDCl3): 7.85 (d, 2H, J=8.3), 7.78 (d, 2H,J=8.7), 7.64 (d, 2H, J=8.6), 7.46 (d, 2H, J=8.3), 3.84 (t, 2H,J=11), 3.24 (t, 2H, J=12)
【0218】
試験例12〜15(S-type,-OH、C-type,-OH、O-type,-OH及びN-type,-OHの紫外−可視吸収スペクトル測定)
合成例9、10、12及び14で合成したS-type,-OH、C-type,-OH、O-type,-OH及びN-type,-OHを水に添加して濃度20μmol/lの各水溶液を調製し、紫外−可視吸収スペクトルをそれぞれ測定した。紫外−可視吸収スペクトルを図8に示し、表2に測定結果を示す。
【0219】
【表2】

【0220】
試験例16及び17(S-type,-COOH及びC-type,-COOHの紫外−可視吸収スペクトル測定)
合成例11及び13で合成したS-type,-COOH及びC-type,-COOHを水にそれぞれ添加し、濃度20μmol/lの各水溶液を調製し、紫外−可視吸収スペクトルを測定した。紫外−可視吸収スペクトルを図9に示し、表3に測定結果を示す。
【0221】
【表3】

【0222】
試験例18及び19(アゾベンゼン誘導体の量子収率)
合成例9及び13で合成したS-type,-COOH及びC-type,-COOHの量子収率を以下の方法により算出した。
モル吸光係数の算出:サンプルをジメチルスルホキシドに溶解し濃度、40μmol/l, 30μmol/l, 20μmol/l, 15μmol/l, 10μmol/lの各濃度で調整し、95 ℃で30 分加熱した。その後サンプルを石英セルにいれ、UV-Vis分光分析装置でそれぞれの吸光度を測定した。その結果から380 nmの吸収を縦軸に、濃度を横軸にとり、その直線の傾きからモル吸光係数を算出した。
量子収率の算出:パワーメータ(OPHIR Nova, フォトダオードヘッド)でキセノンランプ光源の光量を測定し、その結果から、サンプルを透過した光量を算出した。サンプルをジメチルスルホキシドに溶かし、20μmol/lに調整したサンプルを95 ℃で30分加熱し、その後20 ℃に冷やした。サンプル1.5 ml を石英セルに入れ、UV-Vis分光分析装置でそれぞれの吸光度を測定した。このときの波長 380 nmにおける吸光度から前記で求めたモル吸光係数からサンプルのモル濃度を算出した。サンプルを氷浴中ですみやかに室温に戻し、石英セルに1.5mlはかりとり、キセノンランプ光源から380nmの波長光を一定時間(10,20,30,40秒)照射し、吸光度変化を測定した。測定したデータから横軸に時間(秒)、縦軸に異性化したモル濃度をプロットしたグラフの傾きから異性化速度を算出した。
【0223】
【数1】

【0224】
式(1)のνに異性化速度を、I0にパワーメータから算出した光量、Vに測定サンプル体積、Absに380 nmにおける吸光度を代入し、量子収率Φを算出した。結果を表4に示す。なお、表4に示す参考例1である化合物1は、J. Phys. Chem. A 2007, 111, 12072-12080に記載される量子収率であり、参考例2及び3である化合物2及び3は、J. Phys. Chem. B 2006, 110, 24390-24398に記載される量子収率である。また、化合物1〜3の量子収率は、前記の算出方法と同様の方法によって求めたものである。
【0225】
【表4】

【0226】
試験例20(S-type,-COOHのシス−トランス異性化挙動)
合成例13で合成したS-type,-COOHの450nmの光照射前後によるシス−トランス異性化挙動をNMRにより測定した。図10にNMRチャートを示す。
【0227】
図10より、光照射後、S-type,-COOHのアゾ骨格からオルト位(チオフェニル基では3位、ブロモフェニル基では2位)の水素原子由来のピークが新たに出現したことにより、S-type,-COOHがシス体からトランス体に異性化していることが確認できた。
【0228】
試験例21(S-type,-OHのシス−トランス異性化の可逆性の確認)
合成例13で合成したS-type,-OHをジメチルスルホキシドに溶解し、20μmol/lに濃度を調整し、UV測定用の石英セルに1.5ml入れ、キセノンランプ光源(朝日分光(株)製:ハイパワーキセノン光源Max-302, 300W)を用いて、波長380nmのバンドパスフィルター(半値幅10nm±2nm)を透過した光のみを5分程度照射した。トランス体のS-type,-OHのスペクトルが減少したことを確認したのち、波長470nmのバンドパスフィルター(半値幅10nm±2nm)を透過した光を5分間照射した。同様の操作を3回ずつ繰り返し、アゾ骨格の異性化が可逆的に起こることを確認した。図11に光照射におけるS-type,-OH溶液の各吸光度を示す。
【0229】
試験例22(アゾベンゼン誘導体の熱安定性)
合成例9、10、12及び14で合成したS-type,-OH、C-type,-OH、O-type,-OH及びN-type,-OHをそれぞれジメチルスルホキシドに溶解し、20μmol/lの濃度に調整した。上記のキセノンランプ光源を使用し、トランス体由来の最大吸収波長に相当する波長光を各トランス体のスペクトルが減少するまで照射し続けた。その後、各サンプルを恒温セルフォルダの装着したUV-Vis分光分析装置に静置し、40℃で加温した状態で各アゾベンゼンのトランス体由来の最大吸収波長における吸光度の経時変化を調べた。経時変化に対するアゾ骨格のトランス体の存在比を表すグラフを図12に示す。
【図面の簡単な説明】
【0230】
【図1】450nmの可視光照射後のCH2Cl2中、NEt3添加におけるAZO4溶液の吸収スペクトルの変化を示すグラフである。
【図2】800nmの赤外線二光子照射後のCH2Cl2中、NEt3添加におけるAZO4溶液のUVスペクトルを示すグラフである。
【図3】450nmの可視光照射後のCH2Cl2中、NEt3添加におけるFAM-AZO4-QXL TM520溶液の蛍光スペクトルを示すグラフである。
【図4】450nmの可視光照射後のPNA-AZOのUVスペクトルである。
【図5】PNA-AZOのトランス体及びシス体を作用させたプラスミドDNAのポリアクリル電気泳動を示すゲルシフトアッセイの結果である。
【図6】PNA-AZOのトランス体及びシス体を作用させたプラスミドDNAの蛍光顕微鏡写真である。
【図7】PNA-AZOとdsDNAの結合様式のメカニズムを示すイメージ図である。
【図8】S-type,-OH、C-type,-OH、O-type,-OH及びN-type,-OH水溶液の紫外−可視吸収スペクトルである。
【図9】S-type,-COOH及びC-type,-COOH水溶液の紫外−可視吸収スペクトルである。
【図10】S-type,-COOHの450nmの光照射前後によるシス−トランス異性体のNMRチャートである。
【図11】波長380nmのバンドパスフィルターを透過した光及び波長470nmのバンドパスフィルターを透過した光を交互に光照射したときのS-type,-OH溶液の各吸光度との関係を示すグラフである。
【図12】S-type,-OH、C-type,-OH、O-type,-OH及びN-type,-OHのトランス体由来の最大吸収波長に相当する波長光を照射時間と、トランス体の存在比との関係を示すグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(1):
【化1】

(式(1)中、Rは、水素原子、ハロゲン原子、又は式(1a):
【化2】

(式(1a)中、mは1〜5の整数であり、Rは、アミノ基;カルボキシル基;低級アルコキシ基;低級アルコキシカルボニル基;ニトロ基;ペプチド核酸部位を有する基;蛍光部位又は消光部位を有するスペーサーを有する基;芳香族環上にカルボキシル基、低級アルコキシ基、ニトロ基、ペプチド核酸部位を有する基又は蛍光部位もしくは消光部位を有するスペーサーを有する基を有することのある芳香族環を有する低級アルキレン基、低級アルケニレン基又は低級アルキニレン基であって、mが2以上の場合、同じであっても異なっていてもよい)
で表される基であり、
Aは、低級アルキレン基、低級アルケニレン基、低級アルキニレン基、又は直接結合であり、
Xは、−O−R2a、−N−(R2b又は−S(O)−R2cであり、
2aは、低級アルキル基;ペプチド核酸部位を有する基;蛍光部位又は消光部位を有するスペーサーを有する基;アミノ基、カルボキシル基、低級アルコキシカルボニル基、ヒドロキシル基、ペプチド核酸部位を有する基、又は蛍光部位もしくは消光部位を有するスペーサーを有する基が置換されていてもよい低級アルキル基であり、
2bは、同じであっても異なっていてもよく、水素原子;低級アルキル基;ペプチド核酸部位を有する基;蛍光部位又は消光部位を有するスペーサーを有する基;アミノ基、カルボキシル基、低級アルコキシカルボニル基、ヒドロキシル基、ペプチド核酸部位を有する基、又は蛍光部位もしくは消光部位を有するスペーサーを有する基が置換されていてもよい低級アルキル基であり、
2cは、低級アルキル基;ペプチド核酸部位を有する基;蛍光部位又は消光部位を有するスペーサーを有する基;アミノ基、カルボキシル基、低級アルコキシカルボニル基、ヒドロキシル基、ペプチド核酸部位を有する基又は蛍光部位もしくは消光部位を有するスペーサーを有する基、が置換されていてもよい低級アルキル基であって、
kは0〜3の整数である)
で表されるアゾベンゼン化合物。
【請求項2】
式(a1):
【化3】

(式(a1)中、A及びRは、前記式と同様である)
と、亜硝酸塩及び酸を添加して、ジアゾニウム塩を形成させ、さらに、前記ジアゾニウム塩と、式(a2):
【化4】

(式(a2)中、Xは、前記式と同様である)
を反応させることを特徴とする請求項1に記載のアゾベンゼン化合物の製造方法。
【請求項3】
式(b1):
【化5】

(式(b1)中、A及びRは、前記式と同様である)
と、式(b2):
【化6】

(式(b2)中、Xは、前記式と同様である)
を酸性条件下で反応させることを特徴とする請求項1に記載のアゾベンゼン化合物の製造方法。
【請求項4】
式(c1):
【化7】

(式(c1)中、Xは、前記式と同様であって、Yは、ハロゲン原子である)
と、トリメチルシリルアセチレンを反応させた後、脱シリル化することによって、式(c2):
【化8】

を得、さらに、式(c3):
【化9】

(式(c3)中、Y、R及びmは、前記式と同様である)
を反応させることを特徴とする請求項1に記載のアゾベンゼン化合物の製造方法。
【請求項5】
光スイッチング材料として用いられる請求項1に記載のアゾベンゼン化合物。
【請求項6】
mRNA転写反応促進剤又はmRNA転写反応抑制剤として用いられる請求項1に記載のアゾベンゼン化合物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2010−143864(P2010−143864A)
【公開日】平成22年7月1日(2010.7.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−323606(P2008−323606)
【出願日】平成20年12月19日(2008.12.19)
【出願人】(504176911)国立大学法人大阪大学 (1,536)
【出願人】(801000061)財団法人大阪産業振興機構 (168)
【Fターム(参考)】